JP2000176276A - ガス吸着・脱着性材料及びその製造方法 - Google Patents

ガス吸着・脱着性材料及びその製造方法

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JP2000176276A JP10375814A JP37581498A JP2000176276A JP 2000176276 A JP2000176276 A JP 2000176276A JP 10375814 A JP10375814 A JP 10375814A JP 37581498 A JP37581498 A JP 37581498A JP 2000176276 A JP2000176276 A JP 2000176276A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 目的とするガスの吸着又は吸・脱着を行える
のみならず、ある蒸気圧(相対湿度)で急激な吸着又は
脱着が行え、その吸着及び/又は脱着の開始蒸気圧を任
意に調整できるガス吸着・脱着性材料及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】 金属塩水溶液に、酸又はアルカリ水溶液
を加えるかあるいはS2-イオンを含む溶液を加え、金属
水酸化物又は金属硫化物の非晶質粒子として沈殿させ、
これを80〜1000℃で乾燥又は熱処理する。この方
法により、金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子
集合体粒子の粒子間に微細な隙間が形成されている乾燥
粉末又は熱処理粉末からなるガス吸着・脱着性材料が得
られる。上記金属水酸化物又は金属硫化物としては、M
g,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,
Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びM
oよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の水酸
化物又は硫化物が用いられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属水酸化物又は
金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子の乾燥粉末又は熱
処理粉末からなるガス吸着・脱着性材料及びその製造方
法に関する。さらに詳しくは、沈殿法により形成される
金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子
を、乾燥又は熱処理することにより、この際に水分を放
出すると同時に分子同士が凝集する時に形成される細孔
(隙間)を有する多孔質粒子とし、この細孔へのガスの
吸着又は脱着を利用することにより、ガスが水蒸気であ
れば結露防止剤やカビの発生防止剤として、又は一定の
湿度雰囲気に保つ調湿剤として、また、ガスがトルエ
ン、ホルムアルデヒドなどの有機ガスであれば脱臭剤と
して、種々の分野で利用できるガスの吸着・脱着材料及
びその製造方法に関する。なお、本発明は、通常の雰囲
気で熱エネルギーや化学反応を用いずにガスを吸着・脱
着でき、また、吸着・脱着の程度を制御できる技術を提
供するものである。従って、物理吸着又は物理脱着が中
心であり、専ら不可逆的な化学吸着や化学反応によるも
のはその範疇から外れる。
【0002】
【従来の技術】水分やガスの吸着剤として、従来から活
性炭、シリカゲル、アルミナ、カオリナイト、珪藻土
等、多くのものが知られており、例えば橋本健治ら「新
しい吸着剤の選定と吸着操作の新技術」経営開発センタ
ー出版部、平成2年(1990)3月31日発行やC.
L.マンテル著「吸着および吸着剤」技報堂出版
(株)、昭和63年(1988)3月20日発行に記載
されている。ガス吸着剤は、化学吸着と物理吸着に大別
できる。化学吸着は、吸着されるガスと吸着剤の化学反
応により行われ、一旦吸着されたガスは容易に脱着しな
いという特徴がある。その例として、酸化鉄や酸化亜鉛
が下記化学反応によって硫黄化合物系ガスと反応する例
が挙げられ、これは亜硫酸ガスや硫化水素ガスを除去す
る手段として使われている。
【化1】 Fe23 +3SO2 +3/2O2 →Fe2 (SO43 Fe23 +H2 S →Fe23 +3H2
【0003】一方、物理吸着についても種々の物質の例
が知られている。その理論として、ラングミュア理論や
毛管凝縮理論がある。毛管凝縮理論によると、ケルビン
(Kelvin)は、狭い毛細管中の液体のメニスカス
上の蒸気圧が同温度の平坦な液面上の蒸気圧より低いこ
とから、もし液体が毛細管を濡らし、凹状のメニスカス
を作ると、毛細管内の自由空間の飽和蒸気圧(Ps)と
平面の液体上の飽和蒸気圧(P)との間に
【数1】ln(P/Ps)=−(2γV)/(ρRT) の関係があり、毛細管中の液面上の飽和蒸気圧は平らな
液面上の飽和蒸気圧より小さいので、液化が起こってい
くとしている。ここで、γは液体の表面張力、ρはメニ
スカスの曲率半径、Rは気体定数、Tは絶対温度であ
る。ここで物質が決まれば(γが一定であれば)、ρ
(メニスカスの曲率半径、ひいては多孔質体の細孔半
径)が重要なファクターとなる。実際の経験上からも、
細孔径の大きさが吸着分子の大きさの数倍から数10倍
程度の時に、細孔メニスカス部と細孔外部の圧力差によ
り吸着が可能であることが知られている。すなわち、細
孔内と外部との蒸気圧差により平衡に達するまで吸着で
きるが、平衡状態よりも外部の蒸気圧が下がりすぎると
脱着することになる。
【0004】上述の通り、ガスの吸着及び脱着において
は、細孔の径が重要であるが、孔径がガス分子よりも小
さい時はもちろん吸着は起こらない。そして、孔径が大
きくなるに従って吸着が起こり始め、ある大きさを超え
るとやはり吸着が殆ど起こらなくなってしまう。さら
に、吸着が起こる孔径の範囲であっても、孔の径や温度
によって、外気の飽和蒸気圧との関係(P/Psの比)
により、吸着が起こり易い状態や脱着が起こり易い状態
ができる。すなわち、吸着と脱着が平衡状態にあるとき
は、実際の外部雰囲気のガス蒸気圧が高くなると吸着が
起こり、逆に外部雰囲気のガス蒸気圧が低くなると脱着
が起こることになる。
【0005】具体的に水蒸気ガスを例に物理吸着剤をい
くつかに分類してみると、以下のように列挙される。 (a)特定の構造を持つ天然素材(珪藻土、セピオライ
ト、活性炭等)これらの素材の多くは結晶粒子同士の間
に隙間(細孔に相当する)があり、その隙間が水蒸気の
吸・脱着に適した径となっている。 (b)天然素材の結晶の一部を化学的に溶解して水分の
吸・脱着に適する細孔径にしたもの この例としては、カオリン鉱物を仮焼してアルミナ相と
シリカ相に分相させた後、シリカ相をアルカリ溶液で溶
解して多孔質材にしたもの(名工研ニュース、199
8,6、No.555、工業技術院名古屋工業試験場発
行)が挙げられる。 (c)化学構造中に水分を持つ結晶性マグネシア等を焼
成して結晶から水分を飛ばし、水分の吸・脱着に適する
径の細孔を結晶中にあける。 (d)中和ケイ酸塩や中和沈殿水酸化アルミのゾル この例として、特開平7−265650号公報には、ケ
イ酸塩を酸により中和し、水硬性物質などと硬化させて
調湿材を得ることが開示されている。その他の水分吸着
剤として、塩化カルシウムのように水分を吸収して潮解
性を示すものもあるが、これも不可逆的な化学吸着に近
い。
【0006】前記した従来技術や吸・脱着剤の例のう
ち、化学吸着は不可逆であり、熱エネルギーや化学反応
を用いないと脱着や再生が不可能である。一方、物理吸
着である前記(a)及び(b)の素材は天然のものであ
り、最初からその細孔径(隙間)が素材により決定され
ており、製造方法の制御によって吸着や吸・脱着を開始
する蒸気分圧を所望通りに設定することはできない。前
記(c)及び(d)の材料についても、結晶構造中に水
分を持つ特定の素材であり、単に乾燥や焼成するだけ
で、吸着や吸・脱着を開始する蒸気分圧をコントロール
するまでには至っていない。特に後者の(d)の材料に
ついては、清水博監修「吸着技術ハンドブック」(株)
NTS、1993年2月2日発行、第92頁には、「シ
リカアルミナゲル系は結晶でないため、細孔径は均一で
なく、約10A〜300Aに分布している」として、ほ
ぼ一次関数的な水蒸気の吸着線図が示されており、吸着
曲線がある蒸気圧(湿度)で急激に立ち上がってその湿
度でよく吸着するという傾向のないことが示されてい
る。また、吸着剤として一般的なシリカゲルは、前記の
ようにどのような湿度でも吸着するが、吸着能力が低下
した場合、熱エネルギーを加え(加熱して水分を飛ば
し)て再利用することはよく知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記したよ
うな従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目
的は、前記のような従来の材料とは対照的に、目的とす
るガスの吸着又は吸・脱着を行えるのみならず、ある蒸
気圧(相対湿度)で急激な吸着又は脱着が行え、また、
その吸着及び/又は脱着の開始蒸気圧を任意に調整でき
るガス吸着・脱着性材料、及びこのような優れた性能を
示すガス吸着・脱着性材料を生産性良く、かつ低コスト
で製造できる方法を提供することにあり、さらにまた、
従来の天然素材という固定的なものに限定されないガス
吸着・脱着性材料を開発しようとするものである。これ
により、例えば、カビ、ダニの発生や繁殖を防ぎ、人間
に快適な一定湿度範囲の空間を保つ調湿材、結露防止
剤、除湿剤、除水剤、梱包や菓子袋などへの適湿コント
ロール剤、さらには、カビ発生防止アルコール入り梱包
お菓子の濃度調整剤、住環境や収納ケースの不快又は有
害なガスの吸着剤やフィルターなど、種々の用途に用い
ることができるガス吸着・脱着性材料及びそれを利用し
た製品を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第一の側面によれば、金属水酸化物又は金
属硫化物の非晶質の分子集合体粒子の乾燥粉末又は熱処
理粉末からなり、粒子間に微細な隙間が形成されている
ことを特徴とするガス吸着・脱着性材料が提供される。
本発明の第二の側面によれば、このようなガス吸着・脱
着性材料の製造方法が提供され、その基本的な態様は、
金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子
を乾燥又は熱処理することを特徴としている。上記ガス
吸着・脱着性材料及びその製造方法の好適な態様におい
ては、上記金属水酸化物又は金属硫化物としては、M
g,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,
Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びM
oよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の水酸
化物又は硫化物が用いられる。
【0009】本発明のガス吸着・脱着性材料の製造方法
のより具体的な態様は、金属塩水溶液に、酸又はアルカ
リ水溶液を加えるか、あるいはS2-イオンを含む溶液を
加え、金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質粒子として
沈殿させ、これを乾燥又は熱処理することを特徴として
いる。好適な態様においては、上記金属塩水溶液とし
て、Mg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,
Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb
及びMoよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属
の塩を含む水溶液用いられ、これらの水酸化物又は硫化
物を単分子の集合体粒子として凝集・沈殿させる。さら
に、これらの金属水酸化物又は金属硫化物は80〜10
00℃で乾燥又は熱処理することが好ましい。さらに本
発明の第三の側面によれば、前記金属水酸化物又は金属
硫化物の非晶質の分子集合体粒子の乾燥粉末又は熱処理
粉末からなるガス吸着・脱着性材料と、硬化性材料との
混合物を成形してなるガス吸着・脱着性成形品も提供さ
れる。
【0010】
【発明の実施の形態】本出願人は、先に、結晶性の水酸
化アルミニウム(ギブサイトAl23 ・3H2 O)を
減圧雰囲気下300〜800℃で熱処理することによ
り、ある蒸気圧(相対湿度)で急激な吸着又は脱着が行
えるアルミナ系調湿材料を製造する方法を開発し、既に
特許出願している。この方法で得られるアルミナ粉末を
用い、絶乾状態にし、これを水蒸気圧0から100%、
さらに100%から0%に変化させた場合の例(平衡吸
着・脱着線図)を図1の曲線A−Bに示す。なお、用い
たアルミナ粉末は、平均粒径25μmの水酸化アルミニ
ウム粉末を600℃、0.1気圧の減圧雰囲気下で熱処
理したものである。また、参考のために、このアルミナ
粉末の細孔径分布を図2に示す。
【0011】図1において、曲線Aは雰囲気水蒸気圧
(湿度)が上昇して行く時のアルミナ粉末による水蒸気
吸着状態を示すものであり、曲線Bは水蒸気圧が下降し
て行く時の状態で、脱着していることを示す。細孔径の
分布が全く一定であれば、ある一定の湿度で急激に吸着
したり、脱着したりすることが期待されるが、図2に示
すように、細孔の大きさに分布があるため、いろいろな
湿度のところで吸着や脱着が実際に行われる。また、曲
線AとBは同一曲線にならず、吸・脱着のずれ(ヒシテ
リシス)があるが、これは孔の形状に左右されるといわ
れており、まっすぐな柱状の孔ほどヒシテリシスが少な
く、孔の入口の径に対して奥が広がっている孔やインク
つぼ状であると、ヒシテリシスが大きくなるとされてい
る。また、ヒシテリシスが大きくなると、曲線B’に示
すような脱着曲線となり、殆どの範囲で脱着しない。曲
線A−Bは、吸・脱着を行い、水蒸気であれば相対湿度
50〜70%で調湿性を有し、一方、曲線A−B’の場
合、相対湿度50%程度で吸着し、通常の湿度範囲では
放湿しない性能を有することになる。
【0012】前記方法で得られるアルミナ粉末は、図1
の曲線A−Bに示すような平衡吸着・脱着線図)を示
し、良好な吸・脱着性能を有する。しかしながら、この
方法は、結晶性水酸化アルミニウム(ギブサイトAl2
3 ・3H2 O)を減圧雰囲気下で熱処理することによ
り、結晶水を放出する脱水反応を起こさせ、この過程で
放出された水の通り道(脱水経路)に細孔を形成するも
のであり、熱処理装置が比較的高価なものになり、また
生産性や経済性、細孔径サイズの設計融通性等のの点で
なお改善すべき余地がある。そこで、本発明は、ある蒸
気圧(相対湿度)で急激な吸着又は脱着が行え、また、
その吸着及び/又は脱着の開始蒸気圧を任意に調整でき
るガス吸着・脱着性材料を、通常の大気圧雰囲気中での
熱処理により生産性良く、かつ低コストで製造できる方
法を提供するものである。
【0013】前記したように、ガスの物理的な吸・脱着
作用や吸・脱着の性能(吸・脱着量、吸・脱着開始蒸気
圧等)は、細孔の大きさや細孔径の分布によって決ま
る。本発明らは、上記の観点から鋭意研究の結果、細孔
の代わりに分子の集合粒子間に細孔に相当する隙間を作
ることを考え、分子の集合粒子として金属水酸化又は金
属硫化物が適切であり、これを乾燥又は熱処理すること
により、分子集合粒子間の水分が飛び、分子集合粒子間
に適当な隙間を任意に作り、吸・脱着することが可能
で、しかも製造条件(金属塩の種類や熱処理温度等)を
変えることにより、吸・脱着の開始蒸気圧を任意に調整
できることを見出した。
【0014】本発明においては、出発材料として金属水
酸化物又は金属硫化物を用いるが、ガスの吸・脱着を行
う場合、ガス分子に対し好ましい細孔径は分子の数倍か
ら数十倍の大きさが適切であることが知られており、例
えば、水分子(分子直径約0.3nm)の場合には2〜
20nm程度の範囲の孔径(隙間)が必要である。そこ
で、不溶性の分子、例えば、下記反応
【化2】Al3++30H- →Al(OH)3↓ Zn2++S2-→ZnS↓ によって生成するような沈殿性の分子をまず考え、これ
らの一個一個が弱い分子間引力で凝集し、数万〜数十万
個オーダーで凝集することを利用した。また、水溶液中
であれば、当然数万〜数十万個オーダーで凝集して、よ
り好ましい態様として均一に沈殿物として析出してく
る。これらを一次粒子とすると、さらにこれらの一次粒
子がいくつも集合して二次集合体が形成されることが知
られている。さらに、この二次集合体が三次集合体にな
る。この時、二次集合体、三次集合体になるに従って凝
集力が弱く、簡単にくずれる。
【0015】実際の水酸化アルミニウムの沈殿の集合体
粒子の透過電子顕微鏡写真(TEM像)を図3に示す。
このTEM像によれば、中央部に1.5μm(1500
nm)×0.8μm(800nm)の二次粒子があり、
端部に50nm程度の一次粒子が見える。しかし、一次
粒子同士の間に隙間はあまり見られない。この集合体粒
子を回収し、乾燥又は熱処理すると、一次粒子間や二
次、三次粒子間の隙間の水分が飛び出し、それぞれの粒
子は若干収縮する。この時、一次粒子の大きさにもよる
し、一次粒子間の配置によっても異なるが、その間に空
隙ができる。この空隙(隙間)がガスを吸着するのに有
効に使用できる。
【0016】図3に示した水酸化アルミニウムの沈殿物
を500℃、900℃、及び1300℃で熱処理したT
EM写真をそれぞれ図4、図5、図6、及び図7に示
す。図3に示す沈殿粒子では一次粒子間に隙間は見えな
いが、500℃での熱処理後には、図4に示すように二
次粒子間に隙間が多くなり、その倍率を上げた図5(×
60万倍)のTEM像では一次粒子の大きさが20nm
程度になっている様子がわかる。さらに900℃での熱
処理後の状態を示す図6では、隙間やクラックがより広
大で多数になっている。しかし、1300℃での熱処理
では、図7に示されるように溶融が始まり、平らで大き
な結晶に変化しており、図6に示されるような数十nm
程度の隙間やクラックがなくなっている。上記500℃
や900℃の熱処理で形成される粒子内の微細な数nm
程度の隙間やクラック、又は粒子間の数nm〜20nm
程度の隙間にガスの吸・脱着が起こると考えられる。ま
た、同時に2次粒子同士や3次粒子同士の間にも同よう
に隙間やクラックができるが、これらは吸・脱着を行う
ために有効な空隙よりも大きなものが多く、これらの隙
間は吸着ガスの外界との出入りをスムーズに行うための
通路として有用な働きをする。
【0017】本発明において、金属塩として用いる金属
をMg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,F
e,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb,
Moとしているのは、これらの金属の水酸化物や硫化物
は水に難溶であり、目的とする沈殿物が得られること、
また、Moよりも分子量(原子サイズ)が大きくなると
一次粒子(沈殿粒子)が大きくなり、乾燥又は熱処理し
ても吸着にとって適切な細孔(隙間)を作製できなくな
ってしまうためである。また、同じ水酸化物や硫化物で
あっても、例えば水酸化アルミニウムの結晶体であるギ
ブサイトでは、既に単分子がいくつも集まった大きなサ
イズの結晶になっており、結晶の集合体粒子そのものが
大きく、適切な大きさの隙間を作ることは困難であり、
本発明の主旨にそぐわず、目的を達成することはできな
い。本発明者らが検討したところによれば、分子集合体
としての一次粒子は100nm以下程度であり、乾燥又
は熱処理後に50nm以下程度にすることが好ましい。
【0018】金属塩の水溶液を中和又はS2-で沈殿させ
るには、NaOHやKOH,NH4OH,Na2 S,K2
S,(NH42 Sなど、OH- やS2-を含む可溶性
のものであれば、無機、有機のいずれを問わない。ま
た、必要により酸を用いる必要がある場合は、硫酸、硝
酸、塩酸などの無機酸や蓚酸、クエン酸などの有機酸な
ど全ゆる酸を用いることができる。また、沈殿を生じ易
いpHは金属塩により異なることは知られているので、
最も作業性、収率の良いpHにすればよい。さらに沈殿
物に中和又は硫化物化の時に用いた物質の混入が懸念さ
れる場合は、水洗を行ってもよい。
【0019】乾燥又は熱処理は80℃以上、1000℃
以下の温度で行われる。これは、既に述べたように、粒
子間の水が飛び、一次、二次、三次の粒子が収縮するこ
とと、粒子間空隙の水が飛ぶことによって空隙をあける
ためである。図4、図6、及び図7に示したTEM像か
ら明らかなように、空隙(隙間)の大きさは処理温度に
よって異なる。低温であれば水はより均一に飛び、隙間
の大きさは小さくなる。一方、高温で処理すると収縮も
大きく、粒子間の空隙が大きくなる。高温で処理すると
水分子が一気に抜けて収縮し易くなること、また分子レ
ベルでは溶融や溶着が起こり易くなること、さらに場合
によっては、水酸化物から酸化物へと変わることにより
分子として小さくなることが考えられる。
【0020】上記作用の相乗効果によって一次粒子や二
次粒子、特に一次粒子間に吸・脱着に適切な隙間があく
ものと考えられる。しかし、溶融の起こり易いもので
は、高温で処理すると孔径がむしろ小さくなっていくこ
ともある。低温でも長時間かけて乾燥した場合、沈殿一
次粒子は柔らかく、変形し易く、充分密着した状態であ
り、乾燥によりゆっくりしかも均一に水分が蒸発してい
くため、一次粒子同士の隙間やクラックが図4及び図6
に示すようになり難いのではないかと考えられる。この
ようなことから、処理温度は80℃以上であることが望
ましく、さらに水分を飛ばす乾燥という意味では、この
温度以下では時間がかかり、不経済でもある。しかし、
不経済とはいえ、80〜100℃前後の乾燥でも、金属
塩の種類によっては充分に一次粒子として収縮・凝集粒
子となり、ある一定の吸・脱着を起こす空隙(隙間)が
幾らか作製されている。
【0021】また、処理温度の上限は、金属の水酸化
物、硫化物の種類によって異なるが、1000℃以下と
することが好ましい。これは、本発明で用いる金属の水
酸化物又は硫化物は、900℃〜1100℃あたりで粒
子全体が溶融し始め、吸・脱着のための隙間がなくな
り、吸・脱着機能を発揮しなくなり始めるためである。
溶融しない程度の短時間で処理することも可能ではある
が、時間の制御や装置の耐熱仕様を考えると不経済であ
るという理由による。なお、熱処理によって水酸化物が
酸化物に変化しても吸・放湿性が示されるが、このと
き、金属酸化物特有の機能、例えばTiO2 による光触
媒作用、CoOの触媒作用、Fe23 のフェライト電
磁吸収作用等を併せ持つことも当然期待できる。
【0022】本発明のガス吸着・脱着性材料を適用して
吸・脱着するガスとしては、水蒸気やアルゴンなどの不
活性ガスや、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドな
どの有機ガスなどが考えられる。しかし、硫化水素(H
2 S)、亜硫酸ガス(SO2)、塩素ガス(Cl2 )、
アンモニアガス等の反応性ガスなどは化学反応を起こす
ものであり、好ましくない。また、吸・脱着するガスの
分子の大きさと細孔のの大きさの関係は既に述べた通り
であるが、吸・脱着するガスの分子の大きさが大きくな
ると、必要とされる細孔径(隙間の大きさ)も大きくな
る。例えば、水の分子直径0.3nm程度の場合は2〜
20nm程度、好ましくは2〜15nmの細孔径、トル
エンの場合は4〜25nm程度の細孔径が好ましい。
【0023】以上のように、本発明によれば、金属水酸
化物又は金属硫化物の分子集合体、好ましくはより均一
な沈殿粒子を、その金属塩の種類や特に熱処理温度を変
えることにより、細孔(隙間)の大きさを制御できる。
従って、所望の吸・脱着性を有するガス吸着・脱着性材
料が提供され、しかもその吸・脱着の特性を製造条件に
よって制御することができる。また、得られるガス吸着
・脱着性材料は、粉末としてそのまま使うことができる
他、適当なバインダー等の硬化性材料や補強材等を混合
し、成形して顆粒、フィルム、シート材、板材等の任意
の形状に成形したり、コーティング材などに混合しても
よい。しかも、これらは何ら外部からのエネルギーを用
いずにガスの吸・脱着材として使用できる。
【0024】上記硬化性材料としては、メラミン樹脂、
フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニ
ル樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料や、α、β、γ型
半水石膏、無水石膏、二水和石膏等の石膏、普通ポルト
ランドセメント、アルミナセメント、スラグセメント等
のセメント、高炉水砕スラグとアルカリ刺激剤との混合
物、モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土類などの
水硬性物質が挙げられ、これらを単独で又は2種以上混
合して用いることができる。本発明のガス吸着・脱着性
材料と硬化性材料の混合割合は、ガス吸着・脱着性材料
100重量部当たり、硬化性材料を約1〜100重量
部、好ましくは約2〜100重量部が適当である。
【0025】さらに、上記ガス吸着・脱着性材料と硬化
性材料の混合物には、それを硬化してなる硬化体又は成
形体の機械的強度、防火性、耐火性等の向上をはかる目
的で、無機質繊維、有機質繊維等の補強材や、難燃剤等
の添加剤を加えても良いことは勿論である。無機質繊維
としては、ロックウール、セラミックウール、硝子繊
維、炭素繊維等が例示され、有機質繊維としては、セル
ロース、ポリアミド、ポリオレフィン等が例示される。
また、繊維成分は、ランダム状の他、例えば不織布、ネ
ット、繊維束等の形態で使用することもできる。
【0026】前記ガス吸着・脱着性材料と硬化性材料を
含む混合物は、例えばコンクリート等の基板に塗布後、
硬化させて使用することもできるが、調湿機能やガス吸
着機能を充分発揮させるためには、適当な型に流し込ん
で硬化させ使用することが好ましい。用いる硬化性材料
によっても異なるが、一般に、硬化時間は10分〜72
時間程度、硬化温度は4〜80℃程度である。また、上
記混合物を、例えば押出成形機、真空プレス機等を使用
し、押出成形したり、あるいは硬化性材料によってはさ
らに湿潤養生硬化して使用してもよい。この場合の湿潤
養生硬化は、通常、4〜200℃程度の温度で飽和水蒸
気圧下、5〜48時間の範囲で行われるが、水蒸気を用
いてオートクレーブ処理を行ってもよい。
【0027】
【実施例】以下、実施例及び比較例を示して本発明の効
果について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に
限定されるものでないことはもとよりである。
【0028】実施例1 硫酸亜鉛・7水塩50gを純水200mlに溶解し、こ
の溶液に水酸化ナトリウム水溶液をpH7になるまで徐
々に加えていき、水酸化亜鉛の白色の沈殿物を生成し
た。このとき、水酸化ナトリウムとして約11g加え
た。この沈殿物を濾布にとり水洗した。この操作を3回
繰り返し、次いでフィルタプレスで脱水し、含水率50
%とした。得られた生成物をX線回折装置で評価したと
ころ、非晶質であった。これを50℃又は70℃で乾燥
し、あるいはさらに300℃、500℃、700℃又は
900℃で熱処理し、得られた水酸化亜鉛粉末の水蒸気
の吸・脱着特性を日本ベル社製のベルソープで測定し
た。表1に、相対湿度20〜90%での水蒸気の吸着量
Aと脱着量B、急激に吸着する相対湿度C、及び急激に
脱着する相対湿度Dを示す。(なお、上記記号A〜Dの
意味は後掲する各表においても同様である。)また、得
られた水酸化亜鉛粉末の平衡吸着・脱着線図を図8に示
す。
【0029】
【表1】 表1及び図8に示されるように、水酸化亜鉛では70℃
以下の低温乾燥よりも高温熱処理されたものの方が水蒸
気吸着量がはるかに大きくなることがわかる。また、9
00℃で熱処理されたものは、全く吸・放湿しない。さ
らに、熱処理温度によって、急激に吸着する相対湿度も
変ってくることがわかる。なお、表1において、記号
「−」は、対応する物性がないことを示す(後掲する各
表においても同様)。
【0030】実施例2 前記実施例1において、硫酸亜鉛に代えて硫酸アルミニ
ウムを用い、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。pH
3あたりから水酸化アルミニウムの沈殿が生じ、pH7
となった時点で水酸化ナトリウム水溶液の添加を止め
た。その後、実施例1と同様に水洗処理をし、沈殿物を
得た。この沈殿物は、X線回折の結果、非晶質であっ
た。得られた沈殿物を100℃、300℃、600℃、
900℃又は1100℃で熱処理し、水蒸気の吸・脱着
特性を実施例1と同様に測定した。また、得られた水酸
化アルミニウム粉末の細孔径分布を測定した。細孔径分
布は、カルロエルバ社製ソープトマチックを用いて測定
した。得られた水酸化アルミニウム粉末の相対湿度20
〜90%での水蒸気の吸着量と脱着量、急激に吸着する
相対湿度及び急激に脱着する相対湿度、並びに平均細孔
径を表2に示す。また、細孔径分布を図9に示す。
【0031】
【表2】 表2に示されるように、非晶質水酸化アルミニウムの場
合も、ある程度の高温(500〜900℃程度)で熱処
理されたものが特に優れた水蒸気の吸・脱着特性を示
す。また、300℃程度の熱処理でも、約20%〜90
%の相対湿度で約20%の吸湿量があり、比較的良好で
ある。300℃、600℃、900℃と熱処理温度が上
がるに従い、急激に吸着する相対湿度が高相対湿度側に
移ることがわかる。また、平均細孔径も、熱処理温度が
高温になるに従って大きな平均細孔径に変化しており、
平均細孔径と急激に吸・脱着を開始する相対湿度の間に
関連性があることがわかる。
【0032】実施例3 前記実施例2において、熱処理温度600℃で得られた
水酸化アルミニウム粉末試料の水蒸気の吸・脱着特性
を、実施例1と同様の方法で4回繰り返し測定した。そ
の結果を表3に示す。
【表3】 表3に示されるように、若干のばらつきはあるものの、
繰り返し用いても物理的な吸着であるため性能の低下は
ないことがわかる。
【0033】比較例1 熱処理していない結晶性水酸化アルミニウム(ギブサイ
ト)を100℃で2時間熱処理し、これと実施例2の1
00℃で熱処理した水酸化アルミニウム粉末と比較し
た。その結果を表4に示す。
【表4】 表4に示されるように、結晶性水酸化アルミニウムは1
00℃で熱処理しても殆ど吸・放湿特性はなく、結晶性
水酸化アルミニウムと非晶質水酸化アルミニウムとは、
水蒸気の吸・脱着の機構が全く異なると考えられる。
【0034】実施例4 前記実施例1において、金属塩の種類や中和剤(アルカ
リ水溶液)の種類を表5に示すものに変える以外、実施
例1と同様の中和、水洗、脱水処理をし、各種の水酸化
物を得て、表5に示す温度で熱処理した。
【表5】
【0035】得られた各粉末試料の相対湿度20〜90
%での水蒸気の吸・脱着特性について、実施例1と同様
に測定した。その結果を表6に示す。また、X線回折装
置で測定した熱処理後の結晶構造も併せて示す。
【表6】 表6に示されるように、用いる金属塩によらず、種々の
水蒸気の吸・脱着特性が得られることがわかる。また、
熱処理温度によって金属の酸化物となっているものがあ
ることもわかる。
【0036】比較例2 前記実施例1において、金属塩として硝酸銀(AgNO
3 )を用いる以外、実施例1と同様にNaOHによる中
和、水洗、脱水し、表7に示す温度で乾燥又は熱処理を
行った。中和処理の時、前記各実施例のものと比べて目
視でも沈殿粒子は大きく、早く沈降して、上澄みと沈殿
物が簡単に分離できた。(前記実施例1〜4におけるA
l,Zn,Fe,Tiの水酸化物では、微細なスラリー
状のものであった。) 得られた各粉末試料の相対湿度20〜90%での水蒸気
の吸・脱着特性について、実施例1と同様に測定した。
その結果を表7に示す。
【表7】 表7に示されるように、原子番号の大きなAgの塩では
水蒸気の吸・脱着特性を示さなかった。
【0037】実施例5 前記実施例1における水酸化ナトリウム水溶液に代えて
硫化ナトリウム水溶液を用いた。硫酸亜鉛0.5モル/
l水溶液500mlに対し、硫化ナトリウム0.5モル
/l水溶液を500ml加えた。得られた硫化亜鉛の沈
殿物を実施例1と同様に水洗、脱水し、表8に示す温度
で乾燥又は熱処理を行った。得られた硫化亜鉛粉末の相
対湿度20〜90%での水蒸気の吸・脱着特性を実施例
1と同様に測定した。その結果を表8に示す。
【表8】
【0038】実施例6 前記実施例2で得られた水酸化アルミニウムの300
℃、600℃及び900℃での熱処理品と、実施例4で
得られた水酸化チタンの500℃熱処理品を用い、ベル
ソープを用いてトルエンの吸・脱着特性を評価した。そ
の結果を表9に示す。
【表9】 表9に示されるように、トルエンの吸・脱着特性は、水
蒸気の吸・脱着と比べて、やや全体に吸・脱着量は少な
いが、傾向としては同じ挙動を示す。
【0039】実施例7 前記実施例2で得られた水酸化アルミニウムの600℃
での熱処理品10gと、水蒸気をよく吸・脱着するとい
われる稚内珪藻土を10gとり、容量8リットルのデシ
ケータにそれぞれ入れ、同時にこのデシケータにホルム
アルデヒドを入れ、ホルムアルデヒド雰囲気濃度を約3
0ppmに調整し、経過時間に伴うデシケータ内のホル
ムアルデヒド濃度の変化を測定し、吸着の様子を評価し
た。ホルムアルデヒドの濃度の経時変化を図10に示
す。稚内珪藻土は僅かにホルムアルデヒドを吸着しただ
けであったが、水酸化アルミニウムの600℃熱処理品
は急速にホルムアルデヒドを吸着したことがわかる。
【0040】実施例8 工業的な例としてアルミサッシの表面処理工程(AlM
gSi系合金(A6063)を水酸化ナトリウムでエッ
チングし、硫酸浴中で陽極酸化し、硫酸ニッケルなどの
金属塩で着色する工程)における水洗排液を水酸化ナト
リウムで中和し、含まれるAl3+、Mg2+、Ni2+等を
金属水酸化物のスラッジとしたもの(主成分は水酸化ア
ルミニウムで、他にMg、Ni、Si、SO4 を合計数
%含む)を原料として、これを水洗、脱水した後、10
0℃、300℃、600℃又は900℃で熱処理した。
得られた粉末の相対湿度20〜90%の水蒸気の吸・脱
着特性を実施例1と同様に測定した。その結果を表10
に示す。
【表10】 実施例2の場合に比べて水蒸気の吸・脱着曲線の立上り
の急激性は若干緩くなったが、ほぼ同じ結果が得られ
た。
【0041】実施例9 前記実施例8で得られた粉末に、バインダ−としてポリ
ビニルアルコ−ル(クラレ社製ポバ−ル#217)を2
%、又はセメントを10〜30%加え、球状又はブロッ
ク状に成形して同様に熱処理したものは、バインダ−の
添加分だけ若干の性能の低下が見られるものの、ほぼ同
じ水蒸気の吸・脱着特性を示し、形状を付与することが
できた。
【0042】実施例10 前記実施例8で得られたスラッジを500℃で熱処理し
た粉末を8g採り、温度25℃、相対湿度90%の空気
が満たしてある2.4リットルのデシケ−タに入れ、同
時に温湿度計を入れて、すぐに容器を密閉し、全体をプ
ログラム運転の可能な恒温槽に入れ、24時間で25℃
より5℃まで下降して25℃に戻る温度変化を3サイク
ル与え、次に24時間で25℃より45℃まで上昇して
25℃に戻る温度変化を3サイクル与えた。その時の温
度変化サイクルとデシケ−タ内の湿度変化を図11に示
す。また、スラッジを500℃で熱処理した粉末試料の
吸・脱着特性を図12に示す。このとき、粉末を入れな
いブランクについても同時に評価した。ブランクでは、
当然温度の上昇・下降に伴う湿度変化が大きかった。こ
れに対して、粉末を入れたデシケータ内では、図12に
示す通り、この粉末は相対湿度60〜80%で急激に放
湿し、40〜50%程度でもまだ放湿する傾向にあるた
め、デシケータ内を一定湿度に保つように働く傾向がみ
られ、デシケータ内は常に40〜50%程度の湿度に保
たれていた。
【0043】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、金属水
酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子、好ま
しくはより均一な沈殿粒子を、その金属塩の種類や特に
熱処理温度を変えることにより、細孔(隙間)の大きさ
を制御できる。従って、ある蒸気圧(相対湿度)で急激
なガスの吸着又は脱着が行え、また、その吸着及び/又
は脱着の開始蒸気圧を任意に調整できる、所望の吸・脱
着性を有するガス吸着・脱着性材料が提供され、しかも
その吸・脱着の特性を製造条件によって制御することが
できる。また、本発明のガス吸着・脱着性材料は、物理
的にガスを吸・脱着するものであるため、不可逆的な化
学吸着と異なり、繰り返し利用することができる。さら
に、本発明の方法によれば、このような優れたガス吸着
・脱着性を有する材料を、通常の大気圧雰囲気中での熱
処理により生産性良く、かつ低コストで製造できる。従
って、本発明によれば、例えば、カビ、ダニの発生や繁
殖を防ぎ、人間に快適な一定湿度範囲の空間を保つ内装
材、内壁材、天井材等の調湿材、結露防止剤、除湿剤、
除水剤、梱包や菓子袋などへの適湿コントロール剤、住
環境や収納ケースの不快又は有害なガスの吸着剤やフィ
ルターなど、種々の用途に用いることができるガス吸着
・脱着性製品を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶性水酸化アルミニウム粉末を600℃、
0.1気圧の減圧雰囲気下で熱処理して得られるアルミ
ナ粉末の平衡吸着・脱着線図である。
【図2】結晶性水酸化アルミニウム粉末を600℃、
0.1気圧の減圧雰囲気下で熱処理して得られるアルミ
ナ粉末の細孔径分布図である。
【図3】水酸化アルミニウムの沈殿の集合体粒子の構造
を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図4】水酸化アルミニウムの沈殿物を500℃で熱処
理して得られた粉末粒子の構造を示す透過電子顕微鏡写
真である。
【図5】図4に示す粉末粒子の構造を倍率を拡大して示
す透過電子顕微鏡写真である。
【図6】水酸化アルミニウムの沈殿物を900℃で熱処
理して得られた粉末粒子の構造を示す透過電子顕微鏡写
真である。
【図7】水酸化アルミニウムの沈殿物を1300℃で熱
処理して得られた粉末粒子の構造を示す透過電子顕微鏡
写真である。
【図8】実施例1において水酸化亜鉛沈殿物を熱処理し
て得られた粉末試料の平衡吸着・脱着線図である。
【図9】実施例2において水酸化アルミニウム沈殿物を
熱処理して得られた粉末試料の細孔径分布図である。
【図10】実施例7で用いた粉末試料の吸着によるホル
ムアルデヒド濃度の経時変化を示すグラフである。
【図11】実施例10において粉末試料に付加した温度
サイクルとデシケータ内の湿度変化を示すグラフであ
る。
【図12】実施例10においてスラッジを500℃で熱
処理して得られた粉末試料の平衡吸着・脱着線図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福島 恭子 富山県黒部市天神新115 (72)発明者 赤池 一元 千葉県市川市真間1−16−11 (72)発明者 芝崎 靖雄 愛知県名古屋市熱田区大宝2−4 (72)発明者 渡村 信治 愛知県名古屋市千種区南ケ丘1−7−12 Fターム(参考) 4G066 AA12B AA15B AA16B AA17B AA18A AA18B AA20B AA21B AA23B AA24B AA25B AA26B AA27B AA46B AA47A BA23 BA24 BA33 CA02 CA04 CA43 DA03 FA05 FA22 FA25

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の
    分子集合体粒子の乾燥粉末又は熱処理粉末からなり、粒
    子間に微細な隙間が形成されていることを特徴とするガ
    ス吸着・脱着性材料。
  2. 【請求項2】 前記金属水酸化物又は金属硫化物が、M
    g,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,
    Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びM
    oよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の水酸
    化物又は硫化物であることを特徴とする請求項1に記載
    のガス吸着・脱着性材料。
  3. 【請求項3】 金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の
    分子集合体粒子を乾燥又は熱処理することを特徴とする
    ガス吸着・脱着性材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記金属水酸化物又は金属硫化物が、M
    g,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,
    Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びM
    oよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の水酸
    化物又は硫化物であることを特徴とする請求項3に記載
    の方法。
  5. 【請求項5】 金属塩水溶液に、酸又はアルカリ水溶液
    を加えるか、あるいはS2-イオンを含む溶液を加え、金
    属水酸化物又は金属硫化物の非晶質粒子として沈殿さ
    せ、これを乾燥又は熱処理することを特徴とするガス吸
    着・脱着性材料の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記金属塩水溶液が、Mg,Al,C
    a,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,
    Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びMoよりなる群
    から選ばれた少なくとも1種の金属の塩を含む水溶液で
    あることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記金属水酸化物又は金属硫化物が単分
    子の集合体として凝集・沈殿することを特徴とする請求
    項5又は6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記乾燥又は熱処理を80〜1000℃
    の温度範囲で行うことを特徴とする請求項3乃至7のい
    ずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の
    分子集合体粒子の乾燥粉末又は熱処理粉末からなるガス
    吸着・脱着性材料と、硬化性材料を含む混合物を成形し
    てなるガス吸着・脱着性成形品。
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