JP2000173450A - 電子放出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法 - Google Patents

電子放出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法

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JP2000173450A
JP2000173450A JP34433498A JP34433498A JP2000173450A JP 2000173450 A JP2000173450 A JP 2000173450A JP 34433498 A JP34433498 A JP 34433498A JP 34433498 A JP34433498 A JP 34433498A JP 2000173450 A JP2000173450 A JP 2000173450A
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electron
voltage
gas
forming
emitting device
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Makoto Kojima
誠 小嶋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活性化工程に要する時間を短縮でき、電子放
出量や電子放出効率の高い電子放出素子を得られる表面
伝導型電子放出素子の製造方法を提供する。 【解決手段】 基体上に対向して配置された一対の電極
間を、電気的に接続するように配された導電性薄膜の一
部に間隙を形成する工程と、少なくとも、間隙内の基体
上に導電性薄膜と電気的に接続した炭素を有する膜を形
成する工程を有し、炭素を有する膜を形成する工程が、
基体を加熱しながら、有機物質のガスと不活性ガスとを
含むガスを、少なくとも間隙に接触させた状態で、一対
の電極に電圧を印加する工程を含むことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面伝導型電子放
出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類
のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放
出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/金
属型(以下、「MIM型」という。)や表面伝導型電子
放出素子等がある。FE型の例としては、W.P.Dyke &
W.W.Dolan,“Field Emission”,Advance in Electoron
Physics,8,89(1956)、あるいは、C.A.Spindt,“Physica
l Properties of Thin-Film Field Emission Cathodes
with Molybdenium Cones”,J.Apply.Phys.,47,5248(197
6)等に開示されたものが知られている。MIM型の例と
してはC.A.Mead,“Operation of Tunnel-Emission Devi
ces”,J.Apply.Phys.,32,646(1961)等に開示されたもの
が知られている。表面伝導型電子放出素子型の例として
は、M.I.Elinson,Recio Eng.Electron Phys.,10,1290(1
965)等に開示されたものがある。表面伝導型電子放出素
子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行
に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用
するものである。この表面伝導型電子放出素子として
は、前記エリンソン等によるSnO2 薄膜を用いたも
の、Au薄膜によるもの[G.Dittmer:“Thin Solid Film
s”,9,317(1972)]、In2 3 /SnO2 薄膜によるも
の[M.Hartwell and C.G.Fonstad,“IEEE Trans.ED Con
f.”519(1975)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久
他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)]等
が報告されている。これらの表面伝導型電子放出素子の
典型的な例として前述のM.ハートウェルの素子構成を
図19に模式的に示す。同図において1は基板である。
4は導電性薄膜で、H型形状のパターンに、スパッタで
形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォ
ーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成
される。尚、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1m
m、W′は、0.1mmに設定されている。従来、これ
らの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行
う前に導電性薄膜4を予め通電フォーミングと呼ばれる
通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的で
あった。即ち、通電フォーミングとは前記導電性薄膜4
の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧
例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜を局所的
に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状
態にした電子放出部5を形成することである。尚、電子
放出部5は導電性薄膜4の一部に亀裂が発生しその亀裂
付近から電子放出が行われる。前記通電フォーミング処
理をした表面伝導型電子放出素子は、上述の導電性薄膜
4に電圧を印加し、素子に電流を流すことにより、上述
電子放出部5より電子を放出せしめるものである。
【0003】上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が
単純で製造も容易であることから、大面積にわたり多数
素子を配列形成できる利点がある。そこで、この特徴を
生かせるようないろいろな応用が研究されている。例え
ば、荷電ビーム源、表示装置等が挙げられる。多数の表
面伝導型電子放出素子を配列形成した例としては、後述
する様に、並列に表面伝導型電子放出素子を配列し、個
々の素子の両端を配線(共通配線とも呼ぶ)で、それぞ
れ結線した行を多数行配列した電子源があげられる(例
えば、特開昭64−031332号公報、特開平1−2
83749号公報、特開平2−257552号公報
等)。また、特に表示装置等の画像形成装置において
は、近年、液晶を用いた平板型表示装置が、CRTに替
わって、普及してきたが、自発光型でないため、バック
ライトを持たなければならない等の問題点があり、自発
光型の表示装置の開発が、望まれてきた。自発光型表示
装置としては、表面伝導型電子放出素子を多数配置した
電子源と電子源より放出された電子によって、可視光を
発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表示装置である画
像形成装置が、あげられる(例えば、米国特許第506
6883号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】電子放出特性を改善す
るため、後述するように「活性化」と称する処理を行
い、上記亀裂を構成する間隙内及びその近傍の導電性薄
膜上に、炭素膜(カーボン膜)を形成する場合がある。
この工程の1つとしては、有機物質を含む雰囲気中で、
素子にパルス電圧を印加し、炭素を有する間隙部及びそ
の近傍の導電性薄膜上に堆積させる導電性薄膜と電気的
に接続させる方法がある。
【0005】しかしながら、上記活性化工程では高真空
の工程を必要とし、所望の高真空に達するまでに時間を
要していたうえ、活性化における反応スピードを制御す
る手段がなかったため、活性化に要する時間も長くなる
場合があった。
【0006】本発明は、活性化工程において高真空を必
要としない表面伝導型電子放出素子及び電子源の製造方
法を提供することを目的とする。
【0007】また、本発明は、活性化工程に要する時間
を短縮でき、電子放出量や電子放出効率の高い電子放出
素子を得られる表面伝導型電子放出素子及び電子源の製
造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による電子放出素
子の製造方法は、基体上に対向して配置された一対の電
極間を、電気的に接続するように配された導電性薄膜の
一部に間隙を形成する工程と、少なくとも、該間隙内の
該基体上に該導電性薄膜と電気的に接続した炭素を有す
る膜を形成する工程を有し、該炭素を有する膜を形成す
る工程が、該基体を加熱しながら、有機物質のガスと不
活性ガスとを含むガスを、少なくとも該間隙に接触させ
た状態で、該一対の電極に電圧を印加する工程を含むこ
とを特徴とする。
【0009】また、本発明による電子放出素子の製造方
法は、上記の電子放出素子の製造方法において、前記有
機物質のガスと不活性ガスとを含むガスが、粘性流状態
であることを特徴とする。
【0010】更に、本発明による電子放出素子の製造方
法は、上記の電子放出素子の製造方法において、前記有
機物質のガスと不活性ガスとを含むガスの圧力が、大気
圧に概略等しいことを特徴とする。
【0011】本発明による電子源の製造方法は、基体上
に複数の電子放出素子を配列形成した電子源の製造方法
であって、該電子放出素子が上記の製造方法により製造
されることを特徴とする。
【0012】本発明による画像形成装置の製造方法は、
電子源と、画像形成部材とを有する画像形成装置の製造
方法であって、該電子源が上記の製造方法により製造さ
れることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態による製造方法
によって得られる表面伝導型電子放出素子の基本的構成
には大別して、平面型及び垂直型の2つがある。まず、
平面型表面伝導型電子放出素子について説明する。図3
は、本発明を適用可能な平面型表面伝導型電子放出素子
の構成を示す模式図であり、図3(a)は平面図、図3
(b)は断面図である。図3において1は基板、2と3
は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。
基板1としては、石英ガラス、Na等の不純物含有量を
減少したガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法
等により形成したSiO 2 を積層したガラス基板及びア
ルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることが
できる。対向する素子電極2,3の材料としては、一般
的な導体材料を用いることができる。これは例えばN
i,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,
Pd等の金属或は合金及びPd,Ag,Au,Ru
2 ,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等か
ら構成される印刷導体、In2 3 −SnO2 等の透明
導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料等から適宜
選択することができる。素子電極間隔L、素子電極長さ
W、導電性薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮
して、設計される。素子電極間隔Lは、好ましく、数百
nmから数百μmの範囲とすることができ、より好まし
くは、数μmから数十μmの範囲とすることができる。
素子電極長さWは、電極抵抗値、電子放出特性を考慮し
て、数μmから数百μmの範囲とすることができる。素
子電極2,3の膜厚dは、数十nmから数μmの範囲と
することができる。尚、図3に示した構成だけでなく、
基板1上に、導電性薄膜4、対向する素子電極2,3の
順に積層した構成とすることもできる。
【0014】導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を
得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが
好ましい。その膜厚は、素子電極2,3へのステップカ
バレージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォ
ーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は
0.1nmの数倍から数百nmの範囲とするのが好まし
く、より好ましくは1nmより50nmの範囲とするの
が良い。そのシート抵抗値Rsは、102から107Ω/
□の値である。本願明細書において、フォーミング処理
については、通電処理を例に挙げて説明するが、フォー
ミング処理はこれに限られるものではなく、膜に間隙8
を生じさせて高抵抗状態を形成する処理を包含するもの
である。
【0015】導電性薄膜4を構成する材料は、Pd,P
t,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,F
e,Zn,Sn,Ta,W,Pd等の金属、PdO,S
nO2,In2 3 ,PbO,Sb2 3 等の酸化物、
HfB2 ,ZrB2 ,LaB6,CeB6 ,YB4 ,G
dB4 等の硼化物、TiC,ZrC,HfC,Ta,
C,SiC,WC等の炭化物、TiN,ZrN,HfN
等の窒化物、Si,Ge等の半導体、カーボン等の中か
ら適宜選択される。
【0016】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に
分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるい
は重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体
として島状構造を形成している場合も含む)をとってい
る。微粒子の粒径は、0.1nmの数倍から数百nmの
範囲、好ましくは、1nmから20nmの範囲である。
なお、本明細書では頻繁に「微粒子」という言葉を用い
るので、その意味について説明する。小さな粒子を「微
粒子」と呼び、これよりも小さなものを「超微粒子」と
呼ぶ。「超微粒子」よりもさらに小さく原子の数が数百
個程度以下のものを「クラスター」と呼ぶことは広く行
われている。しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。「実験物理学講座14 表面・微粒
子」(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発
行)では次のように記述されている。「本稿で微粒子と
言うときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から1
0nm程度までとし、特に超微粒子というときは粒径が
10nm程度から2〜3nm程度までを意味することに
する。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけ
っして厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒
子を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場
合はクラスターと呼ぶ。」(195ページ22〜26行
目)付言すると、新技術開発事業団の“林・超微粒子プ
ロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径の下限は
さらに小さく、次のようなものであった。「創造科学技
術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(1981〜1
986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1〜100
nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra fine particl
e)と呼ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ
100〜108個くらいの原子の集合体という事にな
る。原子の尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子であ
る。」(「超微粒子−創造科学技術−」株主税、上田良
二、田崎明 編;三田出版 1988年2ページ1〜4
行目)「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子
が数個〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラ
スターと呼ばれる」(同書2ページ12〜13行目)上
記のような一般的な呼び方をふまえて、本明細書におい
て「微粒子」とは多数の原子・分子の集合体で、粒径の
下限は0.1nmの数倍から1nm程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0017】次に、垂直型表面伝導型電子放出素子につ
いて説明する。図4は、本発明の表面伝導型電子放出素
子を適用できる垂直型表面伝導型電子放出素子の一例を
示す模式図である。
【0018】図4においては、図3に示した部位と同じ
部位には図3に付した符号と同一の符号を付している。
21は、段差形成部である。基板1、素子電極2及び
3、導電性薄膜4、電子放出部5は、前述した平面型表
面伝導型電子放出素子の場合と同様の材料で構成するこ
とができる。段差形成部21は、真空蒸着法、印刷法、
スパッタ法等で形成されたSiO2 等の絶縁性材料で構
成することができる。段差形成部21の膜厚は、先に述
べた平面型表面伝導型電子放出素子の素子電極間隔Lに
対応し、数百nmから数十μmの範囲とすることができ
る。この膜厚は、段差形成部の製法、及び、素子電極間
に印加する電圧を考慮して設定されるが、数十nmから
数μmの範囲が好ましい。
【0019】導電性薄膜4は、素子電極2及び3と段差
形成部21作成後に、該素子電極2,3の上に積層され
る。電子放出部5は、図4においては、段差形成部21
に形成されているが、作成条件、フォーミング条件等に
依存し、形状、位置ともこれに限られるものでない。
【0020】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図5に模式的
に示す。
【0021】以下、図3及び図5を参照しながら製造方
法の一例について説明する。図5においても、図3に示
した部位と同じ部位には図3に付した符号と同一の符号
を付している。
【0022】1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等
を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等によ
り素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー
技術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する(図
5(a))。
【0023】2)素子電極2,3を設けた基板1に、有
機金属溶液を塗布して、有機金属薄膜を形成する。有機
金属溶液には、前述の導電性膜4の材料の金属を主元素
とする有機金属化合物の溶液を用いることができる。有
機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング
等によりパターニングし、導電性薄膜4を形成する(図
5(b))。ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて
説明したが、導電性薄膜4の形成法はこれに限られるも
のでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積
法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用
いることもできる。
【0024】3)つづいて、フォーミング工程を施す。
このフォーミング工程の方法の一例として通電処理によ
る方法を説明する。素子電極2,3間に、不図示の電源
を用いて、通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造
の変化した部位8が形成される(図5(c))。通電フ
ォーミングによれば導電性薄膜4に局所的に破壊、変形
もしくは変質等の構造の変化した部位である間隙8が形
成される。通電フォーミングの電圧波形の例を図6に示
す。
【0025】電圧波形は、パルス波形が、好ましい。こ
れにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印
加する図6(a)に示した手法とパルス波高値を増加さ
せながら、電圧パルスを印加する図6(b)に示した手
法がある。
【0026】図6aにおけるT1 及びT2 は電圧波形の
パルス幅とパルス間隔である。通常T1 は1μsec〜
10msec、T2 は、10μsec〜10msecの
範囲に設定される。三角波の波高値(通電フォーミング
時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子形態に応
じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、
数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波
に限定されるものではなく、矩形波など所望の波形を採
用することができる。
【0027】図6(b)におけるT1 及びT2 は、図6
(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の
波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば
0.1V/ステップ程度づつ、増加させることができ
る。通電フォーミング処理の終了は、パルス間隔T2
に、導電性薄膜2を局所的に破壊、変形しない程度の電
圧を印加し、電流を測定して検知することができる。例
えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測
定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時、
通電フォーミングを終了させる。
【0028】4)フォーミングを終えた素子には活性化
工程と呼ばれる処理が施される。活性化工程とは、フォ
ーミングで形成した間隙8内の基板上及び間隙8近傍の
導電性薄膜4上に炭素を有する膜10を形成する工程で
あり、この工程により、素子電流If、放出電流Ie
が、著しく変化する工程である。活性化工程はHe、N
e、Ar等の不活性ガスに、有機物質のガスを含んだ混
合ガスを少なくとも前記フォーミングで形成した間隙に
接触させた状態(例えば、混合ガス中に素子を配置した
状態)で、通電フォーミングと同様に、パルス電圧の印
加を繰り返すことで行うことができる。適当な有機物質
としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化
水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド
類、ケトン類、フェノール、カルボン酸、スルホン酸等
の有機酸類等を挙げることが出来、具体的には、メタ
ン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭
化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどCn
2n、Cnn 等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベ
ンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムア
ルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチル
ケトン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等ある
いはこれらの混合物が使用できる。
【0029】混合ガスの導入圧力は、混合ガスを構成す
る気体分子の平均自由工程が、電子放出素子が設置され
た空間内部の代表的寸法値(例えば、真空容器の内径)
に比べて、十分に小さくなる圧力である。これは、所謂
粘性流領域であり、具体的には前述のガス種を用い、真
空容器の内径が数センチメートルから数10センチメー
トル程度の場合、およそ1Pa程度以上の圧力であれ
ば、粘性流領域として扱うことができる。
【0030】粘性流領域の圧力で活性化を行うというこ
とは、従来行われていた高真空下の活性化に比べて、高
真空を必要としない分、工程が簡略になる。また、特に
大気圧程度の圧力で活性化を行うと、活性化のための装
置が簡易な構成の装置で済ませられる、という利点があ
る。
【0031】本発明者らの実験によると、粘性流領域の
圧力下の活性化においては、基板加熱を行うことで、活
性化工程の時間を短縮でき、また、得られた電子放出素
子の電子放出特性が優れていることが判明した。これは
以下のような理由によると思われる。
【0032】粘性流領域の圧力下の活性化においては、
従来行われていた高真空下の活性化に比べて、基板表面
に吸着されているガス分子が多い。それらの吸着分子の
うち、特に水分子が活性化時に前記間隙近傍に存在する
と、有機物質から炭素を有する膜10を形成する反応を
阻害することがわかった。そのため、基板加熱を行わず
に活性化を行うと、長時間の活性化を行っても、十分な
炭素を有する膜が得られなかったり、得られた炭素を有
する膜の結晶性が悪かったりすることで、結果として電
子放出素子の電子放出量や、電子放出効率が低下する場
合がある。基板を加熱すると、これらの活性化を阻害す
る水分子やその他の分子の数が基板表面から減少するた
め、活性化のスピードが速くなり、素子の電子放出特性
が向上する。
【0033】前述してきた活性化工程により、雰囲気中
に存在する有機物質から、炭素を有する膜10がフォー
ミングで形成した間隙8内の基板上及びその近傍の導電
性薄膜上に堆積し、導電性薄膜に電気的に接続されて形
成される。その結果、素子電流If、放出電流Ieが、
著しく変化するようになる。活性化工程の終了判定は、
素子電流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行
う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適
宜設定される。
【0034】上記炭素とは、例えばグラファイト(いわ
ゆるHOPG′,PG(,GC)を包含する、HOPG
はほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が
20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶
粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくな
ったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカ
ーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイト
の微結晶の混合物を指す)であり、炭素を有する膜の膜
厚は、50nm以下の範囲とするのが好ましく、30n
m以下の範囲とすることがより好ましい。
【0035】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空
容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイ
ルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用
しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープ
ションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げる
ことが出来る。前記活性化の工程で、排気装置として油
拡散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生す
るオイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この
成分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の
有機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新
たに堆積しない分圧で1.3×10-6Pa以下が好まし
く、さらには1.3×10-8Pa以下が特に好ましい。
さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を
加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有
機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このとき
の加熱条件は、80〜250℃好ましくは150℃以上
で、できるだけ長時間処理するのが望ましいが、特にこ
の条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、
電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条
件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが
必要で、1×10-5Pa以下が好ましく、さらに1.3
×10-6Pa以下が特に好ましい。
【0036】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を
採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の
堆積を抑制でき、また真空容器や基板などに吸着したH
2O,O2なども除去でき、結果として素子電流If、放
出電流Ieが、安定する。
【0037】上述した工程を経て得られた本発明を適用
可能な電子放出素子の基本特性について図7、図8を参
照しながら説明する。
【0038】図7は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図7においても、図3に示した部
位と同じ部位には図3に付した符号と同一の符号を付し
ている。図7において、55は真空容器であり、56は
排気ポンプである。真空容器55内には電子放出素子が
配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体
であり、2及び3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電
子放出部である。51は、電子放出素子に素子電圧Vf
を印加するための電源、50は素子電極2,3間の導電
性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流
計、54は素子の電子放出部より放出される放出電流I
eを捕捉するためのアノード電極である。53はアノー
ド電極54に電圧を印加するための高圧電源、52は素
子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定す
るための電流計である。一例として、アノード電極の電
圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子
放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定
を行うことができる。
【0039】真空容器55内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータリーポ
ンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ
等からなる超高真空装置系とにより構成されている。こ
こに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、
不図示のヒーターにより加熱できる。従って、この真空
処理装置を用いると、前述の通電フォーミング以降の工
程も行うことができる。
【0040】図8は、図7に示した真空処理装置を用い
て測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧V
fの関係を模式的に示した図である。図8においては、
放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいの
で、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリニア
スケールである。
【0041】図8からも明らかなように、本発明の製造
方法によって得られる表面伝導型電子放出素子は、放出
電流Ieに関して対する三つの特徴的性質を有する。
【0042】即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ、図8中のVth)以上の素子電圧を印加す
ると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧V
th以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つ
まり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vth
を持った非線形素子である。
【0043】(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調
増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御
できる。
【0044】(iii)アノード電極54に捕捉される放出
電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つま
り、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素子電圧
Vfを印加する時間により制御できる。
【0045】以上の説明より理解されるように、本発明
の製造方法によって得られる表面伝導型電子放出素子
は、入力信号に応じて、電子放出特性を容易に制御でき
ることになる。この性質を利用すると複数の電子放出素
子を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面へ
の応用が可能となる。
【0046】図8においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」とい
う。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vf
に対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特
性」という。)を示す場合もある(不図示)。これら特
性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0047】本発明を適用可能な電子放出素子の応用例
について以下に述べる。本発明の製造方法によって得ら
れる表面伝導型電子放出素子の複数個を基板上に配列
し、例えば電子源あるいは、画像形成装置が構成でき
る。
【0048】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電
子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を
多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子から
の電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これ
とは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に
複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電
極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配
された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配
線に共通に接続するものが挙げられる。このようなもの
は所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス
配置について以下に詳述する。
【0049】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述したとおり(i)乃至(iii)の特性
がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子
は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加
するパルス状電圧の波高値と幅で制御できる。一方、し
きい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によ
れば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、
個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信
号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放
出量を制御できる。
【0050】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図9を用いて説明する。図9において、71は電子
源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。
74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。
尚、表面伝導型電子放出素子74は、前述した平面型あ
るいは垂直型のどちらであってもよい。
【0051】m本のX方向配線72は、Dx1,Dx2,
…,Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等
を用いて形成された導電性金属等で構成することができ
る。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向
配線73は、Dy1,Dy2,…,Dynのn本の配線よりな
り、X方向配線72と同様に形成される。これらm本の
X方向配線72とn本のY方向配線73との間には、不
図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分
離している(m,nは、共に正の整数)。
【0052】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配
線72とY方向配線73の端部は、それぞれ外部端子と
して引き出されている。
【0053】表面伝導型電子放出素子74を構成する一
対の電極(不図示)は、m本のX方向配線72とn本の
Y方向配線73と導電性金属等からなる結線75によっ
て電気的に接続されている。
【0054】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例え
ば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極
を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子
電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0055】X方向配線72には、X方向に配列した表
面伝導型電子放出素子74の行を、選択するための走査
信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続され
る。一方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面
伝導型電子放出素子74の各列を入力信号に応じて、変
調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。
各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印
加される走査信号と変調信号の差電圧として供給され
る。
【0056】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0057】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図10及び図1
1を用いて説明する。図10は、画像形成装置の表示パ
ネルの一例を示す模式図であり、図11は、図10の画
像形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図12
は、NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行なうた
めの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0058】図10において、71は電子放出素子を複
数配した電子源基板、81は電子源基板71を固定した
リアプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜8
4とメタルバック85等が形成されたフェースプレート
である。82は、支持枠であり該支持枠82には、リア
プレート81、フェースプレート86が低融点のフリッ
トガラスなどを用いて、接合される。
【0059】74は、図9に示すのと同一の表面伝導型
電子放出素子である。72,73は、表面伝導型電子放
出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY
方向配線である。
【0060】外囲器88は、上述の如く、フェースプレ
ート86、支持枠82、リアプレート81で構成され
る。リアプレート81は主に基板71の強度を補強する
目的で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持
つ場合は別体のリアプレート81は不要とすることがで
きる。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェ
ースプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器8
8を構成しても良い。一方、フェースプレート86、リ
アプレート81間に、スペーサーとよばれる不図示の支
持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度
をもつ外囲器88を構成することもできる。
【0061】図11は、蛍光膜を示す模式図である。蛍
光膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成
することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の
配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリ
クスなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とから
構成することができる。ブラックストライプ、ブラック
マトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要と
なる三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒く
することで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84
における外光反射によるコントラストの低下を抑制する
ことにある。ブラックストライプの材料としては、通常
用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性が
あり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることがで
きる。
【0062】ガラス基板に蛍光体を塗布する方法は、モ
ノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等が採用
できる。蛍光膜84の内面側には、通常メタルバック8
5が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体
の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側へ
鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電子
ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させる
こと、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメー
ジから蛍光体を保護すること等である。メタルバック
は、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理
(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その
後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製でき
る。
【0063】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。
【0064】前述の封着を行う際には、カラーの場合は
各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、
十分な位置合わせが不可欠となる。
【0065】図10に示した画像形成装置の製造方法の
一例を以下に説明する。
【0066】図1はこの工程に用いる装置の概要を示す
模式図である。電子源基板71は、真空チャンバー13
3内に配置され、真空チャンバー133は排気量調整バ
ルブ134を介して排気装置135に接続されている。
排気量調整バルブ134は開閉度を調節することで真空
チャンバー133内部の圧力を制御するためのものであ
る。また真空チャンバー133には、内部の圧力及び雰
囲気中の各成分の分圧を測定するために、圧力計13
6、四重極質量分析器137等が取り付けられている。
該真空チャンバー133内の圧力などを測定し、処理条
件を制御する真空チャンバー133には、さらに必要な
ガスを真空チャンバー内に導入して雰囲気を制御するた
め、ガス導入ライン138が接続されている。該ガス導
入ライン138の他端には導入物質源140が接続され
ており、導入物質がアンプルやボンベ(図1ではボン
ベ)などに入れて貯蔵されている。ガス導入ラインの途
中には、導入物質を導入するレートを制御するための導
入制御手段139が設けられている。該導入量制御手段
としては具体的には、スローリークバルブなど逃す流量
を制御可能なバルブや、マスフローコントローラーなど
が、導入物質の種類に応じて、それぞれ使用が可能であ
る。図1の装置により真空チャンバー133の内部を排
気し、あるいは排気しないであるいはガスは導入しなが
らフォーミングを行う。この際、例えば図15に示すよ
うに、Y方向配線73を共通電極141に接続し、X方
向配線72の内の一つに接続された素子に電源142に
よって、同時に電圧パルスを印加して、フォーミングを
行うことができる。パルスの形状や、処理の終了の判定
などの条件は、個別素子のフォーミングについての既述
の方法に準じて選択すればよい。また、複数のX方向配
線に、位相をずらせたパルスを順次印加(スクロール)
することにより、複数のX方向配線に接続された素子を
まとめてフォーミングする事も可能である。図中143
は電流測定用抵抗を、144は、電流測定用のオシロス
コープを示す。フォーミング終了後、活性化工程を行
う。真空チャンバー133内は、十分に排気した後有機
物質がガス導入ライン138から導入される。あるい
は、排気しないでガスを導入し、これによって真空チャ
ンバー133の内部に残留する不要な成分を置換するこ
とで取り除いても良い。この様にして形成した、有機物
質を含む雰囲気中で、各電子放出素子に電圧を印加する
ことにより、炭素を有する膜がフォーミングで形成され
た間隙8内の基板上及びその近傍の導電性薄膜4上に堆
積し、電子放出量がドラスティックに上昇するのは、個
別素子の場合と同様である。このときの電圧の印加方法
は、上記フォーミングの場合と同様の結線により、一つ
の方向配線につながった素子に、同時の電圧パルスを印
加すればよい。活性化工程においては温調器201によ
って電子源基板71が温度制御され、ガス導入ランイ1
38の周囲に取り付けられた温調器202および、真空
チャンバー133の周囲に取り付けられた温調器203
によってガス温度が制御される。温調器201,20
2,203は加熱だけでなく、冷却する場合もある。ま
た活性化工程時の導入ガス流量制御、および真空チャン
バー133内部の圧力制御は、導入制御手段139およ
び排気量調整バルブ134の開閉度で制御される。
【0067】活性化工程終了後は、電子源基板71は図
10で説明した様に外囲器88中に保持される。その
後、個別素子の場合と同様に、安定化工程を行うことが
好ましい。外囲器88を加熱して、80〜250℃に保
持しながら、イオンポンプ、ソープションポンプなどの
オイルを使用しない排気装置により排気管(不図示)を
通じて排気し、有機物質の十分少ない雰囲気にした後、
排気管をバーナーで熱して溶解させて封じきる。外囲器
88の封止後の圧力を維持するために、ゲッター処理を
行なうこともできる。これは、外囲器88の封止を行う
直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等
を用いた加熱により、外囲器88内の所定の位置(不図
示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する
処理である。ゲッターは通常はBa等が主成分であり、
該蒸着膜の吸着作用により、外囲器88内の雰囲気を維
持するものである。
【0068】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図12を用いて説明する。図12において、
101は画像表示表示パネル、102は走査回路、10
3は制御回路、104はシフトレジスタである。105
はラインメモリ、106は同期信号分離回路、107は
変調信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0069】表示パネル101は、端子Dox1 乃至Dox
m 、端子Doy1 乃至Doyn 、及び高圧端子Hvを介して
外部の電気回路と接続している。端子Dox1 乃至Doxm
には、表示パネル内に設けられている電子源、即ち、M
行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導型電子
放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為の走査
信号が印加される。
【0070】端子Dy1乃至Dynには、前記走査信号によ
り選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子の
出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加される。
高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば10k
Vの直流電圧が供給されるが、これは表面伝導型電子放
出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励起するの
に十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0071】走査回路102について説明する。同回路
は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図
中、S1ないしSmで模式的に示している)ある。各ス
イッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは
0V(グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示
パネル101の端子Dx1ないしDxmと電気的に接続され
る。S1乃至Smの各スイッチング素子は、制御回路1
03が出力する制御信号Tscanに基づいて動作する
ものであり、例えばFETのようなスイッチング素子を
組み合わせることにより構成することができる。
【0072】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子
放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力する
よう設定されている。
【0073】制御回路103は、外部より入力する画像
信号に基づいて適切な表示が行なわれるように各部の動
作を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期
信号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに
基づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよ
びTmryの各制御信号を発生する。
【0074】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝
度信号成分とを分離する為の回路である。同期信号分離
回路106により分離された同期信号は、垂直同期信号
と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上Ts
ync信号として図示した。前記テレビ信号から分離さ
れた画像の輝度信号成分は便宜上DATA信号と表し
た。該DATA信号はシフトレジスタ104に入力され
る。
【0075】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ
104のシフトクロックであるということもでき
る。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータ
は、Id1乃至IdnのN個の並列信号として前記シフ
トレジスタ104より出力される。
【0076】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmryに従
って適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶され
た内容は、I′d1乃至I′dnとして出力され、変調
信号発生器107に入力される。
【0077】変調信号発生器107は、画像データI′
d1乃至I′dnの各々に応じて表面伝導型電子放出素
子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、その
出力信号は、端子Doy1 乃至Doyn を通じて表示パネル
101内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0078】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
があり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出
が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素
子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。こ
のことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、
例えば電子放出閾値以下の電圧を印加しても電子放出は
生じないが、電子放出閾値以上の電圧を印加する場合に
は電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値V
mを変化させる事により出力電子ビームの強度を制御す
ることが可能である。また、パルスの幅Pwを変化させ
ることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御
する事が可能である。従って、入力信号に応じて、電子
放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パル
ス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施する
に際しては、変調信号発生器107として、一定長さの
電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パ
ルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用
いることができる。
【0079】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0080】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものをもアナログ信号式のもの
をも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0081】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには106の出力部にA/D変
換器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ10
5の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、
変調信号発生器107に用いられる回路が若干異なった
ものとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式
の場合、変調信号発生器107には、例えばD/A変換
回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パ
ルス幅変調方式の場合、変調信号発生器107には、例
えば高速の発振器および発振器の出力する波数を計数す
る計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリ
の出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せ
た回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパル
ス幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆
動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加すること
もできる。
【0082】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VOC)を
採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもで
きる。
【0083】このような構成をとり得る本発明の製造方
法によって得られる画像表示装置においては、各電子放
出素子に、容器外端子Dox1 乃至Doxm 、Doy1 乃至D
oynを介して電圧を印加することにより、電子放出が生
ずる。高圧端子Hvを介してメタルバック85、あるい
は透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加
速する。加速された電子は、蛍光膜84に衝突し、発光
が生じて画像が形成される。
【0084】次に、はしご型配置の電子源及び画像形成
装置について図13及び図14を用いて説明する。
【0085】図13は、はしご型配置の電子源の一例を
示す模式図である。図13において、110は電子源基
板、111は電子放出素子である。112、Dx1〜Dx1
0 は、電子放出素子111を接続するための共通配線で
ある。電子放出素子111は、基板110上に、X方向
に並列に複数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。
この素子行が複数個配されて、電子源を構成している。
各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各
素子行を独立に駆動させることができる。即ち、電子ビ
ームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上
の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、電子放
出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の共通配
線Dx2〜Dx9は、例えばDx2,Dx3を同一配線とするこ
ともできる。
【0086】図14は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。120はグリッド電極、121は電子が通過する
ため空孔、122はDox1 ,Dox2 ,…Doxm よりなる
容器外端子である。123は、グリッド電極120と接
続されたG1,G2,…Gnからなる容器外端子、12
4は各素子間の共通配線を同一配線とした電子源基板で
ある。図14においては、図10、図13に示した部位
と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号を
付している。ここに示した画像形成装置と、図10に示
した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違い
は、電子源基板110とフェースプレート86の間にグ
リッド電極120を備えているか否かである。
【0087】図14においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、表面伝導型電子放出素
子から放出された電子ビームを変調するためのものであ
り、はしご型配置の素子行と直交して設けられたストラ
イプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に
対応して1個ずつ円形の開口121が設けられている。
グリッドの形状や設置位置は図14に示したものに限定
されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に
多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導
型電子放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0088】容器外端子122およびグリッド容器外端
子123は、不図示の制御回路と電気的に接続されてい
る。
【0089】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0090】上記の2種類の画像形成装置の構成は、本
発明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の
技術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号
については、NTSC方式を挙げたが入力信号はこれに
限られるものではなく、PAL,SECAM方式など
他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例え
ば、高品位TV)方式をも採用できる。
【0091】本発明の画像形成装置は、テレビジョン放
送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等
の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光
プリンターとしての画像形成装置等としても用いること
ができる。
【0092】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0093】(実施例1)本発明の第一の実施例を説明
する。
【0094】図16は本実施例の電子放出素子の製造方
法を示す図である。
【0095】絶縁性基板1として石英基板を用い、これ
を洗剤、純水および有機溶剤により十分に洗浄を行っ
た。(図16(a)) レジスト材RD−2000Nを2500rpm、40秒
でスピンナー塗布し80℃、25分加熱してプリベーク
した(図16(b))。電極間隔Lは2μm、電極長さ
Wは500μmの素子電極形状に対応するマスクを用い
て密着露光し、RD−2000N用現像液で現像した
(図16(c))。120℃、20分加熱してポストベ
ークした。電極の材料には、ニッケル金属を用いた。抵
抗加熱蒸着機を用いてニッケルを毎秒0.3nmで膜厚
が100nmになるまで蒸着した(図16(d))。ア
セントでリフトオフし、アセトン、イソプロピルアルコ
ール、つづいて酢酸ブチルで洗浄後、乾燥した(図16
(e))。
【0096】Crを全面に蒸着した。(図17(a))
(膜厚40nm) レジスト材AZ1370を2500rpm、30秒スピ
ンナー塗布し、90℃、30分加熱しプリベークした
(図17(b))。
【0097】電子源材料を塗布するパターンを有するマ
スクを用いて露光し(図17(c))、現像液MIF3
12で現像した(図17(d))。120℃、30分加
熱しポストベークした。
【0098】(NH4 )Ce(NO3 6/HCIO4
/H2 O=17g/5cc/100ccの組成の溶液に
30秒浸漬し、クロムをエッチングした(図17
(e))。アセトン中、10分間超音波撹拌してレジス
トを剥離した(図17(f))。
【0099】ccp4230(奥野製薬(株))を80
0rpm、30秒スピンナー塗布し300℃、10分間
焼成し、酸化パラジウム(PdO)微粒子(平均粒径:
7nm)を主体とする微粒子状の導電性薄膜4を形成し
た(図17(g))。
【0100】クロムをリフトオフした(図17
(h))。
【0101】このパターンは、その幅(素子の幅)Wを
300μmとし、素子電極2と3のほぼ中央部に配置し
た。
【0102】また、この導電薄膜4の膜厚は10nm、
シート抵抗値は5×104 Ω/□であった。
【0103】以上のようにして作成された電子放出素子
の構成図を図3に示した。
【0104】次に、素子を図1の製造装置に設置し、真
空ポンプにて排気し、2×10-7torrの真空度に達
した後、素子に素子電圧Vfを印加するための電源(不
図示)より、素子電極間にそれぞれ、電圧を印加し、通
電処理(フォーミング処理)した。(図18(a),
(b))フォーミング処理の電圧波形を図6(b)に示
す。図6(b)中、T1 及びT2 は電圧波形のパルス幅
とパルス間隔であり、本実施例ではT1 を1msec、
2 を10msecとし、三角波ではなく矩形波を用
い、矩形波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は
0.1V/ステップで昇圧し、フォーミング処理を行な
った。また、フォーミング処理中は、同時に、0.1V
の電圧で、T2 間に抵抗測定パルスを挿入し、抵抗を測
定した。尚フォーミング処理の終了は、抵抗測定パルス
での測定値が、約1MΩ以上になった時とし、同時に、
素子への電圧の印加を終了した。それぞれの素子のフォ
ーミング電圧VFは、5.0Vであった。
【0105】以上のようにしてフォーミングまで終了し
た素子について、チャンバー133内に有機ガスを導入
した。有機ガスボンベ151としてはアセチレンをAr
で1%まで既に希釈してあるガスを用い、さらに希釈に
用いる不活性ガスボンベ152としてArガスを用意し
た。ガス導入制御装置139を調整して有機ガスボンベ
151からは10ccm、不活性ガスボンベ152から
は990ccm、全流量が1000ccmになるように
した。すなわち導入ガスに含まれるアセチレンの濃度は
0.01%になるようにした。さらに全圧が1気圧にな
るように排気量調整バルブ134を調整した。この時温
調器201により電子源基板71の制御温度は100
℃,150℃,200℃、それに制御なし(室温)の4
通りの温度において素子電極間に電圧を印加して活性化
を行なった。
【0106】活性化の電圧波形は、波高値は±14V、
パルス幅1msec、パルス間隔10msecの両極の
矩形波(順方向、逆方向等しく印加)を用いた。電圧印
加は素子電流値をモニタしながらおこなわれ、素子電流
値の変化がなくなったときに電圧印加を終了した。図2
に電圧印加時間に対するモニタされた素子電流値の変化
の様子を示す。4通りの制御温度のうち、電子源基板7
1の温度を制御しない(室温)の素子は1時間電圧印加
を行ってもほとんど活性化が進まなかった。電子源基板
71の制御温度によって活性化終了までに要する時間が
違い、高温ほど短時間で活性化工程が終了できることが
わかった。すなわち電子源基板の温度を制御することで
活性化工程に要する時間を短縮できた。
【0107】活性化工程終了後にチャンバー133内の
有機ガスを排気した。
【0108】更に、以下に示す安定化工程を行った。
【0109】素子及び真空装置を200℃10時間加熱
し、真空装置内の真空度を1×10 -8torrとした。
【0110】以上のようにして得られた素子の特性測定
は、図7で示された構成の装置を用いた。
【0111】アノード電極の電圧は1kV、アノード電
極と電子放出素子との距離Hは4mmで測定した。ま
た、真空度1×10-8torrの環境下で測定を行っ
た。駆動は、印加電圧が+14V、パルス幅0.1ms
ec,60Hzの矩形波を用いた。
【0112】30分間エージングを行った後に、活性化
の行えた3種類の素子の素子電流、放出電流、電子放出
効率ηを測定したところ、表1のとおりであった。ガス
の温度が高温ほど放出電流が多く、電子放出効率も高い
素子が得られた。すなわちガスの温度を制御することで
素子特性がコントロールできた。
【0113】
【表1】
【0114】
【発明の効果】以上説明したように、基体上に対向して
配置された一対の電極間を、電気的に接続するように配
された導電性薄膜の一部に間隙を形成する工程と、少な
くとも、該間隙内の該基体上に該導電性薄膜と電気的に
接続した炭素を有する膜を形成する工程を有し、該炭素
を有する膜を形成する工程が、該基体を加熱しながら、
有機物質のガスと不活性ガスとを含むガスを、少なくと
も該間隙に接触させた状態で、該一対の電極に電圧を印
加する工程を含むことを特徴とする電子放出素子の製造
方法を用いることにより、活性化工程に要する時間を短
縮でき、また電子放出量や電子放出効率が大きい電子放
出素子が得られるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方法を
実施するための製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例の活性化工程中にモニタ
された素子電流値の変化を示す図である。
【図3】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
構成を示す模式的平面図及び断面図である。
【図4】本発明を適用可能な垂直型表面伝導型電子放出
素子の構成を示す模式図である。
【図5】図3に示す本発明を適用可能な表面伝導型電子
放出素子の製造方法の1例を示す模式図である。
【図6】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
製造に際して採用できる通電フォーミング処理における
電圧波形の一例を示す模式図である。
【図7】測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示
す模式図である。
【図8】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子に
ついての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vfの
関係の一例を示すグラフである。
【図9】本発明を適用可能な単純マトリクス配置した電
子源の一例を示す模式図である。
【図10】本発明を適用可能な画像形成装置の表示パネ
ルの一例を示す模式図である。
【図11】蛍光膜一例を示す模式図である。
【図12】画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に
応じて表示を行なうための駆動回路の一例を示すブロッ
ク図である。
【図13】本発明を適用可能な梯子配置の電子源の一例
を示す模式図である。
【図14】本発明を適用可能な画像形成装置の表示パネ
ルの一例を示す模式図である。
【図15】本発明の画像形成装置の、フォーミング、活
性化工程のための結線方式を示す模式図である。
【図16】本発明の実施例に係る電子放出素子の素子電
極の製造工程を説明する為の図である。
【図17】本発明の実施例に係る電子放出素子の導電性
薄膜の製造工程を説明する為の図である。
【図18】本発明の実施例に係る電子放出素子の電子放
出部の製造工程を説明する為の図である。
【図19】従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示す
模式図である。
【符号の説明】
1 基板 2,3 素子電極 4 導電性薄膜 5 電子放出部 21 段差形成部 50 素子電極2・3間の導電性薄膜4を流れる素子電
流Ifを測定するための電流計 51 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電
源 52 素子の電子放出部5より放出される放出電流Ie
を測定するための電流計 53 アノード電極54に電圧を印加するための高圧電
源 54 素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを
捕捉するためのアノード電極 55 真空容器 56 排気ポンプ 71 電子源基板 72 X方向配線 73 Y方向配線 74 表面伝導型電子放出素子 75 結線 81 リアプレート 82 支持枠 83 ガラス基板 84 蛍光膜 85 メタルバック 86 フェースプレート 88 外囲器 91 黒色導電材 92 蛍光体 101 表示パネル 102 走査回路 103 制御回路 104 シフトレジスタ 105 ラインメモリ 106 同期信号分離回路 107 変調信号発生器 VxおよびVa 直流電圧源 110 電子源基板 111 電子放出素子 112 Dx1〜Dx10 は、前記電子放出素子を配線する
ための共通配線 120 グリッド電極 121 電子が通過するため空孔 122 Dox1 , Dox2 、…Doxm よりなる容器外端子 123 グリッド電極120と接続されたG1,G2 132 排気管 133 真空チャンバー 134 排気量調整バルブ 135 排気装置 136 圧力計 137 四重極質量分析器 138 ガス導入ランイ 139 導入量制御手段 140 導入物質源 141 共通電極 142 電源 143 電流測定用抵抗 144 オシロスコープ 151 有機ガスボンベ 152 不活性ガスボンベ 201 温調器

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に対向して配置された一対の電極
    間を、電気的に接続するように配された導電性薄膜の一
    部に間隙を形成する工程と、 少なくとも、該間隙内の該基体上に該導電性薄膜と電気
    的に接続した炭素を有する膜を形成する工程を有し、 該炭素を有する膜を形成する工程が、該基体を加熱しな
    がら、有機物質のガスと不活性ガスとを含むガスを、少
    なくとも該間隙に接触させた状態で、該一対の電極に電
    圧を印加する工程を含むことを特徴とする電子放出素子
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記有機物質のガスと不活性ガスとを含
    むガスが、粘性流状態であることを特徴とする請求項1
    に記載の電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記有機物質のガスと不活性ガスとを含
    むガスの圧力が、大気圧に概略等しいことを特徴とする
    請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 基体上に複数の電子放出素子を配列形成
    した電子源の製造方法であって、該電子放出素子が請求
    項1乃至3のいずれかに記載の製造方法により製造され
    ることを特徴とする電子源の製造方法。
  5. 【請求項5】 電子源と、画像形成部材とを有する画像
    形成装置の製造方法であって、該電子源が請求項4に記
    載の製造方法により製造されることを特徴とする画像形
    成装置の製造方法。
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