JP2000166380A

JP2000166380A - 植物育成用ゲル組成物、その製造方法および使用方法

Info

Publication number: JP2000166380A
Application number: JP10348358A
Authority: JP
Inventors: Katsuaki Ono; 勝昭大野; Yoshitaka Aoto; 吉隆青砥
Original assignee: Daicel Chemical Industries Ltd
Current assignee: Daicel Corp
Priority date: 1998-12-08
Filing date: 1998-12-08
Publication date: 2000-06-20

Abstract

(57)【要約】【課題】優れた保水性と保型性を有すると共に、長期
間かつ継続的に栽培植物に給水することができる生分解
性の植物育成用ゲル組成物を提供すること。【解決手段】アニオン性水溶性高分子化合物と、金属
塩と、水とを含有してなる植物育成用ゲル組成物であっ
て、（１）該アニオン性水溶性高分子化合物は、アルギ
ン酸ナトリウム、カルボキシメチル化スターチおよびカ
ルボキシメチル化タマリンドからなる群から選ばれる一
種以上の天然物由来のアニオン性水溶性高分子化合物、
（２）アルギン酸ナトリウムを除く該アニオン性水溶性
高分子化合物のエーテル化度は、０．４〜１．６、
（３）該金属塩は、アルミニウム、マグネシウムおよび
カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の金属の
塩、（４）ゲル組成物中の該金属対該アニオン性水溶性
高分子化合物の重量比は、０．５〜２０、（５）該水の
含有量は、ゲル組成物の全重量を基準として、３０〜９
９．９％であることを特徴とする植物育成用ゲル組成
物。およびその製造方法と使用方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、植物育成用ゲル組
成物に関し、さらに詳しくは、優れた保水性と保型性を
有すると共に、長期間かつ継続的に栽培植物に給水する
ことができる生分解性の植物育成用ゲル組成物に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、屋内や屋外の栽培植物に給水する
ためには、スプリンクラーやシャワーなどの散水装置、
土壌中に給水パイプを埋め込んだ灌水装置などが用いら
れている。しかし、散水装置や灌水装置は、大規模な設
備や工事を必要とすることから、多大の費用を要すると
いう問題がある。また、設置後も、装置の運転費用や保
守費用の点から、やはり、経済的にも労力的にも問題が
ある。さらに、設置後の使用条件の変化に応じて、その
仕様を変更することが困難であるという問題もある。一
方、近年農園芸作業の合理化や農作物の増収のために、
苗を集中育成し、その育成苗を機械により移植すること
が盛んに行われるようになった。しかし、機械移植にお
いては、育成苗を培土（育成培土）と共に移植する際
に、根部の培土の崩壊や根部の損傷を生じ易いという欠
点があり、この点の改善が強く求められていた。

【０００３】このような問題を解決するために、散水装
置や灌水装置に替えて、給水を必要とする栽培植物の根
圏部に配置するだけで容易に給水できることを目的とし
た給水性材料の開発や、崩壊しがたい培土を得るための
給水性材料の開発が行われてきた。たとえば、特開平３
−８６８０３号公報には、吸水性ポリマー製剤が記載さ
れており、このような吸水性ポリマー製剤は、植物の播
種時、移植時、生育時に培土に播くか培土に混和するか
植物に塗布処理するかをし、次いで水を散布して保水さ
せることによって、植物に給水することができる旨が開
示されている。特開平７−９９８３２号公報には、カル
ボキシメチルセルロース（一般に平均重合度５００〜２
０００程度）と、銅塩、アルミニウム塩、鉄塩などの水
溶性多価金属塩とにより硬化してなる育苗培土が記載さ
れ、また、特開平９−７４８９７号公報には、加熱が不
要な、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロー
ス、ペリチンのうちの一種以上の水性ゲル形成原料から
なる植物栽培用培地（給水性材料）が記載されている。
しかし、これらの給水性材料においては、吸水性ポリマ
ーや給水性ポリマーに含まれる金属が、使用後の培土に
残存して環境を汚染するという問題があり、また給水能
力が不十分であり、また吸水したゲルは、離水や軟化な
どを起こし易く、給水性材料として満足できるものでな
かった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れ
た保水性と保型性を有すると共に、長期間かつ継続的に
栽培植物に給水することができる生分解性の植物育成用
ゲル組成物を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、天然物由
来のアニオン性水溶性高分子化合物は、アルミニウム、
マグネシウム、カルシウムなどの金属と架橋反応させる
ことによって、分子内に水分子を保持したゲル状物質を
形成することに着目し、このようなゲル状物質の保水性
および保型性を鋭意検討した結果、アニオン性水溶性高
分子化合物のアルミニウム、マグネシウム、カルシウム
の金属塩は、（アルミニウム、マグネシウム、カルシウ
ムからなる群から選ばれる一種以上の金属）／水溶性高
分子化合物比（重量比）が特定の範囲にある場合に、優
れた保水性と保型性を有すると共に、このようなゲル状
物質は、土壌中に配置された際に、土壌中のバクテリア
により生分解し、ゲルの架橋構造が崩壊される結果、格
子間に包含されていた水を長期間に亘って除々に放出す
ることを見い出し、本発明を完成するに至った。

【０００６】すなわち、本発明は、アニオン性水溶性高
分子化合物と、金属塩と、水とを含有してなる植物育成
用ゲル組成物であって、（１）該アニオン性水溶性高分
子化合物は、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチル
化スターチおよびカルボキシメチル化タマリンドからな
る群から選ばれる一種以上の天然物由来のアニオン性水
溶性高分子化合物、（２）アルギン酸ナトリウムを除く
該アニオン性水溶性高分子化合物のエーテル化度は、
０．４〜１．６、（３）該金属塩は、アルミニウム、マ
グネシウムおよびカルシウムからなる群から選ばれる一
種以上の金属の塩、（４）ゲル組成物中の該金属対該ア
ニオン性水溶性高分子化合物の重量比は、０．５〜２
０、（５）該水の含有量は、ゲル組成物の全重量を基準
として、３０〜９９．９％であることを特徴とする植物
育成用ゲル組成物を提供するものである。

【０００７】また、本発明は、アニオン性水溶性高分子
化合物の含有量は、ゲル組成物の全重量を基準として、
０．０５〜５．０重量％であることを特徴とする上記ゲ
ル組成物、ゲル強度調整剤、土壌改良剤、植物活性剤、
殺虫剤および殺菌剤からなる群から選ばれる一種以上を
含有することを特徴とする上記ゲル組成物、扁平な直方
体状、円板状、球状、粒状などの固体形状であることを
特徴とする上記ゲル組成物、および固体形状が多層構造
であって、各層中の（アルミニウム、マグネシウムおよ
びカルシウムからなる群から選ばれる一種以上の金属）
対アニオン性水溶性高分子化合物のイオン当量比が異な
ることを特徴とする上記ゲル組成物を包含するものであ
る。

【０００８】さらに、本発明は、アニオン性水溶性高分
子化合物を、ゲル組成物の全重量を基準として３０〜９
９．９重量％となるような量の水に溶解または分散さ
せ、次いで、得られた水溶液または分散液に、ゲル組成
物中の金属対アニオン性水溶性高分子化合物の重量比が
０．５〜２０となるような量の金属塩を添加して混合す
ることを特徴とする上記の植物育成用ゲル組成物の製造
方法を提供するものである。

【０００９】また、本発明は、上記ゲル組成物を、底部
または底部と底部側壁部に、１個または複数個の開口部
を形成した容器に収納し、次いで該容器の開口部を、栽
培植物の根圏部の土壌中に埋設することを特徴とする上
記ゲル組成物の使用方法、上記ゲル組成物を、栽培植物
の根圏部の土壌表面上に載置することまたは土壌中に混
合して埋設することを特徴とする上記ゲル組成物の使用
方法、および上記ゲル組成物を、乾燥して粉砕し、得ら
れた粉砕物を栽培植物の根圏部に配置し、次いで水を散
布して該粉砕物を保水させることを特徴とする上記ゲル
組成物の使用方法を提供するものである。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。（アニオン性水溶性高分子化合物）本発明で使用するア
ニオン性水溶性高分子化合物としては、アルギン酸ナト
リウム、カルボキシメチル化スターチおよびカルボキシ
メチル化タマリンドからなる群から選ばれる一種以上の
天然物由来のアニオン性水溶性高分子化合物を挙げるこ
とができる。このようなアニオン性水溶性高分子化合物
は、通常リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビ
ジウム塩、セシウム塩およびこれらの混合物の塩であ
る。好ましくはナトリウム塩である。

【００１１】アルギン酸ナトリウム（以下、Ａｌｇとも
いう。）は、特に限定するものではなく、市販されてい
る公知のものを使用することができる。通常、コンブ、
カジメ、アラメなどのカッ藻類を原料として製造するこ
とができる。カッ藻類中のアルギン酸は、カルシウム塩
として存在するので、これを炭酸ソーダ水溶液によって
ナトリウム塩に置き換えて抽出される。また、Ａｌｇ
は、特にカルシウム塩と反応させた場合に、得られた本
発明の植物育成用ゲル組成物は優れた保型性を有する。

【００１２】カルボキシメチル化スターチ（以下、ＣＭ
Ｓともいう。）は、特に限定するものではなく、市販さ
れている公知のものを使用することができる。デンプン
グリコール酸ナトリウムとも別名され、通常デンプン
に、メタノール中でカ性ソーダの存在下にクロロ酢酸ソ
ーダを反応させた後、酸で中和し、メタノール水溶液で
洗浄し、乾燥して製造することができる。反応時間、反
応温度などでカルボキシメチル基数が異なる。

【００１３】カルボキシメチル化タマリンド（以下、Ｃ
ＭＴともいう。）は、特に限定するものではなく、市販
されている公知のものを使用することができる。マメ科
の常緑高木であるタマリンドの果実を原料として、ＣＭ
Ｓと同様に、カルボキシメチル化して製造することがで
きる。

【００１４】また、ＣＭＳおよびＣＭＴは、エーテル化
度（以下、ＤＳともいう。）を、０．４〜１．６、好ま
しくは０．６〜１．３の範囲とするものである。エーテ
ル化度が０．４未満の場合は、ＣＭＳおよびＣＭＴは水
に殆ど溶解しないためにゲル組成物を形成することがで
きず、１．６を超える場合は、ＣＭＳおよびＣＭＴが分
子内架橋を起こし水を充分に包含することができない。

【００１５】本発明で使用するアニオン性水溶性高分子
化合物は、アニオン性水溶性高分子化合物の１重量％水
溶液の２５℃における粘度（以下、単に１重量％粘度と
いう。）を、通常１０〜１０，０００ｍＰａ・ｓとする
ものである。１重量％粘度が１０ｍＰａ・ｓ未満の場合
は、ゲル組成物の保型性が不十分となる。また、１０，
０００ｍＰａ・ｓを超える場合は、ゲル化反応初期の流
動性が低いことから、均一なゲル組成物を形成すること
ができない。優れた保型性は、ゲル組成物中のアニオン
性水溶性高分子化合物の含有量を増大することによって
も得ることができるが、経済的に不利である。

【００１６】（金属塩）本発明で使用する金属塩は、ア
ルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムからなる群
から選ばれる一種以上の金属の無機または有機の塩であ
る。たとえば、アルミニウム金属塩としては、酢酸アル
ミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、カリ
みょうばん、塩化アルミニウムなどを挙げることができ
る。マグネシウム金属塩としては、塩化マグネシウム、
硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなどを挙げること
ができる。また、カルシウム金属塩としては、第一リン
酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸
カルシウム、乳酸カルシウムなどを挙げることができ
る。これらの金属塩は、一種または二種以上を混合して
使用することができる。金属塩は、アニオン性水溶性高
分子化合物分子と反応してこれを架橋し、この架橋物に
水分子を包含させる機能を有する。

【００１７】また、本発明で使用する金属塩以外に、ゲ
ル組成物の性能を阻害しない範囲で、他の水溶性金属塩
を併用することができる。たとえば、塩化第一鉄、塩化
第二鉄、硫酸第二鉄などの鉄塩、塩化第二銅、硫酸第二
銅などの第二銅塩、バリウム塩、マンガン塩、カドミウ
ム塩、クロム酸塩、チタン酸塩、アンチモン酸塩などの
水溶性多価金属塩を挙げることができる。

【００１８】（植物育成用ゲル組成物）本発明の植物育
成用ゲル組成物は、上記したアニオン性水溶性高分子化
合物と上記した金属塩を含有してなり、かつ該ゲル組成
物中の金属対アニオン性水溶性高分子化合物の重量比
は、０．５〜２０、好ましくは１．０〜１５であること
が肝要である。

【００１９】金属の重量は、本発明で使用するアルミニ
ウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれる一種
以上の金属塩に含有される金属の重量の合計量であり、
またアニオン性水溶性高分子化合物の重量は、本発明で
使用するＡｌｇ、ＣＭＳおよびＣＭＴからなる群から選
ばれる一種以上の天然物由来のアニオン性水溶性高分子
化合物の重量の合計量である。

【００２０】金属対アニオン性水溶性高分子化合物の重
量比が、０．５未満の場合は、吸水後のゲルが溶解状態
を示して柔らか過ぎ、分子間に水を保持することが困難
となり、２０を超える場合は、アニオン性水溶性高分子
化合物の架橋密度が高くなるのでアニオン性水溶性高分
子化合物が不溶化し、やはり分子間に水を保持すること
が困難となり、また吸水後のゲルも離水が著しく、ゲル
から水が滲みだしてしまう。

【００２１】また、本発明の植物育成用ゲル組成物の水
の含有量は、ゲル組成物の全重量を基準として、３０〜
９９．９重量％、好ましくは６０〜９７重量％である。
水の含有量が、３０重量％未満であると、植物に充分な
水を与えることができず、９９．９重量％を超えると、
ゲル組成物の保型性が劣る。

【００２２】さらに、本発明の植物育成用ゲル組成物
は、ゲル組成物の全重量を基準として、アニオン性水溶
性高分子化合物を０．０５〜５．０重量％、好ましくは
０．５〜３．０重量％の濃度で含有するものである。ア
ニオン性水溶性高分子化合物の含有量が、０．０５重量
％未満の場合には、アニオン性水溶性高分子化合物ゲル
組成物の格子が粗くなって、水分子が入り込み易くなる
ものの、ゲルは崩れ易く、実質的にゲルを形成すること
ができずに水を保持することができない。一方、アニオ
ン性水溶性高分子化合物の含有量が、５．０重量を超え
る場合は、ゲル化反応初期のゲルの流動性が低いことか
ら、均一なゲル組成物を形成することができない。ま
た、５．０重量を超える場合は、含有量に見合った効果
が得られないので経済的に不利である。したがって、本
発明の植物育成用ゲル組成物は、アニオン性水溶性高分
子化合物の含有量が、０．０５〜５．０重量の範囲であ
ることよって、優れた保型性を有することができる。

【００２３】本発明の植物育成用ゲル組成物は、このよ
うな構成とすることによって、土壌中に配置された際
に、土壌中のバクテリアにより生分解し、アニオン性水
溶性高分子化合物ゲル組成物の架橋構造が崩壊される結
果、格子間に包含されていた水を長期間に亘って除々に
放出するものである。特に、金属としてマグネシウムお
よび／またはカルシウムを使用した植物育成用ゲル組成
物の場合は、水を放出後に肥効成分としてマグネシウム
および／またはカルシウムを土壌中に供給することがで
きる。土壌中に供給されたマグネシウムおよび／または
カルシウムは、栽培植物に吸収されて葉緑素の生成、リ
ン酸分や炭水化物の移転などに寄与することができる。
また、この場合には、植物育成用ゲル組成物は生分解
し、マグネシウムおよび／またはカルシウムは肥効成分
として栽培植物に吸収されることから、土壌を汚染する
という問題を生じない。

【００２４】本発明の植物育成用ゲル組成物は、性能を
阻害しない範囲で、ゲル強度調整剤、土壌改良剤、植物
活性剤、殺虫剤、殺菌剤などを含有することができる。
また、これらの成分を含有させる方法は、特に限定され
ないが、たとえばアニオン性水溶性高分子化合物の水溶
液または分散液を製造する際に、水に混合することによ
って含有させることができる。

【００２５】ゲル強度調整剤としては、キサンタンガ
ム、ローカストビーンガム、多価アルコール、デンプ
ン、セルロース、アルギン酸、カラギーナン、グルコマ
ンナン、寒天、ペクチン、プルラン、キチン、キトサ
ン、グアーガム、アラビアガム、タマリンド種子多糖
類、大豆タンパク質、卵白、グルテン、ゼラチン、コラ
ーゲンなどの天然高分子化合物、あるいは合成高分子化
合物を挙げることができる。また、ゲル強度調整剤の添
加量は、通常０．１〜５重量％である。

【００２６】土壌改良剤としては、溶性リン肥、ケイ酸
肥、リグノセルロース・フミン酸、ニトロフミン酸など
を挙げることができる。植物活性剤としては、ぶどう
糖、ビタミン類、ホルモン剤などを挙げることができ
る。植物活性剤を添加することによって、植物の活性状
態を維持することができる。また、土壌改良剤および植
物活性剤の添加量は、通常０．１〜３．０重量％であ
る。

【００２７】（植物育成用ゲル組成物の製造方法）本発
明の植物育成用ゲル組成物の製造方法は、特に限定する
ものではないが、たとえば、次のようにして製造するこ
とができる。（１）アニオン性水溶性高分子化合物を、ゲル組成物の
全重量を基準として３０〜９９．９重量％となるような
量の水に溶解または分散させ、次いで、得られた水溶液
または分散液に、ゲル組成物中の金属対アニオン性水溶
性高分子化合物の重量比が０．５〜２０となるような量
の金属塩を添加して混合することによって製造する方
法。（２）金属塩を、ゲル組成物の全重量を基準として３０
〜９９．９重量％となるような量の水に溶解させ、次い
で、得られた水溶液に、ゲル組成物中の金属対アニオン
性水溶性高分子化合物の重量比が０．５〜２０となるよ
うな量のアニオン性水溶性高分子化合物を添加して混合
することによって製造する方法。（３）ゲル組成物中の金属対アニオン性水溶性高分子化
合物の重量比が０．５〜２０となるような量で、アニオ
ン性水溶性高分子化合物と、金属塩を均一に混合し、得
られた混合物を、ゲル組成物の全重量を基準として３０
〜９９．９重量％となるような量の水に溶解させる方
法。

【００２８】前記（１）の場合を例にして説明すると、
アニオン性水溶性高分子化合物を、ゲル組成物の全重量
を基準として３０〜９９．９重量％となるような量の水
に、室温で攪拌しながら溶解または分散させ、次いで、
得られた水溶液または分散液に、ゲル組成物中の金属対
アニオン性水溶性高分子化合物の重量比が０．５〜２０
となるような量の金属塩を徐々に添加し、数分間攪拌し
ながらアニオン性水溶性高分子化合物とこれらの金属塩
とを反応させてゲル化させて放置して、アニオン性水溶
性高分子化合物のゲル組成物を製造することができる。
これらの金属塩は、水溶液または水溶性有機溶媒、たと
えばグリセリン、エチレングリコール、アルコールなど
に分散した分散液として、アニオン性水溶性高分子化合
物の水溶液または分散液に添加する。

【００２９】（植物育成用ゲル組成物の使用方法）本発
明の植物育成用ゲル組成物は、使用するに先だって、使
用条件に適した任意の形状のものに成形して使用するこ
とができる。形状としては、たとえば扁平な直方体状、
円板状、球状、粒状などである。また、形状を多層構造
とし、各層中の金属対アニオン性水溶性高分子化合物の
重量比を異ならせたものとすることもできる。この場合
には、各層はその重量比に対応した速度で生分解して水
を放出することから、各層の重量比を適宜設定すること
によって、使用中の給水速度を制御することができる。

【００３０】上記のように成形された本発明の植物育成
用ゲル組成物は、任意の方法で使用することができる。
たとえば、次に示すような方法で、栽培植物や、森林、
乾燥地帯などの植物に、長期間かつ継続的に給水するこ
とができる。（１）本発明の植物育成用ゲル組成物を、底部または底
部と底部側壁部に、１個または複数個の開口部を形成し
た容器に収納した後、容器の開口部を、栽培植物の根圏
部の土壌中に埋設する方法。

【００３１】この場合、容器の形状は、特に限定するも
のではなく袋状、筒状または箱型または漏斗状などのも
のを使用することができる。開口部の個数および形状
は、開口部を土壌中に埋設した際に、内容物が容器内に
保持でき、土壌中のバクテリアによる微生物分解を容易
に行わせることができ、かつ放出された水が容易に根圏
部に給水できるようにして、適宜設定することができ
る。また、容器の材質は、特に限定するものではない
が、紙製や生分解性の合成樹脂製のものは、使用後に環
境を汚染することがないので好ましい。さらに、本発明
の植物育成用ゲル組成物を、容器中で製造するかまたは
容器中に収納した後密閉状態とし、これを使用直前に、
容器を開口して使用することもできる。この場合は、ゲ
ル組成物を移送し、保管し、配置するなどの際に取扱い
が極めて簡便となる。

【００３２】図１に、植物育成用ゲル組成物を、底部ま
たは底部と底部側壁部に、１個または複数個の開口部を
有する容器に収納し、その開口部を、栽培植物の根圏部
の土壌中に埋設した例を示す。また図２（イ）に、底部
に複数の開口部を有する容器の例を示し、図２（ロ）
に、底部と底部側壁部に複数個の開口部を有する容器の
例を示す。１は栽培植物を表し、２は土壌を表し、３は
本発明の植物育成用ゲル組成物を表し、４は容器を表
し、５は底部を表し、６は下部側壁部を表し、７は開口
部を表す。

【００３３】（２）本発明の植物育成用ゲル組成物を、
根圏部の土壌表面上にそのまま載置するか、または土壌
中に混合して埋設する方法。図３に、植物育成用ゲル組
成物を、栽培植物の根圏部の土壌表面上に載置した例を
示す。また、図４に、栽培植物の根圏部の土壌中に混合
して埋設した例を示す。１は栽培植物を表し、２は土壌
を表し、３は本発明の植物育成用ゲル組成物を表す。

【００３４】（３）本発明の植物育成用ゲル組成物を、
乾燥して粉砕し、得られた粉砕物を所望とする給水部に
配置し、次いで水を散布して該粉砕物を保水させる方
法。（４）本発明の植物育成用ゲル組成物を、所望とする給
水部分、たとえば接ぎ木部に、塗布、被覆などによって
配置し、そのまままたは水を散布して保水させる方法。（５）本発明の植物育成用ゲル組成物を、土付植物や園
芸用植物などを移送する際に、水分を供給するための給
水性材料とする方法。

【００３５】また、本発明の植物育成用ゲル組成物は、
土壌に給水する場合、土壌１００重量部に対して、通常
０．０１〜２０重量部の割合で混合する。０．０１重量
部未満の場合は、給水量が不十分であり、２０重量部を
超える場合は、混合量に見合った効果が得られない。

【００３６】

【実施例】本発明を実施例に基づいて説明する。なお、
本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるもので
はない。（実施例１〜４）アルギン酸ナトリウム（紀文フードケ
ミファ社製品ダックアルギンＳ：１重量％粘度１４
０ｍＰｓ・ｓ）の水溶液に、別に調製した第一リン酸カ
ルシウム（市販の試薬）水溶液を、攪拌しながら添加し
た後、混合液を数時間で放置して、アルギン酸カルシウ
ムゲルを調製した。アルギン酸ナトリウム、第一リン酸
カルシウムおよび水は、ゲル組成物の全重量を基準とし
て、表１の実施例１〜４に示す配合割合となるようにし
て混合した。得られたゲル組成物について、それぞれ、
その保水性および保型性を評価した。これらの結果を表
１に示す。

【００３７】

【表１】

【００３８】実施例１〜４で得られたゲル組成物の保水
性および保型性は、次のようにして評価した。（１）保水性の評価方法調製直後のゲル組成物２００ｇを、５００ｍｌビーカー
に入れ、常温で一週間静置した後、ビーカーを水平にな
るまで徐々に傾ける。その際、ゲル組成物から滲みだし
た水が、ビーカーから垂れ落ちる場合は、保水性が不良
であり、水が垂れ落ちない場合は、保水性が良好である
とした。（２）保型性の評価方法調製直後のゲル組成物２００ｇを、５００ｍｌビーカー
に入れ、常温で一週間静置した後、ビーカーを水平にな
るまで徐々に傾ける。その際、ゲル組成物が崩れて変形
しない場合は、保型性が良好であり、アニオン性水溶性
高分子化合物のゲルが崩れてビーカーから垂れ落ちる場
合は、保型性が不良であるとした。

【００３９】（比較例１〜３）実施例１において、アル
ギン酸ナトリウム、第一リン酸カルシウムおよび水の配
合割合を、表２の比較例１〜３に示す配合割合としたこ
と以外は実施例１と同様にして、アルギン酸カルシウム
ゲルを調製した。得られたゲル組成物について、それぞ
れ、その保水性および保型性を評価した。これらの結果
を表２に示す。

【００４０】

【表２】

【００４１】表１の結果から明らかなように、実施例１
〜４のものは、良好な保水性と良好な保型性を示した
が、カルシウム対アルギン酸ナトリウムの重量比が所定
の範囲内にない比較例１〜３のものは、保水性および保
型性が劣った。

【００４２】

【発明の効果】以上、詳細かつ具体的に説明したよう
に、本発明の植物育成用ゲル組成物においては、金属を
介して架橋した天然物由来のアニオン性水溶性高分子化
合物の分子間に多量の水が取り込まれ、土壌と接した際
に土壌中のバクテリアによりアニオン性水溶性高分子化
合物が徐々に分解されて、格子間に包含されていた水を
徐々に放出することから、長期間かつ継続的に栽培植物
に給水することができるという効果を奏する。特に、金
属としてがマグネシウムおよび／またはカルシウムを使
用した場合は、給水後に肥効成分としてマグネシウムお
よび／またはカルシウムを土壌中に供給できるという効
果を奏する。土壌中のバクテリアによるアニオン性水溶
性高分子化合の分解反応は、土壌の状態によって異なる
ことから、雨などにより土壌が濡れている場合には、バ
クテリアの活動が低下して、分解速度が遅くなることか
ら、ゲル組成物の不必要な消耗が抑制され、結果的に給
水期間が長くなるという効果がある。さらに、このよう
な植物育成用ゲル組成物は、強固な架橋構造、すなわち
優れた保型性を有することから、使用前に変形、破壊、
水の放出などがなく、所望とする給水部分に効果的に給
水することができること、特に金属としてマグネシウム
および／またはカルシウムを使用した場合は、アニオン
性水溶性高分子化合物のゲルが生分解した後、マグネシ
ウムおよび／またはカルシウムは肥効成分として栽培植
物に吸収されることから、土壌を汚染しないことなどの
効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の植物育成用ゲル組成物を、容器に収納
し、その開口部（記載しない）を、栽培植物の根圏部の
土壌中に埋設した例を示す。

【図２】（イ）は、底部に複数の開口部を有する容器の
例を示し、（ロ）は、底部と底部側壁部に複数個の開口
部を有する容器の例を示す。

【図３】本発明の植物育成用ゲル組成物を、栽培植物の
根圏部の土壌表面上に載置した例を示す。

【図４】本発明の植物育成用ゲル組成物を、栽培植物の
根圏部の土壌中に混合して埋設した例を示す。

【符号の説明】１栽培植物２土壌３本発明の植物育成用ゲル組成物４容器５容器の底部６容器の底部側壁部７開口部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号ＦＩテーマコート゛(参考）Ｃ０９Ｋ 17/32 Ｃ０９Ｋ 17/32 Ｈ // Ｃ０９Ｋ 101:00 Ｆターム(参考） 2B022 AA05 BA01 BA11 BA24 BB10 DA19 4H026 AA09 AA10 AB01 AB04 4J002 AB012 AB042 AB051 AB052 AB053 AD022 AD032 AH003 DD066 DD076 DE236 DF036 DG046 DG056 DH046 DH047 DJ007 EG036 EG046 GA00 HA07

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】アニオン性水溶性高分子化合物と、金属
塩と、水とを含有してなる植物育成用ゲル組成物であっ
て、（１）該アニオン性水溶性高分子化合物は、アルギ
ン酸ナトリウム、カルボキシメチル化スターチおよびカ
ルボキシメチル化タマリンドからなる群から選ばれる一
種以上の天然物由来のアニオン性水溶性高分子化合物、
（２）アルギン酸ナトリウムを除く該アニオン性水溶性
高分子化合物のエーテル化度は、０．４〜１．６、
（３）該金属塩は、アルミニウム、マグネシウムおよび
カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の金属の
塩、（４）ゲル組成物中の該金属対該アニオン性水溶性
高分子化合物の重量比は、０．５〜２０、（５）該水の
含有量は、ゲル組成物の全重量を基準として、３０〜９
９．９％であることを特徴とする植物育成用ゲル組成
物。
【請求項２】該アニオン性水溶性高分子化合物の含有
量は、ゲル組成物の全重量を基準として、０．０５〜
５．０重量％であることを特徴とする請求項１に記載の
植物育成用ゲル組成物。
【請求項３】さらに、ゲル強度調整剤、土壌改良剤、
植物活性剤、殺虫剤および殺菌剤からなる群から選ばれ
る一種以上を含有することを特徴とする請求項１または
請求項２に記載の植物育成用ゲル組成物。
【請求項４】扁平な直方体状、円板状、球状、粒状な
どの固体形状であることを特徴とする請求項１〜３のい
ずれかに記載の植物育成用ゲル組成物。
【請求項５】固体形状が多層構造であって、各層中の
該金属対該アニオン性水溶性高分子化合物のイオン当量
比が異なることを特徴とする請求項４に記載の植物育成
用ゲル組成物。
【請求項６】まず、該アニオン性水溶性高分子化合物
を、ゲル組成物の全重量を基準として３０〜９９．９％
となるような量の水に溶解または分散させ、次いで、得
られた水溶液または分散液に、ゲル組成物中の該金属対
該アニオン性水溶性高分子化合物の重量比が０．５〜２
０なるような量の該金属塩を添加して混合することを特
徴とする請求項１〜４のいずれかに記載の植物育成用ゲ
ル組成物の製造方法。
【請求項７】該植物育成用ゲル組成物を、底部または
底部と底部側壁部に、１個または複数個の開口部を形成
した容器に収納し、次いで、該容器の開口部を、栽培植
物の根圏部の土壌中に埋設することを特徴とする請求項
１〜５のいずれかに記載の植物育成用ゲル組成物の使用
方法。
【請求項８】該植物育成用ゲル組成物を、栽培植物の
根圏部の土壌表面上に載置することまたは土壌中に混合
して埋設することを特徴とする請求項１〜５のいずれか
に記載の植物育成用ゲル組成物の使用方法。
【請求項９】該植物育成用ゲル組成物を、乾燥して粉
砕し、得られた粉砕物を栽培植物の根圏部に配置し、次
いで、水を散布して該粉砕物を保水させることを特徴と
する請求項１〜４のいずれかに記載の植物育成用ゲル組
成物の使用方法。