JP2000161361A - 軸受用部材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 腐食性のある環境で用いてもバインダーの脱
落による早期の強度低下に至ることがないような軸受用
部材を提供する。 【解決手段】 Ｔｉ−Ｍｏ系の共晶合金を素地として、
ＴｉＣの粒子を均一に分散させた素材を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ポンプ等に用いる
軸受に関し、特に、海水や下水のような腐食性を持つ液
体に曝されるような箇所に用いて好適な軸受に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ポンプ等に用いる水潤滑真円軸受
には、例えば、高硬度材料であるセラミックス軸受と、
ＷＣ（タングステンカーバイド）のようなセラミックス
の粒子をＣｏ，Ｎｉ等の金属素地中に分散させた超硬材
料（サーメット）からなるスリーブとの組み合わせを用
いている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな超硬度材料を海水や下水のような腐食性を持つ液体
を扱うポンプ等の軸受として用いると、図２に示すよう
に、Ｃｏ，Ｎｉ等の金属が腐食により溶出する脱バイン
ダ腐食を生じ、これは、スリーブが取り付けられている
シャフトの材料であるステンレス鋼等との間の異種金属
接触腐食によって促進される。このような脱バインダ腐
食が生じると、ＷＣが脱落し、軸受の摩耗が進行する。
また、脱バインダ腐食が進行するとスリーブの強度が低
下し、割れに至る。

【０００４】本発明は、上記課題に鑑みて為されたもの
で、腐食性のある環境で用いてもバインダーの脱落によ
る早期の強度低下に至ることがないような軸受用部材を
提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明
は、Ｔｉ−Ｍｏ系の共晶合金を素地として、ＴｉＣの粒
子を均一に分散させた素材を用いることを特徴とする軸
受用部材である。 このようなＴｉ−Ｍｏ系の共晶合金
の素地は、以下のような優れた特色を有している。 （１）合金自体が耐食性に優れている。 （２）α−Ｔｉ相とβ−ＴｉＭｏ相を緻密に分散させる
ことにより、バインダー自体が高い硬度を示す。 （３）組み合わせた軸材料を異種金属接触腐食から保護
する機能を有している。これは、腐食雰囲気中でＴｉ−
Ｍｏ系の共晶合金に形成される保護被膜の導電性が低い
ので、不働体維持電流が低いためである。このような優
れた素地材料に、硬度の高いＴｉＣの粒子を分散させる
ことにより、耐脱バインダ腐食性の高い、従って、腐食
環境で用いても耐用性の高い軸受を構成することができ
る。

【０００６】請求項２に記載の発明は、前記ＴｉＣの粒
子の平均径が１〜２０μｍであることを特徴とする請求
項１に記載の軸受用部材である。

【０００７】請求項３に記載の発明は、請求項１又は２
に記載の軸受用部材と、シリコン炭化物を主成分とする
第２の軸受用部材とから構成されていることを特徴とす
る液体潤滑軸受である。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。この軸受は、図１に示すように、ステンレス鋼製
のシャフト１０の周囲に取り付けられたスリーブ１２
と、これをネジ１４で固定する固定スリーブ１６と、こ
れらを支持する図示しない軸受部材とから構成されてい
る。これは、立軸型海水ポンプの長さ７ｍほどのシャフ
トを支持する軸受であり、軸受径は１０５ｍｍφ、軸受
部の周速は５ｍ／ｓｅｃで用いられる。軸受材料は、Ｓ
ｉＣを主成分とし、気孔率１０％の焼結材料である。ス
リーブは、粒子の平均径が２μｍであるようなＴｉＣ粒
子を（重量比にて）４０％、Ｔｉ−Ｍｏ（８０／２０）
合金の中に分散させた焼結合金である。

【０００９】

【実施例】本発明のスリーブを、ドライ雰囲気、水、摩
耗性を有するスラリーという異なる環境においてそれぞ
れ摺動摩耗試験を行った。この試験は、径７５ｍｍφの
円筒状回転試験片外面と、ＳｉＣを素材とする円筒状軸
受の内面を、滑り速度を５ｍ／ｓｅｃ、面圧を０．１２
Ｍｐａで摺動させて行った。さらに、スリーブを流動す
る海水及び静止海水中に長期（１年）浸漬させて腐食試
験を行った。また、同一の素材の素地中に同じ平均径の
ＷＣ粒子を同じ重量比で分散させた比較材を作成し、同
様の試験を行った。結果を表１に示す。

【００１０】

【表１】

【００１１】これにより、ＷＣを分散粒子とした比較例
と比べると、耐摩耗特性では多少劣るがほぼ同等の性能
を発揮し、しかも、海水に対する腐食特性では高い性能
を発揮することが分かった。

【００１２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の軸受用部
材は、腐食性のある環境で用いてもバインダーの脱落に
よる早期の強度低下に至ることがなく、海水等の揚水用
ポンプ等に用いて優れた性能を示す軸受を提供すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態の軸受用部材を示す縦断正
面図である。

【図２】従来の軸受用部材の腐食状況を示す図である。

【符号の説明】

１０ シャフト １２ スリーブ（軸受用部材）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｆ１６Ｃ 33/24 Ｆ１６Ｃ 33/24 Ａ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｔｉ−Ｍｏ系の共晶合金を素地として、
   ＴｉＣの粒子を均一に分散させた素材を用いることを特
   徴とする軸受用部材。
2. 【請求項２】 前記ＴｉＣの粒子の平均径が１〜２０μ
   ｍであることを特徴とする請求項１に記載の軸受用部
   材。
3. 【請求項３】 請求項１又は２に記載の軸受用部材と、
   シリコン炭化物を主成分とする第２の軸受用部材とから
   構成されていることを特徴とする液体潤滑軸受。