JP2000160305A - 加工性と磁気特性が良好な方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
加工性と磁気特性が良好な方向性電磁鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
き加工や穴開け加工等の加工性に優れ、また磁気特性に
も優れたフォルステライト被膜なしの方向性珪素鋼板を
得る。 【解決手段】 電磁鋼板用鋼鋳片の成分中、特にSe,
S,N,Oの含有量をそれぞれ 30ppm以下に低減すると
共に、熱延板焼鈍および中間焼鈍の焼鈍温度を 800〜10
50℃、最終冷延における圧下率を50〜80%とし、さらに
は連続焼鈍で再結晶焼鈍を施すことにより、板厚が0.15
mm以上、平均粒径が0.15〜2.0 mmで、しかも圧延方向の
磁束密度がB8 >1.70Tを満足する方向性電磁鋼板とす
る。
Description
圧器または回転機の鉄心材料に用いて好適な方向性電磁
鋼板およびその製造方法に関するものである。
ヒビターと呼ばれる析出物を使用して最終仕上焼鈍中に
ゴス方位({110}<001>)の二次再結晶粒を優
先的に成長させる方法が一般的な技術として使用されて
いる。例えば、特公昭40-15644号公報に開示のAIN, Mn
Sを使用する方法および特公昭51-13469号公報に開示の
MnS, MnSeを使用する方法などがそれであり、これらの
方法は方向性電磁鋼板の製造技術としてすでに工業的に
実用化されている。また、その他にも、CuSeとBNを添
加する技術(特公昭58-42244号公報)や、Ti, Zr,Vの
窒化物を使用する技術(特公昭46-40855号公報)など、
数多くの技術が知られている。
定して二次再結晶粒を発達させるには有用な方法である
が、析出物を微細に分散させる必要があるので、熱延前
のスラブ加熱温度を1300℃以上の高温とする必要があ
る。しかしながら、スラブの高温加熱は、加熱を実現す
る上での設備コストが嵩むだけでなく、熱延時に生成す
るスケールの量も多大となって歩留りが低下し、また設
備のメンテナンス等の問題も多くなる 。
させる技術のもう一つの問題点としては、最終仕上焼鈍
後にこれらの成分が残存していると、磁気特性の劣化を
生じるという点がある。そのため、インヒビター成分で
あるAlやSi, S等を鋼中から除去する目的で、二次再結
晶完了後、引き続き1100℃以上の水素雰囲気中にて数時
間におよび純化焼鈍が必要となる。しかしながら、この
純化焼鈍は極めて高温での処理であるため、鋼板の機械
的強度が低下してコイルの下部が座屈し、製品の歩留り
が著しく低下するという問題がある。
方位粒が一次再結晶粒を蚕食して成長する現象であるの
で、必然的に二次再結晶粒径は大きくなり、通常の場合
には3〜30mm程度の平均粒径となる。ところが、電磁鋼
板の用途が、小型トランスの鉄心材料である場合には、
金型を用いて複雑な形に打抜く必要がある。この打抜き
時には大きな応力が加わるが、このような場合にはしば
しば材料は双晶変形を起こして必要とする形に打抜けな
いことが多く、甚だしい場合には材料割れを起こす。し
かもかような加工性の劣化は、鉄損特性が良好なSi量が
3.0wt%を超える場合に顕著に現われる。
に、結晶粒径が 0.1〜0.3 mm程度の無方向性電磁鋼板が
用いられる場合があり、この場合には打抜き時の応力が
粒界によって緩和されるので、加工性は結晶粒径が粗大
な方向性電磁鋼板に比べて改善される。しかしながら、
無方向性電磁鋼板の磁気特性は、方向性電磁鋼板のそれ
に比べるとはるかに劣るため、トランスのエネルギーロ
スの増加が甚だしく、その適用範囲は限られている。
する「磁気シールド材」として、方向性電磁鋼板が用い
られる場合が近年増加しているが、磁気シールド材とし
ての性能は、鋼板面内での磁化特性が良好であることと
同時に、建材と同様に扱われるため、穴開け加工等が良
好に実施できることが要求される。このような磁気シー
ルド材として使用される際にも、前述のトランスの場合
と同様に劣悪な加工性の問題をかかえているが、磁気特
性を重視してやむなく結晶粒径が粗大な方向性電磁鋼板
を使用しているのが現状である。
性電磁鋼板の加工性の改善には、二次再結晶粒の微細化
が必要である。かような技術としては、二次再結晶粒の
平均粒径を小さくして鉄損を改善する技術が特公昭59-2
0745号公報に、また微細な二次粒の数と分布を制御して
鉄損を低減する技術が特公平4-19296号公報にそれぞれ
開示されている。しかしながら、これらの二次再結晶粒
微細化技術は、二次再結晶粒の方位集積度を低下させる
ために、得られる鉄損は不十分であるし、また二次再結
晶粒径もたかだか数ミリ程度であるので加工性の改善効
果もそれほど顕著ではない。さらに、これらの方法で
は、電磁鋼板の表面にフォルステライト被膜が形成され
るため、打抜き加工はより困難となる。
て、方向性電磁鋼板の製品板を出発材料とし、さらにこ
れを圧延したのち一次再結晶焼鈍を施して、{110}
<001>方位の平均粒径が1mm以下の微細結晶粒を有
する板厚:0.15mm以下の電磁鋼板を製造する方法が、特
公平7-42556号公報に開示されている。この方法は、方
向性電磁鋼板の製品板表面のフォルステライト被膜を除
去し、さらに圧延、再結晶焼鈍を施すという極めてコス
トが高い方法である上に、再結晶を生じさせるべく強圧
下の圧延が必要になるため、製品板厚は0.15mm以下と薄
くなる。従って、打抜き加工や取り扱いが困難という致
命的欠点を有するため、上記した特公平7-42556号公報
に開示されている電磁鋼板は高周波特性が必要とされる
用途以外には使用されていない。
微細な粒径の方向性電磁鋼板を製造する方法が、特開昭
64-55339号、特開平2-57635号、特開平7-76732号、特
開平7−197126号各公報に開示されている。これらの技
術に共通していることは、表面エネルギーを駆動力とし
て{110}面を優先的に成長させる三次再結晶を利用
していることである。しかしながら、このような技術の
ポイントである表面エネルギー差を有効に利用するため
には、板厚を薄くし表面の寄与を大きくすることが必然
的に要求される。例えば、特開昭64-55339号公報に開示
の技術では板厚が 0.2mm以下、特開平2-57635号公報に
開示の技術では板厚が0.15mm以下に制限されている。ま
た、特開平7-76732で号公報に開示の技術では板厚は制
限されていないが、実施例1によると板厚:0.3 mmの場
合には、表面エネルギーの寄与分が小さくなるため必然
的に方位集積度が劣化し、磁束密度はB8 で1.70T以下
と極端に低い。実施例中で良好な磁束密度を得られてい
る板厚は0.10mmに限られている。さらに、特開平7−19
7126号公報でも板厚は制限されていないが、50〜75%の
三次冷間圧延を施す技術であるため、必然的に板厚は薄
くなり、実施例では0.10mm厚である。
方法では、良好な磁気特性を得ようとすると、必然的に
製品板厚は薄くなり、従って打抜き加工性が劣化すると
いう致命的な欠点は解消されない。
を有利に解決するもので、特に小型トランスの鉄心ある
いは磁気シールド用の材料として使用した場合であって
も何ら問題が生じることのない、加工性と磁気特性が優
れた方向性電磁鋼板を、その有利な製造方法と共に提案
することを目的とする。
ヒビター成分を含まない高純度素材を用いて、再結晶組
織の形成に関して研究を行った。その結果、素材の高純
度化のうち特にSe, S, N, Oを低減すると共に、ある
特定の条件で製造することによって、再結晶後に高度に
{110}<001>組織が発達することを新たに知見
し、本発明を完成させるに至ったのである。
晶焼鈍を施して得た方向性電磁鋼板であって、Si:2.0
〜8.0 wt%を含み、板厚が0.15mm以上、平均粒径が0.15
〜2.0 mmで、しかも圧延方向の磁束密度がB8 >1.70T
を満足することを特徴とする加工性と磁気特性が良好な
方向性電磁鋼板である。
n:0.005 〜3.0 wt%、Al:0.0010〜0.012 wt%を含
み、かつSe, S,N,Oの含有量をそれぞれ 30ppm以下
に低減した溶鋼から、通常造塊法または連続鋳造法によ
り製造した鋳片を、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼
鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の
冷間圧延を施し、ついで連続焼鈍による再結晶焼鈍を施
し、必要に応じて絶縁コーティングを施す一連の工程か
らなる方向性電磁鋼板の製造方法において、熱延板焼鈍
および中間焼鈍の焼鈍温度を 800〜1050℃、最終冷延に
おける圧下率を50〜80%とすることにより、板厚が0.15
mm以上、平均粒径が0.15〜2.0 mmで、しかも圧延方向の
磁束密度がB8 >1.70Tを満足する加工性と磁気特性が
良好な方向性電磁鋼板の製造方法である。
たは連続鋳造法により製造した鋳片を、加熱することな
く直接熱間圧延に供することもできる。また、溶鋼から
の直接鋳造法で得られた厚さ:100 mm以下の薄鋳片を素
材として熱間圧延に供することも、または該薄鋳片をそ
のまま熱延板の代わりに使用することもできる。
た実験結果について説明する。基本成分として、C:33
ppm, Mn:0.15wt%, Si:3.3 wt%, Al:0.0050wt%に
固定し、不純物についてはSe, S, N, O量を種々に変
化させた鋼塊を多数溶製した。これらの鋼塊を、1100℃
に加熱したのち、熱間圧延により 2.2mm厚の熱延板に仕
上げた。その後、冷間圧延にて0.85mmの中間厚に仕上
げ、 900℃, 60秒間の中間焼鈍後、2回目の冷問圧延を
施して0.35mmの最終板厚に仕上げた。ついで、連続焼鈍
により、1000℃,3分間の再結晶焼鈍を行った。
約0.25mmであった。また、鋼中における各不純物元素量
と製品板圧延方向の磁束密度B8 との関係について調べ
た結果を図1に示すが、同図に示したとおり、Se, S,
N, O量がそれぞれ30 ppm以下の場合に磁束密度は1.70
T以上となった。さらに、圧延方向の磁束密度B8 が1.
81Tである製品について、X線で集合組織を調査した結
果を図2(3次元表示Φ2 =45°断面にて表示。数字は
ランダム組織に対する相対強度)に示すが、同図による
と{110}<001>組織が高度に集積して、他の方
位成分の存在頻度が少ないことが分かる。本実験によ
り、素材を高純度化することにより、短時間の再結晶焼
鈍にて{110}<001>組織を発達させ、圧延方向
の磁化特性を向上できることが判明した。この技術は、
従来の技術と異なり、再結晶焼鈍温度と時間を適宜変更
することにより、板厚が0.15mm以上の材料の結晶粒径を
任意に変更できる利点がある。
まで行って板厚:0.23mmに仕上げ、冷間圧延後の再結晶
焼鈍条件を変更することにより、結晶粒径を種々に変化
させ、得られた製品板の平均結晶粒径と加工性との関係
について調査した。なお、加工性は、直径:5mmのポン
チによる打抜きを 100ポイント実施し、穴周囲の割れ、
しわの発生率で評価した。得られた結果を図3に示す。
同図に示したとおり、平均粒径が約2mm以下の範囲で割
れやしわの発生率が低下することが認められた。
合には、歪取焼鈍を行い加工による歪を除去して磁気特
性を回復させる場合がある。従って、加工性を重視する
用途においても、歪取焼鈍後の磁気特性の変化に注意を
払う必要がある。そこで、上述の実験で得られた結晶粒
径が種々に異なる試料をせん断加工し、800 ℃で2時間
の歪取焼鈍を行った後の鉄損の変化について調査した。
その結果を、製品板の平均結晶粒径と歪取焼鈍前後での
鉄損の変化量との関係で図4に示す。同図から明らかな
ように、結晶粒径が大きい場合には、焼鈍によりせん断
歪が除去され鉄損が向上しているが、結晶粒径が0.15mm
未満の場合には鉄損が急激に劣化することが分かる。同
様に、磁束密度についても焼鈍前より低下していること
が判明した。
査したところ、せん断加工部から粒成長が起こり、粗大
に成長していることが判明した。この理由は、おそらく
結晶粒径が小さい場合には、粒成長の駆動力が残ってい
るため、加工部から方位の悪い結晶粒が粗大に成長した
ものと推定される。このように、製品板の粒径は0.15mm
以上でないと、歪取焼鈍後に磁気特性の劣化が生じると
いう問題も新たに知見された。
よって{110}<001>組織を発達させ得るので、
通常の方向性電磁鋼板とは異なり、フォルステライト被
膜の無い清浄な表面を有している。従って、金型による
打打ち抜き加工が容易という利点がある。以上の実験結
果に基づいて、{110}<001>組織が高度に発達
した平均粒径が0.15〜2.0mm の微細結晶組織を有し、し
かも圧延方向の磁束密度がB8 >1.70Tを満足する加工
性および磁気特性の良好な方向性電磁鋼板を開発したの
である。
構成要件の前記の範囲に限定した理由について述べる。
本発明の方向性電磁鋼板は、成分的にはSiを適量含有さ
せ、電気抵抗を増大させて鉄損を低減する必要があり、
鉄損改善のためには少なくとも 2.0wt%が必要である。
しかしながら、8.0 wt%を超えると磁束密度が低下する
だけでなく、製品の二次加工性が著しく劣化するので、
Si量は 2.0〜8.0 wt%の範囲に制限される。
0.15mmに満たないとハンドリングが困難なだけでなく、
素材の剛性が低下して打抜き加工性が劣化するので、加
工性を良好に維持するためには0.15mm以上の板厚とする
ことが必要である。また、電磁鋼板の平均粒径が0.15mm
に満たないと、前掲図4に示したとおり、加工後の歪取
り焼鈍の際に磁気特性が劣化し、一方 2.0mm超では、前
掲図3に示したとおり、良好な加工性が得られないの
で、平均粒径は0.15〜2.0 mmの範囲に制限される。
鋼板がトランス材あるいは磁気シールド材として使用さ
れる場合には、B8 >1.70Tであることが要請されてい
るため、この範囲に限定した。なお、電磁鋼板の表面に
は、フォルステライト被膜を形成させないことが良好な
打抜き加工性を得る上で有利であるが、この発明では最
終焼鈍を連続焼鈍で行うので、かような被膜が形成され
るおそれはない。
法において、溶鋼の成分組成および製造条件を前記の範
囲に限定した理由について述べる。 Si:2.0 〜8.0 wt% Siが 2.0wt%に満たないとγ変態を生じ、熱延組織が大
きく変化する他、最終冷間圧延後の再結晶焼鈍において
高温で通板することができないので、良好な磁気特性を
得ることができず、一方8wt%を超えると製品の二次加
工性が悪化し、さらに飽和磁束密度も低下するので、Si
量は 2.0〜8.0 wt%の範囲に制限される。
が、含有量が 0.005wt%未満ではその添加効果に乏し
く、一方 3.0wt%を超えると冷間加工が困難となるの
で、Mn量は 0.005〜3.0 wt%の範囲とした。
いて{110}<001>粒が良好に発達するが、含有
量が0.0010wt%に満たないと{110}<001>方位
の強度が低下して磁束密度が低下し、一方Alが0.012 wt
%を超えると、再結晶時の粒成長が抑制されて鉄損が劣
化するので、Al量は0.0010〜0.012 wt%の範囲とした。
優先成長に対して有害なだけでなく、地鉄中に残存して
鉄損を劣化させるので、いずれも 30ppm以下に低減する
ことが肝要である。なお、Cは、製品が磁気時効を起こ
さないように、50 ppm以下まで低減することが望まし
い。
造塊法あるいは連続鋳造法でスラブとする。その他、10
0 mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよ
い。かかるスラブは、通常、スラブ加熱後、熱問圧延に
供するが、鋳造後加熱をせずに直ちに熱間圧延に供して
もよい。また、特に薄鋳片の場合には、熱間圧延しても
良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進め
ても良い。スラブ加熱温度については、素材中にインヒ
ビター成分を含まないので、熱間圧延が可能な最低限の
温度である1100℃程度で十分である。ついで、必要に応
じて熱延板焼鈍施を施したのち、1回または中間焼鈍を
挟む2回以上の冷間圧延を施してから、連続焼鈍による
再結晶焼鈍を施し、その後必要に応じて無機、半有機、
有機系のコーティングを焼き付けて製品とする。
性の向上および安定化を図る上で有用な処理であるが、
いずれも生産コストを上昇させることになるので、経済
的観点から取捨選択が決定される。ここに、熱延板焼鈍
および中間焼鈍の焼鈍温度は、 800〜1050℃とする必要
がある。というのは、焼鈍温度が 800℃に満たないと焼
鈍時に再結晶が十分に進行しないため効果が薄く、一方
1050℃を超えると{110)<001>組織の発達が阻
害されるからである。
率は50〜80%とする必要がある。というのは、圧下率が
この範囲外では{110}<001>組織の発達が不十
分となり、満足いくほどの磁気特性の向上が望めないか
らである。その後、再結晶焼鈍を施すわけであるが、こ
の再結晶焼鈍は連続焼鈍で実施する。というのは、連続
焼鈍では、前述したとおり材料の結晶粒径を任意に変更
できる利点があるだけでなく、鋼板表面にフォルステラ
イト被膜を形成されないので、打抜き加工性の点でも有
利だからである。ここに、かかる再結晶焼鈍における焼
鈍条件は、 900〜1100℃、30〜300 秒程度とするのが好
適である。
鈍後に、浸珪法によって鋼板表面のSi量を増加させる技
術を併用しても良い。また、鋼板を積層して使用する場
合には、鉄損を改善するために、鋼板表面に絶縁コーテ
ィングを施すことが有効である。この目的のためには2
種類以上の被膜からなる多層膜であっても良い。また、
用途に応じては、樹脂等を混合させたコーティングを施
しても良い。
度成分系の素材を用い、ある特定の条件で製造すること
によって、再結晶後に高度に{110}<001>が発
達する組織が得られる理由についての発明者らの考え
を、インヒビターを使用する従来の場合と比較して以下
に述べる。さて、発明者らは、再結晶時における{11
0}<001>組織の発達過程を詳しく調査したとこ
ろ、再結晶完了時には{110}<001>組織は十分
発達しでおらず、再結晶完了後の粒成長段階で{11
0}<001>が優先的に成長することが判明した。こ
のような{110}<001>粒の優先成長について
は、インヒビターの存在下における二次再結晶に類似し
た粒成長が起きているものと考えられる。
ターの存在下において{110}<001>粒が二次再
結晶する原因についても研究を重ねた結果、一次再結晶
組織における方位差角が20〜45°である粒界が重要な役
割を果たしていることを見出し、Acta Materia1 45巻(1
997)85ページに報告した。すなわち、図5は、方向性電
磁鋼板の一次再結晶組織における方位差角が20〜45°で
ある粒界の各方位粒に対する存在頻度であるが、ゴス方
位が最も高い頻度を持つ。そして、方位差角が20〜45°
の粒界は、C. G. Dunnらによる実験データ(AIME Trans
action 188巻 (1949) 368 ページ)によれば、高エネル
ギー粒界である。この高エネルギー粒界は粒界内の自由
空間が大きく乱雑な構造をしている。粒界拡散は粒界を
通じて原子が移動する過程であるので、粒界中の自由空
間の大きい、高エネルギー粒界のほうが粒界拡散が速
い。二次再結晶は、インヒビターと呼ばれる析出物の拡
散律速による成長に伴って発現することが知られてい
る。高エネルギー粒界上の析出物は、仕上焼鈍中に優先
的に粗大化が進行するので、優先的にピン止めがはずれ
て、粒界移動を開始しゴス粒が成長する機構を示した。
ーを使用して二次再結晶させるためには、Al, B, Se,
Sおよびそれらと結合するN, Mn, Cuを適正量含有さ
せ、かつインヒビターを微細に分散させる必要があり、
そのためには工程条件特に熱延工程に細心の注意を払う
必要がある。そういった条件が満たされない場合には二
次再結晶粒が起きず、正常粒成長が生じるが、その時に
は{110}<001>組織が発達しないことがよく知
られている。
造の乱雑なエネルギーの高い粒界に偏析し易く、Al, S
i, Sおよびそれらと結合するN, Mn, Cuが同時に適正
量含有されていない場合、あるいは微細に析出物が分散
していない場合には、Se, S,Nの偏析効果の方が析出
物による方位選択機構よりも影響が大きくなるので、結
果として高エネルギー粒界と他の粒界の移動速度に差が
なくなっているものと考えられる。素材の高純度化によ
って、このような不純物元素とくにSe, S, N,Oの影
響を排除してやれば、高エネルギー粒界の構造に依存す
る本来的な移動速度差が顕在化し、また粒界移動速度も
素材の高純度化によって増大するので、インヒビター成
分を含まない高純度成分系においても、再結晶完了後の
粒成長過程で{110}<001>粒が優先的に成長す
るものと推定される。
とにより、再結晶完了後の粒成長過程において良好に
{110}<001>粒が発達し、磁気特性が向上す
る。なお、本発明では、Nを可能な限り低減するので、
A1Nをインヒビターとして使用し二次再結晶を利用する
従来法とは技術内容が根本的に異なる。かようなAlによ
る磁気特性の向上の理由は明らかではないが、微量Alが
鋼中に微量に残留するOを固定してマトリックスを清浄
にする働き、あるいは表層に緻密な酸化層を形成して再
結晶焼鈍時に窒化を抑える働きが有効に作用するものと
推定される。
板を製造する技術であるが、この製造方法は、従来の連
続焼鈍による方向性電磁鋼板の製造方法とは、その内容
が大きく異なる。すなわち、従来の連続焼鈍による方向
性電磁鋼板の製造技術は、特公昭48-3929 号公報、特公
昭62-31050号公報、および特開平5-70833 号公報に開示
されているように、AlN,MnS, MnSeなどのインヒビタ
ーを使用して短時間に二次再結晶させる技術である。し
かしながら、インヒビター成分は連続焼鈍による短時間
焼鈍では除去することができないので、製品板中に残留
する。インヒビター成分、特にSe, Sが鋼中に残留して
いると、磁壁の移動を妨げるので、鉄損特性に悪影響を
及ぼし、さらにこれらの元素は脆化元素でもあるので、
製品の二次加工性も低下させる。従って、インヒビター
を使用する限り、連続焼鈍では良好な磁気特性と加工性
は得られない。これに対し、本発明では、インヒビター
成分の含有を極力低減しているので、連続焼鈍によって
も磁気特性および加工性に優れた方向性電磁鋼板を得る
ことができるのである。
0030wt%を含み、残部は実質的にFeの組成になるスラブ
を、連続鋳造にて製造した。ついで、このスラブを、11
50℃で20分加熱したのち、熱間圧延にて 2.0mm厚の熱延
板に仕上げた。ついで、1000℃, 60秒の熱延板焼鈍後、
冷間圧延にて0.90mmの中間板厚に仕上げたのち、 850
℃、60秒の中間焼鈍を施し、その後2回目の冷間圧延で
0.35mmの最終板厚に仕上げた(最終冷延における圧下
率:61.1%)。ついで、水素雰囲気で表1に示す条件下
で再結晶焼鈍を施したのち、重クロム酸アルミニウム、
エマルジョン樹脂、エチレングリコールを重量比で3:
3:1の割合に混合したコーティング液を塗布し、300
℃で焼き付けて製品とした。かくして得られた製品板の
平均粒径、磁束密度、鉄損および加工性について調べた
結果を、表1に併記する。なお、加工性は、直径:5mm
のポンチによる打抜きを 100ポイント実施し、穴周囲の
割れ、しわの発生率で評価した。
0mm の範囲において、良好な加工性と共に、圧延方向の
磁束密度がB8 >1.70Tを満足する良好な磁気特性が得
られている。
造し、そのまま加熱せずに、熱間圧延にて 2.0mm厚に仕
上げた。ついで、 900℃,30秒間の熱延板焼鈍後、冷間
圧延にて0.60mmの中間板厚に仕上げたのち、 900℃,30
秒の中間焼鈍を施してから、2回目の冷間圧延で0.20mm
の最終板厚に仕上げた(最終冷延における圧下率:66.6
%)。ついで、窒素雰囲気で1000℃, 180秒間の再結晶
焼鈍を施したのち、リン酸アルミニウム、重クロム酸カ
リウム、ホウ酸を重量比で30:10:1の割合に混合した
コーティング液を塗布し、 300℃で焼き付けて製品とし
た。かくして得られた製品板の平均粒径、磁束密度、鉄
損および加工性について調べた結果を、表2に併記す
る。なお、加工性の評価方法は実施例1と同様である。
有量をそれぞれ30ppm 以下に低減することにより、平均
粒径が0.15〜2.0mm の範囲で、良好な加工性および磁気
特性を有する製品が得られている。
0050wt%を含み、残部は実質的にFeの組成になる8mm厚
の薄鋳片で製造し、そのまま加熱することなく熱間圧延
にて 2.0mmに仕上げた。スラブを、連続鋳造にて製造し
た。ついで、1000℃, 60秒の熱延板焼鈍後、冷間圧延に
て0.90mmの最終板厚に仕上げた(最終冷延における圧下
率:55.0%)。ついで、Al雰囲気で表3に示す条件下で
再結晶焼鈍を施した後、製品とした。かくして得られた
製品板の平均粒径、磁束密度、鉄損および加工性につい
て調べた結果を、表3に併記する。なお、加工性は、直
径:5mmのドリルによる穴開けを 100ポイント実施し、
穴周囲の割れ、しわの発生率で評価した。
満足する場合には、良好な加工性および磁気特性が得ら
れている。
ーを含まない高純度材を素材とし、所定の条件で冷延板
としたのち、連続焼鈍による再結晶焼鈍を施すことによ
って、{110}<001>組織を効果的に発達させる
ことかでき、その結果、平均粒径が0.15〜2.0 mmで、し
かも圧延方向の磁束密度がB8 >1.70Tを満足する加工
性と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得るこ
とができる。
の磁束密度B8 との関係を示したグラフである。
係を示したグラフである。
の変化量との関係を示したグラフである。
差角が20〜45°である粒界の各方位粒に対する存在頻度
(%)を示した図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 連続焼鈍による再結晶焼鈍を施して得た
方向性電磁鋼板であって、Si:2.0 〜8.0 wt%を含み、
板厚が0.15mm以上、平均粒径が0.15〜2.0 mmで、しかも
圧延方向の磁束密度がB8 >1.70Tを満足することを特
徴とする加工性と磁気特性が良好な方向性電磁鋼板。 - 【請求項2】 Si:2.0 〜8.0 wt%、Mn:0.005 〜3.0
wt%、Al:0.0010〜0.012 wt%を含み、かつSe, S,
N,Oの含有量をそれぞれ 30ppm以下に低減した溶鋼か
ら、通常造塊法または連続鋳造法により製造した鋳片
を、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したの
ち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施
し、ついで連続焼鈍による再結晶焼鈍を施し、必要に応
じて絶縁コーティングを施す一連の工程からなる方向性
電磁鋼板の製造方法において、 熱延板焼鈍および中間焼鈍の焼鈍温度を 800〜1050℃、
最終冷延における圧下率を50〜80%とすることにより、
板厚が0.15mm以上、平均粒径が0.15〜2.0 mmで、しかも
圧延方向の磁束密度がB8 >1.70Tを満足する加工性と
磁気特性が良好な方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 請求項2において、通常造塊法または連
続鋳造法により製造した鋳片を、加熱することなく直接
熱間圧延に供することを特徴とする加工性と磁気特性が
良好な方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 請求項2において、溶鋼からの直接鋳造
法で得られた厚さ:100mm 以下の薄鋳片を素材として熱
間圧延すること、または該薄鋳片をそのまま熱延板の代
わりに使用することを特徴とする請求項2に記載の方向
性電磁鋼板の製造方法。
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