JP2000158116A - 鋳造金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金型の外に溶湯のフラッシュに対する防御策
を不要とし、溶湯の飛び出しを確実に防止できるように
した安全性の高い金型を提供する。 【解決手段】 高圧の金属溶湯を金型内のキャビティに
充填し鋳造品を成形する鋳造金型において、金型のパー
ティング面に、キャビティを四方から囲むようにフラッ
シュ防止溝を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金型外への溶湯の
飛び出しを効果的に防止することができるようにした鋳
造金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】ダイカスト鋳造では、金属溶湯を高圧力
で金型内のキャビティに充填する。その溶湯の充填は、
大きな型締め力を金型に加えた状態で行われる。金型に
おいて固定金型と移動金型のパーティング面は、この大
きな型締め力によって密着しており、高圧の溶湯は金型
内に密閉される。

【０００３】しかし時として、高圧の溶湯が固定金型と
移動金型のパーティング面のごくわずかな隙間から金型
外部に飛び出すというフラッシュ現象が発生する。この
フラッシュ現象は、安全上問題になるので、従来の金型
では、金型分割ラインに沿って金型の外側にフラッシュ
防止金具を取り付け、この金具を盾にして溶湯が金型の
周囲に飛散しないようにして安全を図っている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ダイカ
ストの金型では、キャビティ回りにオーバーフロー、エ
アベント用の通路があり、また、特殊なものでは、溶湯
の充填と同時にキャビティを真空引きするための真空ラ
ンナーがある。これらの製品キャビティ以外の空間に
は、鋳造時には、キャビティ同様に高圧の溶湯が充填さ
れる。そして、金型内では、オーバーフロー、エアベン
ト用の通路等にも製品キャビティと同一の高い鋳造圧力
がかかるため、これらの空間にある溶湯が金型のパーテ
ィング面の隙間から金型外に飛び出すこともある。従来
のダイカストの金型では、フラッシュ現象が様々な部分
から生じ、そしてその飛び出す方向も予測できないた
め、従来のフラッシュ防止金具は、あらゆる方向へ飛び
散ろうとする溶湯に対しては十分な防御となっていない
のが現状である。

【０００５】また、鋳造品によっては、溶湯を金型キャ
ビティに充填してから、さらに金型を型締めして鋳造品
を圧縮するようにするものがある。このような鋳造機に
使用する金型では、とりわけ溶湯のフラッシュが発生し
易く、その防止が課題とされている。

【０００６】そこで、本発明の目的は、金型の外に防御
策を不要とし、溶湯の飛び出しを確実に防止できるよう
にした安全性の高い金型を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明は、高圧の金属溶湯を金型内のキャビティ
に充填し鋳造品を成形する鋳造金型において、金型のパ
ーティング面に、キャビティを四方から囲むようにフラ
ッシュ防止溝を設けたことを特徴とするものである。

【０００８】本発明の鋳造金型では、フラッシュ防止効
果を確実にするために、前記フラッシュ防止溝の容量が
少なくとも鋳造品のビスケットの容量よりも大きいこと
が好ましい。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明による鋳造金型の一
実施形態について、添付の図面を参照しながら説明す
る。 第１実施形態 図１は、本発明を横形ダイカスト機用の金型に適用した
実施形態を示す。金型は、固定型２と、これに対向して
移動する移動型４とからなり、この固定型２と移動型４
とによってキャビティ６が形成されている。

【００１０】固定型２には、プランジャスリーブ８が取
り付けられている。このプランジャスリーブ８にはプラ
ンジャ１０が挿入されている。このプランジャ１０は、
図示しない射出シリンダと連結されており、この射出シ
リンダに駆動されて先端部のプランジャチップ１０ａで
溶湯を加圧するようになっている。加圧された溶湯は、
ランナー１２、ゲート１３を通ってキャビティ６に充填
される。

【００１１】図２は、図１のＩＩ−ＩＩ矢視図で、移動
型４のパーティング面１４を示す。このパーティング面
１４には、キャビティ６から溢れ出た溶湯を受ける空間
となるオーバーフロー部１５ａ、１５ｂ、１５ｃが複数
箇所設けられている。これらのオーバーフロー部１５
ａ、１５ｂ、１５ｃからはエアベント通路１６ａ、１６
ｂ、１６ｃが外側に延びるようになっている。本発明の
金型では、キャビティ６を四方から囲むようにして、そ
れぞれ細長い溝からなるフラッシュ防止溝１８ａ、１８
ｂ、１８ｃ、１８ｄがパーティング面１４に形成されて
いる。エアベント通路１６ａ、１６ｂ、１６ｃは、それ
ぞれフラッシュ防止溝１８ａ、１８ｂ、１８ｃと通じて
いる。

【００１２】次に、図３は、プランジャ１０が前進して
溶湯Ｍがキャビティ６に充填された状態を示している。
この図３では、プランジャ１０は前進限に位置してい
る。ビスケット部１９は、前進限位置にあるプランジャ
チップ１０ａの端面とランナ１２の入口までの厚さｔを
もち、この厚さｔや、ビスケット部１９の体積は鋳造品
の形状、溶融金属の種類や凝固時間など、様々な要素を
考慮して決められるものである。

【００１３】溶湯の射出充填が完了した時点では、ラン
ナ１２、キャビティ６の他、オーバーフロー部１５ａ乃
至１５ｃも溶湯で満ちている。したがって、オーバーフ
ロー部１５ａ乃至１５ｃにも高圧の鋳造圧力がかかって
いる。そして、何かの拍子に溶湯が固定型２と移動型４
のパーティング面のごくわずかの隙間から外に飛び出そ
うとする場合がある。その場合、どの方向に飛び出そう
とするのか全く予測できない。

【００１４】本実施形態による金型では、キャビティ６
およびオーバーフロー部１５ａ乃至１５ｃを四方から取
り囲むようにフラッシュ防止溝１８ａ乃至１８ｄがある
ので、どの方向へ飛び出す溶湯であっても、フラッシュ
防止溝１８ａ乃至１８ｄのいずれか一つの溝が受けるの
で、金型外部への飛び出しを防止することができる。ま
た、フラッシュ防止溝１８ａ乃至１８ｄの容量につい
て、そのいずれの溝もビスケット部１９の体積よりも大
きくしておけば、溶湯のフラッシュ防止が確実となる。
ビスケット部１９の体積ＶBは、その厚さをｔ、プラン
ジャスリーブ８の内径をｄとすれば、 ＶB＝πｄ²ｔ／４ であるが、この体積は見方を変えれば、金型の外部にフ
ラッシュし得る溶湯の最大量である。したがって、フラ
ッシュ防止溝１８ａ乃至１８ｄのいずれも上記ＶBより
も大きな容量をもっていれば、フラッシュした溶湯は外
に飛び出さないようにフラッシュ防止溝１８ａ乃至１８
ｄによって受容される。

【００１５】なお、図４に示すように、図２のフラッシ
ュ防止溝１８ａ乃至１８ｄを一つの溝につなげて、キャ
ビティ６およびオーバーフロー部１５ａ乃至１５ｃの回
りを周回するフラッシュ防止溝２０としてもよい。 第２実施形態 次に、本発明の他の実施形態について、図５乃至図７を
参照して説明する。図５は、本発明による鋳造金型を縦
型機に適用した第２の実施形態を示す。３０は固定ダイ
プレートで、この固定ダイプレート３０に固定金型３１
が取り付けられている。移動ダイプレート３２は、固定
ダイプレート３０から鉛直に立設されたタイバー３３を
案内に上下に移動可能なように取り付けられている。移
動ダイプレート３２の下面には、固定金型３１と対向す
るようにして移動金型３４が取り付けられている。

【００１６】金型内のキャビティ３６へは、図示しない
溶湯保持炉からノズル部３７を通って供給される。この
実施の形態では、圧力気体により溶湯保持炉内の湯面を
加圧して溶湯Ｍをキャビティ３６に圧送するようにして
いるが、電磁ポンプやメカニカルポンプによってもよ
い。ノズル部３７の先端部は、固定ダイプレート３０を
貫通しており、ノズル部３７の端面は、断熱リング３８
を介して固定金型３１に当接するようになっている。ノ
ズル部３７の外周部には、溶湯Ｍが冷えるのを防止する
ためにヒータ３９が巻装されている。

【００１７】固定金型３１には、キャビティ３６の外側
を囲むようにして、リング状のシールドブロック４０が
設けられている。このシールドブロック４０は、固定金
型３１の内部に複数箇所埋設された弾性体であるコイル
スプリング４１により支持され、このコイルスプリング
４１がシールドブロック４０を上方に付勢し、シールド
ブロック４０の先端が所定の製品圧縮規制量δだけ突出
するようにする付勢手段を構成するようになっている。

【００１８】このようなシールドブロック４０は、下面
に位置決めボルト４２の先端部が螺合することにより、
固定金型３１において位置決めされる。この位置決めボ
ルト４２は、固定金型３１の底面からねじ込まれるよう
になっていて、位置決めボルト４２の長さｌを変え、こ
の位置決めボルト４２を締切ることによりシールドブロ
ック４０の突出量が調整可能になっている。

【００１９】次に、型締機構５０について説明する。こ
の型締機構５０は、移動ダイプレート３２とトッププラ
テン５１の間に組み込まれている型締シリンダ５２と押
込シリンダ５３からなる多段シリンダを用いた油圧式で
ある。押込シリンダ５３と型締シリンダ５２とは直列に
連設されている。型締シリンダ５２のピストンロッド５
４は、移動ダイプレート３２に連結され、ピストン５５
の前進・後退により金型が開閉される。また、押込シリ
ンダ５３のピストン５６が前進すると、型締シリンダ５
２のピストン５５にかかる圧力が増圧され、金型に最終
型締力が作用するようになっている。

【００２０】この第２実施形態では、移動金型３４のパ
ーティング面でシールドブロック４０の上にあたる位置
にフラッシュ防止溝６０が設けられている。このフラッ
シュ防止溝６０は、キャビティ３６を取り囲む溝である
が、シールドブロック４０のフラッシュ防止機能の補完
するものとして設けられている。

【００２１】次に、図５により低圧型締時の動作を説明
する。型締シリンダ５２のピストン５５が圧油により前
進し、移動金型３４を所定の低圧型締力Ｆで固定金型３
１に対して押し付ける。このとき、位置決めボルト４２
は、その長さｌになるように締め込まれている。また、
コイルスプリング４１がシールドブロック４０を押し上
げる反発力ｆの方が大きいような型締力Ｆ、すなわち、
ｆ ＞ Ｆ で型締が行われる。このため、固定金型３
１と移動金型３４の互いのパーティング面は、密着せず
に型締めされ、製品圧縮規制量δだけすき間が保たれ
る。

【００２２】次に、図６は、キャビティ３６内に溶湯Ｍ
を充填した状態を示す。このとき、製品圧縮規制量δだ
け固定金型３１と移動金型３４の互いのパーティング面
の間にすき間があるが、シールドブロック４０の端面は
移動金型３４に密着しているため、キャビティ３６内に
充填された溶湯Ｍは飛散しないようになっている。しか
も、フラッシュ防止溝６０があるため、金型の外に飛び
出す前に溶湯Ｍはフラッシュ防止溝６０に入るので、二
重の溶湯飛散防止対策が講じられている。なお、溶湯Ｍ
の充填に際しては、キャビティ３６内のガスは、ガス抜
き弁６２から金型外に排出される。

【００２３】図７は、押込シリンダ５３により増圧して
溶湯Ｍを押込んでいる状態を示す。この押込は、溶湯温
度が所定の温度まで低下してから行われる。溶湯温度が
所定温度まで低下すると、ガス抜き弁６２が閉められ、
押込シリンダ５３のヘッド側のシリンダ室に圧油が供給
されて押込が開始される。

【００２４】このときの押込力をＦ1 とすると、コイル
スプリング４１の反発力ｆ、製品の圧縮抵抗ｐとの関係
では、 ｐ ＋ ｆ ＜ Ｆ1 となるような大きな押込力がシールドブロック４０に作
用するようになっている。シールドブロック４０と位置
決めボルト４２が押し下げられる結果圧縮される。この
圧縮により、溶融金属はフラッシュ防止溝６０まで押し
出されて最終圧縮される。

【００２５】製品の圧縮の規制は、シールドブロック４
０によって移動金型３４の最終型締開始位置を規制する
ことにより行われる。この場合、圧縮率は、製品圧縮規
制量δと１対１に対応し、製品圧縮規制量δは、上記の
ようにコイルスプリング３２の反発力により一定とする
ことができるので、鋳造サイクルを連続して行っても、
製品圧縮率にばらつきがなく、繰り返し精度の高い製品
圧縮率が得られる。したがって、製品の寸法精度、強度
とも品質の良い製品を成形することができる。

【００２６】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、金型のパーティング面に、キャビティを四方
から囲むようにフラッシュ防止溝を設けているので、金
型の外に防御策を不要とし、溶湯の飛び出しを確実に防
止でき、安全性を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態による鋳造金型の断面図。

【図２】図１の鋳造金型の移動金型のパーティング面を
示す図１のII−II矢視図。

【図３】図１の鋳造金型に溶湯が充填された状態の断面
図。

【図４】図１の鋳造金型の変形例を示す平面図。

【図５】本発明の他の実施例による金型が用いられる縦
形機の断面図。

【図６】図５の実施形態による縦形の溶湯充填時の動作
を示す断面図。

【図７】図５の実施形態による縦形の溶湯充填時の動作
を示す断面図。

【符号の説明】

２ 固定金型 ４ 移動金型 ６ キャビティ ８ プランジャスリーブ １０ プランジャ １０ａ プランジャチップ １２ ランナ １３ ゲート １４ パーティング面 １５ａ〜１５ｃ オーバーフロー部 １８ａ〜１５ｄ フラッシュ防止溝 ３１ 固定金型 ３４ 移動金型 ４０ シールドブロック ６０ フラッシュ防止溝

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】高圧の金属溶湯を金型内のキャビティに充
   填し鋳造品を成形する鋳造金型において、金型のパーテ
   ィング面に、キャビティを四方から囲むようにフラッシ
   ュ防止溝を設けたことを特徴とする鋳造金型。
2. 【請求項２】前記フラッシュ防止溝の容量が少なくとも
   鋳造品のビスケットの容量よりも大きいことを特徴とす
   る請求項１に記載の鋳造金型。