JP2000144910A - プレストレストコンクリート製単層ラチスドームの組立構法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ＰＣａ部材とＰＣａ接合部とを、曲げ剛性が
極めて低いフレキシブルな鋼材を使用し、ＰＣ圧着工法
を実施して接合し組み立てる単層ラチスドームの組立構
法を提供する。 【解決手段】 プレキャストコンクリート部材の端部の
上面又は下面に定着部を設けると共に同プレキャストコ
ンクリート部材の端面から前記定着部へ貫通するシース
を予め埋設しておき、プレキャストコンクリート製の接
合部を用意し、同接合部の内部には前記プレキャストコ
ンクリート部材の定着部のシースと一致する配置でシー
スを貫通状態に埋設しておき、前記プレキャストコンク
リート部材は、前記接合部を仲介として突き合わせ、両
者のシースへストランド等の曲げ剛性が極めて低い鋼材
を共通に通し、同鋼材にポストテンションを導入して圧
着し接合して組み立てる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、単層ラチスドー
ムをプレストレストコンクリート（以下、ＰＣと略す場
合がある。）圧着工法を適用して組み立てる構法の技術
分野に属する。

【０００２】

【従来の技術】従来、シエルドームや膜構造ドーム以外
のドームは、図１と図２に示したように、通常は鉄骨ト
ラス部材、鉄骨ラチス部材によって構築することが多
い。

【０００３】その他、特開昭６１−１７４９号公報に記
載されたシエル構造物の施工方法は、プレキャストコン
クリート（以下、ＰＣａと略す場合がある。）のピース
を積み上げてシエル構造物を建造する施工方法であり、
ＰＣａピースの側辺に設けた切り欠きにＰＣ鋼材を突き
出させ隣接するＰＣａピース同士はＰＣ鋼材を緊張しプ
レストレスを導入して定着することが特徴である。

【０００４】

【本発明が解決しようとする課題】ドームを鉄骨トラス
部材や鉄骨ラチス部材によって構築する場合には、図２
に示したように各部材ａの接合部ｂの製作にあたって非
常に高い精度を要求される。のみならず建築施工にあた
っても、やはり非常に高い精度を要求される。しかも鉄
骨トラス部材や鉄骨ラチス部材等の各部材の接合角度が
多種多様となり多岐にわたるので、接合部のコストが高
くなり、接合作業が面倒である。

【０００５】上記公開公報に記載されたＰＣａピースを
積み重ねる施工法は、ＰＣ鋼材を緊張しプレストレスを
導入して定着する技術に注目点はあるが、所詮ラチスド
ームの組立構法とは一線を画する技術である。

【０００６】本発明の目的は、ＰＣａ部材とＰＣａ接合
部とを、曲げ剛性が極めて低いフレキシブルな鋼材を使
用し、ＰＣ圧着工法を実施して接合し組み立てる単層ラ
チスドームの組立構法を提供することである。

【０００７】本発明の更なる目的は、任意の接合角度を
有する複数のＰＣａ部材を、ＰＣａ製の接合部（ジョイ
ントブロック）を介して、自在に接合し組み立てる単層
ラチスドームの組立構法を提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めの手段として、請求項１に記載した発明に係るプレス
トレストコンクリート製単層ラチスドームの組立構法
は、プレキャストコンクリート部材によって構成される
単層ラチスドームの組立構法において、プレキャストコ
ンクリート部材の端部の上面又は下面に定着部を設ける
と共に同プレキャストコンクリート部材の端面から前記
定着部へ貫通するシースを予め埋設しておくこと、プレ
キャストコンクリート製の接合部を用意し、同接合部の
内部には前記プレキャストコンクリート部材の定着部の
シースと一致する配置でシースを貫通状態に埋設してお
くこと、前記プレキャストコンクリート部材は、前記接
合部を仲介として突き合わせ、両者のシースへストラン
ド等の曲げ剛性が極めて低い鋼材を共通に通し、同鋼材
にポストテンションを導入して圧着し接合して組み立て
ることを特徴とする。請求項２に記載した発明に係るプ
レストレストコンクリート製単層ラチスドームの組立構
法は、プレキャストコンクリート部材によって構成され
る単層ラチスドームの組立構法において、プレキャスト
コンクリート部材の端部の上面又は下面に定着部を設け
ると共に同部材の端面から前記定着部へ貫通するシース
を予め埋設しておくこと、プレキャストコンクリート製
の接合部を用意し、同接合部の内部に、前記プレキャス
トコンクリート部材が対応する部分にはその定着部のシ
ースと一致する配置でシースを貫通状態に埋設し、非対
応のプレキャストコンクリート部材の定着部のシースと
一致する位置には定着金具により埋設した鋼材を突出さ
せておくこと、前記プレキャストコンクリート部材は、
前記接合部を仲介として突き合わせ、相互に貫通するシ
ースへはストランド等の曲げ剛性が極めて低い鋼材を共
通に通し、非対応のプレキャストコンクリート部材のシ
ースへは前記突出した鋼材を通し、それぞれの鋼材にポ
ストテンションを導入して圧着し接合して組み立てるこ
とを特徴とする。

【０００９】請求項３に記載した発明に係るプレストレ
ストコンクリート製単層ラチスドームの組立構法は、請
求項１又は２に記載したプレキャストコンクリート部材
とプレキャストコンクリート製の接合部それぞれの接触
面の隙間にはモルタルを注入することを特徴とする。

【００１０】

【発明の実施の形態及び実施例】図３と図４は、請求項
１〜３記載の発明に係るプレストレストコンクリート製
単層ラチスドームの組立構法の実施形態を概念的に示し
ている。即ち、単層ラチスドームの骨格を形成する複数
のＰＣａ部材１…同士の接合を、ＰＣａ接合部２（ジョ
イントブロック）を仲介として突き合わせ、ＰＣ圧着工
法を実施して行い、プレストレストコンクリート製単層
ラチスドームを組立てる。

【００１１】より具体的には、図５Ａ、Ｂに示したよう
に、プレキャストコンクリート部材１の端部の上面に定
着部３を設けると共に同部材１の端面４から前記定着部
３へ貫通するシース５を予め埋設しておく。なお、前記
定着部３を設ける位置は図示例に限らず、前記部材１の
端部の下面に設けても同様に実施できる。

【００１２】一方、プレキャストコンクリート製の接合
部２は、図６Ａ〜Ｃに示したように、その内部に前記部
材１に埋設されたシース５と一致する配置でシース６…
を貫通状態に埋設しておく（請求項１記載の発明）。ま
た、前記プレキャストコンクリート部材１の位置決めの
ため、同部材１と同数の切り欠き部２ａを設けることが
好ましい。図７は、前記部材１が偶数本、例えば６本の
ＰＣａ部材１…が対称性をもって放射状に集合した状態
を示している。この場合、前記接合部２の内部には、相
対峙する一対のＰＣａ部材１，１の各々に埋設されたシ
ース５，５を略一直線状で結ぶ配置にシース６を貫通状
態に埋設しておく。また、前記接合部２には、前記部材
１と同数の６つの切り欠き部２ａが設けられる。

【００１３】そして、ＰＣａ接合部２の各切り欠き部２
ａに対して各プレキャストコンクリート部材１を当接さ
せ、相対峙する一対のＰＣａ部材１，１のシース５，５
とＰＣａ接合部２のシース６へストランド７を共通に通
し、同ストランド７へポストテンションを導入して定着
し接合する。即ち、各プレキャストコンクリート部材１
は、ＰＣａ接合部２を仲介として突き合わせ、図７のよ
うに組み立てるのである。なお、シース５，６へ共通に
通す鋼材は、ストランド７に限らず、曲げ剛性が極めて
低い鋼材であれば同様に実施できる。よって、ＰＣａ部
材１とＰＣａ接合部２はフレキシブルな接合が可能で、
図示例に限らず、ＰＣａ部材１が非対称性で放射状に集
合する場合でも容易に接合できる。

【００１４】また、上記の組立構法において、各プレキ
ャストコンクリート部材１とプレキャストコンクリート
製接合部２との接触面の隙間にはモルタルを注入して隙
間を埋めると共に接合部の製作誤差を吸収し、もって製
作の要求精度を緩和し、施工精度の向上を図る（請求項
３記載の発明）。以下に説明する実施例も同様の技術的
思想とする。図８は、前記ＰＣａ部材１が奇数本、例え
ば３本のＰＣａ部材１…が非対称性で放射状に集合した
状態を示している。この場合、前記ＰＣａ接合部２の内
部に、前記ＰＣａ部材１が対応する部分にはその定着部
３，３のシース５，５と一致する配置でシース６を貫通
状態に埋設し、非対応のＰＣａ部材１の定着部３のシー
ス５と一致する位置には定着金具８により埋設した鋼材
９を突出させておくことが好ましい（請求項２記載の発
明）。この実施例でも、ストランド７等の曲げ剛性が極
めて低くフレキシブルな鋼材を使用するので、比較的簡
単に、隣接するＰＣａ部材１，１とＰＣａ接合部２のシ
ース５，６を共通に通しポストテンションを導入して定
着し接合することができる。そして定着金具８と共に埋
設された鋼材９は、当接するＰＣａ部材１のシース５へ
通し、やはり同鋼材９にポストテンションを導入して定
着接合し組み立てるのである。なお、前記鋼材９は、も
ちろんストランド等の曲げ剛性が極めて低い鋼材でも実
施できる。

【００１５】

【本発明が奏する効果】請求項１〜３に記載した発明に
係るプレストレストコンクリート製単層ラチスドームの
組立構法によれば、 （１）ＰＣａ部材とＰＣａ接合部とを、曲げ剛性が極め
て低いフレキシブルな鋼材を使用してＰＣ圧着工法を実
現できるので、任意の接合角度を有する複数のプレキャ
ストコンクリート部材の接合が容易に可能である。ま
た、部材及び接合部ともにプレキャストコンクリート製
であり、乾式工法なので、工期の短縮を図れる。 （２）プレキャストコンクリート製の接合部は、多種多
様な形態、構造のものを比較的安価に製造できるほか、
モルタルの注入によってプレキャストコンクリート部材
及び接合部の製作要求精度が緩和され、また、製作誤差
とは無関係に位置決めと組立を行えるので、施工精度が
向上する。 （３）ＰＣａ部材端部に格別の定着部を設ける必要がな
く同ＰＣａ部材の径が必要以上に太くなることも無いの
で、より多くの部材を、より自由な角度で接合できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】単層ラチスドームの概念図である。

【図２】図１のＡ部の拡大図である。

【図３】本発明の組立構法の実施形態を示す基本概念図
である。

【図４】本発明の組立構法の実施形態を示す基本概念図
である。

【図５】Ａはプレキャストコンクリート部材の実施形態
を示した平面図であり、Ｂは同縦断面図である。

【図６】ＡはＰＣａ接合部の実施形態を示した斜視図で
あり、Ｂは同平面図であり、Ｃは同正面図である。

【図７】Ａは本発明の組立構法の実施例を示した平面図
であり、ＢはＡの−線矢視断面図である。

【図８】本発明の組立構法の異なる実施例を示した平面
図である。

【符号の説明】

１ プレキャストコンクリート部材 ２ 接合部 ３ 定着部 ４ 端面 ５ シース ６ シース ７ ストランド ８ 定着金具 ９ 鋼材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 成田 秀幸 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 藤井 英二 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式会 社竹中工務店東京本店内 (72)発明者 山田 大彦 仙台市太白区鈎取本町一丁目８番32号 (72)発明者 黒沢 亮平 東京都新宿区西新宿八丁目20番２号 黒沢 建設株式会社内 (72)発明者 田辺 恵三 東京都新宿区西新宿八丁目20番２号 黒沢 建設株式会社内 Ｆターム(参考） 2E164 AA02 AA31 BA06 DA01

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】プレキャストコンクリート部材によって構
   成される単層ラチスドームの組立構法において、 プレキャストコンクリート部材の端部の上面又は下面に
   定着部を設けると共に同プレキャストコンクリート部材
   の端面から前記定着部へ貫通するシースを予め埋設して
   おくこと、 プレキャストコンクリート製の接合部を用意し、同接合
   部の内部には前記プレキャストコンクリート部材の定着
   部のシースと一致する配置でシースを貫通状態に埋設し
   ておくこと、 前記プレキャストコンクリート部材は、前記接合部を仲
   介として突き合わせ、両者のシースへストランド等の曲
   げ剛性が極めて低い鋼材を共通に通し、同鋼材にポスト
   テンションを導入して圧着し接合して組み立てることを
   特徴とする、プレストレストコンクリート製単層ラチス
   ドームの組立構法。
2. 【請求項２】プレキャストコンクリート部材によって構
   成される単層ラチスドームの組立構法において、 プレキャストコンクリート部材の端部の上面又は下面に
   定着部を設けると共に同部材の端面から前記定着部へ貫
   通するシースを予め埋設しておくこと、 プレキャストコンクリート製の接合部を用意し、同接合
   部の内部に、前記プレキャストコンクリート部材が対応
   する部分にはその定着部のシースと一致する配置でシー
   スを貫通状態に埋設し、非対応のプレキャストコンクリ
   ート部材の定着部のシースと一致する位置には定着金具
   により埋設した鋼材を突出させておくこと、 前記プレキャストコンクリート部材は、前記接合部を仲
   介として突き合わせ、相互に貫通するシースへはストラ
   ンド等の曲げ剛性が極めて低い鋼材を共通に通し、非対
   応のプレキャストコンクリート部材のシースへは前記突
   出した鋼材を通し、それぞれの鋼材にポストテンション
   を導入して圧着し接合して組み立てることを特徴とす
   る、プレストレストコンクリート製単層ラチスドームの
   組立構法。
3. 【請求項３】プレキャストコンクリート部材とプレキャ
   ストコンクリート製の接合部それぞれの接触面の隙間に
   はモルタルを注入することを特徴とする、請求項１又は
   ２に記載したプレストレストコンクリート製単層ラチス
   ドームの組立構法。