JP2000144310A - 耐腐食疲労に優れた構造用鋼及びその製造方法 - Google Patents
耐腐食疲労に優れた構造用鋼及びその製造方法Info
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Abstract
構造用鋼の耐腐食疲労、特に塩素あるいは塩化物を含む
水環境での耐腐食疲労を向上させる事を目的とする。 【解決手段】 鋼の表層部又は鋼板の表・裏層部におけ
るフェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μ
m以下のセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの炭
窒化物を有し、且つパーライト分率を10%以下で、平
均粒径で3μm以下のフェライト又はベーナイトを主体
とする組織で構成させる事を特徴とする耐腐食疲労に優
れた構造用鋼及びその製造方法である。
Description
機械構造用鋼、又は造船、建築、橋梁・橋脚、タンク、
圧力容器、海洋・港湾構造物、及び化学プラント等の大
型鋼構造物向け溶接構造用鋼、等に適用される耐腐食疲
労に優れた構造用鋼及びその製造方法に関するものであ
る。
に至るもので、これが更に不安定破壊、脆性破壊の起点
となって、鋼構造物の重大損傷を引き起こす。腐食疲労
を起点とする損傷事例は鋼構造物全体の損傷事例の大き
な割合を占めるため、その改善は極めて重要である。
疲労が問題となるのは、海水環境をはじめとする塩素あ
るいは塩化物を含む水環境である。例えば、Fatig
ueHandbook(by A.Almar−Nas
s,1985,Tapir,Norway)によれば、
海水環境は、疲労亀裂の進展に伴い現出する新生メタル
面の腐食が疲労亀裂の進展を加速し、更に亀裂先端近傍
では液の酸性度が高まり水素脆化も関与するため、腐食
疲労の観点からは非常に厳しい環境といえる。また、石
黒らは鉄と鋼、No.65,p.A197(1979)
において、海水環境で各種の炭素鋼及び低合金鋼の腐食
疲労を検討しているが、たとえ大気中で疲労に優れる鋼
であっても、海水中では疲労強度が大幅に低下する事を
報告している。
低合金鋼の腐食疲労に関しては、材料面からの有効な対
策はほとんどなく、従来、実用的な対策としては、構造
物全体のカソード防食が唯一の対策とされてきた。然
し、それによる構造物の高維持費、及び過剰防食から来
る水素発生による脆化などの問題があり、材料的な改
善、即ち、腐食疲労特性に優れる鋼が望まれていた。
ら、本発明の課題は、鋼材組織を制御する事によって、
構造用鋼の耐腐食疲労、特に塩素あるいは塩化物を含む
水環境での耐腐食疲労を向上させるものである。即ち、
従来の構造用鋼に対して、材料面から耐腐食疲労を向上
する事を課題とする。
するために、鋼の表層部又は鋼板の表・裏層部における
フェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm
以下のセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの炭窒
化物を析出させ、フェライト又はベーナイトを主体とす
る組織を平均粒径で3μm以下の超微細粒に改質すると
ともにパーライト分率を10%以下とする事によって、
耐腐食疲労に優れた構造用鋼(溶接用構造用鋼を含む)
及びその製造方法を提供するものである。
である。
5%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.
0%、S:0.01%以下、N:0.001〜0.00
6%を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼
の表層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さ
の5%以上の領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒
界に0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つパー
ライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下
のフェライト若しくはベーナイトを主体とする組織で構
成される事を特徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼。
5%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.
0%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.6
%、N:0.001〜0.006%を含有し、更に、N
b:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.0
5%、Ta:0.005〜0.05%の1種又は2種以
上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の
表層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さの
5%以上の領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界
に0.5μm以下のセメンタイト相、及び/又はNb・
Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つパーライト分率が
10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライト
若しくはベーナイトを主体とする組織で構成される事を
特徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼。
〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.03
〜3.0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.01
〜0.4%、B:0.0002〜0.002%、P:
0.15%以下の1種又は2種以上を含有する事を特徴
とする上記(1)又は(2)の何れかに記載の耐腐食疲
労に優れた構造用鋼。
01〜0.02%、Mg:0.0001〜0.02%、
REM:0.001%〜0.2%の1種又は2種以上を
含有する事を特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1
つに記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼。
5%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.
0%、S:0.01%以下、N:0.001〜0.00
6%を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼又
は鋼の素材をAc3点以上に加熱しCを固溶させた後、
熱間加工の前又は途中において、鋼の表層又は鋼板の表
・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域を
3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上
となる温度まで急冷した後、当該表層又は表・裏層領域
を復熱させる過程において、(Ac1点−150)℃以
上の温度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−
50)℃〜(Ac3点)℃の温度範囲で熱間加工を終了
し、引き続いて当該表層又は表・裏層領域をAc3点以
上に復熱する前に冷却して、鋼の表層又は鋼板の表・裏
層からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域におけ
る結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセ
メンタイト相を有し、且つパーライト分率が10%以下
で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライト若しくはベ
ーナイトを主体とする組織で構成される事を特徴とする
耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。
5%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.
0%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.6
%、N:0.001〜0.006%を含有し、更に、N
b:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.0
5%、Ta:0.005〜0.05%の1種又は2種以
上を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼又は
鋼の素材をAc3点以上に加熱しC及びNb・Ti・T
aの1種又は2種以上を固溶させた後、熱間加工の前又
は途中において、鋼の表層又は鋼板の表・裏層からそれ
ぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域を3℃/秒以上の
冷却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで
急冷した後に、当該表層又は表・裏層領域を復熱させる
過程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱
間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜A
c3点の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて当該
表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷
却して、鋼の表層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の
径又は厚さの5%以上の領域における結晶粒界及び/又
は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相、及び
/又はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つパー
ライト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下
のフェライト若しくはベーナイトを主体とする組織で構
成される事を特徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼の
製造方法。
該表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱させる前
に、冷却速度が5℃/秒以上で加速冷却又は直接焼き入
れする事を特徴とする上記(5)又は(6)の何れかに
記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。
に引き続いて、焼戻しする事を特徴とする上記(7)に
記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。
〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.03
〜3.0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.01
〜0.4%、B:0.0002〜0.0020%、P:
0.15%以下の1種又は2種以上を含有する事を特徴
とする上記(5)〜(8)の何れか1つに記載の耐腐食
疲労に優れた構造用鋼の製造方法。
001〜0.02%、Mg:0.0001〜0.02
%、REM:0.001%〜0.2%の1種又は2種以
上を含有する事を特徴とする上記(5)〜(9)の何れ
か1つに記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方
法。
る。
の耐腐食疲労を詳細に検討した結果、鋼組織において、
フェライト又はベーナイト組織を非常に微細化し、且
つ、それらの組織の結晶粒界及び/又は結晶亜粒界にセ
メンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種
以上の炭窒化物相を0.5μm以下で析出させる事で鋼
の耐腐食疲労が大きく向上する事を見出した。
亜粒界にセメンタイト及び/又はNb・Ti・Taの1
種又は2種以上の炭窒化物相を0.5μm以下に析出さ
せる為には、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又は
2種以上を含有する鋼の素材又は鋼をAc3点以上に加
熱してC及び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以
上を固溶させた後、制御圧延等の方法によって熱間加工
の前又は途中でフェライト分率が50%以上となる温度
まで急冷して、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又
は2種以上を過飽和に固溶せしめたる後に、該鋼を復熱
させる過程において熱間加工を開始又は再開してAc3
点以下で熱間加工を終了し、引き続いてAc3点以上に
復熱させないで冷却する事が平均粒径が3μm以下のフ
ェライト若しくはベーナイトを主体とする組織を効果的
に確保する上で不可欠であるとの技術を発明するに至っ
たものである。
μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出さ
せたセメンタイトによって超微細粒フェライトをピンニ
ングする必須元素であり安価に強度を向上するのに最も
有効な元素であるが、0.25%を越えると低温靭性を
阻害するとともに本発明法による鋼の表層部又は鋼板の
表・裏層部においてもパーライト分率が10%を越え、
0.04%未満ではピンニングに必要なセメンタイト量
が不足する為に、0.04〜0.25%に限定する。
尚、溶接用構造用鋼の場合には0.2%を越えると溶接
性(溶接部靭性)が劣化する為に0.04〜0.2%に
するのが好ましい。
な溶鋼の脱酸元素としても有用であるが、1.0%を越
えると溶接性が劣化し、0.01%未満では脱酸効果が
不十分でTiやAl等の高価な脱酸元素を多用する必要
がある為に、0.01〜1.0%に限定する。
り、、その必要下限から0.3%以上として、2.0%
超の添加は母材靭性・溶接性を阻害するとともにAr3
変態点を低下させる結果、二相域圧延等の熱間圧延をを
困難にする為に0.3〜2.0%に限定した。
%以下に限定した。MnSが塩素あるいは塩化物を含む
水環境で溶解し、選択的な腐食から腐食疲労の起点とな
るため、Sは出来るだけ低いほど好ましい。
炭化物とともに超微細粒フェライトのピンニングに有効
であり、0.001%以上の含有が有効であるが、0.
006%を越えて含有すると、窒化物が粗大化し靭性が
損なわれるので、0.001〜0.006%に限定し
た。
Tiとともに最も有用な元素であり、NbC又はNb
(C,N)(Carbo−nitride)として鋼材
の再加熱時のγ粒成長の抑制・制御圧延時の未再結晶域
温度域の拡大・圧延時の変形帯における析出強化・大入
熱溶接時の溶接熱影響部(HAZ)におけるHAZ軟化
の防止の効果が一般的に知られている。更に、本発明者
の仔細な検討から超微細析出させたセメンタイトの熱的
な安定性及びフェライト粒の成長抑制効果が著しく増加
する事を知見した。従って、0.005%未満では過飽
和固溶状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又
は結晶亜粒界に析出させるNbC又はNb(C,N)量が
不足するとともに0.5μm以下に析出させたセメンタ
イトの熱的な安定性も不足して、0.1%以上では溶接
性を損なう為に0.005〜0.1%に限定する。
に最も有用な元素であり、TiC又はTi(C,N)とし
て鋼材の再加熱時のγ粒成長の抑制・制御圧延時の未再
結晶域温度域の拡大・圧延時の析出強化・大入熱溶接時
のHAZ靭性向上の効果が一般的に知られている。更
に、本発明者の仔細な検討からNbと同様に超微細析出
させたセメンタイトの熱的な安定性及びフェライト粒の
成長抑制効果が改善する事を見出した。従って、0.0
05%未満では過飽和固溶状態から0.5μm以下にフ
ェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるTiC又
はTiCN量が不足するとともに0.5μm以下に析出
させたセメンタイトの熱的な安定性も不足して、0.0
5%以上では溶接性を損なう為に、0.005〜0.0
5%に限定する。
の再加熱時のγ粒成長の抑制・大入熱時のHAZ靭性向
上の効果が知られているが、高価な為にそれ程一般的に
使われてはいない。然し、本発明者の仔細な検討からN
b・Tiと同様に超微細析出させたセメンタイトの熱的
な安定性及びフェライト粒の成長抑制効果が改善する事
を見出した。従って、0.005%未満では過飽和固溶
状態から0.5μm以下にフェライト結晶粒界又は結晶
亜粒界に析出させるTaC又はTaCN量が不足すると
ともに0.5μm以下に析出させたセメンタイトの熱的
な安定性も不足して、0.05%以上では溶接性を損な
う為に、0.005〜0.05%に限定する。
り、本発明の技術思想からTi・Ta又はNbを微量添
加する時にはその酸化を防止するのにSi単独の脱酸で
は不十分な為に0.005%以上添加が必要である。更
に本発明者はAlの添加が本発明鋼の耐腐食疲労に対し
ても有効である事を知見した。ただし0.6%以上の過
度の添加はHAZ靭性を損なう為に、0.005〜0.
6%に限定した。
あるが、更に、母材強度の向上や低温靭性・溶接性の改
善を目的とした低炭素当量化の為に、要求される品質特
性又は鋼材の大きさ・鋼板厚に応じて、強度・低温靭性
・溶接性を向上する観点からCu、Ni、Cr、Mo、
V、BをCu:0.05〜1.0%、Ni:0.1〜
2.0%、Cr:0.03〜3.0%、Mo:0.05
〜1.0%、V:0.01〜0.4%、B:0.000
2〜0.002%の範囲で、1種又は2種以上添加して
も本発明の効果は何ら損なわれる事はない。また、C
u、Ni、Crは従来から、海水など塩素あるいは塩化
物を含む水環境で鋼の耐腐食疲労を向上させる元素とし
て知られているが、これら元素を本発明の鋼中に含有さ
せる事により、さらなる耐腐食疲労向上が得られる。
本発明においても、単独で、又は上記のCu、Ni、C
r、Mo、V、Bの元素と併せて、添加が可能である
が、ただし0.15%を越える添加は、靭性、溶接性を
著しく低下させる事から、Pの含有量は0.15%以下
と限定した。
含む水環境ではMnSは腐食の起点として有害であり、
これを低減する為に、鋼中硫化物の形態・分散制御の観
点からCa、Mg、REMを、Ca:0.0001〜
0.02%、Mg:0.0001〜0.02%、RE
M:0.001%〜0.2%の範囲で、1種又は2種以
上添加する事は、本発明の効果と重畳して有効である。
規定する理由について述べる。
を含むフェライト・パーライト鋼では、単にフェライト
粒径を5μm以下に微細化しても耐腐食疲労は、必ずし
も改善しなく、それは、フェライト粒径が5μm以下で
も、パーライトコロニーを含む場合は、塩素あるいは塩
化物を含む水環境で、疲労亀裂の起点となる腐食孔発生
頻度が高く、且つ腐食深さが大きい事が判明した。更
に、微細なセメンタイト、及び/又はNb・Ti・Ta
の炭窒化物を含んでパーライト分率を10%以下にした
場合にのみ、耐腐食疲労はフェライト粒径の細粒化とと
もに改善して、3μm以下で特段の効果がある事も知見
した。
物相から構成される組織だけでは、フェライト若しくは
ベーナイトを主体とする組織の平均粒径を3μm以下に
安定して達成できず、フェライト結晶粒の成長抑制が必
要不可欠である事も見い出した。即ち、フェライト結晶
粒界又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイトを
析出させる事によって初めてフェライト若しくはベーナ
イトをピンニングしてその成長を効果的に抑制できる。
また、0.5μm以下のNb・Ti・Taの炭窒化物を
フェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に析出させるとセメ
ンタイトと同様のピンニング効果が認められるととも
に、更にフェライト結晶粒界又は結晶亜粒界に超微細に
析出させたセメンタイト自体の熱的な安定性が増す事も
分かった。
それぞれで超細粒組織の割合が鋼の径又は厚さの5%未
満では、長時間側の耐腐食疲労にばらつきがみられ顕著
に改善しない為に5%以上に限定した。超細粒組織の占
める割合が大きいほど耐腐食疲労が向上して好ましくそ
の上限は規定しないが、過度の増加は製造コストの上昇
につながる。
の表層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さ
の5%以上の領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒
界に0.5μm以下のセメンタイト相、及び/又はNb
・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つパーライト分率
が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライ
ト若しくはベーナイトを主体とする組織で構成される事
を要件とするものである。
裏層部における超微細粒組織を実現する製造方法を規定
する理由について述べる。
る加熱温度は、C及び/又はNb・Ti・Taの1種又
は2種以上を固溶させるためにAc3点以上に限定す
る。
上を充分に固溶させるためには、加熱温度を1000℃
以上にする事が好ましく、また、加熱時におけるγ粒の
粗大化を防止する為には、加熱温度を1200℃以下と
する事が好ましい。
それぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域において、フ
ェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以
下の超微細なセメンタイト及び/又はNb・Ti・Ta
の1種又は2種以上の炭窒化物を析出させるには、C及
び/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上を鋼中に
固溶させた状態で、当該表層又は表・裏層領域を3℃/
秒以上の冷却速度で冷却する事によって該成分を鋼中に
過飽和に固溶せしめ、その後、この冷却によっても温度
低下の少ない鋼の中心部の顕熱を利用して復熱させる過
程によりなされるものである。
それぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域において、フ
ェライト又はベーナイトを主体とする組織の平均粒径を
3μm以下とするには、鋼又は鋼の素材をAc3点以上
に加熱した後、熱間加工の前又は途中で当該表層又は表
・裏層領域を3℃/秒以上の冷却速度でフェライト分率
が50%以上となる温度まで急冷し、その後、この冷却
によっても温度低下の少ない鋼の中心部の顕熱を利用し
て当該表層又は表・裏層領域を復熱させる過程で、(A
c1点−150℃)以上の温度から熱間加工を開始又は
再開して、(Ac1点−50℃)〜Ac3点の範囲で熱間
加工を終了する事によってフェライトの回復・再結晶を
惹起せしめて結晶組織を超微細粒化し、更に当該表層又
は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する事なく冷却す
るとともに、フェライト結晶粒界及び/又は結晶亜粒界
に析出する0.5μm以下の超微細なセメンタイト及び
/又はNb・Ti・Taの1種又は2種以上の炭窒化物
によるピンニングを効果的に活用し、その超微細粒組織
の成長を防止する事によってなされるものである。
いて前記する表層又は表・裏層部をAr3点以下に冷却
し、その後、鋼内部の顕熱による復熱過程において、熱
間加工を実施すると、鋼の中心部では未再結晶温度域で
の加工となって、鋼の低温靭性は著しく向上する。
し・引き抜き等の一般的な熱間加工を対象とする。ま
た、鋼の素材の寸法が大きく、加熱温度が1170℃以
上の高い温度になる場合や製品の低温靭性の要求が厳し
い場合には、Nb・Ti・Taの添加及び加熱後の制御
圧延の実施により、鋼の表層部又は鋼板の表・裏層部を
冷却する前に予め初期γ粒径を細かくする事が好まし
い。更に、鋼の加熱後に熱間加工を行わずに冷却する場
合には、低温加熱及びNb・Ti・Taの添加を行う事
により鋼の初期γ粒を細かくするか、若しくは予め初期
γ粒の細かな熱間加工半製品を使用するのが好ましい。
・裏層部を超微細粒化した後に、鋼又は鋼板中心部の顕
熱によってAc3点以上に復熱すると当該表層部を超微
細粒化した効果が損なわれるばかりでなく、フェライト
結晶粒界又は結晶亜粒界に微細析出させたセメンタイト
がγに再固溶してピンニング効果が失われてしまう。従
って、本発明では、熱間圧延後に、当該表層又は表・裏
層部がAc3点以上に復熱する事のないように、鋼の径
又は鋼板厚が18mm未満の場合には空冷を行い、それ
以上の径又は鋼板厚の場合には、2℃/秒以上の冷却速
度で加速冷却する事が好ましい。
求強度レベルに応じて添加成分の調整、及び/又は熱間
加工の終了後にAc3点以上に復熱させる事なく、5℃
/秒以上の冷却速度で加速冷却又は直接焼き入れを実施
すればよい。
接焼き入れに引き続いて、更に通常の熱処理設備を用い
て鋼又は鋼板の焼戻しを行ってもよい。尚、TMCP設
備を用いた加速冷却やDQ設備を用いた直接焼き入れの
場合には、加速冷却又は直接焼き入れ時の水冷を途中停
止するオートテンパーで代替しても構わない。
造して得た鋼片を用いた。表1において、鋼A〜鋼Eが
本発明の成分及びその含有量を満足する本発明例であ
り、鋼FはC、Sが本発明の範囲から外れる比較例であ
る。
ような製造条件によって鋼板を製造した。表3に製造し
て得られた鋼板におけるα粒径(フェライト及び/又は
ベーナイトの粒径)、析出物寸法、耐腐食疲労評価結果
を示す。
D−1、E−1が本発明例である。一方、表3におい
て、A−2は鋼板の熱間圧延途中で表層領域を冷却する
際に、その冷却速度が遅く鋼板内部の温度が高かった為
に、圧延終了後に表層領域がAc3点以上に復熱してし
まった比較例である。B−2は、熱間圧延途中での冷却
の際は、十分な冷却速度であったが、その冷却時間が短
くα分率が50%以上となる表層領域の厚さが鋼板の5
%未満と小さかった比較例である。C−2及びD−2
は、それぞれ熱間圧延途中での冷却を実施しなかったた
め、表層に細粒層の形成がなかった鋼板の比較例であ
り、E−2は熱間圧延途中での冷却が不十分で、圧延終
了温度が高かった鋼板の比較例である。最後にF−1は
本発明例のC−1と概ね同じ製造条件であるが、その主
要な成分であるC、Sが本発明の範囲から外れた比較例
である。
れの鋼板の耐腐食疲労評価結果を示す。評価法として
は、全厚平板の引張試験片(平滑、応力集中係数Kt=
1.1、板厚部分はポリマーでシールして鋼板表面から
の疲労亀裂発生を評価)を用いて、25℃のASTM規
定の人工海水中で片振り引張で0.1Hzで繰り返し応
力を付加した。種々の応力範囲で試験を行い、応力破断
線図(S−Nf曲線)を測定した。それより、腐食疲労
強度の指標として、Nf=5×105での疲労強度をと
り、引張強度で規格化した。
のいずれの鋼板においても、本発明例であるA−1〜E
−1は、表層の組織が本発明の要件を満足しており、そ
の結果、比較例と比べて明らかに耐腐食疲労に優れてい
る。例えば本発明例のA−1においては、表層のα粒、
析出物ともに比較例であるA−2と比べて半分以下のサ
イズであり、それに伴い腐食疲労強度も絶対値で約1.
65倍、引張強度で規格化しても約1.55倍と大幅に
改善されている。比較例のA−2はAc3点以上に復熱
した事によって微細化したα粒がγに逆変態するととも
に超微細析出したセメンタイトもγに再固溶した結果、
表層部のα粒・セメンタイトも粗大化するとともにパー
ライト分率が10%以上となったものである。
1、C−1ではフェライト結晶粒界及び結晶亜粒界にセ
メンタイト又は炭窒化物が極めて微細に析出してフェラ
イト若しくは一部ベーナイトの成長を効果的に抑制する
結果、その平均粒径も本発明例であるA−1に比べても
極めて安定しており、その結果、強度で規格化した腐食
疲労強度をみても、改善が一段と優れる。一方、比較例
のB−2は仕上げ圧延前の圧延途中での冷却条件が不十
分で細粒層の厚さが5%未満と本発明に不足する為に、
α粒径・析出物寸法が本発明を満足せず耐腐食疲労は本
発明例よりも大きく劣っている。熱間圧延の途中で冷却
を実施しなかった比較例である鋼板C−2は当然の事な
がら本発明例よりもその特性が劣っている。同様の傾向
は、D−1とD−2、E−1とE−2の間にも認められ
た。
40%の腐食疲労強度を有するのに対し、本発明鋼板は
引張強度の60%前後の腐食疲労強度を達成しており、
本発明の有効性は明らかである。更に鋼材成分にCu、
Ni、Cr、及びCa、REM、Mgを添加した場合
も、腐食疲労特性の改善は安定して得られ、本発明によ
り、通常の構造用鋼の耐腐食疲労を向上できるばかりで
なく、更に従来の耐食構造用鋼の耐腐食疲労も大幅に向
上できる。
が同じでありながら、C、S、Nが本発明例の高め側に
外れている比較例のF−1は細粒層厚及びセメンタイト
寸法も本発明の条件を満足しているが、パーライト分率
が高く、且つ高Sの結果、耐腐食疲労が本発明例よりも
劣っている。
部の5%以上の領域におけるフェライト結晶粒界及び/
又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト又はN
b・Ti・Taの炭窒化物相を析出させて、当該領域の
平均粒径が安定して3μm以下のフェライト又はベーナ
イトを主体とする組織で構成させる事によって、海水な
ど、塩化物を含む水環境での構造用鋼(溶接用構造用鋼
を含む)の耐腐食疲労を向上可能ならしめた。これによ
り機械部品又は鋼構造物の耐腐食疲労向上を、鋼材の化
学成分面だけでなく、鋼材組織の点からも可能とするも
のである。更に、Cu、Ni等の高価な元素の多量の添
加をしなくても本発明により耐腐食疲労の向上が可能と
なり、産業界が享受可能な経済的利益は多大なものがあ
ると思料される。
Claims (10)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、N:0.001〜0.006%を
含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表層
又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%
以上の領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に
0.5μm以下のセメンタイト相を有し、且つパーライ
ト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフ
ェライト若しくはベーナイトを主体とする組織で構成さ
れる事を特徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、Al:0.005〜0.6%、
N:0.001〜0.006%を含有し、更に、Nb:
0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.05
%、Ta:0.005〜0.05%の1種又は2種以上
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼の表
層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又は厚さの5
%以上の領域における結晶粒界及び/又は結晶亜粒界に
0.5μm以下のセメンタイト相、及び/又はNb・T
i・Taの炭窒化物相を有し、且つパーライト分率が1
0%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフェライト若
しくはベーナイトを主体とする組織で構成される事を特
徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼。 - 【請求項3】 更に、重量%で、Cu:0.05〜1.
0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.03〜3.
0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.
4%、B:0.0002〜0.002%、P:0.15
%以下の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請
求項1又は請求項2の何れかに記載の耐腐食疲労に優れ
た構造用鋼。 - 【請求項4】 更に、重量%で、Ca:0.0001〜
0.02%、Mg:0.0001〜0.02%、RE
M:0.001%〜0.2%の1種又は2種以上を含有
する事を特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに
記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼。 - 【請求項5】 重量%で、C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、N:0.001〜0.006%を
含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼又は鋼の
素材をAc3点以上に加熱しCを固溶させた後、熱間加
工の前又は途中において、鋼の表層又は鋼板の表・裏層
からそれぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域を3℃/
秒以上の冷却速度でフェライト分率が50%以上となる
温度まで急冷した後、当該表層又は表・裏層領域を復熱
させる過程において、(Ac1点−150)℃以上の温
度で熱間加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)
℃〜(Ac3点)℃の温度範囲で熱間加工を終了し、引
き続いて当該表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復
熱する前に冷却して、鋼の表層又は鋼板の表・裏層から
それぞれ鋼の径又は厚さの5%以上の領域における結晶
粒界及び/又は結晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタ
イト相を有し、且つパーライト分率が10%以下で、平
均結晶粒径が3μm以下のフェライト若しくはベーナイ
トを主体とする組織で構成される事を特徴とする耐腐食
疲労に優れた構造用鋼の製造方法。 - 【請求項6】 重量%で、C:0.04〜0.25%、
Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、
S:0.01%以下、Al:0.005〜0.6%、
N:0.001〜0.006%を含有し、更に、Nb:
0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.05
%、Ta:0.005〜0.05%の1種又は2種以上
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼又は鋼
の素材をAc3点以上に加熱しC及びNb・Ti・Ta
の1種又は2種以上を固溶させた後、熱間加工の前又は
途中において、鋼の表層又は鋼板の表・裏層からそれぞ
れ鋼の径又は厚さの5%以上の領域を3℃/秒以上の冷
却速度でフェライト分率が50%以上となる温度まで急
冷した後に、当該表層又は表・裏層領域を復熱させる過
程において、(Ac1点−150)℃以上の温度で熱間
加工を開始又は再開して、(Ac1点−50)℃〜Ac3
点の温度範囲で熱間加工を終了し、引き続いて当該表層
又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱する前に冷却し
て、鋼の表層又は鋼板の表・裏層からそれぞれ鋼の径又
は厚さの5%以上の領域における結晶粒界及び/又は結
晶亜粒界に0.5μm以下のセメンタイト相、及び/又
はNb・Ti・Taの炭窒化物相を有し、且つパーライ
ト分率が10%以下で、平均結晶粒径が3μm以下のフ
ェライト若しくはベーナイトを主体とする組織で構成さ
れる事を特徴とする耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造
方法。 - 【請求項7】 熱間加工の終了後、引き続いて当該当該
表層又は表・裏層領域をAc3点以上に復熱させる前
に、冷却速度が5℃/秒以上で加速冷却又は直接焼き入
れする事を特徴とする請求項5又は請求項6の何れかに
記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。 - 【請求項8】 加速冷却又は直接焼き入れ終了後に引き
続いて、焼戻しする事を特徴とする請求項7に記載の耐
腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。 - 【請求項9】 更に、重量%で、Cu:0.05〜1.
0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.03〜3.
0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.01〜0.
4%、B:0.0002〜0.002%、P:0.15
%以下の1種又は2種以上を含有する事を特徴とする請
求項5〜請求項8の何れか1つに記載の耐腐食疲労に優
れた構造用鋼の製造方法。 - 【請求項10】 更に、重量%で、Ca:0.0001
〜0.02%、Mg:0.0001〜0.02%、RE
M:0.001%〜0.2%の1種又は2種以上を含有
する事を特徴とする請求項5〜請求項9の何れか1つに
記載の耐腐食疲労に優れた構造用鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10312220A JP2000144310A (ja) | 1998-11-02 | 1998-11-02 | 耐腐食疲労に優れた構造用鋼及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10312220A JP2000144310A (ja) | 1998-11-02 | 1998-11-02 | 耐腐食疲労に優れた構造用鋼及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000144310A true JP2000144310A (ja) | 2000-05-26 |
Family
ID=18026643
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10312220A Pending JP2000144310A (ja) | 1998-11-02 | 1998-11-02 | 耐腐食疲労に優れた構造用鋼及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000144310A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2002180187A (ja) * | 2000-10-06 | 2002-06-26 | Nippon Steel Corp | 日陰耐候性に優れた高強度・高靱性耐候性鋼 |
WO2003069005A2 (de) * | 2002-02-15 | 2003-08-21 | Benteler Automobiltechnik Gmbh | Verwendung einer stahllegierung als werkstoff für rohre zur herstellung von druckgasbehältern oder als werkstoff zur herstellung von formbauteilen im stahlleichtbau |
JP2022510934A (ja) * | 2018-11-30 | 2022-01-28 | ポスコ | 水素誘起割れ抵抗性に優れた圧力容器用鋼材及びその製造方法 |
Citations (2)
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JPH05271861A (ja) * | 1992-03-25 | 1993-10-19 | Nippon Steel Corp | 脆性破壊伝播停止特性の良い溶接用構造用鋼とその製造方法 |
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-
1998
- 1998-11-02 JP JP10312220A patent/JP2000144310A/ja active Pending
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