JP2000144293A - Al−Mg−Si系合金押出形材からなる曲げ加工及びアーク溶接用自動車フレーム構造材 - Google Patents

Al−Mg−Si系合金押出形材からなる曲げ加工及びアーク溶接用自動車フレーム構造材

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JP2000144293A
JP2000144293A JP10311670A JP31167098A JP2000144293A JP 2000144293 A JP2000144293 A JP 2000144293A JP 10311670 A JP10311670 A JP 10311670A JP 31167098 A JP31167098 A JP 31167098A JP 2000144293 A JP2000144293 A JP 2000144293A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度、高延性でかつアーク溶接性に優れた
アーク溶接構造用Al−Mg−Si系アルミニウム合金
押出形材を得る。 【解決手段】 Mg:0.3〜1.6%、Si:0.2
〜1.6%、Cu:0.4超〜0.65%、Ti:0.
005〜0.2%を含有し、Cr:0.05〜0.5
%、Mn:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.
3%のうちいずれか一種又は2種以上を含有し、残部A
l及び不純物からなり、結晶組織の全部又は大部分がフ
ァイバー組織であるAl−Mg−Si系合金押出形材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、必要に応じて曲げ
加工等により成形され、かつアーク溶接により組み立て
られる構造部材に好適な、アーク溶接構造用Al−Mg
−Si系合金押出形材に関する。
【0002】
【従来の技術】Al−Mg−Si系アルミニウム合金
は、高強度が得られる合金の中では比較的耐食性に優
れ、サッシ材料などとして市場に多く出回っており、リ
サイクルの面でも他の系のアルミニウム合金より優れて
いることから、押出形材として種々の構造部材への適用
が注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】構造部材は、必要に応
じて所望の形状に曲げ加工を行ったり、溶接等による接
合を必要とする場合があり、高強度(引張強度、耐力)
を備えるとともに延性に優れ、さらにアーク溶接性が優
れていることが望ましい。一方、Al−Mg−Si系合
金において強度及び延性を向上させるために、合金元素
としてCuを添加することが知られているが、CuはA
l−Mg−Si系合金のアーク溶接性を阻害するという
共通認識があり、アーク溶接構造をとる場合はCuの添
加量は低く制限されていた。
【0004】例えば特開昭64−47830号公報で
は、小量のCr及びZrを含有するAl−Mg−Si系
アルミニウム合金押出形材においてCuの添加量を0.
1%以下に制限し、特開平6−179935号公報で
は、小量のCr及びZrを含有するAl−Mg−Si系
アルミニウム合金押出形材においてCuの添加量を0.
2%以下に制限し、特開平9−41063号公報では、
小量のZrを含有するAl−Mg−Si系アルミニウム
合金押出形材においてCuの添加量を0.05%以下に
制限し、さらに、特開平9−256096号公報でも、
Cuの添加量を0.4%以下に制限している。
【0005】本発明はこのような状況下で、高強度、高
延性でかつアーク溶接性に優れたアーク溶接構造用Al
−Mg−Si系アルミニウム合金押出形材を得ることを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアーク溶接
構造用Al−Mg−Si系合金押出形材は、Cu:0.
4超〜0.65%を含有し、Cr:0.05〜0.5
%、Mn:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.
3%のうちいずれか一種又は2種以上を含有し、結晶組
織の全部又は大部分がファイバー組織であることを特徴
とする。ここでファイバー組織とは押出材にみられる熱
間加工組織で、押出方向に長く伸ばされた結晶粒組織の
ことであり、本発明においては、押出形材の断面の全て
がファイバー組織で構成されるか、断面の肉厚の大部
分、つまり肉厚の50%以上の部分がファイバー組織で
占められている(この場合、表面には再結晶組織が形成
される)必要がある。
【0007】望ましい合金組成は、Mg:0.3〜1.
6%、Si:0.2〜1.6%、Cu:0.4超〜0.
65%、Ti:0.005〜0.2%を含有し、Cr:
0.05〜0.5%、Mn:0.05〜0.8%、Z
r:0.05〜0.3%のうちいずれか一種又は2種以
上を含有し、残部Al及び不純物からなる組成である。
上記の成分組成の中で、MgとSiの特に望ましい範囲
は、それぞれMg:0.4〜0.8%、Si:0.7〜
1.1%であり、Cuは0.45〜0.55%である。
また、Cr、Mn、Zrのうち、Zrを必ず含むことが
望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、上記Al−Mg−Si系合
金押出形材の成分組成の限定理由について説明する。 Cu Al−Mg−Si系合金押出形材において、Cuは析出
強化により合金の強度を向上させるとともに、材料の延
性を向上させるため、高強度、延性及び曲げ加工性を必
要とされる構造材にはCuを添加したものも多い。しか
し、Cuの添加はAl−Mg−Si系合金の溶接性を阻
害する(溶接割れを発生させる)という共通認識のもと
で、溶接構造材として用いる押出形材では、Cuの添加
量は最大でも0.4%以下に抑えられていた。
【0009】ところが、本発明者らは、Al−Mg−S
i系合金押出形材の合金組織をファイバー組織とした場
合、0.4%を超えるCuが含有されていてもアーク溶
接性の低下がないことを見いだした。溶接性が低下しな
い理由は明らかではないが、ファイバー組織になること
で粒界面積が増加するため、粒界に偏析しやすいCuが
粒界に広く分散して析出し、単位粒界面積あたりのCu
の濃度が低くなることが影響しているのではないかと推
測される。なお、0.4%を超えるCuが含有されたA
l−Mg−Si系合金押出形材において、表面に形成さ
れる再結晶層が厚くなるとアーク溶接性の低下が著しく
なる。従って、先に述べたように、押出形材の断面の全
てがファイバー組織で構成されるか、断面の肉厚の50
%以上の部分がファイバー組織で占められている必要が
ある。望ましくは、表面再結晶層の全厚さ(両面の厚さ
の合計)が形材の肉厚の30%以下(ファイバー組織が
肉厚の70%以上)になるように制御する。
【0010】本発明のAl−Mg−Si系合金押出形材
において、0.4%超のCuは強度を向上させ、延性及
び曲げ加工性を向上させる。しかし、過剰のCuはプレ
ス焼入れ(押出直後に押出材の保有熱を利用して行う溶
体化焼入れ)性を低下させ、また、アーク溶接性を阻害
するようになるので、Cuの添加量は0.65%以下に
制限する必要がある。特にCu:0.45〜0.55%
の範囲が望ましい。
【0011】Cr、Mn、Zr Cr、Mn、Zrは均質化熱処理時に鋳塊中に金属間化
合物として析出し、熱間加工等における再結晶を抑制
し、金属組織を微細にする。押出加工においては組織を
ファイバー組織とし、等軸再結晶組織に比べアーク溶接
性を著しく改善する。それぞれ0.05%以上の添加で
再結晶抑制効果があるが、特に効果の高いのはZrであ
るので、Zrをまず添加し、さらに必要があればCr、
Mnを添加するようにすればよい。一方、過剰の添加は
鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、強
度、延性の低下の原因となる。従って、それぞれの添加
量はCr:0.05〜0.5%以下、Mn:0.05〜
0.8%以下、Zr:0.05〜0.3%以下とする。
Mn、Zrの特に望ましい範囲は、Mn:0.15〜
0.5%、Zr:0.1〜0.15%である。
【0012】Mg、Si Mg及びSiは、合金に強度を付与する元素である。M
g含有量が0.3%未満又はSi含有量が0.2%未満
の場合、時効処理による強度向上の効果が得られない。
逆に、Mg含有量が1.6%を越え又はSi含有量が
1.6%を越えると延性が阻害され曲げ加工性が低下
し、また押出性も低下する。従って、Mgは0.3〜
1.6%、Siは0.2〜1.6%の範囲が望ましい。
強度、延性、曲げ加工性、押出性のバランスの面から、
特にMg:0.4〜0.8%、Si:0.7〜1.1%
の範囲が望ましい。
【0013】Ti Tiは溶解鋳造時に核生成し鋳造組織を微細にする働き
があり、そのため適宜添加されるが、望ましい添加量は
0.005%以上である。しかし、多すぎると粗大な化
合物を生成しAl−Mg−Si系合金を脆弱にするので
0.2%を上限とする。 不純物 不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く含まれ
る不純物であり、0.35%を超えて合金中に存在する
と鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の機械的
性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35%以下
に規制する。また、アルミニウム合金を鋳造する際には
地金、添加元素の中間合金等様々な経路より不純物が混
入する。混入する元素は様々であるが、Fe以外の通常
の不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以
下であれば合金の特性にほとんど影響を及ぼさない。従
って、これらの不純物は単体で0.05%以下、総量で
0.15%以下とする。
【0014】上記Al−Mg−Si系合金の押出加工に
あたっては、その保有熱を利用して溶体化するのが工業
上有利である。このため押出直後の形材温度が極力溶体
化温度になるようにし、直ちに急冷(プレス焼入れ)す
る。この急冷により、同時に形材の再結晶を防止してフ
ァイバー組織をもつ押出形材を得る。一方、押出温度を
高くしすぎると結晶組織の再結晶化が促進され、ファイ
バー組織から粗大な等軸再結晶粒へと変化する。再結晶
を抑制し、ファイバー組織とするためには、押出工程で
は押出直後の形材温度を溶体化温度以上、固相線温度以
下、すなわち500℃以上580℃以下、望ましくは5
15℃以上、550℃以下に制御することが好適であ
る。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。表1に示
す組成のアルミニウム合金をDC鋳造にて直径155m
mの鋳塊に造塊し、540℃×4hrの均質化処理後、
ビレット温度500℃に加熱し、押出速度5m/min
にて図1に示す板の形状(厚さ2mm、幅110mm)
に押し出し、押出時水冷にてプレス焼入れを行った。そ
の後、180℃×6hrの人工時効処理を施し供試材と
し、下記要領で各特性を調べた。その結果を表1にあわ
せて示す。
【0016】
【表1】
【0017】機械的性質:押出方向と平行にJIS5号
引張試験片を採取し、引張試験を行った。 結晶組織:押出方向に平行な断面を光学顕微鏡で観察し
た。(なお、溶着部を有する押出形材の場合は、当該部
位近傍では再結晶層厚さがばらつくので、それ以外の部
位で測定する。) 溶接性:図2に示すように2枚の供試材の押出方向に垂
直なサイドを突き合わせ、表2に示す溶接条件にてMI
G溶接を行ない、溶接部断面(図2(b)に観察部位を
示す)を目視又は光学顕微鏡で観察し、5段階で溶接性
を評価した。5段階は、1:溶接割れなし、2:割れが
1つの結晶粒界面におさまっており、その発生部の数も
ごく少ないもの、3:割れが1つの結晶粒界面におさま
っているが、その発生部が断面に多数存在するもの、
4:割れが複数の結晶粒界面にまたがっているもの、
5:目視レベルで割れが観察できるもの(割れが少なく
とも十数粒界に及ぶ)、とした。
【0018】
【表2】
【0019】表1に示すように、成分組成が規定範囲内
にあり、結晶組織がファイバー組織のNo.1〜5は、
高強度、高延性を示し、溶接割れ性も優れていた。特に
Zrを所定量含むNo.1、2、5は溶接割れ性が一段
と優れている。また、結晶組織がファイバー組織で、表
面再結晶層が比較的厚く形成されたNo.6〜8(プレ
ス焼入れの冷却速度を調整)を、同じ組成のNo.1と
比べると溶接性がやや低く、かつ表面再結晶層が厚いほ
ど溶接性が低くなっている。一方、Cr、Mn、Zrを
含まないNo.9は機械的特性はまあまあだが、結晶組
織が等軸晶でCuの含有量が多いため溶接割れ性が劣っ
ている。また、No.10、11は等軸晶であるが、C
uの含有量が少ないため溶接割れ性はよい。しかし、強
度及び伸びがNo.1〜8に比べて劣る。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、高強度、高延性でかつ
アーク溶接性に優れたアーク溶接構造用Al−Mg−S
i系アルミニウム合金押出形材を得ることができる。こ
の押出形材は、高強度を必要とし、必要に応じて曲げ加
工等を施され、かつアーク溶接により組み付けられる自
動車用フレーム等の構造材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の押出形材の断面形状を示す図であ
る。
【図2】 実施例の溶接後の供試材(a)及びその断面
図(b)である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年1月13日(2000.1.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 Al−Mg−Si系合金押出形材
からなる曲げ加工及びアーク溶接用自動車フレーム構造
【特許請求の範囲】
請求項3】 表面再結晶層の全厚さが形材の肉厚の3
0%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載
された曲げ加工及びアーク溶接用自動車フレーム構造
材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al−Mg−Si
系合金押出形材からなり、曲げ加工による成形を受け、
かつアーク溶接により組み立てられるのに特に適する自
動車フレーム構造材に関する。
【0002】
【従来の技術】Al−Mg−Si系アルミニウム合金
は、高強度が得られる合金の中では比較的耐食性に優
れ、サッシ材料などとして市場に多く出回っており、リ
サイクルの面でも他の系のアルミニウム合金より優れて
いることから、押出形材として種々の構造部材への適用
が注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自動車フレーム構造材
は、必要に応じて所望の形状に曲げ加工を行ったり、溶
接等による接合を必要とする場合があり、高強度(引張
強度、耐力)を備えるとともに延性に優れ、さらにアー
ク溶接性が優れていることが望ましい。一方、Al−M
g−Si系合金において強度及び延性を向上させるため
に、合金元素としてCuを添加することが知られている
が、CuはAl−Mg−Si系合金のアーク溶接性を阻
害するという共通認識があり、アーク溶接構造をとる場
合はCuの添加量は低く制限されていた。
【0004】例えば特開昭64−47830号公報で
は、小量のCr及びZrを含有するAl−Mg−Si系
アルミニウム合金押出形材においてCuの添加量を0.
1%以下に制限し、特開平6−179935号公報で
は、小量のCr及びZrを含有するAl−Mg−Si系
アルミニウム合金押出形材においてCuの添加量を0.
2%以下に制限し、特開平9−41063号公報では、
小量のZrを含有するAl−Mg−Si系アルミニウム
合金押出形材においてCuの添加量を0.05%以下に
制限し、さらに、特開平9−256096号公報でも、
Cuの添加量を0.4%以下に制限している。
【0005】本発明はこのような状況下で、Al−Mg
−Si系アルミニウム合金押出形材からなり、高強度、
高延性でかつ曲げ加工性とアーク溶接性に優れた曲げ加
工及びアーク溶接用自動車フレーム構造材を得ることを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る曲げ加工及
びアーク溶接用自動車フレーム構造材は、Mg:0.4
〜0.8%、Si:0.7〜1.1%、Cu:0.4超
〜0.65%、Ti:0.005〜0.2%、Zr:
0.05〜0.3%を含有し、必要に応じてさらにC
r:0.05〜0.5%とMn:0.05〜0.8%の
うちいずれか一種又は2種を含有し、残部Al及び不純
物からなるAl−Mg−Si系合金押出形材であって、
結晶組織の全部又は大部分が繊維組織(以下、ファイバ
ー組織という)であることを特徴とする。ここでファイ
バー組織とは押出材にみられる熱間加工組織で、押出方
向に長く伸ばされた結晶粒組織のことであり、本発明に
おいては、押出形材の断面の全てがファイバー組織で構
成されるか、断面の肉厚の大部分、つまり肉厚の50%
以上の部分がファイバー組織で占められている(この場
合、表面には再結晶組織が形成される)必要がある。
【0007】
【0008】
【発明の実施の形態】以下、上記Al−Mg−Si系合
金押出形材の成分組成の限定理由について説明する。 Cu Al−Mg−Si系合金押出形材において、Cuは析出
強化により合金の強度を向上させるとともに、材料の延
性を向上させるため、高強度、延性及び曲げ加工性を必
要とされる構造材にはCuを添加したものも多い。しか
し、Cuの添加はAl−Mg−Si系合金の溶接性を阻
害する(溶接割れを発生させる)という共通認識のもと
で、溶接構造材として用いる押出形材では、Cuの添加
量は最大でも0.4%以下に抑えられていた。
【0009】ところが、本発明者らは、Al−Mg−S
i系合金押出形材の合金組織をファイバー組織とした場
合、0.4%を超えるCuが含有されていてもアーク溶
接性の低下がないことを見いだした。溶接性が低下しな
い理由は明らかではないが、ファイバー組織になること
で粒界面積が増加するため、粒界に偏析しやすいCuが
粒界に広く分散して析出し、単位粒界面積あたりのCu
の濃度が低くなることが影響しているのではないかと推
測される。なお、0.4%を超えるCuが含有されたA
l−Mg−Si系合金押出形材において、表面に形成さ
れる再結晶層が厚くなるとアーク溶接性の低下が著しく
なる。従って、先に述べたように、押出形材の断面の全
てがファイバー組織で構成されるか、断面の肉厚の50
%以上の部分がファイバー組織で占められている必要が
ある。望ましくは、表面再結晶層の全厚さ(両面の厚さ
の合計)が形材の肉厚の30%以下(ファイバー組織が
肉厚の70%以上)になるように制御する。
【0010】本発明のAl−Mg−Si系合金押出形材
において、0.4%超のCuは強度を向上させ、延性及
び曲げ加工性を向上させる。しかし、過剰のCuはプレ
ス焼入れ(押出直後に押出材の保有熱を利用して行う溶
体化焼入れ)性を低下させ、また、アーク溶接性を阻害
するようになるので、Cuの添加量は0.65%以下に
制限する必要がある。特にCu:0.45〜0.55%
の範囲が望ましい。
【0011】Cr、Mn、Zr Cr、Mn、Zrは均質化熱処理時に鋳塊中に金属間化
合物として析出し、熱間加工等における再結晶を抑制
し、金属組織を微細にする。押出加工においては組織を
ファイバー組織とし、等軸再結晶組織に比べアーク溶接
性を著しく改善する。それぞれ0.05%以上の添加で
再結晶抑制効果があるが、特に効果の高いのはZrであ
るので、Zrをまず添加し、さらに必要があればCr、
Mnを添加するようにすればよい。一方、過剰の添加は
鋳造時に粗大な不溶性金属間化合物を生成しやすく、強
度、延性の低下の原因となる。従って、それぞれの添加
量はCr:0.05〜0.5%以下、Mn:0.05〜
0.8%以下、Zr:0.05〜0.3%以下とする。
Mn、Zrの特に望ましい範囲は、Mn:0.15〜
0.5%、Zr:0.1〜0.15%である。
【0012】Mg、Si Mg及びSiは、合金に強度を付与する元素である。M
g含有量が0.3%未満又はSi含有量が0.2%未満
の場合、時効処理による強度向上の効果が得られない。
逆に、Mg含有量が1.6%を越え又はSi含有量が
1.6%を越えると延性が阻害され曲げ加工性が低下
し、また押出性も低下する。そのなかでも、強度、延
性、曲げ加工性、押出性のバランスの面から、特にM
g:0.4〜0.8%、Si:0.7〜1.1%の範囲
が望ましい。
【0013】Ti Tiは溶解鋳造時に核生成し鋳造組織を微細にする働き
があり、0.005%以上添加される。しかし、多すぎ
ると粗大な化合物を生成しAl−Mg−Si系合金を脆
弱にするので0.2%を上限とする。 不純物 不純物のうちFeはアルミニウム地金に最も多く含まれ
る不純物であり、0.35%を超えて合金中に存在する
と鋳造時に粗大な金属間化合物を晶出し、合金の機械的
性質を損なう。従って、Feの含有量は0.35%以下
に規制する。また、アルミニウム合金を鋳造する際には
地金、添加元素の中間合金等様々な経路より不純物が混
入する。混入する元素は様々であるが、Fe以外の通常
の不純物は単体で0.05%以下、総量で0.15%以
下であれば合金の特性にほとんど影響を及ぼさない。従
って、これらの不純物は単体で0.05%以下、総量で
0.15%以下とする。
【0014】上記Al−Mg−Si系合金の押出加工に
あたっては、その保有熱を利用して溶体化するのが工業
上有利である。このため押出直後の形材温度が極力溶体
化温度になるようにし、直ちに急冷(プレス焼入れ)す
る。この急冷により、同時に形材の再結晶を防止してフ
ァイバー組織をもつ押出形材を得る。一方、押出温度を
高くしすぎると結晶組織の再結晶化が促進され、ファイ
バー組織から粗大な等軸再結晶粒へと変化する。再結晶
を抑制し、ファイバー組織とするためには、押出工程で
は押出直後の形材温度を溶体化温度以上、固相線温度以
下、すなわち500℃以上580℃以下、望ましくは5
15℃以上、550℃以下に制御することが好適であ
る。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。表1に示
す組成のアルミニウム合金をDC鋳造にて直径155m
mの鋳塊に造塊し、540℃×4hrの均質化処理後、
ビレット温度500℃に加熱し、押出速度5m/min
にて図1に示す板の形状(厚さ2mm、幅110mm)
に押し出し、押出時水冷にてプレス焼入れを行った。そ
の後、180℃×6hrの人工時効処理を施し供試材と
し、下記要領で各特性を調べた。その結果を表1にあわ
せて示す。
【0016】
【表1】
【0017】機械的性質:押出方向と平行にJIS5号
引張試験片を採取し、引張試験を行った。 結晶組織:押出方向に平行な断面を光学顕微鏡で観察し
た。(なお、溶着部を有する押出形材の場合は、当該部
位近傍では再結晶層厚さがばらつくので、それ以外の部
位で測定する。) 溶接性:図2に示すように2枚の供試材の押出方向に垂
直なサイドを突き合わせ、表2に示す溶接条件にてMI
G溶接を行ない、溶接部断面(図2(b)に観察部位を
示す)を目視又は光学顕微鏡で観察し、5段階で溶接性
を評価した。5段階は、1:溶接割れなし、2:割れが
1つの結晶粒界面におさまっており、その発生部の数も
ごく少ないもの、3:割れが1つの結晶粒界面におさま
っているが、その発生部が断面に多数存在するもの、
4:割れが複数の結晶粒界面にまたがっているもの、
5:目視レベルで割れが観察できるもの(割れが少なく
とも十数粒界に及ぶ)、とした。
【0018】
【表2】
【0019】表1に示すように、成分組成が規定範囲内
にあり、結晶組織がファイバー組織のNo.1、2、5
、高強度、高延性を示し、溶接割れ性もZrを含まな
いNo.3、4に比べて一段と優れていた。また、結晶
組織がファイバー組織で、表面再結晶層が比較的厚く形
成されたNo.6〜8(プレス焼入れの冷却速度を調
整)を、同じ組成のNo.1と比べると溶接性がやや低
く、かつ表面再結晶層が厚いほど溶接性が低くなってい
る。一方、Cr、Mn、Zrを含まないNo.9は機械
的特性はまあまあだが、結晶組織が等軸晶でCuの含有
量が多いため溶接割れ性が劣っている。また、No.1
0、11は等軸晶であるが、Cuの含有量が少ないため
溶接割れ性はよい。しかし、強度及び伸びがNo.1〜
8に比べて劣る。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、Al−Mg−Si系ア
ルミニウム合金押出形材により、高強度、高延性でかつ
曲げ加工性及びアーク溶接性に優れた曲げ加工及びアー
ク溶接用自動車フレーム構造材を得ることができる。こ
の押出形材は、高強度を必要とし、曲げ加工による成形
施され、かつアーク溶接により組み付けられる自動車
フレーム構造材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の押出形材の断面形状を示す図であ
る。
【図2】 実施例の溶接後の供試材(a)及びその断面
図(b)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江間 光弘 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 Fターム(参考) 4E001 CB01 QA02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cu:0.4超〜0.65%(重量%、
    以下同じ)を含有し、Cr:0.05〜0.5%、M
    n:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.3%の
    うちいずれか一種又は2種以上を含有し、結晶組織の全
    部又は大部分が繊維組織(以下、ファイバー組織とい
    う)であることを特徴とするアーク溶接構造用Al−M
    g−Si系合金押出形材。
  2. 【請求項2】 Mg:0.3〜1.6%、Si:0.2
    〜1.6%、Cu:0.4超〜0.65%、Ti:0.
    005〜0.2%を含有し、Cr:0.05〜0.5
    %、Mn:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.
    3%のうちいずれか一種又は2種以上を含有し、残部A
    l及び不純物からなり、結晶組織の全部又は大部分がフ
    ァイバー組織であることを特徴とするアーク溶接構造用
    Al−Mg−Si系合金押出形材。
  3. 【請求項3】 MgとSiの含有量がそれぞれ、Mg:
    0.4〜0.8%、Si:0.7〜1.1%であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載されたアーク溶接構
    造用Al−Mg−Si系合金押出形材。
  4. 【請求項4】 Cu:0.45〜0.55%であること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたアー
    ク溶接構造用Al−Mg−Si系合金押出形材。
  5. 【請求項5】 Cr、Mn、Zrのうち、Zrを必ず含
    むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載され
    たアーク溶接構造用Al−Mg−Si系合金押出形材。
  6. 【請求項6】 表面再結晶層の全厚さが形材の肉厚の3
    0%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれ
    かに記載されたアーク溶接構造用Al−Mg−Si系合
    金押出形材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108396207A (zh) * 2017-02-08 2018-08-14 福建祥鑫股份有限公司 一种Al-Mg-Si合金及其特殊强化方法
WO2022264959A1 (ja) * 2021-06-14 2022-12-22 昭和電工株式会社 アルミニウム合金押出材及びその製造方法

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