JP2000143692A - モノクローナル抗体によって精製されたトロンビン基質または阻害剤の精製方法 - Google Patents

モノクローナル抗体によって精製されたトロンビン基質または阻害剤の精製方法

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JP2000143692A
JP2000143692A JP10321042A JP32104298A JP2000143692A JP 2000143692 A JP2000143692 A JP 2000143692A JP 10321042 A JP10321042 A JP 10321042A JP 32104298 A JP32104298 A JP 32104298A JP 2000143692 A JP2000143692 A JP 2000143692A
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JP10321042A
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Toyoaki Suzuki
豊明 鈴木
Kazuya Hosokawa
和也 細川
Masanori Nagata
政令 永田
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Fujimori Kogyo Co Ltd
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Fujimori Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 モノクローナル抗体を用いたトロンビン基質
または阻害剤の精製により得られたトロンビン基質また
は阻害剤中に残留するモノクローナル抗体やウィルスを
新規かつ安価な分離精製手段を利用し、簡単な分離精製
操作および短い精製分離工数により、簡便に取り除くこ
とのできるトロンビン基質または阻害剤の精製方法を提
供する。 【解決手段】 モノクローナル抗体によって精製された
1つのトロンビン基質または阻害剤を、リガンドとして
基質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起
こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビンまたはト
ロンビンに類似した物質を有する親和性吸着体を用いて
なるアフィニティークロマトグラフィーにより精製する
ことを特徴とするトロンビン基質または阻害剤の精製方

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モノクローナル抗
体によって精製されたトロンビン基質または阻害剤の精
製方法に関するものである。より詳しくは、従来公知の
モノクローナル抗体を用いた精製方法により得られたト
ロンビン基質または阻害剤中に残留するモノクローナル
抗体やウィルスを簡便に取り除くことのできる精製方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】血漿由来、リコンビナントともに血液凝
固第VIII因子(以下、単にFVIIIともいう)、血液凝固
第XIII因子(以下、単にFXIIIともいう)、プロテイン
C(以下、単にPCとも略称する)などのトロンビン基
質または阻害剤は、安全性の高い精製手段であるモノク
ローナル抗体により精製されたものが血液製剤として使
用されることが多くなっている。
【0003】しかしながら、こうした精製物には、上記
モノクローナル抗体の混入が否定できず問題となってい
る。すなわち、上記モノクローナル抗体による精製で
は、該モノクローナル抗体をリガンドとするアフィニテ
ィークロマトグラフィーを用いるのが一般的である。こ
れにトロンビン基質または阻害剤を含む溶液を流して、
トロンビン基質または阻害剤を吸着させた後、回収する
際に、該モノクローナル抗体の一部が外れて溶出液側の
精製物中に混入することがある。また、血液由来の場合
には、さらにウィルスの混入も否定できない。
【0004】したがって、現在では、主にこれらの混入
物を複数回イオン交換カラムを通すことで除去している
が、工程の長さ、回収率、吸着の特異性の低さなどが問
題視されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、モノクローナル抗体により精製されたトロンビン基
質または阻害剤中に混入するモノクローナル抗体やウィ
ルスの不純物を新規な分離精製手段を利用し、簡単な分
離精製操作および短い精製分離工数により、簡便に取り
除くことのできるトロンビン基質または阻害剤の精製方
法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく、モノクローナル抗体によって精製された
トロンビン基質または阻害剤の更なる精製方法につき鋭
意検討した結果、トロンビン基質または阻害剤と特異的
かつ可逆的に反応するリガンドとして基質および/また
は阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求核性
(活性)を失わせたトロンビンまたはトロンビンに類似
した物質、例えば、アンヒドロトロンビン(Anhydro-Thr
ombin)等を用いてなるアフィニティークロマトグラフィ
ーを使用することにより、モノクローナル抗体で精製し
たトロンビン基質または阻害剤の精製物中に混入したモ
ノクローナル抗体やウィルス等の不純物は、該アンヒド
ロトロンビンカラムにより非常に選択的に高回収率に除
去することが可能であるので、該アンヒドロトロンビン
等による選択的な吸着分離により上記問題は解決される
ことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】すなわち、該アンヒドロトロンビン等の基
質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こ
さずに求核性(活性)を失わせたトロンビンまたはトロ
ンビンに類似した物質は、トロンビン基質または阻害剤
であるFVIII、FXIII、PCなどと選択的に吸着するが、
これらの抗体やウィルスとは親和性をもたず簡単に精製
することが可能である事を見出し、本発明を完成するに
至ったものである。
【0008】本発明の目的は、(1) モノクローナル
抗体によって精製された1つのトロンビン基質または阻
害剤を、リガンドとして基質および/または阻害剤との
結合に立体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わ
せたトロンビンまたはトロンビンに類似した物質を有す
る親和性吸着体を用いてなるアフィニティークロマトグ
ラフィーにより精製することを特徴とするトロンビン基
質または阻害剤の精製方法により達成される。
【0009】また、本発明の目的は、(2) 前記基質
および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こさ
ずに求核性(活性)を失わせたトロンビンに類似した物
質が、遺伝子組換え操作によりトロンビンの少なくとも
1つのアミノ酸を欠失、置換または付加したアミノ酸配
列からなるトロンビンの変異体であることを特徴とする
上記(1)に記載の精製方法によっても達成される。
【0010】また、本発明の目的は、(3) 前記基質
および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こさ
ずに求核性(活性)を失わせたトロンビンが、アンヒド
ロトロンビンであることを特徴とする上記(1)に記載
の精製方法によっても達成される。
【0011】また、本発明の目的は、(4) 前記1つ
のトロンビン基質または阻害剤が、血液凝固第V因子、
血液凝固第VIII因子、血液凝固第XI因子、血液凝固第XI
II因子、プロテインC、プロテインS、ヘパリンコファ
クターII、トロンビンレセプターおよびフィブリノーゲ
ンからなる群から選ばれるいずれか1種のものであるこ
とを特徴とする上記(1)に記載の精製方法によっても
達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係るトロンビン基質また
は阻害剤の精製方法は、モノクローナル抗体によって精
製された1つのトロンビン基質または阻害剤を、リガン
ドとして基質および/または阻害剤との結合に立体障害
を引き起こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビン
またはトロンビンに類似した物質を有する親和性吸着体
を用いてなるアフィニティークロマトグラフィーにより
精製することを特徴とするものである。
【0013】以下、(I)精製対象物である、モノクロ
ーナル抗体によって精製された1つのトロンビン基質ま
たは阻害剤、(II)精製手段である、リガンドとして基
質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こ
さずに求核性(活性)を失わせたトロンビンまたはトロ
ンビンに類似した物質を有する親和性吸着体を用いてな
るアフィニティークロマトグラフィー、および(III)
上記精製対象物(I)を上記精製手段(II)により精製
する方法の順に説明する。
【0014】(I) 精製対象物 本発明の精製対象物は、モノクローナル抗体によって精
製された1つのトロンビン基質または阻害剤である。
【0015】ここで、トロンビン基質または阻害剤と
は、トロンビンに対しそれぞれ基質または阻害剤として
作用するものをいう。したがって、トロンビン基質また
は阻害剤としては、血液凝固系に関与する因子を広く含
むものとし、フィブリノーゲン(血液凝固第I因子)、
血液凝固第VIII因子、血液凝固第XIII因子、血液凝固
第V因子、血液凝固第XI因子などの各因子のほか、プロ
テインC、プロテインSなどのトロンビンの基質となる
ものや、更にヘパリンコファクターIIなどのトロンビン
の阻害剤となるもの等が挙げられる。
【0016】本発明の精製対象物(I)は、モノクロー
ナル抗体によって精製された1つのトロンビン基質また
は阻害剤であれば特に制限されるものではなく、血漿、
血小板、胎盤などのヒト由来のトロンビン基質または阻
害剤を適当なモノクローナル抗体によって精製したも
の、並びに遺伝子組換え操作により得られたトロンビン
基質または阻害剤(さらに、本発明においては、遺伝子
組換え操作によりトロンビン基質または阻害剤のアミノ
酸配列の少なくとも一のアミノ酸が欠失、置換もしくは
付加されたアミノ酸配列からなり、かつ血液凝固活性お
よび抗トロンビン活性をそれぞれ維持するその変異体を
含むものとする)を適当なモノクローナル抗体によって
精製したものなどが挙げられる。この際、遺伝子組み換
え技術を用いてトロンビン基質または阻害剤を調製する
方法としては、特に制限されるものではなく、これらに
関する従来既知の遺伝子組み換え技術を幅広く利用する
ことができるものである。具体的に、活性化プロテイン
Cを調製する場合を例にとれば、特開昭61−2054
87号、特開平1−2338号あるいは特開平1−85
084号等に記載された方法と同様の製造方法により調
製される活性化プロテインCが例示される。
【0017】本発明の精製対象物(I)の具体例として
は、献血者血漿を原料に、加熱処理や有機溶媒/界面活
性剤処理(TNBP/オクトキシノール9処理)にてウ
イルス不活化し、抗FVIIIモノクローナル抗体を使用し
て精製分離した血液凝固第VIII因子や、特開平7−27
8197号(特許番号2513993号)等に開示され
ているように、遺伝子組み換え技術により産生された産
物を第VIII:C因子活性のC−末端サブユニットに対す
るモノクローナル抗体を使ったアフィニティークロマト
グラフィーにより精製された血液凝固第VIII因子、ブラ
ッド(Blood),63, p.115-121(1984)に開示されているよ
うに、ヒト血漿から抗プロテインC抗体を用いたアフィ
ニティークロマトグラフィーにより精製されたプロテイ
ンCなどが挙げられるが、これらはモノクローナル抗体
によって精製された1つのトロンビン基質または阻害剤
の1例であって、本発明がこれらに限定されるものでな
いことは言うまでもない。
【0018】(II) 精製手段 本発明に用いることのできる精製手段は、リガンドとし
て基質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き
起こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビンまたは
トロンビンに類似した物質を有する親和性吸着体を用い
てなるアフィニティークロマトグラフィーによるもので
あればよく、とりわけ、リガンドである基質および/ま
たは阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求核性
(活性)を失わせたトロンビンまたはトロンビンに類似
した物質にその特徴を有するものである。
【0019】上記リガンドのうち、基質および/または
阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求核性(活
性)を失わせたトロンビンとしては、ヒトトロンビンを
アンヒドロ化してなるアンヒドロトロンビンが有用であ
る。
【0020】かかるアンヒドロトロンビンは、以下の方
法で合成できる。
【0021】(1) トロンビンの活性セリン残基部
位と合成阻害剤とを反応させる工程、 pH11以上でアルカリ処理を行う工程、 回収操作を行う工程、 を含み、かつ前記各工程を順次行うアンヒドロトロンビ
ンの合成方法であって、少なくとも回収操作を行う工程
において、多価アルコールおよび糖類よりなる群から選
ばれてなる少なくとも1種の化合物と塩もしくは両性電
解質を共存させることを特徴とするものである。
【0022】また、(2)上記(1)に記載のアンヒド
ロトロンビンの合成方法において、前記多価アルコール
および糖類よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種
の化合物が、グリセリン、エチレングリコールおよびシ
ョ糖よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種の化合
物であることを特徴とするものである。
【0023】さらに、(3) 上記(1)または(2)
に記載のアンヒドロトロンビンの合成方法において、前
記塩もしくは両性電解質が、塩化ナトリウム、塩化カリ
ウムおよびグリシンよりなる群から選ばれてなる少なく
とも1種の化合物であることを特徴とするものである。
【0024】さらにまた、(4) 上記(1)〜(3)
のいずれか1つに記載のアンヒドロトロンビンの合成方
法において、前記多価アルコールおよび糖類よりなる群
から選ばれてなる少なくとも1種の化合物は、気温23
℃、相対湿度50%の環境下において、液体である場合
は重量比で、粉体、粒体または固体である場合は体積比
で、全体に対する割合が5%以上であることを特徴とす
るものである。
【0025】また、(5) 上記(1)〜(4)のいず
れか1つに記載のアンヒドロトロンビンの合成方法にお
いて、前記塩もしくは両性電解質の濃度が、0.2M以
上であることを特徴とするものである。
【0026】上記アンヒドロトロンビンの合成方法は、 トロンビンの活性セリン残基部位と合成阻害剤とを反
応させる工程(第1工程)、 pH11以上でアルカリ処理を行う工程(第2工
程)、 回収操作を行う工程(第3工程)、 を含み、かつ前記各工程を順次行うアンヒドロトロンビ
ンの合成方法であって、少なくとも回収操作を行う工程
において、多価アルコールおよび糖類よりなる群から選
ばれてなる少なくとも1種の化合物と塩もしくは両性電
解質を共存させることを特徴とするものである。
【0027】具体的に合成阻害剤としてフェニルメタン
スルホニルフルオリド(以下、PMSFともいう)の場
合を例にとれば、下記反応式として表すことができる。
なお、当該具体例に係る代表的な合成例の概略を下記表
1に示す。
【0028】
【化1】
【0029】以下、上記アンヒドロトロンビンの合成方
法を上記1〜3の工程に従って説明する。
【0030】(1)第1工程 第1工程では、トロンビンを合成阻害剤と反応させてト
ロンビンの活性セリン残基とエステル結合を形成せしめ
てトロンビン活性を失わせる目的で、トロンビンの活性
セリン残基部位を合成阻害剤と反応させるものであり、
従来既知の方法を利用することができる。例えば、文献
(Biochemistry 1995, 34, 6454~6463)等に用いられて
いる方法などを利用することができるほか、下記、表1
に例示する方法を採ることができる。
【0031】ここに、表1は、本発明のFXIIIの精製方
法に用いられる立体障害は引き起こさずに求核性(活
性)を失わせたトロンビンの1種であるアンヒドロトロ
ンビンの製造方法の概略を示すものである。
【0032】
【表1】
【0033】なお、上記アンヒドロトロンビンの合成に
用いることのできるトロンビンとしては、特に制限され
るものでなく、既に市販されている各種の精製トロンビ
ン、例えば、コーンペースト(Cohn Paste) III (ヒ
ト由来)のトロンビン、持田製薬株式会社製の精製トロ
ンビン(ウシ由来)、株式会社ミドリ十字製の精製トロ
ンビン(ヒト由来)等をそのまま用いることができる。
【0034】また、上記アンヒドロトロンビンの合成に
用いることのできる合成阻害剤としては、上記反応式
(1)に例示したように、トロンビンの活性セリン残基
と反応してエステル結合を形成することのできるもので
あれば、特に制限されるものではなく、例えば、PMS
F、2−フェニルエタン−1−スルホニルフルオリド、
メタンスルホニルフルオリド、p−トルエンスルホニル
(トシル)フルオリドなどの各種のスルホニルフルオリ
ド、トシルクロリド、ジイソプロピルフルオロリン酸
(以下、DFPともいう)、3,4−ジクロロイソクマ
リン(以下、3,4−DCIともいう)、L−1−クロ
ロ−3−[4−トシルアシド]−7−アミノ−2−ヘプ
タノン−塩酸(以下、TLCKともいう)、L−1−ク
ロロ−3−[4−トシルアシド]−4−フェニル−2−
ブタノン(以下、TPCKともいう)などが挙げられ
る。
【0035】なお、これら合成阻害剤を添加する際に
は、該阻害剤をあらかじめメタノール、アセトン、エタ
ノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、プロパン−2−オール、アセトン、ジメチルホルム
アミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解したも
のを用いてもよい。また、合成阻害剤を添加する際に
は、過剰な添加によるその後の分離除去操作の煩わしさ
を低減し、また反応性を高めるため、トロンビン活性を
3%以下、より好ましくは1%以下になるまで、確認し
ながら行うことが望ましい。
【0036】さらに、反応溶媒としては、トロンビンの
生存に良好なように、浸透圧やイオンの平衡を調節する
目的でNaClが調合された塩類溶液、あるいはさらに
+、Ca2+、Mg2+などのイオンを数種加えた組成の
ものが調合された塩類溶液であって、さらにpHを安定
に維持するように緩衝系としてpH2〜10、好ましく
はpH4〜8を示す緩衝液から任意に選ばれたものを加
えたものであれば良い。こうした緩衝液としては、例え
ば、リン酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、ト
リス緩衝液、クエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液、コハ
ク酸−水酸化ナトリウム緩衝液、フタル酸カリウム−水
酸化ナトリウム緩衝液、イミダゾール−塩酸緩衝液、ホ
ウ酸緩衝液、生理的塩類溶液あるいはグッド(Goo
d)の緩衝液などを挙げることができる。
【0037】また、反応条件としては、一般に熱的変化
がトロンビンの安定化に大きく影響することから、反応
温度は−30〜50℃、好ましくは4〜40℃の範囲で
行うことが望ましい。
【0038】上記反応により得られた生成物は、従来公
知の方法を用いて精製分離を行う。
【0039】精製分離に用いられる方法としては、特に
制限されるものでなく、例えば、ゲル濾過、イオン交換
クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィ
ー、限外濾過膜、透析などが挙げられる。代表的なゲル
濾過について説明すれば、反応後の溶液を、溶媒で膨潤
させたゲル(例えば、セファデックス、バイオゲル、ア
ガロースゲルなど)粒子のカラムに添加し溶媒を流し続
けることで、まず高分子溶質のトロンビン生成物、遅れ
て低分子溶質の合成阻害剤などが溶出し両者が分離され
るものである。ここで使用することのできる溶媒として
は、トロンビンの生存に良好なように、浸透圧やイオン
の平衡を調節する目的でNaClが調合された塩類溶
液、あるいはさらにK+ 、Ca2+、Mg2+などのイオン
を数種加えた組成のものが調合された塩類溶液であっ
て、さらにpHを安定に維持するように緩衝系としてp
H2〜10、好ましくはpH4〜8を示す緩衝液を加え
たものであれば良い。こうした緩衝液としては、例え
ば、リン酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、ト
リス緩衝液、クエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液、コハ
ク酸−水酸化ナトリウム緩衝液、フタル酸カリウム−水
酸化ナトリウム緩衝液、イミダゾール−塩酸緩衝液、ホ
ウ酸緩衝液、生理的塩類溶液あるいはグッド(Goo
d)の緩衝液などを挙げることができる。
【0040】(2)第2工程および第3工程 第2、第3工程では、エステル結合を解離させると共に
セリン残基をアラニン残基に交換してアンヒドロトロン
ビンを合成し、さらに高pH領域から中性付近にpHを
もどして再生する間に、凝集・会合を起こさずに簡便な
操作によって該アンヒドロトロンビンを高収率で得る目
的で、第1工程で精製分離されたトロンビン生成物に対
し、pH11以上でのアルカリ処理を行う工程(第2工
程)と、回収操作を行う工程(第3工程)を順次行うも
のであって、少なくとも回収操作を行う工程において、
多価アルコールおよび糖類よりなる群から選ばれてなる
少なくとも1種の化合物と塩もしくは両性電解質を共存
させることを特徴とするものである。
【0041】まず、第1工程で精製分離されたトロンビ
ン生成物を溶解させる溶媒としては、トロンビンの生存
に良好なように、浸透圧やイオンの平衡を調節する目的
でNaClが調合された塩類溶液、あるいはさらに
+ 、Ca2+、Mg2+などのイオンを数種加えた組成の
ものが調合された塩類溶液であって、さらにpHを安定
に維持するように緩衝系としてpH2〜10、好ましく
はpH4〜8を示す緩衝液から任意に選ばれたものを加
えたものであれば良い。こうした緩衝液としては、例え
ば、リン酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、ト
リス緩衝液、クエン酸−リン酸ナトリウム緩衝液、コハ
ク酸−水酸化ナトリウム緩衝液、フタル酸カリウム−水
酸化ナトリウム緩衝液、イミダゾール−塩酸緩衝液、ホ
ウ酸緩衝液、生理的塩類溶液あるいはグッド(Goo
d)の緩衝液などを挙げることができる。
【0042】また、アンヒドロトロンビンの合成に使用
される多価アルコールおよび糖類よりなる群から選ばれ
てなる少なくとも1種の化合物は、塩もしくは両性電解
質との併用により高pH領域でのアルカリ処理におい
て、蛋白の凝集・会合を起こさずアンヒドロ化を促進
し、回収操作において、高pH領域から中性付近にpH
をもどす際に、凝集・会合を起こさずアンヒドロトロン
ビンを再生する目的で添加するものである。ただし、回
収操作にのみ用いても上記アンヒドロトロンビンの合成
の目的を達成し得るものである。
【0043】上記多価アルコールおよび糖類よりなる群
から選ばれてなる少なくとも1種の化合物としては、例
えば、テトリトール(具体的には、エリトリトール、D
−スレイトール、L−スレイトール、D,L−スレイト
ール)、ペンチトール(具体的には、リビトール、D−
アラビニトール、L−アラビニトール、D,L−アラビ
ニトール、キシリトール)、ヘキシトール(具体的に
は、アリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、ソ
ルビトール(D−グルシトール)、L−グルシトール、
D,L−グルシトール、D−マンニトール、L−マンニ
トール、D,L−マンニトール、D−アルトリトール、
L−アルトリトール、D,L−アルトリトール、D−イ
ジトール、L−イジトール)、ヘプチトール、マルチト
ール、ラクチトール、グリセリン、エチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,
3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペ
ンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、
ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリ
ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメ
チロールプロパン、無水エンネアヘプチトール、1,4
−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオールおよ
び1,2,6−ヘキサントリオールなどの多価アルコー
ル(糖アルコールを含む)、グリセリンアルデヒドジオ
キシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロ
ース、アラビノース、リブロース、リボース、キシロー
ス、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクト
ース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、
タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシ
コース、アルトロースおよびショ糖などの糖類などが挙
げられる。これらは1種単独若しくは2種以上を混合し
て用いることができる。なかでも、グリセリン、エチレ
ングリコールおよびショ糖よりなる群より選ばれてなる
少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0044】また、上記多価アルコールおよび糖類より
なる群から選ばれてなる少なくとも1種の化合物は、気
温23℃、相対湿度50%の環境下において、液体であ
る場合は重量比で、粉体、粒体または固体である場合は
体積比で、全体に対する割合が5%以上、好ましくは1
5%以上であることが望ましい。ただし、全体に対する
割合が5%未満であっても、併用する塩もしくは両性電
解質の濃度を相対的に高めることにより、第2〜第3工
程を行うことは可能であり、所望の効果を有効に発現で
きる。よって、上記多価アルコールおよび糖類よりなる
群から選ばれてなる少なくとも1種の化合物の全体に対
する割合(濃度)は、その種類に応じて、所望の効果を
有効に発現できるように適当な濃度を適宜決定すること
が望ましく、かかる決定に際しては併用する塩もしくは
両性電解質の種類や濃度を考慮する必要がある。
【0045】上記アンヒドロトロンビンの合成に使用さ
れる塩もしくは両性電解質は、上記多価アルコールおよ
び糖類よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種の化
合物との併用により高pH領域でのアルカリ処理におい
て、蛋白の凝集・会合を起こさずアンヒドロ化を促進
し、回収操作において、高pH領域から中性付近にpH
をもどす際に、凝集・会合を起こさずアンヒドロトロン
ビンを再生する目的で添加されるものであって、かかる
目的を得るに適した塩濃度(イオン強度)、誘電率が得
られるならば特に制限されるものではなく、有機、無機
は限定されるものではない。
【0046】よって、上記塩もしくは両性電解質として
は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハロゲ
ン化アルカリ金属、塩化マグネシウム、塩化カルシウム
等のハロゲン化アルカリ土類金属、塩化アンモニウム、
硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭
酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カ
リウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リ
ン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸
水素二アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウ
ムなどの無機酸塩、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリ
ウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、ク
エン酸アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カ
リウム、フタル酸マグネシウム、フタル酸カルシウム、
フタル酸アンモニウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸
カリウム、コハク酸マグネシウム、コハク酸カルシウ
ム、コハク酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリ
ウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモ
ニウム等の有機酸塩、グリシン、アラニン等の両性電解
質となるアミノ酸などの水に可溶な塩もしくは両性電解
質が挙げられる。これらは1種単独若しくは2種以上を
混合して用いることができる。なかでも、水に昜溶で、
併存する上記多価アルコールおよび糖類よりなる群から
選ばれてなる少なくとも1種の化合物の濃度に応じて最
適なイオン強度(塩濃度)、誘電率に容易に調整でき、
さらに精製分離工程(例えば透析など)が容易(ないし
簡略化できるもの)である低分子のアルカリ金属塩や無
機塩類、両性電解質などが望ましく、具体的には、塩化
ナトリウム、塩化カリウムおよびグリシンよりなる群か
ら選ばれてなる少なくとも1種の化合物が望ましいとい
える。
【0047】また、上記塩もしくは両性電解質の濃度
は、0.2M以上、好ましくは0.5M以上とすること
が望ましい。ただし、当該濃度が0.2M未満であって
も、上述した多価アルコールおよび糖類よりなる群から
選ばれてなる少なくとも1種の化合物の場合と同様に当
該化合物の全体に対する割合を相対的に高めることによ
り、第2〜第3工程を行うことは可能であり、所望の効
果を有効に発現できる。
【0048】第2工程において、アルカリで処理してア
ンヒドロ化するには、反応系のpHが11以上となるよ
うに、アルカリを添加して調整し(さらに、必要に応じ
て、上述した多価アルコールおよび糖類よりなる群から
選ばれてなる少なくとも1種の化合物と塩もしくは両性
電解質の共存下で)、反応温度−30〜50℃、好まし
くは4〜40℃の範囲を保持する。上記pHが11未満
の場合には、脱PMSF反応が起こらずアンヒドロ化が
進行せず好ましくない。上記アルカリとしては、例え
ば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの1価の塩
基、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化カルシウ
ム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウ
ムなどの2価の塩基、水酸化鉄などの3価の塩基などを
挙げることができる。上記反応温度が−30℃未満の場
合には、反応系が凍結する可能性があり好ましくなく、
一方、50℃を超える場合には、トロンビンが蛋白変性
を受け、その後の再生操作によっても元の状態に戻らな
くなるなど好ましくない。
【0049】次に、第3工程において、上記アルカリ処
理により合成されたアンヒドロトロンビンを含む溶液
は、その後(アンヒドロ化反応後)、上述した多価アル
コールおよび糖類よりなる群から選ばれてなる少なくと
も1種の化合物と塩もしくは両性電解質の共存下で再生
操作により元の状態(立体構造状態)に戻される。該再
生操作としては、特に制限されるものでなく、従来公知
の方法を利用することができ、例えば、反応後の系(溶
液)のpHを4〜10の範囲に溶媒(上記アンヒドロ化
反応で用いたと同種の溶媒などが使用できる)にて調整
し、−30〜50℃の温度範囲で一定時間保持する方
法、透析によりpHを4〜10の範囲に調整する方法な
どをとることができる。
【0050】次に、再生されたアンヒドロトロンビン
は、共存させた多価アルコールおよび糖類よりなる群か
ら選ばれてなる少なくとも1種の化合物、さらに除去す
る必要のある塩あるいは両性電解質(NaClやリン酸
塩類等の塩あるいは両性電解質の1種が、最終的なアン
ヒドロトロンビンの抽出操作に用いる溶出液に含まれて
いてもよいような場合には、あえて分離除去する必要の
ないこともある)を除去することを目的とした精製分離
を行う。かかる精製分離方法としては、特に制限される
ものでなく、従来公知の方法を利用することができ、例
えば、透析、限外濾過、ゲルクロマトグラフィー、イオ
ン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラ
フィーなどを利用することができる。代表的な透析操作
では、再生したアンヒドロトロンビン溶液から多価アル
コールおよび糖類よりなる群から選ばれてなる少なくと
も1種の化合物をセルロースなどの膜を介してpH4〜
10の溶媒(上記アンヒドロ化反応や再生操作に用いた
と同種の溶媒などが使用できる)に透過させる。
【0051】次いで、不純物を除去することを目的とし
て精製分離を行い、所望のアンヒドロトロンビンを得
る。かかる精製分離方法としては、特に制限されるもの
でなく、従来公知の精製分離方法を利用することがで
き、例えば、図1に概略したように、多価アルコールお
よび糖類よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種の
化合物を除いたアンヒドロトロンビン溶液を、YM10
メンブランなどを用いて濃縮し、次に、pH4〜10の
溶媒(上記アンヒドロ化反応や再生操作に用いたと同種
の溶媒などが使用できる)で平衡化したベンザミジンセ
ファロースカラム等に通液して洗浄し、さらにpH4〜
10に調整されたベンザミジン溶液(当該溶液には、目
的蛋白を特異的吸着させる目的で塩化ナトリウム、塩化
カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩
類が含まれていてもよい)で溶出し、ベンザミジンを除
去する目的でpH4〜10の溶媒(上記アンヒドロ化反
応、再生操作に用いたと同種の溶媒などが使用できる)
で透析して所望のアンヒドロトロンビン溶液を抽出する
方法、限外濾過による分離やセファデックスカラムによ
るゲル濾過等の方法などをとることができる。
【0052】アンヒドロトロンビンは、上記以外の方法
で、例えば、PMSに変えて反応工程中で塩酸グアニジ
ン(Gdn−HCl)を用いる方法などによって合成し
たアンヒドロトロンビンも適当に利用することができ
る。
【0053】また、本発明に用いることのできるリガン
ドのうち、基質および/または阻害剤との結合に立体障
害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビ
ンに類似した物質としては、例えば、トロンビンのアミ
ノ酸配列の少なくとも一のアミノ酸が遺伝子組換操作に
より欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からな
り、かつ基質および/または阻害剤との結合に立体障害
を引き起こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビン
の変異体が挙げられる。トロンビンとトロンビン基質ま
たは阻害剤との結合部位は完全には明らかにされていな
いが、トロンビンのアニオンバインディングサイトと呼
ばれる部位が重要と考えられている。よって、このバイ
ンディングサイトを保持したままに立体障害を引き起こ
さずに求核性(活性)を失わせたトロンビンによりトロ
ンビン基質または阻害剤の精製が可能である。従って、
このようなトロンビンの変異体をリガンドとして本発明
の親和性吸着体に使用することができる。
【0054】ここに、このようなトロンビンの変異体を
使用する際には、トロンビンの求核性(活性)を電荷リ
レー系により付与していると考えられるアミノ酸残基を
欠失、置換若しくは付加することにより、基質および/
または阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求核
性(活性)を失わせたトロンビンの変異体が使用され
る。例えば、トロンビン活性部位中のアスパラギン酸か
らアスパラギンへの置換、またはトロンビン活性部位中
の活性セリンからアラニンへの置換により、基質および
/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求
核性(活性)を失わせたトロンビンを得ることができ
る。
【0055】次に、上記リガンド以外の親和性吸着体の
構成要件及び親和性吸着体の製造方法(例えば、担体の
選択及びその製法、スペーサの有無、リガンド固定化様
式の選択、リガンドの固定化の方法(反応)、固定化リ
ガンドの濃度など)に関しては、従来既知の技術を幅広
く適用することができるものであり、これらの中から適
宜選択して使用すればよい。アフィニティークロマトグ
ラフィーも特に制限されるものではなく、上記親和性吸
着体を、例えば、充填剤として使用しカラムに充填して
なるものなどが代表的なものといえる。
【0056】(III) 精製対象物(I)を精製手段(I
I)により精製する方法の説明 本発明は、モノクローナル抗体によって精製された1つ
のトロンビン基質または阻害剤(精製対象物(I))
を、リガンドとして基質および/または阻害剤との結合
に立体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせた
トロンビンまたはトロンビンに類似した物質を有する親
和性吸着体を用いてなるアフィニティークロマトグラフ
ィー(精製手段(II))により精製することを特徴とす
るものである。ここで、精製対象物(I)を精製手段
(II)により選択的に吸着し、回収することで簡単に精
製する事ができるとする作用機序に関しては、必ずしも
十分に解明されているとは言えないが、本発明者らは、
後述する実験結果などの知見から以下のように考えるも
のである。
【0057】すなわち、精製対象物(I)であるトロン
ビン基質または阻害剤はいずれも、ミカエリス−メンテ
ン(Michaelis-Menten)の説(酵素反応は、酵素分子と基
質分子が結合し、酵素基質複合体を生じてから化学反応
が進行し、この複合体から反応生産物が遊離して酵素は
反応初期時の状態に戻るとする説)によりのような反
応形態をとる。
【0058】
【化2】
【0059】トロンビンの求核性(活性)は、トロンビ
ン中の活性セリン付近のアミノ酸の電荷リレー系(charg
e relay system:キモトリプシンおよび他のセリンプロ
テアーゼの活性部位に存在しているアミノ酸の側鎖間の
一連の水素結合をいい、活性部位におけるセリン残基の
水酸基の高度な求核性(活性)の原因となっている。す
なわち、その一連の水素結合は、アスパラギン酸の負に
荷電したカルボキシル基からセリン残基の水酸基の酸素
へ電子を流し、その結果、水酸基の酸素を高度に求核的
にするものである。)が関与していると言われている。
【0060】この電荷リレー系は、アンヒドロ化や遺伝
子操作によって破壊することによりトロンビン基質およ
び/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに
求核性(活性)を著しく低下させることが可能である。
例えば、トロンビン活性部位中のアスパラギン酸をアス
パラギンに置換等するか、またはトロンビン中の活性セ
リンをアラニンに置換等することにより、トロンビン基
質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起こ
さずにトロンビンの活性(求核性)を著しく低下させる
ことができる。これにより、トロンビン基質および/ま
たは阻害剤との結合に立体障害を引き起こさずに求核性
(活性)を失わせたトロンビンまたはトロンビンに類似
した物質は、フィブリノーゲン(血液凝固第I因子)、
血液凝固第V因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固第X
I因子、血液凝固第XIII因子、プロテインC、プロテイ
ンS、トロンビンレセプターなどのトロンビンの基質、
ヘパリンコファクターIIなどのトロンビンの阻害剤、そ
の他蛋白と可逆的な以下ののような反応(ここでは、
トロンビン基質および/または阻害剤との結合に立体障
害を引き起こさずに活性(求核性)を失わせたトロンビ
ンまたはトロンビンに類似した物質としてアンヒドロト
ロンビンを用いた例を示す。)をすることがわかった。
すなわち、トロンビンを合成阻害剤と反応させてトロン
ビンの活性セリン残基とエステル結合を形成せしめるこ
とで、トロンビン基質および/または阻害剤との結合に
立体障害を引き起こさずにトロンビン活性を失わせたア
ンヒドロトロンビンは、セファロース等の担体(支持
体)に結合する能力が残っており、トロンビン基質およ
び/または阻害剤に対する特異的な結合能力により優れ
た結合性を有するものである。この特殊な能力は、親和
性吸着体のリガンドとして大いに利用できることがわか
ったのである。このアンヒドロトロンビンは酵素を素材
にしているにもかかわらず、その特異的結合能力だけを
利用する新しい概念のリガンドといえる。
【0061】
【化3】
【0062】以上の考えから、精製手段(II)に特有の
リガンドは、精製対象物(I)を選択的に吸着するが、
モノクローナル抗体やウィルスとは親和性を持たず簡単
に精製することができることを見出したものであると言
える。
【0063】本発明の精製方法では、モノクローナル抗
体で精製して得られた精製対象物(I)を、さらに上記
リガンドを有する親和性吸着体を用いてなるアフィニテ
ィークロマトグラフィー(II)により、精製対象物
(I)中に混入するモノクローナル抗体やウィルスを極
めて効率的(選択的)に除去し、極めて高純度でかつ非
常に安全性の高いものに簡単に精製し得るものである。
【0064】より詳しくは、リガンドとして上記アンヒ
ドロトロンビン等の基質および/または阻害剤との結合
に立体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせた
トロンビンまたはトロンビンに類似した物質を用い、目
的物質であるモノクローナル抗体によって精製された1
つのトロンビン基質または阻害剤を当該リガンドに選択
的に吸着させて回収することにより精製するには、一般
的なアフィニティクロマトグラフィーの操作と同様の極
めて簡単な操作によって行うことができる。すなわち、
モノクローナル抗体によって精製された1つのトロンビ
ン基質または阻害剤(精製対象物)を適当な塩濃度で、
かつ適当なpH領域に調製し、例えば、上記リガンドを
固定化した担体(=親和性吸着体)を充填剤に用いて充
填したカラム等に流すことで、目的物質を選択的に吸着
させることができ、一方、精製対象物中に混入されてい
たモノクローナル抗体やウィルスは、上記リガンドとは
親和性を持たないため、吸着することなく溶出するため
簡単に除去でき、その後、適当な緩衝液等でカラムを洗
浄した後、溶離液を流すと吸着されていた目的物質が鋭
いピークとなって溶出回収されるものであり、これによ
り、所期の効果を得ることができるのである。
【0065】
【実施例】以下、本発明の実施例について述べる。
【0066】実施例1 ヒトクリオ分画を抗FVIIIモノクローナル抗体カラムに
添加した後、該カラム容積の5倍の緩衝液で洗浄し、ア
ルブミンの存在下、50%エチレングリコールによって
溶出を行なった。
【0067】該溶出FVIIIをアンヒドロトロンビンカラ
ムに添加、洗浄した後、0.1M ベンザミジンによっ
て溶出を行った。
【0068】アンヒドロトロンビンカラムによる精製に
より、溶出FVIII中に混入していた抗FVIIIモノクローナ
ル抗体が検出限界以下に精製された。
【0069】実施例2 ブラッド(Blood),58, 594(1982)に開示の方法により精
製されたヒトFVIIIを、アンヒドロトロンビンカラムに
添加、洗浄および溶出による精製操作を行ったところ、
FVIII溶液中に含有されるウィルス数がブラッド(Bloo
d),58, 594(1982)に開示の方法により精製されたヒトFV
III中のウィルス数に比して、約1万分の1に精製され
た。
【0070】
【発明の効果】本発明では、新規かつ分離精製手段とし
て、モノクローナル抗体によって精製された1つのトロ
ンビン基質または阻害剤と特異的かつ可逆的に反応する
リガンドとして基質および/または阻害剤との結合に立
体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせたトロ
ンビンまたはトロンビンに類似した物質、例えば、アン
ヒドロトロンビン等を有する親和性吸着体を用いてなる
アフィニティークロマトグラフィーを創作し、該アフィ
ニティークロマトグラフィーにより、従来、複数回のイ
オン交換カラムを用いて最終精製していた工程に本発明
のアフィニティークロマトグラフィーを適用することに
より、簡単な分離精製操作および短い精製分離工数によ
り、極めて高収率で高純度のトロンビン基質または阻害
剤を効率よく、異種動物蛋白等のモノクローナル抗体お
よび免疫原となりうる物質やウィルスの混入の危険性が
なく安全かつ安定的にトロンビン基質または阻害剤の所
望の1つを精製することができるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 9/50 C12N 9/50 9/64 9/64 Z 9/74 9/74 9/99 9/99 15/09 15/00 A (72)発明者 永田 政令 東京都中央区日本橋馬喰町1丁目4番16号 藤森工業株式会社研究開発本部内 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA19 BA80 CA06 HA01 HA04 4B050 CC10 DD07 GG01 GG10 4C087 AA05 BB35 BB38 CA21 DA05 ZA53 4H045 AA20 CA42 DA56 DA65 DA66 EA24 FA82 GA26

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モノクローナル抗体によって精製された
    1つのトロンビン基質または阻害剤を、リガンドとして
    基質および/または阻害剤との結合に立体障害を引き起
    こさずに求核性(活性)を失わせたトロンビンまたはト
    ロンビンに類似した物質を有する親和性吸着体を用いて
    なるアフィニティークロマトグラフィーにより精製する
    ことを特徴とするトロンビン基質または阻害剤の精製方
    法。
  2. 【請求項2】 前記基質および/または阻害剤との結合
    に立体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせた
    トロンビンに類似した物質が、遺伝子組換え操作により
    トロンビンの少なくとも1つのアミノ酸を欠失、置換ま
    たは付加したアミノ酸配列からなるトロンビンの変異体
    であることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
  3. 【請求項3】 前記基質および/または阻害剤との結合
    に立体障害を引き起こさずに求核性(活性)を失わせた
    トロンビンが、アンヒドロトロンビンであることを特徴
    とする請求項1に記載の精製方法。
  4. 【請求項4】 前記1つのトロンビン基質または阻害剤
    が、血液凝固第V因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固
    第XI因子、血液凝固第XIII因子、プロテインC、プロテ
    インS、ヘパリンコファクターII、トロンビンレセプタ
    ーおよびフィブリノーゲンよりなる群から選ばれてなる
    いずれか1種のものであることを特徴とする請求項1に
    記載の精製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008525381A (ja) * 2004-12-23 2008-07-17 ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト 関心のあるビタミンk依存性タンパク質を含んでなる組成物中におけるタンパク質混入物の量の減少
JP2013100300A (ja) * 2004-12-23 2013-05-23 Novo Nordisk Health Care Ag 関心のあるビタミンk依存性タンパク質を含んでなる組成物中におけるタンパク質混入物の量の減少
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