JP2000141592A - ドクタブレードのインキ乾燥防止装置および方法ならびに洗浄装置および方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ドクタブレードに付着するインキによる不都
合を、簡便な構成により効率的かつ安全に解消する。 【解決手段】 凹版印刷に際して、ドクタブレード３が
凹版にインキを充填した後、次に凹版にインキを充填す
るまでの間、ドクタブレードに鞘状部材１を被せる。さ
らに、鞘部材中の雰囲気をインキの溶媒の過飽和状態と
する。さらに、鞘状部材の中でドクタブレードを洗浄す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は印刷凹版に形成され
た原版パターン（インキパターン）を被印刷物の上に高
精度に転写印刷する凹版印刷たとえばオフセット印刷に
よる連続印刷に用いられるドクタブレードに付着するイ
ンキの乾燥を防止する装置および方法ならびに付着した
インキを洗浄する装置および方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、凹版印刷の方式としては、凹版
面上にインキを供給し、ドクタブレードで掻いて凹部以
外（凸部）に付着したインキを除去し、凹部のインキセ
ル内に充填されたインキを被印刷体に直接印刷するダイ
レクト方式か、または同様にして凹部のインキセル内に
充填されたインキをブランケットに転写し、そのブラン
ケット上のインキを被印刷体に転写するオフセット方式
がある。

【０００３】このような従来の凹版印刷、特にオフセッ
ト印刷において、インキセル内のインキはドクタブレー
ドを通過し、余分なインキが掻き取られ、ブランケット
に接触するまでの間に乾燥し、また、ブランケットと接
触してブランケットにインキを持っていかれた後転移し
なかったインキがインキセル内に残り、これが次にイン
キが充填されるまでの間に乾燥する。同様にドクタブレ
ードに付着したインキも乾燥する。

【０００４】ドクタブレードは、板状体であり、支持枠
（ホルダ）に取り付けられている。ドクタブレードは、
凹版の表面をかき取って、凹版のインキセル内にインキ
を確実に充填し計量する機能を有するものであるため、
インキが付着したドクタブレードを放っておくと、イン
キが乾燥または硬化してインキ固形物となり、ドクタブ
レードにこびり付いてしまう。こびり付いたままドクタ
ブレードを使用すると、ドクタブレードにこびり付いた
インキが新しいインキに再び溶解したり、インキ固形物
が脱落して凹版に供給された新しいインキに混ざってし
まうので、変質したインキで印刷を行なうことになる。
また、こびり付いたインキによってドクタブレードの先
端が凹凸となるので、かき取りムラができ、凹版の全て
のインキセルに確実に充填・計量することができない。

【０００５】そこで、従来、ドクタブレードに付いたイ
ンキを払拭しているが、すべて手作業で行っている。つ
まり、まず、溶剤を浸み込ませたワイパを手に持って、
ドクタブレードを所定の挟込み圧で挟み込み、挟み込ん
だままの状態でドクタブレードの長手方向に沿って移動
させる。また、払拭後に、ドクタブレードに残留してい
る溶剤を除去するために、ドクタブレードを手作業で乾
燥させている。つまり、ドクタブレード乾燥用の気体が
噴出する気体噴出手段を、人の手によってドクタブレー
ドとの間に所定の距離をおいた状態とし、ドクタブレー
ドの表面に気体を吹き付けさせながら人の手によってド
クタブレードの長手方向に沿って移動させている。

【０００６】そこで、特開平６−２９７６７３号公報に
記載されているように、これら従来の作業を多間接ロボ
ットを用いて、自動化する提案がなされている。この提
案により人手による発塵や事故（怪我やブレードの傷つ
け）、さらには不安定要因（セット圧のばらつき、乾燥
のむら）を減らすことができる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この払拭法に
は、次のような問題がある。第１に、完全に拭き取るた
めにはワイパの使用量がかさみ、スループットが低下す
る。第２に、ドクタブレードに付着したインキを毎回払
拭すると、インキの使用効率が低下し、コストが上昇す
る。第３に、ドクタブレードを挟み込みながら払拭する
ので、ワイパをドクタブレードの先端に所定の接触圧で
押し当て、ドクタブレードの長手方向にワイパを移動さ
せると、ドクタブレードのずれ等の危険性がある。払拭
のための接触圧とずれを防止するための接触圧の両立は
極めて困難である。

【０００８】本発明の目的は、このような従来技術の問
題点に鑑み、原版パターンを被印刷物上に高精度に転写
印刷する凹版印刷、特にオフセット印刷において、ドク
タブレードに付着するインキによる不都合を、簡便な構
成により効率的かつ安全に解消し、もってドクタブレー
ドの安定性を向上させることができる手段ないしは方法
を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
本発明のドクタブレードのインキ乾燥防止装置は、ドク
タブレードに被せて、前記ドクタブレードに付着したイ
ンキの乾燥を防止するための鞘状部材と、凹版印刷に際
して前記ドクタブレードが凹版にインキを充填した後、
次に凹版にインキを充填するまでの間、前記ドクタブレ
ードに前記鞘状部材を被せる手段とを具備することを特
徴とし、これによりドクタブレードに付着したインキの
乾燥を遅延させ、インキを乾燥による変質から守るよう
にしている。

【００１０】また、本発明のドクタブレードのインキ乾
燥防止方法は、凹版印刷に際して、ドクタブレードで凹
版にインキを充填させた後、次に凹版にインキを充填す
るまでの間、前記ドクタブレードに鞘状部材を被せてド
クタブレードに付着したインキの乾燥を防止することを
特徴とし、これによりドクタブレードに付着したインキ
の乾燥を遅延させ、インキを乾燥による変質から守るよ
うにしている。また、前記鞘部材中の雰囲気を前記イン
キの溶媒の過飽和状態とすることにより、湿潤効果を与
えるようにしている。

【００１１】本発明のドクタブレード洗浄装置ではさら
に、ドクタブレードに鞘状部材を被せている間に、鞘状
部材の中でドクタブレードを洗浄するようにしており、
これにより、連続印刷を行なうことにより増加する付着
インキのぼた落ちおよびドクタブレードの刃の表への回
り込みが発生するのを防止している。

【００１２】この洗浄を行なう手段として、鞘状部材の
内部に設けられた洗浄用のシャワーノズル、ドクタブレ
ードを超音波振動させるための超音波振動子、鞘状部材
の内部に設けられた液切り用のエアナイフノズル等が使
用される。たとえば、鞘部材の内側より高圧シャワーや
超音波振動によりドクタブレードの刃先を洗浄する。こ
の時、根元からは先に向かってシャワーや排液を流す。
さらに、根元から先に向かってエアナイフノズルにより
エアを吹き付けてドクタブレードを乾燥させる。これに
よれば、ドクタブレードに付着するインキによる不都合
が、簡便な構成により効率的かつ安全に解消され、連続
印刷における効率の向上が図られる。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について図を用いて説明する。図１は、本発明の一実施
形態に係るドクタブレードのインキ乾燥防止装置におい
て、ドクタブレードが保存用の鞘に収納されたときの様
子を示す断面図である。同図に示すように、この装置
は、ドクタブレード３に被せて、ドクタブレード３に付
着したインキ２の乾燥を防止するための保存用鞘１と、
凹版印刷に際してドクタブレード３が凹版にインキを充
填した後、次に凹版にインキを充填するまでの間、ドク
タブレード３に保存用鞘１を被せる不図示の手段とを備
える。なお、図中の４はドクタブレード３を保持するホ
ルダである。

【００１４】これによれば、凹版印刷に際し、ドクタブ
レード３により凹版にインキが充填された後、次に凹版
にインキを充填するまでの間における、ドクタブレード
３に付着したインキ２の乾燥防止が、インラインで行な
われる。

【００１５】図２は、本発明の他の実施形態を示す断面
図である。この場合、鞘１中の雰囲気をインキの溶媒の
過飽和状態とする手段として、鞘１の内側にインキ溶媒
の吸収体５が設けられており、これにより鞘１の内部を
溶媒雰囲気に保っている。

【００１６】図３〜図６は、鞘１の中でドクタブレード
３を洗浄するドクタブレード洗浄装置の実施形態を示
す。この装置では、図３に示すように、鞘１の内部に洗
浄用のシャワーノズル６が設けられている。また、図４
に示すように、ホルダ４に超音波振動子８を設け、鞘１
の内部にインキ溶媒７を充填し、超音波振動により洗浄
するようにしている。さらに図５に示すように、鞘１の
奥に廃液口を設け、溶媒を矢印９方向に排出するように
している。そして図６に示すように、鞘１の内部に液切
り用のエアナイフノズル１０を設け、廃液口より溶媒と
排気を矢印１１方向に排出するようにしている。

【００１７】洗浄は、図３から図６の順に行なわれる。
すなわち、まずシャワーによる洗浄を行い（図３）、次
に溶媒の充填と超音波振動による洗浄を行い（図４）、
次に鞘の奥の廃液口からの汚れた洗浄液の排出とシャワ
ーによるリンスを行い（図５）、そしてエアナイフによ
る乾燥（図６）を行なう。

【００１８】

【実施例】［実施例１］図８に示すように、３００ｍｍ
×５０ｍｍで、厚さ０．１５ｍｍのスウェーデン鋼ドク
タブレード３（ＭＤＣ社製、刃先は０．０６５ｍｍ）を
バックアッププレート１４（３００ｍｍ×４５ｍｍで、
厚さ１ｍｍのステンレス鋼）と共にホルダ４にセットし
た。このとき、バックアッププレート１４をドクタブレ
ード３の刃先より５ｍｍ下げた。また、ドクタブレード
３の刃先をホルダ４より１５ｍｍ出した。

【００１９】次に、図７に示すように、３００×３５０
ｍｍで、厚さ２．８ｍｍのガラスに印刷パターン（０．
１ｍｍ×０．４ｍｍの長方形を横に０．１５ｍｍピッチ
で１０００個、縦に０．５ｍｍピッチで２００個配列し
たもの）を深さ１０μｍエッチングしたガラス凹版１３
の非印刷パターン部に、ディスペンサ（商品名：ＡＤ５
００ＶＨ、岩下エンジニアリング社製）によりインキ
（ＭＯペーストＥ−３１００をＢＣＡ溶媒にて希釈した
レジネートペースト、ＮＥケムキャット社製）を滴下
し、ドクタブレード３を角度６０゜で当てて１ｍｍ押し
込み、矢印１５方向にドクタブレード３を移動させるこ
とにより、凹部にインキを充填した。さらに、ドクタブ
レード３を非印刷パターン部まで移動させ、ガラス凹版
１３より離すと、ガラス凹版１３とドクタブレード３の
間に形成されたインク溜り１２は、ガラス凹版１３とド
クタブレード３の両方に付着した。

【００２０】次に、このドクタリングによりインキが付
着したドクタブレード３を、図１のようにして、鞘に入
れて保存した。この結果、保存時間が１分以内の短時間
であれば乾燥による不良（ドクタ筋等）は発生しなかっ
た。

【００２１】［実施例２］実施例１と同一の条件でドク
タリングを行なった後、インキが付着したドクタブレー
ド３を、図２のようにして、溶媒を吸収させた溶媒吸収
体を内側に形成した鞘に入れて溶媒の飽和雰囲気内で保
存した。この結果、保存時間が１０分以内の時間であれ
ば乾燥による不良（ドクタ筋等）は発生しなかった。

【００２２】［実施例３］実施例１および２と同様にし
てドクタリングし、保存した後、付着インキの増加によ
る汚れや長時間保存による不良またはメンテナンスの際
に、図３〜図６のように、シャワーによる洗浄、溶媒の
充填と超音波振動による洗浄、鞘の奥の廃液口からの汚
れた洗浄液の排出とシャワーによるリンス、そしてエア
ナイフによる乾燥により、ドクタブレードを鞘の中で洗
浄した。この結果、インキ付着による不良の発生がなか
った。

【００２３】［比較例１］実施例１と同一の条件でドク
タリングを行なった後、インキが付着したドクタブレー
ドを、付着したインキをそのままにして、鞘を被せずに
保存した。この結果、保存時間が１分以内の短時間であ
っても乾燥による不良（ドクタ筋等）が発生した。

【００２４】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ド
クタブレードに鞘状部材を被せてドクタブレードに付着
したインキの乾燥を防止するようにしたため、連続印刷
に際してタクトが短ければドクタブレードのメンテナン
スを毎回行なう必要をなくすことができる。

【００２５】また、さらに鞘部材中の雰囲気をインキの
溶媒の過飽和状態となるようにしたため、連続印刷にお
いて、多少タクトが長くなっても毎回のメンテナンスの
必要を無くすることができ、さらに飽和雰囲気によリイ
ンキを湿潤させ、印刷の安定性を得ることができる。

【００２６】さらに、鞘状部材の中でドクタブレードを
洗浄する洗浄手段を設けたため、非接触インラインでの
ドクタブレードのメンテナンスを行なうことができ、し
たがってドクタブレードのセット条件の変動を無くし、
作業の安全性および効率を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施形態において、ドクタブレー
ドが保存用の鞘に収納されたときの様子を示す断面図で
ある。

【図２】 本発明の他の実施形態において、保存用鞘の
内側のインキ溶媒の吸収体を示す概略図である。

【図３】 本発明の別の実施形態に係るドクタブレード
洗浄装置の洗浄用シャワーノズルを示す概略図である。

【図４】 図３の洗浄装置において、鞘の内部にインキ
溶媒を充填し、ホルダに設けられた超音波振動子による
超音波振動により洗浄を行なう様子を示す概略図であ
る。

【図５】 図３の洗浄装置において、汚れた洗浄液を鞘
の奥の廃液口から排出する様子を示す概略図である。

【図６】 図３の洗浄装置において、鞘の内部に設けた
液切り用のエアナイフでドクタブレードを乾燥させ、廃
液口より排液と排気を行なっている様子を示す概略図で
ある。

【図７】 本発明の各実施例において行なわれるドクタ
リング動作を示す概略図である。

【図８】 図７のドクタリングに使用されるドクタブレ
ードのホルダ部分の拡大図である。

【符号の説明】

１：保存用鞘、２：付着インキ、３：ドクタブレード、
４：ドクタブレードを保持するホルダ、５：インキ溶媒
を吸収させた吸収体、６：シャワーノズル、７：インキ
溶媒、８：超音波振動子、９：廃液の流れ方向、１０：
エアナイフノズル、１１：排気の流れ方向、１２：イン
キ溜り、１３：ガラス凹版、１４：バックアッププレー
ト。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米元 一成 東京都大田区下丸子３丁目30番２号キヤノ ン株式会社内 (72)発明者 緑川 理子 東京都大田区下丸子３丁目30番２号キヤノ ン株式会社内 Ｆターム(参考） 2C250 FA17 FB02 FB23

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ドクタブレードに被せて、前記ドクタブ
   レードに付着したインキの乾燥を防止するための鞘状部
   材と、凹版印刷に際して前記ドクタブレードが凹版にイ
   ンキを充填した後、次に凹版にインキを充填するまでの
   間、前記ドクタブレードに前記鞘状部材を被せる手段と
   を具備することを特徴とするドクタブレードのインキ乾
   燥防止装置。
2. 【請求項２】 前記鞘部材中の雰囲気を前記インキの溶
   媒の過飽和状態とする手段を有することを特徴とする請
   求項１に記載のドクタブレードのインキ乾燥防止装置。
3. 【請求項３】 請求項１または２のインキ乾燥防止装置
   の鞘状部材の中でドクタブレードを洗浄する洗浄手段を
   具備することを特徴とするドクタブレード洗浄装置。
4. 【請求項４】 前記洗浄手段は、前記鞘状部材の内部に
   設けられた洗浄用のシャワーノズルを有することを特徴
   とする請求項３に記載のドクタブレード洗浄装置。
5. 【請求項５】 前記洗浄手段は、前記ドクタブレードを
   超音波振動させるための超音波振動子を有することを特
   徴とする請求項３または４に記載のドクタブレード洗浄
   装置。
6. 【請求項６】 前記洗浄手段は、前記鞘状部材の内部に
   設けられた液切り用のエアナイフノズルを有することを
   特徴とする請求項３〜５のいずれか１項に記載のドクタ
   ブレード洗浄装置。
7. 【請求項７】 凹版印刷に際して、ドクタブレードで凹
   版にインキを充填させた後、次に凹版にインキを充填す
   るまでの間、前記ドクタブレードに鞘状部材を被せてド
   クタブレードに付着したインキの乾燥を防止することを
   特徴とするドクタブレードのインキ乾燥防止方法。
8. 【請求項８】 前記ドクタブレードに鞘状部材を被せて
   いる間、前記鞘状部材の中の雰囲気を前記インキの溶媒
   の過飽和状態とすることを特徴とする請求項７に記載の
   ドクタブレードのインキ乾燥防止方法。
9. 【請求項９】 請求項７または８のインキ乾燥防止方法
   によりドクタブレードに鞘状部材を被せている間に、前
   記鞘状部材の中でドクタブレードを洗浄することを特徴
   とするドクタブレードの洗浄方法。