JP2000140652A - 単分散ゼラチン状カチオン交換体の製造方法 - Google Patents

単分散ゼラチン状カチオン交換体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単分散ゼラチン状カチオン交換体の製造方法 【解決手段】 使用されるシードポリマーが高膨潤性と
低可溶部含量を有するポリマーであれば、高安定性及び
高純度の単分散ゼラチン状カチオン交換体が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術の属する技術分野】本発明は、高安定性及び高純
度の単分散ゼラチン状(gelatious)カチオン交換体の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの応用において、極めて均一な粒子
サイズのイオン交換体(以下、「単分散」と呼ぶ)は、単
分散のイオン交換体からなるイオン交換体床の好ましい
水力学的性質によって経済的な利点をもたらすので、最
近、その重要性を増している。単分散のイオン交換体
は、単分散のビーズポリマーに官能基を導入することに
より得られる。
【0003】単分散のビーズポリマーを製造する可能性
の一つは、単分散ポリマー(「シード」)をモノマー中
で膨潤させ、次に重合させる、いわゆるシード/フィー
ド法に在る。シード/フィード法は、例えばEP-A-0 098
130及びEP-A-0 101 943に記述されている。
【0004】シード/フィード法において使用されるシ
ードポリマーは、シード/フィード法において添加され
た大量のモノマーを吸収できるように高い膨潤インデッ
クスを有しなければならない。膨潤インデックス(SI)
は、非膨潤ポリマーの体積に対する膨潤ポリマーの体積
の比率である。膨潤インデックスは、既知の方法で、架
橋剤の含量によりコントロールされる。低い架橋剤の含
量は、結果として高膨潤インデックスをもたらし、逆も
成り立つ。このように、0.8から2.0重量%にジビ
ニルベンゼンで架橋されたスチレンポリマーは、トルエ
ン中で8から2.5の膨潤インデックスを有する。しか
しながら、低架橋度のシードポリマーは、かなり高含量
の未架橋の可溶ポリマーを含む。このような比率のシー
ドポリマー中の未架橋の可溶ポリマーは、多くの点で望
ましくない。
【0005】1.添加モノマーによりポリマー成分がシ
ードから溶出し、粒子をお互いに粘着させることによっ
て、膨潤シードの重合が乱される。
【0006】2.ポリマー成分がシードから溶出し、官
能基の導入に使用した反応溶液中に蓄積することによっ
て、アニオン交換体を製造するための官能基の導入が更
に困難になる。
【0007】3.最終製品(イオン交換体)が含有する
可溶ポリマーの量が増加し、結果として、イオン交換体
の望ましくない浸出が起こる。
【0008】公知のカチオン交換体の更なる問題は、機
械的及び浸透圧的安定性が必ずしも適切とは限らないこ
とである。このように、カチオン交換体のビーズは、ス
ルホン後の希釈時に、発生する機械的及び浸透圧的な力
により崩壊されることがある。カチオン交換体のすべて
の用途に対して、ビーズの形の交換体は、使用時その性
質を維持しねければならず、部分的まして全体的に分解
したり、破片に破壊されてはならない。使用時、細片及
びビーズポリマーの破片は、処理溶液に入り、汚染す
る。更に、損傷を受けたビーズポリマーの存在は、それ
自体カラム法で使用されるカチオン交換体の機能には不
利である。破片は結果として、カラム系における圧力損
失の増加をもたらし、処理される液のカラム処理量を減
少させる。
【0009】カチオン交換体には、多数の異なる用途が
ある。例えば、カチオン交換体は、飲料水の処理、超高
純水(コンピュター産業のマイクロチップの製造に必
要)の製造、グルコースとフラクトースのクラマトグラ
フ分離及び種々の化学反応の触媒(例えば、フェノール
とアセトンからのビスフェノールAの製造等において)
に使用される。これらの大多数の用途において、カチオ
ン交換体は、製造から発生する、あるいは使用時にポリ
マーの分解により生じる不純物を、環境に放出せずに企
図された機能を行うことが望まれる。カチオン交換体か
ら流出する水中の不純物の存在は、水の電導度の増加及
びまたは有機カーボン(TOC含量)により明白にな
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高安
定性及び高純度の単分散ゼラチン状カチオン交換体を提
供することである。
【0011】本発明の目的として、純度という語は、カ
チオン交換体が浸出しないという意味を意図している。
浸出は、イオン交換体により処理された水の電導度の増
加から明白になる。
【0012】
【課題を解決するための手段】膨潤性が高く、可溶ポリ
マー成分の含量が低いポリマーを用いたシード/フィー
ド法により、高安定性及び高純度の単分散の、ゼラチン
状カチオン交換体が得られることが見出された。
【0013】本発明は、 a)連続した水相中にシードポリマーの懸濁液を形成
し、 b)シードポリマーをビニルモノマー、架橋剤及びフリ
ーラジカル開始剤からなるモノマー混合物中で膨潤さ
せ、 c)シードポリマ中のモノマー混合物を重合させ、 d)得られるコポリマーをクロルメチル化と、それに続
いてのスルホン化(sulphonation)により官能基を導入す
る プロセスステップからなる高安定性及び高純度の単分散
ゼラチン状カチオン交換体の製造方法に関し、シードポ
リマーが2.5から7.5の膨潤インデックス(トルエ
ン中で測定)と1重量%以下の非揮発性の、可溶成分の
含量(テトラヒドロフランによる抽出により測定)を有
する、架橋されたポリマーであることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の特段の実施の形態とし
て、使用されるシードポリマーが i)96.5から99.0重量%のモノマー、 ii)0.8から2.5重量%の架橋剤、及び iii)重合開始剤として0.2から1.0重量%の脂肪
属パーオキシエステルから製造される架橋ポリマーであ
る。
【0015】シードポリマーを製造するためのモノマー
(i)は、1分子当り1個のフリーラジカル重合性のC
=C二重結合を含有する化合物である。
【0016】このタイプの好ましい化合物には、例え
ば、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、エチルスチレ
ン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のベンゼン
及びナフタレンのビニル及びビニリデン誘導体等、好ま
しくはスチレンの芳香族のモノマー及び例えば、アクリ
ル酸、メタアクリル酸、C1−C8アルキルアクリレー
ト、C1−C8アルキルメタアクリレート、アクリロニト
リル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタア
クリルアミド、ビニルクロライド、ビニリデンクロライ
ド及びビニルアセテート等の非芳香族ビニル及びビニリ
デン化合物、及びこれらのモノマーの混合物が含まれ
る。好ましくは、非芳香族モノマーは、2番目の量で、
好ましくは芳香族モノマー基準で0.1から50重量
%、特に0.5から20重量%の量で使用される。しか
しながら、多くの場合、もっぱら芳香族モノマーが使用
される。
【0017】好適な架橋剤ii)は、1分子当り2個以
上、好ましくは2から4個のフリーラジカル重合性二重
結合を含有する化合物である。挙げられる例は、ジビニ
ルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、
ジビニルナフタレン、トリビニルナフタレン、ジエチレ
ングリコールジビニルエーテル、1,7−オクタジエ
ン、1,5−ヘキサジエン、エチレングリコールジメタ
クリレート、トリエチレングリコールジメタクリレー
ト、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリ
ルメタクリレート及びメチレン−N,N’−ビスアクリ
ルアミドである。ジビニルベンゼンが好ましい架橋剤で
ある。多数の用途に対しては、ジビニルベンゼンの異性
体の他にエチルジビニルベンゼンも含有する市販のグレ
ードのジビニルベンゼンが適当である。
【0018】シードポリマーを製造するための脂肪属パ
ーオキシエステルは、式I、IIまたはIII
【0019】
【化2】 の通りである。式中、R1は、2から20個の炭素原子
を有するアルキル基または20個迄の炭素原子を有する
シクロアルキル基であり、R2は、4から12個の炭素
原子を有する分岐アルキル基であり、Lは、2から20
個の炭素原子を有するアルキレン基または20個迄の炭
素原子を有するシクロアルキレン基である。
【0020】好ましい式Iの脂肪属パーオキシエステル
は、例えばt−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチ
ルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピ
バレート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−
ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブ
チルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキ
シネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレー
ト、t−アミルパーオキシオクタノエート、t−アミル
パーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−アミル
パーオキシネオデカノエートである。
【0021】好ましい式IIの脂肪属パーオキシエステ
ルは、例えば2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパ
ーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジピ
バロイル−2,5−ジメチルヘキサン及び2,5−ビス
(2−ネオデカノイルパーオキシ)−2,5−ジメチル
ヘキサンである。
【0022】好ましい式IIIの脂肪属パーオキシエス
テルは、例えばジt−ブチルパーオキシアゼラエート及
びジt−アミルパーオキシアゼラエートである。
【0023】勿論、上述の重合開始剤の混合物を使用す
ることも可能である。
【0024】本発明の更なる特段の実施の形態として、
シードポリマーがマイクロカプセル化される。ここで、
シードポリマーを製造するために成分(モノマー
(i)、架橋剤(ii)及び重合開始剤としての脂肪属パ
ーオキシエステル)をマイクロカプセル化し、マイクロ
カプセル化された粒子を硬化して、シードポリマーを得
るのが特に有利である。
【0025】マイクロカプセル化に対して、好適な材料
は、この目的に公知のものであり、特に、ポリエステ
ル、天然及び合成ポリアミド、ポリウレタン及びポリ尿
素である。特に好適な天然ポリアミドは、ゼラチンであ
る。これは、特にコアセルベート及び複合コアセルベー
トとして使用される。本発明の目的として、「ゼラチン
含有複合コアセルベート」という語は、特にゼラチンと
合成高分子電解質の組み合わせを意味するものと受取ら
れる。好適な合成高分子電解質は、例えばマレイン酸、
アクリル酸、メタアクリル酸、アクリルアミド及びメタ
アクリルアミドの単位を含有するコポリマーである。ゼ
ラチン含有カプセルは、例えばホルムアルデヒドまたは
グルタルアルデヒド等の慣用の硬化剤を用いて硬化され
る。モノマー滴を例えばゼラチン、ゼラチン含有コアセ
ルベート及びゼラチン含有複合コアセルベートによりマ
イクロカプセル化することは、EP-A-0 046 5
35に記述されている。合成ポリマーによるマイクロカ
プセル化の方法は、それ自体公知である。極めて好適な
方法の例は、モノマー滴に溶解された反応性成分(例え
ば、イソシアネートまたは酸クロライド)を水相に溶解
された第2の反応性成分(例えば、アミン)と反応させ
る相界面縮合である。ゼラチン含有複合コアセルベート
によるマイクロカプセル化が好ましい。
【0026】モノマー(i)、架橋剤(ii)及び脂肪属
パーオキシエステル(iii)のマイクロカプセル化され
た滴を重合(硬化)させて、シードポリマーを得るの
は、水性懸濁液で行われ、水相に溶解された禁止剤を使
用することが有利である。好適な禁止剤は、有機及び無
機物質の双方である。無機禁止剤の例は、ヒドロキシル
アミン、ヒドラジン、亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリ
ウム等の窒素化合物である。有機禁止剤の例は、ハイド
ロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、レゾル
シノール、ピロカテコール、t−ブチルピロカテコー
ル、及びフェノールとアルデヒドの縮合生成物等のフェ
ノール性化合物である。更なる有機禁止剤は、例えばジ
エチルヒドロキシルアミン及びイソプロピルヒドロキシ
ルアミン等の窒素含有化合物である。レゾルシノールが
禁止剤として好ましい。禁止剤の濃度は、水相基準で、
5から1000ppm、好ましくは10から500pp
m、特に好ましくは20から250ppmである。
【0027】シードポリマーは、重合後、水性懸濁液か
ら単離され、好ましくは0.5重量%以下の含水量迄乾
燥される。シードポリマーの粒子サイズは、5から50
0μm、好ましくは20から400μm、特に好ましく
は100から300μmである。粒子サイズの分布曲線
の形状は、所望のカチオン交換体のそれに対応しなけれ
ばならない。従って、狭分散あるいは単分散のイオン交
換体を製造するためには、狭分散あるいは単分散のシー
ドポリマーが使用される。
【0028】乾燥されたシードポリマーは、ポリマーと
水の間の比が2:1と1:20、好ましくは1:2と
1:10の間である水相に懸濁される。助剤、例えば界
面活性剤または保護コロイドの使用は必要ない。懸濁
は、低ないし中のせん断力を用いて、通常の攪拌機によ
って行われる。
【0029】モノマー(a)、架橋剤(aa)及び重合
開始剤(aaa)の混合物(「フィード」)が懸濁され
たシードポリマーに添加される。
【0030】好適なモノマーは、既に上述したモノマー
(i)であり、すなわちスチレン、ビニルトルエン、エ
チルスチレン、アルファ−メチルスチレン、クロロスチ
レン、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メ
タアクリレート、アクリロニトリル、メタアクリロニト
リル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、及びこれ
らのモノマーの混合物である。好ましいのは、スチレン
及びアクリロニトリルである。好ましいのは、92から
99重量%のスチレン及び1から8重量%のアクリロニ
トリルの混合物である。
【0031】挙げられる架橋剤(aa)は、ジビニルベ
ンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビ
ニルナフタレン、トリビニルナフタレン、ジエチレング
リコールジビニルエーテル、1,7−オクタジエン、
1,5−ヘキサジエン、エチレングリコールジメタクリ
レート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ト
リメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタ
クリレート及びメチレン−N,N’−ビスアクリルアミ
ドである。ジビニルベンゼンが好ましい。多数の用途に
対しては、ジビニルベンゼンの異性体の他にエチルジビ
ニルベンゼンも含有する市販のグレードのジビニルベン
ゼンが適当である。
【0032】モノマー混合物中の架橋剤の含量は、1か
ら25重量%、好ましくは7から15重量%である。
【0033】本発明の方法に好適な重合開始剤(aa
a)の例は、ジベンゾイルパーオキサイド、ジラウリル
パーオキサイド、ビス(p−クロロベンゾイルパーオキ
サイド)、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネー
ト、t−ブチルパーオクタノエート、2,5−ビス(2
−エチルヘキサノイルパーオキシ)−2,5−ジメチル
ヘキサン及びt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ン等のパーオキシ化合物、2,2’−アゾビス(イソブ
チロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルイ
ソブチロニトリル)等の更なるアゾ化合物である。好ま
しいのは、ジベンゾイルパーオキサイドである。フリー
ラジカル開始剤は、一般に、モノマー(a)及び架橋剤
(aa)の混合物基準で、0.05から2.5重量%、
好ましくは0.2から1.5重量%の量で使用される。
【0034】シードポリマーと添加混合物の間の比(シ
ード/フィード比)は、一般に1:1から1:20、好
ましくは1:2から1:10、特に好ましくは1:1.
5から1:1.6である。添加混合物は、シードポリマ
ー中に膨潤、浸透される。シードにより吸収される最大
フィード比は、シードの架橋剤の含量に極めて依存す
る。シードポリマーの粒子サイズが決まると、得られる
コポリマーまたはイオン交換体の粒子サイズはシード/
フィード比により設定される。
【0035】膨潤したシードポリマーを重合させて、シ
ードポリマーを得るのは、一つ以上の保護コロイドの存
在下、また所望ならばバッファー系の存在下で行われ
る。好適な保護コロイドは、例えばゼラチン、でん粉、
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリア
クリル酸、ポリメタアクリル酸及び(メタ)アクリル酸
と(メタ)アクリレートのコポリマー等の天然及び合成
の水溶性ポリマーである。また、極めて好適なのは、セ
ルロース誘導体、特に、カルボキシメチルセルロース及
びヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエステル
及びセルロースエーテルである。セルロース誘導体が保
護コロイドとして好ましい。保護コロイドの使用量は、
一般に、水相基準で0.05から1重量%、好ましくは
0.1から0.5重量%である。
【0036】本発明の特段の実施の形態として、重合
は、バッファー系の存在下で行われる。好ましいのは、
重合開始時の水相のpH値を14と6、好ましくは13
と9の間に設定するバッファー系である。これらの条件
下で、カルボキシル基を含有する保護コロイドは、完全
に、あるいは部分的に塩の形で存在する。このようにす
れば、保護コロイドの作用は好影響を受ける。特に好適
なバッファー系は、ホスフェートまたはボレート塩を含
有する。
【0037】膨潤シ−ドの重合における有機相と水相の
間の比は、1:1から1:20、好ましくは1:1.5
から1:10である。
【0038】膨潤シードポリマーの重合時の温度は、使
用する開始剤(aaa)の分解温度に依存する。それ
は、一般に50と150℃の間、好ましくは55と13
0℃の間、特に好ましくは60ー100℃である。重合
は1から数時間要する。重合を低い温度、例えば60℃
で開始し、反応温度を重合転化率の増加と共に上げる温
度プログラムを使用するのが、うまくいくことが判っ
た。このようにして、例えば、信頼できる反応経路と高
重合転化率という要請が極めて充分に満足される。
【0039】重合後、コポリマーは、慣用の方法、例え
ば濾過またはデカンテーションにより単離され、所望な
らば1回以上の洗浄後、乾燥され、所望ならば篩にかけ
られる。
【0040】コポリマーのカチオン交換体への変換は、
スルホン化により行われる。好適なスルホン化剤は、硫
酸、三酸化イオウ及びクロロスルホン酸である。好まし
いのは、90から100%、特に好ましくは96から9
9%の濃度を有する硫酸である。スルホン化時の温度
は、一般に50から200℃、好ましくは90から11
0℃、特に好ましくは95から105℃である。本発明
のコポリマーは、膨潤剤(例えば、クロロベンゼンまた
はジクロロエタン等)を添加せずにスルホン化されて、
均一なスルホン化生成物が得られることが見出された。
【0041】スルホン化時、反応混合物は攪拌される。
例えば、かい形、いかり形、メッシュ形またはタービン
形攪拌機などの種々の形式の攪拌機が使用される。ラジ
アルーフローツインタービン形攪拌機が特に好適である
ことが判明した。
【0042】本発明の特段の実施の形態として、スルホ
ン化は、「セミバッチ法」で行われる。この方法では、
コポリマーは、制御された温度で硫酸中に計量投入され
る。ここで、部分にわけて計量投入を行うことが特に有
利である。
【0043】スルホン化後、スルホン化生成物と残存の
酸からなる反応生成物は、室温迄冷却され、最初に濃度
を下げた硫酸で、次に水で希釈される。
【0044】所望ならば、本発明により得られるH形の
カチオン交換体は、70から145℃、好ましくは10
5から130℃の温度で脱イオン水により処理される。
【0045】多くの用途に対しては、カチオン交換体を
酸形からナトリウム形に転換することが有利である。こ
のイオンの転換(charge reversal)
は、10から60重量%、好ましくは40から50重量
%の濃度の水酸化ナトリウムを用いて行われる。イオン
の転換時の温度は、同様に重要である。60から120
℃、好ましくは75から100℃のイオンの転換の温度
において、イオン交換体床に欠陥は生じることはなく、
純度は特に有利であることが判明した。このプロセスス
テップにおいて、生成する反応熱は、反応混合物を加温
するのに使用される。
【0046】イオンの転換後、カチオン交換体は、更に
精製するために、脱イオン水または塩の水溶液、例えば
塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム溶液によって処理
される。ここで、70から150℃、好ましくは120
から135℃の温度での処理が特に有効であり、結果と
して、カチオン交換体の容量の何らの低下も起こらな
い。
【0047】本発明により得られるカチオン交換体は、
特段の高安定性と高純度により特徴付けられる。長期の
使用と多数回の再生の後でも、交換体は、イオン交換体
ビーズに何ら欠陥をもたらさず、交換体の浸出の顕著な
減少を示さない。
【0048】
【実施例】分析法 シードポリマーの可溶部含量 可溶部含量を定量するために、5から7gのシードポリ
マーを抽出筒の中に秤り込み、ソックスレー装置(浴
温:140℃)中で800mlのトルエンで一夜抽出し
た。抽出物をブラック−リボン(black−ribb
on)フィルターを付けた吸引濾過器で濾過した。ロー
タリーエバポレーターで約1ml迄蒸発させた。次に、
300mlのメタノールを添加し、混合物を減圧下ロー
タリーエバポレーターで恒量迄乾燥した。各試料をダブ
ルチェックにかけた。
【0049】シードポリマーの膨潤 シードポリマーの膨潤をトルエン中で調べた。このため
に、10mlの篩かけされた乾燥ビーズポリマーを10
0mlのメスシリンダーに秤り込んだ。メスシリンダー
を膨潤剤で100ml迄満たし、10から20時間放置
した。この間、これを頻繁に振盪し、生成する空気泡を
すべて逃がすようにした。膨潤床の容積を読み取り、V
1とした。膨潤床の容積V1と非膨潤ビーズ床の容積V0
の比率を膨潤インデックス(SI)と定義する。
【0050】アルカリ滴下によるカチオン交換体の安定
性の測定 2mlのH形のスルホン化コポリマーを50mlの45
%濃度の水酸化ナトリウム溶液に室温で攪拌しながら入
れた。懸濁液を一夜放置した。次に、代表的な試料を採
取した。この内、100個のビーズを顕微鏡下で調べ
た。完全な非損傷ビーズの数を計数した。
【0051】カチオン交換体の耐圧性測定用のシャチロ
ン(Chatillon)試験 DFIS 10の圧力計付きのシャチロン装置を使用し
たカチオン交換体のビーズをナトリウム形で使用した。
シャチロン盤上で単一のカチオン交換体のビーズを数滴
の水で湿し、所定の位置に移動し、ラムで圧縮した。ビ
ーズを圧縮するのに必要な圧力を圧力計を用いて測定し
た。結果をビーズ当りのgで示した。測定を27個のビ
ーズについて行った。最低値及び最高値を棄てた。示し
た数値は、残りの25個の測定の平均であった。この試
験の詳細な説明は、DE−A 2827 475で述べ
られている。
【0052】カチオン交換体からの溶離液の電導度の測
100mlの濾過して濡れているH形のカチオン交換体
を、70℃に保たれた60cmの長さと2cmの直径の
ガラスカラムに入れた。480mlの脱イオン水を頂部
から底部に20ml/時の流速(1時間当り床容積の
0.2倍)でカラムに通した。200ml(床容積の2
倍に相当)及び400ml(床容積の4倍に相当)を通
した後に、カラムの底部から出た液の電導度を測定し、
cm当りμSで測定値を得た。
【0053】カチオン交換体からの溶離液中のポリスチ
レンスルホン酸量の定量 スルホン化された生成物の電導度の測定時に得られる溶
離液をすべて集めた。較正物質として既知の分子量のポ
リスチレンスルホン酸を用いて、ゲルパーミエーション
クロマトグラフィーによりポリスチレンスルホン酸の全
量を定量した。
【0054】実施例1(比較例1) DE 19 634 393の実施例1によりコポリマ
ーを作製した。DE 19 634 393の実施例7
によりスルホン化することにより、これをカチオン交換
体に変換した。シャチロン試験を行うために、実施例2
dに述べられた手順で生成物の一部をNa形に変換し
た。
【0055】
【表1】 実施例2(本発明による) a)シードポリマーの製造 1960mlの脱イオン水を4lのガラス反応器に入れ
た。1.0重量%のジビニルベンゼン、0.6重量%の
エチルスチレン(63重量%のジビニルベンゼンを含有
するジビニルベンゼンとエチルスチレンの市販の混合
物)、0.5重量%のt−ブチルパーオキシ−2−エチ
ルヘキサノエート及び97.9重量%のスチレンの63
0gのマイクロカプセル化された混合物をこれに添加し
た。ここで、マイクロカプセルは、ゼラチンとアクリル
アミドアクリル酸コポリマーのホルムアルデヒドで硬化
した複合コアセルベートからなるものであった。平均粒
子サイズは、231μmであった。2.4gのゼラチ
ン、4gのリン酸水素ナトリウム12水塩及び80ml
の脱イオン水中の100mgのレゾルシノールの溶液を
この混合物に添加し、これをゆっくりと攪拌し、攪拌し
ながら75℃で10時間重合させた。次に、温度を95
℃迄上げて、重合を完結させた。バッチを32μmのふ
るいを通して洗浄、乾燥し、平滑な表面を有する605
gの球状のマイクロカプセル化ポリマーを得た。ポリマ
ーは光学的に透明な外観であった。平均粒子サイズは、
220μmであった。シードポリマーは、4.7の体積
膨潤インデックスと0.45%の可溶部を有していた。
【0056】b)コポリマーの製造 300.2gの(2a)のシードポリマーと1100g
の脱イオン水、3.6gのホウ酸及び1gの水酸化ナト
リウムの水溶液を4lのガラス反応器に入れ、攪拌速度
を220rpm(1分間当りの回転数)に設定した。3
0分間にわたって、732.7gのスチレン、48.3
0gのアクリロニトリル、96.1gのジビニルベンゼ
ン、23.1gのエチルスチレン(80.6重量%のジ
ビニルベンゼンを含有するジビニルベンゼンとエチルス
チレンの市販の混合物として一緒に使用)及び7.2g
のジベンゾイルパーオキサイド(75重量%、水で湿し
た)の混合物をフィードとして添加した。混合物を室温
で60分間攪拌し、その間ガス空間を窒素で掃気した。
次に、120gの脱イオン水中の2.4gのメチルヒド
ロキシエチルセルロースの溶液を添加した。次に、バッ
チを63℃迄加熱し、この温度で10時間放置し、引き
続き95℃で2時間加熱した。冷却後、バッチを40μ
mの篩を通して脱イオン水で充分に洗浄し、乾燥キャビ
ネット中80℃で18時間乾燥して、412μmの粒子
サイズを有する1164gの球状コポリマーを得た。
【0057】c)カチオン交換体の製造 1800mlの97.32重量%濃度の硫酸を2lの4
つ口フラスコに入れ100℃迄加熱した。400gのコ
ポリマー(2b)を4時間かけて攪拌しながら、10の
部分に分けて入れた。次に、混合物を100℃で更に4
時間攪拌した。冷却後、懸濁液をガラスカラムに移し
た。カラム中で90重量%濃度から始まって、純水に終
わるように濃度を減少させて、硫酸を置換し、1790
mlのプロトン化形(H形)カチオン交換体を得た。
【0058】
【表2】 d)カチオン交換体のイオンの転換 カチオン交換体のイオンをH形からナトリウム形に転換
するために、1700mlの(2c)のスルホン化生成
物と850mlの脱イオン水を室温で4lのガラス反応
器に入れた。懸濁液を80℃迄加熱し、480gの45
重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を30分間にわた
って添加した。次に、混合物を80℃で更に15分間攪
拌した。冷却後、生成物を脱イオン水で洗浄して、15
77mlのナトリウム形(Na形)カチオン交換体を得
た。
【0059】
【表3】 e)Na形のカチオン交換体の脱イオン水による処理 1lの(2d)のカチオン交換体を660mlの脱イオ
ン水により130℃で6時間処理した。処理中、水を2
回置換した。
【0060】水で処理した後、カチオン交換体をH形に
戻し、再度、安定性、溶離液の電導度及びポリスチレン
スルホン酸量を定量した。
【0061】
【表4】 実施例3(本発明による) b)コポリマーの製造 300gの(2a)のシードポリマーと1100gの脱
イオン水、3.6gのホウ酸及び1gの水酸化ナトリウ
ムの水溶液を4lのガラス反応器に入れ、攪拌速度を2
20rpmに設定した。30分間にわたって、715g
のスチレン、60gのアクリロニトリル、100.8g
のジビニルベンゼン、24.2gのエチルスチレン(8
0.6重量%のジビニルベンゼンを含有するジビニルベ
ンゼンとエチルスチレンの市販の混合物として一緒に使
用)及び7.2gのジベンゾイルパーオキサイド(75
重量%、水で湿した)の混合物をフィードとして添加し
た。混合物を室温で60分間攪拌し、その間ガス空間を
窒素で掃気した。次に、120gの脱イオン水中の2.
4gのメチルヒドロキシエチルセルロースの溶液を添加
した。次に、バッチを63℃迄加熱し、この温度で10
時間放置し、引き続き95℃で2時間加熱した。冷却
後、バッチを40μmの篩を通して脱イオン水で充分に
洗浄し、乾燥キャビネット中80℃で18時間乾燥し
て、410μmの粒子サイズを有する1152gの球状
コポリマーを得た。
【0062】c)カチオン交換体の製造 1800mlの97.5重量%濃度の硫酸を2lの4つ
口フラスコに入れ100℃迄加熱した。全部で400g
の乾燥コポリマー(3b)を、4時間かけて攪拌しなが
ら、10の部分に分けて入れた。次に、混合物を100
℃で更に4時間攪拌した。冷却後、懸濁液をガラスカラ
ムに移した。90重量%濃度から始まって、純水に終わ
るように濃度を減少させて硫酸をカラムの頂部から底部
に流して、1715mlのH形のカチオン交換体を得
た。
【0063】
【表5】 d)カチオン交換体のイオンの転換 カチオン交換体のイオンをH形からナトリウム形に転換
するために、1700mlの(3c)のスルホン化生成
物と850mlの純水を室温で4lのガラス反応器に入
れた。懸濁液を80℃迄加熱し、480gの45重量%
濃度の水酸化ナトリウム水溶液を30分間にわたって添
加した。次に、混合物を80℃で更に15分間攪拌し
た。冷却後、生成物を脱イオン水で洗浄して、1565
mlのNa形のカチオン交換体を得た。
【0064】
【表6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ラインホルト・クリツパー ドイツ50933ケルン・ガイレンキルヒヤー シユトラーセ29 (72)発明者 オラフ・ハレ ドイツ51061ケルン・ボルフスカウル4 (72)発明者 ベルナー・シユトリユフアー ドイツ51375レーフエルクーゼン・ハンス −ザクス−シユトラーセ4 (72)発明者 ルドルフ・バグナー ドイツ51061ケルン・ハーネンベーク4 (72)発明者 リユデイガー・ザイデル ドイツ51375レーフエルクーゼン・ローア ベルクシユトラーセ16アー

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)連続した水相中にシードポリマーの
    懸濁液を形成し、 b)シードポリマーをビニルモノマー、架橋剤及びフリ
    ーラジカル開始剤からなるモノマー混合物中で膨潤さ
    せ、 c)シードポリマ中のモノマー混合物を重合させ、 d)得られるコポリマーをスルホン化により官能基を導
    入することによる高安定性及び高純度の単分散ゼラチン
    状カチオン交換体の製造方法であって、シードポリマー
    が2.5から7.5の膨潤インデックスと1重量%以下
    の非揮発性の可溶成分含量を有する架橋ポリマーである
    ことを特徴とするカチオン交換体の製造方法。
  2. 【請求項2】 シードポリマーが i)96.5から99.0重量%のモノマー、 ii)0.8から2.5重量%の架橋剤、及び iii)重合開始剤として0.2から1.0重量%の脂肪
    属パーオキシエステルから製造される架橋ポリマーであ
    ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 脂肪属パーオキシエステルが式I、II
    またはIII 【化1】 (式中、R1は、2から20個の炭素原子を有するアル
    キル基または3から20個の炭素原子を有するシクロア
    ルキル基であり、R2は、4から12個の炭素原子を有
    する分岐アルキル基であり、Lは、2から20個の炭素
    原子を有するアルキレン基または3から20個の炭素原
    子を有するシクロアルキレン基である)に一致すること
    を特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 シードポリマーがマイクロカプセル化さ
    れていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 ビニルモノマーが92−99重量%のス
    チレン及び1−8重量%のアクリロニトリルの混合物で
    あることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 モノマー混合物中の架橋剤の含量が1か
    ら25重量%であることを特徴とする請求項1に記載の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 モノマー混合物中の架橋剤の含量が7か
    ら15重量%であることを特徴とする請求項6に記載の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 フリーラジカル開始剤がジベンゾイルパ
    ーオキサイドであることを特徴とする請求項1に記載の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 スルホン化が膨潤剤なしで行われること
    を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 60から120℃の温度で10から6
    0重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液と反応させること
    により、官能基を導入されたコポリマーがナトリウム形
    に転換されることを特徴とする請求項1に記載の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 ナトリウム形の官能基を導入されたコ
    ポリマーが70から150℃で脱イオン水または塩の水
    溶液により処理されることを特徴とする請求項10に記
    載の製造方法。
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