JP2000131134A - 共振子アレイ、音響センサ及び振動センサ - Google Patents

共振子アレイ、音響センサ及び振動センサ

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JP2000131134A
JP2000131134A JP10309162A JP30916298A JP2000131134A JP 2000131134 A JP2000131134 A JP 2000131134A JP 10309162 A JP10309162 A JP 10309162A JP 30916298 A JP30916298 A JP 30916298A JP 2000131134 A JP2000131134 A JP 2000131134A
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重尚 苫米地
Muneo Harada
宗生 原田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 センサ全体の固有振動に起因する共振子の振
動の如き好ましくない除去すべき振動を低減することが
でき、高精度な音響信号の検出及び周波数スペクトル分
析を達成することができる振動センサ及び音響センサ、
並びに前記振動センサ又は音響センサに用いられる共振
子アレイを提供する。 【解決手段】 夫々が異なる周波数に共振する従来の共
振子25に加えて、センサ全体の固有振動に応じた周波
数に共振して、該固有振動を吸収するダミー共振子28
を更に設ける構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、音声認識
処理,音響信号処理等において音信号の特徴を抽出すべ
く、各周波数帯域における音信号の強度を検出するため
の振動センサ及び音響センサ、並びに前記振動センサ又
は音響センサに用いられる共振子アレイに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、音声認識を実行するシステムに
おいては、音声信号を受信したマイクロフォンの振動
を、アンプにて電気信号に変換・増幅した後、A/D変
換器でアナログ信号をディジタル化して音声ディジタル
信号を得、この音声ディジタル信号にコンピュータ上で
ソフトウェアにより高速フーリエ変換を施し、音声の特
徴を抽出する。このような音声認識のシステムについて
は、IEEE Signal Processing Magazine, Vol.13, No.5,
pp.45-57(1996) に開示されている。
【0003】音声信号の特徴を効率良く抽出するために
は、音声信号が定常であると見做せる時間内の音響スペ
クトルを計算する必要がある。音声信号の場合には、通
常10〜20msecの時間内で定常と見做せると考えられ
ている。従って、10〜20msecを周期としてその時間
内に含まれる音声ディジタル信号に対して、コンピュー
タ上のソフトウェアにより、高速フーリエ変換等の信号
処理を実行する。
【0004】以上のように従来の音声認識方式では、瞬
時の全帯域を含んだ音声信号をマイクロフォンによって
電気信号に変換し、その電気信号のスペクトルを分析す
るために、A/D変換を施して各周波数をディジタル化
し、その音声ディジタル信号データを特定の音声波形の
データと比較して、音声の特徴を抽出している。
【0005】このような音声認識方式は、ディジタル音
響信号に高速フーリエ変換処理を施して、その音響信号
のスペクトル分析するため、計算量が莫大となって計算
負荷が大きいという問題がある。
【0006】また、母音のように、時間の変化と共に音
響スペクトルが変化しないような音声については問題が
生じないが、子音と母音との組合せの音、例えば、
「か,き,く,け,こ,さ,た」等のように初めに子音
が出てきて時間の経過と共に母音の強度が大きくなるよ
うな音、又は英語のように複雑な子音と母音との組合せ
の音では、以下のような問題が生じる。従来では、瞬時
に音声を記録し、一定時間毎に区切って全帯域の音響ス
ペクトルを積算して、音声を分析しているので、どの時
点で子音から母音に変わったのかを判定することは困難
であり、そのために音声認識の判別率の低下が引き起こ
されていた。この問題を解消するために、より多くの音
声パターンを予めコンピュータに記憶させておき、これ
らの音声パターンの何れかにあてはめるようにしている
が、このことが計算負荷をますます増大させる原因とな
っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらの問題点を解決
すべく本願発明者らは、夫々が特定の周波数に共振する
ように長さが異なる複数の共振子を有し、媒質中を伝搬
した音波をこれら共振子へ伝え、各共振子の先端での振
動強度を振動強度検出手段で検出する音響センサを特願
平9−328961号及び特願平9−135564号に
開示しており、この音響センサによれば、音響信号の検
出及び周波数スペクトル分析を1つのハードウェア上に
て高速かつ正確に行うことができ、高周波側から低周波
側にかけて精度良い周波数スペクトル分析を行えるよう
になっている。
【0008】ところが、上述したような音響センサにお
いては、各共振子がこれらの目的とする共振周波数以外
の周波数に共振することがあるのが最近分かっている。
このような不要な共振が殆ど全ての共振子で生じている
ことから、この不要な共振はこれら共振子を含む音響セ
ンサ全体の固有振動(以後、全体振動と称す)に起因す
るものであると考えられる。
【0009】このような全体振動に起因する各共振子の
振動は、各共振子が個別の共振周波数に応答するという
前記音響センサの特徴事項を損なうものであって、正確
な測定を妨げるものである。
【0010】本発明は斯かる知見に鑑みてなされたもの
であり、本願発明者らは、従来の共振子に加えて前記全
体振動に応じた周波数に共振して、該全体振動を吸収す
るダミー共振子を更に設けることにより、この全体振動
を低減することができ、高精度に音響信号の検出及び周
波数スペクトル分析を実施できる振動センサ及び音響セ
ンサ、並びに前記振動センサ又は音響センサに用いられ
る共振子アレイを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る共振子ア
レイは、各々が異なる周波数に共振する複数の共振子を
有する共振子アレイにおいて、前記複数の共振子の少な
くとも一つが、前記共振子アレイを包含する構造物の共
振周波数に共振すべくなしてあることを特徴とする。
【0012】第2発明に係る共振子アレイは、第1発明
の共振子アレイにおいて、前記構造物の共振周波数に共
振する共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に共
振するような長さをもつことを特徴とする。
【0013】第3発明に係る共振子アレイは、各々が異
なる周波数に共振する複数の共振子を有する共振子アレ
イにおいて、前記複数の共振子の少なくとも一つが、除
去すべき共振周波数に共振すべくなしてあることを特徴
とする。
【0014】第4発明に係る共振子アレイは、第3発明
の共振子アレイにおいて、前記除去すべき共振周波数に
共振する共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に
共振するような長さをもつことを特徴とする。
【0015】第5発明に係る音響センサは、媒質中を伝
搬する音波を受ける受波部と、該受波部により受けられ
た前記音波の特定の周波数に各々共振する複数の共振子
を有する共振部と、各共振子の前記特定の周波数毎の振
動強度を検出する振動強度検出部とを備える音響センサ
において、前記複数の共振子の少なくとも一つが、前記
共振部を包含する構造物の共振周波数に共振すべくなし
てあることを特徴とする。
【0016】第6発明に係る音響センサは、第5発明の
音響センサにおいて、前記構造物の共振周波数に共振す
る共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に共振す
るような長さをもつことを特徴とする。
【0017】第7発明に係る音響センサは、媒質中を伝
搬する音波を受ける受波部と、該受波部により受けられ
た前記音波の特定の周波数に各々共振する複数の共振子
を有する共振部と、各共振子の前記特定の周波数毎の振
動強度を検出する振動強度検出部とを備える音響センサ
において、前記複数の共振子の少なくとも一つが、除去
すべき共振周波数に共振すべくなしてあることを特徴と
する。
【0018】第8発明に係る音響センサは、第7発明の
音響センサにおいて、前記除去すべき共振周波数に共振
する共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に共振
するような長さをもつことを特徴とする。
【0019】第9発明に係る振動センサは、媒質中を伝
搬する振動を受ける受振部と、該受振部により受けられ
た前記振動の特定の周波数に各々共振する複数の共振子
を有する共振部と、各共振子の前記特定の周波数毎の振
動強度を検出する振動強度検出部とを備える振動センサ
において、前記複数の共振子の少なくとも一つが、前記
共振部を包含する構造物の共振周波数に共振すべくなし
てあることを特徴とする。
【0020】第10発明に係る振動センサは、第9発明の
振動センサにおいて、前記構造物の共振周波数に共振す
る共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に共振す
るような長さをもつことを特徴とする。
【0021】第11発明に係る振動センサは、媒質中を伝
搬する振動を受ける受振部と、該受振部により受けられ
た前記振動の特定の周波数に各々共振する複数の共振子
を有する共振部と、各共振子の前記特定の周波数毎の振
動強度を検出する振動強度検出部とを備える振動センサ
において、前記複数の共振子の少なくとも一つが、除去
すべき共振周波数に共振すべくなしてあることを特徴と
する。
【0022】第12発明に係る振動センサは、第11発明の
振動センサにおいて、前記除去すべき共振周波数に共振
する共振子が、複数であり、各々が異なる周波数に共振
するような長さをもつことを特徴とする。
【0023】第1発明に係る共振子アレイによれば、各
々が特定の周波数に共振する複数の共振子を有し、これ
らの共振子のうちの少なくとも一つが、これら共振子を
備えた共振子アレイを包含する構造物の共振周波数に共
振するようにしてある構成としたので、例えばこのよう
な共振子アレイを、振動センサ又は前述した如き音響セ
ンサに組み込んだ場合、振動センサ又は音響センサの全
体振動に起因する各共振子の振動を、複数の共振子の何
れかに吸収させることができ、従って、高精度な音響信
号の検出及び周波数スペクトル分析を達成することがで
きる。
【0024】上述の如き全体振動は、複数の周波数帯域
において生じる。そこで、第2発明に係る共振子アレイ
によれば、前記構造物の共振周波数に共振する共振子を
複数備え、これらの共振子の長さを、前記共振周波数に
応じた異なる周波数に共振するように各々設定する構成
としたので、このような複数の周波数帯域において生じ
る前記全体振動を吸収させることが可能である。
【0025】なお、以上の如く前記全体振動に吸収させ
る共振子を備える場合、実際には、検出対象となる全帯
域に応じた従来の共振子に加えて、全体振動を吸収させ
る共振子を新たに追加するように設計される。新たに共
振子を追加した後で全体振動数は低周波数側へシフトす
るため、各共振子の周波数スペクトル分析を実施し、新
しい全体振動数を得る。このように、共振子の追加及び
全体振動数の演算を繰り返し実施する必要があるため、
共振子アレイ及び該共振子アレイを備えた振動センサ又
は音響センサの正確な全体振動数を得ることは非常に困
難である。
【0026】そこで、本発明に係る共振子アレイによれ
ば、複数備えられた前記全体振動を吸収する共振子を、
夫々が上述の如き全体振動数の変化を見込んだ帯域幅を
有するように前記共振子の長さを設定することにより、
振子の追加及び全体振動数の演算を繰り返し実施する必
要をなくすことも可能であって、前記全体振動を吸収す
る複数の共振子により所定の連続した帯域幅をもたせる
ことができるようになっている。
【0027】第3発明に係る共振子アレイによれば、各
々が特定の周波数に共振する複数の共振子を有し、これ
らの共振子の少なくとも一つが、前記全体振動のように
振動検出上好ましくない除去すべき共振周波数に共振す
る構成としたので、前記全体振動以外の例えば機械装置
の異常振動等の特定の周波数のノイズを除去することが
できる。
【0028】第4発明に係る共振子アレイによれば、前
記除去すべき共振周波数に共振する共振子を複数備え、
これらの共振子の長さを、前記共振周波数に応じた異な
る周波数に共振するように各々設定する構成としたの
で、前記第2発明の共振子アレイの如く共振子アレイを
包含する構造物の共振周波数に限定することなく、前述
の如く例えば機械装置の異常振動等の特定の周波数のノ
イズに対応した帯域幅をもたせることができる。
【0029】第5発明に係る音響センサによれば、媒質
中を伝搬した音波を受波部を介して前記第1発明の共振
子アレイの如き共振部に与え、該共振部の各共振子での
振動を振動強度検出部で検出する構成としたので、その
音波の特定の周波数成分がその周波数成分と共振周波数
が略等しい共振子で吸収されて各共振子が共振し、各共
振子での振動を検出することで、媒質中を伝搬した音波
の各周波数成分の大きさを検出できるばかりでなく、こ
れらの共振子の少なくとも一つを、前記共振部を包含す
る構造物の共振周波数に共振するような構成としたの
で、前記第1発明の共振子アレイの如く音響センサ全体
の全体振動を吸収させることができ、従って、高精度な
音響信号の検出及び周波数スペクトル分析を達成するこ
とができる。
【0030】第6〜第8発明に係る音響センサによれ
ば、前述した第2〜第4発明の共振子アレイと同様の効
果を得ることができる。
【0031】第9発明に係る振動センサによれば、媒質
中を伝搬した振動を受振部を介して前記第1発明の共振
子アレイの如き共振部に与え、該共振部の各共振子での
振動を振動強度検出部で検出する構成としたので、その
音波を含む振動における特定の周波数成分がその周波数
成分と共振周波数が略等しい共振子で吸収されて各共振
子が共振し、各共振子での振動を検出することで、媒質
中を伝搬した振動の各周波数成分の大きさを検出できる
ばかりでなく、これらの共振子の少なくとも一つを、前
記共振部を包含する構造物の共振周波数に共振するよう
な構成としたので、前記第1発明の共振子アレイの如く
振動センサ全体の全体振動を吸収させることができ、従
って、高精度な音響信号の検出及び周波数スペクトル分
析を達成することができるという前記音響センサとして
の機能を備えているほか、音響以外の振動の検出及びそ
の周波数スペクトル分析を達成することが可能である。
【0032】第10〜第12発明に係る振動センサによれ
ば、前述した第2〜第4発明の共振子アレイと同様の効
果を得ることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態を
示す図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明
に係る音響センサの構成を示す斜視図、図2は、後述す
るセンサ本体2の平面図である。本発明に係る音響セン
サは、半導体シリコン基板1に形成されるセンサ本体2
と電極3と周辺回路である検出回路4とから構成されて
いる。
【0034】センサ本体2は、全ての部分が半導体シリ
コンで形成されており、長さが異なる複数(本例では1
2個)の棒状の部分を有する共振部21と、この共振部
21を共振の固定端側で保持する板状の保持部22と、
保持部22の一方の端部に立設された短寸棒状の伝搬部
26と、伝搬部26に連なり空気中を伝搬した音波を受
ける板状の第1ダイヤフラム23と、保持部22の他方
の端部に立設された短寸棒状の伝搬部27と、伝搬部2
7に連なり保持部22を伝搬した不要な成分を吸収する
板状の第2ダイヤフラム24とから構成されている。
【0035】保持部22は、その幅が、第1ダイヤフラ
ム23近傍で最も太く、そこから第2ダイヤフラム24
側に向かうに従って除々に細くなり、第1ダイヤフラム
23近傍で最も細くなっている。
【0036】共振部21は片持ち梁となっており、夫々
の棒状の部分は特定の周波数に共振するように長さが調
整された5対の共振子25,25,…と、1対のダミー
共振子28,28とからなっている。これら各共振子2
5及びダミー共振子28は、下記(1)式で表される共
振周波数fにて選択的に応答振動するようになってい
る。
【0037】 f=(CHE1/2 )/(L2 ρ1/2 ) …(1) 但し、 C:実験的に決定される定数 H:各共振子25又は各ダミー共振子28の厚さ L:各共振子25又は各ダミー共振子28の長さ E:材料物質(半導体シリコン)のヤング率 ρ:材料物質(半導体シリコン)の密度
【0038】上記(1)式から分かるように、各共振子
25又は各ダミー共振子28の厚さH又は長さLを変え
ることにより、その共振周波数fを所望の値に設定する
ことができ、各共振子25又は各ダミー共振子28が固
有の共振周波数をもつようにしている。なお、保持部2
2の長手方向の同じ位置に連なる一対の共振子25,2
5及び一対のダミー共振子28,28は、同一の共振周
波数をもっている。全ての共振子25,25,…及びダ
ミー共振子28,28の厚さHは一定としてある。
【0039】また、その長さLを左側(第1ダイヤフラ
ム23側)から右側(第2ダイヤフラム24側)に向か
うにつれて順次長くなるように共振子25,25,…を
配置し、最も右側(第2ダイヤフラム24側)にダミー
共振子28,28を配置してある。これによって、左側
(第1ダイヤフラム23側)から右側(第2ダイヤフラ
ム24側)に向かうにつれて各共振子25が固有に振動
する共振周波数を高周波数から低周波数に設定し、最も
右側のダミー共振子28,28を最も低周波数に設定し
てある。
【0040】具体的には、共振子25,25,…は、左
側(第1ダイヤフラム23側)から右側(第2ダイヤフ
ラム24側)に向かって例えば可聴帯域の15Hz〜2
0kHz程度の範囲内で高周波数から低周波数まで対応
できるようになっている。また、本発明の特徴部分であ
るダミー共振子28,28は、通常、可聴帯域の15H
z〜20kHzの範囲内の最も低周波数側近傍の周波数
にて生じる本発明に係る音響センサ全体の固有振動であ
る前記全体振動を吸収するために設けられたダミーとな
っている。
【0041】以上のような構成をなすセンサ本体2は、
半導体集積回路製造技術又はマイクロマシン加工技術を
用いて半導体シリコン基板1上に形成される。そして、
このような構成において、音波が第1ダイヤフラム23
に伝わるとその板状の第1ダイヤフラム23が振動し、
音波を示すその振動は伝搬部26を経て保持部22に伝
搬し、これに保持された共振部21の棒状の各共振子2
5及び各ダミー共振子28を夫々の特定の周波数にて順
次共振させながら図1の左方から右方へ伝わっていくよ
うになっている。
【0042】センサ本体2には適当なバイアス電圧V
biasが印加されており、共振部21の各共振子25の先
端部と、該先端部に対向する位置の半導体シリコン基板
1に形成された電極3とにてキャパシタが構成されてい
る。各共振子25の先端部は、これらの振動に伴って位
置が上下する可動電極であって、一方、半導体シリコン
基板1に形成された電極3はその位置が移動しない固定
電極となっている。そして、各共振子25が夫々の特定
の周波数にて振動すると、両電極間の距離が変動するの
で、キャパシタの容量が変化するようになっている。
【0043】各電極3には、このような容量変化を電圧
信号に変換し、変換した電圧信号を所定時間内で積算し
て出力する検出回路4が接続されている。なお、各ダミ
ー共振子28には、電極3及び検出回路4は夫々設けら
れておらず、単に各ダミー共振子28に予め設定された
特定の周波数(具体的には、前記全体振動の周波数)に
て共振するように、その長さLが設定されている。
【0044】図3は、検出回路4の構成を示すブロック
図であり、検出回路4は、前記キャパシタの容量Cs
基準容量Cf とのインピーダンス比に応じた増幅比にて
増幅する演算増幅器41,42と、基準電圧Vref より
高い演算増幅器42の出力信号を所定時間だけ積算する
積算回路43と、積算回路43から出力信号を取り出し
て一時的に保持して出力するサンプルホールド回路44
とを備える。このような構成の検出回路4は、例えばシ
リコンCMOSプロセスによって形成されている。
【0045】演算増幅器41,積算回路43,及びサン
プルホールド回路44には、夫々クロックパルスφ0
φ1 ,及びφ2 が供給され、演算増幅器41,積算回路
43,及びサンプルホールド回路44は夫々これらのク
ロックパルスに同期して動作する。なお、これらのクロ
ックパルスは、外部から供給するようにしても良いし、
同一の半導体シリコン基板上にカウンタ回路を形成して
そこから供給するようにしても良い。
【0046】次に、動作について説明する。空気中を伝
搬した音波がセンサ本体2の第1ダイヤフラム23に伝
わると、板状の第1ダイヤフラム23が振動してその振
動がセンサ本体2内を伝搬する。この際、図1の左方か
ら右方へ音波が、順次長さが長くなっていく(順次共振
周波数が低くなっていく)片持ち梁の各共振子25及び
各ダミー共振子28を振動させながら伝わっていく。各
共振子25及び各ダミー共振子28は固有の共振周波数
を有しており、それら固有の周波数の音波が伝搬すると
共振し、その先端部が上下に振動する。この振動によっ
て、各共振子25の先端部と電極3との間で構成される
キャパシタの容量が変化する。
【0047】なお、何れの共振子25,25,…に吸収
されなかった周波数成分の一部は、ダミー共振子28,
28によって吸収され、更にこれらのダミー共振子2
8,28にも吸収されなかった周波数成分は、保持部2
2の遠位端まで伝搬して第2ダイヤフラム24にて吸収
されるようになっている。これによって、本発明に係る
音響センサの外側からの外乱振動等の影響によって振動
する音響センサの全体振動の周波数成分は、各ダミー共
振子28によって略吸収され、不要な周波数成分に伴う
反射波は発生しない。この結果、反射波が容量変化に影
響を及ぼす虞はなく、伝搬した音波のスペクトルに合致
した正確な容量変化を検出できる。
【0048】得られた容量変化が検出回路4内に送られ
る。図4は、検出回路4内におけるタイミングチャート
であり、演算増幅器41,積算回路43,及びサンプル
ホールド回路44に夫々供給するクロックパルスφ0
φ1 及びφ2 を示す。なお、本例でのクロックパルス制
御は、ローレベルでオン状態とする。
【0049】まず、検出回路4内では、演算増幅器41
で得られたキャパシタの容量Cs と基準容量Cf とのイ
ンピーダンス比に応じて増幅比が決まる。例えば、1/
ωC f (ω=2πf,f:周波数)に対する1/ωCs
の値が1/2である場合には、得られる電圧信号が2倍
になる。但し、演算増幅器41は、その+入力端子が接
地されている反転増幅器であるので、次段の演算増幅器
41で電圧位相を1倍で反転させる。得られた増幅電圧
信号が積算回路43へ入力される。積算回路43では、
クロックパルスφ1 に応じた所定の時間内において基準
電圧Vref より高い増幅電圧信号が積算され、その積算
信号がサンプルホールド回路44へ入力される。サンプ
ルホールド回路44では、クロックパルスφ2 に応じて
積算信号のサンプリングとホールドとを繰り返して外部
へ積算信号を出力する。
【0050】以上のような処理は、長さが異なる共振子
25,25,…に夫々対応する検出回路4毎に並列的に
行われる。なお、図4に示すクロックパルスφ0
φ1 ,及びφ2 の周期は一例であり、これらの各クロッ
クパルスの周期は任意に設定しても良いことは勿論であ
る。
【0051】以上のようにして、特定の周波数に共振す
る共振子25,25,…に対応する検出回路4の出力信
号を調べることにより、任意の時間を周期とした、その
特定の周波数の音の強さの経時変化を知ることができ
る。また、複数の共振子25,25,…に対応する検出
回路4の出力信号を調べることにより、任意の時間を周
期とした、複数の周波数帯域毎の音の強さの経時変化を
知ることができる。この場合、一つの特定の周波数毎に
その積算結果を出力しても良いし、又は複数の特定の周
波数毎にその積算結果を出力しても良い。
【0052】また、一定時間毎に区切ったとしてもどこ
にも音響データの欠落がない。さらに、一定時間毎に各
周波数毎の音響データが得られるので、時間の経過に合
わせて各周波数の強度の推移を確認でき、例えば母音と
子音との時間的変化の判別をより正確に行えて、音声認
識の判別率を高めることができる。また、一定時間毎に
各周波数毎の音響データが得られるので、時間の経過に
合わせて各周波数の強度の推移を確認でき、音声の時間
的変化の判別をより正確に行えて、音声認識の判別率を
高めることに寄与できる。
【0053】図5は、特定の周波数に対応する各検出回
路4の関係を示す図である。例えば、n種類の共振周波
数f1 ,f2 ,f3 ,f4 ,…,fn に夫々選択的に応
答振動するように各2本ずつ合計2n本の共振子を設け
る場合には、各共振周波数毎にその共振強度に応じた2
n個の出力信号V1a,V1b,V2a,V2b,V3a,V3b
4a,V4b,…,Vna,Vnbを各検出回路4から得るこ
とができる。本例では、1つの共振周波数に対して2つ
ずつの検出系を備えているので、1つの検出系しか設け
ない場合に比べてより検出精度は高くなる。なお、保持
部22の片側にのみ共振子25,25,…及びダミー共
振子28,28を設けることにより、構成を更に簡単に
した低コストの音響センサを提供することもできる。
【0054】例えば、音声認識のための音声入力用マイ
クロフォンとして本発明に係る音響センサを使用する場
合には、可聴帯域における各共振周波数毎の共振強度に
応じてその周波数の強度を求め、求めた分析パターンに
基づいて音声を認識する。
【0055】なお、音波の任意に選択した周波数のみの
強度を求めたい場合には、必要な共振周波数に対応する
検出回路の出力信号のみを得るようにすれば良い。例え
ば、図5において周波数f1 ,f3 の強度を求める場合
には、対応しない他の検出回路4−2a,4−2b,4−4
a,4−4b,…,4−na,4−nbの出力を遮断するか、
予めこれらの検出回路4−2a,4−2b,4−4a,4−4
b,…,4−na,4−nbは設けないようにするかして、
必要な出力信号V1a,V1b,V3a,V3bが得られて、不
要な出力信号V2a,V2b,V4a,V4b,…,Vna,Vnb
が得られないようにすれば良い。このような音響センサ
の使用例としては、特定の一又は複数の周波数の異常音
を検出するための異常音入力用マイクロフォンが好適で
ある。
【0056】図6は、従来の音響センサの各周波数帯に
おける共振振幅を示すグラフであり、図7は、本発明に
係る音響センサの各周波数帯における共振振幅を示すグ
ラフである。各図のグラフにおいて、2〜4kHzの周
波数帯を検出する音響センサであり、共振子25,2
5,…の最大長:2.5mm,各共振子25の相互間
隔:50μm,各共振子25の幅:50μm,保持部2
2の最大幅:100μm,各共振子25の厚さ:10μ
m,及び第1ダイヤフラム23の大きさ:3×3mmと
してあり、第2ダイヤフラム24は測定の簡略化のため
省略してある。
【0057】また、各図のグラフにおける測定結果は、
保持部22の両側に15対(#1〜30)の共振子2
5,25,…を設けた構成としてあり、保持部22の片
側の共振子25,25,…(#1〜30の奇数番号の
み)の共振振幅と、各音響センサの全体振動数における
共振振幅とを縦軸に、横軸に設けたこれらの共振周波数
に対応させて有限要素法解析(FEMA)によりグラフ
化したものである。
【0058】図6に示した従来の音響センサでは、各共
振子25がこれらに個別に設定された共振周波数に応じ
て夫々ピークを有し、適当な間隔で周波数方向に分離し
ているが、共振子25の共振周波数よりも低周波数側に
も共振振幅の大きい全体振動が検出されており、これに
よって音響センサの検出精度が低下する。
【0059】一方、図7に示した本発明に係る音響セン
サでは、1対のダミー共振子28,28が設けられてい
る。これによって、図6に示したような全体振動が略完
全に除去されており、予め設定された周波数帯域におい
て高周波成分から低周波成分まで全ての成分について高
精度に検出できることがわかる。
【0060】なお、上述した例では、複数の共振子2
5,25,…での特定の共振周波数の帯域を15Hz〜
20kHz(可聴帯域)の範囲としたが、これは例示で
あり、他の周波数範囲でも良いことは勿論である。但
し、音波であるので、その周波数範囲は、数Hz〜50
kHz(最大でも100kHzまで)である。
【0061】また、ダミー共振子28,28は一対であ
る構成としたが、一つであっても、2つより多くてもよ
い。例えば、2対以上のダミー共振子28,28,…を
備える場合には、各対のダミー共振子28,28の長さ
を異ならせる。前述したように、ダミー共振子28,2
8,…の追加によって本発明に係る音響センサ全体の固
有振動数が低周波数側でシフトするために、これを見込
んで前記固有振動数から低周波数側へ適宜の共振振動数
を包含するようにダミー共振子28,28の長さを異な
らせるのが望ましい。
【0062】さらに、上述の実施の形態においては音響
センサと、この音響センサに組み込まれた共振子アレイ
とを示したが、音波以外の振動を検出する振動センサ
と、この振動センサに組み込まれた共振子アレイとであ
ってもよい。
【0063】
【発明の効果】以上詳述した如く本発明に係る共振子ア
レイにおいては、各々が特定の周波数に共振する複数の
共振子を有し、これらの共振子のうちの少なくとも一つ
が、これら共振子を備えた共振子アレイを包含する構造
物の共振周波数の如き除去すべき共振周波数に共振する
ようにしてあることにより、例えばこのような共振子ア
レイを、振動センサ又は音響センサに組み込んだ場合、
振動センサ又は音響センサの全体振動に起因する各共振
子の振動を、複数の共振子の何れかに吸収させることが
でき、従って、高精度な音響信号の検出及び周波数スペ
クトル分析を達成することができる。
【0064】また、前記除去すべき共振周波数に共振さ
せる共振子を、この共振周波数に共振するように長さを
異ならせることにより、共振子の長さを調整して様々な
周波数に共振させることができ、複数の共振周波数に対
応したノイズを吸収することが可能である。
【0065】また、前記除去すべき共振周波数に共振さ
せる共振子の長さを、段階的に異ならせることにより、
前記除去すべき共振周波数を吸収する複数の共振子によ
り所定の連続した帯域幅をもたせることができる。
【0066】また、媒質中を伝搬した音波を受波部を介
して前述の共振子アレイの如き共振部に与え、該共振部
の各共振子での振動を振動強度検出部で検出することに
より、その音波の特定の周波数成分がその周波数成分と
共振周波数が略等しい共振子で吸収されて各共振子が共
振し、各共振子での振動を検出することで、媒質中を伝
搬した音波の各周波数成分の大きさを検出できるばかり
でなく、前述した如き共振子アレイの様々な効果を音響
センサとして実現することができる。
【0067】さらに、媒質中を伝搬した振動を受振部を
介して前述の共振子アレイの如き共振部に与え、該共振
部の各共振子での振動を振動強度検出部で検出すること
により、その音波の特定の周波数成分がその周波数成分
と共振周波数が略等しい共振子で吸収されて各共振子が
共振し、各共振子での振動を検出することで、媒質中を
伝搬した振動の各周波数成分の大きさを検出できるばか
りでなく、前述した如き共振子アレイの様々な効果を、
音響以外の振動をも検出可能な振動センサとして実現す
ることができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る音響センサの構成を示す斜視図で
ある。
【図2】本発明に係る音響センサのセンサ本体の平面図
である。
【図3】本発明に係る音響センサの検出回路の構成を示
すブロック図である。
【図4】本発明に係る音響センサの検出回路内における
タイミングチャートである。
【図5】特定の周波数に対応する各検出回路の関係を示
す図である。
【図6】従来の音響センサの各周波数帯における共振振
幅を示すグラフである。
【図7】本発明に係る音響センサの各周波数帯における
共振振幅を示すグラフである。
【符号の説明】
1 半導体シリコン基板 2 センサ本体 3 電極 4 検出回路 21 共振部 22 保持部 23 第1ダイヤフラム 24 第2ダイヤフラム 25 共振子

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 各々が異なる周波数に共振する複数の共
    振子を有する共振子アレイにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、前記共振子アレ
    イを包含する構造物の共振周波数に共振すべくなしてあ
    ることを特徴とする共振子アレイ。
  2. 【請求項2】 前記構造物の共振周波数に共振する共振
    子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振するよう
    な長さをもつ請求項1記載の共振子アレイ。
  3. 【請求項3】 各々が異なる周波数に共振する複数の共
    振子を有する共振子アレイにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、除去すべき共振
    周波数に共振すべくなしてあることを特徴とする共振子
    アレイ。
  4. 【請求項4】 前記除去すべき共振周波数に共振する共
    振子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振するよ
    うな長さをもつ請求項3記載の共振子アレイ。
  5. 【請求項5】 媒質中を伝搬する音波を受ける受波部
    と、該受波部により受けられた前記音波の特定の周波数
    に各々共振する複数の共振子を有する共振部と、各共振
    子の前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度
    検出部とを備える音響センサにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、前記共振部を包
    含する構造物の共振周波数に共振すべくなしてあること
    を特徴とする音響センサ。
  6. 【請求項6】 前記構造物の共振周波数に共振する共振
    子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振するよう
    な長さをもつ請求項5記載の音響センサ。
  7. 【請求項7】 媒質中を伝搬する音波を受ける受波部
    と、該受波部により受けられた前記音波の特定の周波数
    に各々共振する複数の共振子を有する共振部と、各共振
    子の前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度
    検出部とを備える音響センサにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、除去すべき共振
    周波数に共振すべくなしてあることを特徴とする音響セ
    ンサ。
  8. 【請求項8】 前記除去すべき共振周波数に共振する共
    振子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振するよ
    うな長さをもつ請求項7記載の音響センサ。
  9. 【請求項9】 媒質中を伝搬する振動を受ける受振部
    と、該受振部により受けられた前記振動の特定の周波数
    に各々共振する複数の共振子を有する共振部と、各共振
    子の前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度
    検出部とを備える振動センサにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、前記共振部を包
    含する構造物の共振周波数に共振すべくなしてあること
    を特徴とする振動センサ。
  10. 【請求項10】 前記構造物の共振周波数に共振する共
    振子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振するよ
    うな長さをもつ請求項9記載の振動センサ。
  11. 【請求項11】 媒質中を伝搬する振動を受ける受振波
    部と、該受振部により受けられた前記振動の特定の周波
    数に各々共振する複数の共振子を有する共振部と、各共
    振子の前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強
    度検出部とを備える振動センサにおいて、 前記複数の共振子の少なくとも一つは、除去すべき共振
    周波数に共振すべくなしてあることを特徴とする振動セ
    ンサ。
  12. 【請求項12】 前記除去すべき共振周波数に共振する
    共振子は、複数であり、各々が異なる周波数に共振する
    ような長さをもつ請求項11記載の振動センサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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