JP2000124004A - Ptcサーミスタ素子 - Google Patents

Ptcサーミスタ素子

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JP2000124004A
JP2000124004A JP10290945A JP29094598A JP2000124004A JP 2000124004 A JP2000124004 A JP 2000124004A JP 10290945 A JP10290945 A JP 10290945A JP 29094598 A JP29094598 A JP 29094598A JP 2000124004 A JP2000124004 A JP 2000124004A
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thermistor
thermistor element
ptc
lead wires
resin layer
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JP10290945A
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Yoshihiro Yamada
芳弘 山田
Gakuo Haga
岳夫 芳賀
Yoshitaka Nagao
吉高 長尾
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Murata Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Murata Manufacturing Co Ltd
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    • H01C7/02Non-adjustable resistors formed as one or more layers or coatings; Non-adjustable resistors made from powdered conducting material or powdered semi-conducting material with or without insulating material having positive temperature coefficient
    • H01C7/022Non-adjustable resistors formed as one or more layers or coatings; Non-adjustable resistors made from powdered conducting material or powdered semi-conducting material with or without insulating material having positive temperature coefficient mainly consisting of non-metallic substances
    • H01C7/023Non-adjustable resistors formed as one or more layers or coatings; Non-adjustable resistors made from powdered conducting material or powdered semi-conducting material with or without insulating material having positive temperature coefficient mainly consisting of non-metallic substances containing oxides or oxidic compounds, e.g. ferrites
    • H01C7/025Perovskites, e.g. titanates

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 サーミスタ素体の厚みが薄く、低抵抗化が可
能であり、サーミスタ素体の破損が生じ難く、リード付
き電子部品として構成し得るPTCサーミスタ素子を得
る。 【解決手段】 チタン酸バリウム系セラミックスよりな
り、厚みが0.1〜0.3mmの範囲にあり、かつ両主
面の面積が25〜121mm2 の範囲または両主面の面
方向に沿う最大寸法が6〜17mmの範囲にある板状の
サーミスタ素体2と、サーミスタ素体2の両主面に形成
された一対の電極2c,2dと、電極2c,2dに接合
されたリード線3,4と、リード線3,4が引き出され
ている部分を除いてサーミスタ素体を被覆するように形
成された絶縁性樹脂層7とを備えるPTCサーミスタ素
子1。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば過電流保護
用素子として用いられるPTC(正特性)サーミスタ素
子に関し、より詳細には、低抵抗化に対応するために厚
みを薄くすることが可能とされたPTCサーミスタ素子
に関する。
【0002】
【従来の技術】過電流保護素子や熱検出素子として、P
TCサーミスタ素子が用いられている。近年、より抵抗
値が低いPTCサーミスタ素子が求められている。一般
に、PTCサーミスタ素子は、板状のサーミスタ素体の
両主面に電極を形成した構造を有する。従って、抵抗値
を低めるには、板状のサーミスタ素体を薄くし、かつサ
ーミスタ素体の対向し合っている主面に形成されている
電極の面積を大きくすればよい。
【0003】従って、外形寸法の増大を避けるために、
サーミスタ素体の主面の大きさを一定としたまま抵抗値
を低めるには、サーミスタ素体の厚みを薄くする必要が
ある。しかしながら、サーミスタ素体の厚みを薄くした
場合、サーミスタ素体の抗折強度が大幅に低下する。
【0004】すなわち、PTCサーミスタ素子において
サーミスタ素体に加わる応力をPmとし、サーミスタ素
体の抗折力をτとすると、Pm=(2/3)τ・W・
(t2/L)となる。ここで、Wはサーミスタ素体の幅
寸法を、tはサーミスタ素体の厚みを、Lは抗折強度を
測定するために上記幅方向と直交する方向に一対の支点
を配置して応力を加えた場合の支点間の距離を示す。
【0005】従って、上記式から明らかなように、サー
ミスタ素体が耐え得る応力は、厚みの二乗に比例する。
また、サーミスタ素体の主面の寸法を大きくすること
は、上記支点間距離Lが大きくなることを意味し、従っ
て、それによってもサーミスタ素体が耐え得る応力の低
下を招くことになる。
【0006】よって、サーミスタ素体の厚みを薄くする
にも、抗折強度が低下するため限度があり、かつサーミ
スタ素体の主面の面積を大きくした場合においても、や
はり抗折強度が低下することになる。すなわち、単にサ
ーミスタ素体の厚みを薄くし、かつその主面の面積を大
きくするにも限度があり、PTCサーミスタ素子の低抵
抗化には大きな制約があった。
【0007】一般に、チタン酸バリウム系セラミックス
を主体とするサーミスタ素体を用いたPTCサーミスタ
素子では、サーミスタ素体の厚みが0.4mm以下にな
ると、上記支点間距離L=6mmの場合、600g・f
程度の応力に耐えられない。従って、リード線が接合さ
れたタイプのPTCサーミスタ素子を構成した場合、リ
ード線接合時に加わる応力が600g・f程度であるた
め、サーミスタ素体の割れが生じ易くなる。従って、チ
タン酸バリウム系セラミックスを用いた場合、実際に
は、サーミスタ素体の厚みを0.4mm以下としたリー
ド付きのPTCサーミスタ素子を製品化することは非常
に困難であった。
【0008】また、上記のような厚みのPTCサーミス
タ素子を得ることが可能であったとしても、プリント回
路基板などに実装するに際し加わる応力により、サーミ
スタ素体の破損が生じるおそれがあった。
【0009】他方、特開平8−138906号公報に
は、厚みが0.4mm以下のサーミスタ素体を用いた正
特性サーミスタ装置が開示されている。ここでは、両面
に電極が形成されたサーミスタ素体が支持基板2に積層
されており、該支持基板2によりサーミスタ素体が補強
されている。支持基板の補強効果を利用することによ
り、0.4mm以下の厚みのサーミスタ素体を用いて2
0Ω以下の低抵抗のPTCサーミスタ装置が得られるこ
とが示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】特開平8−13890
6号公報に開示されている正特性サーミスタ装置では、
サーミスタ素体の一方主面側に支持基板が積層されてお
り、該支持基板により補強効果が得られている。従っ
て、支持基板側のサーミスタ素体主面に形成された電極
が支持基板で隠されるため、該電極を支持基板とサーミ
スタ素体との積層体側面に引き出すためにさらに電極を
形成する必要があった。
【0011】また、支持基板側のサーミスタ素体主面の
電極の外側面が支持基板で隠されることになるため、リ
ード付き電子部品として構成することが困難であった。
すなわち、サーミスタ素体の両主面に形成された電極に
一対のリード線をそれぞれ接合してなる通常のリード付
き電子部品として構成することは非常に困難であった。
【0012】本発明の目的は、上述した従来技術の欠点
を解消し、サーミスタ素体の厚みが薄く、それによって
抵抗値を低めることが可能であるだけでなく、サーミス
タ素体の破損が生じ難く、リード付き電子部品として構
成することができ、かつ外部との接続のための余分な電
極の形成を必要としない、PTCサーミスタ素子を提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、チタン酸バリウム系セラミックスからなるサーミス
タ素体を用いて構成されており、25℃における抵抗値
が0.2Ω以下であるPTCサーミスタ素子であって、
チタン酸バリウム系セラミックスよりなり、厚みが0.
1〜0.3mmの範囲にあり、かつ両主面の面積が25
〜121mm2 の範囲もしくは両主面の面方向に沿う最
大寸法が6〜17mmの範囲にある板状のサーミスタ素
体と、前記サーミスタ素体の両主面に形成された一対の
電極と、前記一対の電極にそれぞれ接合された一対のリ
ード線と、前記リード線が引き出されている部分を除い
て前記サーミスタ素体、電極及びリード線を被覆するよ
うに形成された絶縁性樹脂層とを備えることを特徴とす
る。
【0014】請求項2に記載の発明では、リード線が、
半田で被覆されたCu線またはFe線からなり、該リー
ド線の直径が0.65mm以下とされている。請求項3
に記載の発明では、少なくとも1つのリード線のサーミ
スタ素体から引き出されている部分の途中にキンク形状
部が設けられている。
【0015】請求項4に記載の発明では、絶縁性樹脂層
が、JIS K6911における曲げ強度が10Mpa
以上、50Mpa以下の樹脂材料からなり、絶縁性樹脂
層のサーミスタ素体上における厚みが0.4〜0.8m
mの範囲とされている。請求項5に記載の発明では、絶
縁性樹脂層が、シリコーン系樹脂材料またはエポキシ系
樹脂材料により構成されている。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の非限定的な実施例
を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0017】図1(a)及び(b)は、本発明の一実施
例に係るPTCサーミスタ素子を示す正面図及び略図的
側面図である。PTCサーミスタ素子1は、図1(b)
に示すように、サーミスタ素体2と、リード線3,4と
を有する。
【0018】図2(a)及び(b)に、サーミスタ素体
2の両主面にリード線3,4を接合した状態を示す。サ
ーミスタ素体2は、本実施例では、チタン酸バリウム系
セラミックスよりなり、かつ矩形板状の形状を有する。
サーミスタ素体2は、その厚みが0.1〜0.3mmの
範囲とされている。また、対向し合う一対の主面2a,
2bの面積は25〜121mm2 の範囲にあり、あるい
は両主面2a,2bの面方向に沿う最大寸法が6〜17
mmの範囲にある。なお、面方向についての説明は後述
する。
【0019】サーミスタ素体の厚みが0.1mm未満の
場合には、機械的強度が低くなりすぎ、PTCサーミス
タ素子の製造が不可能となり、0.3mmを超えると、
抵抗値が大きくなり、低抵抗化を図るには素子寸法が大
きくなる。
【0020】サーミスタ素体の一対の主面2a,2bの
面積が121mm2 を超えると、サーミスタ素体の厚み
が上記のように薄いため、リード線3,4の取り付けに
際してのヒートショックによりサーミスタ素体2が割れ
易くなる。サーミスタ素体2の主面2a,2bの面積が
25mm2 未満の場合には、低抵抗化が困難となる。
【0021】また、サーミスタ素体2の主面2a,2b
の面方向に沿う最大寸法が17mmを超えると、上記の
ようにサーミスタ素体の主面2a,2bの面積が大きく
なった場合と同様に、リード線3,4の接合に際しての
ヒートショックによりサーミスタ素体2が割れ易くな
る。また、上記最大寸法が6mm未満の場合には、低抵
抗化を図ることが困難となる。
【0022】なお、サーミスタ素体2の主面2a,2b
の面方向に沿う最大寸法とは、サーミスタ素体2が正方
形板の場合には、正方形の一辺の長さとなり、矩形の場
合には、長辺の長さである。また、サーミスタ素体2が
円板状の場合には、円の直径をいうものとする。
【0023】また、サーミスタ素体2の両主面2a,2
bには、一対の電極2c,2dが形成されている。電極
2c,2dは、Cr層、Ni−Cu層及びAg層を積層
した構造を有する。
【0024】電極2c,2d上には、それぞれ、半田
5,6を介してリード線3,4が接合されている。リー
ド線3,4は、一端側において、電極2c,2dに半田
5,6を用いて接合されている。また、リード線3,4
のサーミスタ素体2から引き出されている部分の途中に
は、キンク形状部3a,4aが形成されている。キンク
形状部3a,4aとは、図1及び図2に示されているよ
うに、リード線3,4の一部が側方に突出するように折
り曲げられた形状をいうものとする。
【0025】このキンク形状部3a,4aが設けられて
いるため、リード線3,4のキンク形状部3a,4aよ
りも先端側部分3b,4bに応力が加わった場合、該応
力がキンク形状部3a,4aで吸収される。従って、上
記応力が、サーミスタ素体2側に伝わり難く、それによ
ってサーミスタ素体2とリード線3,4との半田5,6
による接合部分の破壊やサーミスタ素体2の破損が生じ
難い。
【0026】上記キンク形状部3a,4aは、図示の実
施例では、リード線3,4の途中の1ヵ所に設けられて
いたが、キンク形状部3a,4aは複数設けられていて
もよい。
【0027】リード線3,4は、本実施例では、0.6
5mmのCu線により構成されている。従って、リード
線3,4が比較的柔らかいため、それによってもリード
線3,4に加わった応力が、サーミスタ素体2やサーミ
スタ素体2とリード線3,4との接合部分に加わり難
い。もっとも、Cu線に代えて、Fe線などの他の比較
的柔らかい金属材料によりリード線3,4を構成しても
よい。
【0028】リード線3,4の直径については、0.6
5mm以下とすることが望ましい。リード線3,4の直
径が0.65mmを超えると、リード線3,4の剛性が
高くなり、リード線に加わった応力がサーミスタ素体2
側に加わり易くなることがある。
【0029】本実施例のPTCサーミスタ素子1では、
上記のようにサーミスタ素体2に半田5,6によりリー
ド線3,4が接合された構造において、図1に示すよう
に、リード線3,4が引き出されている部分を除く残り
の部分が絶縁性樹脂層7により被覆されている。すなわ
ち、リード線3,4が引き出されている部分を除いて、
サーミスタ素体2、電極2c,2d及びリード線3,4
を被覆するように絶縁性樹脂層7が形成されている。
【0030】上記絶縁性樹脂層7は、サーミスタ素体2
が比較的薄いため、その機械的強度を補強するため、並
びに耐湿性などの耐環境特性を高めるために設けられて
いる。
【0031】絶縁性樹脂層7としては、好ましくは、J
IS K6911における曲げ強度が10Mpa以上、
50Mpa以下の樹脂材料が用いられる。この曲げ強度
が10Mpa未満の樹脂材料の場合には、サーミスタ素
体2を補強する効果が十分に得られず、サーミスタ素体
2の厚みを上記のようにかなり薄くし、低抵抗化を図っ
た場合、PTCサーミスタ素子1の抗曲強度が低下する
ことがある。また、上記曲げ強度の上限値については、
高い方が好ましいが、曲げ強度が大きい樹脂は一般に反
応収縮が大きく、樹脂硬化後にサーミスタ素体2に大き
な応力がかかることになり、本発明のように薄いPTC
サーミスタ素子を用いる場合は割れを防ぐために通常の
絶縁性樹脂層の場合、50Mpa程度が上限値となる。
【0032】また、上記絶縁性樹脂層7のサーミスタ素
体2上における厚みは、0.4〜0.8mmの範囲とす
ることが好ましい。0.4mm未満では、サーミスタ素
体2を補強する効果が十分に得られないことがあり、
0.8mmを超えると、サーミスタ素体2を補強する効
果は十分であるものの、樹脂による熱容量の増大を招
き、サーミスタ素子発熱時の温度応答性が低下する。
【0033】上記絶縁性樹脂層7を構成する絶縁性樹脂
としては、上述した曲げ強度を達成し得るものが好まし
く、特に限定されるわけではない。用いる絶縁性樹脂の
例としては、上記曲げ強度を実現するには、エポキシ樹
脂やフェノール樹脂などの機械的強度に優れた樹脂材料
を用いることができる。また、シリコーン樹脂のような
機械的強度の低い樹脂材料の場合においても、シリコー
ン樹脂に、シリカなどの無機充填剤を配合することによ
り機械的強度を高めることができ、従って、シリコーン
系樹脂材料も用いることができる。
【0034】特に、PTCサーミスタ素子1は発熱素子
であるため、耐熱性に優れた樹脂材料により絶縁性樹脂
層7を構成することが好ましい。従って、エポキシ樹脂
や、上記のように無機充填剤を配合することにより機械
的強度が高められたシリコーン系樹脂材料は、耐熱性に
優れているため、絶縁性樹脂層7を構成する材料として
好適に用いられる。
【0035】本実施例のPTCサーミスタ素子1では、
上記のように、サーミスタ素体がチタン酸バリウム系セ
ラミックスよりなり、その厚みが0.3mm以下であ
り、両主面の面積が25〜121mm2 の範囲にあり、
両主面の面方向に沿う最大寸法が6〜17mmの範囲に
あるため、両主面に形成された電極間の25℃における
抵抗値が0.2Ω以下と非常に低くされる。しかも、上
記のように厚みの薄いサーミスタ素体を用いているが、
リード線3,4が引き出されている部分を除いて、サー
ミスタ素体2、電極2c,2dを被覆するように絶縁性
樹脂層7が形成されてサーミスタ素体2が補強されてい
るので、機械的強度が効果的に高められる。
【0036】加えて、キンク形状部3a,4aがリード
線3,4に形成されているため、並びにリード線3,4
が比較的柔らかい直径0.65mmのCu線により構成
されているので、リード線3,4に応力が加わったとし
ても、サーミスタ素体2及びサーミスタ素体2とリード
線3,4との接合部分への応力の伝達が効果的に抑制さ
れる。従って、PTCサーミスタ素子1の絶縁性樹脂層
7の外表面に接触方法にてマーキングすることができ
る。また、従来の比較的抵抗値の大きなリード付きPT
Cサーミスタ素子と同様に、袋内に多数のPTCサーミ
スタ素子1をランダムに収納し、出荷することができ
る。さらに、PTCサーミスタ素子1をプリント回路基
板などに実装する際に、リード線3,4に応力が加わっ
たとしても、素子の破壊が生じ難い。
【0037】なお、上記実施例では、PTCサーミスタ
素子1のサーミスタ素体2は矩形板状の形状とされてい
たが、円板状などの他の形状とされていてもよい。すな
わち、図3(a),(b)並びに図4(a),(b)に
示すように、円板状のサーミスタ素体12を用いてもよ
い。なお、図3及び図4に示すPTCサーミスタ素子1
1は、円板状のサーミスタ素体12を用いたことを除い
ては、上記実施例のPTCサーミスタ素子1と同様に構
成されている。
【0038】次に、具体的な実験例につき説明する。チ
タン酸バリウム系セラミックスを主体とする正の温度特
性を有するサーミスタ材料を用い、下記の表1に示すよ
うに種々のサーミスタ素体を用意した。用意したサーミ
スタ素体は正方形板状であるため、表1における素子長
寸法とは、正方形の一辺の長さを示す。上述した種々の
サーミスタ素体を用い、以下の従来例及び実施例の各P
TCサーミスタ素子を用意した。
【0039】(従来例)上記サーミスタ素体として、厚
みが0.5mmであり、素子長寸法が4〜25mmの範
囲にある種々のサーミスタ素体を用いた。上記サーミス
タ素体の抗折強度を測定した。結果を下記の表1及び図
5に示す。
【0040】サーミスタ素体の両主面に、Cr、Ni−
Cu及びAgをこの順にスパッタリングし、両主面の全
面に電極を形成した。上記両主面の電極に、直径0.6
mmのCu線をリード線として半田により接合した。
【0041】さらに、絶縁性樹脂層を構成する樹脂材料
としてシリコーン系樹脂を用い、リード線が引き出され
ている部分を除いて該樹脂材料で被覆し、0.5mmの
厚みの絶縁性樹脂層を形成した。なお、上記絶縁性樹脂
層を構成する樹脂材料のJIS K6911における曲
げ強度は10Mpaである。上記のようにして得た従来
例のPTCサーミスタ素子について、その抗折強度を測
定した。結果を表1及び図5に示す。
【0042】(実施例)上記従来例として用意したサー
ミスタ素体を構成したサーミスタ材料と同じ材料を用
い、但し、厚みが0.2mmであり、素子長寸法が4〜
14mmの範囲にある複数の正方形板状のサーミスタ素
体を用いた。各サーミスタ素体について、従来例の場合
と同様にして抗折強度を測定した。結果を下記の表1及
び図5に示す。
【0043】さらに、上記のようにして得たサーミスタ
素体の両主面に、従来例の場合と同様にして電極を形成
し、かつ直径0.5mmのCu線をリード線として半田
により接合した。さらに、リード線を接合した後に、シ
リコーン系樹脂よりなる樹脂材料を用い、厚み0.6、
0.7または0.8mmの絶縁性樹脂層を形成し、実施
例1〜3のPTCサーミスタ素子を得た。
【0044】なお、上記樹脂材料の曲げ強度は10Mp
aである。上記のようにして得た各PTCサーミスタ素
子の抗折強度を表1及び図5に示す。
【0045】
【表1】
【0046】図5における破線Aは、従来法による加工
限界(抗折強度=600g・f)を示す。図5から明ら
かなように、従来例のサーミスタ素体では、素子長寸法
が20mmの場合には、抗折強度が555.6g・fで
あり、加工限界を下回る。もっとも、リード線を接合
し、絶縁性樹脂層を構成した従来例のPTCサーミスタ
素子では、長寸法20mmの場合においても、抗折強度
は691.6g・fであり、加工限界を上回ることがわ
かる。
【0047】すなわち、従来例のPTCサーミスタ素子
では、素子厚みが0.5mmと厚いため、加工限界を上
回る抗折強度が実現されている。他方、実施例で用意し
た発明品サーミスタ素体では、表1及び図5から明らか
なように、素子長寸法が4〜14mmの範囲において、
268.3g・f以下と非常に小さく、従って加工限界
を下回っていることがわかる。
【0048】しかしながら、実施例1〜3に示されてい
るように、上記サーミスタ素体にリード線を接合し、絶
縁性樹脂層を形成した場合には、素子厚みが0.2mm
と薄い場合であっても、表1及び図5から明らかなよう
に、抗折強度が加工限界である600g・fを上回るこ
とがわかる。すなわち、厚みが0.2mmと薄いサーミ
スタ素体を用いた場合であっても、本発明に従ってリー
ド線を接合し、絶縁性樹脂層を構成した場合、加工限界
を上回るため、厚みの薄いサーミスタ素体を用い、小型
でありかつ低抵抗のPTCサーミスタ素子を提供し得る
ことがわかる。
【0049】
【発明の効果】請求項1に記載の発明に係るPTCサー
ミスタ素子では、チタン酸バリウム系セラミックスから
なり、厚みが0.1〜0.3mmと非常に薄いサーミス
タ素体を用いているが、該サーミスタ素体の両主面の面
積が25〜121mm2 の範囲または両主面の面方向に
沿う最大寸法が6〜17mmの範囲にあるため、両主面
に形成された一対の電極に、リード線を例えば半田によ
り接合した場合、サーミスタ素体の割れが生じ難い。加
えて、絶縁性樹脂層によりサーミスタ素体が被覆される
ので、PTCサーミスタ素子の抗折強度が効果的に高め
られる。
【0050】よって、厚みが0.3mmと薄いサーミス
タ素体を用いることによって、従来困難であった25℃
における抵抗値が0.2Ω以下のPTCサーミスタ素子
をリード付き形状でサーミスタ素体に割れを生じさせる
ことなく安定に供給することができる。
【0051】請求項2に記載の発明では、上記リード線
が、半田で被覆されたCu線またはFe線からなり、か
つリード線の直径が0.65mm以下であるため、リー
ド線が十分な柔軟性を有する。従って、リード線接合時
のサーミスタ素体に加わる応力を吸収することができ、
それによってリード線接合時にサーミスタ素体の割れが
生じ難い。
【0052】請求項3に記載の発明では、少なくとも1
つのリード線のサーミスタ素体から引き出されている部
分の途中に上記キンク形状部が設けられているので、リ
ード線接合時に際し、キンク形状部よりも外側のリード
線部分に応力が加わったとしても、該応力がキンク形状
部により効果的に吸収される。従って、リード線接合時
のサーミスタ素体の割れがより一層生じ難く、かつ最終
的に得られたPTCサーミスタ素子の取り扱いに際して
の破損も生じ難い。
【0053】請求項4に記載の発明では、絶縁性樹脂層
がJIS K6911における曲げ強度が10〜50M
paの樹脂材料からなり、絶縁性樹脂層のサーミスタ素
体上における厚みが0.4〜0.8mmの範囲とされて
いるので、PTCサーミスタ素子全体の熱容量を大きく
し、かつ動作特性を損なうことなく、絶縁性樹脂層によ
りサーミスタ素体が効果的に補強される。
【0054】請求項5に記載の発明では、絶縁性樹脂層
として、シリコーン系樹脂材料またはエポキシ系樹脂材
料が用いられ、それによってサーミスタ素体が効果的に
補強されると共に、これらの樹脂材料が耐熱性に優れて
いるので、熱劣化の生じ難いPTCサーミスタ素子を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施例に係る
PTCサーミスタ素子を説明するための正面図及び略図
的側面図。
【図2】(a)及び(b)は、図1に示したPTCサー
ミスタ素子から絶縁性樹脂層を取り除いた状態を示す正
面図及び側面図。
【図3】(a)及び(b)は、主面の形状が円形である
変形例のPTCサーミスタ素子を説明するための正面図
及び略図的側面図。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ、図3に示した
PTCサーミスタ素子から絶縁性樹脂層を取り除いた状
態を示す正面図及び側面図。
【図5】具体的な実験例において得られたPTCサーミ
スタ素体及びPTCサーミスタ素子の主面の面方向に沿
う最大寸法(素子長寸法)と、抗折強度との関係を示す
図。
【符号の説明】
1…PTCサーミスタ素子 2…サーミスタ素体 2c,2d…電極 3,4…リード線 3a,4a…キンク形状部 5,6…半田 7…絶縁性樹脂層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長尾 吉高 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株式 会社村田製作所内 Fターム(参考) 5E034 AA07 AB01 AC02 DA02 DA03 DB01 DB05 DC02 DC10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン酸バリウム系セラミックスからな
    るサーミスタ素体を用いて構成されており、25℃にお
    ける抵抗値が0.2Ω以下であるPTCサーミスタ素子
    であって、 チタン酸バリウム系セラミックスよりなり、厚みが0.
    1〜0.3mmの範囲にあり、両主面の面積が25〜1
    21mm2 の範囲または両主面の面方向に沿う最大寸法
    が6〜17mmの範囲にある板状のサーミスタ素体と、 前記サーミスタ素体の両主面に形成された一対の電極
    と、 前記一対の電極にそれぞれ接合された一対のリード線
    と、 前記リード線が引き出されている部分を除いて前記サー
    ミスタ素体、電極及びリード線を被覆するように形成さ
    れた絶縁性樹脂層とを備えることを特徴とする、PTC
    サーミスタ素子。
  2. 【請求項2】 前記リード線が、半田で被覆されたCu
    線またはFe線からなり、該リード線の直径が0.65
    mm以下である、請求項1に記載のPTCサーミスタ素
    子。
  3. 【請求項3】 少なくとも1つのリード線のサーミスタ
    素体から引き出されている部分の途中にキンク形状部が
    設けられている、請求項1または2に記載のPTCサー
    ミスタ素子。
  4. 【請求項4】 前記絶縁性樹脂層が、JIS K691
    1における曲げ強度が10Mpa以上、50Mpa以下
    の樹脂材料からなり、前記絶縁性樹脂層のサーミスタ素
    体上における厚みが0.4〜0.8mmの範囲とされて
    いる、請求項1〜3のいずれかに記載のPTCサーミス
    タ素子。
  5. 【請求項5】 前記絶縁性樹脂層が、シリコーン系樹脂
    材料またはエポキシ系樹脂材料により構成されている、
    請求項4に記載のPTCサーミスタ素子。
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