JP2000119855A - 硬質被覆層がすぐれた層間密着性を有する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた層間密着性を有する表面被覆超硬合金製切削工具

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JP2000119855A JP28715698A JP28715698A JP2000119855A JP 2000119855 A JP2000119855 A JP 2000119855A JP 28715698 A JP28715698 A JP 28715698A JP 28715698 A JP28715698 A JP 28715698A JP 2000119855 A JP2000119855 A JP 2000119855A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬質被覆層がすぐれた層間密着性を有する表
面被覆超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、WC基
超硬合金基体の表面に、いずれも0.1〜15μmの平
均層厚を有する、TiC層、TiN層、TiCN層、T
iCO層、TiNO層、およびTiCNO層のうちの1
種または2種以上からなるTi化合物層と、2〜15μ
mの平均層厚を有するAl23 層、特にα−Al2
3 層と、0.1〜5μmの平均層厚を有する、主体がT
23 からなり、かつO以外の非金属元素としてCお
よびNを、合量で、Oとの合量に占める割合で1〜20
原子%含有するTi23 主体層、で構成され、かつ前
記Ti23 主体層が少なくとも前記Al23 層に隣
接して配置された層構造をもった硬質被覆層を3〜25
μmの全体平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着
してなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、硬質被覆層を構
成するTi化合物層、酸化アルミニウム(以下、Al2
3 で示す)層、および三酸化二チタン(以下、Ti2
3 で示す)主体層が相互にすぐれた層間密着性を有
し、したがって例えば鋼や鋳鉄などの高速切削に用いた
場合にも硬質被覆層に剥離の発生なく、長期に亘ってす
ぐれた切削性能を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、例えば特開平6−315
03号公報、特開平6−316758号公報、および特
開平7−216549号公報などに記載されるように、
炭化タングステン基超硬合金基体(以下、超硬基体とい
う)の表面に、いずれも0.1〜15μmの平均層厚を
有する、炭化チタン(以下、TiCで示す)層、窒化チ
タン(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化チタン
(以下、TiCNで示す)層、炭酸化チタン(以下、T
iCOで示す)層、窒酸化チタン(以下、TiNOで示
す)層、および炭窒酸化チタン(以下、TiCNOで示
す)層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物
層と、0.5〜15μmの平均層厚を有するAl23
層とで構成された硬質被覆層を3〜25μmの全体平均
層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる被覆超
硬工具が知られており、またこの被覆超硬工具が鋼や鋳
鉄などの連続切削や断続切削に用いられることも知られ
ている。また、一般に上記の被覆超硬工具の硬質被覆層
を構成するTi化合物層およびAl23 層が粒状結晶
組織を有し、かつ前記Al23 層にはα型結晶構造を
もつものやκ型結晶構造をもつものなどがあることも良
く知られており、さらに例えば特開平6−8010号公
報や特開平7−328808号公報などで知られるよう
に、前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身
の靭性向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反
応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、7
00〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより
形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも行わ
れている。さらに、同じく前記Ti化合物層を構成する
TiCNO層を、通常の化学蒸着装置にて、 反応ガス組成:容量%で、TiCl4 :0.5〜3%、
CO:0.1〜1%、CH3 CN:0.1〜1%、N
2 :5〜30%、H2 :残り、 雰囲気温度:870〜930℃、 雰囲気圧力:30〜200Torr、 の条件で形成することにより微細な縦長成長結晶組織を
もつようにすることも提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の切削装置
の高性能化および高出力化はめざましく、かつ省力化に
対する要求も強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾
向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これ
を構成する硬質被覆層のうちのAl23 層、特にα型
結晶構造のAl23 層(以下、α−Al23 層で示
す)は耐酸化性と熱的安定性にすぐれ、さらに高硬度を
有するが、他の構成層であるTi化合物層との層間密着
性が不十分なために、例えば鋼や鋳鉄などの連続切削や
断続切削を高速で行った場合には硬質被覆層に剥離が発
生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至る
のが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、被覆超硬工具の硬質被覆層を構
成するAl23 層、特にα−Al23 層に着目し、
これと他の構成層であるTi化合物層との層間密着性の
向上を図るべく研究を行った結果、 (1)主体がTi23 からなり、かつ酸素(O)以外
の非金属元素として炭素(C)および窒素(N)を、合
量で、O(酸素)との合量に占める割合で1〜20原子
%含有するTi23 主体層、すなわちCとNがTi2
3 を形成するOとの合量に占める割合で、合量で1〜
20原子%含有し、残りが実質的にTi 23 [微量の
Cl(塩素)を不可避不純物として含有する場合があ
る]からなるTi23 主体層は、Ti化合物層および
Al23 層、特にα−Al23層の両層と著しく強
固に密着する性質をもち、かつCおよびNの含有によっ
て層自体の強度も向上したものになること。 (2)上記Ti23 主体層は、化学蒸着法または物理
蒸着法を用い、 反応ガス組成(容量%で、以下同じ)−TiCl4
0.5〜10%、Ar:1〜30%、CO:0.5〜5
%、CO2 :0.5〜10%、N2 :1〜40%、H
2 :残り、 雰囲気温度:800〜1100℃、 雰囲気圧力:30〜500Torr、 の条件で形成することができること。 (3)したがって、上記のTi23 主体層を、同じく
化学蒸着法および/または物理蒸着法を用いて形成され
た上記の従来硬質被覆層を構成するTi化合物層および
Al23 層(特にα−Al23 層)のうちの少なく
とも前記Al23 層に隣接して配置すると、前記Ti
化合物層とα−Al23 層は、前記Ti23 主体層
がこれら両層と著しく強固に密着する性質を具備するこ
とから、高い層間密着性をもつようになり、したがっ
て、例えば鋼や鋳鉄の高速切削でも硬質被覆層に剥離の
発生なく、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するす
るようになること。 以上(1)〜(3)に示される研究結果を得たのであ
る。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、いずれも0.
1〜15μmの平均層厚を有する、TiC層、TiN
層、TiCN層、TiCO層、TiNO層、およびTi
CNO層のうちの1種または2種以上からなるTi化合
物層と、0.5〜15μmの平均層厚を有するAl2
3 層、特にα−Al23 層と、0.1〜5μmの平均
層厚を有する、主体がTi23 からなり、かつO以外
の非金属元素としてCおよびNを、合量で、Oとの合量
に占める割合で1〜20原子%含有するTi23 主体
層、で構成され、かつ前記Ti23 主体層が少なくと
も前記Al23 層に隣接して配置された層構造をもっ
た硬質被覆層を3〜25μmの全体平均層厚で化学蒸着
および/または物理蒸着してなる、硬質被覆層がすぐれ
た層間密着性を有する被覆超硬工具に特徴を有するもの
である。
【0006】なお、この発明の被覆超硬工具において、
硬質被覆層を構成するTi23 主体層におけるCおよ
びNには層自体の強度を向上させる作用があるが、その
含有量がOとの合量に占める割合で1原子%未満では所
望の強度向上効果が得られず、一方その含有量が同じく
20原子%を越えると、Ti23 のもつすぐれた層間
密着性が損なわれるようになることから、その含有量を
1〜20原子%と定めた。なお、この場合、Ti23
主体層中のCとNの含有割合は、反応ガス中のCO、C
2 、Ar、およびN2 の含有割合を調整することによ
って制御でき、またCとNの相互割合は、CO、CO
2 、およびN2 の相互割合を調整することによって制御
できるが、CとNは共に層自体の強度向上に均等作用を
発揮するので、合量で1〜20原子%の範囲内の所定含
有割合であれば、CがNに比して相対的に多くても、逆
にCがNに比して少なくても前記強度向上効果に変りは
ないことから、CおよびNの含有量を合量で1〜20原
子%としたのである。また、上記Ti23 主体層の平
均層厚を0.1〜5μmとしたのは、その厚さが0.1
μm未満ではα−Al2 3 層およびTi化合物層との
間に所望のすぐれた層間密着性を確保することができ
ず、一方その厚さが5μmを越えると、切刃に欠けやチ
ッピング(微小欠け)が発生し易くなるという理由によ
るものである。
【0007】さらに、この発明の被覆超硬工具におい
て、硬質被覆層を構成するTi化合物層およびAl2
3 層の平均層厚をそれぞれ0.1〜15μmおよび0.
5〜15μmとし、かつ硬質被覆層の全体平均層厚を3
〜25μmとしたのは、これらの層厚のうちのいずれか
の層厚でも前記下限値未満になると、所望の耐摩耗性を
確保することができず、一方これらの層厚のうちのいず
れかの層厚でも前記上限値を越えると、切刃に欠けやチ
ッピングが発生し易くなるという理由からである。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、平
均粒径:2.8μmを有する中粒WC粉末、同4.9μ
mの粗粒WC粉末、同1.5μmの(Ti,W)C(重
量比で、以下同じ、TiC/WC=30/70)粉末、
同1.2μmの(Ti,W)CN(TiC/TiN/W
C=24/20/56)粉末、同1.2μmの(Ta,
Nb)C(TaC/NbC=90/10)粉末、同1.
2μmのCr3 2 粉末、および同1.1μmのCo粉
末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成
に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した
後、ISO・CNMG120408(超硬基体A〜C
用)および同SEEN42AFTN1(超硬基体D用)
に定める形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を同
じく表1に示される条件で真空焼結することにより超硬
基体A〜Dをそれぞれ製造した。なお、上記超硬基体A
およびBには、焼結したままで、表面部に結合相形成成
分であるCo含有量が超硬基体内部に比して相対的に高
いCo富化帯域が形成されており、残りの超硬基体Cお
よびDには、前記Co富化帯域の形成がなく、全体的に
均質な組織をもつものであった。なお、表1には、上記
超硬基体A〜Dの内部硬さ(ロックウエル硬さAスケー
ル)をそれぞれ示した。
【0009】ついで、これらの超硬基体A〜Dの表面
に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を
用い、表2、3(表2におけるl−TiCNおよびl−
TiCNOは、いずれも縦長成長結晶組織をもつTiC
N層およびTiCNO層の形成条件を示すものであり、
これ以外の条件で形成された層はいずれも粒状結晶組織
をもつものである)に示される条件にて、表4、5に示
される組成および目標層厚(切刃の逃げ面)の硬質被覆
層を形成することにより本発明被覆超硬工具1〜12、
およびTi23 主体層の形成がない比較被覆超硬工具
1〜8をそれぞれ製造した。なお、本発明被覆超硬工具
1〜12について、それぞれの切刃逃げ面を、Cukα
線を線源として用いたX線回折で、X線回折パターンを
観察したところ、いずれもTi23 の回折角(2θ)
である24.0±1度、34.5±1度、61.0±1
度、および63.0±1度に回折ピークが現われ、これ
によってTi 23 主体層は、主体がTi23 からな
ることが確認でき、さらに工具縦断面を鏡面研磨仕上げ
した状態で、工具すくい面および逃げ面におけるTi2
3 主体層のCおよびN含有量を、オージェ電子分光分
析装置を用いて測定したところ、いずれもTi23
体層中のC、N、およびOの合量に占めるCおよびNの
合量の割合は表3の目標含有量と実質的に同じ値を示し
た。また、硬質被覆層を構成する構成層はいずれも目標
層厚と実質的に同じ層厚をもつものであった。
【0010】つぎに、上記本発明被覆超硬工具1〜9お
よび比較被覆超硬工具1〜6について、 被削材:JIS・SCM440(硬さ:HB 220)の
丸棒、 切削速度:400m/min.、 切込み:3mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:10分、 の条件での合金鋼の乾式高速連続切削試験、並びに、 被削材:JIS・SNCM439(硬さ:HB 250)
の角材、 切削速度:300m/min.、 切込み:3mm、 0送り:0.2mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験を行い、いず
れの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。これ
らの測定結果を表6に示した。また、上記本発明被覆超
硬工具9、10および比較被覆超硬工具7、8につい
て、 被削材:幅100mm×長さ500mmの寸法をもった
JIS・S25C(硬さ:HB 150)の角材、 切削速度:300m/min.、 切込み:2mm、 送り:0.15mm/刃、 切削時間:10分、 の条件での軟鋼の乾式高速フライス切削試験を行い、切
刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果も表6に示
した。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】
【表4】
【0015】
【表5】
【0016】
【表6】
【0017】
【発明の効果】表4〜6に示される結果から、硬質被覆
層がAl2 3 層と隣接してTi2 3 主体層を配置し
た層構造をもつ本発明被覆超硬工具1〜12は、Ti2
3 主体層の形成がない比較被覆超硬工具1〜8に比し
て、硬質被覆層における構成層相互間の密着性にすぐれ
ているので、苛酷な切削条件となる鋼の高速連続切削や
高速断続切削にも硬質被覆層に剥離の発生なく、すぐれ
た切削性能を長期に亘って発揮するのに対して、比較被
覆超硬工具1〜8においては、Ti化合物層とAl2
3 層との層間密着性が不十分なために比較的短時間で硬
質被覆層にいずれも剥離が発生し、これが原因で使用寿
命に至ることが明らかである。上述のように、この発明
の被覆超硬工具は、これの硬質被覆層の構成層が相互間
ですぐれた層間密着性を有するので、例えば鋼や鋳鉄な
どの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、
特にこれらの切削を高速で行っても、長期に亘ってすぐ
れた切削性能を発揮し、したがって切削加工の高速化に
十分に対応でき、かつ省力化にも寄与するものである。
フロントページの続き (72)発明者 中村 惠滋 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテリ アル株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 3C046 FF03 FF10 FF17 FF19 FF22 FF25 FF32 FF40 FF42 4K030 AA03 AA10 AA14 AA17 AA18 AA24 BA18 BA24 BA35 BA36 BA38 BA41 BA43 BA46 BB12 CA03 JA01 LA22

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体の表面
    に、 いずれも0.1〜15μmの平均層厚を有する、炭化チ
    タン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、炭酸化チタン
    層、窒酸化チタン層、および炭窒酸化チタン層のうちの
    1種または2種以上からなるTi化合物層と、 0.5〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム
    層と、 0.1〜5μmの平均層厚を有する、主体が三酸化二チ
    タンからなり、かつ酸素以外の非金属元素として炭素お
    よび窒素を、合量で、酸素との合量に占める割合で1〜
    20原子%含有する三酸化二チタン主体層、で構成さ
    れ、かつ前記三酸化二チタン主体層が少なくとも前記酸
    化アルミニウム層に隣接して配置された層構造をもった
    硬質被覆層を3〜25μmの全体平均層厚で化学蒸着お
    よび/または物理蒸着してなる、硬質被覆層がすぐれた
    層間密着性を有する表面被覆超硬合金製切削工具。
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