JP2000109713A - 熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた免震支承装置 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた免震支承装置

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JP2000109713A
JP2000109713A JP10287737A JP28773798A JP2000109713A JP 2000109713 A JP2000109713 A JP 2000109713A JP 10287737 A JP10287737 A JP 10287737A JP 28773798 A JP28773798 A JP 28773798A JP 2000109713 A JP2000109713 A JP 2000109713A
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seismic isolation
sliding plate
thermoplastic elastomer
bearing device
isolation bearing
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Yoshihiro Soeda
善弘 添田
Shuichi Onoi
秀一 尾ノ井
Shigeru Yamauchi
茂 山内
Hiroyuki Kaido
博幸 海藤
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Yokohama Rubber Co Ltd
Original Assignee
Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】歪みと応力がほぼリニアな関係にあり、柔軟な
熱可塑性エラストマー組成物であって、振動吸収性能に
優れるため、特に振動吸収性材料に好適に用いられる熱
可塑性エラストマー組成物の提供。 【解決手段】連続相が熱可塑性樹脂であり分散相が動的
に架橋されたゴム組成物である熱可塑性エラストマー組
成物であって、応力−歪み曲線の1次微分の値M′が2
5%伸長時から破断時までの全域において25%伸長当
たり0〜3.0MPaの範囲にあり、該応力−歪み曲線
における100%伸長時および400%伸長時の応力の
値M100 およびM400 が、1.5<M400 /M100
3.0という関係式を満たす熱可塑性エラストマー組成
物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歪みと応力がほぼ
リニアな関係にあり、柔軟な熱可塑性エラストマー組成
物であって、振動吸収性能に優れるため、特に振動吸収
性材料に好適に用いられる熱可塑性エラストマー組成物
に関する。また、本発明は、上記熱可塑性エラストマー
組成物を利用した免震支承装置に関する。
【0002】
【従来の技術】免震支承装置等に用いられる振動吸収性
材料としては、従来から天然ゴムが用いられてきたが、
より振動吸収性能が大きいものが望まれている。現在ま
で、ゴム以外の材料としてシリコン(特開平5−261
865号公報)、ウレタン(特開平4−103345号
公報)、液状ゴム(特開平4−103345号公報)等
が提案されている。一方、ゴムの振動吸収性能を向上さ
せるために、ジシクロペンタジエン等の石油樹脂を混合
する材料も提案されているが(特開昭64−48951
号公報)、振動吸収性能の温度依存性が大きく、低温
(−10℃)と高温(40℃)との振動吸収性能の相違
が大である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、歪みと応力
がほぼリニアな関係にあり、柔軟な熱可塑性エラストマ
ー組成物であって、広い温度範囲において振動吸収性能
に優れるため、特に振動吸収性材料に好適に用いられる
熱可塑性エラストマー組成物を提供することを課題とす
る。また、本発明は、広い温度範囲において振動吸収性
能に優れる、上記熱可塑性エラストマー組成物を利用し
た免震支承装置を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、連続相が
熱可塑性樹脂であり分散相が動的に架橋されたゴム組成
物である熱可塑性エラストマー組成物であって、応力−
歪み曲線の1次微分の値M′が25%伸長時から破断時
までの全域において25%伸長当たり0〜3.0MPa
の範囲にあり、該応力−歪み曲線における100%伸長
時および400%伸長時の応力の値M100 およびM400
が、1.5<M400 /M100 <3.0という関係式を満
たす熱可塑性エラストマー組成物を提供する。第2の発
明は、鉄合金、銅またはその合金、ポリテトラフルオロ
エチレンおよび黒鉛のうち少なくとも1つからなる複数
の摺動板を互いに摺動可能となるように上下方向に積み
重ねた摺動板積層体と、該摺動板積層体の周囲に設けら
れる上記熱可塑性エラストマー組成物からなるエラスト
マー層と剛性板とを上下方向に交互に接着・積層してな
る可撓性支承体とを有し、該摺動板積層体と該可撓性支
承体とが共同して荷重を支える構造とする免震支承装置
を提供する。第3の発明は、環状摺動板を互いに摺動可
能となるように上下方向に積み重ねた摺動板積層体と、
該摺動板積層体の周囲に設けられる上記熱可塑性エラス
トマー組成物からなるエラストマー層と剛性板とを上下
方向に交互に接着・積層してなる可撓性支承体と、該摺
動板積層体の中心孔を上下方向に貫通するように挿入さ
れた運動エネルギーを吸収する弾塑性部材とからなり、
該摺動板積層体と該可撓性支承体との間に環状の中空部
が設けられ、該摺動板積層体と該可撓性支承体とが共同
して荷重を支える構造とする免震支承装置を提供する。
【0005】以下に、第1の発明から第3の発明につい
て更に詳細に説明する。第1の発明は、連続相が熱可塑
性樹脂であり分散相が動的に架橋されたゴム組成物であ
る。本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、硬質相(ハー
ドセグメント、拘束相)と軟質ゴムの軟質相(ソフトセ
グメント)からなり、常温でゴムとしての性質を示す
が、高温で熱可塑性を示すポリマーであり、熱可塑性エ
ラストマーとも呼ばれる。例えば、ポリウレタン系で
は、短鎖グリコールジイソシアナートをハードセグメン
トとし、長鎖ポリオールをソフトセグメントとするも
の、ウレタンおよびウレア結合に富んだハードセグメン
トとポリエーテルを主とするソフトセグメントとからな
るものがある。ポリエステル系は、ポリブチレンテレフ
タレートをハードセグメントとし、長鎖のポリオールや
ポリエステルをソフトセグメントとするものがある。フ
ッ素ポリマー系は、フッ素樹脂成分をハードセグメント
とし、フッ素ゴム成分をソフトセグメントとするものが
ある。ポリアミド系は、ナイロンをハードセグメントと
し、ポリテトラメチレングリコールをソフトセグメント
とするものがある。なかでも、1種類以上の結晶性のハ
ードセグメントと1種類以上の非結晶性のソフトセグメ
ントの共重合体であるポリアミド系、ポリウレタン系ま
たはポリエステル系の熱可塑性樹脂であるのが好まし
い。ゴム組成物は、特に限定されず、天然ゴム、イソプ
レンゴム、高シス−ブタジエンゴム、低シス−ブタジエ
ンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタ
ジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチル
ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレ
ン−ジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アク
リルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリ
コーンゴム、ふっ素ゴム、ウレタンゴム等から選ばれる
1種以上を用いることができる。
【0006】第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
におけるゴム組成物の含有量は、熱可塑性樹脂とゴム組
成物の粘度比に依存するが、熱可塑性樹脂100重量部
に対して、70〜350重量部であることが好ましい。
これよりゴム組成物が少ないと、弾塑性体としての性質
が小さくなりやすく、多いと製造において混練時の粘度
が高くなって混練が困難になりやすい。
【0007】熱可塑性樹脂を連続相とし、ゴム組成物を
分散相とするためには、熱可塑性樹脂(A)およびゴム
組成物(B)の体積率(φ)と粘度(η)が、以下の関
係を満たすようにする。 (φB /φA )/(ηB /ηA )<1 ここで、 φA :成分(A)の体積分率 φB :成分(B)の体積分率 ηA :混練温度、せん断速度条件における成分(A)の
溶融粘度 ηB :混練温度、せん断速度条件における成分(B)の
溶融粘度 である。体積率とは、全体の体積を1とした場合のある
相の全体の体積に占める割合を体積分率で示したもので
あり、φA +φB =1である。粘度はキャピラリ・レオ
メータにより測定される粘度である。なお、体積および
粘度は、混練時の温度で規定される。
【0008】架橋剤の種類や動的な架橋の条件(温度、
時間)等は、適宜決定すればよく、特に限定はない。架
橋剤は、一般的なゴム架橋剤を用いることができるの
で、配合するゴム組成物に応じて適宜選定して用いれば
よい。具体的には、イオウ系架橋剤としては粉末イオ
ウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、
不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキ
ルフェノールジサルファイド等が挙げられ、例えば、ゴ
ム組成物100重量部に対して、0.5〜4重量部程度
を用いればよい。また、有機過酸化物系の架橋剤として
は、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパー
オキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイ
ド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオ
キシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−
ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられ、例え
ば、ゴム組成物100重量部に対して、1〜15重量部
程度を用いればよい。さらに、フェノール樹脂系の架橋
剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩
化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフ
ェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が挙げられ、例
えば、ゴム組成物100重量部に対して、1〜20重量
部程度を用いればよい。その他、亜鉛華(ゴム組成物1
00重量部に対して、5重量部程度)、酸化マグネシウ
ム(同じく4重量部程度)、リサージ(同じく10〜2
0重量部程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾ
イルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノ
ン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(同じく2〜10重
量部程度)、メチレンジアニリン(同じく0.2〜10
重量部程度)等が挙げられる。
【0009】また、必要に応じて、架橋促進剤、補強
剤、老化防止剤、加工助剤その他の配合剤を添加するこ
とができる。
【0010】第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
は、JIS K6251に準拠して引張試験を行った際
の応力−歪み曲線の1次微分の値M′が25%伸長時か
ら破断時までの全域において25%伸長当たり0〜3.
0MPaの範囲にあり、該応力−歪み曲線における10
0%伸長時および400%伸長時の応力の値M100 およ
びM400 が、1.5<M400 /M100 <3.0という関
係式を満たす。振動吸収性材料の一つの用途である免震
支承装置は、地震初期の小さな揺れに対しても、その振
動を吸収する性能を有する必要がある。一般の熱可塑性
樹脂の場合は、応力−歪み曲線の歪みが小さい領域にお
いては応力の増加が大きく、歪みがある大きさを超える
と急に応力の増加が小さくなる。即ち、歪みが小さい領
域においては剛体に近い挙動を示し、振動吸収性能が低
い。一方、一般のゴムは、応力−歪み曲線の歪みが小さ
い領域においては応力の増加が小さいが、歪みがある大
きさを超えると急に応力の増加が大きくなる。即ち、歪
みが大きい領域においては剛体に近い挙動を示し、振動
吸収性能が低い。これに対し、本発明の熱可塑性エラス
トマー組成物は、前記応力−歪み曲線の1次微分の値
M′が25%伸長時から破断時までの全域において25
%伸長当たり0〜3.0MPaの範囲にあるので、歪み
が小さい領域における応力の増加が比較的小さく、弾塑
性体としての挙動を示すので、振動吸収性能が高い。ま
た、歪みが大きい領域においても急激に応力の増加が大
きくなることはなく、高い振動吸収性を示す。
【0011】また、本発明の熱可塑性エラストマー組成
物は、前記応力−歪み曲線における100%伸長時およ
び400%伸長時の応力の値M100 およびM400 が、
1.5<M400 /M100 <3.0という関係式を満たす
ので、伸びが100%〜400%の範囲で適度な応力の
増加を示し、振動吸収性材料として好適に利用できる。
ここで、100%伸長時の応力の値M100 が0.5〜
5.0MPaの範囲にあるのが好ましい。この範囲であ
ると、応力と歪みの関係が振動吸収性材料として好適に
なるからである。
【0012】第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
においては、前記ゴム組成物が動的に架橋されている。
即ち、熱可塑性樹脂とゴム組成物とを混練しながらゴム
組成物の架橋を進行させてなるものである。このような
製法を利用することにより、得られた熱可塑性エラスト
マー組成物は、少なくとも一部が連続相となる熱可塑性
樹脂相に少なくとも一部が不連続相となる架橋ゴム組成
物相が微細に分散した状態となる。
【0013】第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
の製造において、熱可塑性樹脂、ゴム組成物および充填
剤の混練に使用する機械には特に限定はないが、スクリ
ュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出
機等が例示される。なかでも動的架橋して、熱可塑性エ
ラストマー組成物を得ることを考慮すると、2軸混練押
出機を使用するのが好ましい。また、2種類以上の混練
機を使用し、順次混練してもよい。
【0014】以下、通常行われる2軸混練押出機による
混練に基づいて、製造方法の一例をより具体的に例示す
る。まず、2軸混練押出機の第1の投入口から、ペレッ
ト状に成形した熱可塑性樹脂を投入し、2軸スクリュー
によって加熱、溶融する。
【0015】一方、ゴム組成物はバンバリミキサー等の
ゴム用混練機を用い、必要に応じて補強剤、可塑剤、老
化防止剤、加工助剤等を添加して混練した後、架橋系を
含まない、いわゆるマスターバッチとし、ゴム用ペレタ
イザーでペレット化して調製しておく。前述のように、
熱可塑性樹脂を2軸混練押出機で加熱、溶融した後、こ
のように予めペレット化したゴム組成物を2軸混練押出
機の第2の投入口から投入し、熱可塑性樹脂中にゴム組
成物を分散させる。
【0016】この後、2軸混練押出機の第3(第4)の
投入口から架橋剤、またはさらに架橋助剤を投入し、混
練下に、ゴム組成物を架橋させる。このようにすると、
ゴム組成物を熱可塑性樹脂に十分に分散させた状態で、
しかもゴム組成物が十分に微細な状態のまま架橋を行う
ことができ、連続相をなす樹脂中に、分散相としてゴム
組成物が安定に分散するようになる。このような熱可塑
性エラストマー組成物において、分散相である架橋ゴム
組成物の粒子径が50μm以下であるのが好ましく、1
〜10μmであるのがより好ましい。
【0017】また、補強剤、軟化剤、老化防止剤等の配
合剤を添加する場合は、ゴム組成物への配合剤は上記混
練中に添加してもよいが、架橋剤以外の配合剤は上記混
練の前に予め混合しておくのが好ましい。熱可塑性樹脂
への配合剤は、上記混練の前に予め混合しておいてもよ
く、また、上記混練中に添加してもよい。
【0018】混練の条件としては、混練温度は好ましく
は100〜400℃、特に好ましくは150〜250℃
であり、混練時のせん断速度は好ましくは500〜75
00秒-1、特に好ましくは1000〜4000秒-1であ
り、溶融混練全体の時間は好ましくは30秒〜10分で
ある。架橋剤は混練の始めから添加してもよく、途中で
添加してもよい。
【0019】このようにして得られた第1の発明の熱可
塑性エラストマー組成物は、歪みの大小によらず歪みと
応力がほぼリニアな関係にあり、柔軟であって、広い温
度範囲において振動吸収性能に優れる。第1の発明の熱
可塑性エラストマー組成物の用途は特に限定されない
が、振動吸収性材料に好適に用いられる。例えば、押出
機で成形した前記熱可塑性エラストマー組成物と剛性板
等とを接着剤を介して接合して免震積層体を製造するこ
とができる。また、射出成形機で前記熱可塑性エラスト
マー組成物と剛体板等とを一体成形して免震積層体を製
造することができる。これらの場合、熱可塑性エラスト
マー組成物からなるエラストマー層と剛性板等とを交互
に積層する態様がより好適である。これらの免震積層体
は、振動吸収特性に優れ、簡易な工程で、安価に量産す
ることができるので、免震支承装置として、または免震
支承装置の部材として好適に用いることができる。ま
た、通常、射出成形等において発生するゴム片等は廃棄
しているが、本発明の免震積層体の成形の際に発生する
ものは熱可塑性であるので、回収後、加熱溶融すること
により容易に再利用することができるので経済的である
という利点もある。
【0020】以下に本発明の熱可塑性エラストマー組成
物を用いて免震支承装置を形成した例を示すが、本発明
の組成物はこれらの装置以外のいかなる支承装置のエラ
ストマー層にも好適に用いることができる。
【0021】第2の発明の免震支承装置は、鉄合金、銅
またはその合金、ポリテトラフルオロエチレンおよび黒
鉛のうち少なくとも1つからなる複数の摺動板を互いに
摺動可能となるように上下方向に積み重ねた摺動板積層
体と、該摺動板積層体の周囲に設けられる上記熱可塑性
エラストマー組成物からなるエラストマー層と剛性板と
を上下方向に交互に接着・積層してなる可撓性支承体と
を有し、該摺動板積層体と該可撓性支承体とが共同して
荷重を支える構造とする。
【0022】この免震支承装置によれば、摺動板が鉄合
金、銅またはその合金、ポリテトラフルオロエチレン、
黒鉛のように摩擦係数が比較的高く、かつ鉛直方向の受
圧力の高い材料で形成されているので、可撓性支承体に
水平方向の変位が生じた際に、エラストマー層と摺動板
積層体が共に作用するため、構造物に対して振動を伝え
ることなく吸収し、地震動に対しては十分な減衰効果を
生じる。
【0023】また、前記摺動板積層体と前記可撓性支承
体との間に環状の中空部が設けられることが好ましい。
環状の中空部があると、可撓性支承体の中空部に積層さ
れている環状摺動板は可撓性支承体に水平変位が生じて
も、極めて軽微の地震である場合のようにその水平方向
の変位が非常にわずかである場合は、環状摺動板自体は
その摩擦力も影響して変位を生じないことなり、有効な
トリガー機能が作用する。前記可撓性支承体の剛性板の
中空孔の内径eおよび前記摺動板の外径dが、0<(e
−d)/d<0.3であると、トリガー効果がより有効
となるので好ましい。より好ましくは、0.01<(e
−d)/d<0.1である。この場合において、前記摺
動板は円板または環状板であり、該摺動板の積層数は前
記剛性板の積層数と同数であるか、それより多数である
ことが好ましい。前記摺動板積層体のすべての摺動板は
同一の材質のものからなる。または、前記摺動板積層体
の摺動体のいくつかは他の摺動体と摩擦係数の異なる材
質からなるものであってもよい。
【0024】前記エラストマー層は、前記熱可塑性エラ
ストマー組成物からなる。前記熱可塑性エラストマー組
成物は、歪みと応力がほぼリニアな関係にあり、柔軟で
あって、広い温度範囲において振動吸収性能に優れるの
で、第2の発明の免震支承装置は、様々な条件の下で優
れた振動吸収性能を発揮する。特に、振動吸収性能が歪
みの大小によらないので、架橋した汎用ゴム、特殊ゴ
ム、ウレタンまたは汎用熱可塑性樹脂を使用する場合よ
りも有用である。一方、前記剛性板は鉄または鉄合金か
らなる。前記エラストマー層は前記剛性板に加硫接着、
常温接着その他の方法で固着されているのが好ましい。
【0025】第3の発明の免震支承装置は、環状摺動板
を互いに摺動可能となるように上下方向に積み重ねた摺
動板積層体と、該摺動板積層体の周囲に設けられる上記
熱可塑性エラストマー組成物からなるエラストマー層と
剛性板とを上下方向に交互に接着・積層してなる可撓性
支承体と、該摺動板積層体の中心孔を上下方向に貫通す
るように挿入された運動エネルギーを吸収する弾塑性部
材とからなり、該摺動板積層体と該可撓性支承体との間
に環状の中空部が設けられ、該摺動板積層体と該可撓性
支承体とが共同して荷重を支える構造とする。
【0026】この免震支承装置によれば、更に、振動に
対する減衰特性に優れた、鉛等からなる弾塑性部材が摺
動板積層体の中心孔に挿入されているので、可撓性支承
体に水平方向の変位が生じた際のエネルギー減衰効果
が、摺動板積層体によるものと弾塑性部材によるものと
二重に作用することとなり、より大きな振動減衰効果を
発揮させることができる。
【0027】また、可撓性支承体の中空部の内周面と摺
動板の間に環状の中空部があるので、可撓性支承体の中
空部に積層されている環状摺動板は可撓性支承体に水平
変位が生じても、極めて軽微の地震である場合のように
その水平方向の変位が非常にわずかである場合は、環状
摺動板自体はその摩擦力も影響して変位を生じないこと
なり、有効なトリガー機能が作用する。
【0028】この場合においても、前記環状摺動板は、
鉄合金、銅またはその合金、ポリテトラフルオロエチレ
ンおよび黒鉛のうち少なくとも1つからなるのが好まし
い。
【0029】前記エラストマー層は、前記熱可塑性エラ
ストマー組成物からなる。第3の発明の免震支承装置
は、様々な条件の下で優れた振動吸収性能を発揮し、特
に、振動吸収性能が歪みの大小によらないので、架橋し
た汎用ゴム、特殊ゴム、ウレタンまたは汎用熱可塑性樹
脂を使用する場合よりも有用であるのは、第2の発明の
免震支承装置の場合と同様である。一方、前記剛性板は
鉄または鉄合金からなる。前記エラストマー層は前記剛
性板に加硫接着、常温接着その他の方法で固着されてい
るのが好ましい。
【0030】前記可撓性支承体の剛性板の中空孔の内径
eおよび前記摺動板の外径dが、0<(e−d)/d<
0.3、好ましくは、0.01<(e−d)/d<0.
1である。
【0031】また、前記エラストマー層の厚さの総和
x、前記剛性板の厚さの総和y、前記環状摺動板の厚さ
aおよびそのリング幅b(=(外径−内径)/2)が、
3*x/(x+y)<b/a、好ましくは、4*x/
(x+y)<b/aである。
【0032】更に、前記環状摺動板の内径cおよび前記
弾塑性部材の外径pが、0<(c−p)/p<0.3、
好ましくは、0.01<(c−p)/p<0.15であ
る。
【0033】可撓性支承体の剛性板、環状摺動板及び弾
塑性部材の寸法を上記のように規定することにより、こ
れらの三者間の隙間等が最適の範囲に設定できることと
なる。可撓性支承体に水平方向の変位が生じた際に、変
位が微少である場合は、その変位が弾塑性部材の一部と
摺動板積層体および剛性板とエラストマー層の積層部位
に伝わる。一方、変位が大である場合は、その変位が弾
塑性部材の全体と摺動板積層体および剛性板とエラスト
マー層の積層部位に伝わる。上記変位の大小の区別は、
前記式0<(c−p)/p<0.3で規定され、この設
定により、水平方向の変位を与える際に最適なトリガー
効果を与えることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して第2の
発明および第3の発明の実施の形態について詳細に説明
する。図1は第2の発明の免震支承装置を示す縦断面図
である。図において、可撓性支承体10は前記熱可塑性
エラストマー組成物からなる環状のエラストマー層11
と薄肉鋼材からなる剛性板12とが交互に多数積層され
たものである。
【0035】剛性板12は、鉄または鉄合金で構成する
のが好適である。エラストマー層11と剛性板12とは
加硫接着、常温接着その他の方法で互いに固着・積層さ
れている。特に、加硫工程を必要としない常温接着は、
加硫接着に比べて製造工程が簡易であり、製造コストが
安く、量産もしやすいので好適に用いられる。例えば、
熱可塑性エラストマー組成物を押出機を用いて所定の形
状に成形したエラストマー層11と、剛性板12とを常
温接着剤により接着することができる。常温硬化型接着
剤は、1液型でも2液型でもよく、フェノール系接着
剤、ウレタン系接着剤、変性シリコーン接着剤、ゴム系
接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着
剤等が挙げられる。使用する接着剤の種類は用いる熱可
塑性エラストマー組成物および剛性板の種類、必要とさ
れる接着力等に応じて適宜決定される。また、射出成形
機を用いて熱可塑性エラストマー組成物を剛性板12の
上に射出して成形することもできる。これらの場合のよ
うに常温接着によれば、加硫時に熱可塑性エラストマー
組成物が流動してエラストマー層11の厚さが不均一に
なるような不都合は解消され、積層体内のすべてのエラ
ストマー層11の厚さを均一にすることができる。従っ
て、すべてのエラストマー層11に均一なせん断応力が
加わり、免震支承装置としての特性が優れる。
【0036】ここで鉄合金は、純鉄および鉄と炭素等か
らなる合金を指している。従って、鉄および鉄合金に
は、純鉄、軟鉄・鋼(普通鋼、炭素鋼、特殊鋼、合金鋼
等)・鋳鉄または銑鉄等の鉄鋼等を例示することができ
る。しかし、本発明で使用される鉄または鉄合金は、こ
れらに限定されるものではない。
【0037】可撓性支承体10の上端面と下端面にはそ
れぞれ環状の上面板14と、下面板16とが同心状に接
着して、中空円筒状に成形される。可撓性支承体10の
上面板14と下面板16には、それぞれ受圧板15、1
7がボルト18、19によって取り付けられ、可撓性支
承体10の上下両端を閉塞している。
【0038】可撓性支承体10の中空部13には、中空
部13の高さとほぼ同一の高さに積層した複数枚の摺動
板20が可撓性支承体10の中空部13の内周面との間
にわずかな隙間25を保って収容されている。この摺動
板20は、圧縮力に対して高い受圧力を有する材料、即
ち、鉄合金、銅またはその合金、ポリテトラフルオロエ
チレンおよび黒鉛のうち、いずれかの材料により平板状
に成形されており、積層された状態で比較的高い摩擦係
数をもって相互に接触しているとともに、互いに水平方
向に摺動できるようになっている。
【0039】摺動板20はすべて同一の材質のものであ
ってもよく、摺動板20のいくつかを他の摺動板と摩擦
係数の異なる材質のものを選定し、摺動板20の積層体
が全体として所望の摩擦力を生ずるように調整してもよ
い。
【0040】上記構成の免震支承装置を建物等の構造物
と地盤等の床面との間に設置した場合、鉛直方向に負荷
される荷重は、平常時の直立状態においては、可撓性支
承体10の全平面と、中空部13に積層されている摺動
板20の全平面との双方の面積で支持されるから、可撓
性支承体10は全荷重を部分的に負担すればよく、可撓
性支承体10が受ける圧縮応力は摺動板のない単なる中
空体の場合よりも小さくなる。
【0041】また、地震が発生した場合は、図2および
図3に示すように、可撓性支承体10が水平方向に変位
して傾斜するが、これに伴って可撓性支承体10が水平
方向の力を受ける側の内周面によって摺動板20に押圧
力が加えられるため、この押圧力により摺動板20が相
互に摺動しながら水平方向に移動し、可撓性支承体10
の変形時の形状と同一形状に傾斜した段階状になる。
【0042】このように可撓性支承体10が水平方向に
変位したときは、固定されている下端面22に対して水
平変位した上端面21を鉛直下方に投影した重なり部分
の面積24のうち、可撓性支承体10の重なり面積24
aによって鉛直方向の荷重の一部を可撓性支承体10が
支持し、その余の大部分の荷重は可撓性支承体10の重
なり面積24aを除いた部分の重なり面積24bによっ
て摺動板20が支持するから、この場合においても可撓
性支承体10に生ずる圧縮応力が増大することはない。
【0043】従って、可撓性支承体10が中空状に成形
されていても、摺動板20を積層しない単なる中空体と
は異なり、鉛直荷重に対してセット性が悪い熱可塑性エ
ラストマー組成物に起因する、鉛直荷重による可撓性支
持体10の圧縮歪みの増加が小さいためクリープ現象を
大幅に低減することができる。この免震支承装置の作用
時において、可撓性支承体10の中空部に積層されてい
る摺動板20が可撓性支承体10の水平変位に伴って水
平移動しても、摺動板20それ自体には原形状態に復元
する力はないから、可撓性支承体10の水平ばね定数に
は何らの影響も与えない。また、その場合において、摺
動板20が前述のように鉄合金または銅合金、ポリテト
ラフルオロエチレン、黒鉛等のように摩擦係数の高い材
料からなるので、水平方向に力が加わったとき、摺動板
20の摺動によるエネルギー吸収と可撓性支承体10で
のエネルギー吸収が同時に生じることとなって、高い振
動エネルギー吸収効果を発現することとなる。
【0044】図4は第3の発明の免震支承装置を示す縦
断面図であり、図5は第3の発明の作用時の縦断面図で
ある。第2の発明と同様に、可撓性支承体10は前記熱
可塑性エラストマー組成物からなる環状のエラストマー
層11と薄肉の剛性板12とを交互に多数積層し、上端
面と下端面にそれぞれ環状(ワッシャー状)の上面板1
4と、下面板16を同心状に接着し、それぞれ受圧板1
5、17をボルト18、19によって取り付け、上下両
端を閉塞したものである。
【0045】剛性板12の好ましい材料は、上述した第
2の発明と同様である。また、エラストマー層11と剛
性板12の好ましい接着方法等も上述した第2の発明と
同様である。
【0046】各摺動板20は、鉄合金または銅合金、ポ
リテトラフルオロエチレンおよび黒鉛のうち、いずれか
の材料からなる点は第2の発明の場合と同様であるが、
第3の発明では、各摺動板20は環状の薄板、即ちワッ
シャー状に形成されている。ワッシャー状摺動板20の
積層体によって形成される中心孔32を上下方向に貫通
するように運動エネルギーを吸収する「鉛プラグ」と称
される鉛からなる弾塑性部材30が挿入される。鉛は、
振動吸収特性の温度依存性が小さいので弾塑性部材30
の材料として好適である。そして、摺動板20の積層体
の中心孔32の内周面と弾塑性部材30との間にはわず
かな隙間34が残るようにされる。なお、可撓性支承体
10の中空部13の内周面と摺動板20の間にわずかな
隙間25があるのは第2の発明の場合と同様である。
【0047】これらの隙間25および34は次のように
設定される。即ち、図5において各種の寸法を示すが、
可撓性支承体10の剛性板12の中空部30の内径eお
よびワッシャー摺動板20の外径dが、0<(e−d)
/d<0.3、好ましくは、0.01<(e−d)/d
<0.1であるようにする。
【0048】また、ワッシャー状摺動板20の内径cお
よび弾塑性部材30の外径pが、0<(c−p)/p<
0.3、好ましくは、0.01<(c−p)/p<0.
15であるようにする。
【0049】この免震支承装置の作用時において、可撓
性支承体10の中空部13の内周面と摺動板20の間に
わずかな隙間25があるので、可撓性支承体10の中空
部に積層されているワッシャー状摺動板20は可撓性支
承体10に水平変位が生じても、極めて軽微の地震であ
る場合のようにその水平方向の変位が非常にわずかであ
る場合は、ワッシャー状摺動板20自体はその摩擦力に
も影響して変位を生じないこととなり、有効なトリガー
機能が作用する。
【0050】更にまた、第3の発明では、ワッシャー状
摺動板20の積層体の中心孔32の内周面と弾塑性部材
30との間には上述のようなわずかな隙間34があるの
で、ワッシャー状摺動板20の積層体が地震動により水
平変位が生じても、それが極めて軽微である場合は、弾
塑性部材30には変位を生じないこととなり、トリガー
機能が段階的に作用する。
【0051】次に、この免震支承装置における上下方向
の寸法関係は次のように設定するのが好ましい。即ち、
可撓性支承体10のエラストマー層11の厚さの総和
x、剛性板12の厚さの総和y、ワッシャー状摺動板の
厚さaおよびそのリング幅b(=(外径−内径)/2)
が、3*x/(x+y)<b/a、好ましくは、4*x
<(x+y)<b/aであるようにする。このように規
定することで、この図5に示す免震支承装置の作用時に
おいて、可撓性支承体10に所定の水平方向の変位が生
じても、ワッシャー状摺動板20は座屈を生ずることが
なく、かつ鉛からなる弾塑性部材30がワッシャー状摺
動板20の積層体の中心孔32からはみ出す恐れはなく
なる。なお、図5において、弾塑性部材30の高さhは
エラストマー層11の厚さの総和xと剛性板12の厚さ
の総和yとの和(x+y)に等しいものとする。
【0052】なお、エラストマー層11の数は2〜20
0の範囲内に設定され、剛性板12の数は上下両端部が
エラストマー層とされるため、エラストマー層11の層
数より1つ小さい数とされる。
【0053】第3の発明では、鉛直方向に負荷される荷
重は、平常時の直立状態においては、可撓性支承体10
の全平面と、中空部13に積層されているワッシャー状
摺動板20の全平面との双方の面積でほとんど支持され
る。これに対し、弾塑性部材30の面積は比較的小さい
ので、荷重の負担には余り寄与しないが、可撓性支承体
10およびワッシャー状摺動板20の積層体に比べては
るかに減衰効果が大きく、減衰効果に寄与している。
【0054】第3の発明の環状摺動板は、鉄またはその
合金、アルミニウムまたはその合金、鉄合金、銅または
その合金、ポリテトラフルオロエチレンおよび黒鉛のう
ち少なくとも1つからなる。ここで、上記鉄合金は、純
鉄および鉄と炭素等からなる合金を指している。従っ
て、本発明の鉄および鉄合金には、純鉄、軟鉄・鋼(普
通鋼、炭素鋼、特殊鋼、合金鋼等)・鋳鉄または銑鉄等
の鉄鋼等を例示することができるが、これらに限定され
るものではない。一方、上記銅合金は、Cu−Zn系の
黄銅、Cu−Zn−Pb系の鉛入り黄銅、Cu−Zn−
Sn系のスズ入り黄銅、Cu−Sn−P系のリン青銅、
Cu−Al系のアルミニウム青銅、Cu−Ni系のキュ
プロニッケル、Cu−Ni−Zn系の洋白、Cu−Be
系のベリリウム銅、Cu−Ti合金、Cu−Cr合金、
Cu−Zr合金、Cu−Sn系のスズ青銅等およびこれ
らに少量の合金元素を添加した合金等を例示することが
できる。しかし、本発明で使用される鉄合金または銅合
金は、これらに限定されるものではない。更に、摩擦係
数を高めるために、これらの材料の表面に凹凸を付与し
たり、他の材料等により表面処理したりすることもでき
る。
【0055】以上、添付図面を参照して第2の発明およ
び第3の発明の実施形態について詳細に説明したが、こ
れらの発明は上記の実施形態に限定されるものではな
く、これらの発明の精神ないし範囲内において種々の形
態、変形、修正等が可能であることに留意すべきであ
る。
【0056】
【実施例】以下に実施例を示して本発明について具体的
に説明するが、本発明はこれらに限られるものではな
い。 <熱可塑性エラストマー組成物の調製>以下に示される
原料をそれぞれ第1表に示される重量比で用いて、以下
のようにして、第1表に示される各熱可塑性エラストマ
ー組成物を得た。2軸混練押出機に、ペレット状に成形
した熱可塑性樹脂を投入し、2軸スクリューによって加
熱、溶融した。次に、ゴム組成物ならびに、架橋剤およ
び架橋促進剤以外の各種配合剤を投入し、樹脂中に分散
させ、この後、架橋剤および架橋促進剤を投入し、混練
下にゴム組成物を架橋させて熱可塑性エラストマー組成
物を得た。混練条件は、温度150〜250℃、せん断
速度1000〜4000秒-1、溶融混練全体の時間は3
0秒〜10分であり、架橋剤および架橋促進剤を添加し
た後の架橋時間は10〜60秒であった。 (1)熱可塑性樹脂 ポリアミド系熱可塑性樹脂1:PEBAX2533、
東レ社製 ポリアミド系熱可塑性樹脂2:PEBAX3533、
東レ社製 ポリアミド系熱可塑性樹脂3:PEBAX4033、
東レ社製 ポリプロピレン:RV421、トクヤマ社製 (2)ゴム組成物 臭素化ブチルゴム:Exxpro89−4、エクソン
化学社製 エチレン−ポリプロピレン−ジエンゴム(EPD
M):EPT4070、三井化学社製 (3)可塑剤 オイル:サンパー2280、日本サンオイル社製 (4)架橋剤および架橋促進剤 ステアリン酸 亜鉛華3号 ステアリン酸亜鉛 フェノール樹脂:タッキロール250−1、田岡化学社
製 <引張試験>得られた各熱可塑性エラストマー組成物を
2軸混練押出機から連続的にストランド状に排出し、水
冷後、カッターで長さ約3mm、直径約2mmに切断
し、ペレット状にした後、JIS K6251に準拠し
て引張試験を行い、応力−歪み曲線を得た(図7)。1
00%伸長時および400%伸長時の応力の値M100
よびM400 、ならびにその比M400 /M100 を第1表に
示す。また、前記応力−歪み曲線の1次微分曲線を求め
た(図8)。
【0057】<免震支承装置の製造>得られた各熱可塑
性エラストマー組成物を押出機を用いて、厚さ0.3c
m、内径9.0cm、外径13.0cm角の所定の形状
に成形した。これを4枚得た。一方、厚さ0.32c
m、内径9.0cm、外径13cm角の鋼板に、予めサ
ンドブラストにより表面処理を施した後、脱脂して、表
面処理鋼板3枚を得た。上述のようにして得た熱可塑性
エラストマー組成物と表面処理鋼板に、接着剤(ウレタ
ン系接着剤/ゴム系接着剤=30/70(重量比))を
塗布して交互に積層し、接着剤を常温硬化させて各種免
震支承装置を得た。
【0058】<振動吸収特性試験>上記において作製し
た各免震支承装置について、建設省土木研究所「道路橋
の免震設計法マニュアル(案)」p.32に記載の等価
線形モデルの計算式に基づき、せん断弾性係数(G)と
等価減衰定数(hB )を算出して、振動吸収特性として
評価した。せん断歪みが175%の時のせん断弾性係数
(G)と等価粘性減衰定数(hB )の値を第1表に示し
た。
【0059】
【表1】
【0060】第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
(実施例1〜6)は、歪みと応力がリニアな関係にあ
り、柔軟であることが、図7、図8および第1表から分
かる。また、第1の発明の熱可塑性エラストマー組成物
を利用した第2の発明の免震支承装置は、振動吸収性能
に優れることが第1表から分かる。これに対して、比較
例1は熱可塑性エラストマーのマトリックスがポリプロ
ピレンであるため、鋼板との接着が困難であり、振動吸
収性能を評価できるものではなかった。また、比較例2
はせん断歪みが175%の時のせん断弾性係数(G)の
値が大きく、剛体に近い挙動を示し、振動吸収性能が低
い。なお、参考例1は熱可塑性エラストマー中のゴム分
率が高いため、インジェクション成形で良好なシート作
成ができなかった。
【0061】
【発明の効果】以上に説明したように第1の発明の熱可
塑性エラストマー組成物は、歪みが小さい領域および大
きい領域の両方において、高い振動吸収性を示すので、
振動吸収性材料として有用である。また、第1の発明の
熱可塑性エラストマー組成物から、押出機や射出成形機
を用いることにより、振動吸収特性に優れる各種の免震
積層体を、簡易な工程で、安価に量産することができ
る。
【0062】第2および第3の発明では、免震支承装置
に最適なトリガー効果を与えることにより、軽微な地震
動に対しては、構造物に対して振動を伝えることなく吸
収し、強度の地震動に対しては充分な振動減衰効果を生
じさせることができ、各種の建造物に対して有効な免震
支承装置が得られる。また、これらの免震支承装置は、
押出機や射出成形機を用いることにより、簡易な工程
で、安価に量産することができるので有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第2の発明の免震支承装置の縦断面図であ
る。
【図2】 図1に示した可撓性支承体の水平変位時の状
態を示す平面図である。
【図3】 図2の状態における可撓性支承体及び摺動板
積層体の縦断面図である。
【図4】 第3の発明の免震支承装置の縦断面図であ
る。
【図5】 図4に示した可撓性支承体の水平変位時の状
態を示す平面図である。
【図6】 第3の発明における免震支承装置の各部分の
寸法を示す図であり、(A)は免震支承装置の平面図、
(B)はワッシャー状摺動板の断面図、(C)は弾塑性
部材の側面および平面図である。
【図7】 各種熱可塑性エラストマー組成物の応力−歪
み曲線を示す図である。
【図8】 図7の曲線の1次微分曲線を示す図である。
【符号の説明】
10…可撓性支承体 11…エラストマー層 12…剛性板 13…中空部 14、16…上下面板 15、17…受圧板 20…摺動板、ワッシャー状摺動板 25…隙間 30…弾塑性部材(鉛プラグ) 32…摺動板積層体の内周 34…隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16F 7/08 F16F 7/08 15/04 15/04 A (72)発明者 山内 茂 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム株 式会社平塚製造所内 (72)発明者 海藤 博幸 神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム株 式会社平塚製造所内 Fターム(参考) 3J048 AD16 BD04 EA38 3J066 AA26 BA04 BB01 BB04 BC05 BD05 4J002 AC01X AC04X AC06X AC07X AC08X AC09X BB15X BB18X BB27X BD12W BG04X CF05W CH04X CK02X CK04W CL08W CN02X CP03X FD140 GL00

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】連続相が熱可塑性樹脂であり分散相が動的
    に架橋されたゴム組成物である熱可塑性エラストマー組
    成物であって、応力−歪み曲線の1次微分の値M′が2
    5%伸長時から破断時までの全域において25%伸長当
    たり0〜3.0MPaの範囲にあり、該応力−歪み曲線
    における100%伸長時および400%伸長時の応力の
    値M100 およびM400 が、1.5<M400 /M100
    3.0という関係式を満たす熱可塑性エラストマー組成
    物。
  2. 【請求項2】前記熱可塑性樹脂が結晶性のハードセグメ
    ントと非結晶性のソフトセグメントの共重合体であるポ
    リアミド系、ポリウレタン系またはポリエステル系の熱
    可塑性エラストマーであって、前記熱可塑性樹脂を10
    0重量部、前記ゴム組成物を70〜350重量部含有す
    る請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 【請求項3】前記ゴム組成物が硫黄、過酸化物類、フェ
    ノール類およびアミン類からなる群より選ばれる少なく
    とも1つの架橋剤により架橋されている請求項1または
    2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 【請求項4】前記M100 が0.5〜5.0MPaの範囲
    にある請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラス
    トマー組成物。
  5. 【請求項5】押出機で成形した請求項1〜4のいずれか
    に記載の熱可塑性エラストマー組成物と剛性板とを接着
    剤を介して接合してなる免震積層体。
  6. 【請求項6】射出成形機で請求項1〜4のいずれかに記
    載の熱可塑性エラストマー組成物と剛体板とを一体成形
    してなる免震積層体。
  7. 【請求項7】鉄合金、銅またはその合金、ポリテトラフ
    ルオロエチレンおよび黒鉛のうち少なくとも1つからな
    る複数の摺動板を互いに摺動可能となるように上下方向
    に積み重ねた摺動板積層体と、該摺動板積層体の周囲に
    設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エ
    ラストマー組成物からなるエラストマー層と剛性板とを
    上下方向に交互に接着・積層してなる可撓性支承体とを
    有し、該摺動板積層体と該可撓性支承体とが共同して荷
    重を支える構造とする免震支承装置。
  8. 【請求項8】前記摺動板積層体と前記可撓性支承体との
    間に環状の中空部が設けられる請求項7に記載の免震支
    承装置。
  9. 【請求項9】前記摺動板が円板または環状板であり、該
    摺動板の積層数が前記剛性板の積層数と同数であるか、
    それより多数であることを特徴とする請求項7または8
    に記載の免震支承装置。
  10. 【請求項10】前記摺動板積層体のすべての摺動板が同
    一の材質のものからなることを特徴とする請求項7〜9
    のいずれかに記載の免震支承装置。
  11. 【請求項11】前記摺動板積層体の摺動体のいくつかが
    他の摺動体と摩擦係数の異なる材質からなることを特徴
    とする請求項7〜9のいずれかに記載の免震支承装置。
  12. 【請求項12】前記剛性板が鉄または鉄合金からなるこ
    とを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の免震
    支承装置。
  13. 【請求項13】前記エラストマー層が前記剛性板に加硫
    接着または常温接着で固着されていることを特徴とする
    請求項7〜12のいずれかに記載の免震支承装置。
  14. 【請求項14】環状摺動板を互いに摺動可能となるよう
    に上下方向に積み重ねた摺動板積層体と、該摺動板積層
    体の周囲に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の
    熱可塑性エラストマー組成物からなるエラストマー層と
    剛性板とを上下方向に交互に接着・積層してなる可撓性
    支承体と、該摺動板積層体の中心孔を上下方向に貫通す
    るように挿入された運動エネルギーを吸収する弾塑性部
    材とからなり、該摺動板積層体と該可撓性支承体との間
    に環状の中空部が設けられ、該摺動板積層体と該可撓性
    支承体とが共同して荷重を支える構造とする免震支承装
    置。
  15. 【請求項15】前記弾塑性部材が鉛からなることを特徴
    とする請求項14に記載の免震支承装置。
  16. 【請求項16】前記環状摺動板が鉄合金、銅またはその
    合金、ポリテトラフルオロエチレンおよび黒鉛のうち少
    なくとも1つからなることを特徴とする請求項14また
    は15に記載の免震支承装置。
  17. 【請求項17】前記可撓性支承体の中空部を規定する剛
    性板の中心孔の内径eおよび前記環状摺動板の外径d
    が、0<(e−d)/d<0.3という関係式を満たす
    ことを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の
    免震支承装置。
  18. 【請求項18】前記eおよび前記dが、0.01<(e
    −d)/d<0.1という関係式を満たすことを特徴と
    する請求項17に記載の免震支承装置。
  19. 【請求項19】前記エラストマー層の厚さの総和x、前
    記剛性板の厚さの総和y、前記環状摺動板の厚さaおよ
    びそのリング幅bが、3*x/(x+y)<b/aとい
    う関係式を満たすことを特徴とする請求項14〜18に
    記載の免震支承装置。
  20. 【請求項20】前記環状摺動板の内径eおよび前記弾塑
    性部材の外径pが、0<(c−p)/p<0.3という
    関係式を満たすことを特徴とする請求項14〜19のい
    ずれかに記載の免震支承装置。
  21. 【請求項21】前記弾塑性部材の水平方向の断面積が、
    この免震支承装置の荷重を受ける全断面積の10%以下
    であることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに
    記載の免震支承装置。
  22. 【請求項22】前記摺動板のせん断弾性率(G)が前記
    エラストマー層のせん断弾性率(G′)より大きいこと
    を特徴とする請求項7〜21のいずれかに記載の免震支
    承装置。
JP10287737A 1998-10-09 1998-10-09 熱可塑性エラストマー組成物およびそれを用いた免震支承装置 Withdrawn JP2000109713A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008121799A (ja) * 2006-11-13 2008-05-29 Nitta Ind Corp 免震構造体
JP2010248453A (ja) * 2009-04-20 2010-11-04 Bridgestone Corp 免震構造体の積層ゴム用ゴム組成物

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