JP2000107726A - ゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法 - Google Patents

ゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的簡便な方法で、重金属類の除去及び水
和と部分的な鉱物化による有害成分の安定化を図り、さ
らに付加価値を高めたゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方
法を提供する。 【解決手段】 ゴミ焼却灰をアルカリ条件において、そ
の後、水熱処理することにより吸着剤を生成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、RDF焼却灰等の
ゴミ焼却灰を原料として、遷移金属イオン類,重金属イ
オン類,オルソリン酸イオン,カルボン酸類等に対し吸
着能を有するゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般廃棄物は、一部はそのまま埋立処分
されるが、その多くは焼却減容した後、埋立処分されて
いる。しかし、一般廃棄物を直接焼却した場合は、ダイ
オキシンの発生量が多く問題となっている他、焼却灰を
埋め立て処分するための最終処分場の立地も困難となっ
ている。そこで、従来、次のようなゴミ焼却灰の有効利
用法が開発されてきた。溶融スラグ化して路盤材,コ
ンクリート骨材等として用いる方法、成分調整を行っ
た後、成形して焼成しレンガとする方法、コンクリー
トと混練した後、成形固化してブロック化する方法等で
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前述の従来
法はいずれも、多大なエネルギを要する割りに得られ
る製品の価格が安価であること、焼却灰成分のうち、
重金属類等の有害な成分の溶出の不安が解消されていな
いこと等の点で問題点の多い利用法であり、あまり実用
化されていなかった。
【0004】RDF焼却灰等のゴミ焼却灰は、重金属類
や他の有害成分を含有していることから、有効利用の際
には、その除去若しくは溶出を抑制する安定化対策を図
ることが必要である。また、ゴミ焼却灰の主成分はカル
シウム,ケイ素,アルミニウム等である。そこで、こう
した元素組成からなる物質であることを踏まえたうえ
で、また、実用的にはより低コストのプロセスが求めら
れるため、比較的簡便な方法により、できればほとんど
成分調整なしでゴミ焼却灰を用いることができ、骨材や
ブロックに比べてより付加価値が高く且つより安全性の
高い製品の創出が可能な有効利用法の開発が求められて
きた。
【0005】本発明は上記課題を解決するもので、比較
的簡便な方法で、重金属類の除去及び水和と部分的な鉱
物化による有害成分の安定化を図り、さらに付加価値を
高めたゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、
請求項1記載の本発明の要旨は、ゴミ焼却灰をアルカリ
条件において、その後、水熱処理することにより吸着剤
を生成することを特徴とするゴミ焼却灰からの吸着剤の
製造方法にある。また、請求項2に係る発明たるゴミ焼
却灰からの吸着剤の製造方法は、請求項1で、100℃
〜250℃の範囲内の飽和蒸気圧下で、水熱処理するこ
とにより吸着剤を生成することを特徴とする。請求項
1,2のようにゴミ焼却灰をアルカリ条件において水熱
処理すると、重金属イオン類等に対し吸着能を有する吸
着剤が得られる。そして、従来、焼却灰成分のうちで重
金属類等の有害な成分の溶出の不安は、結晶格子イオン
であるCaイオンとイオン交換して固定化されたり、吸
着剤から放出される強アルカリ成分(例えばCa(OH)
2)と反応し水酸化物として共沈したりして安定化され
るなどのことにより解消される。焼却灰成分に含まれる
重金属類は溶け出し難くなり、安定化する。また、焼却
灰中に在るPbは水熱処理により水熱処理廃液中に溶解
して除去される。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るゴミ焼却灰か
らの吸着剤の製造方法の実施形態について詳述する。
【0008】水熱処理法により工業的にケイ酸カルシウ
ム系の多孔質材料を製造する方法としては、トバモライ
ト化やゾノトライト化により軽量化,高強度化,吸放湿
性等の特性を付与した建築資材類の製造方法(光田武,
「建材システムへの利用」,「ファインセラミックスの
活用 上」,大川出版(1986),p208〜p22
9)等が知られている。しかし、こうした方法では、一
般に前処理として原材料の粉砕分級,成分調整,混合等
の操作が必要であり、得られる製品はコスト高になって
いる。したがって、上記のような方法によってゴミ焼却
灰からケイ酸カルシウム系の材料を製造し有効利用する
ことは、コスト面から優れた方法であるといえない。
【0009】そこで、本発明者はこうした問題を解決す
るために発想を転換し、場合によっては粉砕が必要なこ
ともあるが、前処理はほとんど行わず、RDF焼却灰等
のゴミを水熱処理するだけで、ケイ酸カルシウム系の吸
着剤を製造する方法の開発を試みた。そして、RDF焼
却灰等のゴミ焼却灰をアルカリ条件で100℃〜250
℃の範囲内の温度で飽和蒸気圧下で水処理すると、トバ
モライトに代表されるようなケイ酸カルシウム系鉱物類
の結晶成分とCSHのような非晶質部分とが混在し、比
表面積の大きな多孔質のケイ酸カルシウム水和物となっ
て、遷移金属イオン類,重金属イオン類,リン酸イオン
およびカルボン酸類等に対して吸着能を有する吸着剤が
生成されるのを見出した。
【0010】ゴミ焼却灰からの本発明に係る吸着剤の具
体的製造方法は次のごとくである。ゴミ焼却灰として
は、一般廃棄物を直接燃焼させて生成する灰でもよい
が、一般廃棄物に酸化カルシウム若しくは水酸化カルシ
ウムを添加した後、成形し、固形燃料(RDF)化した
ものを焼却した際に生成する灰を用いるのがよい。カル
シウム分が多くなり、ケイ酸カルシウムとして利用する
のに便利だからである。RDFを流動層炉で焼却した焼
却灰を用いれば、該焼却灰が均一生成されるので、より
好ましくなる。
【0011】こうして得られた前記焼却灰を水酸化ナト
リウムや水酸化カリウム等のアルカリ水溶液中でサスペ
ンション状態(懸濁状態)におく。その後、100℃〜
250℃(180℃付近が最適)の範囲内の温度で飽和
蒸気圧の下で数時間以上水熱処理する。或いは、前記焼
却灰を水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ
水溶液と混練成形した後、100℃〜250℃の範囲内
の温度で飽和蒸気圧の下で数時間以上水蒸気養生するこ
とでもよい。100℃〜250℃の温度範囲とするの
は、100℃未満になると反応が進み難く、一方、25
0℃を越えると装置が高コストになるばかりか、鉱物が
相転移し別の結晶構造をつくってしまうからである。か
くのごとく水熱処理(水蒸気養生)することにより、所
望の多孔質の吸着剤が生成される。
【0012】次に、実施例を述べるが、本発明はこれら
の実施例に勿論限定されるものではない。 (実施例)日本リサイクルマネジメント方式(RMJ)
により、一般廃棄物に数%の水酸化カルシウムを添加し
成形して製造されたRDFを、流動層炉で焼却した際に
生成する焼却灰を入手する。そして、該焼却灰に対して
20倍量(重量換算)の1Nの水酸化カリウム水溶液を
加え、アルカリ水溶液中に焼却灰を懸濁状態におく。続
いて、オートクレーブ中で、これを180℃の飽和蒸気
圧下で約10時間の水熱処理を行う。180℃の飽和蒸
気圧下であれば、6時間以上水熱処理すれば充足する。
該水熱処理を行うことにより、ケイ酸カルシウム系の所
望の多孔体の吸着剤が合成される。水熱処理(水熱合成
法)については、水を溶媒とする加圧容器の上下に温度
勾配をつけ、下部で原料を溶かし、上部の種子結晶上に
新しい結晶を析出成長させる公知の方法(JIS工業用
語大辞典第4版)による。こうして得たケイ酸カルシウ
ム系吸着剤は、その後水洗し、次いで約60℃で1週間
乾燥し、吸着能の評価に供した。
【0013】上述のごとくして得た吸着剤の金属イオン
吸着能は次のようにして評価した。300ml容の三角
フラスコ中に、0.5gの吸着剤と金属イオン濃度約
0.005mol/lの金属硝酸塩水溶液100mlと
を取り、25℃で振とうし、一定時間毎に試料溶液を採
取して溶液中に存在する金属イオンの濃度を分析する評
価方法とした。前記製法で得たケイ酸カルシウム系吸着
剤の金属イオン吸着能の測定結果の一例は、図1,図2
のごとくである。図1はニッケルの場合の結果を、図2
はリン酸イオン吸着能を示す。図2で、CaはPと化学
反応を起してリン酸カルシウムとして吸着剤表面に付着
する。
【0014】他の測定結果についての記載は省略する
が、ゴミ焼却灰の水熱合成によって得られるケイ酸カル
シウム系の吸着剤は、比表面積が77.05m2/gと
大きく、Cr(III),Co(II),Ni(II),Cu
(II),Zn(II),Cd(II),Pb(II)等の金属
イオン類に対するイオン交換能を有することが判った。
また、オルソリン酸イオンやカルボン酸類に対しても同
様の吸着能を有することが判った。本発明に係るゴミ焼
却灰から水熱合成されるケイ酸カルシウム系の吸着剤
は、遷移金属イオン類,重金属イオン類,オルソリン酸
イオン及びカルボン酸類等に対する吸着能を有し、活性
炭やゼオライト等とは異なった吸着特性を示すことも判
った。活性炭はイオン化したものは吸着せず、ゼオライ
トはリン酸イオンは吸着しないからである。
【0015】ケイ酸カルシウム系の吸着剤としては、ト
バモライト,ゾノトライト,ジャイロライト等の鉱物類
が知られている。しかし、焼却灰を用いた吸着剤の製造
に関しては、石炭灰や下水汚泥灰からのケイ酸アルミニ
ウム系鉱物であるゼオライトの水熱合成(特開平6−2
56012号公報、高柳枝直,再生と利用,Vol.18,N
o.67,P53〜P59(1995))が知られている程度で、ゴミ焼
却灰からしかもほとんど成分調整なしでケイ酸カルシウ
ム系の吸着剤を水熱合成した例は見られない。本発明の
吸着剤を用いれば、例えば廃水中から有害な金属イオン
類や栄養塩であるオルソリン酸イオン等を効果的に除去
でき有益であり、付加価値の高い高価な吸着剤になって
いる。また、排ガス中から悪臭成分であるカルボン酸類
等を除去するのにも有効使用できることが判明した。そ
して、ケイ酸カルシウム水和物を構成するケイ素,カル
シウム,アルミニウムなどの元素以外は、水熱処理廃液
中に溶解して除去されるか、若しくは吸着剤中のカルシ
ウムイオンとイオン交換して固定化されたり強アルカリ
成分と反応し水酸化物として沈澱などしたりして安定化
される。また、仮に若干の有機物が混在したりしても、
強アルカリ性下、高温,高圧の水熱処理を施すことによ
りその多くは水熱処理廃液への溶解や加水分解作用など
により除去されるから、ゴミ焼却灰に含有していた重金
属類や他の有害物質に対する安定化対策は万全なものと
なっている。さらに、成分調整等もなしで、比較的簡便
な方法でもって高価な吸着剤を造ることができ、低コス
ト化が図られ実用的になっている。かくのごとく、現
在、決め手を欠いているゴミ焼却灰の有効利用法として
極めて有望であり、省資源化対策と廃棄物処理問題とを
一挙に解決する。
【0016】尚、本発明においては、前記実施形態に示
すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で
種々変更できる。焼却灰の種類,アルカリ水溶液の種
類,濃度等は用途先に合わせて適宜選択できる。
【0017】
【発明の効果】以上のごとく、本発明のゴミ焼却灰から
の吸着剤の製造方法は、ゴミ焼却灰に含まれる重金属類
等の安定化を図って高付加価値の吸着剤を合成するもの
であり、ゴミ焼却灰の有効利用法を確立し優れた効果を
発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法で得たケイ酸カルシウム系吸着剤
の金属イオン吸着能の測定結果グラフである。
【図2】本発明の製法で得たケイ酸カルシウム系吸着剤
のオルソリン酸イオン吸着能の測定結果グラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴミ焼却灰をアルカリ条件において、そ
    の後、水熱処理することにより吸着剤を生成することを
    特徴とするゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法。
  2. 【請求項2】 100℃〜250℃の範囲内の飽和蒸気
    圧下で、水熱処理することにより吸着剤を生成する請求
    項1記載のゴミ焼却灰からの吸着剤の製造方法。
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