JP2000102380A - 乳酸菌生育促進剤及びその利用 - Google Patents

乳酸菌生育促進剤及びその利用

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JP2000102380A JP10277097A JP27709798A JP2000102380A JP 2000102380 A JP2000102380 A JP 2000102380A JP 10277097 A JP10277097 A JP 10277097A JP 27709798 A JP27709798 A JP 27709798A JP 2000102380 A JP2000102380 A JP 2000102380A
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健一 上保
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 培地に添加して使用したり、発酵乳や乳酸菌
飲料用発酵ミックスに添加して使用することができる乳
酸菌生育促進剤を提供する。 【解決手段】 乳酸菌生育促進剤の有効成分として、バ
ターを製造する際に副生するバターミルクを使用する。
この乳酸菌生育促進剤を使用することにより、培地の調
製が簡便になり、また、発酵乳や乳酸菌飲料の風味や組
織を損なうことがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バターミルクを有
効成分とする乳酸菌生育促進剤に関する。また、本発明
は、バターミルクを添加して乳酸菌の生育促進効果を賦
与した培地及びこの培地で乳酸菌を培養する方法に関す
る。さらに、本発明は、バターミルクを添加して乳酸菌
の生育促進効果を賦与した発酵乳や乳酸菌飲料及びそれ
らを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】乳酸菌は、古来より、チーズ、ヨーグル
ト、発酵バター等の乳製品や発酵ソーセージ、発酵サラ
ミ等の畜肉製品を製造する際にスターターとして使用さ
れている微生物であり、最近では、パンのスターターや
飼料用サイレージのスターターとしても利用されてい
る。また、味噌、醤油、漬物等の熟成工程においても、
乳酸菌は重要な役割を果していることが知られている。
さらに、近年において、乳酸菌の有する種々の生理効果
が明らかとなり、乳酸菌の菌体自体や乳酸菌の培養物等
を健康食品や医薬品等の素材として利用するようになっ
てきている。このように乳酸菌の利用は多岐にわたって
おり、乳酸菌の菌体や培養物等を簡便、かつ安価に製造
することは極めて重要な課題となってきている。
【0003】しかし、従来より、乳酸菌を培養するに際
しては、ブドウ糖や乳糖等の炭素源に酵母エキスや乳タ
ンパク質分解物等を添加し、さらに、ビタミンや核酸
類、アミノ酸類、無機塩類、肉抽出物、コーンスティー
プ等を添加した培地を使用する必要があり、乳酸菌の培
養に使用する培地の調製は極めて煩雑であった。また、
前記したように、種々の物質を培地に添加する必要があ
り、これらの物質が必ずしも安価でないということか
ら、培地コストがかさむという問題もある。
【0004】また、乳酸菌を利用して発酵乳や乳酸菌飲
料等の乳成分を原料とする製品を製造するに際して、従
来より知られている乳酸菌の生育促進剤を使用すると、
風味等が好ましくない製品ができるという問題があっ
た。
【0005】
【発明が解決しようする課題】本発明者らは、予てよ
り、乳酸菌の生育を促進する効果を有する物質を見出す
べく、鋭意研究を進めていたところ、バターミルクに乳
酸菌の生育を促進する効果があることを見出した。そし
て、乳酸菌の生育があまり良好ではない、ブドウ糖や乳
糖等の炭素源に酵母エキスや乳タンパク質分解物等を添
加して調製した合成培地に、バターミルクを添加するこ
とにより、この合成培地に乳酸菌の生育促進効果を賦与
できることを見出し、本発明を完成するに至った。した
がって、本発明は、バターミルクを有効成分とする乳酸
菌生育促進剤を提供することを課題とする。また、本発
明は、バターミルクを添加して乳酸菌の生育促進効果を
賦与した培地及びこの培地で乳酸菌を培養する方法を提
供することを課題とする。さらに、本発明は、バターミ
ルクを添加して乳酸菌の生育促進効果を賦与した発酵乳
や乳酸菌飲料及びそれらを製造する方法を提供すること
を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では、乳酸菌生育
促進剤の有効成分として、バターミルクを使用する。本
発明でいうバターミルクとは、牛乳からバターを製造す
る際に副生するバターミルクであり、このバターミルク
を濃縮、乾燥して粉末としたバターミルク粉やこのバタ
ーミルク粉を水等に溶解して還元した還元バターミルク
を含む。なお、バターミルク粉は市販されている。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の乳酸菌生育促進剤は、バ
ターミルクや還元バターミルクを有効成分として使用す
る場合は液状であり、バターミルク粉を有効成分として
使用する場合は粉末状である。
【0008】本発明のバターミルクを添加して乳酸菌の
生育促進効果を賦与した培地は、従来より乳酸菌を培養
する際に使用されているMRS培地やLB培地等にバタ
ーミルクを添加したものであり、また、公知の合成培地
等にバターミルクを添加したものである。そして、本発
明のバターミルクを添加して乳酸菌の生育促進効果を賦
与した培地は、種々の培地成分を配合した培地用組成物
の形態で供与することもできる。これらの培地に乳酸菌
を接種し、培養することにより、乳酸菌の生育を促進さ
せることができる。なお、これらの培地に添加して乳酸
菌の生育促進効果を賦与させるためには、固形換算で0.
01〜 5.0重量%、好ましくは 0.1〜 0.5重量%となるよ
うバターミルクを添加すれば良い。
【0009】本発明のバターミルクを添加して乳酸菌の
生育促進効果を賦与した発酵乳又は乳酸菌飲料は、例え
ば、発酵乳や乳酸菌飲料を製造する際にバターミルクを
添加した発酵ミックスを使用することにより製造するこ
とができる。また、通常の後発酵タイプの発酵乳のみな
らず、撹拌したり、液状化したり、さらに水や果汁等を
添加する発酵乳や乳酸菌飲料にも、この技術を適用する
ことができる。なお、発酵乳や乳酸菌飲料に乳酸菌の生
育促進効果を賦与させるためには、同様に、固形換算で
0.01〜 5.0重量%、好ましくは 0.1〜 0.5重量%となる
ようバターミルクを添加すれば良い。
【0010】次に実施例を示し、本発明をさらに詳しく
説明する。
【0011】
【実施例1】表1に示した組成の合成培地1〜4を調製
した。
【0012】
【表1】
【0013】上記各合成培地の組成材料を水に溶解して
1 lとし、この合成培地1〜4を使用して乳酸菌を培養
した。
【0014】まず、25ml容試験管に各合成培地10mlずつ
分注し、 121℃で15分間滅菌して試験培地とした。一
方、表2に示した組成のMRS培地に、各乳酸菌菌体の
保存スラントから菌体を1白金耳とって懸濁し、37℃で
16時間培養して、乳酸菌前培養物とした。
【0015】
【表2】
【0016】この乳酸菌前培養物を遠心分離して上澄み
を除去した後、生理食塩水10mlを加えて乳酸菌菌体を懸
濁し、この操作を繰り返すことにより洗浄菌体を得た。
そして、合成培地1〜4に、この洗浄菌体をそれぞれ5
%接種して、37℃で16時間培養し、培養後、BCP加プ
レート寒天培地を使用して、それぞれの乳酸菌の生菌数
を求めた。その結果を表3に示す。
【0017】なお、この試験に供した乳酸菌菌株は次の
3株である。 (1) ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus
acidophilus) SBT-2062(FERM P-10730) (2) ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシー
ズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subs
p. bulgaricus) SBT-0167 (FERM P-9441) (3) ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシ
ーズ・サーモフィルス(Streptococcus salivarius sub
sp. thermophilus) SBT-1021A (FERM P-10658)
【0018】
【表3】 ───────────────────────────── SBT-2062 SBT-0167 SBT-1021A ───────────────────────────── 合成培地1 2.1 ×105 7.0 ×107 1.2 ×107 合成培地2 3.3 ×107 9.7 ×107 3.0 ×107 合成培地3 8.4 ×107 1.0 ×108 3.9 ×107 合成培地4 2.3 ×108 1.5 ×108 5.6 ×107 ───────────────────────────── (単位:cfu/ml)
【0019】これによると、合成培地に添加するバター
ミルクの量が増加すると共に乳酸菌の生菌数も増加する
傾向にあった。
【0020】
【実施例2】表2に示した組成のMRS培地に0.5 重量
%のバターミルク粉を添加し、 121℃で15分間滅菌した
培地を調製した。この本発明培地及びMRS培地に、実
施例1と同様に調製した乳酸菌前培養物の洗浄菌体を5
%接種して、37℃で16時間培養し、培養後、BCP加プ
レート寒天培地を使用して、それぞれの乳酸菌の生菌数
を求めた。その結果を表5に示す。
【0021】
【表5】 ───────────────────────────── SBT-2062 SBT-0167 SBT-1021A ───────────────────────────── 本発明培地 6.9 ×108 1.9 ×108 8.6 ×107 ───────────────────────────── MRS培地 3.2 ×108 1.8 ×108 5.8 ×107 ───────────────────────────── (単位:cfu/ml)
【0022】これによると、いずれの乳酸菌株において
も、バターミルクを添加したMRS培地で培養すること
で、乳酸菌の培養に広く使用されている合成培地のMR
S培地で培養するよりも、高い生菌数を得ることができ
ることが判った。
【0023】
【実施例3】12%還元脱脂乳に 0.1重量%のバターミル
ク粉を添加し、95℃で10分間加熱殺菌した培地を調製し
た。この本発明培地及びバターミルク粉を添加していな
い通常の12%還元脱脂乳培地に、12%還元脱脂乳培地で
培養した混合乳酸菌スターターを3%接種し、41℃で培
養して、乳酸酸度が0.90%となるまでの所要時間とその
時点での乳酸菌の生菌数を求めた。
【0024】なお、この試験に供した混合乳酸菌スター
ターは、次の3株を培養して混合したものである。 (1) ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus
acidophilus) SBT-2062(FERM P-10730) (2) ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシー
ズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subs
p. bulgaricus) SBT-0167 (FERM P-9441) (3) ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシ
ーズ・サーモフィルス(Streptococcus salivarius sub
sp. thermophilus) SBT-1021A (FERM P-10658)
【0025】また、ラクトバチルス・アシドフィルス(L
actobacillus acidophilus)及びラクトバチルス・デル
ブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactoba
cillus delbrueckii subsp. bulgaricus) については
BL培地を用いて生菌数を測定し、ストレプトコッカス
・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィルス(S
treptococcus salivarius subsp. thermophilus) につ
いてはM17培地を用いて生菌数を測定した。
【0026】その結果、乳酸酸度が0.90%となるまでの
所要時間は、本発明培地で5時間であり、12%還元脱脂
乳培地で5時間20分であった。また、その時点での乳酸
菌の生菌数は表6に示す通りである。
【0027】
【表6】 ───────────────────────────────── SBT-2062 SBT-0167 SBT-1021A ───────────────────────────────── 本発明培地 7.0 ×106 3.5 ×108 1.3 ×109 ───────────────────────────────── 12%還元脱脂乳培地 4.0 ×106 2.0 ×107 1.1 ×109 ───────────────────────────────── (単位:cfu/ml)
【0028】これによると、いずれの乳酸菌株において
も、バターミルクを添加した12%還元脱脂乳培地で培養
することで、発酵乳や乳酸菌飲料等を製造する際に広く
使用されている12%還元脱脂乳培地で培養するよりも高
い生菌数を得ることができ、発酵に要する時間も短縮す
ることができることが判った。
【0029】
【実施例4】12%還元脱脂乳に、10重量%の上白糖及び
0.1重量%のバターミルク粉を添加し、95℃で10分間加
熱殺菌した発酵乳・乳酸菌飲料用発酵ミックスを調製し
た。この発酵ミックスに、12%還元脱脂乳培地で培養し
たラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus ac
idophilus) SBT-2062 (FERM P-10730)、ラクトバチルス
・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(L
actobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) SBT-
0167 (FERM P-9441)及びストレプトコッカス・サリバリ
ウス・サブスピーシーズ・サーモフィルス(Streptococc
us salivariussubsp. thermophilus) SBT-1021A (FERM
P-10658)からなる混合乳酸菌スターターを3%接種
し、41℃で乳酸酸度が0.90%となるまで培養して、後発
酵タイプの発酵乳(本発明品)を製造した。また、対照
として、バターミルク粉を添加していない発酵ミックス
を使用した発酵乳(対照品)も製造した。
【0030】そして、これらの発酵乳について、乳酸酸
度が0.90%となるまでの所要時間とその時点での乳酸菌
の生菌数を求めた。なお、生菌数の測定については、実
施例3と同様にして行った。その結果、乳酸酸度が0.90
%となるまでの所要時間は、本発明品で4時間25分であ
り、対照品で4時間55分であった。また、その時点での
乳酸菌の生菌数は表7に示す通りである。
【0031】
【表7】 ──────────────────────────── SBT-2062 SBT-0167 SBT-1021A ──────────────────────────── 本発明品 6.0 ×106 8.6 ×108 1.3 ×109 ──────────────────────────── 対照品 1.3 ×106 8.0 ×108 8.9 ×108 ──────────────────────────── (単位:cfu/ml)
【0032】また、これらの発酵乳の風味及び組織につ
いて、熟練パネラー10名による官能評価を行った。な
お、評価は、欠点がある(3点)、やや欠点がある(2
点)、欠点がない(1点)の3段階で行い、その平均点
で表した。その結果、風味及び組織の官能評価点は、本
発明品で 1.7であり、対照品で 1.8であった。
【0033】これによると、いずれの乳酸菌株において
も、バターミルクを添加した発酵ミックスを使用するこ
とで高い生菌数を得ることができ、発酵に要する時間も
短縮できることが判った。また、製品の風味及び組織に
ついても、何ら問題がないことが判った。
【0034】
【発明の効果】バターを製造する際に副生するバターミ
ルクを乳酸菌生育促進剤の有効成分として、培地に添加
して使用したり、発酵乳や乳酸菌飲料用発酵ミックスに
添加して使用することにより、乳酸菌の生育を促進する
ことができる。したがって、従来、乳酸菌を培養する際
に培地として使用されていたMRS培地のように、複雑
な組成の培地を調製する必要がなくなり、培地の調製が
簡便になるという利点がある。また、発酵乳や乳酸菌飲
料においては、風味や組織を損なわないという利点があ
る。なお、バターミルクは、バター製造の際に副生する
物質であり、低価格であるので、安価に利用することが
できるという利点もある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:46)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バターミルクを有効成分とする乳酸菌生
    育促進剤。
  2. 【請求項2】 バターミルクを添加して乳酸菌の生育促
    進効果を賦与した培地。
  3. 【請求項3】 バターミルクを添加して乳酸菌の生育促
    進効果を賦与した培地で乳酸菌を培養することを特徴と
    する乳酸菌の培養方法。
  4. 【請求項4】 バターミルクを添加して乳酸菌の生育促
    進効果を賦与した発酵乳又は乳酸菌飲料。
  5. 【請求項5】 バターミルクを添加して乳酸菌の生育促
    進効果を賦与した発酵乳又は乳酸菌飲料用発酵ミックス
    を使用することを特徴とする発酵乳又は乳酸菌飲料の製
    造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007131610A (ja) * 2005-11-11 2007-05-31 Bioleaders Corp 免疫機能が強化された死菌化乳酸菌製剤及びその製造方法
JP2012075581A (ja) * 2010-09-30 2012-04-19 Nohmi Bosai Ltd 消火システムの制御装置
JP2014521345A (ja) * 2011-08-04 2014-08-28 コンパニ・ジェルベ・ダノン ゲランガム、バターミルク及び乳酸菌を含む組成物とその製造方法
KR20210145746A (ko) 2019-03-29 2021-12-02 가부시키가이샤 야쿠르트 혼샤 유산균 발효 식품의 제조 방법

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