JP2000091607A - 光起電力素子及びその製造方法 - Google Patents

光起電力素子及びその製造方法

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JP2000091607A
JP2000091607A JP10257956A JP25795698A JP2000091607A JP 2000091607 A JP2000091607 A JP 2000091607A JP 10257956 A JP10257956 A JP 10257956A JP 25795698 A JP25795698 A JP 25795698A JP 2000091607 A JP2000091607 A JP 2000091607A
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Yasuyuki Yamamoto
泰幸 山本
Masanobu Azuma
正信 東
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Tokuyama Corp
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ECR−CVD法等、高電子密度のプラズマ
を用いたプラズマCVD法により真性半導体層を積層す
る場合においても、開放電圧や短絡電流等の特性に優れ
た光起電力素子及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 基板上に、(1)金属層、(2)透明導
電膜層、(3)少なくともn型半導体層、真性半導体
層、及びp型半導体層を順次積層してなる半導体層、な
らびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層してなる光
起電力素子において、前記透明導電膜と半導体層との
間、及び/又は前記第二透明導電膜層と半導体層との間
に、融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層を設
ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽光発電セルに
代表される光起電力素子、特に、高密度プラズマCVD
法により得られるアモルファスシリコン又は多結晶シリ
コン層をその内部に有する光起電力素子及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】アモルファスシリコン膜を光電変換層と
する太陽光発電等の光起電力素子(以下アモルファス光
起電力素子ともいう)は、結晶質シリコンウエハ等を用
いた光起電力素子(以下結晶光起電力素子ともいう)と
比較して、シリコン層の厚みが1/100程度であり、
非常に薄いという特徴を有している。また、結晶質シリ
コンウエハは、製造上の制約からその面積(口径)を大
きくすることは困難であるが、アモルファスシリコン薄
膜については容易に大面積の薄膜を製造することができ
る。このように、アモルファス光起電力素子は、結晶光
起電力素子に比べると製造上多くのメリットを有してい
る。
【0003】従来広く使用されてきた型の、アモルファ
ス光起電力素子200について、その一例を図7に示
す。この光起電力素子200は、ガラス基板210上
に、透明導電膜230、アモルファスシリコンからなる
半導体層250、及び集電電極270を積層した構造で
あり、半導体層250が、下層より順にp型半導体層2
53、真性(i型)半導体層252、n型半導体層25
1であることから、p−i−n型構造と一般的に呼ばれ
ている。
【0004】上記p−i−n型構造のアモルファス光起
電力素子において、半導体層250の積層は、高周波
(RF)プラズマCVD法(以下RF−CVD法と略す
こともある)を用いて行われることが一般的であった。
しかし、RFプラズマCVD法による析出速度は0.1
〜0.3nm/sec程度と非常に遅く、特に数百nm
の厚さを必要とする真性半導体層252の積層を行う際
に非効率的であった。
【0005】そこで、特に真性半導体層252の積層を
行う際には、従来のRFプラズマCVD法に代えて、電
子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマCVD法(以
下ECR−CVD法)と略すこともある)等、より高電
子密度のプラズマを利用したプラズマCVD法を使用し
てその積層速度を高めることが提唱され、その詳細につ
いて各種研究、開発が行なわれてきた。
【0006】特に、プラズマCVD法によるアモルファ
スシリコン層の積層の原料として、従来使用されていた
モノシランに代えてクロロシラン化合物を使用する方法
が、例えばJ.Non−Cryst.Solids,1
98−200(1996)419.に示されている。そ
れによれば、ジクロロシラン(DCS)を原料とするE
CR−CVD法によりアモルファスシリコン層の積層を
行ったときの析出速度は約15オングストローム/se
cであるとされている。
【0007】また、特開平6−326043号において
は、ECR−CVD法において、使用する水素含有ガス
中の水素と、クロロシラン化合物中の塩素との比を調整
することにより、得られるアモルファスシリコン層の光
学的禁制帯幅を制御し、太陽光の短波長成分を有効に吸
収可能とすることが可能であるとされている。また、こ
のときのアモルファスシリコン層は欠陥密度が小さく、
耐光劣化性に優れるとされている。
【0008】ところが実際に光起電力素子を製造する際
に、ECR−CVD法等、高密度プラズマを用いた方法
により真性半導体層を積層すると、その高電子密度プラ
ズマにより下層であるp型半導体層が損傷され、結果と
して光起電力素子の特性が損なわれてしまうという問題
があった。
【0009】そこで、透明導電膜230とp型半導体層
253との間、及びp型半導体層253と真性半導体層
252との間に緩衝層を設け、透明導電膜230及びp
型半導体層253の表面を高電子密度のプラズマから保
護することが行なわれてきた。このとき、緩衝層の厚さ
は厚いほど保護効果も大きくなって光起電力素子の特性
が良好となるが、この緩衝層は一般に、シリコン析出速
度が遅いRF−CVD法を用いて別の反応容器内で積層
されるため、操作が煩雑になるばかりでなく、充分な保
護効果を得ようとする場合には操業時間を長くする必要
があり、非効率的であるという問題があった。
【0010】そこで、図7に示したようなp−i−n型
構造に代えて、図8に示すようなn−i−p型構造を採
用する試みが、近年一般的なものとなりつつある。この
構造を採用すれば、前述のようなp型半導体層253の
損傷は起らない。また、この構造では真性半導体層25
2の下層はn型半導体層251となるが、n型半導体層
はp型半導体層と比較してプラズマ耐性が優れることが
知られており、高電子密度プラズマを使用して真性半導
体層を積層しても、その損傷は小さいことが確認されて
いる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記n−i−
p型構造のアモルファス光起電力素子を製造するに当た
って、実際に真性半導体層をECR−CVD法により積
層した場合、得られる光起電力素子が所期の性能を示さ
ない場合があった。また、上記n−i−p型構造の光起
電力素子の開放電圧は、必ずしも満足のいくものではな
く、さらにその改良が求められていた。
【0012】そこで、本発明の課題は、ECR−CVD
法等、高電子密度のプラズマを用いたプラズマCVD法
により真性半導体層を積層する場合においても、開放電
圧や短絡電流等の特性に優れた光起電力素子及びその製
造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らはまず、製造
時においてECR−CVD法を用いて得られるn−i−
p型構造のアモルファス光起電力素子の性能が低下する
場合があることに関して、その原因を特定するために、
透明導電膜層に与えるプラズマの電子密度の影響につい
て検討を行った。
【0014】その結果、高電子密度のプラズマを照射し
た場合には、透明導電膜層を構成するSnO2、In2
3、ZnO2等の金属酸化物が一部還元されて金属が析出
し、透明導電膜層の光透過率が低下していることを確認
した。すなわち、図1は、ガラス基板上に透明導電膜層
としてSnO2 を積層したものについて、 (1) そのまま(未処理)のものを試料として (2) RF水素プラズマに2分間暴露する処理を行っ
たものを試料として (3) ECR水素プラズマに2分間暴露する処理を行
ったものを試料として それぞれの試料について各波長における光透過率を測定
した結果を示したものであるが、(3)については光透
過率が著しく低下していることがわかる。
【0015】そして、本発明者らは上記結果に基づいて
更に検討を行った結果、透明導電膜層上に特定の金属か
らなる薄膜層を設けた場合には、半導体層を製造すると
きに高電子密度のプラズマを使用しても、得られる光起
電力素子の特性が安定していること、さらに驚くべきこ
とに、このときアモルファス光起電力素子の開放電圧が
高くなっていることを見出し本発明を完成するに至っ
た。そして、さらに検討を行った結果、半導体層(p型
半導体層)の上に同様の金属層を設けてから第二透明導
電膜層を形成した場合には、光起電力素子の短絡電流が
向上するという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0016】すなわち本発明は、基板上に、(1)金属
層、(2)透明導電膜層、(3)少なくともn型半導体
層、真性半導体層、及びp型半導体層を順次積層してな
る半導体層、ならびに(4)第二透明導電膜層、を順次
積層してなる光起電力素子において、前記透明導電膜層
と半導体層との間に、融点1000℃以上の卑金属から
なる卑金属層を設けてなることを特徴とする光起電力素
子である。
【0017】また本発明は、基板上に、(1)金属層、
(2)透明導電膜層、(3)少なくともn型半導体層、
真性半導体層、及びp型半導体層を順次積層してなる半
導体層、ならびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層
してなる光起電力素子において、前記半導体層と第二透
明導電膜層との間に、融点1000℃以上の卑金属から
なる卑金属層を設けてなることを特徴とする光起電力素
子である。
【0018】また本発明は、基板上に、(1)金属層、
(2)透明導電膜層、(3)少なくともn型半導体層、
真性半導体層、及びp型半導体層を順次積層してなる半
導体層、ならびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層
してなる光起電力素子において、前記透明導電膜層と半
導体層との間、及び前記第二透明導電膜層と半導体層と
の間に、融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層
を設けてなることを特徴とする光起電力素子である。
【0019】上記本発明の光起電力素子において、前記
透明導電膜と半導体層との間に設けられた融点1000
℃以上の卑金属からなる卑金属層(以下卑金属層1とも
いう)、及び前記第二透明導電膜層と半導体層との間に
設けられた融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属
層(以下卑金属層2ともいう)に用いられる融点100
0℃以上の卑金属としては、Ni、Cr、又はそれらの
合金が好適に使用できる。また、卑金属層1及び卑金属
層2の厚さが1〜5nmのとき、又は卑金属層1の下層
にある透明導電膜層がテクスチャ構造を有するときに
は、いわゆる「光閉じ込め効果」が特に高く、変換効率
が高くなる。
【0020】なお、本発明の光起電力素子においては、
真性半導体層を作製するときにn型半導体層が受けるプ
ラズマによるダメージを少なくする目的で、n型半導体
層と真性半導体層との間には緩衝層が設けられていても
よい。
【0021】本発明の光起電力素子は、開放電圧や短絡
電流が高いという特性を有するばかりでなく、特に卑金
属層1を有する場合には、半導体層を作製するときに使
用するプラズマの電子密度の高さに拘わらずその特性が
安定しているという特徴を有する。
【0022】本発明の光起電力素子がこのような優れた
効果を発現する理由については必ずしも明らかではない
が、製造時において使用するプラズマの電子密度の違い
による影響の少なさは、半導体層を作製する際に高電子
密度のプラズマを使用しても、前記卑金属層1が設けら
れているために、その下地にある透明導電膜層が還元等
の損傷を受けにくくなるためと考えられる。
【0023】また、開放電圧が高くなることに関して
は、卑金属層1の存在により、その両側の透明導電膜層
と半導体層との間のエネルギー障壁が低下したためと考
えられる。
【0024】さらに、卑金属層2を設けることにより光
起電力素子の短絡電流が向上することについては以下の
ように考えられる。すなわち、該卑金属層2を設けない
場合には第二透明導電膜層を作製する際にp型半導体層
の表面付近が一部酸化されて酸化シリコン等の絶縁膜が
わずかに形成されることが避けられないのに対し、卑金
属層2を設けることにより、このような酸化が防止され
るためではないかと考えられる。
【0025】本発明の光起電力素子は、例えば基板上
に、金属層、透明導電膜層、及び融点1000℃以上の
卑金属からなる卑金属層(卑金属層1)を順次積層し、
次いで前記卑金属層上に少なくともn型半導体層、真性
半導体層、及びp型半導体層からなる半導体層をプラズ
マCVD法により順次積層して半導体層を形成し、その
後、第二透明導電膜層を積層することを特徴とする製造
方法により好適に製造することができる。
【0026】また、基板上に、金属層、透明導電膜層を
順次積層し、次いで前記透明導電膜層上に少なくともn
型半導体層、真性半導体層、及びp型半導体層からなる
半導体層をプラズマCVD法により順次積層して半導体
層を形成し、次いで前記半導体層上に融点1000℃以
上の卑金属からなる卑金属層(卑金属層2)を積層し、
その後、前記卑金属層上に第二透明導電膜層を積層する
ことを特徴とする製造方法により好適に製造することが
できる。
【0027】また、基板上に、金属層、透明導電膜層、
及び融点1000℃以上の卑金属からなる第一の卑金属
層(卑金属層1)を順次積層し、次いで前記卑金属層上
に少なくともn型半導体層、真性半導体層、及びp型半
導体層からなる半導体層をプラズマCVD法により順次
積層して半導体層を形成し、次いで前記半導体層上に融
点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層(卑金属層
2)を積層し、その後、前記卑金属層上に第二透明導電
膜層を積層することを特徴とする製造方法により好適に
製造することができる。
【0028】上記各方法においては、半導体層の中では
その厚さが最も厚い真性半導体層を作製する際に、例え
ば109/cm3以上というような高い電子密度のプラズ
マを使用するCVD法を適用することが可能であり、真
性半導体層であるシリコン層の析出速度を高めることが
でき、製造時間を短縮することができる。
【0029】また、真性半導体層の形成時においてシリ
コン源としてクロロシラン化合物を使用すると、高い耐
光劣化性を有し、光学的禁制帯幅の制御されたアモルフ
ァスシリコン膜からなる半導体層を得ることができ、こ
のことに対応した特性を有する光起電力素子を製造する
ことができる。
【0030】
【発明の実施形態】本発明の実施形態について、図面を
参照しながら以下に詳述する。
【0031】本発明の光起電力素子200は、図2に示
されるように、基板210上に、(1)金属層220、
(2)透明導電膜層230、(3)少なくともn型半導
体層251、真性半導体層252、及びp型半導体層2
53を順次積層してなる半導体層250、ならびに
(4)第二透明導電膜層260、を順次積層してなる従
来のn−i−p構造の光起電力素子において、(2)透
明導電膜層230と(3)半導体層250との間に、融
点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層(卑金属層
1)240を設けてなることを特徴とする。
【0032】また、図3に示されるように、基板上21
0上に、(1)金属層220、(2)透明導電膜層23
0、(3)少なくともn型半導体層251、真性半導体
層252、及びp型半導体層253を順次積層してなる
半導体層250、ならびに(4)第二透明導電膜層26
0、を順次積層してなる従来のn−i−p構造の光起電
力素子において、(3)半導体層250と(4)第二透
明導電膜層260との間に、融点1000℃以上の卑金
属からなる卑金属層(卑金属層2)340を設けてなる
ことを特徴とする。
【0033】また、図4に示されるように、基板上21
0上に、(1)金属層220、(2)透明導電膜層23
0、(3)少なくともn型半導体層251、真性半導体
層252、及びp型半導体層253を順次積層してなる
半導体層250、ならびに(4)第二透明導電膜層26
0、を順次積層してなる従来のn−i−p構造の光起電
力素子において、(2)透明導電膜層230と(3)半
導体層250との間に融点1000℃以上の卑金属から
なる金属層(卑金属層1)240を、(3)半導体層2
50と(4)第二透明導電膜層260との間に同じく融
点1000℃以上の卑金属からなる金属層(卑金属層
2)340を設けてなることを特徴とする。
【0034】本発明において、上記卑金属層以外の各層
については、従来のn−i−p型構造のアモルファス光
起電力素子と変わるところは特にない。例えば、基板2
10としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、単結
晶シリコン、多結晶シリコン、ステンレス鋼、セラミッ
クス、耐熱性ポリマー等の材料からなる従来公知の基板
が何ら制限なく使用できる。基板の厚さや形状は、使用
する光起電力素子製造装置に応じて適宜決定すればよい
が、一般的には厚さ50nm〜1mm程度の板状若しく
はシート状のものが好適に使用できる。
【0035】また本発明の光起電力素子においても、光
の有効利用を図るために(1)金属層220が設けられ
ている。この金属層は、従来のn−i−p型構造のアモ
ルファス光起電力素子と同様に、例えば銀、アルミニウ
ム、又はこれらの合金等からなる光反射率80%以上と
なるような層であればよい。また、この金属層の厚さは
特に限定されないが、一般的には0.1〜1μm程度で
ある。
【0036】また、(2)透明導電膜層230及び
(4)第二透明導電膜層260についても従来と同様に
SnO2、In23、ZnO、CdSnO4、TiO2
の酸化物からなる光透過率約80%以上となるような厚
さの導電性の膜であればよい。また、上記(2)透明導
電膜層230、又は(2)透明導電膜層230及び
(1)金属層220を、例えば特開平9−69642号
公報や特開平9−283780号公報に開示されている
ようなテクスチャ構造(微細な凹凸構造)とした場合に
は、「光閉じ込め効果」により入射光の利用効率が高く
なるため、このような構造とすることが望ましい。
【0037】本発明の光起電力素子における(3)半導
体層250は、基板210側から順にn型半導体層25
1、真性半導体層252、p型半導体層253が積層さ
れた構造を有するものであれば特に限定されない。この
ような半導体層は、高速成膜性という観点からは主とし
てアモルファスシリコンからなることが好ましいが、短
絡電流等、光起電力素子としての特性が向上するという
効果の観点からいえば単結晶シリコンや多結晶シリコン
からなるものであってもよい。
【0038】上記n型半導体層251は一般に、厚さが
5〜50nm程度で、リンや砒素等の周期律表第V族の
元素を含み、活性化エネルギーが0.3eV以下のシリ
コンからなる層である。また、p型半導体層253は一
般に、厚さが5〜50nm程度で、ホウ素やガリウム等
の周期律表第III族の元素を含み、活性化エネルギーが
0.5eV以下のシリコンからなる層である。また、真
性半導体層252は一般に、厚さが100〜1000n
mのシリコンからなる層である。上記p型半導体層にお
いては、光の有効利用率を上げたり、光起電力素子の開
放電圧をさらに高くするために炭素原子を導入すること
もできる。
【0039】なお、上記半導体層250においては、例
えば高電子密度のプラズマを用いて真性半導体層252
を作製するときに下地のn型半導体層251が受けるダ
メージを低減するために、図5に示されるような緩衝層
550を設けることが好ましい。緩衝層550は、光起
電力素子200内部でのバンドミスマッチが起こらず
(すなわち電子や正孔の流れを阻害せず)、かつn型半
導体層を保護する作用を有する層であれば特に限定され
ないが、シリコンからなる厚さ1〜50nmの層である
ことが好ましい。
【0040】本発明の光起電力素子は、従来のn−i―
p型構造の光起電力素子において(2)透明導電膜層2
30と(3)半導体層250との間に卑金属層(卑金属
層1)240を設けた点、あるいは(3)半導体層25
0と(4)第二透明導電膜層260との間に卑金属層
(卑金属層2)340を設けた点、あるいは上記卑金属
層(卑金属層1)240及び卑金属層(卑金属層2)3
40を同時に設けた点に最大の特徴を有する。
【0041】これら卑金属層を設けることにより、光起
電力素子の開放電圧や短絡電流が向上する。開放電圧向
上の効果は主として卑金属層1を設けることにより、ま
た、短絡電流向上の効果は主として卑金属層2を設ける
ことにより達成され、卑金属層1及び卑金属層2を同時
に設けたときには両方の効果が達成される。なお、卑金
属層2の設置による短絡電流向上の効果は、半導体層が
(基板側から)p−i−n構造のときにも得られる。
【0042】また、卑金属層1を設けた場合には、半導
体層250(特に真性半導体層252)を高電子密度の
プラズマを用いたCVD法により作製しても、得られる
光起電力素子の特性が安定しているという効果が得られ
る。
【0043】上記卑金属層を構成する材料は、その融点
が1000℃以上の卑金属であれば特に限定されない。
ここで、卑金属とは金や白金等の貴金属以外の金属であ
ることを意味する。貴金属を用いた場合には、光起電力
素子としたときに十分高い開放電圧が得られない。ま
た、卑金属であってもその融点が1000℃未満のもの
を用いた場合には、半導体層の作製時における卑金属原
子の半導体層(n型半導体層)への拡散に起因すると考
えられる、光起電力素子の開放電圧及び短絡電流の低下
が起こる。
【0044】融点1000℃以上の卑金属としては、N
i、Cr、Fe、Cu、Ta、W、Ti、Be、Mn、
Mo等、及びこれらの合金等が挙げられるが、工業的に
高純度のものが安価に得やすく、抵抗値も適当な値であ
ることからNi、Cr、及びこれらの合金を使用するこ
とが好適である。なお、卑金属層1及び卑金属層2を併
設する場合には、両層を構成する卑金属は同一であって
も異なっていてもよい。
【0045】卑金属層の厚さは特に限定されないが、光
透過率及び本発明における効果の高さの観点から1〜5
nmであることが好適である。
【0046】本発明の光起電力素子を製造する方法は、
例えば基板210上に、金属層220、透明導電膜層2
30、及び卑金属層(卑金属層1)240を順次積層
し、次いで卑金属層(卑金属層1)240上に少なくと
もn型半導体層251、真性半導体層252、及びp型
半導体層253を順次積層して半導体層250を形成
し、その後、第二透明導電膜層260を積層することに
より製造することができる。
【0047】あるいは、基板210上に、金属層22
0、透明導電膜層230を順次積層し、次いで透明導電
膜層230上に少なくともn型半導体層251、真性半
導体層252、及びp型半導体層253を順次積層して
半導体層250を形成し、次いで半導体層250上に卑
金属層(卑金属層2)340を積層し、その後、卑金属
層(卑金属層2)340上に第二透明導電膜層260を
積層することにより製造できる。
【0048】あるいは、基板210上に、金属層22
0、透明導電膜層230、及び卑金属層(卑金属層1)
240を順次積層し、次いで前記卑金属層(卑金属層
1)240上に少なくともn型半導体層251、真性半
導体層252、及びp型半導体層253を順次積層して
半導体層250を形成し、次いで半導体層250上に卑
金属層(卑金属層2)340を積層し、その後、卑金属
層(卑金属層2)340上に第二透明導電膜層260を
積層することにより製造できる。
【0049】以下、図6を用いて上記製造方法(以下、
本発明の製造方法ともいう)について詳しく説明する。
なお、図6は、本発明の光起電力素子を製造するために
使用するプラズマCVD装置の一例を示す図である。
【0050】プラズマCVD装置600は、主として各
反応容器(621〜623)及び試料導入室610、各
反応容器及び試料導入室に通じる真空ポンプ(メカニカ
ルブースターポンプ631、及びターボモレキュラポン
プ632)、各反応容器に通じるプラズマ発生源(高周
波発生装置641、マイクロ波発生装置642)、なら
びに各反応容器に通じるガス供給装置650により構成
されている。
【0051】上記各反応容器は、作製する膜の種類に応
じて使用するプラズマの種類及び導入可能なガスの種類
が予め設定されており、各反応容器及び試料導入室の間
にはゲートバルブ670が設置されており、トランスフ
ァーロード660を用いて真空系を破ることなく試料
(製造過程にある光起電力素子)を移動させることがで
きるようになっている。図6に示す装置では、反応容器
は、高周波発生装置641により発生させたRFプラズ
マを使用してn型半導体層やp型半導体層を形成するた
めのRF反応容器621、同じくRFプラズマを使用し
て真性半導体層や緩衝層を形成するためのRF反応容器
622、及びマイクロ波発生装置642ならびに図示し
ない電磁石により発生させたECRプラズマを使用して
真性半導体層を形成するためのECR反応容器623に
分かれている。各反応容器には、シリコン膜の原料とな
るモノシラン、ジシラン、ハロゲン化シラン等のシラン
ガス、及び水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノ
ン等の希釈用ガスが、特にRF反応容器621にはこれ
らガスに加えてB26、BF3、PH3、AsH3 等の周
期律表第III属又は第V属元素を含むガス(以下、不純
物ガスという)、及びp型半導体層に炭素原子を導入す
るためのCH4等の炭素を含むガスが、ガス供給装置6
50から導入できるようになっている。
【0052】なお、図6に示す装置にスパッタ装置や蒸
着装置を上記各反応容器と同様に真空ラインで接続すれ
ば、金属層220、透明導電膜層230、第二透明導電
膜層260、及び卑金属層の作製も、真空を破らずに行
うことができる。
【0053】本発明の製造方法では、まず、基板210
上に金属層220及び透明導電膜層230を順次形成す
る。これら各層の作製方法は、従来のn−i−p型構造
あるいはp−i−n型構造の光起電力素子を製造する際
の製造方法と特に変わるところなく、スパッタリング
法、電子ビーム蒸着法、抵抗加熱法、CVD法などの公
知の方法から適宜選択すればよい。製造条件も特に従来
法と変わる点はない。
【0054】例えばスパッタリング法で金属層220を
作製する場合には、その金属層を構成する金属と同種の
金属をターゲットとして用い、圧力1〜100mTor
r、Ar流量1〜100sccmのような条件下、必要
に応じて酸素を共存させてアルゴンスパッタリングを行
えばよい。また、同じくスパッタリング法で透明導電膜
層230を作製する場合には、その透明導電膜層を構成
するのと同組成の金属酸化物を用い、上記とほぼ同一の
条件下でアルゴンスパッタリングを行えばよい。なお、
各層の厚さは、予め同一条件においてスパッタリング時
間と膜厚との関係を調べておき、スパッタリング時間を
コントロールすることにより調整できる。
【0055】また、適宜エッチング等を行うことによ
り、透明導電膜層230、又は透明導電膜層230及び
金属層220にテクスチャ構造を導入することもでき
る。
【0056】次に、上記のようにして形成された基板2
10、金属層220、及び透明導電膜層230が積層さ
れてなる積層体の上に卑金属層(卑金属層1)240を
作製する。卑金属層(卑金属層1)240の作製方法
は、金属の種類が変わるだけで基本的には金属層220
の作製方法と同じである。なお、本発明の光起電力素子
が卑金属層(卑金属層2)340のみを有する場合に
は、上記工程は不要である。
【0057】本発明の製造方法においては、上記のよう
にして作製された積層体の上にさらに半導体層250を
形成する。半導体層250の作製方法は特に限定されな
いが、成膜速度や大面積化の観点からプラズマCVD法
を用いるのが好適である。
【0058】半導体層250は、n型半導体層251、
真性半導体層252、及びp型半導体層253からなる
が、一般にn型半導体層251及びp型半導体層253
の厚さは約20nm程度と薄いため、シリコンの析出速
度は特に問題にならない。一方、真性半導体層252の
厚さは一般に約300nm以上と厚いため、シリコン析
出速度の速い109/cm3以上の電子密度を有するプラ
ズマを利用したCVD法を採用することが望ましい。こ
のようなCVD法としては、電子サイクロトロン共鳴
(ECR)CVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ヘ
リコン波プラズマCVD法等が挙げられる。
【0059】本発明の製造方法においては、真性半導体
層の作製時に上記のような高電子密度のプラズマを使用
するCVD法を適用しても、得られる光起電力素子の特
性が損なわれないので、短い製造時間で高性能の光起電
力素子を効率よく製造することができる。
【0060】また、前記特開平6−326043号公報
に開示されているように、真性半導体層の作製時にシリ
コン源としてジクロロシラン等のクロロシラン化合物を
使用すると、高い耐光劣化性を有し、光学的禁制帯幅の
制御されたアモルファスシリコン膜からなる半導体層を
得ることができ、このことに対応する特性を有する光起
電力素子を製造することが可能となる。
【0061】例えば、クロロシラン化合物のガスと水素
ガスとを、塩素原子に対する水素原子の比(H/Cl)
が0.1〜50となるように混合したガスを用い、n型
半導体層までが積層された積層体を200〜500℃に
加熱して真性半導体層を作製した場合には、塩素原子含
有量が0.005〜5原子%、水素原子含有量が3〜2
5原子%、初期欠陥密度が3×1015個/cm3 以下
で、耐光劣化性が高く、かつ光学禁制帯幅が1.75〜
2.5eVに制御されたアモルファスシリコン膜からな
る真性半導体層を、約50nm/minという成膜速度
で作製することができる。
【0062】さらに、n型半導体層を形成するに当っ
て、まず水素化シラン及び不純物ガスを用いて少なくと
も数nm程度の多結晶シリコン層を析出させた後に、残
りのn型半導体層(n型半導体層が十分な厚さでない場
合)、真性半導体層、及びp型半導体層をクロロシラン
化合物のガスを用いたプラズマCVD法により作製した
場合には、多結晶シリコンからなる半導体層を高速で作
製することができる(特開平9−245035号公
報)。
【0063】本発明の製造方法では、上記のようにして
作製された半導体層250(より詳しくはp型半導体層
253)の上に卑金属層(卑金属層2)340及び第二
透明導電膜層260を順次積層する。これらの層の作製
方法は、前述した卑金属層(卑金属層1)240、及び
透明導電膜層230の作製方法と同様にして行うことが
できる。ただし、卑金属層(卑金属層2)340の作製
は、酸化雰囲気を作りにくい電子ビーム蒸着法を採用す
ることが好適である。
【0064】ここで電子ビーム蒸着法とは、高真空の状
態で発生させた電子ビームをターゲットの金属に当てる
ことにより金属を蒸発させて蒸着させる方法である。
【0065】このようにして製造された本発明の光起電
力素子は、第二透明導電膜層上に銀(Ag)等からなる
集電電極270を格子状に蒸着することにより設置し
て、太陽電池、各種光センサー等として使用することが
できる。
【0066】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具
体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される
ものではない。
【0067】実施例1 まず、スパッタリング装置(アネルバ社製SPC−35
0)の基板ホルダーに石英ガラス基板(24mm×16
mm×0.5mmt)を設置し、ターゲットとしてアル
ミニウム−銀合金を用いたアルゴンスパッタ法により8
00nmの金属層を積層した。なお、スパッタリング
は、Ar流量10sccm、圧力5mTorr、RFパ
ワー200W、基板温度200℃、スパッタリング時間
20分の条件で行った。
【0068】次いで、上記金属層上に厚さ1000nm
のZnOからなる透明導電膜層を、ZnOをターゲット
としたアルゴンスパッタリング法により形成した。この
ときのスパッタリングは、Ar流量10sccm、O2
ガス流量0.02sccm、圧力5mTorr、RFパ
ワー100W、基板温度300℃、スパッタリング時間
15分の条件で行った。
【0069】次いで、上記透明導電膜層上に厚さ3nm
の卑金属層1を、Ni−Cr合金(融点1430℃)を
ターゲットとしたアルゴンスパッタリング法により作製
した。このときのスパッタリングは、Ar流量10sc
cm、圧力5mTorr、RFパワー35W、基板温度
200℃、スパッタリング時間1分の条件で行った。
【0070】このようにして金属層、透明導電膜層、及
び卑金属層1が順次積層された基板を、図6に示すプラ
ズマCVD装置600の試料導入室610にセットし、
真空吸引を行った後、RF反応容器621に移送し、電
子密度約107/cm3のプラズマを用いたRF-CVD
法により厚さ約20nmのn型半導体層を形成した。な
お、このときの条件は、SiH4 流量20sccm、P
3(水素で1vol.%に希釈したもの)流量5sc
cm、反応圧力100mTorr、RFパワー5W、基
板温度200℃、反応時間4分とした。
【0071】n型半導体層形成後、試料を真空下でRF
反応容器622に移送し、電子密度約107/cm3のプ
ラズマを用いたRF−CVD法により厚さ300nmの
真性半導体層を形成した。なお、このときの条件は、S
iH2Cl2流量10sccm、H2 流量50sccm、
反応圧力250mTorr、RFパワー5W、基板温度
200℃、反応時間50分とした。
【0072】真性半導体層形成後、試料を再びRF反応
容器621に移し、電子密度約107/cm3のプラズマ
を用いたRF−CVD法により厚さ20nmのp型半導
体層を形成した。なお、このときの条件は、SiH4
量3sccm、B26(水素で1vol.%に希釈した
もの)流量3sccm、水素流量30sccm、CH4
流量9sccm、反応圧力100mTorr、RFパワ
ー5W、基板温度200℃、反応時間2分とした。
【0073】p型半導体層形成後、試料を試料導入室6
10に移送した後プラズマCVD装置から取り出し、前
述のスパッタリング装置に再び装着し、ITOをターゲ
ットとしたアルゴンスパッタリング法により厚さ70n
mのITOからなる第二透明導電膜層を積層した。この
ときのスパッタリングは、Ar流量10sccm、圧力
5mTorr、RFパワー10W、基板温度200℃、
スパッタリング時間20分の条件で行った。
【0074】このようにして得られた光起電力素子に対
して、抵抗加熱法により銀電極を取り付けてから、その
I−V特性を測定した。なお、I−V特性の測定は微小
電流計(ヒューレットパカード社製4140B)を用い
て100mW/cm2 の白色光照射下において行った。
【0075】得られたI−V特性曲線から開放電圧及び
短絡電流を求めたところ、開放電圧は0.86Vであ
り、短絡電流は11.8mA/cm2であった。
【0076】比較例1 実施例1において卑金属層1を設けないこと以外は実施
例1と全く同様にして光り起電力素子を作製した。得ら
れた光起電力素子について実施例1と同様にして開放電
圧及び短絡電流を求めたところ、開放電圧は0.79
V、短絡電流は11.3mA/cm2 であった。
【0077】実施例1と比較例1との結果の比較から、
卑金属層1を設けることにより開放電圧が約9%上昇す
ることがわかる。
【0078】実施例2 実施例1において、真性半導体層をECR反応容器62
3において電子密度1010/cm3 のプラズマを用いた
ECR−CVD法により形成すること以外は、実施例1
と同様にして光半導体素子を作製した。このときのEC
R−CVD法は、マイクロ波パワー300W、SiH2
Cl2流量5sccm、反応圧力4mTorr、反応時
間5分、その他については実施例1と同条件下において
行った。なお、真性半導体層の厚さは、実施例1と同じ
になるように調整した。
【0079】得られた光起電力素子について、実施例1
と同様にして開放電圧及び短絡電流を求めたところ、開
放電圧は0.86V、短絡電流は12.1mA/cm2
であった。
【0080】この結果と実施例1の結果との比較から、
真性半導体層を形成する際にECR-CVD法を採用す
ると、得られる光起電力素子の特性を損なうことなく、
しかもその製造時間を大幅に短縮して効率よく製造でき
ることがわかる。
【0081】比較例2 実施例2において、卑金属層1を設けないこと以外は実
施例2と同様にして光り起電力素子を作製した。得られ
た光起電力素子について、実施例2と同様にして開放電
圧及び短絡電流を求めたところ、開放電圧0.70V、
短絡電流は10.9mA/cm2 であった。
【0082】この結果と実施例2の結果との比較から、
卑金属層1を設けた場合には、真性半導体層を積層する
際にECR−CVD法のような高電流密度のプラズマを
使用しても短絡電流が低下しないことがわかる。
【0083】比較例3 実施例2において、卑金属層1を積層する際に使用する
ターゲットをNi−Cr合金から金に代える他は実施例
2と同様にして光起電力素子を作製した。なお、卑金属
層1の厚さは実施例2の場合と同じになるよう調整し
た。得られた光起電力素子について、実施例2と同様に
して開放電圧及び短絡電流を求めたところ、開放電圧
0.77V、短絡電流は11.3mA/cm2 であっ
た。
【0084】比較例4 実施例2において、卑金属層1を積層する際に使用する
ターゲットをNi−Cr合金からAl(融点660℃)
に代える他は実施例2同様にして光起電力素子を作製し
た。なお、卑金属層1の厚さは実施例2の場合と同じに
なるよう調整した。得られた光起電力素子について、実
施例2と同様にして開放電圧及び短絡電流を求めたとこ
ろ、開放電圧は0.65V、短絡電流は10.4mA/
cm2 であった。
【0085】比較例3及び比較例4の結果と実施例2の
結果との比較から、卑金属層1の構成材料としては貴金
属やその融点が1000℃未満の卑金属を使用した場合
には、開放電圧や短絡電流が低下し、本発明の効果が得
られないことがわかる。
【0086】実施例3 実施例2と同様にしてn型半導体層を積層した後、得ら
れた積層体をRF反応容器622に移送し、RF−CV
D法により厚さ10nmのアモルファスシリコンからな
る緩衝層を積層した。このときのRF−CVDは、Si
4 流量20sccm、反応圧力100mTorr、R
Fパワー5W、基板温度200℃、反応時間1分40秒
の条件下で行った。その後さらにECR反応容器623
に移送して真性半導体層積層以降の工程を実施例2と同
様に行って光起電力素子を作製した。得られた光起電力
素子について、実施例2と同様にして開放電圧及び短絡
電流を求めたところ、開放電圧は0.89V、短絡電流
は12.5mA/cm2 であった。
【0087】この結果から、n型半導体層と真性半導体
層との間に緩衝層を設けると、開放電圧がより高くなる
ことがわかる。
【0088】実施例4 実施例2において、p型半導体層形成後、第二透明導電
膜層を形成する前に、1×10-6Torr以下の真空状
態において電子ビーム蒸着法により厚さ3nmのCrか
らなる卑金属層2を形成する他は、実施例2と同様にし
て光起電力素子を作製した。得られた素子について、実
施例2と同様にして開放電圧及び短絡電流を求めたとこ
ろ、開放電圧は0.87V、短絡電流は12.8mA/
cm2 であった。
【0089】この結果から、卑金属層2を設けると、短
絡電流の値がより高くなることがわかる。
【0090】
【発明の効果】本発明の光起電力素子は、従来のn−i
−p型アモルファス光起電力素子に比べて開放電圧及び
短絡電流の値が高い。また本発明の光起電力素子は、半
導体層を形成する際に高電子密度のプラズマを用いたプ
ラズマCVD法を採用しても、その特性が損なわれない
ため、製造時間を短縮することが可能である。すなわ
ち、本発明は、優れた特性を有する光起電力素子、及び
そのような光起電力素子を効率よく製造する方法を提供
するものであり、その工業的意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】透明導電膜層が積層された基板、ならびにその
基板をRF水素プラズマ及びECR水素プラズマに暴露
した各基板について、光透過率の波長依存性を示す図で
ある。
【図2】本発明における代表的な光起電力素子の構造を
示す図である。
【図3】本発明における別態様の光起電力素子の構造を
示す図である。
【図4】本発明におけるさらに別態様の光起電力素子の
構造を示す図である。
【図5】本発明におけるさらに別態様の光起電力素子の
構造を示す図である。
【図6】本発明の光起電力素子を製造するためのプラズ
マCVD装置の概略図である。
【図7】従来のp−i−n型光起電力素子の構造を示す
図である。
【図8】従来のn−i−p型光起電力素子の構造を示す
図である。
【符号の説明】
200 光起電力素子 210 基板 220 金属層 230 透明導電膜層 240 卑金属層(卑金属層1) 250 半導体層 251 n型半導体層 252 真性半導体層 253 p型半導体層 260 第二透明導電膜層 270 集電電極 340 卑金属層(卑金属層2) 550 緩衝層 600 プラズマCVD装置 610 試料導入室 621 RF反応容器(p型半導体層、n型半導体層形
成用) 622 RF反応容器(真性半導体層、緩衝層形成用) 623 ECR反応容器 631 メカニカルブースターポンプ 632 ターボモレキュラポンプ 641 高周波発生装置 642 マイクロ波発生装置 650 ガス供給装置 660 トランスファーロッド 670 ゲートバルブ

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に、(1)金属層、(2)透明導
    電膜層、(3)少なくともn型半導体層、真性半導体
    層、及びp型半導体層を順次積層してなる半導体層、な
    らびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層してなる光
    起電力素子において、前記透明導電膜層と半導体層との
    間に、融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層を
    設けてなることを特徴とする光起電力素子。
  2. 【請求項2】 基板上に、(1)金属層、(2)透明導
    電膜層、(3)少なくともn型半導体層、真性半導体
    層、及びp型半導体層を順次積層してなる半導体層、な
    らびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層してなる光
    起電力素子において、前記半導体層と第二透明導電膜層
    との間に、融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属
    層を設けてなることを特徴とする光起電力素子。
  3. 【請求項3】 基板上に、(1)金属層、(2)透明導
    電膜層、(3)少なくともn型半導体層、真性半導体
    層、及びp型半導体層を順次積層してなる半導体層、な
    らびに(4)第二透明導電膜層、を順次積層してなる光
    起電力素子において、前記透明導電膜層と半導体層との
    間、及び前記第二透明導電膜層と半導体層との間に、融
    点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層を設けてな
    ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光起
    電力素子。
  4. 【請求項4】 融点1000℃以上の卑金属からなる卑
    金属層が、Ni、又はCr、又はそれらの合金からなる
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の光
    起電力素子。
  5. 【請求項5】 少なくともn型半導体層と真性半導体層
    との間に、緩衝層を設けてなることを特徴とする請求項
    1〜4のいずれか一に記載の光起電力素子。
  6. 【請求項6】 基板上に、金属層、透明導電膜層、及び
    融点1000℃以上の卑金属からなる卑金属層を順次積
    層し、次いで前記卑金属層上に少なくともn型半導体
    層、真性半導体層、及びp型半導体層からなる半導体層
    をプラズマCVD法により順次積層して半導体層を形成
    し、その後、第二透明導電膜層を積層することを特徴と
    する光起電力素子製造方法。
  7. 【請求項7】 基板上に、金属層、透明導電膜層を順次
    積層し、次いで前記透明導電膜層上に少なくともn型半
    導体層、真性半導体層、及びp型半導体層からなる半導
    体層をプラズマCVD法により順次積層して半導体層を
    形成し、次いで前記半導体層上に融点1000℃以上の
    卑金属からなる卑金属層を積層し、その後、前記卑金属
    層上に第二透明導電膜層を積層することを特徴とする光
    起電力素子製造方法。
  8. 【請求項8】 基板上に、金属層、透明導電膜層、及び
    融点1000℃以上の卑金属からなる第一の卑金属層を
    順次積層し、次いで前記卑金属層上に少なくともn型半
    導体層、真性半導体層、及びp型半導体層からなる半導
    体層をプラズマCVD法により順次積層して半導体層を
    形成し、次いで前記半導体層上に融点1000℃以上の
    卑金属からなる第二の卑金属層を積層し、その後、前記
    卑金属層上に第二透明導電膜層を積層することを特徴と
    する光起電力素子製造方法。
  9. 【請求項9】 半導体層中の真性半導体層を、109
    cm3以上の電子密度を有するプラズマCVD法により
    積層することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一に
    記載の光起電力素子製造方法。
  10. 【請求項10】 少なくともn型半導体層と真性半導体
    層との間に緩衝層を設けることを特徴とする請求項6〜
    9のいずれか一に記載の光起電力素子製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2010052953A1 (ja) * 2008-11-07 2010-05-14 三菱重工業株式会社 光電変換装置の製造方法及び光電変換装置
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