JP2000087301A - 軌道砕石部のグラウト材注入工法 - Google Patents

軌道砕石部のグラウト材注入工法

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JP2000087301A
JP2000087301A JP10255774A JP25577498A JP2000087301A JP 2000087301 A JP2000087301 A JP 2000087301A JP 10255774 A JP10255774 A JP 10255774A JP 25577498 A JP25577498 A JP 25577498A JP 2000087301 A JP2000087301 A JP 2000087301A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 施工現場での注入作業が容易で、施工時間の
短縮が可能であり、鉄道軌道の保線作業の大幅な省力化
が可能で、しかも施工コストを削減することができる軌
道砕石部のグラウト材注入工法を提供すること。 【解決手段】 注入材として、バイモーダルな粒度分布
を有するセメントと、鉱物質フィラーとからなり、硬化
後の変形係数が2000〜50000kgf/cm2
下であるグラウト材14を用い、 枕木7上に敷設され
たレール9上を走行自在な移動型プラント10を前記レ
ール9に沿って移動させながら、該移動型プラント10
に積載された前記グラウト材14を混練、散布し、前記
枕木7下または道床バラスト間の隙間あるいはこれらの
両方に前記グラウト材14を浸透、充填する軌道砕石部
のグラウト材注入工法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、道床バラスト間の
隙間や枕木下に注入材を注入して、累積列車荷重による
枕木の沈下や軌道の狂いなどを防止するのに適した軌道
砕石部のグラウト材注入工法に関し、鉄道軌道の保線作
業の大幅な省力化が可能で、しかも施工コストを削減す
ることができる軌道砕石部のグラウト材注入工法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、軌道砕石部の施工方法におい
ては、枕木下や道床バラスト間に生じる空隙部に対し
て、注入材を注入することにより、累積列車荷重による
枕木の沈下や軌道の狂いを防止する方法が採用されてい
る。
【0003】この方法で使用されている注入材として
は、特開平7−69698に記載のセメントアスファル
トモルタル(以下、「CAモルタル」と略記する)と呼
ばれる特殊な注入材などが用いられている。このCAモ
ルタルは、急結剤により急結性を付与される普通セメン
トモルタル、 アスファルト乳剤、ポリマーエマルジョ
ン、発泡剤などの各種添加物よりなる複雑な組成のもの
であり、セメント系材料特有の脆性、伸び能力、じん性
などをアスファルト乳剤を添加することで改善した独特
の複合材料である。表1に、CAモルタルの配合の一例
を示す。
【0004】
【表1】
【0005】ところで、 上述したような用途に使用さ
れる注入材に要求される条件としては、次のような条件
が挙げられる。 (1)使用する材料の種類が少なく、管理が容易であ
る。 (2)注入に必要な流動性を有する。 (3)注入速度を速くすることができ、道床バラスト間
への浸透速度が速い。 (4)鉄道などの、時間的制約がある現場においての急
速施工に対応可能である。 (5)強度ならびに変形係数が、過大な値となることが
ない。 (6)ブリージングによる沈下がない。 (7)荷重に対する変形追随性と、ひび割れ抵抗性に優
れる。 (8)耐久性に優れる。 (9)安価である。
【0006】しかしながら、従来の軌道砕石部のグラウ
ト材注入工法にあっては、CAモルタルなどの注入材
が、 前記(2)〜(8)の要求条件を満足することは
できるが、前記(1)の使用する材料の種類が少なく、
管理が容易であることと、前記(9)の安価であること
については、要求条件を満足できるものではなかった。
【0007】例えば、従来法で用いられているCAモル
タルでは、表1からあきらかなように、その使用材料の
構成は9種類にもおよび、さらに、一万分の1〜1%以
下という、きわめて微量な添加量の管理を必要とする成
分も使用しなければならなかった。また、本来、注水後
数時間かけて凝結し、数日後〜数週にわたって強度を発
現するのが正常である普通セメントを、急結剤によって
急結性とするため、季節変動や日間および日内温度変化
に対応した急結剤の添加量管理を行う必要があり、特殊
な技術が必要である。 このため、熟練した特別な技術
者の管理下でのみしか、その優れた性能を発揮できず、
その施工にあたっては、熟練した特別な技術者による管
理が不可欠となっていた。
【0008】したがって、従来の軌道砕石部のグラウト
材注入工法にあっては、使用する注入材の性能について
は満足できても、多種類の材料を使用しているため、調
製作業が煩雑であることや、管理技術が困難であること
が、施工コストに反映し、工事遂行上の課題となってい
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記事情に
鑑みてなされたもので、このような問題を解決し、施工
現場での注入作業が容易で、鉄道軌道の保線作業の大幅
な省力化が可能で、しかも施工コストを削減することが
できる軌道砕石部のグラウト材注入工法を提供すること
を課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題は、路盤上に敷
き詰められた道床バラスト間の隙間または該道床バラス
トに埋設された枕木下あるいはこれら両方に注入材を注
入する軌道砕石部のグラウト材注入工法であって、注入
材として、バイモーダルな粒度分布を有するセメント
と、鉱物質フィラーとからなる一液性グラウト材を用
い、このグラウト材硬化後の変形係数が 2000〜5
0000kgf/cm2である注入工法によって解決で
きる。さらに、枕木上に敷設されたレール上を走行自在
な移動型プラントを前記レールに沿って移動させなが
ら、該移動型プラントに積載された前記一液性グラウト
材を混練、散布し、前記枕木下または道床バラスト間の
隙間あるいはこれらの両方に前記一液性グラウト材を浸
透、充填する軌道砕石部のグラウト材注入工法とするこ
とが望ましい。
【0011】また、バイモーダルな粒度分布を有するセ
メントが、比表面積1500〜3500cm2/gのセ
メントと、比表面積4000〜7500cm2/gのセ
メントとからなるものである一液性グラウト材を用いる
軌道砕石部のグラウト材注入工法とすることが望まし
い。さらに、鉱物質フィラーの粉末度が、 1500〜
6000cm2/gである一液性グラウト材を用いる 軌
道砕石部のグラウト材注入工法とすることが望ましい。
さらにまた、鉱物質フィラーの添加量が、バイモーダル
な粒度分布を有するセメント100重量部に対して50
〜350重量部である一液性グラウト材を用いる軌道砕
石部のグラウト材注入工法とすることが望ましい。
【0012】本願発明者は、従来の軌道砕石部のグラウ
ト材注入工法において使用されている注入材に残された
課題、すなわち、多種類の材料を使用していることか
ら、調製作業が煩雑であり、管理技術が困難であり、施
工コストが高いという課題を解決し、なおかつ、その優
れた性能を損なうことがないものとするため、本発明の
軌道砕石部のグラウト材注入工法においては、 使用す
る材料を精選し、鋭意研究、検討を重ねた結果、バイモ
ーダルな粒度分布を有するセメントを結合剤とすること
によって、使用する材料の種類を少なくし、材料の変形
追随性およびひび割れ抵抗性を確保するために鉱物質フ
ィラーを精選し、その添加によって、変形係数が過剰と
ならず、すなわち柔らかく、ひび割れ抵抗性にも優れた
注入材を得ることができ、これを用いて施工することで
施工時間を短縮することができることを見いだした。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の軌道砕石部のグラウト材注入工法に用いられる
注入材は、バイモーダルな粒度分布を有するセメント
と、鉱物質フィラーとからなるものであり、硬化後の変
形係数が 2000〜50000kgf/cm2以下とな
る一液性グラウト材である。変形係数が 50000k
gf/cm2を越えると荷重に対する変形追従性が小さ
くなり、好ましくない。また、変形係数が2000kg
f/cm2未満では、硬化体の強度が小さくなり好まし
くない。
【0014】ここでのバイモーダルな粒度分布を有する
セメントとは、セメント中の粒度分布曲線上に離れた2
つのピークを有するセメントのことをいい、比表面積が
小さいセメント(以下、「セメントA」と略記する)
と、前記比表面積が小さいセメントよりも比表面積が大
きいセメント(以下、「セメントB」と略記する)とを
混合して得ることができる。なお、セメントの粉末度の
表示は、本来粒度分布を以て表示すべきであるが、粒度
分布とブレーン法試験による比表面積が高度の相関関係
を有することが知られているので、ここでは粒度分布に
代えて比表面積を以て表示することにした。
【0015】ここでのセメントAとしては、 比表面積
が1500〜3500cm2/gの範囲であるセメント
が好ましく使用される。比表面積が前記範囲未満のもの
を使用した場合、粒子が粗く、水に触れる粒子の表面積
が小さいことから、反応活性が低く、水和反応速度が遅
くなるため、材令に対する強度の発現が遅くなり、施工
時間を短縮することができなくなり、好ましくない。一
方、比表面積が前記範囲を越えるセメントを用いた場
合、バイモーダルな粒度分布とすることができなくなる
可能性があり、目的とする性能が得られなくなる恐れが
あるため、好ましくない。
【0016】また、セメントAとしては、 2CaO・
SiO2を、5〜30重量%含有し、かつ、前記含有量
が、 セメントBにおける2CaO・SiO2含有量より
も多いものが好ましく使用される。 2CaO・SiO2
含有量を前記範囲未満とした場合、硬化後の硬化体の乾
燥収縮が大きくなるため好ましくない。一方、前記範囲
を越える含有量とした場合、強度の発現が遅くなるため
好ましくない。また、前記含有量がセメントBにおける
2CaO・SiO2含有量より少ない場合、バイモーダ
ルな粒度分布を有するセメント中の2CaO・SiO2
含有量が少なくなり、 硬化後の硬化体の乾燥収縮が大
きくなるため好ましくない。
【0017】ここでのセメントBとしては、 比表面積
が4000〜7500cm2/gの範囲であるセメント
が好ましく使用される。比表面積が前記範囲未満のもの
を使用した場合、バイモーダルな粒度分布とすることが
できなくなる可能性があり、目的とする性能が得られな
くなる恐れがあるため、好ましくない。一方、前記範囲
を越えるセメントを用いた場合、粒子が細かく、水に触
れる粒子の表面積が大きいことから、反応活性が高く、
水和反応速度が速くなるため、注入に適した流動性を維
持することが困難となり、可使時間が不十分となるの
で、また、コワバリが発生しやすくなるので好ましくな
い。
【0018】また、セメントBとしては、 11CaO
・7Al23・CaF2を、10〜30重量%含有する
ものが好ましく使用される。11CaO・7Al23
CaF 2含有量を前記範囲未満とした場合、 水和反応速
度が遅くなり、材令に対する強度の発現が遅くなり、施
工時間が長くなるため、好ましくない。一方、前記範囲
を越える含有量とした場合、水和反応速度が速くなるた
め、注入に適した流動性を維持することが困難となるた
め、好ましくない。
【0019】さらにまた、セメントBとしては、 2C
aO・SiO2を、0〜10重量%含有し、かつ、前記
含有量が、 セメントAにおける2CaO・SiO2含有
量よりも少ないものが好ましく使用される。 2CaO
・SiO2含有量が前記範囲を越える場合、強度の発現
が遅くなるため好ましくない。
【0020】このグラウト材に使用されるバイモーダル
な粒度分布を有するセメント中における、セメントA
と、セメントBとの配合比は、目標とする可使時間や、
必要とされる強度などに応じて決定され、セメントAお
よびセメントBそれぞれの比表面積によって異なり、両
者の特有の性質を合わせ持つものとなる範囲とされる。
このセメントAと、セメントBとの配合比は、具体的に
例えば、セメントA:セメントB=20:80〜80:
20程度の範囲とすることが好ましい。セメントAの配
合比を前記範囲未満とした場合、水和反応速度が速くな
るため、注入に適した流動性を維持することが困難とな
り、可使時間が不十分となるため、好ましくない。一
方、前記範囲を越える配合比とした場合、水和反応速度
が遅くなるため、材令に対する強度の発現が遅くなり、
施工時間を短縮することができなくなり、好ましくな
い。
【0021】バイモーダルな粒度分布を有するセメント
を製造するのに使用されるセメント用クリンカーとして
は、例えば、ジェットセメントなどの超速硬セメント
や、アルミナ系セメント、早強ポルトランドセメント、
普通ポルトランドセメント用などのクリンカーを用いる
ことができ、通常、ジェットセメント用クリンカーなど
が、施工の条件などに応じて可使時間を容易に調整する
ことができるという利点を有し、好ましく使用される。
【0022】また、鉱物質フィラーとしては、粉末度
が、ブレーン値として1500〜6000cm2/g程
度のものを用いるのが好ましく、 より好ましくは、2
500〜4500cm2/g程度のものが用いられる。
粉末度が1500cm2/gより小さくなると、ブリー
ジングが大きくなる恐れがあるため、好ましくない。一
方、粉末度が6000cm2/gより大きくなると、 流
動性が低下する恐れがあり、好ましくない。
【0023】ここでの鉱物質フィラーとしては、乾燥状
態とされたものが好ましく、天然および人工鉱物粉末な
どを用いることができ、 具体的には、粘土粉末、石灰
石粉末、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフュ
ーム、珪石粉末、珪砂粉末、アルミナ粉末などが用いら
れる。
【0024】ここで使用される鉱物質フィラーの添加量
は、バイモーダルな粒度分布を有するセメント100重
量部に対し、50〜350重量部程度、好ましくは、1
50〜250重量部程度の範囲とされる。鉱物質フィラ
ーの添加量が50重量部未満であると、グラウト材の硬
化体の変形係数が大きくなりすぎる恐れがあるため好ま
しくない。一方、鉱物質フィラーの添加量が350重量
部を越えると、グラウト材の硬化体の必要強度が得られ
なくなる恐れがあるため好ましくない。
【0025】また、ここで使用される乾燥収縮低減剤と
しては、有機系の乾燥収縮低減剤が用いられ、例えば、
低級アルコールアルキレンオキシド付加物を主成分とす
るものや、低級アルコールを主成分とするもの、エーテ
ル型非イオン表面活性剤を主成分とするものなどが使用
され、具体的には、低級アルコールを主成分とするテス
タF(商品名:住友大阪セメント株式会社製)などが好
ましく使用される。
【0026】さらに、必要に応じて添加される減水剤と
しては、モルタルやコンクリートの減水剤として一般に
用いられているものを使用することができ、例えば、ナ
フタリン系、メラミン系、ポリカルボン酸系、リグニン
系などのものが好ましく使用され、具体的には、ナフタ
リンスルフォン酸ホルムアルデヒド高縮合物を主成分と
するマイティ150(商品名:花王株式会社製)などが
好適に使用される。また、ここで使用される減水剤の種
類によっては、巻き込み空気を消すための消泡性界面活
性剤などが添加され使用される。
【0027】そのほかの添加剤としては、例えば、可使
時間を調整するために必要に応じて添加される、硬化遅
延剤などが挙げられる。ここでの硬化遅延剤としては、
ジェットセッターなどの有機酸系、リグニンスルホン酸
塩系、グルコン酸塩系のものや、ポリオール高分子複合
体を主成分とするものなどが好ましく使用される。
【0028】本発明の軌道砕石部のグラウト材注入工法
は、定置型プラント又は移動型プラントのいずれのプラ
ントを用いても施工できるが、ここでは移動型プラント
を例示して、実施の形態を説明する。従って以下の説明
によって本発明内容が限定されるものではない。移動型
プラントによる施工の例を、図1および図2を利用して
説明する。図1において、符号1は、路盤であり、符号
5は、下層の道床バラスト、符号7は、前記下層の道床
バラスト5に埋設された枕木、符号9は、前記枕木7上
に敷設されたレール、符号10は、前記レール9上を走
行自在な移動型プラントである。
【0029】前記移動型プラント10は、モーターカー
11と、これに接続された第一の台車12、第ニの台車
13とを備えている。この第一の台車12上には、一液
性グラウト材14をなす材料である、バイモーダルな粒
度分布を有するセメントと鉱物質フィラーとが、別々に
貯留されたサイロ15と、前記一液性グラウト材14を
なす材料と水16とを混練するためのミキサ17と、前
記ミキサ17で混練された一液性グラウト材14を、パ
イプ18を介して下層の道床バラスト5間の隙間に散布
するためのポンプ19とが積載されている。 前記サイ
ロ15には、注入材供給管15aの一端が接続されてい
る。また、 この注入材供給管15aの他端は、前記ミ
キサ17に接続されている。
【0030】一方、第二の台車13上には、発電機20
と、前記ミキサ17に供給する水16を貯留するための
水貯留層22と、廃液槽23とが積載されている。前記
水貯留槽22には、水供給管25の一端が接続されてい
る。また、この供給管25の他端は、前記ミキサ17に
接続されている。
【0031】枕木7下や道床バラスト間に生じる空隙部
に注入材を注入するには、注入材として前記一液性グラ
ウト材14を用い、前記移動型プラント10を前記レー
ル9に沿って移動させながら、該移動型プラント10に
積載された前記一液性グラウト材14を混練、注入し、
前記枕木7下または下層の道床バラスト5間の隙間ある
いはこれらの両方に前記一液性グラウト材14を浸透、
充填することによって行われる。
【0032】ここでの一液性グラウト材14の調製は、
バイモーダルな粒度分布を有するセメントと、鉱物質フ
ィラーとを、第一のサイロ15からそれぞれ所定の配合
量となるように、注入材供給管15aを介してミキサ1
7に投入し、ついで、必要に応じて減水剤などの添加剤
を添加して、予備混練し、これに、水16を、水貯留槽
22から水供給管25を介してミキサ17に供給し、さ
らに必要に応じて予備混練前に添加していない添加剤を
添加し、さらに、これを混練することによって行われ
る。また、前記一液性グラウト材14の浸透、充填は、
前記ポンプ19からパイプ18に50〜300リットル
/分程度、好ましくは、180〜200リットル/分程
度で送り出し、図2に示すように、枕木7の周囲または
下層の道床バラスト5上、あるいはこれらの両方に注入
し、前記枕木7下または下層の道床バラスト5間の隙間
あるいはこれら両方に浸透、充填させることによって行
われる。
【0033】このようにして一液性グラウト材14が注
入された下層の道床バラスト5は、0.75〜3時間程
度、好ましくは、1〜1.5時間程度養生すると、一種
のコンクリートスラブへと転化した充填層5aとされ
る。この後、充填層5a上および枕木7の周囲には、上
層の道床バラストが敷き固められ、バラスト軌道とされ
使用される。
【0034】このような軌道砕石部のグラウト材注入工
法にあっては、注入材として、バイモーダルな粒度分布
を有するセメントと、鉱物質フィラーとからなる一液性
グラウト材14を用いているので、以下のような効果が
ある。 (1)一液性グラウト材14の配合における水材料比を
高くすることなく、注入に適した流動性を得ることがで
きる。このため、硬化後の一液性グラウト材14の乾燥
収縮を少なくすることができ、湿乾の繰り返しに耐え得
るバラスト軌道を提供できる軌道砕石部のグラウト材注
入工法となる。
【0035】(2)単純、かつ、管理の容易な材料のみ
を厳選して使用しているので、取扱いやすく、施工現場
での注入工事の際の作業性を向上させることができる軌
道砕石部のグラウト材注入工法となる。 (3)流動性に優れ、しかも粘性が低いので、道床バラ
スト5間の隙間や枕木7下への注入速度および浸透速度
を速くすることができ、例えば、終電から始発間の短い
時間内での急速施工でも、熟練した特別な技術者を必要
とせずに十分対応することができ、 バラスト軌道の保
線作業の大幅な省力化を計ることができる。
【0036】(4)硬化後の変形係数が2000〜50
000kgf/cm2となり、 荷重追従性が向上し、ひ
び割れ抵抗性ならびに耐久性に優れたバラスト軌道を提
供することができる。
【0037】また、レール9上を走行自在な移動型プラ
ント10を用いた場合には、固定(定置)型プラントを
用いる場合よりも設置費用がかからず、安価であるう
え、前記移動型プラント10をレール9の沿って移動さ
せながら、グラウト材14を注入することができ、限ら
れた時間内での急速施工でもフレキシブルに対応するこ
とができる。
【0038】さらに、一液性グラウト材14に使用する
バイモーダルな粒度分布を有するセメントを、比表面積
1500〜3000cm2/gのセメントと、 比表面積
4000〜7500cm2/gのセメントとからなるも
のとすることで、 セメントAおよびセメントBの性質
上の利点を、より一層生かすことができるものとなる。
【0039】また、一液性グラウト材14に使用する鉱
物質フィラーの粉末度を1500〜6000cm2/g
程度とした場合、 鉱物質フィラーの粉末度が高いた
め、これを含有してなるグラウト材のブリージングを防
止することができ、硬化までの材料分離を防止する効果
が優れるという利点と、 良好な流動性を有するものと
なり、施工現場での注入工事の際の作業性をより一層向
上させることができる。さらに、一液性グラウト材14
に使用する鉱物質フィラーの添加量を、バイモーダルな
粒度分布を有するセメント100重量部に対し、50〜
350重量部程度とすることで、硬化後の変形係数がよ
り一層好ましいものとなり、荷重追従性が大幅に向上
し、より一層優れたひび割れ抵抗性ならびに耐久性を有
するバラスト軌道を提供することができる。
【0040】また、道床バラストに、一液性グラウト材
14を充填し、養生することで、一種のコンクリートス
ラブ軌道へと転化せしめることができるので、道床バラ
ストの移動、破壊、粉状化、累積列車荷重による枕木7
の沈下や軌道の狂いなどを防止できるバラスト軌道を提
供することができる軌道砕石部のグラウト材注入工法と
なる。
【0041】なお、本発明の移動型プラントによる施工
においては、移動型プラント10の第一の台車12に積
載されたミキサ17で、一液性グラウト材14を混練
し、パイプ18から散布した場合について説明したが、
移動型プラント10の第一の台車12または第二の台車
13に、オーガーミキサを備えたコンチニアンスミキサ
を積載し、前記オーガーミキサでグラウト材14を混練
し、それを前記オーガーミキサに接続されたパイプ18
から注入してもよい。
【0042】
【実施例】以下、本発明の軌道砕石部のグラウト材注入
工法を実施例を示して具体的に詳しく説明するが、本発
明は、これらの実施例にのみ限定されるものではない。 (実施例1および実施例2)比表面積が2500cm2
/gであるセメントAと、比表面積が6800cm2
gであるセメントBとからなるバイモーダルな粒度分布
を有するセメントを調製した。このバイモーダルな粒度
分布を有するセメントと、 粉末度が3200cm2/g
の鉱物質フィラーとをプレミクスし、これに、混練水を
加え、さらに、添加剤として減水剤あるいは減水剤と、
乾燥収縮低減剤と、硬化遅延剤とを添加し、これらを練
り混ぜて、表2に示す配合の一液性グラウト材14を調
製した。
【0043】
【表2】
【0044】上記表2に示すグラウト材14の材料とし
ては、以下に示すものを使用した。 セメントA:ジェットセメント用クリンカーおよびせっ
こうなどを粉砕して、比表面積が1500〜3500c
2/gの範囲となるよう調製したセメント。 セメントB:ジェットセメント用クリンカーおよびせっ
こうなどを粉砕して、比表面積が4000〜7500c
2/gの範囲となるよう調製したセメント。 鉱物質フィラー:粘土粉末 減水剤:マイティ150(商品名:花王株式会社製) 乾燥収縮低減剤:テスタF(商品名:住友大阪セメント
株式会社製) 硬化遅延剤:ジェットセッター(商品名:住友大阪セメ
ント株式会社製)
【0045】このようにして得られた実施例1および実
施例2の一液性グラウト材14それぞれについて、流動
性、可使時間、ブリージング、空気量、練上がり比重、
材料分離、強度、変形係数、乾燥収縮、材料単価を調
べ、評価した。
【0046】ここでの流動性については、土木学会基準
に定めるJAロート流下時間(秒)測定法に準じて測定
し、評価した。ブリージングについては、土木学会基準
に準じて測定し、評価した。圧縮強度および変形係数に
ついては、土の一軸圧縮試験機を用いて測定し、評価し
た。曲げ強度については、JIS R 5210を用い
て評価した。引張強度については、JIS A 111
3を用いて評価した。乾燥収縮については、大気中に9
1日間放置し、目視によって評価した。結果を表3およ
び表4に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】表3および表4より、実施例1および実施
例2の一液性グラウト材14は、適度な流動性を有し、
強度ならびに変形係数が過剰な値とならず、荷重に対す
る追随性に優れており、ひび割れ抵抗性も向上している
と評価できる。また、実施例1および実施例2の一液性
グラウト材14は、ブリージングがほぼゼロに調製され
ており、さらに大気中に91日間放置しても異常が認め
られず、また、乾燥収縮率が低く、ひび割れ抵抗性が向
上していると評価できる。また、コストもCAモルタル
の70%程度であり安価なものであることが確認でき
た。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように本発明の軌道砕石部
のグラウト材注入工法においては、前述の構成とするこ
とによって、施工現場での注入作業が容易で、施工時間
の短縮が可能であり、鉄道軌道の保線作業の大幅な省力
化が可能で、しかも施工コストを削減することができる
という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の軌道砕石部のグラウト材注入工法の
移動式の例を説明するための図である。
【図2】 移動式の例の軌道砕石部のグラウト材注入工
法において、グラウト材を注入する方法を説明するため
の図である。
【符号の説明】
1・・・路盤、5・・・下層の道床バラスト、 7・・
・枕木、9・・・レール、10・・・移動型プラント、
14・・・グラウト材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡村 達也 東京都千代田区神田美土代町1番地 住友 大阪セメント株式会社内 (72)発明者 吉原 正博 千葉県船橋市豊富町585番地 住友大阪セ メント株式会社セメントコンクリート研究 所関東技術センター内 (72)発明者 東条 小百合 千葉県船橋市豊富町585番地 住友大阪セ メント株式会社セメントコンクリート研究 所関東技術センター内 Fターム(参考) 2D056 AA03 AA09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 路盤上に敷き詰められた道床バラスト間
    の隙間または該道床バラストに埋設された枕木下あるい
    はこれら両方に注入材を注入する軌道砕石部のグラウト
    材注入工法であって、 注入材として、バイモーダルな粒度分布を有するセメン
    トと、鉱物質フィラーとからなり、 硬化後の変形係数
    が2000〜50000kgf/cm2である一液性グ
    ラウト材を用いることを特徴とする軌道砕石部のグラウ
    ト材注入工法。
  2. 【請求項2】 枕木上に敷設されたレール上を走行自在
    な移動型プラントを前記レールに沿って移動させなが
    ら、該移動型プラントに積載された前記一液性グラウト
    材を混練、散布し、前記枕木下または道床バラスト間の
    隙間あるいはこれらの両方に前記一液性グラウト材を浸
    透、充填することを特徴とする請求項1記載の軌道砕石
    部のグラウト材注入工法。
  3. 【請求項3】 バイモーダルな粒度分布を有するセメン
    トが、比表面積1500〜3500cm2/gのセメン
    トと、比表面積4000〜7500cm2/gのセメン
    トとからなるものである一液性グラウト材を用いること
    を特徴とする請求項1または請求項2記載の軌道砕石部
    のグラウト材注入工法。
  4. 【請求項4】 鉱物質フィラーの粉末度が、 1500
    〜6000cm2/gである一液性グラウト材を用いる
    ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載
    の軌道砕石部のグラウト材注入工法。
  5. 【請求項5】 鉱物質フィラーの添加量が、バイモーダ
    ルな粒度分布を有するセメント100重量部に対して5
    0〜350重量部である一液性グラウト材を用いること
    を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の軌
    道砕石部のグラウト材注入工法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002242103A (ja) * 2001-02-14 2002-08-28 Railway Technical Res Inst まくらぎ下の隙間充填工法
JP2002242104A (ja) * 2001-02-14 2002-08-28 Railway Technical Res Inst 道床強化軌道の構築方法
JP2015071892A (ja) * 2013-10-03 2015-04-16 新日鐵住金株式会社 支持高さの変更を伴う構造体の補修方法
KR101899867B1 (ko) * 2016-11-09 2018-09-18 한상천 철도 선로 자갈보수 차량 및 이를 이용한 자갈 궤도 유지보수방법

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