JP2000080967A - エンジンの燃料供給装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 クランク室内のオイルミストが脈動式圧送ポ
ンプに入り込むことを低減させて、脈動式圧送ポンプの
適正な作動が長期間得られるようにする。 【解決手段】 クランク室(２)内で発生した負圧脈動を
負圧取入口(41)を介して脈動式圧送ポンプ(10)へ取り入
れることにより、上記負圧脈動によって脈動式圧送ポン
プ(10)を作動させてエンジン(１)の気化器への燃料供給
を行う。上記負圧取入口(41)に対面するようにシール板
(７)を構成し、これによって負圧取入口(41)がクランク
室(２)へ直接には臨めないようにする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの燃料供
給装置に関し、特に、クランク室内で発生した負圧脈動
によって脈動式圧送ポンプを作動させてエンジンへの燃
料供給を行う燃料供給装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種の燃料供給装置としては、例えば
次のように構成してある。即ち、クランク室と脈動式圧
送ポンプの負圧室とを接続するとともに、燃料タンクと
気化器とを脈動式圧送ポンプのポンプ室を介して接続し
てある。そして、上記クランク室内で発生した負圧脈動
が脈動式圧送ポンプの負圧室へ取り入れられ、その負圧
脈動に応じて脈動式圧送ポンプのダイヤフラムが作動す
ることにより、燃料タンク内の燃料が脈動式圧送ポンプ
のポンプ室を介して気化器へ圧送される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記クラン
ク室内にはオイルミストが充満しているため、そのオイ
ルミストがクランク室内の空気と共に上記脈動式圧送ポ
ンプの負圧室に入り込んでしまう。その結果、上記オイ
ルミストが脈動式圧送ポンプの負圧室に溜まって、負圧
室の容量を低下させてしまい、これによって脈動式圧送
ポンプの適正な作動が妨げられる。

【０００４】本発明は、クランク室内のオイルミストが
脈動式圧送ポンプに入り込むことを低減させて、脈動式
圧送ポンプの適正な作動が長期間得られるようにするこ
とを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】[請求項１の発明]請求項
１の発明は、上記の目的を達成するために、例えば図１
と図２とに示すように、次のように構成したものであ
る。クランク室(２)内で発生した負圧脈動を負圧取入口
(41)を介して脈動式圧送ポンプ(10)へ取り入れることに
より、クランク室(２)内での負圧脈動によって脈動式圧
送ポンプ(10)を作動させてエンジン(１)への燃料供給を
行うエンジンの燃料供給装置において、上記負圧取入口
(41)に対面させて遮油体(７)を配置することにより、負
圧取入口(41)がクランク室(２)へ直接には臨まないよう
に構成したものである。

【０００６】[請求項２の発明]また、請求項２の発明
は、上記請求項１の発明の構成において、さらに次のよ
うに構成したものである。上記負圧取入口(41)をシリン
ダヘッド(５)の底面部分(42)に開口させ、遮油体(７)
は、シリンダヘッド(５)と、クランク室(２)に連設した
シリンダ本体(３)との間に配置される密封用のシール板
を、負圧取入口(41)に対面する位置まで延長することに
よって構成したものである。

【０００７】[請求項３の発明]さらに、請求項３の発明
は、上記請求項１又は２の発明の構成において、さらに
次のように構成したものである。上記エンジン(１)は、
シリンダ本体(３)をクランク室(２)から斜め上方向へ向
けて突出させて構成し、脈動式圧送ポンプ(10)を、シリ
ンダ本体(３)の傾斜側の下方空間(40)内に配置したもの
である。

【０００８】

【作用】［請求項１］上記請求項１の発明は、例えば図
１と図２とに示すように、次のように作用する。即ち、
クランク室(２)内の負圧が負圧取入口(41)を介して脈動
式圧送ポンプ(10)へ取り入れられ、上記クランク室(２)
内の負圧脈動によって脈動式圧送ポンプ(10)が作動し、
これによってエンジン(１)への燃料供給が行われる。

【０００９】一方、クランク室(２)内には、コンロッド
(28)に設けたオイルデッパ(30)などによってオイルミス
トが飛散しており、そのオイルミストの一部が負圧取入
口(41)側へ向かうが、そのオイルミストは遮油体(７)に
当たってその遮油体(７)に付着し、また、上記遮油体
(７)がある分だけ、クランク室(２)から上記負圧取入口
(41)への距離が長くなって上記オイルミストが上記負圧
取入口(41)へ届きにくくなる。これにより、上記オイル
ミストが上記負圧取入口(41)へ入り込むことが低減され
る。

【００１０】［請求項２］上記請求項２の発明は、上記
請求項１の発明の作用に加えて、さらに次のように作用
する。シリンダヘッド(５)とシリンダ本体(３)とを密封
するために配置されたシール板の一部に変更を加えるだ
けで、上述のオイルミストの負圧取入口(41)への入り込
みを低減できることにより、上述の遮油体(７)を別途設
けなくても済む。

【００１１】［請求項３］上記請求項３の発明は、上記
請求項１又は２の発明の作用に加えて、さらに次のよう
に作用する。脈動式圧送ポンプ(10)がシリンダ本体(３)
の傾斜側の下方空間(40)内に配置されることにより、そ
の下方空間(40)を有効に活用することができる。

【００１２】

【発明の効果】［請求項１］上記請求項１の発明は、上
記のように構成され作用することから次の効果を奏す
る。クランク室内に飛散したオイルミストの一部が負圧
取入口側へ向かっても、そのオイルミストは遮油体に当
たってその遮油体に付着し、また、遮油体がある分だ
け、クランク室から負圧取入口への距離が長くなってオ
イルミストが負圧取入口へ届きにくくなるので、上記オ
イルミストが負圧取入口へ入り込むことが低減される。
つまり、クランク室内のオイルミストが脈動式圧送ポン
プに入り込むことが低減され、脈動式圧送ポンプの適正
な作動を長期間得ることができる。

【００１３】［請求項２］上記請求項２の発明は、上記
のように構成され作用することから次の効果を奏する。
遮油体を別途設けなくてもシール板の一部に変更を加え
るだけで、オイルミストの負圧取入口への入り込みを低
減できるので、従来のエンジンに対して設計変更をあま
り行わなくても、上述のオイルミストが脈動式圧送ポン
プに入り込むことを低減する効果を得ることができる。

【００１４】［請求項３］上記請求項３の発明は、上記
請求項１や請求項２の発明の効果に加え、さらに次の効
果を奏する。即ち、脈動式圧送ポンプがシリンダ本体の
傾斜側の下方空間内に配置されるので、その下方空間を
有効活用できてエンジンをコンパクトにまとめることが
できる。しかも、上述の遮油体によってオイルミストの
負圧取入口への入り込みが低減されるので、上述のよう
に脈動式圧送ポンプをシリンダ本体の下方空間内に配置
したことで、クランク室内の潤滑油の油面に脈動式圧送
ポンプ及び負圧取入口が近くなっていても、オイルミス
トの脈動式圧送ポンプへの入り込みを確実に低減でき
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるエンジンの
燃料供給装置の実施の一形態について図１から図３を用
いて説明する。なお、この実施の形態では、単気筒の傾
斜型ガソリンエンジンを例にして説明する。図１(Ａ)は
上記エンジンの縦断面図、図１(Ｂ)は上記燃料供給装置
の要部を示す拡大断面図である。図２は図１(Ａ)中のII
−II線矢視断面図、図３は上記燃料供給装置にかかる脈
動式圧送ポンプの断面図である。

【００１６】上記傾斜型エンジン(１)は、クランク室
(２)の後部[図１(Ａ)中では右側]から斜め上後方へ向け
てシリンダ本体(３)を突出させて連設してあり、そのク
ランク室(２)の上方に燃料タンク(４)を設けてある。な
お、上記シリンダ本体(３)は、水平軸に対して、例えば
３０゜〜３５゜の範囲で傾斜してある。上記シリンダ本
体(３)の上側には、シリンダヘッド(５)とヘッドカバー
(６)とを順に組み付けてあり、そのシリンダヘッド(５)
と上記シリンダ本体(３)との間に密封用のシール板(７)
を配置してある。

【００１７】一方、上記シリンダヘッド(５)の底面と、
ピストン(８)のピストンヘッドとによって燃焼室(９)が
形成されており、その燃焼室(９)に点火プラグ(12)と吸
排気弁(13)(14)とをそれぞれ臨ませて設けてある。それ
らの吸排気弁(13)(14)は、動弁機構(15)によって開閉駆
動されるように構成してある。また、上記吸気弁(13)に
は、気化器(17)[図３参照]とエアクリーナ(18)とを順に
接続してある。その気化器(17)は、図３に示すように、
脈動式圧送ポンプ(10)によって燃料タンク(４)内の燃料
が供給されるように構成されている。これにより、空気
と燃料との混合気が吸気弁(13)を介して燃焼室(９)へ供
給される。なお、上記排気弁(14)は排気マフラに接続し
てある。

【００１８】一方、上記シリンダ本体(３)に設けたシリ
ンダ(26)には、上記ピストン(８)を昇降摺動自在に内嵌
してあり、そのピストン(８)には、上記クランク室(２)
内に横架してあるクランク軸(27)をコンロッド(28)を介
して連結してある。そのコンロッド(28)のクランク軸(2
7)側となるコンロッド大端部(29)には、そのコンロッド
大端部(29)から下方へ延びるオイルデッパ(30)を設けて
ある。そして、クランク室(２)内に溜めてある潤滑油(1
1)を、上記オイルデッパ(30)によってクランク室(２)内
やシリンダ(26)内へ飛散させることで、エンジン(１)内
を潤滑するようにしてある。

【００１９】上記動弁機構(15)は次のように構成され
る。即ち、上記動弁機構(15)は、動弁カム軸(32)とタペ
ット(33)とプッシュロッド(34)とロッカーアーム(35)と
によって構成されている。その動弁カム軸(32)は、動弁
カム歯車(36)を介してクランク歯車(37)に噛合してあ
り、そのクランク歯車(37)には上記クランク軸(27)を連
結してある。また、上記動弁カム軸(32)に設けたカム上
には、上記タペット(33)を介してプッシュロッド(34)の
下端部を当接させてあり、そのプッシュロッド(34)の上
端部には、上記ロッカーアーム(35)の入力部を連結して
ある。そのロッカーアーム(35)の出力部には、上記吸排
気弁(13)(14)の上端部を連結してある。

【００２０】なお、上記シリンダヘッド(５)の上面から
上記クランク室(２)内に亘って上記シリンダ本体(３)を
貫通するようにプッシュロッド孔(38)を形成してあり、
そのプッシュロッド孔(38)内に上記プッシュロッド(34)
を挿通させてある。そして、上記クランク軸(27)に連動
して動弁カム軸(32)が回転駆動されることにより、動弁
カム軸(32)のカムによってプッシュロッド(34)が上下駆
動されてロッカーアーム(35)が上下揺動し、これによっ
て上記吸排気弁(13)(14)が開閉駆動される。

【００２１】上記脈動式圧送ポンプ(10)は次のように構
成される。即ち、上記脈動式圧送ポンプ(10)は、図１
(Ａ)に示すように、上記シリンダ本体(３)の傾斜側の下
方空間(40)内に配置してあり、図３に示すように、その
ポンプ(10)内をダイヤフラム(21)によってポンプ室(22)
と負圧室(23)とに仕切られてある。上記ポンプ室(22)
は、燃料吸入弁(24)を介して上記燃料タンク(４)に接続
されており、また、燃料吐出弁(25)を介して上記気化器
(17)に接続されている。上記負圧室(23)は、図１(Ｂ)に
示すように、負圧取入口(41)を介してシリンダヘッド
(５)の底面部分に凹設した凹部(42)内に連通してある。

【００２２】一方、図２に示すように、上記シール板
(７)[遮油体]を上記凹部(42)の底面まで延長して、上記
負圧取入口(41)に上記シール板(７)の一部を対面させる
ようにしてある。つまり、上記負圧取入口(41)は、上記
シール板(７)によって上記クランク室(２)へ直接には臨
まないようになっている。また、上記凹部(42)の側壁(4
3)の下端部と、上記シール板(７)との間には隙間(44)を
設けてあり、その隙間(44)を介して上記凹部(42)と上記
プッシュロッド孔(38)とを連通させてある。

【００２３】上記脈動式圧送ポンプ(10)は次のように作
用する。即ち、ピストン(８)のシリンダ(26)内での往復
動に伴ってクランク室(２)内には負圧脈動が発生し、そ
の負圧脈動が負圧取入口(41)を介して脈動式圧送ポンプ
(10)の負圧室(23)へ取り入れられることで、燃料タンク
(４)内の燃料が気化器(17)へ供給される。つまり、ピス
トン(８)の上昇によってクランク室(２)内の負圧が大き
くなると上記負圧室(23)内の圧力が低下し、これに伴っ
て負圧室(23)の容量が減少するように脈動式圧送ポンプ
(10)のダイヤフラム(21)が撓む[図３中の二点鎖線図の
状態]。このため、脈動式圧送ポンプ(10)のポンプ室(2
2)の容量が増加し、これに伴って燃料吸入弁(24)が開弁
して燃料タンク(４)内の燃料が上記ポンプ室(22)へ供給
される。

【００２４】その後、ピストン(８)の下降によってクラ
ンク室(２)内の圧力が上昇すると、クランク室(２)内の
空気が、プッシュロッド孔(38)、上記隙間(44)及び上記
凹部(42)を介して上記負圧取入口(41)から脈動式圧送ポ
ンプ(10)の負圧室(23)内へ供給され、上記負圧室(23)内
の圧力が上昇する。すると、上記ダイヤフラム(21)が上
記撓んだ状態から復帰し[図３中の実線図の状態]、これ
に伴って上記ポンプ室(22)内の燃料に圧力がかかって、
燃料吸入弁(24)が閉弁するとともに燃料吐出弁(25)が開
弁し、上記ポンプ室(22)内の燃料が気化器(17)へ圧送さ
れる。

【００２５】一方、上記ピストン(８)の往復動に伴っ
て、オイルデッパ(30)がクランク室(２)内に溜まってい
る潤滑油(11)を跳ね上げ、これによってクランク室(２)
内にオイルミストが飛散する。そして、そのオイルミス
トの一部がプッシュロッド孔(38)内を上昇して上記負圧
取入口(41)側へ向かう。ところが、そのオイルミストは
上記シール板(７)に当たって付着するうえ、上記オイル
ミストは、上記凹部(42)内を通り抜けなければ上記負圧
取入口(41)へ到達できない分だけ、クランク室(２)から
上記負圧取入口(41)への距離が長くなって上記オイルミ
ストが上記負圧取入口(41)へ届きにくくなる。これによ
り、上記オイルミストが上記負圧取入口(41)から脈動式
圧送ポンプ(10)の負圧室(23)内へ入り込むことが低減さ
れる。しかも、上記隙間(44)は、クランク室(２)側へ向
いておらず、その点でもオイルミストが上記凹部(42)内
へ入り込みにくくなり、上記オイルミストが負圧取入口
(41)へ流れ込むことがより低減される。

【００２６】なお、上記説明では、シール板(７)によっ
てオイルミストが負圧取入口(41)内へ入り込まれること
を低減するように構成してあるが、これに限られるもの
ではなく、例えば、負圧取入口(41)に対面する遮油体を
上記シール板(７)とは別に配置し、その遮油体によって
上記オイルミストが負圧取入口(41)内へ入り込むことを
低減するように構成してもよい。

【００２７】また、上記説明では、上記負圧取入口(41)
をプッシュロッド孔(38)を介してクランク室(２)へ接続
してあるが、これに限られるものではなく、例えば、プ
ッシュロッド孔(38)とは別に形成されたブローバイガス
通路に上記負圧取入口(41)を接続してもよい。この場合
でも、上記負圧取入口(41)に対面させて上記シール板
(７)あるいはシール板(７)とは別に設けた遮油体によっ
て、上記負圧取入口(41)が上記クランク室(２)へ直接に
は臨まないように構成することになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかるエンジンの燃料供給装置の実施
の一形態を示すものであり、図１(Ａ)は上記エンジンの
縦断面図、図１(Ｂ)は上記燃料供給装置の要部を示す拡
大断面図である。

【図２】図１(Ａ)中のII−II線矢視断面図である。

【図３】上記燃料供給装置にかかる脈動式圧送ポンプの
断面図である。

【符号の説明】

１…傾斜型エンジン、２…クランク室、３…シリンダ本
体、５…シリンダヘッド、７…シール板[遮油体]、10…
脈動式圧送ポンプ、40…シリンダ本体の傾斜側の下方空
間、41…負圧取入口、42…凹部[シリンダヘッドの底面
部分]。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クランク室(２)内で発生した負圧脈動を
   負圧取入口(41)を介して脈動式圧送ポンプ(10)へ取り入
   れることにより、上記負圧脈動によって上記脈動式圧送
   ポンプ(10)を作動させてエンジン(１)への燃料供給を行
   うエンジンの燃料供給装置において、 上記負圧取入口(41)に対面させて遮油体(７)を配置する
   ことにより、上記負圧取入口(41)が上記クランク室(２)
   へ直接には臨まないように構成した、 ことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のエンジンの燃料供給装
   置において、 前記負圧取入口(41)をシリンダヘッド(５)の底面部分(4
   2)に開口させ、 前記遮油体(７)は、上記シリンダヘッド(５)と、前記ク
   ランク室(２)に連設したシリンダ本体(３)との間に配置
   される密封用のシール板を、上記負圧取入口(41)に対面
   する位置まで延長することによって構成してある、 ことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。
3. 【請求項３】 請求項１又は２に記載のエンジンの燃料
   供給装置において、 前記エンジン(１)は、前記シリンダ本体(３)を前記クラ
   ンク室(２)から斜め上方向へ向けて突出させて構成し、 前記脈動式圧送ポンプ(10)を、上記シリンダ本体(３)の
   傾斜側の下方空間(40)内に配置した、 ことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。