JPS6141932Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はクランクケースに対しシリンダを水平
に、或は水平より稍上に傾けて設け、シリンダヘ
ツドに吸排気弁を備えた所謂頭上弁式の内燃機関
に関するものである。

上記頭上弁式内燃機関には、オーバヘツドバル
ブ式とオーバヘツドカムシヤフト式とがあるが、
何れの式も吸排気弁の駆動にロツカアームを使用
する。そのロツカアームと弁棒端とが当接するタ
ペツト部及びロツカアームとプツシユロツド或は
カムとの接触個所は金属どうしの接触であるか
ら、耐久性向上のために十分な潤滑が必要であ
る。

上記ロツカアーム潤滑手段としては、例えば船
外機の場合のようにポンプで潤滑油を所要個所に
供給するものがあるが、構造が複雑であるため小
型汎用内燃機関には適さない。

本考案は、クランクケースに対しシリンダを水
平乃至稍上に傾けて設けた頭上弁式の小型汎用内
燃機関に適する構造簡単で、効果的な潤滑作用が
得られるロツカアーム潤滑装置を供給することを
目的とするもので、この種の内燃機関に必然的に
設けるプリーザ装置と、シリンダ水平型又は傾斜
型機関が持つ形状特性を巧みに利用して構成した
ことを特徴としている。

即ちエアクリーナに通じる逆止弁付プリーザ通
路を、クランクケースの潤滑油が掛りにくい位置
に開口させ、クランク室とロツカアーム室を連通
する上下一組の油通をシリンダの壁の肉を通して
設け、その上側に位置する油路のクランク室側の
口を、クランク軸による遠心作用で飛んでくる油
の方向に向けて開口させたものである。

図面について構造を具体的に説明すると、実施
例はクランク軸１を垂直に支持した所謂バーチカ
ル型汎用内燃機関にして、２はクランクケース、
３はオイルパン、４はシリンダ、５はヘツドカバ
ー、６はコンロツド、７はピストン、８はカム軸
である。クランク軸１及びカム軸８の下端部はオ
イルパン３の底の軸受ボス９，１０で支持され、
クランク軸１の上端部はクランクケース２の天井
のころがり軸受１１で、又カム軸８の上端部はク
ランクケース２の天井の軸受ボス１２によつてそ
れぞれ支持されている。

オイルパン３にたまつている潤滑油に浸る位置
にオイルスリンガ１３を設けたはねかけ式給油構
造を備えている。カム軸８の軸心に油路を設けて
潤滑油をポンプで上方に圧送し、クランク軸１の
上部軸受１１付近から滴下させる給油構造の場合
もある。

クランク軸１の上端にフライホイール１４・冷
却フアン１５及び始動プーリ１６が一体に取付け
られている。

シリンダ４のヘツド部４１に吸気弁１７・排気
弁１８が取付けられていて、各弁棒端１７Ａ・１
８Ａにロツカアーム１９，２０が当接している。
各ロツカアーム１９，２０に、カム軸８によつて
往復駆動されるプツシユロツド２１，２２が連動
している。

クランク軸１の上端部を支持しているころがり
軸受１１の上に空室２３があり、その空室２３
は、逆止弁２４を有するブリーザ室２５に通じて
いる。そのブリーザ室２５はチユーブ２６を介し
て図に省略したエアクリーナに接続されている。
上記逆止弁２４はエアクリーナの側に向つてのみ
開く弁である。

シリンダ４の壁の肉内に上下一組の油路２７，
２８が設けられていて、その油路２７，２８によ
つてクランク室２９とロツカアーム室３０を連通
させている。上側の油路２７のクランク室側の口
２７Ａはクランク軸１の方を向いている。下側の
油路２８のクランク室側の口２８Ａもクランク軸
１の方を向いているが、その口２８Ａの前面に
は、間隔を置いて障壁３１を設けている。

クランク軸１が回転すると、それに連動して回
転するオイルスリンガ１３によつて潤滑油をはね
上げ、クランク軸１、カム軸８、コンロツド６、
ピストン７等を油でぬらす。クランク軸１に付着
した油は遠心力によつて周囲に飛散る。飛散つて
細かくなつた油滴はクランク室２９に所謂オイル
ミストとなつて浮遊する。

ピストン７の復動によつてクランク室２９が圧
縮されると、クランク室２９内のブローバイガス
はころがり軸受１１の内外リテーナ間の間隙を通
つて押出されて空室２３に入り、更に逆止弁２４
を押開き、ブリーザ室２５・チユーブ２６を経て
エアクリーナに導入される。そのときブローバイ
ガスに伴われてオイルミストもエアクリーナの方
に流れるので、そのオイルミストによつてころが
り軸受１１及びその外側にあるオイルシール３２
が潤滑される。ブリーザ室２５又は該室２５から
エアクリーナに至る途中に必要により油分離回収
室を設ける。

ピストン７の往動によつてクランク室２９が膨
張すると、逆止弁２４が閉じてクランク室２９は
負圧状態となる。

上記ブリーザ機構の作用とは別に、クランク軸
１の回転による遠心力で飛散る油滴の一部が上側
油路２７の口２７Ａに入る。又クランク室２９が
圧縮されたときは、オイルミストも上記油路２７
の口２７Ａに進入し、油路２７を通つてロツカア
ーム室３０に供給される。下側の油路２８の口２
８Ａに向う油滴は障壁３１に遮られて進入しにく
い。

ロツカアーム室３０に流込んだ油は、ロツカア
ーム１９，２０及びその周辺部分をぬらして潤滑
が行われる。そしてクランク室２９が膨張したと
き、その負圧によつて上記ロツカアーム室３０の
底にたまろうとする油は、下側の油路２８を通つ
てクランク室２９に吸出される。

なお図示のはねかけ式給油の外、滴下式給油、
クランク軸を水平に支持した型の機関でコンロツ
ドにオイルスキツパを設けたかき上げ式給油構造
のものにおいても略同様の作用をする。

本考案ロツカアーム潤滑装置は上述のように、
ロツカアームに対する潤滑油供給機構とブリーザ
機構とを分離し、その潤滑油供給機構は、クラン
ク室内の油滴飛散方向とシリンダの向きの関係を
利用して飛散油滴を受入れ易い位置に、ブリーザ
機構は飛散油滴が掛りにくい位置にそれぞれ設
け、更にピストンの往復動に伴うクランク室内の
圧力変化によるポンプ作用を利用して、潤滑油供
給機構に受入れられた油をクランク室→ロツカア
ーム室→クランク室の順に循環させる構成にした
から、ブリーザ性能を低下させることなく、ブロ
ーバイガスに伴われてブリーザ機構の方に流出す
る潤滑油の量が抑制され、潤滑油はロツカアーム
室の方に送られるが直ちに還流するので、ロツカ
アーム室に必要量以上の油が供給されたり、クラ
ンク室内のオイル下がりを生じることがないもの
で、クランクケースに対しシリンダを水平乃至稍
上に傾けて設けた頭上弁式の内燃機関におけるロ
ツカアーム潤滑装置として効果がある。

【図面の簡単な説明】

図は本考案ロツカアーム潤滑装置を備えた内燃
機関の縦断正面図。 １はクランク軸、２はクランクケース、３はオ
イルパン、４はシリンダ、５はヘツドカバー、７
はピストン、１３はオイルスリンガ、１７は吸気
弁、１８は排気弁、１９，２０はロツカアーム、
２３，２５，２６はブリーザ通路、２４は逆止
弁、２７，２８は油路、２７Ａ，２８Ａは油路の
クランク室側の口、２９はクランク室、３０はロ
ツカアーム室。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクケースに対しシリンダを水平乃至稍上
   に傾けて設けた頭上弁式の内燃機関において、ク
   ランクケースの潤滑油が掛りにくい位置に、エア
   クリーナに通じる逆止弁付プリーザ通路を開口さ
   せ、シリンダの壁の肉を通してクランク室とロツ
   カアーム室を連通する上下一組の油路を設けると
   共に、その上側の油路のクランク室側の口を、ク
   ランク軸による遠心力作用で飛んでくる油の方向
   に向けて開口させた内燃機関のロツカアーム潤滑
   装置。