JP2000080391A - 2サイクルガソリンエンジン用潤滑油およびそれに用いる希釈剤組成物 - Google Patents
2サイクルガソリンエンジン用潤滑油およびそれに用いる希釈剤組成物Info
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Abstract
気煙の発生を抑えると同時に、エンジンに対する清浄
性、排気性能および排気系の閉塞を防止し、長期にわた
って良好なエンジンの出力性能を維持することのできる
2サイクルエンジン用潤滑油およびそのために必要な希
釈剤組成物の提供。 【解決手段】 2環以上の多環芳香族炭化水素の含有量
が1.0容量%以下で、かつ硫黄含有量が0.015重
量%以下である炭化水素混合物で構成されていることを
特徴とする2サイクルエンジン用潤滑油の希釈剤組成
物。
Description
ン油の清浄性を向上させ、かつ排気煙が少なく、排気系
の目詰まり(排気系閉塞)が起こりにくい2サイクルエ
ンジン用潤滑油を提供するための希釈剤組成物およびそ
の希釈剤を用いた2サイクルエンジン用潤滑油に関する
ものである。
ンエンジンは、カムやタペットなどの動弁系機構を持た
ないために、4ストロークガソリンエンジンと比較し
て、小型、軽量でかつ排気量あたりの出力が大きく、生
産コストが低いなどの有利な点がある。その反面、2サ
イクルエンジンでは潤滑油が燃料と共に燃焼室へ吸引さ
れて燃焼するため、燃焼室内で不完全燃焼した潤滑油の
燃焼残さ物がピストンリング溝やピストンスカートに堆
積しやすく、これら燃焼室デポジットの増加に伴ったエ
ンジンの出力低下や点火プラグの汚染による失火が発生
しやすいといった問題がある(参考文献:トライボロジ
スト,第38巻,第2号,p101,1993年)。
ガスは、短期的には排気管から多量の排気煙を発生した
り、長期的には排気管にタール状の残さ物を堆積させ、
排気系を閉塞してエンジンの出力低下を起こさせてしま
うことがある。また、燃焼残さ物を多く含む排気ガス
は、環境上の観点からいっても好ましくなく、今後エン
ジンへ排気ガス触媒等を装着した場合においても、触媒
の表面を覆って触媒活性を著しく低下させる恐れがあ
る。さらに排気系が閉塞していくと、エンジン内の排気
圧が高くなり、エンジン出力の異常低下が起きる。
なエンジンの出力性能を維持するためには、燃焼をスム
ーズに起こさせて未燃焼ガスの発生を抑えると同時に、
エンジンに対する清浄性、排気性能および排気系の閉塞
を防止するような2サイクルエンジン潤滑油が非常に重
要である。
組成物としては、一般的には鉱油系もしくは合成系基
油、ポリイソブチレンおよび清浄分散剤などのエンジン
潤滑用基剤と、燃料との混合性を良くし、燃焼しやすく
するための石油系炭化水素希釈剤が用いられる。この希
釈剤は通常、原油の常圧蒸留より得られる灯油ないしは
軽油留分を原料にして水素化脱硫処理を行い、硫黄や窒
素などの不純物を除去して製造されている。
石油系炭化水素希釈剤の化合物組成は、パラフィン分、
ナフテン分などの飽和炭化水素と芳香族化合物などで構
成されている。また、これらの炭化水素化合物に硫黄元
素が結合した有機硫黄化合物も微量含まれる。
よび排気閉塞の少ない潤滑油および希釈剤に関する特許
として特開昭53−5783(S53.5.5)、特開
昭54−16040(S54.12.19)がある。こ
れらの技術では、沸点が150〜300℃である石油系
および/または合成系の炭化水素希釈剤を5〜50重量
%含む2サイクルガソリンエンジン油とし、希釈剤の沸
点留分の温度範囲を規定したものがほとんどである。
配合として、他の4サイクルエンジンなどの内燃機関用
潤滑油と異なって特異とする点は、潤滑油が燃料と共に
混合されて各部を潤滑すると共に、その潤滑油の1部を
含んだ燃料と空気の混合気が燃焼するため、燃焼されに
くい物質や燃焼して灰分になるもの、例えば酸化防止剤
であるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)や油溶
性のモリブデン化合物類などの有機金属系化合物は含ま
ない。例外的に金属系清浄剤は一般的に使用されるが、
この含金属系化合物についても、混合気に電気火花をと
ばし燃焼させる点火プラグの電極部を汚すため、その使
用量は一般的には制限される(参考文献:トライボロジ
スト, 第38巻,第2号,p101,1993年)。
をスムーズに起こさせて未燃焼ガスや排気煙の発生を抑
えると同時に、エンジンに対する清浄性、排気性能およ
び排気系の閉塞を防止し、長期にわたって良好なエンジ
ンの出力性能を維持することのできる2サイクルエンジ
ン用潤滑油およびそのために必要な希釈剤組成物を提供
する点にある。
い清浄性、排気閉塞および排気煙が少ない2サイクルエ
ンジン油を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、これらの
問題解決については、前記先行特許文献が着目している
希釈剤の沸点範囲よりむしろ、希釈剤に含まれる芳香族
炭化水素(英国石油協会で定めたIP391/90試験
法)の2環以上の多環芳香族成分および硫黄含有量が重
要であることが分かり、本発明を完成するに至ったもの
である。
香族炭化水素の含有量が1.0容量%以下で、かつ硫黄
含有量が0.015重量%以下である炭化水素混合物で
構成されていることを特徴とする2サイクルエンジン用
潤滑油の希釈剤組成物に関する。
焼しにくく部分酸化した未燃焼化合物を形成しやすいと
考えられていたが、1環芳香族炭化水素の場合は、エン
ジン内で発生するスラッジを溶解したり、エンジン内を
洗浄する清浄作用があり、2サイクルエンジン油の清浄
性を向上させる重要な成分であり、一方、希釈剤に含ま
れる2環以上の多環芳香族炭化水素は、希釈剤の中に含
まれる他の炭化水素成分と比べて分子量が大きく、化学
的に安定でかつ沸点が高く、さらに分子内に2つ以上の
芳香族環もしくは縮合環を持ち、不飽和度も高いため、
2環以上の多環芳香族炭化水素は、エンジン内で完全燃
焼しにくく、部分酸化した未燃焼化合物を形成しやすい
ということがわかってきた。これら部分酸化した未燃の
2環以上の多環芳香族炭化水素こそが、エンジン燃焼室
内やエンジンのピストンリングの溝に付着してエンジン
の清浄性を悪化させると同時に、排気系にも堆積して排
気閉塞を引き起こしやすくし、さらに黒煙状の排気煙を
排出する原因にもなるのである。
物も、燃焼により酸化され、有機スルホニル化合物やス
ルホン酸化合物を形成してエンジン内を汚し、燃焼によ
る水蒸気と相互作用して排気煙になる核を形成し、排気
管を腐食したり排気煙を増加するものと考えられる。
水素が20容量%以上、2環以上の多環芳香族炭化水素
の含有量が1.0容量%以下で、かつ硫黄含有量が0.
015重量%以下である炭化水素混合物で構成されてい
ることを特徴とする2サイクルエンジン用潤滑油の希釈
剤組成物に関する。
れる希釈剤は炭化水素系希釈剤であり、陸用及び小型船
舶用などの2サイクルエンジン油に幅広く適用できるも
のである。
65のタグ密閉式の引火点が40℃以上、好ましくは7
0℃以上、JIS K2254の常圧法蒸留試験方法に
よる終点が320℃以下、好ましくは270℃以下、2
環以上の多環芳香族炭化水素(英国石油協会で定めたI
P391/90試験法)の含有量が1.0容量%以下
で、かつ硫黄含有量が0.015重量%以下のものであ
ることが好ましい。また、希釈剤はJIS K2270
試験法で規定される10%残油の残留炭素分が0.1重
量%以下であることがとくに好ましい。この性状を持つ
希釈剤は、原油を常圧蒸留分離した後、高度の水素化脱
硫処理を行って生産される。ここで引火点が40℃以上
というのは、この希釈剤を使用して2サイクルエンジン
用潤滑油を作る際に、予想される通常の雰囲気温度は4
0℃以下であり、40℃以上の引火点であれば実用上の
作業に支障が少なく、エンジン油を製造する上で作業効
率が良いことを意味する。また、これら希釈剤を含んだ
2サイクルエンジン油の引火点は、財団法人自動車技術
会自動車規格M345−93に示すように一般的には7
0℃以上に規定されるため、この点でも混合される希釈
溶剤の引火点は40℃以上であることが必要であり、好
ましくは70℃以上である。また、常圧法蒸留試験方法
による終点が320℃以下という点については、2サイ
クルエンジンの燃焼室内金属表面温度以下で希釈剤が気
化することが好ましいためである。また、希釈剤がエン
ジン内で気化する際に、希釈剤からくる残留物がエンジ
ン内に残り、エンジンの清浄性を悪化させないために
は、希釈剤の残留炭素分は0.1重量%以下と低いこと
が好ましい。
するものであれば、合成炭化水素系希釈剤もしくは石油
炭化水素系希釈剤、もしくはそれらの希釈剤を混合した
ものを使用しても本発明の目的を達成することができ
る。
ン油へ使用するにあたっては、鉱物系および/または合
成系基油に必要に応じてポリブデン、清浄分散剤、その
他各種添加剤を適量配合して、得られた製品を100重
量%としたとき、これらの希釈剤は5〜40重量%、好
ましくは10〜30重量%添加することができる。
エンジン油に配合すると、JASOM342−92試験
における2サイクルエンジンの排気煙を減少させ排気煙
指数を高くすることが可能であるが、一方では低温時の
エンジンの清浄性やJASOM340−92の潤滑性試
験における初期トルク指数を低下させ、低温時における
エンジンの引きずりトルク(エンジン摩擦)を高くする
恐れがある。この理由としては、2サイクルエンジン油
の製品粘度は一般的に100℃の動粘度が6.5mm2/
s以上のものが使用され、ISO(国際標準規格)やJ
ASO M345−93規格などでもこのように規定さ
れているからである。そのうえ2サイクルエンジン油の
希釈剤成分を多くすると、溶剤の粘度が低いため粘度の
高い基油もしくは数平均分子量で1000以上の高分子
ポリブデンを多量に添加して製品粘度を6.5mm2/s
以上に維持しなければならない。そうすると、エンジン
内に潤滑油が吸引された後、エンジンの表面で希釈剤が
蒸発し、粘度の高い基油や高分子ポリブデンが表面にの
こり、エンジンの引きずりトルク(エンジン摩擦)を高
くする。また、粘度の高い基油もしくは数平均分子量で
1000以上の高分子ポリブデン化合物を多く配合する
と、これらは高沸点でありかつ分子量が大きいため、完
全燃焼しにくくエンジン内に未燃焼生成物を形成しやす
い。このため、2サイクルエンジン油製品を100重量
%としてこれらの希釈剤は40重量%以内で使用するこ
とが必要である。
剤としてはスルフォネート、フィネート、サリシレート
などの金属系清浄分散剤やコハク酸イミド、コハク酸エ
ステル、エチレンプロピレンオキサイド共重合ポリマー
などの無灰分散剤があるが、これらの内特にスルフォネ
ート清浄剤およびコハク酸イミドもしくはサリシレート
清浄剤およびコハク酸イミドの組み合わせが好適に使用
される。
合物としては数平均分子量500〜1000程度のもの
が用いられる。
よび/またはエステル系などの合成基油が用いられる。
詳しく説明するが、本発明はこれにより何ら限定される
ものではない。
清浄分散剤、ポリブデン、流動点降下剤を配合して試料
油を調整し、これらの試料油に対して、2サイクルガソ
リン機関潤滑油の清浄性試験(JASO M341−9
2)、排気煙試験(JASOM342−92)、排気系閉
塞試験(JASO M343−92)、潤滑性試験(JA
SO M340−92)をそれぞれ実施した。用いた各
試料油の組成及びその試験結果を表に示す。
会で定めたIP391−90試験方法(高速液体クロマ
トグラフ法)を用いて実施した。またJIS K012
4(高速液体クロマトグラフ分析通則)に共通する事項
は、JIS K0124を基準にして実施した。
oso G2000H*L*1,G3000H*L*
1,G4000H*L*1,G5000H*L*1使
用、溶媒としてテトラヒドロフラン、流量1.0mm/
min.,温度40℃,Detector:R.I,I
ntegrator:ChromatopacC−R4
A(Shimazu)
M341−92、2サイクルガソリン機関潤滑油の清浄
性試験方法にしたがって実施した。清浄性指数の数値が
高い試験油ほど、エンジン内のワニスおよびカーボンな
どの堆積物によるエンジン内部の汚れが少ないことを示
す。 注4:社団法人自動車技術会、自動車規格M342−9
2、2サイクルガソリン機関潤滑油の排気煙試験方法に
したがって実施した。排気煙指数の数値が高い試験油ほ
ど、2サイクル油に起因する排気管より発生する可視煙
が少ないことを示す。 注5:社団法人自動車技術会、自動車規格M343−9
2、2サイクルガソリン機関潤滑油の排気系閉塞性試験
方法にしたがって実施した。閉塞性指数の数値が高い試
験油ほど、2サイクル油に起因する排気系内部への堆積
物による排気通路の詰まり度合いが少ないことを示す。 注6:社団法人自動車技術会、自動車規格M340−9
2、2サイクルガソリン機関潤滑油潤滑性試験方法にし
たがって実施した。潤滑性指数の数値が高い試験油ほ
ど、2サイクル油に起因するエンジン内しゅう動部(ピ
ストン−シリンダ−間)の潤滑性能がよいことを示す。
また、初期トルク指数の数値が高い試験油ほど、2サイ
クル油に起因する試験初期のエンジン内しゅう動部の抵
抗が低いことを示す。
び3は、引火点が40℃以上、常圧法蒸留試験方法によ
る終点が320℃以下の炭化水素系希釈溶剤をそれぞれ
使用した。
して2環以上の多環芳香族炭化水素の含有量が1.0容
量%以上で、かつ硫黄含有量が0.015重量%以上で
ある希釈剤を使用した。比較例2の試料油は、希釈剤1
00重量%に対して硫黄含有量が0.015重量%以下
であるが2環以上の多環芳香族炭化水素の含有量が1.0
容量%以上の希釈溶剤を使用した。比較例3は、希釈溶
剤100%に対して2環以上の多環芳香族炭化水素の含
有量が1.0容量%以下であるが硫黄含有量が0.01
5重量%以上である希釈剤を使用した。実施例1および
2、3との比較により、希釈剤100%に対して2環以
上の多環芳香族炭化水素の含有量が1.0容量%以上、
かつ硫黄含有量が0.015重量%以下である希釈剤を
使用した場合は、エンジンの清浄性が向上し、かつ排気
煙および排気系の閉塞性が減少することが明確に示さ
れ、所定の目的を達成されることがわかる。
上、常圧法蒸留試験方法による終点が320℃以上、希
釈剤100%に対して2環以上の多環芳香族炭化水素の
含有量が1.0容量%以下、硫黄含有量が0.015重
量%以下の炭化水素系希釈剤を使用したものである。常
圧法蒸留試験方法による終点が320℃以上の希釈剤を
使用した場合には、2環以上の多環芳香族炭化水素の含
有量が1.0容量%以下、硫黄含有量が0.015重量
%以下であっても排気煙が多くなり排気煙指数が低下す
るため所定の目的を達成することができない場合がある
ことを示す。
蒸留試験方法による終点が320℃以下、1環芳香族成
分が20容量%以上、2環以上の多環芳香族炭化水素
(IP319/90試験法)の含有量が1.0容量%以
下、その他の成分はパラフィン系およびナフテン系の飽
和炭化水素で構成され、かつ硫黄含有量が0.015重
量%以下である炭化水素系希釈剤組成物を使用した試料
油である。この場合では、エンジンの清浄性が著しく改
善され、かつ排気煙および排気系の閉塞性が大きく減少
し、清浄性指数、排気煙指数、閉鎖性指数が大きく向上
することが明確に示され、所定の目的を達成しているこ
とがわかる。
物を2サイクルガソリンエンジン油に用いた場合は、エ
ンジン清浄性の向上と排気煙および排気系の閉塞を減少
させ、高出力、高性能の各種2サイクルエンジンへ有効
に利用することができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 2環以上の多環芳香族炭化水素の含有量
が1.0容量%以下で、かつ硫黄含有量が0.015重
量%以下である炭化水素混合物で構成されていることを
特徴とする2サイクルエンジン用潤滑油の希釈剤組成
物。 - 【請求項2】 1環芳香族炭化水素が20容量%以上、
2環以上の多環芳香族炭化水素の含有量が1.0容量%
以下で、かつ硫黄含有量が0.015重量%以下である
炭化水素混合物で構成されていることを特徴とする2サ
イクルエンジン用潤滑油の希釈剤組成物。 - 【請求項3】 JIS K2265のタグ密閉式の引火
点が40℃以上、JIS K2254の常圧法蒸留試験
方法による終点が320℃以下、10%残油の残留炭素
分(JIS K2270)が0.1重量%以下である請
求項1または2記載の希釈剤組成物。 - 【請求項4】 請求項1〜3いずれか記載の希釈剤組成
物を5〜40重量%含み、引火点が70℃以上であるこ
とを特徴とする2サイクルエンジン用潤滑油。
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