JP2000073852A - アルミニウム合金製シリンダブロックおよびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金製シリンダブロックおよびその製造方法

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JP2000073852A
JP2000073852A JP10245789A JP24578998A JP2000073852A JP 2000073852 A JP2000073852 A JP 2000073852A JP 10245789 A JP10245789 A JP 10245789A JP 24578998 A JP24578998 A JP 24578998A JP 2000073852 A JP2000073852 A JP 2000073852A
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cylinder block
alloy
aluminum alloy
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Kenji Tsushima
島 健 次 津
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳造性や加工性を損なうことなく、耐摩耗性
が要求されるシリンダボアの上死点近傍部の耐摩耗性を
向上させることができ、リサイクルが容易で、しかも熱
伝導性に優れた、安価なアルミニウム合金製シリンダブ
ロックを提供する。 【解決手段】 共晶Al−Si系合金を用いてシリンダ
ブロック1を鋳造するに際して、過共晶Al−Si合金
あるいは、これにFeを添加した合金からなる被鋳包み
材2をシリンダボア部の上死点近傍に鋳包んだのち、当
該鋳包み部にリメルト処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車用の
ガソリンエンジンのような内燃機関に用いられるアルミ
ニウム合金製シリンダブロックに係わり、さらに詳しく
は、アルミニウム合金本来の加工性を損なうことなく、
耐摩耗性および耐熱性が必要とされるシリンダボア部の
上死点近傍部にのみ、所望の性能を付与したアルミニウ
ム合金製シリンダブロックと、このようなアルミニウム
合金製シリンダブロックの製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】例えば、自動車用のエ
ンジンにおいては、車体の軽量化の観点から、シリンダ
ブロックの素材としてアルミニウム合金が使用されてい
るが、アルミニウム合金では耐摩耗性が不足するため、
シリンダボア部に鋳鉄製のシリンダライナを圧入した
り、鋳造時に鋳包んだりするようにしている。しかしな
がら、鋳鉄製シリンダライナは比重が大きく、重量がか
さむので軽量化に対して逆効果となるばかりでなく、鋳
鉄自体の熱伝導性が劣る上にアルミニウム合金からなる
シリンダブロック本体部との間の密着性が必ずしも良く
ないために、十分な熱伝達が得られないという欠点があ
る。
【0003】異種金属からなるアルミニウム合金製シリ
ンダブロックにおける上記欠点を解消するために、例え
ばAA(Aluminium Associatio
n)規格のA390合金のような過共晶Al−Si系合
金をシリンダブロックの素材に適用することにより、鋳
鉄製シリンダライナを用いることなく耐摩耗性を向上さ
せたものも知られているが、このようなシリンダブロッ
クにおいては、耐摩耗性を必要としないシリンダボア部
以外の部分にも高硬度の初晶Siが晶出するために加工
性が悪化すると共に、Si含有量の増加により合金の融
点が高くなって、溶解温度および鋳造温度が上昇し、溶
解炉や金型の耐用寿命が短くなるという問題がある。
【0004】また、通常の亜共晶Al−Si系合金、あ
るいは共晶Al−Si系合金によりシリンダブロックを
鋳造したのち、耐摩耗性の要求されるシリンダボア部摺
動面にのみ、Ni−SiC分散めっきを施すようにした
ものも知られている。しかしながら、このようなシリン
ダブロックにおいては、不純物含有量の多い粗悪なガソ
リンを使用すると、生成した腐食促進性物質の影響によ
って摺動面の耐摩耗性が劣化することがある。さらに、
このような分散めっきは、鋳巣などの鋳造欠陥に敏感で
あるため、鋳造後のシリンダブロックに密着性に優れた
めっき層を均一に形成することが難しいという問題点が
ある。
【0005】さらには、アルミナや炭化けい素などのセ
ラミックス製プリフォームを金型にセットした状態で、
通常の亜共晶Al−Si系合金あるいは共晶Al−Si
系合金を高圧鋳造することにより、シリンダボア部摺動
面の耐摩耗性を向上させた複合化アルミニウム合金シリ
ンダブロックも広く知られているところであるが、この
ようなシリンダブロックにおいては、セラミックスプリ
フォームの作製が面倒で、コストアップ要因となると共
に、シリンダボア部摺動面にセラミックスが複合化され
ているので、リサイクルが難しいという問題点があり、
これらの問題の解消が従来のアルミニウム合金製シリン
ダブロックにおける課題となっていた。
【0006】
【発明の目的】本発明は、従来のアルミニウム合金製シ
リンダブロックにおける上記課題に着目してなされたも
のであって、鋳造性や加工性の劣化を招くことなく、必
要な部分のみ耐摩耗性を向上させることができ、リサイ
クルが容易で、しかも熱伝導性に優れた、安価なアルミ
ニウム合金製シリンダブロック、およびこのようなアル
ミニウム合金製シリンダブロックの製造方法を提供する
ことを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係わ
るアルミニウム合金製シリンダブロックは、シリンダボ
ア部の上死点近傍が、リメルト処理された過共晶Al−
Si合金組織となっている構成としたことを特徴として
おり、アルミニウム合金製シリンダブロックにおけるこ
のような構成を前述した従来の課題を解決するための手
段としている。
【0008】本発明に係わるアルミニウム合金製シリン
ダブロックの実施態様として請求項2に記載のシリンダ
ブロックにおいては、リメルト処理された過共晶Al−
Si合金組織となっている部分には、1.0〜15.0
μmの円相当径を有する初晶Siおよび共晶Siが3〜
25%の面積率で晶出している構成とし、同じく実施態
様として請求項3に係わるアルミニウム合金製シリンダ
ブロックにおいては、リメルト処理された過共晶Al−
Si合金組織となっている部分には、1.0〜15.0
μmの円相当径を有する初晶Siおよび共晶Siが3〜
25%の面積率で晶出していると共に、さらに1.0〜
10.0μmの円相当径を有するAl−Si−Fe系金
属間化合物が生成している構成としたことを特徴として
いる。
【0009】本発明の請求項4に係わるアルミニウム合
金製シリンダブロックの製造方法は、アルミニウム合金
を用いてシリンダブロックを鋳造するに際し、Al−1
5〜30%Si合金をシリンダボア部の上死点近傍に鋳
包んだのち、当該鋳包み部にリメルト処理を施す構成と
しており、本発明の請求項5に係わるアルミニウム合金
製シリンダブロックの製造方法は、アルミニウム合金を
用いてシリンダブロックを鋳造するに際し、Al−15
〜30%Si−3〜5%Fe合金をシリンダボア部の上
死点近傍に鋳包んだのち、当該鋳包み部にリメルト処理
を施す構成としており、このようなアルミニウム合金製
シリンダブロックの製造方法の構成を前述した従来の課
題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0010】そして、本発明に係わるアルミニウム合金
製シリンダブロックの製造方法の実施態様として請求項
6記載の製造方法においては、シリンダボア部の上死点
近傍に鋳包まれるアルミニウム合金のFeの一部もしく
は全部がCrおよび/またはMnに置換されている構成
としたことを特徴としている。同じく実施態様として、
請求項7に係わるアルミニウム合金製シリンダブロック
の製造方法においては、リメルト処理のエネルギー源と
してレーザビームを用いる構成、請求項8に係わるアル
ミニウム合金製シリンダブロックの製造方法において
は、リメルト処理のエネルギー源として電子ビームを用
いる構成、請求項9に係わるアルミニウム合金製シリン
ダブロックの製造方法においては、リメルト処理のエネ
ルギー源としてTIGアークを用いる構成、さらに請求
項10に係わるアルミニウム合金製シリンダブロックの
製造方法においては、リメルト処理のエネルギー源とし
てMIGアークを用いる構成としたことを特徴としてい
る。
【0011】
【発明の実施の形態】一般に、ガソリンエンジンなどの
内燃機関におけるシリンダボア部においては、シリンダ
ボア内面を往復摺動するピストンの速度が減少する上死
点および下死点付近において潤滑油膜が形成されにく
く、とくに上死点付近においてより大きな耐摩耗性が要
求される。また、この部分は高温の燃焼ガスにさらされ
るため、耐熱性、すなわち、熱軟化による耐摩耗性の低
下が少ないことが要求される。
【0012】本発明の請求項1に係わるアルミニウム合
金製シリンダブロックにおいては、シリンダボアの上死
点近傍部がリメルト処理されて、過共晶Al−Si合金
組織となっており、このリメルト処理部には、処理時の
急冷凝固によって初晶Siおよび共晶Siが微細、かつ
均一に分散していることから、耐摩耗性が向上すること
になる。したがって、通常のアルミニウム合金、例えば
亜共晶Al−Si系合金、あるいは共晶Al−Si系合
金などによりシリンダブロックの本体部分を構成するこ
とにより、鋳造性や加工性を犠牲にすることなく、耐摩
耗性がとくに必要なシリンダボア部の上死点付近の耐摩
耗性が向上し、シリンダブロックとしての使用に耐える
ものとなる。しかも、鋳鉄やセラミックスなどの異材を
必要とせず、連続的な一体構造を備えていることから、
リサイクルが容易で、安価、かつ熱伝導性に優れたもの
となる。
【0013】このとき、リメルト処理されて過共晶Al
−Si合金組織となっている部分に晶出する初晶Siお
よび共晶Siの大きさおよび晶出量については、当該部
分の耐摩耗性を安定に確保する観点から、請求項2に記
載しているように、1.0〜15.0μmの円相当径を
有する初晶Siおよび共晶Siが3〜25%の面積率で
晶出していることが望ましい。すなわち、初晶Siおよ
び共晶Siの円相当径が1.0μm未満の場合には、ピ
ストンの摺動による脱落が多くなって耐摩耗性が低下す
る傾向があり、円相当径が15.0μmを超える場合に
は、加工時の割れが多くなって耐摩耗性が低下すると共
に、機械的性質も低下する傾向がある。また、これらの
面積率が3%に満たない場合には、初晶Siおよび共晶
Siによる効果が得られず、Al基地との凝着が発生し
やすくなり、逆に面積率が25%を超えると加工性が劣
化しやすくなる傾向がある。
【0014】また、シリンダボアの上死点近傍部の耐摩
耗性および耐熱性をさらに向上させる観点からは、請求
項3に記載しているように、リメルト処理されて過共晶
Al−Si合金組織となっている部分に、上記範囲の大
きさおよび晶出量の初晶Siおよび共晶Siに加えて、
さらに1.0〜10.0μmの円相当径を有するAl−
Si−Fe系金属間化合物が生成していることが望まし
い。すなわち、当該リメルト処理部分にFeが添加され
ると、リメルト処理時の急冷凝固によってAl−Si−
Fe系金属間化合物が微細、かつ均一に分散して当該リ
メルト処理部の耐摩耗性がさらに向上すると共に、一部
のFeがリメルト処理部に固溶することによって耐熱性
が向上することになる。このとき、Al−Si−Fe系
金属間化合物の円相当径が1.0μmに満たない場合に
は、ピストンの摺動中の脱落が増加して耐摩耗性の向上
に寄与しなくなり、逆に円相当径が10.0μmを超え
た場合には、当該金属間化合物の形状が塊状から漢字状
に変化するため、機械的特性が低下する傾向がある。
【0015】本発明の請求項4に係わるアルミニウム合
金製シリンダブロックの製造方法においては、シリンダ
ボア部の上死点近傍にAl−15〜30%Si合金を鋳
包んだのち、当該鋳包み部をリメルト処理するようにし
ているので、シリンダボアの上死点近傍部に、微細な初
晶Siおよび共晶Siが均一に分布する過共晶組織を備
えたリメルト処理部が形成され、上記請求項1あるいは
請求項2記載のシリンダブロックを製造するのに好適な
ものである。
【0016】また、本発明の請求項5に係わるアルミニ
ウム合金製シリンダブロックの製造方法においては、シ
リンダボア部の上死点近傍にAl−15〜30%Si−
3〜5%Fe合金を鋳包んだのち、当該鋳包み部を同様
にリメルト処理するようにしているので、シリンダボア
の上死点近傍部に、初晶Siおよび共晶Siと共に、A
l−Si−Fe系金属間化合物が微細かつ均一に分布す
る過共晶組織を備え、Feを固溶するリメルト処理部が
形成され、上記請求項3記載のシリンダブロックを製造
するのに好適なものである。
【0017】すなわち、本発明に係わるアルミニウム合
金製シリンダブロックの製造方法においては、シリンダ
ブロック用鋳型(金型)内の所定部位、つまりシリンダ
ボアの上死点近傍部に相当する部位に、被鋳包み用の過
共晶系Al−Si合金、すなわちAl−15〜30%S
i合金、あるいはAl−15〜30%Si−3〜5%F
e合金がセットされ、この状態で、溶融アルミニウム合
金を鋳込むことによって前記過共晶系Al−Si合金が
シリンダボア部の上死点近傍に鋳包まれる。
【0018】このとき、シリンダブロック鋳造用のアル
ミニウム合金としては、鋳造性や鋳造後の加工性(切削
性)を考慮して選択することができるが、シリンダボア
部の上死点近傍以外の部分の耐摩耗性を考慮すると、例
えば、JIS H 5202あるいはH 5302に規
定されるAC8AあるいはADC12などのような共晶
系Al−Si合金の使用が望ましい。また、鋳造法につ
いても、とくに限定されるものではないが、リメルト処
理時の気泡発生を抑制する観点からは、鋳造時のガス巻
き込みの少ない重力鋳造法、低圧鋳造法、真空ダイカス
ト法などの適用が望ましい。
【0019】被鋳包み用の過共晶系Al−Si合金とし
ては、上記したようにAl−15〜30%Si合金、ま
たはAl−15〜30%Si−3〜5%Fe合金が用い
られるが、これはSi含有量が15%に満たない場合に
は、初晶Siが十分に晶出しないので、リメルト処理部
の耐摩耗性を十分に向上させることができず、Si含有
量が30%を超える場合には、過共晶組織中の初晶Si
が多くなり過ぎてリメルト処理部の加工性が低下するこ
とによる。また、Fe含有量が3%未満の場合には、F
eの固溶量およびAl−Si−Fe系金属間化合物の生
成量が少なくて耐熱性および耐摩耗性の改善効果が十分
に得られず、逆にFe含有量が5%を超えた場合には、
Al−Si−Fe系金属間化合物の生成量が多くなって
強度および靭性が低下することによる。なお、固溶およ
びAl,Siとの金属間化合物の生成によって耐熱性お
よび耐摩耗性を改善する効果を備えた遷移元素として
は、上記FeのほかにCrおよびMnがあるので、請求
項6に記載したように、Feの一部または全部をCrお
よび/またはMnによって置換することも可能である。
【0020】また、これら被鋳包み用の過共晶系Al−
Si合金およびAl−Si−Fe合金についても、リメ
ルト処理時の気泡発生を抑制する観点から、重力鋳造
法,低圧鋳造法,スクイーズダイカスト法,連続鋳造法
などのガス含有量の少ない鋳造法によって製作すること
がが望ましい。
【0021】そして、過共晶系Al−Si合金を鋳包ん
だだけの状態では、鋳包まれた過共晶Al−Si合金、
あるいはAl−Si−Fe合金と、これを鋳包むアルミ
ニウム合金との間は、完全には溶融結合しておらず、未
溶着部分があるので、当該鋳包み部に、例えば請求項7
に記載しているようにレーザビームを照射することによ
ってリメルト処理が施され、これによって当該鋳包み部
が完全に溶融してシリンダブロック本体部と一体化する
ので、鋳包み部の脱落が防止されると共に、熱伝導性が
向上することになる。そして、リメルト処理時の急冷凝
固によってリメルト処理部における過共晶Al−Si合
金組織の初晶Siおよび共晶Siが微細かつ均一に分布
してリメルト処理部、すなわちシリンダボアの上死点近
傍部の耐摩耗性が向上することになる。さらに、Feや
Crなどの第3金属を被鋳包み用合金に添加した場合に
は、第3金属との金属間化合物が微細かつ均一に分散す
ることに加えて、その一部がリメルト処理部に固溶する
ことから当該リメルト処理部の耐摩耗性および耐熱性が
さらに向上することになる。
【0022】なお、鋳包み部のリメルト処理におけるエ
ネルギー源として、上記したレーザビームの他には、請
求項8ないし請求項10に記載しているように、電子ビ
ームやTIG、あるいはMIGアークなどを用いること
ができる。
【0023】鋳包み部のリメルト処理におけるエネルギ
ー源として、MIGアークを用いる場合、溶加材とし
て、好ましくはシリンダブロック本体部と同一成分系の
例えばADC12を、やむを得ない場合はJIS404
7材を使用し、成分変動を極力抑制することが望まし
い。このとき生じる余盛は、機械仕上げ時に切削除去さ
れる。
【0024】
【発明の効果】本発明の請求項1に係わるアルミニウム
合金製シリンダブロックは、上記したように、シリンダ
ボア部の上死点近傍が、リメルト処理された過共晶Al
−Si合金組織となっているものであるから、シリンダ
ブロックの本体部分に、亜共晶Al−Si系合金や共晶
Al−Si系合金などの通常のアルミニウム合金を適用
することによって鋳造性や加工性を犠牲にすることな
く、とくに耐摩耗性が必要なシリンダボアの上死点近傍
部の耐摩耗性を向上させることができると共に、アルミ
ニウム合金のみからなる一体構造のものであるから、安
価で、熱伝導性に優れ、リサイクルにも容易に対応する
ことができるという極めて優れた効果をもたらすもので
ある。
【0025】本発明に係わるアルミニウム合金製シリン
ダブロックの実施態様として請求項2に記載のシリンダ
ブロックにおいては、リメルト処理された過共晶Al−
Si合金組織部分に、1.0〜15.0μmの円相当径
を有する初晶Siおよび共晶Siが3〜25%の面積率
で晶出しているので、過共晶Al−Si合金組織におけ
る初晶Siおよび共晶Siが耐摩耗性向上により有効に
作用し、リメルト処理されたシリンダボアの上死点近傍
部の耐摩耗性をより確実に向上させることができ、同じ
く実施態様として請求項3に係わるアルミニウム合金製
シリンダブロックにおいては、リメルト処理された過共
晶Al−Si合金組織となっている部分に、上記サイズ
および面積率を有する初晶Siおよび共晶Siに加え
て、さらに1.0〜10.0μmの円相当径を有するA
l−Si−Fe系金属間化合物が生成しているので、リ
メルト処理部分、すなわちシリンダボアの上死点近傍部
の耐摩耗性および耐熱性をさらに向上させることができ
るという優れた効果がもたらされる。
【0026】本発明の請求項4に係わるアルミニウム合
金製シリンダブロックの製造方法においては、アルミニ
ウム合金によるシリンダブロックの鋳造に際して、シリ
ンダボア部の上死点近傍にAl−15〜30%Si合金
を鋳包んだのち、当該鋳包み部をリメルト処理するよう
にしているので、例えば共晶Al−Si系合金や亜共晶
Al−Si系合金などの通常のアルミニウム合金により
シリンダブロック本体を鋳造することにより、シリンダ
ボアの上死点近傍部の組織を微細な初晶Siおよび共晶
Siが均一に分散することによって優れた耐摩耗性を示
す過共晶Al−Si合金組織とすることができ、とくに
耐摩耗性が要求されるシリンダボアの上死点近傍部の耐
摩耗性に優れると共に、リサイクルが容易で、安価、か
つ熱伝導性に優れたアルミニウム合金製シリンダブロッ
クを鋳造性や加工性を犠牲にすることなく製造すること
ができるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0027】また、本発明の請求項5に係わるアルミニ
ウム合金製シリンダブロックの製造方法においては、同
様のシリンダブロックを鋳造するに際して、シリンダボ
ア部の上死点近傍にAl−15〜30%Si−3〜5%
Fe合金を鋳包んだのち、この鋳包み部をリメルト処理
するようにしていることから、シリンダボアの上死点近
傍部に、Feを固溶すると共に、初晶Siおよび共晶S
i、さらにAl−Si−Fe系金属間化合物が微細かつ
均一に分布する過共晶組織を備えたリメルト処理部を形
成することができ、当該上死点近傍部の耐摩耗性および
耐熱性をさらに向上させることができるという極めて優
れた効果がもたらされる。また、本発明の請求項6に係
わるアルミニウム合金製シリンダブロックの製造方法に
おいては、上記請求項5に係わる製造方法における被鋳
包み合金のFeの一部または全部をFeと同等の効果を
示す遷移元素であるCr,Mnに置換した合金を鋳包ん
でリメルト処理するようにしていることから、請求項5
に係わるシリンダブロックの製造方法と同様の効果を得
ることができる。
【0028】本発明に係わるアルミニウム合金製シリン
ダブロックの製造方法の実施態様として請求項7ないし
請求項10に記載の製造方法においては、リメルト処理
におけるエネルギー源として、それぞれレーザビーム,
電子ビーム,TIGアークおよびMIGアークを使用す
るようにしているので、それぞれリメルト処理を円滑に
実施することができ、生産規模などの諸条件に応じた選
択が可能となる。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体
的に説明する。
【0030】まず、表1に示すような組成を備えた過共
晶Al−Si合金およびAl−Si−Fe系合金を用い
て、ダイカスト法により、内径:39mm、外径:47
mm、厚さ4mmのリング状に成形することにより、5
種類の被鋳包み合金材2(AないしE)を得た。
【0031】
【表1】
【0032】次に、これら被鋳包み合金材2をシリンダ
ブロック鋳造用金型のシリンダボア上死点近傍部に相当
する部位にそれぞれセットし、この状態でダイカスト法
により、JIS H 5302(アルミニウム合金ダイ
カスト)に規定されるADC12合金を鋳込むことによ
って、図1(a)に示すようにシリンダボア部3aの上
死点近傍に、過共晶Al−Si合金あるいはAl−Si
−Fe系合金からなる5種類の被鋳包み合金材2をそれ
ぞれ鋳包んだ鋳造粗材3を得た。
【0033】そして、このようにして得られた各鋳造粗
材3の鋳包み部に、真空チャンバー内において、出力:
5kW,ビーム幅:5mmの電子ビームを0.1m/s
の速度で照射することにより、リメルト処理を行い、図
1(b)に示すように当該鋳包み部を溶融してシリンダ
ブロック本体部と一体化したのち、鋳造粗材3のシリン
ダボア部3aの内周面と、その他の必要部位を機械加工
によって仕上げることによって、図1(c)に示すよう
に、シリンダボア部1aの上死点近傍内周面にリメルト
処理部Mを備えたアルミニウム合金製シリンダブロック
1を得た。
【0034】図2は、このようなリメルト処理部Mの代
表例として、実施例1(表1に示す合金材Aを使用)に
係わるシリンダブロック1のリメルト処理部Mのミクロ
組織(400倍)を示すものであって、微細な粒状の初
晶Siおよび共晶Si粒子が均一に分散した組織となっ
ていることが認められる。
【0035】このようにして製造されたアルミニウム合
金製シリンダブロック1から、図3(a)および(b)
に示す形状の摩耗試験片Tをそれぞれ切り出し、硬質ク
ロムめっき(約800Hv)を施したピストンリング実
体切り出し試験片を相手材として、往復動摩擦摩耗試験
機を用いて、表2に示す条件のもとに摩擦摩耗試験を実
施した。なお、摩耗試験片Tは、幅W=30mm、長さ
L=70mm、曲率半径R=41mmの湾曲形状をな
し、図3(c)に示すように、リメルト処理部Mの中央
部が試験片Tの長さ方向の一端側からd=10mmの位
置となるように切り出してあり、摩擦摩耗試験に際して
は相手材の一方の折り返し点が試験片Tのリメルト処理
部Mの範囲内に来るように試験機のストロークS(50
mm)を設定した。
【0036】
【表2】
【0037】そして、摩擦摩耗試験(2時間)を終えた
各試験片Tのリメルト処理部M(折り返し部)における
摩耗量を測定することによって、各試験片Tの耐摩耗性
を評価した。この結果を図4に示す。なお、図4には、
比較例として、ダイカスト法によるADC12合金と、
重力鋳造法によるA390合金、および鋳鉄製シリンダ
ライナによる試験結果が併せて示してある。
【0038】また、上記アルミニウム合金製シリンダブ
ロック1の摩耗試験片Tを切り出した残材から、リメル
ト処理部Mを中心に10×20×5mmの試験片を切り
出し、250℃の温度に10時間保持したのちの硬さ低
下を測定することによって、各シリンダブロック1の耐
熱性を評価した。その結果を図5に示す。なお、図5に
は、上記した耐摩耗性の試験結果と同様に、比較例とし
て、ADC12合金,A390合金および鋳鉄製シリン
ダライナによる試験結果が併せて示してある。
【0039】図4に示した結果から明らかなように、表
1に示した合金材AないしEを鋳包んだのち、リメルト
処理を施した本発明の実施例1ないし5においては、A
DC12合金と比較して著しく優れた耐摩耗性を示すば
かりでなく、従来においてシリンダブロックへの適用実
績のあるA390合金や、鋳鉄シリンダライナと比較し
ても、同等、あるいはそれ以上の優れた耐摩耗性を備え
ていることが確認された。
【0040】また、耐熱性についても、図5に示した結
果から明らかなように、本発明の実施例1ないし5にお
いては、リメルト処理による組織微細化効果により、A
DC12合金やA390合金と比較して、硬さの低下が
少なく、とりわけAl−Si−Fe系合金を鋳包んだ実
施例4および5においては、Feの固溶効果により硬さ
の低下度合いがより少ないことが確認され、優れた耐熱
性を備えていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)ないし(c)は本発明に係わるアルミニ
ウム合金製シリンダブロックの製造過程を示すそれぞれ
断面説明図である。
【図2】本発明に係わるアルミニウム合金製シリンダブ
ロックにおけるリメルト処理部のミクロ組織の一例を示
す図である。
【図3】(a) 本発明の実施例に用いた摩耗試験片の
形状を示す正面図である。 (b) 図3(a)に示した摩耗試験片の側面図であ
る。
【図4】本発明に係わるアルミニウム合金製シリンダブ
ロックの耐摩耗性を比較例と共に示すグラフである。
【図5】本発明に係わるアルミニウム合金製シリンダブ
ロックの耐熱性を比較例と共に示すグラフである。
【符号の説明】
1 アルミニウム合金製シリンダブロック 1a シリンダボア部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年9月3日(1998.9.3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】本発明に係わるアルミニウム合金製シリンダブ
ロックにおけるリメルト処理部のミクロ組織の一例を示
す顕微鏡写真である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C22F 1/00 601 C22F 1/00 601 604 604 651 651B

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダボア部の上死点近傍が、リメル
    ト処理された過共晶Al−Si合金組織となっているこ
    とを特徴とするアルミニウム合金製シリンダブロック。
  2. 【請求項2】 リメルト処理された過共晶Al−Si合
    金組織となっている部分には、1.0〜15.0μmの
    円相当径を有する初晶Siおよび共晶Siが3〜25%
    の面積率で晶出していることを特徴とする請求項1記載
    のアルミニウム合金製シリンダブロック。
  3. 【請求項3】 リメルト処理された過共晶Al−Si合
    金組織となっている部分には、1.0〜15.0μmの
    円相当径を有する初晶Siおよび共晶Siが3〜25%
    の面積率で晶出していると共に、さらに1.0〜10.
    0μmの円相当径を有するAl−Si−Fe系金属間化
    合物が生成していることを特徴とする請求項1記載のア
    ルミニウム合金製シリンダブロック。
  4. 【請求項4】 アルミニウム合金を用いてシリンダブロ
    ックを鋳造するに際し、Al−15〜30%Si合金を
    シリンダボア部の上死点近傍に鋳包んだのち、当該鋳包
    み部にリメルト処理を施すことを特徴とするアルミニウ
    ム合金製シリンダブロックの製造方法。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金を用いてシリンダブロ
    ックを鋳造するに際し、Al−15〜30%Si−3〜
    5%Fe合金をシリンダボア部の上死点近傍に鋳包んだ
    のち、当該鋳包み部にリメルト処理を施すことを特徴と
    するアルミニウム合金製シリンダブロックの製造方法。
  6. 【請求項6】 シリンダボア部の上死点近傍に鋳包まれ
    るアルミニウム合金のFeの一部もしくは全部がCrお
    よび/またはMnに置換されていることを特徴とする請
    求項5記載のアルミニウム合金製シリンダブロックの製
    造方法。
  7. 【請求項7】 リメルト処理のエネルギー源としてレー
    ザビームを用いることを特徴とする請求項4ないし請求
    項6のいずれかに記載のアルミニウム合金製シリンダブ
    ロックの製造方法。
  8. 【請求項8】 リメルト処理のエネルギー源として電子
    ビームを用いることを特徴とする請求項4ないし請求項
    6のいずれかに記載のアルミニウム合金製シリンダブロ
    ックの製造方法。
  9. 【請求項9】 リメルト処理のエネルギー源としてTI
    Gアークを用いることを特徴とする請求項4ないし請求
    項6のいずれかに記載のアルミニウム合金製シリンダブ
    ロックの製造方法。
  10. 【請求項10】 リメルト処理のエネルギー源としてM
    IGアークを用いることを特徴とする請求項4ないし請
    求項6のいずれかに記載のアルミニウム合金製シリンダ
    ブロックの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009208095A (ja) * 2008-03-03 2009-09-17 Nsk Ltd アルミニウム合金ダイカスト鋳物部品
JP2010207842A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Honda Motor Co Ltd Al合金鋳造品及びその製造方法
JP2011224656A (ja) * 2010-03-31 2011-11-10 Kobe Steel Ltd アルミニウム合金ブレージングシートおよび熱交換器
US9555469B2 (en) 2009-03-09 2017-01-31 Honda Motor Co., Ltd. Aluminum alloy casting and method for producing the same, and apparatus for producing slide member

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