JP2000073712A - エンジンの動弁機構用カムフォロア装置及びその製造方法 - Google Patents

エンジンの動弁機構用カムフォロア装置及びその製造方法

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JP2000073712A
JP2000073712A JP24808798A JP24808798A JP2000073712A JP 2000073712 A JP2000073712 A JP 2000073712A JP 24808798 A JP24808798 A JP 24808798A JP 24808798 A JP24808798 A JP 24808798A JP 2000073712 A JP2000073712 A JP 2000073712A
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roller
hardness
engine
peripheral surface
outer peripheral
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JP24808798A
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Seiji Higuchi
誠二 樋口
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロッカーアームに設けた1対の支持壁部の内
側面で、ローラ10の軸方向端面12、12と摺接する
部分の摩耗を低減する。同時に、このローラ10の外周
面の耐久性を確保する。 【解決手段】 ローラ10の軸方向両端面12、12の
硬度を、このローラ10の外周面11の硬度よりも低く
する。好ましくは、上記ロッカーアームをアルミニウム
合金製とした場合に、上記各軸方向端面12、12の硬
度をHv800以下にすると共に、これら各軸方向端面1
2、12の表面粗さを0.3μmRa以下にする。上記
ローラ10を製造するのに、このローラ10の軸方向両
端面12、12同士を互いに重ね合わせた状態で、この
ローラ10の外周面11にショット・ピーニングを施
す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明に係るエンジンの動
弁機構用カムフォロア装置は、エンジンの動弁機構中に
組み込み、動弁機構部分の摩擦を少なくして、エンジン
運転時に於ける燃料消費率の低減を図るものである。
【0002】
【従来の技術】エンジン内部での摩擦低減を図り、燃焼
消費率を低減する事を目的として、クランクシャフトと
同期したカムシャフトの回転を吸気弁及び排気弁の往復
運動に変換する部分に、エンジンの動弁機構用カムフォ
ロア装置を組み込む事が一般的に行なわれている。図8
〜9は、実開平3−108806号公報に記載されたエ
ンジンの動弁機構用カムフォロア装置を示している。
【0003】この動弁機構用カムフォロア装置は、エン
ジンのクランクシャフトと同期して回転するカムシャフ
ト1に固定した(一般的には一体に形成された)カム2
に対向して、このカム2の動きを受けるロッカーアーム
3を設けている。このロッカーアーム3の端部(図8〜
9の左端部)には1対の支持壁部4、4を、互いに間隔
をあけて設けている。これら1対の支持壁部4、4の間
には、鋼製で中空又は中実の軸5を掛け渡している。こ
の軸5の両端は焼き入れする事なく、生のままとしてお
り、軸5を固定する際には、この未焼き入れ部分を、上
記1対の支持壁部4、4に形成した通孔7、7の内周面
に向けてかしめ付ける。上述の様にして1対の支持壁部
4、4の間に掛け渡した、軸5の周囲にはローラ6を、
回転自在に支承しており、このローラ6の外周面6a
を、上記カム2の外周面2aに当接させている。
【0004】上述の様に構成するエンジンの動弁機構用
カムフォロア装置によれば、ロッカーアーム3とカム2
との間に働く摩擦力を低減し、エンジン運転時に於ける
燃料消費率の低減を図れる。尚、エンジンの動弁機構用
カムフォロア装置の構成各部材の材質としては、カム2
を含むカムシャフト1は鋳鉄若しくは軸受鋼により、ロ
ーラ6及び軸5はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼の如
き軸受鋼により、それぞれ造る事が、必要な強度を確保
しつつ材料費、加工費を抑える面から、一般的に行なわ
れている。
【0005】又、上記摩擦力を一層低減する為、図10
に示す様に、軸5の外周面とローラ6の内周面との間に
複数本のころ8、8を設け、このローラ6を上記軸5の
周囲に、ラジアルころ軸受9により回転自在に支持する
事も行なわれている。又、エンジンの動弁機構用カムフ
ォロア装置の耐久性を確保する為、上記ローラ6全体
に、ズブ焼き入れ処理(加熱したローラ6全体を焼き入
れ用油中に浸漬する処理)又は浸炭焼き入れ処理を施し
て、このローラ6の表面硬度をHRC 59〜64(Hv67
4〜800)と高くしている。この様にして、表面硬度
を高くしたローラ6の外周面6a及び軸方向端面6b、
6bには、研削又超仕上による仕上加工を施す。
【0006】一方で近年、エンジンの動弁機構用カムフ
ォロア装置の耐久性を向上させるべく、カム2の外周面
2aの耐久性を向上させる為、上記カム2の外周面2a
の硬度を高くする事が考えられている。この様にカム2
の外周面2aの硬度を高くした場合には、これに合わせ
て、この外周面2aに当接するローラ6の外周面6aの
高度を高くする事が、このローラ6の耐久性を確保する
為に必要である。この為従来は、このローラ6に、バレ
ル加工やショット・ピーニング等の表面硬化処理を施す
事により、上記外周面6aを含む、上記ローラ6の表面
全体を硬化させている。この様な場合には、このローラ
6の表面全体の硬度が、Hv900前後若しくはそれ以上
になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のエンジンの動弁
機構用カムフォロア装置の場合、カム2の外周面2aと
当接するローラ6の外周面6aだけでなく、このローラ
6の軸方向両端面6b、6bも、この外周面6aと同様
に硬くなっている。但し、軸方向両端面6b、6bが必
要以上に硬くなると、これら各端面6b、6bと対向し
て、これら各端面6b、6bと摺接する、ロッカーアー
ム3を構成する各支持壁部4、4の内側面の摩耗が著し
くなる為、好ましくない。特に、上記ロッカーアーム3
を、上記ローラ6を構成する軸受鋼に比べて軟質な、ア
ルミニウム合金製とした場合には、上記摩耗量の増加が
顕著になる。この結果、エンジンの動弁機構用カムフォ
ロア装置全体としての耐久性が低下する。本発明のエン
ジンの動弁機構用カムフォロア装置は、この様な事情に
鑑みて発明したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のエンジンの動弁
機構用カムフォロア装置及びその製造方法のうち、請求
項1に記載したエンジンの動弁機構用カムフォロア装置
は、従来のエンジンの動弁機構用カムフォロア装置と同
様に、エンジンのクランクシャフトと同期して回転する
カムシャフトに固定されたカムと、このカムに対向して
設けられ、このカムの動きを受ける部材に間隔を開けて
形成された1対の支持壁部と、これら1対の支持壁部の
間に掛け渡す状態で固定された軸と、この軸の周囲に回
転自在に支持された、鋼製のローラとから成る。特に、
本発明のエンジンの動弁機構用カムフォロア装置に於い
ては、このローラの軸方向両端面の硬度を、このローラ
の外周面の硬度よりも低くしている。例えば、上記カム
の外周面の硬度を高くした場合には、前述の様に、上記
ローラの外周面の硬度を、Hv900前後若しくはそれ以
上にする。この場合でも、上記ロッカーアームを、アル
ミニウム合金、マグネシウム合金等の軽合金をダイキャ
スト成形する事により造った場合には、上記ローラの軸
方向両端面の硬度を、Hv800以下にする事が好まし
い。更に好ましくは、上記ローラの軸方向両端面を、表
面粗さが0.3μmRa以下の平滑面とする。
【0009】又、請求項2に記載したエンジンの動弁機
構用カムフォロア装置の製造方法は、上述した様なロー
ラを製造する場合に、複数個のローラを支持軸の周囲
に、これら各ローラの軸方向端面同士を互いに重ね合わ
せた状態で外嵌した後、これら各ローラの外周面にショ
ット・ピーニングを施して、これら各ローラの外周面の
硬度のみを高くする。
【0010】
【作用】上述の様に本発明のエンジンの動弁機構用カム
フォロア装置の場合には、上記ローラの軸方向両端面の
硬度を、このローラの外周面の硬度よりも低くしてい
る。この為、このローラの外周面の耐久性確保と、この
ローラの軸方向両端面が対向する、ロッカーアームを構
成する1対の支持壁部の内側面の耐久性確保とを両立で
きる。即ち、上記ローラの外周面の硬度を高くする事
で、硬いカムの外周面と係合する、このローラの外周面
の耐久性を確保できる。これに対して、このローラの軸
方向両端面の硬度を低くする事により、これら各端面の
上記各支持壁部の内側面に対する攻撃性を緩和して、こ
の内側面の摩耗を抑える事ができる。又、上記各端面
を、表面粗さが0.3μmRa以下の平滑面とすれば、こ
れら各端面と上記各支持壁部の内側面との摺接部に潤滑
油膜を効率良く形成して、この内側面の摩耗をより確実
に防止できる。更に、本発明のエンジンの動弁機構用カ
ムフォロア装置の製造方法によれば、外周面の硬度を高
く、軸方向両端面の硬度を低くしたローラを、能率良く
造れる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、請求項1に対応する、本
発明の実施の形態の第1例を示している。本発明のエン
ジンの動弁機構用カムフォロア装置は、前述の従来構造
と同様に、エンジンのクランクシャフトと同期して回転
するカムシャフト1に固定されたカム2と、このカム2
に対向して設けられ、このカム2の動きを受ける部材で
あるロッカーアーム3に間隔を開けて形成した1対の支
持壁部4、4(図8〜9参照。図1には省略。)と、こ
れら1対の支持壁部4、4の間に掛け渡す状態で固定さ
れた軸5と、この軸5の周囲にラジアルころ軸受9を介
して回転自在に支承された、鋼製のローラ10とから成
る。上記ロッカーアーム3は、アルミニウム合金をダイ
キャスト成形する事により造っている。これに対して上
記ローラ10は、高炭素クロム軸受鋼であるSUJ2に
より造っている。従って、上記各支持壁部4、4の内側
面の硬度は、上記ローラ10の軸方向両端面12、12
の硬度よりも低い。
【0012】上記ローラ10は、ズブ焼き入れ処理又は
浸炭焼き入れ処理等の熱処理により表面全体の硬度をHv
750〜800程度に高くした後、外周面11のみに、
バレル加工やショット・ピーニング等の表面硬化処理を
施し、この外周面11の硬度のみを、Hv850〜950
程度にまで、より一層向上させている。この様に上記外
周面11に表面硬化処理を施す際に、上記ローラ10の
軸方向端面12、12には上記表面硬化処理を施さな
い。この為、このローラ10の軸方向端面12、12の
硬度は、上記熱処理工程終了後のままの、Hv750〜8
00程度である。更に、上記ローラ10の軸方向両端面
12、12に、超仕上、研削加工等の仕上加工を施し
て、これら両端面を、表面粗さが0.3μmRa以下の平
滑面としている。
【0013】上述の様に本発明のエンジンの動弁機構用
カムフォロア装置の場合には、上記ローラ10の軸方向
両端面12、12の硬度を、このローラ10の外周面1
1の硬度よりも低くしている。この為、このローラ10
の外周面11の耐久性確保と、このローラ10の軸方向
両端面12、12が対向する、ロッカーアーム3を構成
する1対の支持壁部4、4の内側面の耐久性確保とを両
立できる。
【0014】即ち、上記ローラ10の外周面11の硬度
を、Hv850〜950程度と高くする事で、硬いカム2
の外周面と係合する、このローラ10の外周面11の耐
久性を確保できる。これに対して、このローラ10の軸
方向両端面12、12の硬度を、Hv750〜800程度
と低くする事により、これら各端面12、12の上記各
支持壁部4、4の内側面に対する攻撃性を緩和して、こ
の内側面の摩耗を抑える事ができる。
【0015】又、上記各端面12、12を、表面粗さが
0.3μmRa以下の平滑面としている為、これら各端面
12、12と上記各支持壁部4、4の内側面との摺接部
に潤滑油膜を効率良く形成して、この内側面の摩耗をよ
り確実に防止できる。これらにより、構成各部の摩耗を
何れも抑えて、エンジンの動弁機構用カムフォロア装置
の耐久性を向上させる事ができる。
【0016】次に、図2は、請求項1に対応する、本発
明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合に
は、ローラ10の内径側に設けた幅の狭いワッシャ1
3、13により、ラジアルころ軸受9を構成する各ころ
8、8の端面と各支持壁部4、4(図8〜9参照。図2
には省略。)の内側面とが直接当接する事を防止してい
る。この様な本例の場合には、ワッシャ13、13を設
ける事により、上記ラジアルころ軸受9を構成する各こ
ろ8、8の公転運動に対する抵抗を小さく抑えると共
に、軸受鋼等の硬質金属製であるこれら各ころ8、8の
端面が上記各支持壁部4、4の内側面と擦れ合う事を防
止して、これら各内側面の摩耗低減を図る。その他の構
成及び作用は、上述した第1例と同様であるから、重複
する説明を省略する。
【0017】次に、図3は、請求項1に対応する、本発
明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合に
は、軸5の周囲にローラ10aを、上述の第1〜2例に
示した様なラジアルころ軸受9(図1〜2)を介する事
なく、直接回転自在に支持している。本例の場合には、
上記ローラ10aの内周面の摩擦係数を低くする事によ
り、このローラ10aの内周面と上記軸5の外周面と間
で滑り軸受を構成している。この為に本例の場合、上記
ローラ10aの内周面に、固体潤滑皮膜処理又は軟窒化
処理を施す事により、この内周面の摩擦係数を低くして
いる。尚、このうちの固体潤滑皮膜処理としては、化成
処理皮膜の上に二硫化モリブデン(MoS2)の皮膜を形
成したものが適当である。又、軟窒化処理としては、タ
フトライド処理、或はガス軟窒化処理が適当である。
尚、これら固体潤滑皮膜処理又は軟窒化処理は、上記ロ
ーラ10aの内周面に施せば足りるが、工業的手法でこ
の内周面のみに施す事は実際には難しい場合がある。従
って、この様な場合には、上記固体潤滑皮膜処理又は軟
窒化処理を、上記ローラ10aの表面全体に亙り施す。
その他の構成及び作用は、上述した第1〜2例と同様で
あるので、重複する説明は省略する。
【0018】次に、図4は、請求項1に対応する、本発
明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合に
は、軸5aを真鍮等の銅合金により円柱状に造ってい
る。この軸5aは、小径部14と大径部15とから成
る。このうちの小径部14の周囲にローラ10aを回転
自在に支持し、大径部15の外周面の円周方向一部に給
油孔16の一端を開口させている。そして、この給油孔
16の他端を、上記小径部14の外周面で、上記ローラ
10aの内周面に対向する部分に開口させている。エン
ジンの運転時には、上記給油孔16を通じて潤滑油が、
上記ローラ10aの内周面と上記軸5aの外周面との間
の隙間に送り込まれる。この結果、上記ローラ10aの
内周面と上記軸5aの小径部14の外周面との間の摩擦
を低減して、比較的軟らかい銅合金製の小径部14の外
周面の摩耗を防止している。その他の構成及び作用は、
上述した第3例の場合と同様であるから、重複する説明
は省略する。
【0019】上述した各例のエンジンの動弁機構用カム
フォロア装置を構成するローラ10、10aを造る場合
には、先ず、従来構造を構成するローラ6(図8〜9参
照)と同様に、上記ローラ10、10aをSUJ2等の
高炭素クロム軸受鋼の如き軸受鋼により造った後、上記
ローラ10、10aにズブ焼き入れ又は浸炭焼き入れ等
の熱処理を施して、このローラ10、10a全体の硬度
を高くする。その後、このローラ10、10aの表面粗
さを、研削又は超仕上により、所望にする。この状態
で、このローラ10、10aの表面硬度は、Hv750〜
800程度になる。その後、このローラ10、10aの
(軸方向端面12、12の硬度を高くする事なく)外周
面11のみ、硬度を高くする。この様に、軸方向端面1
2、12の硬度を高くする事なく、外周面11のみ硬度
を高くする表面硬化処理は、熱処理によっては難しい
為、機械的な処理により行なう。
【0020】図5は、上記外周面11のみ硬度を高くす
る為、請求項2に対応する、本発明のエンジンの動弁機
構用カムフォロア装置の製造方法を実施する場合を示し
ている。この方法を実施する場合、複数個のローラ1
0、10aを回転軸25の周囲に、これら各ローラ1
0、10aの軸方向端面12、12同士を互いに重ね合
わせた状態で外嵌支持した後、これら複数個のローラ1
0、10aを上記回転軸25と共に回転させつつ、これ
ら各ローラ10、10aの外周面に、機械的な表面硬化
処理である、ショット・ピーニングを施す。本例の場合
には、このショット・ピーニングに使用するショット
(鋼製の粒子等)をノズル26から上記各ローラ10、
10aの外周面に噴射する。尚、このノズル26は、上
記各ローラ10、10aの直径方向外方に配置すると共
に、これら各ローラ10、10aの軸方向(図5の上下
方向)に移動自在である。従って、上記各ローラ10、
10aを回転させつつ、上記ノズル26を上記各ローラ
10、10aの軸方向に移動させれば、これら各ローラ
10、10aの外周面のみに、上記表面硬化処理をまん
べんなく施せる。
【0021】上述した様な製造方法によれば、上記各ロ
ーラ10、10aの外周面のみに、同時に複数のローラ
10、10aに表面硬化処理を施す事が可能となる。従
って、これら各ローラ10、10aの量産性を確保し
て、製造コストを抑える事ができる。
【0022】
【実施例】次に、本発明の効果を確認する為、本発明者
が行なった実験に就いて説明する。この実験をするに当
り、従来のローラ6と同等の試料(比較例1〜3)と本
発明の対象となるローラ10と同等の試料(実施例1〜
3)とを、それぞれ3種類ずつ(合計6種類)用意し
た。これら各試料は、それぞれ同じものを4個ずつ用意
し、それぞれを次述する装置に組み込んで実験を行なっ
た。
【0023】尚、比較例1〜3の試料は、バスケットに
投入し、このバスケットを低速で回転させつつ、表面に
ショットピーニングを施して作製したものであり、その
外周面と軸方向端面とには、それぞれ同様の表面硬化処
理が施されている。これに対して実施例1〜3の試料
は、上述した本発明の製造方法により作製したものであ
り、それぞれの外周面にのみ、表面硬化処理が施されて
いる。尚、上記比較例1〜3の試料及び上記実施例1〜
3の試料の硬度並びに軸方向端面の粗さの具体的な数値
及び実験結果は、後述する表1に記載している。
【0024】又、本実験を行なう為の装置は、図6に示
す様に、貯油槽27の中に潤滑油(図6の斜格子部分)
を満たし、この潤滑油の中に、試料19と、この試料1
9をその先端部に外嵌固定した状態でこの試料19を回
転駆動する回転軸20と、プレート21とを浸漬してい
る。このプレート21の片面(図6の下面。各支持壁部
4、4の内側面に相当する面。)は、上記試料19の軸
方向端面と摺接する。更に、上記試料19は、その軸方
向両端面を、上記回転軸20の先端部に設けた鍔部22
と上記プレート21の片面との間で、スラスト荷重Fを
加えられた状態で挟持されている。このスラスト荷重F
は、上記プレート21の他面(図6の上面)に固定され
た押圧片23により加えられる。この押圧片23は、そ
の先端面を上記プレート21の他面に当接させた状態
で、ボルト24によりこのプレート21に結合固定して
いる。
【0025】実験条件は、下記の通りである。 試料19の回転数:500rpm 試料19とプレート21とが摺接する部分に加えるスラ
スト荷重F:20kg f プレート21:板厚10mmのアルミニウム合金製ダイ
キャスト成形品 試料の材質(大きさ):SUJ2(外径18mm×内径1
4mm×幅10mm) 潤滑油:エンジンオイル(10W−30) 油温:100℃
【0026】
【表1】
【0027】この表1から明らかな通り、上記試料19
の軸方向端面の硬度をHv800以下にする事により、こ
の試料19の軸方向端面が摺接する上記プレート21の
摩耗量を低減する事ができる。更に、実験開始後10時
間経過した時点での摩耗量と20時間経過した時点での
摩耗量とを比較すると、実施例2及び実施例3の場合に
は、全く変化していない。この事から、試料19の軸方
向端面の表面粗さを0.3μmRa以下にした場合には、
上記プレート21の摩耗量を初期に発生する摩耗のみに
抑える事ができる事が分る。
【0028】更に、図7は、試料19の軸方向端面の表
面粗さを0.3μmRaに固定した状態でこの試料19の
軸方向端面の硬度を変化させた場合に於ける、実験開始
後20時間経過した時点での、プレート21の摩耗量の
変化を示したものである。この図7から明らかな通り、
上記試料19の軸方向端面の硬度がHv800前後を境に
して、この軸方向端面の硬度が高くなる程、プレート2
1の摩耗量が急激に多くなる。この事から、ローラ1
0、10a(図1〜4)の軸方向両端面12、12の硬
度をHv800以下にすれば、ロッカーアーム3のうちで
これら軸方向両端面12、12が摺接する支持壁部4、
4(図8〜9)の内側面の摩耗を低減できる事が分る。
尚、上記軸方向両端面12、12の硬度は、Hv550以
上である事が望ましい。この理由は、これら両端面1
2、12の硬度をHv550未満にすると、これら両端面
12、12自身の摩耗が著しくなるだけでなく、上記ロ
ーラ10、10aの転がり疲労が著しくなって、上記ロ
ーラ10、10aの耐久性が不十分になる為である。
【0029】
【発明の効果】本発明のエンジンの動弁機構用カムフォ
ロア装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、
各部の摩耗を低減して、優れた耐久性を有するエンジン
の動弁機構用カムフォロア装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面
図。
【図2】同第2例を示す要部断面図。
【図3】同第3例を示す要部断面図。
【図4】同第4例を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施に供するローラを造る為に、この
ローラにショット・ピーニングを施す工程を示す略斜視
図。
【図6】本発明の効果を確認する為の実験に使用した装
置を示す断面図。
【図7】ローラの軸方向端面の硬度とプレートの摩耗量
との関係を示す図。
【図8】本発明の対象となるエンジンの動弁機構用カム
フォロア装置の1例を示す部分切断平面図。
【図9】図8のA−A断面図。
【図10】本発明の対象となるエンジンの動弁機構用カ
ムフォロア装置の別例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 カムシャフト 2 カム 2a 外周面 3 ロッカーアーム 4 支持壁部 5、5a 軸 6 ローラ 6a 外周面 6b 端面 7 通孔 8 ころ 9 ラジアルころ軸受 10、10a ローラ 11 外周面 12 端面 13 ワッシャ 14 小径部 15 大径部 16 給油孔 19 試料 20 回転軸 21 プレート 22 鍔部 23 押圧片 24 ボルト 25 回転軸 26 ノズル 27 貯油槽

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンのクランクシャフトと同期して
    回転するカムシャフトに固定されたカムと、このカムに
    対向して設けられ、このカムの動きを受ける部材に間隔
    を開けて形成された1対の支持壁部と、これら1対の支
    持壁部の間に掛け渡す状態で固定された軸と、この軸の
    周囲に回転自在に支承された、鋼製のローラとから成る
    エンジンの動弁機構用カムフォロア装置に於いて、この
    ローラの軸方向両端面の硬度を、このローラの外周面の
    硬度よりも低くしている事を特徴とするエンジンの動弁
    機構用カムフォロア装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載したエンジンの動弁機構
    用カムフォロア装置の製造方法であって、複数個のロー
    ラを支持軸の周囲に、これら各ローラの軸方向端面同士
    を互いに重ね合わせた状態で外嵌した後、これら各ロー
    ラの外周面にショット・ピーニングを施して、これら各
    ローラの外周面の硬度のみを高くする、エンジンの動弁
    機構用カムフォロア装置の製造方法。
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