JP2000073129A - 鋳造用金属−セラミックス複合材料の製造方法 - Google Patents

鋳造用金属−セラミックス複合材料の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粒子の均一分散性を維持しつつ、溶融した溶
湯の流動性を向上させることのできる鋳造用金属−セラ
ミックス複合材料の製造方法を提供すること。 【解決手段】 基材であるアルミニウム合金に強化材で
あるセラミックス粉末を複合させる鋳造用金属−セラミ
ックス複合材料の製造方法において、該セラミックス粉
末が、5μm以下の粒子が10重量%以下、50μm以
上の粒子が10重量%以下の粒径分布を有する粉末であ
り、かつ4以下のアスペクト比と50%以上のタップ相
対密度を有する粉末であることとする鋳造用金属−セラ
ミックス複合材料の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属に強化材を複
合させる金属−セラミックス複合材料の製造方法に関
し、特に鋳造用の金属−セラミックス複合材料の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス繊維または粒子で強化され
た金属−セラミックスの複合材料は、セラミックスと金
属の両方の特性を兼ね備えており、例えば、この複合材
料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックス
の優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の
優れた特性を備えている。このように、従来から難しい
とされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えて
いるため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料と
して注目されている。
【0003】この複合材料、特に金属としてアルミニウ
ムをマトリックスとする複合材料の製造方法は、粉末冶
金法、高圧鋳造法、真空鋳造法等の方法が従来から知ら
れている。しかし、これらの方法は、強化材であるセラ
ミックスの含有量を多くできない、あるいはニアネット
成形が困難である、もしくはコストが極めて高いなどの
理由により、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】そこで最近では、上記問題を解決する製造
方法として、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属
浸透法が特に注目されている。この方法は、SiCやA
23などのセラミックス粉末で形成されたプリフォー
ムに、Mgを含むアルミニウムインゴットを接触させ、
これをN2雰囲気中で700〜900℃に加熱して溶融
したアルミニウム合金をプリフォームに含浸させる方法
である。これは、MgとN2との化学反応を利用してセ
ラミックス粉末への溶融金属の濡れ性を改善することに
より、加圧しなくても金属をプリフォームに含浸できる
ようにした優れた方法である。
【0005】そして、この製造方法で作製した複合材料
をさらに溶融し、それを融解アルミニウム合金で鋳造可
能なまで希釈した鋳造用の金属−セラミックス複合材料
の製造方法も提案されている。この方法は、中間素材と
なる複合材料中のセラミックス粉末の濡れ性がMgの添
加ですでに改善されているので、それを別の融解したア
ルミニウム合金で希釈しても、またその希釈したセラミ
ックス粉末の充填率を難しいとされる30〜35vol
%に上げても流動性が確保され、鋳型に鋳込むことでさ
らなる大型品やより複雑な形状品の複合材料を作製する
ことができる優れた方法である。その鋳造には、砂型/
金型を用いた重力鋳造、ロストワックスに代表される精
密鋳造、ダイキャストなど、一般にアルミニウム鋳造に
使われる鋳造方法であれば、そのままの方法で鋳造する
ことができる。
【0006】この鋳造用の複合材料の製造方法は、上記
のランクサイド社法の他にもこれまで多く研究されてお
り、その製造方法としては、混合による方法が一般的で
ある。この方法は、融解したアルミニウム合金中にセラ
ミックス粉末を添加し、流動性を確保しつつ攪拌し均一
に混合して製造する方法である。その粉末充填率は、一
般的にはランクサイド社の方法ほどセラミックス粉末の
充填率を上げることはできなく、20vol%程度が上
限である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
鋳造用の複合材料の製造方法では、溶融した溶湯の流動
性が確保されるといっても、未だ十分とは言えず、薄
物、細物、微細な物などの複合材料を鋳造する場合に
は、溶湯が鋳型に十分に行き渡らず鋳造不良を起こすと
いう問題があった。また、流動性が良くなれば鋳造時の
冷却固化するまでの間にセラミックス粉末が沈降し、粒
子の均一分散性が損なわれるという問題もあった。
【0008】本発明は、上述した鋳造用金属−セラミッ
クス複合材料の製造方法が有する課題に鑑みなされたも
のであって、その目的は、粒子の均一分散性を維持しつ
つ、溶融した溶湯の流動性を向上させることのできる鋳
造用金属−セラミックス複合材料の製造方法を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成するため鋭意研究した結果、セラミックス粉末の
粒径分布を限定し、かつ球形に近いセラミックス粉末を
使用すれば、鋳造時における均一分散性を維持しつつ、
溶融した溶湯の流動性を大幅に向上できるとの知見を得
て本発明を完成するに至った。
【0010】即ち本発明は、基材であるアルミニウム合
金に強化材であるセラミックス粉末を複合させる鋳造用
金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該セ
ラミックス粉末が、5μm以下の粒子が10重量%以
下、50μm以上の粒子が10重量%以下の粒径分布を
有する粉末であり、かつ4以下のアスペクト比と50%
以上のタップ相対密度を有する粉末であることを特徴と
する鋳造用金属−セラミックス複合材料の製造方法とす
ることを要旨とする。以下さらに詳細に説明する。
【0011】上記製造方法としては、用いるセラミック
ス粉末を、5μm以下の粒子が10重量%以下で、50
μm以上の粒子が10重量%以下の粒径分布を有し、か
つ4以下のアスペクト比と50%以上のタップ相対密度
を有する粉末とする鋳造用金属−セラミックス複合材料
の製造方法とした。セラミックス粉末の粒径分布を限定
したのは、5μm以下の細かい粒子が10重量%より多
くなると、粉末全体の比表面積が大きくなりすぎ、溶湯
の粘性が高くなって流動性が悪くなり、逆に、50μm
以上の粗い粒子が10重量%より多くなると、流動性は
良くなるものの、粒子が沈降し易くなり、鋳造時に沈降
して分離し、粒子が均一に分散しないことによる。
【0012】また、セラミックス粉末のアスペクト比を
4以下、タップ相対密度を50%以上としたのは、アス
ペクト比が4より大きいと、粒子の形状が球形から大き
く外れ溶湯の流動性の向上が望めず、タップ相対密度が
50%より低いと、これも粒子の形状が球形から大きく
外れ流動性の向上が望めず、いずれも好ましくないこと
による。このように、セラミックス粉末の粒径分布、ア
スペクト比、タップ相対密度を適切に限定することによ
り、溶湯の流動性を向上させることができ、しかも粒子
の均一分散性も確保することができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法をさらに詳しく
述べると、先ず強化材として5μm以下の粒子が10重
量%以下で、50μm以上の粒子が10重量%以下の粒
径分布を有し、4以下のアスペクト比と50%以上のタ
ップ相対密度を有するセラミックス粉末を用意する。セ
ラミックスの種類は特に限定するものではなく、Si
C、Al23、AlN、B4Cなどのセラミックス粉末
が挙げられる。ここでランクサイド社法ではMgの含有
が必要であるので、この粉末にMgを適量加え、混合す
るか、後工程の浸透させるアルミニウム合金中に含ませ
るかしてMgを含ませる。なお、このランクサイド社法
ではアルミニウム合金を非加圧で浸透させているが、こ
れを高圧で浸透させても十分浸透可能であるので、高圧
で浸透させたい場合にはこのMgを特に含ませる必要は
ない。
【0014】得られた粉末をランクサイド社法では容器
内に充填し、その上にアルミニウム合金のインゴットを
載せ、窒素雰囲気中で非加圧で700〜1000℃の温
度でアルミニウム合金を浸透させ、冷却して中間素材で
ある複合材料を作製する。一方、高圧で浸透させたい場
合には、先ず容器中のセラミックス粉末を700〜90
0℃の温度で予熱しておき、その容器内に700〜90
0℃の温度で加熱溶融したアルミニウム合金を注入し、
50〜100MPaの圧力をかけてアルミニウム合金を
浸透させ、冷却して中間素材である複合材料を作製す
る。
【0015】得られた複合材料を坩堝内で所定温度で再
溶融し、それに別に融解したアルミニウム合金を所定量
加え、攪拌機で十分攪拌して希釈し、冷却して鋳造用の
金属−セラミックス複合材料を作製する。所定量の複合
材料と先のアルミニウム合金のインゴットを坩堝内に入
れ、これらを所定温度で溶融した後、攪拌機で攪拌して
も問題ない。
【0016】希釈用のアルミニウム合金については、特
に限定はなく、その希釈する量としては、望みの粉末充
填率になるよう適宜の量とすればよい。希釈時の攪拌方
法/条件は、極めて重要な因子となる。すなわち、セラ
ミックス粒子の分離を防ぎ、十分な分散を維持できるほ
どの攪拌速度が必要であるが、それによって溶湯中に気
泡を巻き込んではならない。実験を十分行って攪拌条件
を慎重に決めることが必要である。希釈された溶湯物は
そのまま鋳造し、目的の複合材料を作製してもよいし、
一旦インゴット形状に形成し、それを再度溶融して鋳造
し、目的の複合材料を作製してもよい。
【0017】一方、混合法による作製では、中間素材を
作製する必要がないので、アルミニウム合金のインゴッ
トを坩堝内で所定温度で融解し、それに用意したセラミ
ックス粉末を加え、攪拌して混合し、冷却して鋳造用の
複合材料を作製する。攪拌方法/条件については前記し
たと同じである。これら鋳造用の複合材料を再溶融すれ
ば、流動性に優れた溶湯物が得られ、これを鋳造すれ
ば、薄物、細物、微細な物などの最終製品である複合材
料も鋳造不良を起こすことなく作製できるようになる。
【0018】以上の方法で鋳造用の金属−セラミックス
複合材料を作製すれば、溶湯の流動性に優れ、粒子の均
一分散性に優れた鋳造用の金属−セラミックス複合材料
が得られる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的
に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0020】(実施例1、2) (1)中間素材である複合材料の作製 強化材として実施例1では、独ESK(ELEKTRO
SCHMELZWERK KEMPTEM GMBH)
社の市販SiC粉末(C#700D Dark、平均粒
径17μm、粒径分布、アスペクト比、タップ相対密度
は表1に示す)を用意し、実施例2では、フジミインコ
ーポレーテッド社の市販Al23粉末(平均粒径25μ
m、粒径分布、アスペクト比、タップ相対密度は表1に
示す)を用意し、それらにMg粉末を2重量%添加し、
V型混合機で15分混合した。得られた混合粉末をそれ
ぞれ200×200×200mmのグラフォイル製の容
器に充填した後、その上に混合粉末の1.2倍量のアル
ミニウム合金(10重量%Siを含む)のインゴットを
置き、電気炉にセットした。これをN2気流中で800
℃の温度で12時間保持し、アルミニウム合金を非加圧
浸透させた後、冷却して複合材料を作製した。なお、粒
径分布は、PRO−7000S(セイシン企業製)で調
べ、アスペクト比は、SEM(S−4000、日立製作
所製)で調べ、タップ相対密度は、メスシリンダーに所
定質量(Mg)のSiC粉末またはAl23粉末を投入
し、机上で100回タッピングを行った後、体積(Vc
3)を計量し、M/Vよりタップ密度(g/cm3)を
求め、真比重3.2で除した。
【0021】(2)鋳造用複合材料の作製 得られた複合材料と先のアルミニウム合金のインゴット
を鋳造用複合材料中のSiC粉末の充填率が30vol
%となるよう所定量坩堝内に入れ、それらを610℃の
温度で溶融し、2時間攪拌して鋳造用複合材料の溶湯を
作製した。その溶湯物を冷却せずに720℃に上げてさ
らに攪拌し、それを図1に示す試験用砂型に700℃近
傍で穴から流し込み、鋳造してその鋳造物を評価に供し
た。
【0022】(3)評価 得られた鋳造物の嵩比重をアルキメデス法で測定し、粉
末充填率を求めた。その結果、粉末充填率は、SiC粉
末、Al23粉末とも30vol%で目標通り希釈され
ていた。また、溶湯物の流動性を試験用砂型に充填され
た鋳造物の長さで調べた。さらに、50×50×300
mmの大きさの鋳造物を鋳造し、その上部と下部より3
×4×40mmの試験片を切り出し、JIS R 16
02により、ヤング率を測定し、粒子の均一分散性を調
べ、ヤング率に差がないものを均一分散性良とし、ヤン
グ率に差があるものを均一分散性不良とした。それらの
結果を表1に示す。
【0023】(比較例1〜4)比較のために、比較例1
では、実施例1のSiC粉末に信濃電気精錬社製のSi
C粉末(GC#3000)を一部添加し、5μm以下の
粒子の割合を10重量%より大きくした他は、比較例2
では、同じく実施例1のSiC粉末に独ESK社のSi
C粉末(C#240)を一部添加し、50μm以上の粒
子の割合を10重量%より大きくした他は実施例1と同
様に鋳造用複合材料を作製し、評価した。また、比較例
3では、実施例1のSiC粉末の代わりに独ESK社の
SIC粉末(C#700)を用い、タップ相対密度を5
0%より小さくした他は、比較例4では、同じく実施例
1のSiC粉末の代わりに信濃電気精錬社のSiC粉末
(GC#800)を用い、アスペクト比を4より大きく
した他は実施例1と同様に鋳造用複合材料を作製し、評
価した。それらの結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1から明らかなように、実施例1、2に
おいては、セラミックス粉末の粒径分布、アスペクト
比、タップ相対密度が本発明の範囲内にあるので、いず
れも流動性が良好で、均一分散性も良好であった。この
ことは、セラミックス粒子の粒径分布、アスペクト比、
タップ相対密度を適切に限定すれば、粒子の均一分散性
を維持しつつ、溶湯の流動性を向上させることのできる
鋳造用の金属−セラミックス複合材料とすることができ
ることを示している。
【0026】これに対して比較例1では、5μm以下の
粒子の割合が多すぎたので、溶湯の流動性が悪く、比較
例2では、50μm以上の粒子の割合が多すぎたので、
粒子の均一分散性が悪く、比較例3では、タップ相対密
度が低すぎたので、流動性が悪く、比較例4では、アス
ペクト比が大きすぎたので、これも流動性が悪かった。
【0027】
【発明の効果】以上の通り、本発明の鋳造用金属−セラ
ミックス複合材料の製造方法であれば、溶湯の流動性、
粒子の均一分散性に優れた鋳造用の金属−セラミックス
複合材料が得られるようになった。このことにより、こ
れを再溶融すれば、流動性に優れた溶湯物が得られ、こ
れを鋳造すれば、薄物、細物、微細な物などの最終製品
である複合材料も鋳造不良を起こすことなく作製できる
ようになった。
【図面の簡単な説明】
【図面1】実施例1の試験用砂型の平面図である。
【図面2】実施例1の試験用砂型のA−A断面図であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材であるアルミニウム合金に強化材で
    あるセラミックス粉末を複合させる鋳造用金属−セラミ
    ックス複合材料の製造方法において、該セラミックス粉
    末が、5μm以下の粒子が10重量%以下、50μm以
    上の粒子が10重量%以下の粒径分布を有する粉末であ
    り、かつ4以下のアスペクト比と50%以上のタップ相
    対密度を有する粉末であることを特徴とする鋳造用金属
    −セラミックス複合材料の製造方法。
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