JP2000063994A - 油井用Cr含有鋼管 - Google Patents

油井用Cr含有鋼管

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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 CO2 、Cl- 、H2S 等を含む苛酷な腐食環境
下において優れた耐炭酸ガス腐食性、耐硫化物応力腐食
割れ性を有する安価な油井用Cr含有鋼管を提供する。 【解決手段】 C:0.30%以下、Si:0.60%以下、Mn:
0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005 %以下、C
r:3.0 〜9.0 %、Al: 0.005%以下を含有し、あるい
はさらに、Nb:0.30%以下、V:0.50%以下を1種また
は2種あわせて0.01%以上、および/または、Cu: 1.5
%以下、Ni: 2.5%以下、Mo: 2.0%以下の1種または
2種以上、および/または、Ca:0.01%以下、および/
または、Ti:0.50%以下、Zr: 0.2%以下、B:0.0005
〜0.01%、W:2.0 %以下の1種または2種以上を含有
し、残部Feおよび不可避的不純物からなるCr含有鋼管。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原油あるいは天然
ガスの油井、ガス井に使用される油井管用の鋼材に関
し、特に炭酸ガス(CO2 )、塩素イオン(Cl- )、硫化
水素(H2S )などを含む極めて腐食環境の厳しい油井、
ガス井で使用するに適した、優れた耐食性と耐応力腐食
割れ性を有するCr含有鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年に至り、原油価格の高騰や近い将来
に予想される石油資源の枯渇化を目前にして、従来はか
えりみられなかったような深層油田や、開発が一旦は放
棄されていた腐食性の強いサワーガス田等に対する開発
が、世界的規模で盛んになっている。このような油田、
ガス田は一般に、CO2 、Cl- 、H2S 等を含む厳しい腐食
環境となっている場合が多い。したがってこのような油
田、ガス田の採掘に使用される油井鋼管としては耐食
性、耐応力腐食割れ性を兼ね備えた材質が要求される。
【0003】一般にCO2 、Cl- を含む環境下では耐炭酸
ガス腐食性、耐炭酸ガス応力腐食割れ性、耐孔食性の優
れた13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が使用され
るのが普通である。しかし、さらにH2S が共存する環境
では、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼は耐硫化物
応力腐食割れ性に劣ることから、高価な2相ステンレス
鋼が用いられているのが実情である。このため、CO2
Cl- とH2S との共存環境下での優れた耐炭酸ガス腐食性
および耐応力腐食割れ性を兼ね備えた安価な油井管用Cr
含有鋼管の開発が強く望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の事情
を背景としてなされたもので、前述のようにCO2 、C
l-、H2S 等を含む苛酷な腐食環境下において優れた耐炭
酸ガス腐食性、耐硫化物応力腐食割れ性を有する安価な
油井用Cr含有鋼管を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の目
的を達成するべく、油井用高強度マルテンサイト系ステ
ンレス鋼管を対象として、サワー環境(H2S を含む環
境)下での耐硫化物応力腐食割れ性に及ぼす種々の合金
成分の影響について各種の実験・検討を重ねて鋭意考究
し、その結果、耐炭酸ガス腐食性に効果のあるCrを適量
添加し、さらにAl-less 化すること、あるいはさらに、
Nb、V量を調整することによって、耐炭酸ガス腐食性に
加えて、耐硫化物応力腐食割れ性が著しく改善されるこ
とを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】すなわち、本発明は、mass%で、 C:0.30%以下、 Si:0.60%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:3.0 〜9.0 %、 Al: 0.005%以下を含有し、 あるいはさらに、Nb:0.30%以下、V:0.50%以下を1
種または2種あわせて0.01%以上含有し、残部Feおよび
不可避的不純物からなることを特徴とする油井用Cr含有
鋼管である。
【0007】本発明では、必要に応じて、前記残部Feの
一部を下記のA群、B群、C群の1つまたは2つ以上の
組合せで置換してもよい。 記 (A群)Cu: 1.5%以下、Ni: 2.5%以下、Mo: 2.0%
以下の1種または2種以上 (B群)Ca:0.01%以下 (C群)Ti:0.50%以下、Zr: 0.2%以下、B:0.0005
〜0.01%、W:2.0 %以下、の1種または2種以上
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のCr含有鋼管の鋼組成(化
学成分)限定理由について説明する。 C:0.30%以下 Cは鋼の強度を高める重要な元素であるが、0.30%以上
の添加は靱性の低下を引き起こし、かつCr炭化物を生成
させて耐食性を低下させるので0.30%以下とした。
【0009】Si:0.60%以下 Siは通常の製鋼過程において脱酸剤として必要な元素で
あるが、0.60%を超えると耐炭酸ガス腐食性を低下さ
せ、さらに熱間加工性も低下させることから、Siは0.60
%以下とした。 Mn:0.30〜1.50% Mnは油井管用鋼としての強度を確保するために0.30%以
上必要であるが、1.50%を超えると靱性に悪影響を及ぼ
すことから、Mnは0.30〜1.50%とした。
【0010】P:0.03%以下 Pは耐炭酸ガス腐食性および耐硫化物応力腐食割れ性を
ともに劣化させる元素であり、その含有量は可及的に少
ないことが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇
を招く。工業的に比較的安価に実現可能でかつ耐炭酸ガ
ス腐食性および耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させない
範囲でPは0.03%以下とした。
【0011】S:0.005 %以下 Sはパイプ製造過程においてその熱間加工性を著しく劣
化させる元素であり、可及的に少ないことが望ましい
が、0.005 %以下に低減すれば通常の工程でのパイプ製
造が可能となることから、Sはその上限を0.005 %とし
た。 Cr: 3.0〜9.0 % Crは耐炭酸ガス腐食性を保持するために主要な元素であ
り、この面からは3.0%以上必要である。しかし、9.0
%を超えると耐硫化物応力腐食割れ性が劣化することか
ら、Crは3.0 〜9.0 %とした。
【0012】Al: 0.005%以下 Alは脱酸材として通常添加されるが、酸化物を形成して
耐硫化物応力腐食割れ性を低下させる原因となる。その
ため本発明ではAlは積極的に添加しないが、不可避的不
純物として0.005 %以下の量が混入する場合があるの
で、Alは0.005 %以下とした。なお、好ましくは0.003
%以下である。
【0013】Nb: 0.30 %以下、V:0.50%以下 Nb、Vは高温における強度を上昇させる効果、および耐
硫化物応力腐食割れ性を改善する効果があり、その効果
を顕現させるには単独または複合添加の合計量が0.01%
以上必要である。また、Nbは0.30%、Vは0.50%を超え
て添加すると靱性を劣化させるため、それぞれ0.30%以
下、0.50%以下とした。
【0014】Cu: 1.5%以下、Ni: 2.5%以下、Mo:
2.0%以下 Cu、Ni、Moは保護皮膜を強固にする作用を通じて、いず
れも鋼中への水素の侵入を抑制し、耐炭酸ガス腐食性お
よび耐硫化物応力腐食割れ性の改善に寄与する。なお、
Moには一般の耐食性、耐孔食性を改善する効果もある。
しかし、Cuは、1.5 %超の添加では高温でCuS が粒界析
出して熱間加工性が低下することから1.5 %以下とし、
また、Niは2.5 %超、Moは2.0 %超の範囲で添加しても
さらなる特性改善代がみられず且つ高コストとなること
からNiは2.5 %以下、Moは2.0 %以下とした。
【0015】Ca:0.01%以下 CaはSをCaS として固定しS系介在物を球状化すること
により、介在物周囲のマトリックスの格子歪を小さくし
て、水素のトラップ能を下げる作用がある。そのため耐
硫化物応力腐食割れ性改善に効果がある。しかし、0.01
%を超えるとCaO の増加を招き、耐炭酸ガス腐食性が低
下することから、Caは0.01%以下とした。
【0016】Ti:0.50%以下、Zr:0.20%以下、B:0.
0005〜0.01%、W:2.0 %以下 Ti、Zr、B、Wは強度を上昇させる効果、および耐硫化
物応力腐食割れ性を改善する効果があるが、Tiは0.50%
を超えて、Zrは0.20%を超えて、Wは2.0 %を超えて添
加すると靱性を劣化させるため、また、Bは0.0005%未
満では効果が無く、0.01%を超えた添加は靱性を劣化さ
せるため、それぞれTi:0.50%以下、Zr:0.20%以下、
B:0.0005%〜0.01%、W:2.0 %以下とした。
【0017】上記組成になる本発明のCr含有鋼管は、シ
ームレス圧延により造管される継目無鋼管として有効で
あるが、これのみならず電縫鋼管としても有効である。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
1にシームレス圧延により造管した本発明鋼組成範囲を
満たす実施例および本発明鋼組成範囲を逸脱する比較例
の試料記号とともにそれらの化学成分を示す。
【0019】シームレス圧延後のパイプに、980 ℃×30
分加熱後急冷し次いで650 〜700 ℃に再加熱する焼入れ
−焼戻し処理を施し、その降伏強度を80ksi 級(80〜95
ksi)に調整した。耐食性は炭酸ガス腐食試験、および
硫化物応力腐食割れ試験(SSC試験)にて評価した。
【0020】炭酸ガス腐食試験はパイプから厚さ3mm、
幅30mm、長さ40mmの腐食試験片を切り出し、これを5%
NaCl水溶液を満たしたオートクレーブ中に2週間浸漬
し、重量減から腐食速度を読み取った。試験の炭酸ガス
分圧は1MPa、温度は100 ℃である。この炭酸ガス腐食試
験による耐食性の基準は、腐食速度0.100mm/yrを限界と
した。すなわち、腐食速度が0.100mm/yrを超えるものは
耐炭酸ガス腐食性が十分でない。
【0021】耐硫化物応力腐食割れ性は同じパイプから
切り出した試験片を用い、NACE-TM0177-96 method A に
準拠した定荷重試験を行い、割れ発生有無にて評価し
た。試験液はSolution A(pH:2.7)を用い、付加応力は
551MPa(80ksi 級の100 %SMYS(Specified Minimum Yi
eld Strength)とした。これらの試験結果を表1に示
す。同表に示されるように、実施例は耐炭酸ガス腐食性
と耐硫化物応力腐食割れ性との両特性に優れることが明
らかとなった。このように、本発明鋼組成を満たす鋼管
はCO2 、H2S 、Cl- を含む油井環境で油井鋼管として十
分使用可能であることがわかる。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】かくして本発明によれば、Alを添加せ
ず、適量のCrを添加した鋼組成とすることにより、C
O2 、H2S 、Cl- を含む厳しい腐食環境下において十分
な耐炭酸ガス腐食性および耐硫化物応力腐食割れ性を示
す鋼が安価に得られ、該鋼を素材として製造した鋼管
は、上述のような苛酷な環境で使用される油井鋼管とし
て好適に使用し得るという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 豊岡 高明 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 村瀬 文夫 愛知県半田市川崎町1丁目1番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、 C:0.30%以下、 Si:0.60%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:3.0 〜9.0 %、 Al: 0.005%以下を含有し、 残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
    油井用Cr含有鋼管。
  2. 【請求項2】 mass%で、 C:0.30%以下、 Si:0.60%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:3.0 〜9.0 %、 Al: 0.005%以下を含有し、 さらに、Nb:0.30%以下、V:0.50%以下を1種または
    2種あわせて0.01%以上含有し、残部Feおよび不可避的
    不純物からなることを特徴とする油井用Cr含有鋼管。
  3. 【請求項3】 mass%で、 C:0.30%以下、 Si:0.60%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:3.0 〜9.0 %、 Al: 0.005%以下を含有し、 さらに、Nb:0.30%以下、V:0.50%以下を1種または
    2種あわせて0.01%以上含有し、さらに、下記のA群、
    B群、C群の1つまたは2つ以上の組合せを含有し残部
    Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする油井
    用Cr含有鋼管。 記 (A群)Cu: 1.5%以下、Ni: 2.5%以下、Mo: 2.0%
    以下の1種または2種以上 (B群)Ca:0.01%以下 (C群)Ti:0.50%以下、Zr: 0.2%以下、B:0.0005
    〜0.01%、W:2.0 %以下、の1種または2種以上
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