JP2000042785A - ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用ワイヤ

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JP2000042785A JP10207380A JP20738098A JP2000042785A JP 2000042785 A JP2000042785 A JP 2000042785A JP 10207380 A JP10207380 A JP 10207380A JP 20738098 A JP20738098 A JP 20738098A JP 2000042785 A JP2000042785 A JP 2000042785A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな変動応力下で溶接施工を施しても溶接
割れ発生のない溶接部を形成できるガスシードアーク溶
接用ワイヤを提案する。 【解決手段】 ワイヤ組成を、重量%で、C:0.005 〜
0.040 %、Si:0.25〜0.40%、Mn:2.70超〜3.60%、
P:0.004 %以下、S:0.004 %以下に調整する。溶接
金属中のMn/Sを500 以上、Mn/Siを10以上とでき、溶
接部の高温割れを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスシールドアー
ク溶接用鋼ワイヤに係り、とくに海洋構造物の洋上接合
におけるように、変動応力が繰り返し作用する箇所の溶
接施工に際しても耐高温割れ性に優れた溶接部を形成す
ることができるガスシールドアーク溶接用ワイヤに関す
る。
【0002】
【従来の技術】洋上の海洋構造物は、波浪により変動応
力を繰り返し受けているが、このような状態にある海洋
構造物で、鋼材を溶接接合する場合には、溶接する鋼材
が波浪によって振動し、溶接開先部が変位を受ける。こ
のため、海洋構造物における溶接施工に際しては、溶接
開先部を治具等で仮固定し、波浪にともなう溶接開先部
の変位をできるだけ抑制して溶接している。しかしなが
ら、鋼材を十分に拘束したとしても、溶接開先部には波
浪による変動応力により微小な変位(変位幅:0.5mm 前
後)が依然として発生しているのが現状である。
【0003】このような変動応力下で、従来のガスシー
ルドアーク溶接用ワイヤを使用してガスシールドアーク
溶接施工を行うと、溶接金属には、延性が十分でない凝
固脆性温度域あるいは高温延性低下域で引張、圧縮応力
が繰り返し付加されるため、高温割れが発生することが
多い。そして、このような溶接割れを起点としてさらに
割れが進展し、海洋構造物の溶接構造物としての寿命の
短縮を余儀なくされる場合もある。
【0004】このように溶接部の高温割れは、海洋構造
物の信頼性を著しく低下させるため、変動応力下の溶接
においても海洋構造物溶接部の高温割れを防止すること
が強く要望され、変動応力下での溶接に用いて好適な耐
高温割れ性に優れた溶接金属を形成できるガスシールド
アーク溶接用ワイヤが要望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】変動応力下での溶接
で、耐割れ性に優れた溶接金属を形成できるガスシール
ドアーク溶接用ワイヤとして、特開平1-91994 号公報
に、S、Si、Cを低減し、Mn/Sを高くしたガスシールド
アーク溶接用ワイヤが提案されている。特開平1-91994
号公報に記載されたガスシールドアーク溶接用ワイヤ
は、車両の通行による変動応力を受ける橋梁の補修、改
造工事に用いて好適であるとされている。しかしなが
ら、本発明者らの検討によれば、海洋構造物の洋上での
溶接接合におけるような波浪の影響を受け、大きな変動
応力下での溶接においては、特開平1-91994号公報に記
載されたガスシールドアーク溶接用ワイヤを用いてもな
お、溶接部には高温割れが発生する場合があり、十分な
耐溶接割れ性を有した溶接金属を形成できるワイヤであ
るとは言い難いということを知見した。
【0006】本発明は、上記した従来技術の問題を有利
に解決し、海洋構造物の洋上接合におけるような、大き
な変動応力下で溶接施工を施しても溶接割れ発生のない
溶接部を形成できる、ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、大きな変
動応力が繰り返し作用する箇所の溶接において発生する
高温割れに影響する要因について鋭意研究を重ねた結
果、溶接金属のMn/S(重量比)を500 以上、Mn/Si
(重量比)を10以上とすることにより、溶接部の耐高温
割れ性が向上することを見いだし、次の〜 Mn含有量を増加する、 S含有量を著しく低減し、好ましくはMn/Sを700 以
上に高める、 P含有量を著しく低減する、 Siを適正量とし、好ましくはMn/Siを7以上に高め
る、を組合わせた組成のガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤを使用して溶接施工を行うことにより、大きな変動応
力下での溶接においても溶接部の高温割れ発生を防止で
きるという知見を得た。
【0008】本発明は、これらの知見に基づいてさらに
検討を加え完成されたものである。すなわち、本発明
は、重量%で、C:0.005 〜0.040 %、Si:0.25〜0.40
%、Mn:2.70超〜3.60%、P:0.004 %以下、S:0.00
4 %以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からな
る組成を有することを特徴とするガスシールドアーク溶
接用ワイヤであり、また、本発明では、前記組成の範囲
内で、Mn含有量(重量%)とS含有量(重量%)の比、
Mn/Sが700 以上で、かつMn含有量(重量%)とSi含有
量(重量%)の比、Mn/Siが7以上とするのが望まし
い。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明のガスシールドアー
ク溶接用ワイヤの成分組成を上記のように限定した理由
について説明する。 C:0.005 〜0.040 % Cは、溶接金属中に固溶して粗大フェライト相の析出を
抑制する効果があり、溶接用ワイヤ中に少なくとも0.00
5 %を含有する必要がある。しかし、多すぎると、凝固
時に低融点化合物の結晶粒界への偏析が生じ凝固割れが
発生しやすくなるため、0.040 %を上限とした。
【0010】Si:0.25〜0.40% Siは、溶接金属を脱酸し、ブローホールの発生を防止す
るため、溶接用ワイヤ中には0.25%以上の含有を必要と
する。しかし、0.40%を超える含有は、溶接金属の延性
・靱性を低下させ、さらに溶接金属中に低融点の珪酸塩
系介在物(SiMnO3)を生成させやすくし、溶接金属の凝
固割れを引き起こすため、Si含有量の上限は0.40%に限
定した。
【0011】Mn:2.70超〜3.60% Mnは、Siと同様に溶接金属の脱酸に寄与するとともに、
さらにSと結合しMnSを形成して低融点のFeS が結晶粒
界に生成するのを効果的に抑制する。さらに、MnはMn/
Siを高め、溶接金属の凝固割れを引き起こす低融点の珪
酸塩系介在物(SiMnO3)の生成を抑制する効果もある。
しかし、このような効果は、溶接用ワイヤ中のMn含有量
が2.70%以下では乏しく、一方、Mn含有量が3.60%を超
えると溶接金属の硬化性が大きくなる。このため、Mnは
2.70超〜3.60%の範囲に限定した。
【0012】P:0.004 %以下 Pは、固液共存温度域を拡大することにより溶接金属の
高温延性を低下させる。このため、できるだけ低減する
のが望ましいが、0.004 %までは許容できる。 S:0.004 %以下 Sは、溶接金属中ではほとんどが硫化物となって、溶接
金属の結晶粒界に非金属介在物として析出する。FeS の
ような低融点の非金属介在物が生成されると、凝固温度
から1000℃程度の温度域における溶接金属の延性を著し
く低下させ、高温割れを引き起こす。このため、Sはで
きるだけ低減するのが望ましいが、0.004 %までは許容
できる。
【0013】Mn/S:700 以上 本発明者らの検討によれば、溶接金属中のMn/Sを500
以上とすることにより、波浪に起因する大きな変動応力
下の溶接においても溶接金属の高温割れ発生を完全に抑
制できる。溶接金属中のMn/Sは、溶接用ワイヤの組成
と使用する鋼材や溶接条件等により変動するが、本発明
が主として対象とする海洋構造物には、JIS G 3101(一
般構造用圧延鋼材)、JIS G 4051(機械構造用炭素鋼
材)に規定される鋼材が主として使用され、S含有量は
多くても0.050 %までであり、上記したMn、Sの組成範
囲内で、さらに溶接ワイヤ中のMn/Sを700 以上、好ま
しくは900 以上とすることにより、溶接金属中のMn/S
を500 以上とすることが可能となる。なお、Mn/Sにお
けるMn、Sはそれぞれ重量%でのMn含有量、S含有量で
ある。
【0014】Mn/Si:7以上 溶接金属中のMn/Siを10以上とすることにより、波浪に
起因する大きな変動応力下の溶接においても溶接金属の
高温割れ、とくに凝固割れの発生を完全に抑制できる。
溶接金属中のMn/Siは、溶接用ワイヤの組成と使用する
鋼材や溶接条件により変動するが、本発明が対象とする
海洋構造物には、JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)、
JIS G 4051(機械構造用炭素鋼材)に規定される鋼材が
主として使用され、Si含有量は多くても0.3 %まであ
り、上記したMn、Siの組成範囲内で、さらに溶接ワイヤ
中のMn/Siを7以上とすることにより、溶接金属中のMn
/Siを10以上とすることが可能となる。なお、Mn/Sに
おけるMn、Siはそれぞれ重量%でのMn含有量、Si含有量
である。
【0015】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼板から図1(a)に
示す形状の溝付き試験片1(板厚:20mm、溝部深さ:10
mm、溝部幅:20mm)を採取し、該試験片の溝部に対し、
表2に示す成分組成のガスシールドアーク溶接用ワイヤ
(直径1.2mm )を用いて、肉盛り溶接を施し、図1
(b)に示す厚さ:20mm、幅:120 mm、長さ:300 mmの
トランス・バレストレイン試験片3とした。肉盛り溶接
は、シールドガスを20 vol%CO2-80 vol%Ar混合ガスと
し、電流:220 A、電圧:25V、溶接速度:7cm/minの
条件で行った。得られた各試験片について、図2に試験
方法の概要を示すトランス・バレストレイン試験(例え
ば、溶接学会誌、41(1972),p709 〜723 参照)を付加
歪:4%で実施し、肉盛り溶接部2における割れ発生の
有無を調査した。割れが発生した場合を×、発生しない
場合を○として評価した。
【0016】つぎに、表1に示す成分組成の鋼板から図
3に示す形状の疲労試験片7(板厚e:12mm)を採取し
た。疲労試験片に付与した開先形状は、V開先で、寸法
は図3中のa:2mm、b:30mm、c: 150mm、d: 300
mm、e:12mm、g:2mm、α:60°である。この試験片
を疲労試験機にセットして、変動サイクル(変位幅:0.
5mm±0.25mm、周波数:0.5Hz )を付加しながら、表2
に示す成分組成のガスシールドアーク溶接用ワイヤ(直
径1.2mm )を用い、シールドガスを20 vol%CO 2-80 vol
%Ar混合ガスとし、電流:200 A、電圧:25V、溶接速
度:13cm/minの条件下で開先部を溶接し溶接部における
割れの発生傾向を調査する、変動応力下での溶接割れ試
験を実施した。溶接後、直ちに試験片を取り外し、溶接
部横断面10ヶ所について、研摩し、光学顕微鏡で割れの
有無を調査した。1ヵ所でも割れが発生した場合を×、
すべての場所で割れが発生しなかった場合を○として評
価した。
【0017】トランス・バレストレイン試験および変動
応力下での溶接割れ試験の結果を表3に示す。なお、溶
接金属におけるMn/Si、Mn/Sの分析結果を表3に併記
した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】表3から、本発明例の溶接用ワイヤを用い
た場合(試片No. 1〜No. 11)には、トランス・バレス
トレイン試験および変動応力下での溶接割れ試験におい
ても溶接割れの発生は認められなかった。これに対し、
本発明の範囲を外れる比較例(試片No.12 〜No. 20)で
は、トランス・バレストレイン試験または変動応力下で
の溶接割れ試験のいずれか、または両方において、溶接
割れが発生している。
【0022】C含有量が本発明範囲を外れるワイヤを用
いた試片No. 12、No. 13は、高温割れ感受性が増加した
ため、変動応力下での溶接割れ試験で溶接割れが発生し
た。Si含有量が本発明の範囲を高めに外れ、Mn/Siが7
未満であるワイヤを用いた試片No. 14、No. 15は、溶接
金属のMn/Siが10未満となり、トランス・バレストレイ
ン試験および変動応力下での溶接割れ試験において溶接
割れが発生している。Mn含有量が本発明の範囲より低い
ワイヤを用いた試片No. 16、No. 17は、溶接金属のMn/
Sが500 未満となり、高温割れ感受性が増加したため、
変動応力下での溶接割れ試験において溶接割れが発生し
ている。P含有量が本発明の範囲を外れるワイヤを用い
た試片No. 18、S含有量が本発明の範囲を外れるワイヤ
を用いた試片No. 19、No. 20は、高温割れ感受性が増加
したため、変動応力下での溶接割れ試験において溶接割
れが発生している。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、海洋構造物の洋上溶接
接合のような、波浪に起因して溶接開先部に大きな変位
を与える変動応力下でも、溶接割れを発生させることな
く溶接施工を行うことができ、治具による開先部の固定
や溶接割れによる耐用寿命の短縮などを考慮する必要が
なくなり、海洋構造物の信頼性をより向上することがで
きるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トランス・バレストレイン試験の試験片形状を
示す模式図である。
【図2】トランス・バレストレイン試験方法の概略を示
す説明図である。
【図3】疲労試験片を示す模式図である。
【符合の説明】
1 溝付き試験片 2 肉盛り溶接部 3 トランス・バレストレイン試験片 4 曲げ押え板 5 アーク 6 曲げ受け台 7 疲労試験片

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.005 〜0.040 %、 Si:0.25〜0.40%、 Mn:2.70超〜3.60%、 P:0.004 %以下、 S:0.004 %以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を
    有することを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイ
    ヤ。
  2. 【請求項2】 前記組成の範囲内で、Mn含有量とS含有
    量の比、Mn/Sが700 以上で、かつMn含有量とSi含有量
    の比、Mn/Siが7以上であることを特徴とする請求項1
    に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2835206A4 (en) * 2012-04-05 2015-11-04 Ihi Infrastructure Sys Co Ltd WELDING METHOD
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