JP2000026985A - 炭素材料の製法 - Google Patents

炭素材料の製法

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JP2000026985A
JP2000026985A JP11125502A JP12550299A JP2000026985A JP 2000026985 A JP2000026985 A JP 2000026985A JP 11125502 A JP11125502 A JP 11125502A JP 12550299 A JP12550299 A JP 12550299A JP 2000026985 A JP2000026985 A JP 2000026985A
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Chiharu Yamaguchi
千春 山口
Hisaji Matsui
久次 松井
Ayumi Yasuda
歩 安田
Noboru Kawase
昇 川瀬
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Osaka Gas Co Ltd
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Osaka Gas Co Ltd
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  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】室温あるいは室温に近い温度で、高度に構造の
制御された炭素材料を低コストで工業的に大量に合成す
る方法を提供する。 【解決手段】ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導
体および/またはハロゲン原子を含有する芳香族炭素誘
導体を反応性陽極電解還元することを特徴とする炭素材
料の製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリイン(カーボ
ンVIあるいはカルビンとも呼ばれる)あるいはポリイン
を含む炭素材料の製造方法、およびこの方法により得ら
れる炭素材料に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素材料には、(1)フィラーコークスと
バインダーを混練し、焼成し、黒鉛化することにより得
られる人造黒鉛製品、(2)炭素材料を賦活することによ
り得られる大きな表面積を有する活性炭、(3)炭化水素
ガスの熱分解により得られるカーボンブラック、(4)さ
らに気相成長あるいは有機繊維プリカーサーの焼成によ
って得られる炭素繊維などがある。しかしながら、これ
らを製造する方法は、いずれも高温を必要とするか、あ
るいは物理的に厳しい製造条件を必要とするため、化学
構造を高度にコントロールすることは困難であった。
【0003】現在、高度に構造のコントロールされた、
新しい炭素材料の合成に向けて、新しい技術の開発が進
められている。すなわち、新しい炭素材料であるフラー
レン(H. W. Kroto et al., Nature, 318(1985)162)およ
びカーボンナノチューブが物理的手法を用いて合成され
て以来、物理的合成法あるいは化学的合成法を用いて、
構造の制御された新しい炭素材料を製造する方法の研究
が進められている(W. Weltner, Chem. Rev., 89(1989)1
713)。
【0004】高度に構造が制御された新しい炭素材料の
合成法は、アーク放電やレーザーなどの高エネルギービ
ームを使った物理的な方法と化学的な方法とに大別され
る。代表的な合成法に関して、以下の様な報告がされて
いる。
【0005】三重結合と一重結合が交互に繋がった線状
構造を有する炭素材料であるカルビンは、物理的な方法
では1969年にその合成が報告されている(A. G. Whittak
er and P. L. Kintner, Science, 165(1969)589)。す
なわち、パイロリティックグラファイトの角棒の(0001)
面の両側に電極を締め付けて電流を流し、抵抗加熱によ
り2700〜3000Kのある温度に達したところで15〜20秒放
置したところ(雰囲気は10-4torrのアルゴンであっ
た)、2550K以上に加熱した場合に限り、グラファイト
棒の一部にはデンドライト構造をとる銀白色に輝く物質
が生成したのである。これは、炭素原子がグラファイト
中でマイグレーションして形成されたもので、自由蒸発
した炭素原子が再び凝着したものと考えられる。パイロ
リティックグラファイト表面に生じた白い炭素の被覆
は、透明で複屈折性であるとすると、白色はデンドライ
ト構造からの乱反射によると考えられる。この実験で
は、加熱は常圧で行われているから、白い炭素の合成に
は隕石衝突から想像されるような高圧力は必要ではな
い。
【0006】一方、Kudryavtseyらは、黒鉛のイオンス
パッタリングやアーク放電によってカルビンを含む炭素
材料を合成している。生成した膜の厚みは200〜500Å
で、単結晶のαカルビンあるいはアモルファス状のもの
ができていることを確認している(Y. P. Kudryavtsey
et al., Carbon, 30(1992)213)。
【0007】下山らは、ポリ塩化ビニル膜に真空中でレ
ーザーを照射することにより、8個の三重結合炭素と20
個の二重結合炭素からなるカルビン状炭素材料が形成さ
れたことをラマンスペクトルなどにより、明らかにして
いる(M. Shimoyama et al.,Macromol. Chem., 193(199
2)569)。
【0008】また、2種類の方法によるカルビン膜の合
成が報告されている(Y. P. Kudryavtsey et al., Carb
on, 30(1992)213)。すなわち、(A)純グラファイトをタ
ーゲットとしてスパッタさせ、同時にAr-イオンで衝撃
して膜を作る方法と、(B)2個のグラファイト電極間に
約3000℃のアークを飛ばして、炭素を蒸発させ、冷却し
た基板上に凝縮させる方法である。(A)の方法による膜
は、ほとんど単結晶で、これはαカルビンとみなされ
た。(B)の方法による膜は、アモルファス部分と配向し
た部分とが混在し、配向した膜は6方晶形であることが
示された。
【0009】化学的方法によるカルビンを含む炭素材料
の合成は、1973年に報告されている(V. I. Kasatochiki
n et al, Carbon, 11(1973)70)。すなわち、アセチレン
の脱水素反応をCuCl2溶液中で行ったところ、鎖状のポ
リイン構造(-C≡C-C≡C-)n、キュムレン構造(=C=C=C=C
=)nを含む無定形炭素を得たのである。この反応におい
て、CuCl2は、脱水素反応触媒の役割もする。生成物が
鎖状構造を有していることは、赤外スペクトルのデータ
の解析から立証された。この生成物を真空中で1000℃に
加熱すると、炭素マクロ分子の鎖状構造を保存した新し
い白色の同質異形炭素結晶が得られた。報告者らは、こ
れを炭素材料の一つであるカルビン(carbyne)と名付
けた。また、電子線解析とX線回折より、2つの異形
(αカルビン、βカルビン)が存在することを示した。
この論文記載の方法により、アセチレンから得られたカ
ルビンは、α相が主体で、これを90kbar、1800℃で5分
間処理すると、より密度の高いβカルビンに転移する。
【0010】Akagiらは、ポリアセチレンを塩素化し
{(CHCl)x}、立体規則性に優れたハロゲン化ポリアセ
チレンを作り、その脱ハロゲン化水素を試みて、キュム
レンを得ることを期待したが、ポリイン型の共役三重結
合型のカルビンを得た。これは、赤外スペクトルから結
論づけられた。しかしながら、十分な規則性を有する結
晶を得るに至らず、(-C≡C-)nとしてn=10〜65の鎖長
の混合したものとなった(K. Akagi et al., Synth. Me
tal, 17(1987)557)。
【0011】また、酸素存在下に、第一銅塩と配位子と
しての第三級アミンからなる触媒を用いてアセチレンを
処理して、ポリイン組成物を合成する方法が報告されて
いる(特開平3-44582号公報)。
【0012】Kavanらは、Liの水銀アマルガム中でポリ
テトラフルオロエチレン(PTFE)膜の脱フッ素化を行い、
膜の表面にカルビンとLiFとからなる複合体が生成した
ことを報告している(L. Kavan et al, Synth. Metal,
58(1993)63)。LiFは、線状のカルビン同士が結合して
黒鉛状構造(graphite)に変化するのを抑え、安定化さ
せている。しかしながら、複合体中に空気や水が入って
くると、LiFが移動してしまい、カルビン構造は破壊さ
れるようである。
【0013】カルビンは、鎖長が短いと末端の反応性が
非常に高くなり、不安定である。そこで、環状のカルビ
ンを合成し、単離しようという試みが始まっている。玉
置らは、現在までに16個の環状炭素に6個のOH基が付い
た中間体の合成に成功している(玉置信之ほか、日本化
学会第67春季年会、3L1(1994)48)。
【0014】また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN,N-
ジメチルホルムアミド溶液から作ったPVDF単結晶膜を、
アセトンを混ぜたエタノールの10%カリウムエチレート
溶液を用いて室温で40分間処理することにより、脱フッ
化水素化して、カルビンを得た例がある(Y. P. Kudryav
tsey et al, Carbon, 30(1992)213)。元のPVDF膜が単
結晶であったにもかかわらず、アモルファスになった
が、真空中400℃のアニールでキュムレン型のカルビン
の結晶化が生じ、膜面の30%が単結晶になった。
【0015】ポリテトラフルオロエチレンフィルムを化
学的にあるいは電気化学的に還元して、その表面をカー
ボン状材料とし、フィルムの接着性を改善する試みが以
前からなされてきた(米国特許3,967,018(1976);米国
特許3,296,011(1967);英国特許765,284(1957))。ただ
し、このの様な方法は、フィルム表面だけをカーボン状
材料にするもので、炭素材料を得るためには、収率の点
から問題があった。
【0016】以上明らかにした様に、構造の制御された
炭素材料の最近の合成法においても、構造を高度に制御
するために、まだ多くの課題が残されている。
【0017】カルビンには、6種以上の異形があること
がすでに知られており、また、2800K以上の高温では反
応性活性種が多数知られている。実際、2800K以上で
は、C1、C2、C3、C4、C5などの分子種が知られており、
特にC3の分子種が多量に生成する。特定のカルビンを再
現性よく合成するためには、反応性活性種のコントロー
ルが不可欠で、特にこの部分での開発が望まれている。
【0018】化学的合成については、アセチレンの脱水
素重合と、ハロゲン化した鎖状の炭化水素から脱ハロゲ
ン化水素によって共役鎖を構築していくアプローチがと
られてきた。前者は爆発の危険性のある方法で、今後の
発展は望みにくい。後者は部分的にハロゲンが残存する
ことが指摘されている。従って、脱ハロゲン化水素反応
を完全に進める方法の開発が望まれている。
【0019】上記従来の炭素材料の製造方法における問
題点を要約すると、(イ)高温を要するため、高度に構造
を制御した炭素材料を得るのは困難である、(ロ)また、
アーク放電、レーザーなどの高エネルギービームを使っ
た物理的な方法により、フラーレン、ナノチューブなど
が合成されてきたが、工業的な大量合成には適していな
いことが明らかである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、室
温あるいは室温に近い温度で、高度に構造の制御された
炭素材料を、低コストで、工業的に大量に合成する方法
を提供することを主な目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明においては、室温
あるいは室温に近い温度で、高度に構造の制御された炭
素材料を工業的に大量に合成するために、アニオンとし
て脱離する官能基、すなわちハロゲン原子を有する芳香
族炭化水素誘導体およびハロゲン原子を有する芳香族炭
素誘導体の少なくとも1種を電極電解還元する。
【0022】すなわち、本発明は以下の炭素材料の製
法、炭素材料、製法に用いる触媒を提供するものであ
る。 1.ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導体および
ハロゲン原子を有する芳香族炭素誘導体の少なくとも1
種を反応性陽極電解還元することを特徴とする炭素材料
の製法。 2.反応性陽極としてMg、AlまたはPbを用い、陰極とし
てステンレス鋼またはカーボンを用いる上記項1に記載
の炭素材料の製法。 3.Fe(dppe)2Cl2、Co(dppe)2Cl2、Ni(dppe)2Cl2、Fe(d
ppe)2Br2、Co(dppe)2Br2、Ni(dppe)2Br2、Fe(dppe)
2I2、Co(dppe)2I2およびNi(dppe)2I2からなる群から選
択される少なくとも1種を触媒として用いることを特徴
とする上記項1または2に記載の炭素材料の製法。 4.ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導体がフッ
化ピッチであることを特徴とする上記項1〜3のいずれ
かに記載の炭素材料の製法。 5.上記項1〜4のいずれかに記載の製法により得られ
た炭素材料。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明方法において、ハロゲン原
子の少なくとも1種を有する芳香族炭化水素誘導体およ
び/またはハロゲン原子を有する芳香族炭素誘導体を電
極電解還元する。電解還元に際しては、支持電解質およ
び通電助剤を溶解した非水系溶媒中で、マグネシウム、
アルミニウム、鉛などの反応性電極を、2電極法におい
ては陽極として、3電極法においては対電極として用い
ることが好ましい。
【0024】原料としてのハロゲン原子を有する芳香族
炭化水素誘導体およびハロゲン原子を有する芳香族炭素
誘導体としては、特に限定されるものではないが、例え
ば、フッ化ピッチ、重質油フッ化物、メソカーボンマイ
クロビーズのフッ化物、六フッ化ベンゼン、オクタフル
オロナフタレン、デカフルオロアンスラセン、デカフル
オロフェナンスレン、デカフルオロピレン、フッ化炭
素、フッ化黒鉛、フッ化活性炭、フッ化活性炭素、およ
びこれらの置換基をフッ素から塩素、臭素およびヨウ素
の少なくとも1種に変更したものが挙げられる。これら
の中では、フッ化ピッチがより好ましい。原料として
は、ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導体および
ハロゲン原子を有する芳香族炭素誘導体から選ばれた2
種以上を混合して、用いることもできる。
【0025】フッ化ピッチは、ピッチをフッ素ガスでフ
ッ素化することにより得られる。この様な方法は、例え
ば特開昭62-275190号公報に開示されている。
【0026】この様なフッ化ピッチを製造するために用
いられる原料としては、一般的な芳香族炭化水素、例え
ば、石油蒸留残渣、ナフサ熱分解残渣、エチレンボトム
油、石炭液化油、コールタールなどの石油系または石炭
系重質油を蒸留して、沸点200℃未満の低沸点成分を除
去したもの、ナフタレンなどの縮合によって合成された
もの、およびこれらをさらに熱処理や水添処理したもの
などが例示される。これらのピッチを用いて目的とする
フッ化ピッチを製造する際には、ピッチとフッ素ガスと
を直接反応させれば良い。反応時の温度は、0〜350℃程
度に設定するのが好ましく、ピッチの軟化点以下に設定
することがより好ましい。炭素類をフッ素化する場合に
は、所定温度以上(コークスは300℃以上、黒鉛は600℃
以上)で反応させる必要がある。反応時のフッ素ガス圧
は、特に限定されるものではないが、一般に、0.07〜1.
5気圧程度とすることが好ましい。なお、フッ素ガス
は、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガ
スにより希釈して、使用してもよい。なお、その他のハ
ロゲン原子含有芳香族炭化水素誘導体およびハロゲン原
子含有芳香族炭素誘導体も、上記と同様の方法により製
造できるが、上記の方法に限定されるものではない。
【0027】支持電解質としては、LiCl、LiClO4、LiBF
4、NH4Cl、NH4ClO4、NH4BF4、(CH3) 4NCl、(CH3)4NCl
O4、(CH3)4NBF4などが挙げられる。これらの中では、Li
Clがより好ましい。支持電解質の使用割合は、溶媒に対
して、通常0.01〜10重量%程度であり、より好ましくは
0.5〜5重量%程度である。
【0028】通電助剤としては、FeCl2、Fe(ClO4)2、Fe
(BF4)2などが挙げられ、これらの中では、FeCl2がより
好ましい。通電助剤の使用割合は、溶媒に対して、通常
0.1〜30重量%程度であり、より好ましくは1〜20重量%
程度である。
【0029】非水系溶媒としては、テトラヒドロフラ
ン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが
挙げられ、これらの中ではテトラヒドロフランがより好
ましい。非水系溶媒の使用量は、ハロゲン原子を有する
芳香族炭化水素誘導体に対して、通常20〜200重量倍程
度であり、好ましくは50〜100重量倍程度である。
【0030】電解還元反応においては、反応原料である
ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導体に電子が移
動し、その反応中間体から脱離する官能基がアニオンと
して脱離することにより、芳香族炭化水素誘導体に炭素
ラジカルが生成し、隣り合う炭素ラジカルがカップリン
グする。この反応が連続的に進行することにより、芳香
族炭化水素誘導体から、多重結合が高度に発達した炭素
材料が得られる。ただし、この電解還元反応において
は、隣り合う炭素ラジカルがカップリングするだけでな
く、異なる分子に存在する炭素ラジカルのカップリング
(クロスリンク)や、炭素ラジカルの生成点での分解、
不均化などの副反応をも伴う。
【0031】そこで、副反応を低減するために、M(dpp
e)2X2[式中、MはFe、CoまたはNi;XはCl、BrまたはI]
を触媒として添加し、主反応を優先させる。このM(dpp
e)2X2の使用割合は、溶媒に対して、通常0.01〜5重量%
程度であり、より好ましくは0.1〜2重量%程度である。
【0032】本発明の電極電解還元は、窒素、アルゴン
ガス、ヘリウムなどの不活性ガス下で行うことが好まし
い。
【0033】本発明による電極電解還元に際しては、通
常5〜50V程度の電圧を印加し、より好ましくは10〜30V
程度の電圧を印加する。
【0034】また、本発明の電極電解還元時の温度は、
通常-20〜10℃程度の範囲内にあり、より好ましくは-10
〜5℃程度の範囲内にある。反応時間は、通常5〜24時間
程度の範囲内にあり、より好ましくは8〜12時間程度の
範囲内にある。
【0035】本発明方法により得られる炭素材料は、ポ
リインを含んでおり、また、ポリインとポリイン以外の
非晶質カーボンとを含む場合もある。非晶質カーボンと
しては、グラファイト、菱面体グラファイト、ロンズダ
ライト、チャオアイト、ガラス状カーボンなどがある。
【0036】特に、ラマンスペクトル(励起波長:488n
m)で観測される-C≡C-に起因するバンド(2100cm-1)と非
晶質カーボンに起因するバンド(1560cm-1)の面積比率に
おいて、-C≡C-に起因するバンドの面積比率が20〜70%
であって、三重結合を大量に含有するポリイン様炭素材
料が好ましい。
【0037】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とすると
ころをより一層明らかにする。 実施例1 LiCl(0.8g)、FeCl2(0.48g)、Fe(dppe)2Cl2(0.05g)を溶
解したテトラヒドロフラン(THF 30ml)とフッ化ピッチ0.
2gをフラスコに仕込んだ。陽極としてマグネシウム電極
を用い、陰極としてステンレス鋼電極を用いて、アルゴ
ン気流下、2電極法で陽極−陰極間に25Vを印加し、0℃
で10時間反応させた。次いで、黒色になった反応物をTH
Fで洗浄した後、真空乾燥した。生成物のラマンスペク
トル(励起波長:488nm)では、-C≡C-に起因するバンド
(2100cm-1)と非晶質カーボンに起因するバンド(1560 cm
-1)とが観測され、その面積比率は、表1に示す通りで
あった。
【0038】表1に示す結果から明らかな様に、本発明
方法により、C≡Cに起因するバンドの面積比率の方が大
きく、三重結合を大量に含有するポリイン様炭素材料が
合成されたことが確認された。 実施例2 フッ化ピッチに代えてデカフルオロピレンを原料として
使用する以外は実施例1と同様にして電解還元反応を行
った。生成物のラマンスペクトル(励起波長:488nm)
では、-C≡C-に起因するバンド(2100cm-1)と非晶質カ
ーボンに起因するバンド(1560 cm-1)とが観測され、そ
の面積比率は、表1に示す通りであった。
【0039】表1に示す結果から明らかな様に、-C≡C-
に起因するバンドの面積比率が大きく、三重結合を大量
に含有するポリイン様炭素材料が合成されたことが確認
された。 実施例3 フッ化ピッチに代えてフッ化炭素を原料として使用する
以外は実施例1と同様にして電解還元反応を行った。
【0040】生成物のラマンスペクトル(励起波長:48
8nm)では、-C≡C-に起因するバンド(2100cm-1)と非晶
質カーボンに起因するバンド(1560 cm-1)とが観測さ
れ、その面積比率は、表1に示す通りであった。
【0041】表1に示す結果から明らかな様に、-C≡C-
に起因するバンドの面積比率が大きく、三重結合を大量
に含有するポリイン様炭素材料が合成されたことが確認
された。 実施例4 フッ化ピッチに代えてフッ化黒鉛を原料として使用する
以外は実施例1と同様にして電解還元反応を行った。
【0042】生成物のラマンスペクトル(励起波長:48
8nm)では、-C≡C-に起因するバンド(2100cm-1)と非晶
質カーボンに起因するバンド(1560 cm-1)とが観測さ
れ、その面積比率は、表1に示す通りであった。表1に
示す結果から明らかな様に、-C≡C-に起因するバンドの
面積比率が大きく、三重結合を大量に含有するポリイン
様炭素材料が合成されたことが確認された。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、ハロゲン原子を有する
芳香族炭化水素誘導体或いはハロゲン原子含有芳香族炭
素誘導体を反応性陽極電解還元することにより、-C≡C-
含有量のより多いポリイン様炭素材料を合成することが
可能となった。
【0045】従って、本発明方法は、室温あるいは室温
に近い温度で、高度に構造の制御された炭素材料を工業
的に大量に合成するための手段として、極めて有用であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 歩 京都府京都市下京区中堂寺南町17京都リサ ーチパーク 株式会社関西新技術研究所内 (72)発明者 川瀬 昇 京都府京都市下京区中堂寺南町17京都リサ ーチパーク 株式会社関西新技術研究所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導
    体およびハロゲン原子を有する芳香族炭素誘導体の少な
    くとも1種を反応性陽極電解還元することを特徴とする
    炭素材料の製法。
  2. 【請求項2】反応性陽極としてMg、AlまたはPbを用い、
    陰極としてステンレス鋼またはカーボンを用いる請求項
    1に記載の炭素材料の製法。
  3. 【請求項3】Fe(dppe)2Cl2、Co(dppe)2Cl2、Ni(dppe)2C
    l2、Fe(dppe)2Br2、Co(dppe)2Br2、Ni(dppe)2Br2、Fe(d
    ppe)2I2、Co(dppe)2I2およびNi(dppe)2I2からなる群か
    ら選択される少なくとも1種を触媒として用いることを
    特徴とする請求項1または2に記載の炭素材料の製法。
  4. 【請求項4】ハロゲン原子を有する芳香族炭化水素誘導
    体がフッ化ピッチであることを特徴とする請求項1〜3
    のいずれかに記載の炭素材料の製法。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の製法によ
    り得られた炭素材料。
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