JP2000025230A - 液体噴射記録ヘッド - Google Patents

液体噴射記録ヘッド

Info

Publication number
JP2000025230A
JP2000025230A JP20057498A JP20057498A JP2000025230A JP 2000025230 A JP2000025230 A JP 2000025230A JP 20057498 A JP20057498 A JP 20057498A JP 20057498 A JP20057498 A JP 20057498A JP 2000025230 A JP2000025230 A JP 2000025230A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
base
ink
orifice plate
molding
top plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP20057498A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukuo Yamaguchi
裕久雄 山口
Shunichi Watabe
俊一 渡部
Keizo Naganuma
敬三 長沼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP20057498A priority Critical patent/JP2000025230A/ja
Priority to US09/334,680 priority patent/US6382777B1/en
Publication of JP2000025230A publication Critical patent/JP2000025230A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インク流路、吐出口等が形成される天板の成
形精度、寸法安定性等の天板の成形性を改善する。 【解決手段】 吐出ヒータ1aが設けられたヒータボー
ド1上には、インク吐出口6aが設けられたオリフィス
プレート6、インク吐出口6aに連通するノズル7、イ
ンク液室、及びインク供給口9が一体的に形成された天
板5が接合される。オリフィスプレート6の表面は一様
な平面に形成される。天板5は、インク吐出口6aの周
辺部を含むオリフィスプレート6の一部及びノズル7か
らなる第一基体と、その他の部分からなる第二基体とで
構成され、これらが二色成形によって接合して一体形成
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録紙に対してオ
リフィスプレートの吐出口からインクを吐出することに
よって記録がなされる液体噴射記録装置に用いられる液
体噴射記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】液体噴射記録装置は、液体噴射記録ヘッ
ドのオリフィスプレートに設けられる吐出口からインク
(記録液)を液滴として吐出することによって記録紙に
記録を行なうもので、液体噴射記録装置本体より伝達さ
れる駆動信号に基づき、液流路内に設けられた吐出エネ
ルギー発生素子で液流路中のインクを加熱することによ
って、インクに状態変化を生起させ、気泡を形成し、こ
の気泡形成時の体積変化に基づいてインクが吐出口より
吐出される。
【0003】吐出エネルギー発生素子としては具体的に
は、記録信号に応じて通電することにより発熱する電気
熱変換体が使用され、吐出エネルギー発生素子は、シリ
コン基板に対し、半導体分野における薄膜形成技術を用
いて形成されている。
【0004】液体噴射記録ヘッドは、一般的に、複数の
吐出エネルギー発生素子を配列した基板と、その上部を
覆う天板によって構成される。天板は、基板上の各吐出
エネルギー発生素子に対向した液流路(ノズル)とイン
ク吐出口を有するオリフィスプレートと、各液流路にイ
ンクを供給するインク液室と、インク液室にインクを供
給するインク供給口と、を備えている。
【0005】オリフィスプレートは数十μmから数百μ
mのシート状部材であり、このシート状部材にはインク
吐出口として、多数個の微細穴が形成されている。吐出
口の形状は、インク滴の吐出方向に向かって縮径したよ
うなテーパ形状であり、このような形状によって、安定
した記録に必要なインクの吐出が得られるようになって
いる。これらの微細穴を高精度に効率良く形成する方法
として、レーザ加工、電鋳、精密プレス加工、精密成形
等が利用されている。
【0006】一方、液流路(ノズル)は、幅が数十μ
m、深さが数十μmの溝によって形成され、この溝が数
十μmのピッチによって多数個配設されている。このよ
うな微細溝が吐出エネルギー発生素子に対向して高精度
に配設されるように、射出成形、トランスファー成形、
圧縮成形、押し出し成形、注型、セラミックスインジェ
クション等の精密成形、エキシマレーザ、YAGレーザ
等の微細レーザ加工、シリコンの異方性エッチング、フ
ォトリソグラフィ等の半導体薄膜形成技術、等によって
製作されている。
【0007】天板は、上記のような精密加工によって形
成されるが、中でも、精密成形による方法は、部材が安
価に製造できる点と複雑な形状が容易に形成できる点が
非常に有効であり、これまで、様々な形態の天板が成形
されてきた。
【0008】成形樹脂材料としては、一般にポリサルフ
ォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルフ
ァイド、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレ
ン、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)等の耐インク
性に優れた樹脂材料が使用される。
【0009】天板成形においては、オリフィスプレート
の薄肉部を充填させること、液流路壁の微細部を安定し
て転写すること等が要求されており、このために成形が
非常に難しくなっている。さらに、天板自体も微小部品
のため、安定した成形精度を確保することが困難となっ
ている。
【0010】特に液流路壁のような微細部分への成形樹
脂の充填は天板成形において最も難しい部分である。一
般に、ここは射出工程段階だけでは十分な充填ができな
い部分であり、保圧工程の際の保圧力によって完全な充
填が行われている。つまり、射出工程においては、温調
やせん断発熱を利用して樹脂粘度を低くし、樹脂の流動
性を高めて、樹脂が冷える前に金型内部へできるだけ速
く充填させる。ただし、このとき、樹脂の流れが淀むよ
うな個所、あるいは隅部や微細部分等では樹脂の充填は
不完全な状態となる。そして、保圧工程に移行すると、
保圧力が金型内部の至るところに作用するようになり、
このような射出工程において充填が不十分な部分への転
写が可能となる。したがって、射出工程の際の充填が不
十分であると、保圧力がその充填不十分な個所に集中し
てしまうため、保圧力が金型内部全域に対して一様に作
用しなくなってしまう。
【0011】従来の天板においては、図8に示すような
ファンゲート210を天板200の背面に配設すること
によって、天板背面の広い領域から樹脂が注入されて、
天板全域に樹脂が効率よく流れて行くように配慮されて
いる。また、ファンゲート210にすることによって、
ゲート近傍が絞り込まれていくことから、この部分を通
過する樹脂はせん断発熱を活発化させて樹脂の流動性が
向上するため、樹脂を高速に注入することができる。な
お、図8に示すように天板200の背面にファンゲート
210を設けて、ここから樹脂が矢印G方向に注入され
ると、部品全域に対して樹脂が効率よく流れることが、
流動解析等のシミュレーションによって確認されてい
る。
【0012】このように、微細部品である天板成形は、
流動解析等の各種シミュレーション技術や精密金型加工
技術を駆使し、精密用高速射出成形機や高流動性樹脂材
料を使用した高精度な成形によって成り立っている。
【0013】一方、インク吐出口は、一般に、天板を成
形した後に、エキシマレーザ加工等によって形成されて
いる。エキシマレーザ加工によって吐出口を形成する場
合、一般的には、レーザ光の入射側に形成される穴の大
きさは、レーザ光の射出する側に形成される穴の大きさ
よりも大きくなる。
【0014】吐出口が形成される部分の厚みは数十μm
と非常に薄肉であり、この部分の厚みを大きくすると、
穴あけ時のテーパ形成により、オリフィスプレート表面
の吐出口面積が小さくなり、インク吐出量、インク吐出
速度等が減少してしまうため、オリフィスプレートの厚
みはほぼ定まっており、あまり大きくすることができな
い。
【0015】図9の断面図に示すように、天板200の
オリフィスプレート加工の際、レーザ光照射のためのマ
スク222は天板200の背面側に配置され、マスク2
22を通過したレーザ光221は、ノズルを構成する溝
233側より入射してオリフィスプレート234の表面
から出射される。そして、溝233がレーザ光221と
干渉することがないように、天板200はレーザ光22
1の光軸221aに対して傾けて保持されて、傾斜加工
される。
【0016】一方、オリフィスプレート234の表面
は、レーザ光221の光軸方向(インク吐出方向)と直
行するようにしてレーザ穴加工が成されている。これに
より、オリフィスプレート234の表面は基板300に
対して傾斜することから、インクは記録媒体に対して垂
直に噴射するようになる。
【0017】また、オリフィスプレート234の表面に
は、キャッピングによって吐出口周辺を外気から遮断す
るための面積を確保する必要があることから、大きな面
積を有している。キャッピングは、吐出口からインクを
吸引して吐出不良を解消する吸引回復動作の際に行われ
たり、吐出口におけるインクの増粘や乾燥防止を図るた
めに行われるものである。
【0018】このようにオリフィスプレート234は非
常に薄い肉厚を有しながらその表面は広いことから、天
板200の成形を非常に難しくしている。そこで、従来
の記録ヘッドでは、オリフィスプレート234は、図9
に示すように、吐出口が形成される厚さ数十μmの吐出
口近傍部分231と、キャッピングスペースである厚さ
数百μmの外周部分232との間に段差を設けて、最も
薄肉となる吐出口近傍部分231の領域をできるだけ小
さくしている。さらに、双方の部分を滑らかな曲面で接
続することにより、成形時に充填不良が発生することの
ないように対処している。
【0019】つまり、オリフィスプレート234におい
て肉厚が厚くなる外周部分232(キャッピングスペー
ス)の領域をできるだけ増やすことによって、注入され
た樹脂がオリフィスプレート部において成形ショートし
て停滞することなく、スムーズに流れるようにしてい
る。また、成形後にオリフィスプレート234に亀裂が
生じたり、破損することがないようにオリフィスプレー
ト234の強度を向上させる狙いがある。
【0020】かかる従来の液体噴射記録ヘッドの概略図
を図10に示す。図10に示すように、この液体噴射記
録ヘッドは、インク吐出圧発生素子を設けた基板(以
下、ヒータボードと称す)100と、このヒータボード
100と接合されて記録液体(以下、インクと称す)を
収容するインク液室600及び液流路(ノズル)700
を構成する凹凸部分を有した天板500とからなり、イ
ンク液室600の上部には、インク液室600と連通す
るインク供給口1000が配設される。
【0021】また、液流路(ノズル)700の前方に
は、インクを吐出するためのインク吐出口を有するオリ
フィスプレート400が天板500と一体的に形成され
るか、天板500に接合もしくは係合されて、インク吐
出口は液流路700と連通している。
【0022】ヒータボード100は支持基板(以下、ベ
ースプレートと称す)300に接着剤306等により接
着固定され、天板500は、ヒータボード100上に配
設されているインク吐出圧発生素子としてのヒータ部1
00aと、天板500の液流路(ノズル)700とが合
致するように位置合わせして接合され、オリフィスプレ
ート400は、ベースプレート300の前端面に前垂れ
のように配置されている。また、天板500のインク液
室600は不図示のインクタンクよりインク供給口10
00を介してインクの供給を受ける。
【0023】このような液体噴射記録ヘッドにおいて
は、液流路(ノズル)700とヒータボード100とを
接合してインク流路を形成する場合、液流路(ノズル)
700とヒータボード100との接合を封止剤、接着剤
等の接合剤で行なうと、液流路(ノズル)700内にこ
れらの接合剤が入り込み、液流路(ノズル)700の形
状が変化したり、液流路(ノズル)700の一部が閉塞
されてしまうおそれがある。したがって、少なくとも液
流路壁部分は機械的に押圧して接合を行なっている。
【0024】以下にその構成を説明する。ヒータボード
100と天板500とのインク吐出方向と平行な方向
(矢印E方向)の位置決めを、ヒータボード100の前
端面をオリフィスプレート部400に突き当てるように
して行ないながら、ヒータボード100と天板500と
を接合させる。次に、押さえばね900の両端下部に設
けた爪507を、ベースプレート300に設けた穴部3
07に挿入させ、爪507の折曲部507aをベースプ
レート300の下面に係止する。これにより、押さえば
ね900は、天板500の液流路壁の上部から接触部に
対して機械的圧力を加えることができる。
【0025】したがって、天板500の液流路壁とヒー
タボード100は上記機械的な押圧により密着する。
【0026】しかしながら、このような機械的押圧の場
合、液流路壁においては、上方から直接加重を受けるの
で、ヒータボード100に十分密着させることができる
ものの、インク液室600外壁部やその他の接合部分に
おいては、この押圧力が十分に作用しないため、これら
すべての部分をヒータボード100に密着させることは
非常に困難である。このため、これらの部分にはしばし
ば封止剤が用いられて、記録ヘッドの気密性を高めてい
る。
【0027】したがって、封止剤は、液体噴射記録ヘッ
ドにおけるインクと接触する部材間の接合部分に使用さ
れており、インクが外部に漏れないようにしている。具
体的にはオリフィスプレート400の背面とヒータボー
ド100の前端面、オリフィスプレート400の背面と
ベースプレート300の前端面、天板500とヒータボ
ード100との接合部分、等が挙げられ、これらの各隙
間部分の封止は、各々の部材間の隙間と、封止剤との間
に発生する毛管力によって、封止剤を所定範囲内に流
し、その範囲以外には流れないように部材形状の工夫、
部品寸法の管理、封止剤の粘度管理等によって封止が行
なわれる。
【0028】図11は、天板500とヒータボード10
0の接合状態を示す断面図であるが、同図のように、天
板500の液流路(ノズル)700のピッチとヒータボ
ード100上のヒータ部100aのピッチは同一に設定
されており、インクの吐出精度を向上させるために各液
流路(ノズル)700と各ヒータ100部aが高精度に
対向するように双方の部品加工および双方の位置合わせ
は高精度に行われている。
【0029】このような液体噴射記録ヘッドが搭載され
た液体噴射記録装置においては、記録データによって
は、ある吐出口で長時間にわたって吐出が行われない場
合や、装置自体が長時間使用されない場合には、吐出口
や吐出口に連通する液流路内のインクが水分蒸発によっ
て増粘することがある。このような増粘インクが液流路
内に存在し液流路が吐出に適さない状態にあると、液流
路に配置される吐出エネルギー発生素子を所定の条件で
駆動しても吐出されるインク量が一定しなくなり、記録
される画像品位が低下するおそれがある。また、このよ
うなインク増粘によって吐出不良が生じたり、さらには
インクが固化して不吐出となるおそれもある。
【0030】また、連続的にインクを吐出させた場合な
どに、記録紙の表面から反射したインク滴や空中の霧状
のインク(インクミスト)がオリフィスプレートの表面
に付着して余分なインクが溜まることがあり、その結
果、不安定な吐出や、場合によっては不吐出を引き起こ
してしまうことがある。さらに、オリフィスプレートの
表面の吐出口近傍にインク滴、水滴、塵埃等が付着する
と、これら付着物によって、吐出されるインクが引っ張
られ、インクの吐出方向が偏向して画像品位が低下する
おそれもある。
【0031】したがって、記録剤に液体であるインクを
用いることに起因した上記の不具合を解消すべく、液体
噴射記録装置においては他の記録装置に見られない固有
の構成、すなわち液流路内をリフレッシュしたり、オリ
フィスプレートの表面を良好な状態にする手段、いわゆ
る記録ヘッドの吐出回復系が設けられている。
【0032】オリフィスプレートの表面をリフレッシュ
して吐出方向の偏向を予防したり、吐出口周辺の付着物
を除去するものとしては、ゴムや吸水性の材料等を用い
て形成されるワイピング部材を吐出口周辺部に接触させ
て、両者を相対移動させることにより、吐出口近傍に付
着したインク滴や塵埃等を拭う(ワイピングする)もの
がある。
【0033】また、液体噴射記録ヘッドより、インクを
吐出させる際、インクの一部が、垂れて流れて吐出口周
辺に付着すると、インクの噴射方向がずれる原因となっ
たり、付着したインクが長時間放置されて固化すると、
インクの目詰まりを起こすことになる。このため、一般
的に、オリフィスプレートの表面全域あるいはインク吐
出口周辺の一部分に撥水処理が成されて、インク吐出口
周辺にインクが残存することを阻止している。このよう
な撥水処理は、天板成形後に、天板表面に噴射、塗布し
たり、あるいは共析メッキ等によって行なわれている。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、天板
は、液流路壁、オリフィスプレート、インク液室、イン
ク供給口等が一体となって、微細部分と薄肉部分を有す
る複雑な形状をしており、天板を成形するためには、寸
法精度、寸法安定性、転写精度、微少変形等の成形精度
と、微細部や薄肉部への確実な充填性が要求され、成形
環境、成形条件、材料品質等、徹底した管理が必須であ
り、これらによって、安定した成形品が確保されてい
る。
【0035】天板の成形品で最も精度の要求される部分
は液流路壁下面の平面性であるが、通常、天板の液流路
壁の下面には数μm程度の反りが発生している。そこ
で、液流路壁の上方を押さえばねで下方へ加圧すること
によって、液流路壁下面の反りを矯正しつつ、液流路壁
下面をヒータボードに密着させている。このため、ヒー
タボードに密着された天板には、内部応力や内部歪みが
生じることになる。
【0036】そして、このように天板の内部歪みが大き
くなると、インクの吐出に対して悪影響を及ぼすことに
なる。すなわち、液流路壁下面の反りを矯正して密着さ
せると、液流路壁周辺の歪みの影響を受けて、オリフィ
スプレートも追従して反ることになる。
【0037】オリフィスプレートが反ると、複数配列さ
れている吐出口の相対向きや相対位置が変わるおそれが
あり、インクの着弾精度が悪化して印字品位を低下させ
ることになる。
【0038】これに対して、天板を弾性率の大きな材料
によって成形し、天板の剛性を向上させて、密着時の内
部歪みを小さくする方法が挙げられるが、天板の剛性が
大きくなると、液流路壁下面の反りを矯正することが難
しくなり、ヒータボードに対して密着不良を起こすおそ
れがある。一方、液流路壁全域が矯正されるように、押
さえばねの押圧力を大きくする方法があるが、押圧力を
大きくすると、天板の内部応力が増大して内部歪みをさ
らに大きくすることになる。
【0039】液流路壁とヒータボードの密着が不十分で
あった場合、ヒータボードと液流路壁との接合によって
形成される複数の液流路のうち、隣り合う液流路壁同士
がヒータボードとの間に隙間を持つことになる。その結
果、ヒータボード上で発生した吐出圧が隣りの液流路へ
と分散されてしまい、印字記録が行なわれる際にインク
の吐出が不安定になり、インク滴がヨレたりする。ま
た、記録信号印加時に、インクが吐出されるべき吐出口
から吐出せず、その隣りの吐出口からインクが吐出され
て、印字乱れが生じてしまう等、画像記録品位の低下を
招く恐れがある。
【0040】上記のことから、液流路壁下面とヒータボ
ードとの密着を確実に行なうためには、液流路壁下面の
反りができるだけ小さくなるように天板を成形する必要
がある。
【0041】一方、成形樹脂に関しても、高精度で寸法
安定性の優れた材料を選定することが、精密薄肉厚成形
技術のレベルアップにおいては欠かせない重要な要素と
なっている。すなわち、従来のように、充填物を含まな
いピュアな材料を使った成形では天板の性能アップにお
いて限界がある。そこで、様々なフィラーが充填された
成形材料を採用することによって天板の性能を改良して
行くことが必要である。
【0042】ところが、フィラー等が充填された樹脂で
天板を成形することは、以下のような問題がある。
【0043】まず、1つ目は、レーザ加工に関する問題
である。オリフィスプレートが樹脂で成形された場合、
そこに設けられる微細穴は、一般に、エキシマレーザを
使ったアブレーションによって形成されている。ところ
が、エキシマレーザ加工では、フィラーの部分は、アブ
レーションされないため、微細穴の内面では、フィラー
が突起状に残ったり、フィラーが表面から欠落して凹部
を形成するおそれがあり、微細穴内面が滑らかにならな
くなり、インク吐出不良の要因となる。
【0044】2つ目は、金型製作に関する問題である。
天板の液流路壁は微細形状であるため、この部分を転写
する型駒は非常に高い加工精度によって製作される。ま
た、この型駒は、一般の工作機械では容易に加工できな
いことから、特殊な工作機械を使って、特殊な材料で、
長時間かけて、精密加工される。このために、液流路壁
転写用の型駒が金型全体の製作費を高価にしている。さ
らに、成形工程において、この型駒は、注入時には溶融
樹脂と摺擦し、離型時には成形品と摺動するため、フィ
ラー等が含有された材料で天板を成形すると型駒の摩耗
が早くなり、金型の耐久性を低下させ、天板の生産性を
低下させることになる。
【0045】3つ目は、材料の流動性に関する問題であ
る。天板の成形では、微細部分を確実に転写するため
に、流動性の良好な材料グレードが選択されている。と
ころが一般的には、樹脂にフィラーが含有されると流動
性が悪化する傾向にあり、薄肉部分や微細部分の転写に
おいては不利になる。
【0046】4つ目は、フィラーが樹脂の流動や転写を
妨害する問題である。液流路壁の幅は数μmから十数μ
mと微細寸法であり、ファイバー、ビーズ等のフィラー
粒子の寸法が液流路壁の厚みよりも大きくなる可能性が
ある。天板がフィラーを含んだ樹脂で成形されると、フ
ィラーが液流路壁内に転写されないばかりでなく、フィ
ラーが溝部分の入口に橋渡しされた状態で停滞し、後方
より流れてくる溶融樹脂の流れをせき止めたり、流れを
乱してしまうことになる。また、フィラーを含む樹脂で
成形を行なうとフィラーが成形品表面に析出する場合が
あり、表面に析出したフィラーは離型時に金型と摺擦し
て、成形品の表面層から欠落する可能性がある。さら
に、フィラーは液流路壁部分に充填されないため、液流
路壁部分の性能改善効果が軽減されてしまうことにな
る。
【0047】これに対して、液流路壁の厚みよりも小さ
な数μm〜数nmの超微細粉末状のフィラーを樹脂に含
ませて天板を成形する方策はあるが、超微細粉末状のフ
ィラーをベースレジン中に均一に分散させることは非常
に難しく、安定した材料の供給が極めて困難となる。
【0048】また、このような微細粉末フィラーをベー
スレジンに均一に分散させるためには特殊な分散技術
と、シランカップリング剤等による微細粉末フィラーの
表面処理が必要となり、このような微細粉末フィラーを
含有した樹脂材料は非常に高価になる。
【0049】以上のように、天板がフィラーの充填によ
って物性強化された樹脂によって成形されると、成形精
度は向上するものの、レーザ加工の阻害、成形品品質の
低下、金型耐久性の低下、高価な成形材料等の弊害を伴
うために、必ずしも有効な手段ではない。
【0050】したがって、従来の成形方法では、天板の
成形精度、液流路壁下面の平面精度、天板の剛性等を向
上させることが難しく、これらの点が高密度な液体噴射
記録ヘッドの開発においての課題となっていた。
【0051】次に、液体噴射記録ヘッドの使用環境下や
保存環境下における問題点について述べる。
【0052】液体噴射記録ヘッドが使用される環境の温
度変動が大きくなると、液体噴射記録ヘッドを構成する
個々の部品が体積膨張や体積収縮を起こし、ヘッドの接
合部が相対位置ずれを起こすおそれがある。天板とヒー
タボードとの密着によって形成される液流路は、ピッチ
が数十μmと非常に微細形状であることから、両者の相
対位置ずれが大きくなるとインク吐出性能に悪影響を与
えることになる。
【0053】ヒータボードを形成する部材の材質と天板
を形成する部材の材質とが異なるために、両部材には、
両者の相対位置を動かそうとする力が作用することにな
る。つまり、温度変動に応じた熱膨張から発生する内部
応力によって、ヒータボードと天板は個別に体積変化を
起こすため、対向して接合される液流路壁とヒータとが
相対位置ずれを起こそうとする。
【0054】一方、前述のとおり液流路壁は機械的に押
圧されており、この押圧力によって液流路壁とヒータボ
ードとの間には摩擦力が作用し、この摩擦力と液流路壁
自体の機械的強度とによって、液流路壁とヒータボード
との相対位置ずれは阻止されている。
【0055】ところが、この機械的な押圧力の作用は吐
出口先端部において低下するために、吐出口の先端部で
は液流路壁やヒータボードに対して極微小であるが相対
位置ずれを起こすおそれがある。
【0056】さらに、例えば一回の噴射で1200dp
iの解像度が得られる吐出口を持つ液体噴射記録ヘッド
のように、ノズルが高密度になると、液流路壁の厚みは
数μmから数十μmほどの微小寸法となるため、液流路
壁の摩擦力や機械的強度が低下し、この相対位置ずれが
大きくなり易くなる。その結果、吐出口先端部だけでな
く、液流路壁とヒータボードとの間においても相対位置
ずれを起こすおそれがあり、このような相対位置ずれを
抑えることが難しくなる。
【0057】この相対位置ずれを抑制するためには、押
さえばねの押圧力を増やして、液流路壁密着面の摩擦力
を高める方法はあるが、押さえばねの押圧力を大きくし
て天板を密着させると、天板の内部歪みが大きくなり、
印字品位を悪化させる恐れがある。さらに、高温環境下
では、液流路壁は、熱応力と押さえばねの加重を受け、
これらの力に耐えきれずに座屈や屈曲等の塑性変形を起
こす可能性がある。したがって、押さえばねの押圧力を
上げることはあまり得策ではない。
【0058】また別の方策として、線膨張係数の小さい
樹脂を使用して、天板を成形する方法が考えられる。
【0059】例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサ
ルフォン、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニ
レンサルファイド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ
アミドイミド、エポキシ、ポリエチレン、LCP等の耐
インク特性(耐薬品性)に優れている樹脂にファイバー
やビーズ等のフィラーを含ませて線膨張係数を小さくし
た樹脂材料を使用して成形する方法が挙げられる。
【0060】天板が、フィラーを充填して強化した樹脂
材料によって成形されると、前記した通り、成形品の線
膨張係数を低下させることには有効であるものの、流動
性の悪化、金型の耐久性の悪化、レーザ加工性の悪化、
高い材料費等の弊害を伴うために有効な手段ではない。
【0061】このような従来の成形による天板の構成に
おいては、熱膨張による影響から高密度なノズルを有す
る天板の成形が困難となっていた。
【0062】次に、オリフィスプレートの形状による問
題点について述べる。
【0063】前述した従来例のオリフィスプレートの構
成では、吐出口周辺部とその周囲に設けられるキャッピ
ング部との間は滑らかな面で結ばれてはいるものの、段
差が生じており、オリフィスプレート上の残留インクを
ブレード(ワイピング部材)で拭き取る際に段差部分
(滑らかな凹部)にインク溜りが生じたり、ブレードが
吐出口を飛び越えてしまったり、振動により拭きむらが
生じたりする場合があり、ブレードの制御を非常に難し
くしている。
【0064】また、ブレードがこのような段差部分を摺
動する際には、先端部分を屈曲させながら移動するた
め、ブレードの耐久性を確保するために高価な材料を選
定する必要があった。
【0065】さらに、本来、記録精度をよくするために
は吐出口と記録紙との距離(紙間)を小さくしてインク
の着弾精度を向上させることが好ましいが、従来の記録
ヘッドでは、キャッピング部と吐出口周辺部と間に段差
が設けられていることから、記録紙に最も接近するのは
キャッピング部分となり、このようにオリフィスプレー
ト表面に設けられた段差部分が紙間を大きくしている一
要因となっている。
【0066】また、従来の天板成形においては、背面の
ゲート部から樹脂注入が行われていたが、樹脂がこの部
分から注入されると、天板の複雑な形状部(インク液
室、インク供給口等)を通過してから、液流路壁の微細
部分やオリフィスプレートの薄肉部分に到達するため、
この部分に到達した樹脂の流れや配向は乱れており、ま
た流動樹脂の圧力損失も大きくなることから、天板の成
形精度や充填精度を悪くする要因となっている。
【0067】パーソナルコンピュータ、複写機、ファク
シミリ等の出力装置としての液体噴射記録装置において
は、今後、銀塩フィルムに匹敵する解像力を得ることが
必須となっており、これに伴って、液体噴射記録ヘッド
を構成する吐出口の大きさ、液流路の幅、ヒータの大き
さ、およびこれらのピッチはさらに微細化されていくこ
とになる。
【0068】したがって、今後、液流路がさらに微細化
された場合には、従来例のようなゲート配置からの樹脂
注入では、天板が必要とする成形精度および性能の確保
が難しくなるだけでなく、成形によって液流路部分を転
写させることが非常に困難となる。
【0069】そこで、本発明は、今後の液体噴射記録装
置における高解像度化技術を達成させるために、天板の
構造、天板の成形精度、天板の寸法安定性等、成形性全
般に渡って改善することによって、液流路壁下面の反り
をさらに小さくするとともに、従来の天板において課題
であった熱膨張や剛性等の性能面における弱点を克服す
ることを目的とする。そして、高密度ノズルを有し、高
画質が得られる液体噴射記録ヘッドが市場に対して安価
に提供できるようにすることを目的としている。
【0070】また本発明は、オリフィスプレートの形状
を簡素化して、オリフィスプレートのワイピングがむら
なく、容易に行えるようにすることを目的とする。
【0071】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、液体噴射記録ヘッドを以下のように構成し
たことを特徴とするものである。
【0072】(1) インクに吐出エネルギーを与える
吐出エネルギー発生素子が複数のインク流路に対応して
設けられた基板部材と、前記複数のインク流路に対応す
る複数の溝と、インクが吐出される吐出口が前記各溝の
一端にそれぞれ連通して設けられたオリフィスプレート
と、前記各溝にインクを供給するために前記各溝の他端
で前記各溝と連通するインク液室と、前記インク液室に
インクを供給するインク供給口と、から構成され、前記
溝と前記オリフィスプレートと前記インク液室と前記イ
ンク供給口とが一体的に形成された天板部材と前記基板
部材とを接合させることによって複数のインク吐出経路
が形成される液体噴射記録ヘッドにおいて、前記オリフ
ィスプレートは、表面が一様な平面または一様な曲面で
形成され、前記天板部材は、前記オリフィスプレートの
少なくとも前記吐出口の周辺部を含む部分及び前記溝を
含む第一基体と、前記第一基体となる部分を除く部分か
らなる第二基体とによって構成され、前記第一基体と前
記第二基体とが二色成形によって接合して一体形成され
ることを特徴とする。
【0073】(2) (1)項の液体噴射記録ヘッドに
おいて、オリフィスプレートの表面が基板部材に対して
傾斜している。
【0074】(3) (1)または(2)項の液体噴射
記録ヘッドにおいて、第一基体を成形するためのゲート
位置をオリフィスプレートの下側面とした。
【0075】(4) (3)項の液体噴射記録ヘッドに
おいて、ゲートは、ファンゲートまたはフィルムゲート
である。
【0076】(5) (1)〜(4)項の液体噴射記録
ヘッドにおいて、オリフィスプレートは、吐出口の周辺
部では表面と裏面とが平行に形成され、オリフィスプレ
ートの厚さは、吐出口の周辺部から下方に向かって徐々
に厚くなるように形成されている。
【0077】(6) (1)または(2)項の液体噴射
記録ヘッドにおいて、第一基体を成形するためのゲート
位置を、オリフィスプレートの、吐出口の配列方向に対
する端面とした。
【0078】(7) (1)〜(6)項の液体噴射記録
ヘッドにおいて、第二基体は、フィラーが充填された複
合材料によって成形される。
【0079】(8) (1)〜(7)項の液体噴射記録
ヘッドにおいて、第二基体は、第一基体よりも線膨張係
数が小さい。
【0080】(9) (1)〜(8)項の液体噴射記録
ヘッドにおいて、第二基体は、第一基体よりも弾性率が
大きい。
【0081】(10) (1)〜(9)項の液体噴射記
録ヘッドにおいて、第二基体を成形するためのゲート位
置を、第二基体を成形する際に成形材料が溝の配列方向
に流れるように配置した。
【0082】(11) (1)〜(10)項の液体噴射
記録ヘッドにおいて、第二基体を成形するためのゲート
位置を、溝の列の端部近傍とした。
【0083】(12) (1)〜(11)項の液体噴射
記録ヘッドにおいて、第二基体を構成する材料のベース
レジンは、第一基体を構成する材料のベースレジンと同
一材料である。
【0084】(13) (1)〜(12)項の液体噴射
記録ヘッドにおいて、第一基体及び第二基体の境界面の
一部には凹凸列が形成され、第一基体の凸部が第二基体
の凹部に侵入し、かつ、第二基体の凸部が第一基体の凹
部に侵入している。
【0085】本発明によれば、天板部材を、オリフィス
プレートの少なくとも吐出口の周辺部を含む部分及び溝
からなる第一基体と、第一基体となる部分を除く部分か
らなる第二基体、もしくは更に複数の基体に分割形成さ
れて、第一基体とその他の基体とが多色成形によって一
体化されるような構成とすることによって、第一基体は
単純な形状となり、成形時に注入される材料の流れや配
向が安定する。その結果、成形材料の流動中に余分な圧
力損失が生じなくなり、天板部材の成形精度や充填精度
が向上する。また、様々な樹脂、セラミックス、金属、
フィラー等を組み合わせて多色成形することにより、一
色の成形では実現できなかった高精度で多機能な天板部
材の成形が可能となる。
【0086】また、オリフィスプレートの表面が一様な
平面または一様な曲面で形成されるので、オリフィスプ
レートの表面に段差が形成されている場合と異なり、オ
リフィスプレート上の残留インクを確実かつ容易に拭き
取る(ワイピング)ことが可能であり、キャッピング部
材の大きさを小さくすることができるようになる。ま
た、ブレードはオリフィスプレートの表面上をスムーズ
に摺動することができるようになり、ブレードは変な屈
曲を起こすことがなくなるため、ブレードの耐久性を向
上させることができ、結果的に、安価な材料でブレード
を作製することができるようになる。さらに、オリフィ
スプレートの表面には段差が全くなくなるか、非常に小
さくなることから、吐出口から被記録媒体までの距離を
小さくすることが可能になる。これにより、吐出される
インクの着弾精度が向上する。
【0087】オリフィスプレートのような極めて肉厚の
薄い部分は成形材料の流動抵抗が非常に大きく、このよ
うな薄肉部分が広範囲に及んでいると、成形材料の充填
が極めて難しくなる。このため、成形材料は、溶融時の
粘度が低く、流動性が高くなることが要求され、選定可
能な材料が限定されている。また一方では、金型温調、
成形材料温調、射出圧・射出速度制御、金型調整等の各
種成形条件の厳しい管理が要求されることになる。
【0088】そこで、オリフィスプレートを上部と下部
とに分割して、オリフィスプレート上部は第一基体の成
形、オリフィスプレートは第二基体の成形というよう
に、2工程に分けて成形すると、成形一工程における薄
肉部分の領域が小さくなり、オリフィスプレート全体が
一回で成形される場合に比べて成形性が格段に向上し、
さらには成形精度も向上することになる。
【0089】特に、オリフィスプレートを上部と下部と
に分割し、第一基体が微細な液流路壁と薄肉のオリフィ
スプレート下部とを含むようにすることで、薄肉部分の
領域が小さくなり、第一基体の成形が容易になる。ま
た、第一基体は単純で均一な肉厚の形状となるため、転
写性、成形精度、液流路壁下面の平面精度等を向上させ
ることが可能である。そして、両者が多色成形によって
結合されると、完成される天板は、弾性率、線膨張率等
の性能面において改善が図られる。
【0090】第二基体がフィラーを含んだ材料によって
成形される場合、成形材料が第一基体の溝列の上方近傍
に流れて行くようにゲートが配置されていれば、フィラ
ーの繊維が溝列の配列方向に配向されることになり、成
形材料が有する剛性や熱膨張率等の特性が溝列の配列方
向で最大限に発揮されるようになる。
【0091】また、第一基体においては、天板部材全体
を一回の工程で成形する場合と比べて、成形材料の充填
される領域が狭くなるとともに、ゲート位置から液流路
壁までの距離が短縮されて、成形材料は余計な迂回経路
を通過することなく液流路壁部に到達できるため、射出
工程時における成形材料の金型への充填は速やかに効率
よく行われる。そして、保圧工程の際には、保圧力が金
型内部のあらゆる方向に対して有効に作用するため、微
細部分である液流路壁の転写性が格段に向上することに
なる。したがって、今後、吐出口がさらに高密度化され
た場合においても、液流路壁部分の転写が従来よりも容
易に実現できるようになる。
【0092】また、第一基体におけるゲートは位置をオ
リフィスプレートの端面とすることで、ゲートから注入
された成形材料は吐出口周辺部分まで真っ直ぐに進むた
め、成形材料の圧力損失は非常に小さくなり、第一基体
を成形する際の金型への成形材料の充填が容易となる。
これによって、オリフィスプレートの表面から段差部分
が除去され、オリフィスプレート全体が薄肉となっても
オリフィスプレートの薄肉部と液流路壁の微細部分の転
写が実現できるようになる。
【0093】さらに、第二基体がフィラー等によって強
化された材料で成形されるとともに、オリフィスプレー
トの一部分が第二基体によって形成されれば、オリフィ
スプレートの強度を大きくすることができるようにな
る。
【0094】また、第一基体と第二基体との接合界面
に、リブ、蛇腹、ボス、座、矩形等の凹凸列を形成する
ことによって、第一基体と第二基体の接合面積が大きく
なり、両者の接合をより強固にすることが可能である。
【0095】また、第一基体と第二基体との接合面に凹
凸列が形成されて、第二基体に線膨張率の小さな樹脂が
使用されると、天板が温度変化の大きな環境下に置かれ
て、第一基体が体積変化を起こそうとしても、第二基体
が境界面の凹凸列によって、これを構造的に阻止するた
め、第一基体の体積変化を抑制することができる。
【0096】上述したように、第一基体は形状が単純化
され、効率のよいゲート配置ができるため、第一基体の
成形時の高い充填性と高精度な成形が可能となる。さら
に、オリフィスプレートに対して段差を設ける必要がな
くなり、クリーニング動作やキャッピング等が容易にで
きるようになる。一方、第二基体がフィラー等の充填さ
れた材料(樹脂、金属、セラミックス等)で成形される
と、高い剛性、低い熱膨張率、高い成形精度等が得られ
るようになる。すなわち、第一基体と第二基体とが二色
成形により一体化されることにより、従来では得られな
かった多機能で高精度な天板が完成されることになる。
【0097】
【発明の実施の形態】図1〜図5を用いて、本発明の一
実施例に係る液体噴射記録ヘッドについて説明する。
【0098】図1は、本発明の一実施例に係る液体噴射
記録ヘッドのチップ構成の一例を示す外観斜視図、図2
は、図1に示した液体噴射記録ヘッドの分解斜視図、図
3は、図1に示した天板を前面側から見た斜視図、図4
は、図1に示した天板を背面側から見た斜視図、図5
は、図1に示した天板の断面図である。
【0099】まず、液体噴射記録ヘッドの構成について
説明する。
【0100】ヒータボード1は、インクを吐出するため
のエネルギー発生体である電気熱変換体(吐出ヒータ)
1aと、吐出ヒータ1aへ電力を供給する配線とがシリ
コン成膜プロセスによりシリコン基板上に形成されて成
る。ヒータボード1に設けられた配線は、例えばワイヤ
ーボンディングにより配線基板2と電気的に接続され、
この配線基板2によって、ヒーターボード1とインクジ
ェット記録装置本体との電気的コンタクトが行われる。
配線基板2としては、ガラスエポキシ基板に銅やニッケ
ルにて配線パターンを形成したPWB基板や、フレキシ
ブルフィルム等に配線パターンを形成したTABフィル
ム等が用いられる。
【0101】ヒーターボード1及び配線基板2は、アル
ミニウム等によって形成される支持基板(以下ベースプ
レートと称す)3上に搭載される。ヒータボード1はベ
ースプレート3上にダイボンディングされて、また、配
線基板2はベースプレート3上に粘着剤等によって接着
されている。ベースプレート3は、吐出ヒータ1aの駆
動に伴って生じるヒータボード1の熱を放熱冷却するヒ
ートシンクとしても機能する。
【0102】ベースプレート3の、ヒーターボード1を
含む領域上には、インク流路を形成する天板5が接合さ
れている。天板5は、インクを被記録媒体へ吐出するた
めのインク吐出口6aが所望の数だけ形成されたオリフ
ィスプレート6と、天板5の下面に各インク吐出口6a
に対応した凹状の溝が形成されてインク吐出口6aと連
通するインク流路としてのノズル7と、天板5の下面に
凹状に形成されてノズル7へインクを供給するサブタン
クとしての役割をもつインク液室8と、不図示のインク
貯蔵タンクからインク液室8にインクを供給するための
インク供給口9とから構成されている。なお、天板5
は、後述するように二色成形によって一体に形成されて
いる。
【0103】オリフィスプレート6は、その表面がヒー
タボード1に対して傾斜しているが、図5に示すように
インク吐出口周辺部分6fで厚さが最も薄く、数十μm
の厚さであり、この最も薄い部分におけるオリフィスプ
レート表面に対応する裏面部分はオリフィスプレート表
面と平行に形成される。仮に、この部分の厚さが大きく
なると、レーザ加工による縮径穴形成の都合上、オリフ
ィスプレート表面側におけるインク吐出口6aの穴面積
が小さくなり、インク吐出量、インク吐出速度等が減少
するとともに、安定してインクを吐出させることが難し
くなる。また、レーザ加工時間が長く費やされること
と、加工精度の低下を招くことにもなるため、一般に
は、20μm〜70μmの非常に薄い厚みで形成され
る。
【0104】また、ノズル7は、ヒータボード1との密
着面である溝壁先端の厚さが数μmから十数μm、溝深
さが数十μmから数百μmであり、非常に微少な寸法で
形成される。
【0105】このように、オリフィスプレート6とノズ
ル7は非常に薄肉で微細な形状であることから、天板5
は、高速射出成形機により、極めて流動性のよい材料を
使用して成形されている。
【0106】なお、オリフィスプレート6の表面がヒー
タボード1に対して傾斜しているのは、本実施例におい
ても従来と同様にインク吐出口6aはレーザ加工により
形成されるが、そのときの加工特性によって、ヒータボ
ード1に対してインク吐出口6aが傾いて形成されるた
めである。すなわち、オリフィスプレート6の表面を、
インク吐出口6aの加工時のレーザ光の進行方向に対し
て垂直になるように傾斜させておくことによって、オリ
フィスプレート6の表面が記録紙に対して平行になるよ
うに記録ヘッドを配置し、インクが記録紙に垂直に吐出
されるようになる。
【0107】天板5は、ヒータボード1上に押えばね1
0によって密着されている。押えばね10は、吐出ヒー
タ1aとノズル7との相対位置が完全に合致するように
アライメント調整された後に、ノズル7上方の受部5a
から天板5を押圧する。すなわち、押さえばね10の両
端下部に設けた爪10aを、ベースプレート3に設けた
穴部3aに挿入させ、ベースプレート3の下面に係止す
る。これにより、押さえばね10の押圧部10b(図2
参照)は、天板5の受部5aを押圧して、ノズル下面7
aの接触部に機械的圧力を加えることができる。この押
さえばね10の押圧によってノズル7の壁はヒータボー
ド1に対して完全に密着し、これによって各ノズル7間
は完全に仕切られることになる。
【0108】また、オリフィスプレート6はヒータボー
ド1の前端面1bに前垂れのように配設されていること
から、ヒータボード1と天板5とのインク吐出方向と平
行な方向(図2の矢印E方向)の位置決めは、ヒータボ
ード1の前端面1bをオリフィスプレート6の背面6b
に突き当てるようにして行なう。
【0109】このように、ヒータボード1と天板5は押
さえばね10の押圧によって圧接されていることから各
ノズル7間は完全に仕切られるが、オリフィスプレート
6とヒータボード1の前端面1bとの境界面は押さえば
ね10の押圧力が十分に作用しないことから、密着が不
十分となる。
【0110】さらにまた、インク液室外壁下面8cとノ
ズル下面7aには段差が設けられているため、ノズル7
とヒータボード1が密着した時、インク液室外壁下面8
cとヒータボード1の間には数μmから十数μmの隙間
ができる。
【0111】そこで、このような密着不十分の個所や隙
間部分からインクが漏れないようにするために、ヒータ
ボード1と天板5との接合界面全般にシリコーン等の封
止剤を注入して隙間を埋めている。具体的には、オリフ
ィスプレート6の背面6bとヒータボード1の前端面1
bとの隙間、オリフィスプレート6の背面6bとベース
プレート3の前端面3bとの隙間、天板5とヒータボー
ド1やベースプレート3の接合部分等が挙げられ、これ
らの各隙間部分や接合部の封止は、各々の部材間の隙間
と、封止剤との間に発生する毛管力によって、封止剤を
所定範囲内に流し、その範囲以外には流れないように部
材形状の工夫や封止剤の粘度管理によって封止を行なっ
ている。
【0112】ただし、オリフィスプレート6の背面6b
とヒータボード1の前端面1bとの隙間は、微少である
ため、封止剤の注入が最も難しい部分であり、封止剤が
所望の範囲内に充填されていることを視覚的に確認する
必要がある。オリフィスプレート6が透明であれば、オ
リフィスプレート6の前面より封止剤の充填具合が確認
できるので、オリフィスプレート6部は透明であること
が好ましい。
【0113】次に図3〜図5に基づいて、二色成形によ
って形成された天板5の構成を説明する。同図のように
オリフィスプレート6は、ノズル7の上方近傍に位置す
る境界面6eを境にして、オリフィスプレート下部6c
とオリフィスプレート上部6dに分割形成されている。
【0114】そして、天板5は、オリフィスプレート下
部6c及びノズル7から成る第一基体21と、オリフィ
スプレート上部6d、インク液室8、インク供給口9、
受部5a、及び天板5の外周部から成る第二基体22と
で構成される。第一基体21と第二基体22とは、二色
成形によって接合形成される。すなわち、分割成形され
るオリフィスプレート6の上下部は、二色成形によっ
て、天板5として一体化されることになる。
【0115】なお、図3および図4にはそれぞれ、第一
基体21を成形する際の樹脂の注入経路となるゲート3
1、および第二基体22を形成する際の樹脂の注入経路
となるゲート32が示されている。第一基体21を成形
するためのゲート31は、オリフィスプレート下部6c
の下面であるオリフィスプレート下側面6gに配置され
る。
【0116】第一基体21は、オリフィスプレート下部
6cとノズル7の微細部からなり、天板5において、最
も成形精度が要求され、成形の難易度が非常に高くなる
部分であり、例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサ
ルフォン等のような流動性良好で微細成形に適している
材料によって成形される。この材料は透明性が有るこ
と、レーザ加工性に優れる、等オリフィスプレート6の
形成やインク吐出口6aを加工形成する上において必要
な条件を兼ね備えている。さらには、充填物を含まない
ピュアな材料が使用されれば、フィラーを含有する材料
と異なり、金型の摩耗度を小さくすることができ、高価
なノズル転写用型駒の耐久性を悪化させるようなことは
ない。
【0117】オリフィスプレート下部6cの吐出口周辺
部分6fは、肉厚が数十μmで第一基体21において最
も薄くなる部分であり、この領域が広くなると、樹脂の
充填製が悪化することになる。このため、オリフィスプ
レート下部6cの肉厚は、吐出口周辺部分6fから下方
に向かって徐々に厚くなるように滑らかな勾配がつけら
れている。これは、変則的な肉厚変動を避けることによ
って、成形精度の向上を図ること、流動する樹脂の圧力
損失を小さくして充填性の向上を図ること、オリフィス
プレート6の強度を向上させること等の狙いがある。さ
らに、樹脂がオリフィスプレート下部6c側から注入さ
れるような構成の場合、このような形状によって樹脂は
せん断発熱を活発に起こすようになり、高い流動性が維
持されるようになる。
【0118】また、ゲート31は、ノズル7の配列方向
に長く延びたファンゲートであり、樹脂はゲート31か
らノズル7まで迂回して流れることなく真っ直ぐに流れ
て行き、のノズル7の配列方向においては、むらがなく
安定した均一な樹脂の流れが維持される。なお、ここで
はゲート31をファンゲートとして示したが、これに限
らずフィルムゲートであってもよい。
【0119】ノズル7は、先端の幅が数μm〜数十μm
であり、最近では高密度化に伴って数μm程度のものも
ある。また、溝深さ(ノズル7の高さ)は20μm〜7
0μm程度であり、ノズル7の配列ピッチは、例えば6
00dpiの場合で、42.3μmと、非常に微細な形
状となっている。当然のことながら、天板成形において
は、このノズル7を完全に転写させることが最も難しく
なる。
【0120】オリフィスプレート下側面6gに配設され
るゲート31から注入された樹脂は、オリフィスプレー
ト下部6cをオリフィスプレート下側面6gから真っ直
ぐに上昇して吐出口周辺部6fより曲がり、ノズル7の
長手方向に沿って背面に向かって流れて行く。このよう
な樹脂の流れは、溝先端部分へ樹脂を流す方向とは直交
していることから、射出工程の段階において、ノズル7
の溝先端部分まで樹脂を完全に流すことは困難である。
ちなみに、ノズル7の真上にゲートを配設すれば、射出
工程段階でノズル7の部分に樹脂を充填させることは可
能となるが、樹脂の注入圧力が溝転写用の型駒へ直接加
わるため、型駒を損傷させることになるおそれがあり、
あまり得策ではない。
【0121】前述したように、射出工程の際の充填が不
十分であると、保圧工程では、保圧力がその未充填部分
に偏って作用し、保圧力が金型内部全域に向けて有効に
作用しなくなるため、微細部分の先端まで樹脂を転写さ
せることが非常に難しくなる。
【0122】つまり、保圧工程においてノズル7の先端
部まで樹脂を確実に充填させるためには、射出工程の段
階で、せん断発熱や温調等によって樹脂の粘度を小さく
し、できるだけ高速に樹脂を流し、この段階ででき得る
樹脂の充填を速やかに完了させることが重要である。
【0123】したがって、本実施例のような構成にすれ
ば、ゲート31からノズル7までの距離が短縮されて、
樹脂がノズル7の周辺まで速く安定して流れるようにな
ることから、保圧工程時の保圧力がノズル7の周辺部に
対して効率よく作用する。その結果、ノズル7の先端部
分への転写が確実にできるようになり、今後のノズル7
の更なる高密度化に対しても十分に対応できるようにな
る。
【0124】このように、本実施例では、第一基体21
の形状の単純化と、オリフィスプレート下側面6cに配
設されるゲート31の効果により、樹脂の流れが安定し
て、微細部分の転写が容易にできるようになることか
ら、従来のようにオリフィスプレート表面に段差を形成
する必要がなくなる。ただし、ノズル7の配列方向にお
けるオリフィスプレート6の両側部分6j(背面にイン
ク液室8が存在しない部分)の背面の肉厚を増やすこと
によって強度を向上させる必要がある。
【0125】さらに、オリフィスプレート6の表面は、
下端から上端まで一様な平面または一様な曲面となり、
滑らかな面が形成されることから、ブレードはオリフィ
スプレート6の表面上を抵抗なくスムーズに摺擦してオ
リフィスプレート6の表面をクリーニングできるように
なる。その結果、クリーニング動作が効率よく行えるよ
うになり、ブレードの耐久性も向上する。
【0126】また、オリフィスプレート6の表面には段
差がないことから、記録紙とインク吐出口6aとの距離
を小さくすることができ、インクの着弾精度を向上させ
ることが可能となる。
【0127】また、第一基体21は、前記の通り、ピュ
アで透明な材料(ポリサルフォン、ポリエーテルサルフ
ォン等)によって成形されるため、天板5とヒータボー
ド1との密着工程後に行なわれる封止工程で、各封止部
分における封止具合の観察が容易にできるようになる。
【0128】このように、第一基体21は、肉厚の変動
が小さく、形状は単純であることから、成形収縮時の内
部応力や離型後の残留応力が小さくなり、成形精度の向
上が図られる。一方、第二基体22においても、薄肉部
や微細形状部がないため、成形精度の向上を図ることが
容易となる。
【0129】すなわち、一色の成形で天板5を形成する
よりもノズル下面7aの平面精度が向上するので、ノズ
ル下面7aがヒータボード1に圧接される際に発生する
内部歪みが小さくなり、インクの吐出精度を向上させる
ことができる。
【0130】また、極めて薄肉な部分であって樹脂の充
填が非常に難しいとされるオリフィスプレート6が、2
分割に形成されて第一基体21と第二基体22の2工程
によって成形されるため、従来のようにオリフィスプレ
ートが一回で成形される場合に比べて、ひとつの成形工
程においては薄肉部分の領域が小さくなり、樹脂充填の
難易度が軽減され、生産性が格段に向上し、さらには成
形精度も向上することになる。
【0131】このように、天板5を第一基体21と第二
基体22に分割して、両者が二色成形で接合されるよう
な構成にすることは、天板5の成形精度を向上させるた
めに非常に有効な手段となる。そして、両者が全く同一
の材料であっても多色成形によって分割成形すれば、個
々の基体が高精度に成形されて、完成される天板5の成
形精度は格段に向上する。さらに、両者は成形時に接合
されるため、組立、接着等による接合工程を必要としな
いことから、生産性においても優れている。
【0132】一方、第二基体22は、第一基体21のよ
うな転写性精度や寸法精度を必要としない。また、第二
基体22の外周部は天板5の筐体の役割を担うことか
ら、この部分の機械的性質が天板全体の性能に与える影
響は大きい。したがって、これらの点から第二基体22
は物性を重視して成形材料を選択すれば良いことにな
る。
【0133】そこで、第二基体22がフィラーを含有し
た樹脂で成形されれば、第二基体22およびノズル7の
周辺部の弾性率は大きくなり、これに伴って、天板5全
体の剛性が向上することになる。
【0134】また、オリフィスプレート上部6dの剛性
も向上することから、天板5とヒータボード1とを密着
させる際にオリフィスプレート6が反りかえることを軽
減させることができる。すなわち、従来の構成では、ノ
ズル下面7aの反りを矯正して、ノズル7をヒータボー
ド1に密着させると、このノズル7に追従してオリフィ
スプレート6が反り、オリフィスプレート6に形成され
ているインク吐出口6aが、その相対方向や相対位置を
変動させてしまうおそれがあったが、オリフィスプレー
ト6の剛性が向上することによってこのような課題を克
服できるようになる。
【0135】そして、第一基体21の成形精度の向上と
第二基体22の剛性の向上との組み合わせによって、ノ
ズル下面7aの平面性が向上し、天板5やオリフィスプ
レート6の内部歪みが著しく軽減される。これによっ
て、インクの着弾精度が優れて、安定したインク吐出が
できる液体噴射記録ヘッドを製作することができるよう
になる。
【0136】また、第二基体22の金型製作においては
高価となる型駒が存在しないため、金型の耐久性は多少
軽視してもよく、第二基体22に使用される材料に充填
されるフィラーは様々なものが選定できるようになる。
したがって、第二基体22には、弾性率が最適となるよ
うに材料選定を行なえば良く、これによって天板5の剛
性の最適化を図ることが可能となる。
【0137】さらに、マグネシウム合金、SUS、鉄、
鋼等の材料を使ったメタルインジェクションやセラミッ
クスを使ったセラミックスインジェクション等によっ
て、第二基体22を成形すれば、天板5は樹脂成形では
得られないような剛性を得ることができるようになる。
【0138】また、ノズル7は前述したように、成形、
封止、レーザ加工等の理由から採用できる材料が限定さ
れてしまい、第一基体21における低線膨張率化には限
度があった。そこで、第二基体22が熱膨張に強い材料
によって成形されれば、前述した剛性の件と同様に、第
二基体22が第一基体21の熱膨張の弱点を構造的に補
うようにすることができるようになる。
【0139】また、図5に示すように、オリフィスプレ
ート6の境界面6eは、ノズル7からインク吐出口6a
まで連なったインク通路の上方近傍に設けられているこ
とから、第二基体22が低熱膨張材料によって成形され
ると、環境変動時にインク通路がその配列方向に熱膨張
を起こそうとしても、第二基体22がそれを阻止するよ
うに作用する。このように、低熱膨張材料の第二基体2
2が、ノズル7からインク吐出口6aまで連なるインク
通路全域部の上方近傍に配設されることにより、ノズル
7とインク吐出口6aが個別に変形を起こしたり、ノズ
ル7とインク吐出口6aの相対向きが変わることが無い
ようにしている。
【0140】高分子材料の線膨張係数を小さくするに
は、フィラーを含有する方法が最も効果的であり、一般
に、ベースレジンの線膨張係数をより小さくするために
は、繊維状のフィラーを混ぜることが有効である。ただ
し、繊維状フィラーを混ぜると、その材料には線膨張係
数の異方性が生じることになる。
【0141】つまり、樹脂の流れ方向とそれに対する直
角方向の間でフィラーの配向が異なることから、樹脂の
流れ方向における線膨張係数は小さくなるものの、樹脂
の流れと直角な方向での線膨張係数はそれよりも大きく
なる傾向がある。したがって、第二基体22を成形する
ためのゲート32は、図4に示すように、ノズル7の側
方に配設して、樹脂がノズル7の配列方向に流れるよう
にすれば、樹脂の配向制御が効率よく行われ、ノズル7
の配列方向の熱膨張を有効に抑え込むことができるよう
になる。また、第二基体22の弾性率、成形収縮率、そ
の他の機械的強度等が、ノズル7の配列方向において最
大限に発揮される。特に、ゲート32の配置は、ノズル
7の近傍であることが好ましい。これにより、樹脂の配
向制御が容易となり、また、配向制御が安定して行える
ようになる。これらは異方性が大きなベースレジンにお
いても同様なことがいえる。
【0142】また、第二基体22の成形樹脂にフィラー
を含ませて、第二基体22の線膨張係数を小さくする場
合、第二基体22のベースレジンと第一基体21の樹脂
との接合性が重要になる。第二基体22のベースレジン
と第一基体21の材料とは両者の接合相性の良いものが
選定されることが好ましく、例えば、第一基体21がポ
リサルフォンの場合、第二基体22はポリサルフォンを
ベースレジンとし、ポリサルフォンにカーボンフィラ
ー、ガラスフィラー等のフィラーを充填すると、両者の
ベースレジンが同一になるので、二色成形の際に、境界
面の接合は良好となる。この結果、第二基体22が第一
基体21の熱膨張を飛躍的に向上させることになる。
【0143】さらに、第二基体22がフィラーを含有し
た樹脂で成形されると、第二基体22自体の成形精度向
上にも効果がある。すなわち、フィラーが充填される
と、その樹脂の持つ成形収縮がフィラーによって緩和さ
れるために、必然的に、第二基体22の成形精度が向上
することになる。したがって、第一基体21および第二
基体22の双方ともに成形精度が向上し、両者の接合に
よって完成される天板5は自ずと高精度な成形品とな
る。
【0144】また、第一基体21と第二基体22との接
合界面に、リブ、蛇腹、ボス、座、矩形等の凹凸列を形
成し、第一基体21の凸部を第二基体22の凹部に侵入
させるとともに、第二基体22の凸部を第一基体21の
凹部に侵入させて第一基体21と第二基体22とを互い
に接合させることで、第一基体21と第二基体22との
接合面積が大きくなり、両者の接合をより強固にするこ
とが可能となる。また、このような凹凸列を形成した場
合、第二基体22に線膨張率の小さな樹脂が使用される
と、天板5が温度変化の大きい環境下に置かれ、第一基
体21が体積変化を起こそうとしても、第二基体22が
境界面の凹凸列によって、これを構造的に阻止するた
め、第一基体21の体積変化を抑制することができる。
【0145】さらに、第一基体21と第二基体22との
剥離方向にアンダーカットとなるように、上記凹凸列が
形成されれば、第一基体21と第二基体22とが異種材
料で成形されたり、接合強度が小さいような場合であっ
ても、両者を一体化させることができ、第二基体22が
天板5の弱点(剛性、熱膨張等)を補えるようになる。
また、凹凸列の配列を、ノズル7の配列方向と同一方向
に配設すれば、インク吐出口6aから液流路までのイン
ク通路と吐出ヒータ1aとの相対位置ずれを小さくする
ことができるようになる。
【0146】以上が本発明の実施例1の構成に適応され
る天板5の一例であるが、本発明は天板の形態や形状に
関わらず、あらゆる天板において実施可能であり、同様
の効果が期待できる。
【0147】例えば、本実施例では、インク供給口9は
インク吐出方向に対して直行する方向に配設されている
が、インク供給口9がインク吐出方向と同一方向に配設
されるような天板構造であっても同様な効果が得られ
る。
【0148】また、オリフィスプレート6の表面層をオ
リフィスプレート本体から分離させて、オリフィスプレ
ート表面層は、撥水性の良い材料を使用して成形すると
ともに、第一基体21、第二基体22、オリフィスプレ
ート表面層を三色成形によって結合して天板5を完成さ
せるような構成とすることにより、従来、二次工程の際
に行なわれていたオリフィスプレート表面の撥水処理
が、成形時に実施できるため、天板5の製作工程が簡略
化できるようになる。
【0149】また、天板5の剛性を上げる手段として
は、弾性率の大きな材料を使用する方法に限られるもの
ではなく、天板形状を工夫して、構造的に剛性を上げる
方法が有り、材料と構造の双方を展開して、天板5の剛
性を上げるようにしても構わない。
【0150】また、本実施例では、オリフィスプレート
6を2分割構成としたが、当然のことながら、図6の断
面図に示すように、オリフィスプレート6の全域が第一
基体21に含まれるような構成にしてもよいし、オリフ
ィスプレート6が3分割以上に形成されるような構成に
しても構わない。オリフィスプレート全域が第一基体2
1として構成されれば、オリフィスプレート6が分割形
成される場合と異なり、オリフィスプレート6の表面が
非常に滑らかな面で成形されるようになる。
【0151】第一基体21を構成する部分はオリフィス
プレート6とノズル7に限定されるものではなく、イン
ク液室8を上下に2分割して、その下部を第一基体に含
めたり、インクに接触する部分がすべて第一基体に含ま
れるような構成にしてもよい。
【0152】さらに、オリフィスプレート6とノズル7
とを分割して、多色成形するような構成にしてもよい。
【0153】また、第一基体21の成形用のゲート31
の位置は、オリフィスプレート下側面6gに限られるも
のではなく、オリフィスプレート6のノズル7の配列方
向における一端面や両端面に配設してもよい。ゲートが
オリフィスプレートの端面に配設されると、樹脂がノズ
ルの側方部から曲がることなく真っ直ぐに注入されるの
で、圧力損失がより小さくなり、吐出口周辺部分6fへ
すばやく樹脂を流すことができるようになる。その上、
ゲート幅を小さくすることができるので、ゲート切断を
容易に行えるようになり、生産性が向上する。オリフィ
スプレート全域が第一基体21に含まれるような構成の
場合には、オリフィスプレート上側面6hにゲートを配
設してもよい。
【0154】さらにまた、上述した例では、オリフィス
プレート上側面6hは天板5の受部5aよりも上方に位
置しているが、図7に示すようにオリフィスプレート上
側面6hと受部5aとを同一平面上に形成したり、オリ
フィスプレート上側面6hを受部5aよりも低い位置に
形成してもよい。これによって、押えばね10の押圧部
10bの作用点をよりオリフィスプレート6の表面に近
い位置に設定することができる。その結果、ノズル7
の、インク吐出口6aにより近い領域を加圧することが
できるようになり、インク吐出口6aの近傍の密着の確
実性が増し、密着の安定化を図ることができる。
【0155】なお、二色成形における一次成形は第一基
体21と第二基体22のどちらでも構わない。
【0156】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
オリフィスプレートの表面を一様な平面または曲面で形
成し、天板部材を、オリフィスプレートの吐出口の周辺
部を含む部分及び溝を含む第一基体とその他の部分から
なる第二基体とに分割し、両者を二色成形によって一体
化した構成とすることで、第一基体は単純形状となるた
め、成形時の転写性、成形精度、基板部材との接合面の
平面精度等を向上させることができる。そして、第一基
体の成形時に金型に注入される材料の流れや配向が安定
し、流動中に余分な圧力損失がなくなるため、高い成形
精度が要求されるインク流路の転写性、成形精度を格段
に向上させることができる。また、様々な樹脂、セラミ
ックス、金属、フィラー等を組み合わせて多色成形する
ことにより、一色の成形では実現できなかった高精度で
多機能な天板を得ることができる。
【0157】さらに、オリフィスプレートの表面が一様
な平面または曲面で形成されるので、オリフィスプレー
トの表面のワイピングを効果的に行えるようになるとと
もに、被記録媒体との距離を小さくすることが可能とな
るので、吐出されるインクの着弾精度を向上させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る液体噴射記録ヘッドの
チップ構成の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した液体噴射記録ヘッドの分解斜視図
である。
【図3】図1に示した天板を前面側から見た斜視図であ
る。
【図4】図1に示した天板を背面側から見た斜視図であ
る。
【図5】図1に示した天板の断面図である。
【図6】本発明の一実施例に係る液体噴射ヘッドの変形
例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係る液体噴射記録ヘッドの
他の変形例を示す断面図である。
【図8】従来の液体噴射記録ヘッドに用いられる天板を
成形用のゲートとともに示す斜視図である。
【図9】図8に示した天板における、レーザ光を利用し
た吐出口形成を説明するための断面図である。
【図10】従来の液体噴射記録ヘッドの該略図である。
【図11】図13に示した液体噴射記録ヘッドの、天板
とヒータボードの接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ヒータボード 3 ベースプレート 5 天板 5a 受部 6 オリフィスプレート 6a 吐出口 6b 背面 6c オリフィスプレート下部 6d オリフィスプレート上部 6e 境界面 6f 吐出口周辺部分 6g オリフィスプレート下側面 6h オリフィスプレート上側面 6j 両側部分 7 ノズル 7a ノズル下面 8 インク液室 8c インク液室外壁下面 9 インク供給口 10 押さえばね 10b 押圧部 21 第一基体 22 第二基体 31,32 ゲート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長沼 敬三 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF33 AF43 AF93 AG03 AG12 AG46 AP02 AP11 AP12 AP13 AP23 AP26 AP46 AP72 AQ03 AQ06 AQ10 BA05 BA13

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクに吐出エネルギーを与える吐出エ
    ネルギー発生素子が複数のインク流路に対応して設けら
    れた基板部材と、 前記複数のインク流路に対応する複数の溝と、 インクが吐出される吐出口が前記各溝の一端にそれぞれ
    連通して設けられたオリフィスプレートと、 前記各溝にインクを供給するために前記各溝の他端で前
    記各溝と連通するインク液室と、 前記インク液室にインクを供給するインク供給口と、 から構成され、前記溝と前記オリフィスプレートと前記
    インク液室と前記インク供給口とが一体的に形成された
    天板部材と前記基板部材とを接合させることによって複
    数のインク吐出経路が形成される液体噴射記録ヘッドに
    おいて、 前記オリフィスプレートは、表面が一様な平面または一
    様な曲面で形成され、 前記天板部材は、前記オリフィスプレートの少なくとも
    前記吐出口の周辺部を含む部分及び前記溝を含む第一基
    体と、前記第一基体となる部分を除く部分からなる第二
    基体とによって構成され、前記第一基体と前記第二基体
    とが二色成形によって接合して一体形成されることを特
    徴とする液体噴射記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記オリフィスプレートの表面が前記基
    板部材に対して傾斜している請求項1に記載の液体噴射
    記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記第一基体を成形するためのゲート位
    置を前記オリフィスプレートの下側面とした請求項1ま
    たは2に記載の液体噴射記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記ゲートは、ファンゲートまたはフィ
    ルムゲートである請求項3に記載の液体噴射記録ヘッ
    ド。
  5. 【請求項5】 前記オリフィスプレートは、前記吐出口
    の周辺部では表面と裏面とが平行に形成され、前記オリ
    フィスプレートの厚さは、前記吐出口の周辺部から下方
    に向かって徐々に厚くなるように形成されている請求項
    1ないし4のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 前記第一基体を成形するためのゲート位
    置を、前記オリフィスプレートの、前記吐出口の配列方
    向に対する端面とした請求項1または2に記載の液体噴
    射ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記第二基体は、フィラーが充填された
    複合材料によって成形される請求項1ないし6のいずれ
    か1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記第二基体は、前記第一基体よりも線
    膨張係数が小さい請求項1ないし7のいずれか1項に記
    載の液体噴射記録ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記第二基体は、前記第一基体よりも弾
    性率が大きい請求項1ないし8のいずれか1項に記載の
    液体噴射ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記第二基体を成形するためのゲート
    位置を、前記第二基体を成形する際に成形材料が前記溝
    の配列方向に流れるように配置した請求項1ないし9の
    いずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記第二基体を成形するためのゲート
    位置を、前記溝の列の端部近傍とした請求項1ないし1
    0のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記第二基体を構成する材料のベース
    レジンは、前記第一基体を構成する材料のベースレジン
    と同一材料である請求項1ないし11のいずれか1項に
    記載の液体噴射記録ヘッド。
  13. 【請求項13】 前記第一基体及び前記第二基体の境界
    面の一部には凹凸列が形成され、前記第一基体の凸部が
    前記第二基体の凹部に侵入し、かつ、前記第二基体の凸
    部が前記第一基体の凹部に侵入している請求項1ないし
    12のいずれか1項に記載の液体噴射記録ヘッド。
JP20057498A 1998-06-19 1998-07-15 液体噴射記録ヘッド Pending JP2000025230A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20057498A JP2000025230A (ja) 1998-07-15 1998-07-15 液体噴射記録ヘッド
US09/334,680 US6382777B1 (en) 1998-06-19 1999-06-17 Liquid jet recording head

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20057498A JP2000025230A (ja) 1998-07-15 1998-07-15 液体噴射記録ヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000025230A true JP2000025230A (ja) 2000-01-25

Family

ID=16426608

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP20057498A Pending JP2000025230A (ja) 1998-06-19 1998-07-15 液体噴射記録ヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000025230A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6257703B1 (en) Ink jet recording head
US5751323A (en) Adhesiveless printhead attachment for ink-jet pen
US5933163A (en) Ink jet recording apparatus
JP3592172B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法、該製法によって製造されたインクジェット記録ヘッド及び該インクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置
US5686949A (en) Compliant headland design for thermal ink-jet pen
US6808252B2 (en) Ink jet recording head and manufacturing method therefor
US5896153A (en) Leak resistant two-material frame for ink-jet print cartridge
JP2001001520A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2003080713A (ja) 液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジおよび液体吐出ヘッドの製造方法
US6382777B1 (en) Liquid jet recording head
JP4282244B2 (ja) インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
JP2007055184A (ja) インクジェット記録ヘッド
JP2000025230A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP3619114B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド、液体噴射記録装置、および液体噴射記録ヘッドの製造方法
JP2007301803A (ja) 液体吐出ヘッド、および、液体吐出装置
JP2002331668A (ja) 液体吐出ヘッド
JP2000218804A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2002321374A (ja) 液体吐出ヘッド
JP2000006426A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2001001521A (ja) 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法
JP2002331670A (ja) 液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP2000334957A (ja) 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法
JP3231196B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法、インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP3126590B2 (ja) 液体噴射ヘッド、該液体噴射ヘッドを有するヘッドカートリッジ、液体噴射装置および液体噴射ヘッドの製造方法
JP2000006427A (ja) 液体噴射記録ヘッド