JP2000021309A - 画像形成装置の製造方法 - Google Patents

画像形成装置の製造方法

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JP2000021309A
JP2000021309A JP18498398A JP18498398A JP2000021309A JP 2000021309 A JP2000021309 A JP 2000021309A JP 18498398 A JP18498398 A JP 18498398A JP 18498398 A JP18498398 A JP 18498398A JP 2000021309 A JP2000021309 A JP 2000021309A
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Hiromitsu Takase
博光 高瀬
Hirotsugu Takagi
博嗣 高木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 画像形成装置を組み立てる工程において、ス
ペーサ帯電防止膜の表面から100Å程度までの深さの
部分が画像形成装置を組み立てる工程の雰囲気の影響を
受けにくい画像形成装置の製造方法を提供する。 【解決手段】 電子放出素子および電子放出素子を駆動
するための配線を形成した基板と、電子放出素子から放
出された電子により画像が形成される画像形成部材を形
成した基板とをスペーサを介して対向させた構造を有す
る画像形成装置の製造方法において、スペーサ基板表面
に帯電防止膜を被覆する工程に連続して、帯電防止膜表
面に酸化防止犠牲層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は画像形成装置の製造
方法、特に、スペーサ表面の帯電防止膜の酸化防止に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、電子放出素子として熱陰極素
子と冷陰極素子の2種類が知られている。このうち冷陰
極素子では、たとえば表面伝導型放出素子や、電界放出
型素子(以下FE型と記す)や、金属/絶縁層/金属型
放出素子(以下MIM型と記す)、などが知られてい
る。
【0003】表面伝導型放出素子としては、たとえば、
M.I.Elinson,Radio Eng.Electron Phys.,10,1290,(196
5)や、後述する他の例が知られている。
【0004】表面伝導型放出素子は、基板上に形成され
た小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより
電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面
伝導型放出素子としては、前記エリンソン等によるSn
2 薄膜を用いたものの他に、Au薄膜によるもの[G.D
ittmer:“Thin Solid Films"9,317(1972)]や、In2 O3 /S
nO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IE
EE Trans.ED Conf.",519(1975)]や、カーボン薄膜によ
るもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1号、22
(1983)]等が報告されている。
【0005】これらの表面伝導型放出素子の素子構成の
典型的な例として、図17に前述のM.Hartwell らによ
る素子の平面図を示す。同図において、1は基板、2は
スパッタで形成された金属酸化物よりなる導電性薄膜で
ある。導電性薄膜2は図示のようにH字形の平面形状に
形成されている。該導電性薄膜2に後述の通電フォーミ
ングと呼ばれる通電処理を施すことにより、電子放出部
3が形成される。図中の間隔Lは、0.5〜1[m
m],Wは、0.1[mm]に設定されている。尚、図
示の便宜から、電子放出部3は導電性薄膜2の中央に矩
形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際
の電子放出部の位置や形状を忠実に実現しているわけで
はない。
【0006】M.Hartwellらによる素子をはじめとして上
述の表面伝導型放出素子においては、電子放出を行う前
に導電性薄膜2に通電フォーミングと呼ばれる通電処理
を施すことにより電子放出部3を形成するのが一般的で
あった。すなわち、通電フォーミングとは、前記導電性
薄膜2の両端に一定の直流電圧、もしくは、例えば1V
/分程度の非常にゆっくりとしたレートで昇圧する直流
電圧を印加して通電し、導電性薄膜2を局所的に破壊も
しくは変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態
の電子放出部3を形成することである。尚、局所的に破
壊もしくは変形もしくは変質した導電性薄膜2の一部に
は、亀裂が発生する。前記通電フォーミング後に導電性
薄膜2に適宜の電圧を印加した場合には、前記亀裂付近
において電子放出が行われる。
【0007】また、FE型の例は、たとえば、W.P.Dyke
&W.W.Dolan,“Field emission",Advance in Electron P
hysics,8,89(1956)や、あるいは、C.A.Spindt,“Physic
al properties of thin-film field emission cathodes
with molybdenium cones",J.Appl.Phys.,47,5248(197
6)などが知られている。
【0008】FE型の素子構成の典型的な例として、図
18に前述のC.A.Spindtらによる素子の断面図を示す。
同図において、4は基板で、5は導電材料よりなるエミ
ッタ配線、6はエミッタコーン、7は絶縁層、8はゲー
ト電極である。本素子は、エミッタコーン6とゲート電
極8の間に適宜の電圧を印加することにより、エミッタ
コーン6の先端部より電界放出を起こさせるものであ
る。
【0009】また、FE型の他の素子構成として、図1
8のような積層構造ではなく、基板上に基板平面とほぼ
平行にエミッタとゲート電極を配置した例もある。
【0010】また、MIM型の例としては、たとえば、
C.A.Mead,“Operation of tunnel-emission Devices,J.
Appl.Phys.,32,646(1961)などが知られている。MIM
型の素子構成の典型的な例を図19に示す。同図は断面
図であり、図において、9は基板で、10は金属よりな
る下電極、11は厚さ10nm程度の薄い絶縁層、12
は厚さ8nm〜30nm程度の金属よりなる上電極であ
る。MIM型においては、上電極12と下電極10の間
に適宜の電圧を印加することにより、上電極12の表面
より電子放出を起こさせるものである。
【0011】上述の冷陰極素子は、熱陰極素子と比較し
て低温で電子放出を得ることができるため、加熱用ヒー
ターを必要としない。したがって、熱陰極素子よりも構
造が単純であり、微細な素子を作製可能である。また、
基板上に多数の素子を高い密度で配置しても、基板の熱
溶融などの問題が発生しにくい。また、熱陰極素子がヒ
ーターの加熱により動作するため応答速度が遅いのとは
異なり、冷陰極素子の場合には応答速度が速いという利
点もある。
【0012】このため、冷陰極素子を応用するための研
究が盛んに行われてきている。たとえば、表面伝導型放
出素子は、冷陰極素子のなかでも特に構造が単純で製造
も容易であることから、大面積にわたり多数の素子を形
成できる利点がある。そこで、たとえば本出願人による
特開昭64−31332号公報において開示されるよう
に、多数の素子を配列して駆動するための方法が研究さ
れている。また、表面伝導型放出素子の応用について
は、たとえば、画像表示装置、画像記録装置などの画像
形成装置や、荷電ビーム源、等が研究されている。
【0013】特に、画像表示装置への応用としては、た
とえば本出願人による米国特許番号5,066,883
や特開平2−257551号公報や特開平4−2813
7号公報において開示されているように、表面伝導型放
出素子と電子ビームの照射により発光する蛍光体とを組
み合わせて用いた画像表示装置が研究されている。表面
伝導型放出素子と蛍光体とを組み合わせて用いた画像表
示装置は、従来の他の方式の画像表示装置よりも優れた
特性が期待されている。たとえば、近年普及してきた液
晶表示装置と比較しても、自発光型であるためバックラ
イトを必要としない点や、視野角が広い点が優れている
と言える。
【0014】また、FE型を多数個ならべて駆動する方
法は、たとえば本出願人による米国特許番号4,90
4,895に開示されている。また、FE型を画像表示
装置に応用した例として、たとえば、R.Meyerら
により報告された平板型表示装置が知られている[R.Mey
er:“Recent Development on Micro-tips Display at L
ETI",Tech.Digest of 4th Int.Vacuum Microelectronic
s Conf.,Nagahama,pp.6〜9(1991)]。
【0015】また、MIM型を多数個並べて画像表示装
置に応用した例は、たとえば本出願人による特開平3−
55738号公報に開示されている。
【0016】上記のような電子放出素子を用いた画像形
成装置のうちで、奥行きの薄い平面型表示装置は省スペ
ースかつ軽量であることから、ブラウン管型の表示装置
に置き換わるものとして注目されている。
【0017】電子放出素子の配列については種々のもの
が採用できる。一例としては電子放出素子をX方向、Y
方向に行列状に複数配列し、同じ行に配置された複数の
電子放出素子の電極の一方をX方向の配線に共通に接続
し、同じ序列に配置された複数の電子放出素子の電極の
他方をY方向の配線に共通に接続するマトリックス配置
が挙げられる。また、もう一つの例としては、電子放出
素子を梯子状に複数配列する梯子型配置が挙げられる。
図1は複数の電子放出素子がマトリックス配置された平
面型の画像表示装置をなす表示パネル部の一例を示す模
式図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り
欠いて示している。
【0018】図中、17はリアプレート、18は側壁、
19はフェースプレートであり、リアプレート17、側
壁18およびフェースプレート19により、表示パネル
の内部を真空に維持するための外囲器(気密容器)を形
成している。
【0019】リアプレート17には基板13が固定され
ているが、この基板13上には冷陰極素子14がN×M
個形成されている。(N,Mは2以上の正の整数であ
り、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。)
また、前記N×M個の冷陰極素子14は、図3に示すと
おり、M本の行方向配線15とN本の列方向配線16に
より配線されている。これら基板13、冷陰極素子1
4、行方向配線15および列方向配線16によって構成
される部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。また、少なく
とも行方向配線15と列方向配線16の交差する部分に
は、両配線間に絶縁層(不図示)が形成されており、電
気的な絶縁が保たれている。
【0020】フェースプレート19の下面には、蛍光体
からなる蛍光膜20が形成されており、赤(R)、緑
(G)、青(B)の3原色の蛍光体(不図示)が塗り分
けられている。また、蛍光膜20をなす上記各色蛍光体
の間には黒色体(不図示)が設けてあり、さらに蛍光膜
20のリアプレート17側の面には、Al等からなるメ
タルバック21が形成されている。
【0021】Dx1〜Dxm、Dy1〜Dyn及びHv
は、当該表示パネルと不図示の電気回路とを電気的に接
続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。
Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行方向配線15
と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビーム源の列方向配線
16と、Hvはメタルバック21と各々電気的に接続し
ている。
【0022】また、上記気密容器の内部は10-3Pa程
度の真空に保持されており、画像表示装置の表示面積が
大きくなるにしたがい、気密容器内部と外部の気圧差に
よるリアプレート17およびフェースプレート19の変
形あるいは破壊を防止する手段が必要となる。リアプレ
ート17およびフェースプレート19を厚くすることに
よる方法は、画像表示装置の重量を増加させるのみなら
ず、斜め方向から見たときに画像のゆがみや視差を生ず
る。これに対し、図1においては、比較的薄いガラス板
からなり大気圧を支えるための構造支持体(スペーサあ
るいはリブと呼ばれる)22が設けられている。このよ
うにして、マルチビーム電子源が形成された基板13と
蛍光膜20が形成されたフェースプレート19間は通常
サブミリ乃至数ミリに保たれ、前述したように気密容器
内部は高真空に保持されている。
【0023】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dy
nを通じて各冷陰極素子14に電圧を印加すると、各冷
陰極素子14から電子が放出される。それと同時にメタ
ルバック21に容器外端子Hvを通じて数100[V]
乃至数[kV]の高圧を印加して、上記放出された電子
を加速し、フェースプレート19の内面に衝突させる。
これにより、蛍光膜20をなす各色の蛍光体が励起され
て発光し、画像が表示される。
【0024】次に、電子放出素子を梯子型に配置した画
像形成装置について図15および図16を用いて説明す
る。図15は、梯子型配置の電子源の一例を示す模式図
である。図15において71は電子源基板、74は電子
放出素子、D1〜D10は電子放出素子74を接続する
ための共通配線である。電子放出素子74は電子源基板
71上にX方向に並列に複数個配置されており、これを
素子行と呼ぶ。この素子行が複数個配置されて電子源を
構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加
することで各素子行を独立に駆動させることができる。
各素子行間の共通配線D2〜D9は例えばD2とD3、
D4とD5、D6とD7、D8とD9とをそれぞれ同一
配線とすることもできる。図16は梯子型配置の電子源
を備えた画像形成装置におけるパネル構成の一例を示す
模式図である。図16において112はグリッド電極、
113は電子が通過するための空孔、114はD1、D
2、・・・Dmよりなる容器外端子である。115はグ
リッド電極112と接続されたG1、G2、・・・Gn
から成る容器外端子、71は各素子行間の共通配線を同
一配線とした電子源基板である。ここに示した画像形成
装置と、図1に示したマトリックス配置の画像形成装置
の大きな違いは電子源基板71とフェースプレート19
の間にグリッド電極112を備えているか否かである。
図16においてグリッド電極112は表面伝導型電子放
出素子から放出された電子ビームを変調するためのもの
であり、梯子型配置の素子行と直交して設けられたスト
ライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子
に対応して1個ずつ円形の空孔113が設けられてい
る。グリッドの形状や設置位置は図16に限定されるも
のではない。例えば、空孔としてメッシュ状に多数の通
過孔を設けることもでき、グリッドを表面伝導型電子放
出素子の周囲や近傍に設けることもできる。容器外端子
114およびグリッド容器外端子115は不図示の制御
回路と電気的に接続されている。本例の画像形成装置で
は、素子行を1列づつ順次駆動(走査)していくのと同
期してグリッド電極列に画像1ライン分の変調信号を同
時に印加する。これによって各電子ビームの蛍光体への
照射を制御し、画像を1ラインずつ表示することができ
る。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】以上説明した画像形成
装置の表示パネルにおいては、以下のような問題点があ
った。
【0026】第1に、スペーサ22が帯電してリアプレ
ートとフェースプレート間を飛翔する電子の軌道に大き
く影響を及ぼすことがあってはならないが、スペーサ2
2の近傍から放出された電子の一部がスペーサ22に当
たることにより、あるいは放出電子の作用でイオン化し
たイオンがスペーサに付着することにより、スペーサ帯
電をひきおこし、冷陰極素子14から放出された電子は
その軌道を曲げられ、蛍光体上の正規な位置とは異なる
場所に到達し、スペーサ近傍の画像がゆがんで表示され
る可能性がある。この問題点を解決するために、帯電面
に導電性を付与し微小電流が流れるようにして帯電を除
去する技術がある。この概念をスペーサに応用したもの
としては特開昭57−118355号公報に、絶縁性の
スペーサの表面を酸化スズで被覆する手法が開示されて
いる。また、特開平3−49135号公報にはPbO系
ガラス材で被覆する手法が開示されている。
【0027】第2に、冷陰極素子14からの放出電子を
加速するためにマルチビーム電子源とフェースプレート
19との間には数100V以上の高電圧(即ち1kV/
mm以上の高電界)が印加されるため、スペーサ22表
面での沿面放電が懸念される。特に、上記のようにスペ
ーサが帯電している場合は、放電が誘発される可能性が
ある。沿面放電耐圧の向上手段としては2次電子放出率
の小さい材料で被覆すると効果的であり、2次電子放出
率が小さい材料で被覆した例として酸化クロム(T.S.Su
darshan and J.D.Cross:IEEE Tran.EI-11,32(1976))、酸
化銅(J.D.Crossand T.S.Sudarshan:IEEE Tran.EI-9,146
(1974))が知られている。
【0028】しかしながら、上記の酸化物半導体材料を
マルチ電子源を有する画像形成装置のスペーサに適用し
た場合、以下の点で十分な性能が発揮されない場合があ
る。すなわち、酸化物半導体材料は固有抵抗値が低いた
め、きわめて薄くコーティングしない限りスペーサ表面
を流れる電流が大きくなりすぎる。抵抗が低いと高加速
電圧を使用する画像形成装置においてはスペーサ部の発
熱が問題となる。また、酸化物半導体は雰囲気ガスによ
り抵抗値が大きく変化するため非常に薄い薄膜状にした
場合には抵抗制御が困難であり、再現よくスペーサを製
造することができなかった。すなわち、スペーサあるい
はその表面層の材質として好ましい物性についての予測
はされていたが、マルチ電子源より放出した電子を3k
V以上の電圧により加速し、これにより蛍光体を発光さ
せる画像形成装置でのスペーサとして適する材料がなか
った。したがって、高電圧で蛍光体を発光させることに
より高輝度で歪みのない画像を形成する画像形成装置の
実現が困難であった。これに対して、窒化物半導体材料
をスペーサに適用することが考えられる。この場合には
酸化物半導体材料を適用する場合に比べて抵抗制御がし
やすく帯電防止特性も良好なものが得られると考えられ
るが、スペーサの表面から100Å程度までの深さの部
分の酸化を抑制することにより更なる特性の向上が期待
できる。当該深さの部分での酸化は画像形成装置を組み
立てる工程で発生していることが考えられる。
【0029】本発明の課題は、画像形成装置を組み立て
る工程において、スペーサ帯電防止膜の表面から100
Å程度までの深さの部分が画像形成装置を組み立てる工
程の雰囲気の影響を受けにくい画像形成装置の製造方法
を提供し、かつ、当該方法により高輝度まで歪みのない
画像を形成する画像形成装置を実現することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】本発明は、電子放出素子
および該電子放出素子を駆動するための配線を形成した
基板(リヤプレート)と、該電子放出素子から放出され
た電子により画像が形成される画像形成部材を形成した
基板(フェースプレート)とをスペーサを介して対向さ
せた構造を有する画像形成装置の製造方法において、該
スペーサ基板表面に帯電防止膜を被覆する工程に連続し
て、該帯電防止膜表面に、構成元素として少なくともカ
ーボンを含む非晶質な構造を有する酸化防止犠牲層を形
成する。
【0031】[作用]構成元素として少なくともカーボ
ンを含む非晶質な構造を有する酸化防止犠牲層は、大気
中で画像形成装置を組み立てる工程における熱処理によ
って酸化されて消失する。工程の条件による酸化防止犠
牲層の消失レートに基づいて適切な膜厚を設定すること
により工程終了時点で、酸化されていないスペーサ帯電
防止膜を露出せしめる。
【0032】
【発明の実施の形態】図3は、本発明画像表示装置の応
用例として表示パネルの斜視図であり、内部構造を示す
ためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0033】リアプレート17には、基板13が固定さ
れているが、該基板上には冷陰極素子14がN×M個形
成されている。(N,Mは2以上の正の整数であり、目
的とする表示画素数に応じて適宜設定される。たとえ
ば、高品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置に
おいては、N=3000,M=1000以上の数を設定
することが望ましい。)前記N×M個の冷陰極素子は、
M本の行方向配線15とN本の列方向配線16により単
純マトリクス配線されている。基板13、冷陰極素子1
4、行方向配線15及び列方向配線16を備える部分を
マルチ電子ビーム源と呼ぶ。
【0034】本実施形態の画像表示装置に用いるマルチ
電子ビーム源は、冷陰極素子を単純マトリクス配線した
電子源であれば、冷陰極素子の材料や形状あるいは製法
に制限はない。したがって、たとえば表面伝導型放出素
子やFE型、あるいはMIM型などの冷陰極素子を用い
ることができる。
【0035】図3において、17はリアプレート、18
は側壁、19はフェースプレートであり、17〜19に
より表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器
を形成している。気密容器を組み立てるにあたっては、
各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため
封着する必要があるが、たとえばフリットガラスを接合
部に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で、400〜
500℃で10分以上焼成することにより封着を達成し
た。気密容器内部を真空に排気する方法については後述
する。また、上記気密容器の内部は10-4Pa程度の真
空に保持されるので、大気圧や不意の衝撃などによる気
密容器の破壊を防止する目的で、耐大気圧構造体とし
て、スペーサ22が設けられている。
【0036】次に、本発明を適用した画像表示装置の表
示パネルの構成と製造法について、具体的な例を示して
説明する。図1はスペーサ22を中心とした表示装置断
面模式図である。それぞれの番号は図3に対応してい
る。14は冷陰極電子源、17はリアプレート、18は
側壁、19はフェースプレートであり、リアプレート1
7、側壁18、フェースプレート19により表示パネル
の内部を真空に維持するための気密容器を形成してい
る。
【0037】スペーサ22は外囲器内を真空にすること
により大気圧を受けて、外囲器が破損あるいは変形する
のを避けるために設けられる。スペーサ22の材質、形
状、配置、配置本数は外囲器の形状ならびに熱膨張係数
等、外囲器の受ける大気圧、熱等を考慮して決定され
る。スペーサの形状には、平板型、十字型、L字型、円
筒型等がある。図2はスペーサ22の断面模式図であ
る。スペーサ22の表面にはスペーサの帯電を防止する
ための帯電防止膜23aが形成されている。
【0038】絶縁性基材24は電子放出素子が形成され
たリアプレート17、蛍光体が形成されたフェースプレ
ート19とほぼ同一の熱膨張特性の材料であることが必
要である。あるいは、絶縁性基材24の弾性が高く、熱
変形を容易に吸収するものであってもよい。フェースプ
レート19およびリアプレート17にかかる大気圧を支
持する必要からガラス、セラミクス等機械的強度の高く
耐熱性の高い材料が適する。フェースプレート19、リ
アプレート17の材質としてガラスを用いた場合、表示
装置作成工程中の熱応力を押さえるために、スペーサ2
2の絶縁性基材24はできるだけこれらの材質と同じも
のか、同様の熱膨張係数の材料であることが望ましい。
【0039】本発明者はスペーサの帯電防止膜23aが
本来の特性を実現できるスペーサ帯電防止膜の製造方法
を検討した結果、構成元素として少なくともカーボンを
含む非晶質な構造を有する膜(酸化防止犠牲層)23b
を帯電防止膜23aの形成に連続して形成する方法が極
めて有効であることを見出した。図2は本発明に関わる
スペーサの構成を表わす断面模式図であり、絶縁性基板
24上に、半導電性を有する帯電防止層23aおよび少
なくともカーボンを含む非晶質な構造を有する層(酸化
防止犠牲層)23bが形成されている。
【0040】帯電防止膜23aはスペーサ表面に帯電し
た電荷を除去し、スペーサが大きく帯電しないようにす
る。また、少なくともカーボンを含む非晶質な構造を有
する層(酸化防止犠牲層)23bは画像形成装置を組み
立てる工程の熱処理により消失することを特徴とする酸
化防止犠牲層である。
【0041】帯電防止膜23aの抵抗値はスペーサ表面
が帯電することなく電荷を速やかに除電するのに十分な
電流がスペーサに流れる値に設定される。したがって、
スペーサに適する抵抗値は帯電量により設定される。帯
電量は電子源からの放出電流とスペーサ表面の二次電子
放出率に依存するので帯電防止膜が二次電子放出率の小
さい材料で構成されるのであれば大きな電流を流す必要
がない。シート抵抗が1012Ω/□以下であればほとん
どの使用条件に対応できると考えられるが、1011Ω/
□以下であれば申し分ない。一方抵抗値の下限はスペー
サにおける消費電力で制限され、画像表示装置全体の消
費電力が過度に増加せず、したがって、スペーサの抵抗
は装置全体の発熱に大きく影響しない値に選ばれなけれ
ばならない。
【0042】スペーサに使用する帯電防止膜23aとし
ては比抵抗が小さい金属膜よりは半導電性の材料である
ことが好ましい。その理由は比抵抗が小さい材料を用い
た場合、シート抵抗Rs を所望の値にするためには帯電
防止膜の厚みを極めて薄くしなければならないからであ
る。薄膜材料の表面エネルギーおよび基板との密着性や
基板温度によっても異なるが、一般的に10nmより小
さい薄膜は島状となり、抵抗が不安定で成膜再現性に乏
しい。したがって、比抵抗値が金属導電体より大きく、
絶縁体よりは小さい範囲にある半導電性材料が好まし
い。
【0043】スペーサの抵抗温度係数が正の場合には温
度上昇とともに抵抗値が増加するため、スペーサでの発
熱が抑制される。逆に抵抗温度係数が負であると、スペ
ーサ表面で消費される電力による温度上昇で抵抗値が減
少し、更に発熱し温度が上昇し続け、過大な電流が流れ
る、いわゆる熱暴走を引き起こす。しかし、発熱量すな
わち消費電力と放熱がバランスした状況においては熱暴
走は発生しない。したがって抵抗温度係数(TCR)の
絶対値が小さければ熱暴走しづらい。
【0044】TCRが約−1%の薄膜を用いた条件でス
ペーサ1cm2 あたりの消費電力がおよそ0.1Wを超
えるようになるとスペーサに流れる電流が増加し続け、
熱暴走状態となることが実験で認められた。これはもち
ろんスペーサ形状とスペーサ間に印加される電圧Va お
よび帯電防止膜の抵抗温度係数により左右されるが、以
上の条件から、消費電力が1cm2 あたり0.1Wを超
えないRs の値は10×Va2Ω/□以上である。すなわ
ち、スペーサ上に形成した帯電防止膜23aのシート抵
抗Rs は10×Va2Ω/□〜1011Ω/□の範囲に設定
されることが望ましい。
【0045】帯電防止膜23aの厚みtは前述のように
10nm以上が望ましい。一方膜厚tが1μmを超える
と膜応力が大きくなって膜はがれの危険性が高まり、ま
た、成膜時間が長くなるため生産性が悪い。したがっ
て、膜厚は10nm〜1μm、更に好適には20nm〜
500nmである事が望ましい。
【0046】比抵抗ρはシート抵抗Rs と膜厚tの積で
あり、以上に述べたRs とtの好ましい範囲から、帯電
防止膜の比抵抗ρは10-7×Va2Ωm〜105 Ωmであ
ることが望ましい。更にシート抵抗と膜厚のより好まし
い範囲を実現するためには、ρは(2×10-7)×Va2
Ωm〜5×104 Ωmとするのがよい。ディスプレイに
おける電子の加速電圧Va は100V以上であり、CR
Tに通常用いられる高速電子用蛍光体を平面型ディスプ
レイに用いた場合に十分な輝度を得るためには3kV以
上の電圧を要する。Va =1kVの条件においては、帯
電防止膜の比抵抗は0.1Ωm〜105 Ωmが好ましい
範囲となる。
【0047】帯電防止膜23aの材料としては、抵抗値
が上述したスペーサに好ましい範囲に調節でき、かつ安
定ならば用いることができる。中でも、遷移金属と高抵
抗窒化物(窒化アルミ、窒化硼素、窒化珪素など)の複
合体、Cr−Al−N、Ti−Al−N、Ta−Al−
N、Cr−B−N、Cr−Si−N等は抵抗値の調節が
容易かつ画像形成装置作製プロセス中で抵抗値が安定で
好ましい材料である。
【0048】電子源からの放出電子の軌道に乱れを発生
させないためには、フェースプレート19〜リアプレー
ト17間の電位分布が一様である、すなわちスペーサの
抵抗値がすべての場所でほぼ均一であることが必要であ
る。電位分布が乱れると、スペーサ近傍の蛍光体に到達
すべき電子が曲げられ、隣接した蛍光体にあたるために
画像に乱れを生ずる。Cr、Ti、Taと高抵抗窒化物
の複合体から成る窒化膜は安定であり抵抗値の一様性を
確保し、画像の乱れを防止するのに有効である。
【0049】酸化防止犠牲層23bは構成元素として少
なくともカーボンを含む非晶質な構造を有するものであ
り、アモルファスカーボン、水素を含むアモルファスカ
ーボンなどが可能である。カーボンはその構造に秩序性
が発現するに伴って熱に対する耐性が向上するため、非
晶質な構造であることが望ましい。酸化防止犠牲層23
bの膜厚としては画像形成装置組み立ての工程における
熱処理条件によって適宜決められ、厳密には画像形成装
置が組み立てられた時点で完全に消失しているのが望ま
しいものの、組み立て過程で消失した場合でも、酸化防
止犠牲層23bを形成しない場合に比較すれば帯電防止
膜23aの表面酸化は抑制される。また、酸化防止犠牲
層23bの構成元素には2次電子放出率の小さいカーボ
ンが含まれているため、酸化防止犠牲層23bが画像形
成装置の組み立て工程後にわずかに残留した場合でも特
性に影響は与えない。
【0050】酸化防止犠牲層23bを帯電防止膜23a
の成膜に連続して形成する製造方法の優れている点は、
真空中での連続成膜であるため帯電防止膜23a表面は
酸化しない点、画像形成装置の通常の工程で当該酸化防
止犠牲層23bが消失することにより酸化されていない
帯電防止膜23aを最終的に露出させられる点である。
すなわち、画像形成装置が組み立てられた時点では帯電
防止膜23aの本来の特性を実現できる点である。
【0051】酸化防止犠牲層23bの膜厚は材料や、成
膜方法および熱処理条件によっても異なるが、300℃
以上の熱処理を大気中で行う場合は50nm程度の膜厚
があれば酸化防止犠牲層として充分に効果がある。
【0052】帯電防止膜23aはスパッタ法、反応性ス
パッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング
法、イオンアシスト蒸着法、CVD法等の薄膜形成方法
により絶縁性基材上に形成することができる。酸化防止
犠牲層23bは、反応性スパッタ法、イオンアシスト蒸
着法、CVD法、イオンビームスパッタ法などの方法に
より形成することができる。例えば反応性スパッタの場
合はグラファイトのターゲットをアルゴン雰囲気下でス
パッタを行うことにより形成を行うことができる。また
アルゴンの全部または、一部を窒素に置き換えることに
より酸化防止犠牲層中に窒素を混入させることによって
酸化犠牲層の熱処理時の消失レートを制御できる可能性
もある。
【0053】次に、冷陰極素子として表面伝導型放出素
子(後述)を基板上に配列して単純マトリクス配線した
マルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0054】図4に示すのは、図3の表示パネルに用い
たマルチ電子ビーム源の平面図である。基板13上に
は、後述の図5で示すものと同様な表面伝導型放出素子
が配列され、これらの素子は行方向配線15と列方向配
線16により単純マトリクス状に配線されている。行方
向配線15と列方向配線16の交差する部分には、配線
間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁
が保たれている。
【0055】図4のB−B′に沿った断面を、図5
(b)に示す。
【0056】なお、このような構造のマルチ電子源は、
あらかじめ基板上に行方向配線15、列方向配線16、
電極間絶縁層(不図示)、および表面伝導型放出素子の
素子電極と導電性薄膜を形成した後、行方向配線15お
よび列方向配線16を介して各素子に給電して通電フォ
ーミング処理(後述)と通電活性化処理(後述)を行う
ことにより製造した。
【0057】本実施形態においては、気密容器のリアプ
レート17にマルチ電子ビーム源の基板13を固定する
構成としたが、マルチ電子ビーム源の基板13が十分な
強度を有するものである場合には、気密容器のリアプレ
ートとしてマルチ電子ビーム源の基板13自体を用いて
もよい。
【0058】また、フェースプレート19の下面には、
蛍光膜20が形成されている。図6を参照すると、本実
施形態はカラー表示装置であるため、蛍光膜20の部分
にはCRTの分野で用いられる赤、緑、青、の3原色の
蛍光体20bが塗り分けられている。各色の蛍光体は、
たとえば図6の(a)に示すようにストライプ状に塗り
分けられ、蛍光体のストライプの間には黒色の導電体2
0aが設けてある。黒色の導電体20aを設ける目的
は、電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても表示
色にずれが生じないようにする事や、外光の反射を防止
して表示コントラストの低下を防ぐ事、電子ビームによ
る蛍光膜のチャージアップを防止する事などである。黒
色の導電体20aには、黒鉛を主成分として用いたが、
上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用い
ても良い。
【0059】また、3原色の蛍光体の塗り分け方は前記
図6(a)に示したストライプ状の配列に限られるもの
ではなく、たとえば図6(b)に示すようなデルタ状配
列や、それ以外の配列であってもよい。
【0060】なお、モノクロームの表示パネルを作成す
る場合には、単色の蛍光体材料を蛍光体20bに用いれ
ばよく、また黒色導電材料20aは必ずしも用いなくと
もよい。
【0061】また、蛍光膜20のリアプレート側の面に
は、CRTの分野では公知のメタルバック21を設けて
ある。メタルバック21を設けた目的は、蛍光膜20が
発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させる事
や、負イオンの衝突から蛍光膜20を保護する事や、電
子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させ
る事や、蛍光膜20を励起した電子の導電路として作用
させる事などである。メタルバック21は、蛍光膜20
をフェースプレート基板19上に形成した後、蛍光膜表
面を平滑化処理し、その上にAlを真空蒸着する方法に
より形成した。なお、蛍光膜20に低電圧用の蛍光体材
料を用いた場合には、メタルバック21は用いない。
【0062】また、本実施形態では用いなかったが、加
速電圧の印加用や蛍光膜の導電性向上を目的として、フ
ェースプレート基板19と蛍光膜20との間に、たとえ
ばITOを材料とする透明電極を設けてもよい。
【0063】図1に示すようにスペーサ22は絶縁性部
材24の表面に帯電防止膜23aを成膜し、かつフェー
スプレート19の内側(メタルバック21等)及び基板
13の表面(行方向配線15または列方向配線16)に
面したスペーサの当接面及び接する側面部に低抵抗膜2
5を成膜した部材からなるもので、上記目的を達成する
のに必要な数だけ、かつ必要な間隔をおいて配置され、
フェースプレート19の内側および基板13の表面に接
合材26により固定される。また、帯電防止膜23a
は、絶縁性基板24の表面のうち、少なくとも気密容器
内の真空中に露出している面に成膜されており、スペー
サ22上の低抵抗膜25および接合材26を介して、フ
ェースプレート19の内側(メタルバック21等)及び
基板13の表面(行方向配線15または列方向配線1
6)に電気的に接続される。ここで説明される態様にお
いては、スペーサ22の形状は薄板状とし、行方向配線
15に平行に配置され、行方向配線15に電気的に接続
されている。
【0064】スペーサ22を構成する低抵抗膜25は、
帯電防止膜23aを高電位側のフェースプレート19
(メタルバック21等)及び低電位側の基板13(配線
15、16等)と電気的に接続する為に設けられたもの
であり、以下では、中間電極層(中間層)という名称も
用いる。中間電極層(中間層)は以下に列挙する複数の
機能を有する。
【0065】帯電防止膜23aをフェースプレート1
9及び基板13と電気的に接続する。
【0066】既に記載したように、帯電防止膜23aは
スペーサ22表面での帯電を防止する目的で設けられた
ものであるが、帯電防止膜23aをフェースプレート1
9(メタルバック21等)及び基板13(配線15、1
6等)と直接或いは当接材26を介して接続した場合、
接続部界面に大きな接触抵抗が発生し、スペーサ表面に
発生した電荷を速やかに除去できなくなる可能性があ
る。これを避ける為に、フェースプレート19、基板1
3及び当接材26と接触するスペーサ22の当接面或い
は側面部に低抵抗の中間層を設けた。
【0067】帯電防止膜23aの電位分布を均一化す
る。
【0068】冷陰極素子14より放出された電子は、フ
ェースプレート19と基板13の間に形成された電位分
布に従って電子軌道を成す。スペーサ22の近傍で電子
軌道に乱れが生じないようにする為には、帯電防止膜2
3aの電位分布を全域にわたって制御する必要がある。
帯電防止膜23aをフェースプレート19(メタルバッ
ク21等)及び基板13(配線15、16等)と直接或
いは当接材26を介して接続した場合、接続部界面の接
触抵抗の為に、接続状態のむらが発生し、帯電防止膜2
3aの電位分布が所望の値からずれてしまう可能性があ
る。これを避ける為に、スペーサ22がフェースプレー
ト19及び基板13と当接するスペーサ端部(当接面或
いは側面部)の全長域に低抵抗の中間層を設け、この中
間層部に所望の電位を印加することによって、帯電防止
膜23a全体の電位を制御可能とした。
【0069】放出電子の軌道を制御する。
【0070】冷陰極素子14より放出された電子は、フ
ェースプレート19と基板13の間に形成された電位分
布に従って電子軌道を成す。スペーサ近傍の冷陰極素子
から放出された電子に関しては、スペーサを設置するこ
とに伴う制約(配線、素子位置の変更等)が生じる場合
がある。このような場合、歪みやむらの無い画像を形成
する為には、放出された電子の軌道を制御してフェース
プレート19上の所望の位置に電子を照射する必要があ
る。フェースプレート19及び基板13と当接する面の
側面部に低抵抗の中間層を設けることにより、スペーサ
22近傍の電位分布に所望の特性を持たせ、放出された
電子の軌道を制御することが出来る。
【0071】低抵抗膜25は、帯電防止膜23aに比べ
十分に低い抵抗値を有する材料を選択すればよく、N
i,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,
Pd等の金属、あるいは合金、及びPd,Ag,Au,
RuO2 ,Pd−Ag等の金属や金属酸化物とガラス等
から構成される印刷導体、あるいはIn2 3 −SnO
2等の透明導体及びポリシリコン等の半導体材料等より
適宜選択される。
【0072】接合材26はスペーサ22が行方向配線1
5およびメタルバック21と電気的に接続するように、
導電性をもたせる必要がある。すなわち、導電性接着材
や金属粒子や導電性フィラーを添加したフリットガラス
が好適である。
【0073】また、Dx1〜DxmおよびDy1〜Dy
nおよびHv は、当該表示パネルと不図示の電気回路と
を電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用
端子である。Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行
方向配線15と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビーム源
の列方向配線16と、Hv はメタルバック21と電気的
に接続している。
【0074】また、気密容器内部を真空に排気するに
は、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポ
ンプとを接続し、気密容器内を10-5Pa程度の真空度
まで排気する。その後、排気管を封止するが、気密容器
内の真空度を維持するために、封止の直前あるいは封止
後に気密容器内の所定の位置にゲッター膜(不図示)を
形成する。ゲッター膜とは、たとえばBaを主成分とす
るゲッター材料をヒーターもしくは高周波加熱により加
熱し蒸着して形成した膜であり、該ゲッター膜の吸着作
用により気密容器内は1×10-3Pa乃至は1×10-5
Paの真空度に維持される。
【0075】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dy
nを通じて各冷陰極素子14に電圧を印加すると、各冷
陰極素子14から電子が放出される。それと同時にメタ
ルバック21に容器外端子Hv を通じて数kVの高圧を
印加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレ
ート19の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜20
をなす各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示さ
れる。
【0076】通常、冷陰極素子である本実施形態の表面
伝導型放出素子への14への印加電圧は12〜16V程
度、メタルバック21と冷陰極素子14との距離dは1
mmから8mm程度、メタルバック21と冷陰極素子1
4間の電圧は1kVから15kV程度である。
【0077】以上、本発明の実施形態の表示パネルの基
本構成と製法、および画像表示装置の概要を説明した。
【0078】次に、前記実施形態の表示パネルに用いた
マルチ電子ビーム源の製造方法について説明する。本発
明の画像表示装置に用いるマルチ電子ビーム源は、冷陰
極素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、冷陰
極素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。したが
って、たとえば表面伝導型放出素子やFE型、あるいは
MIM型などの冷陰極素子を用いることができる。
【0079】ただし、表示画面が大きくてしかも安価な
表示装置が求められる状況のもとでは、これらの冷陰極
素子の中でも、表面伝導型放出素子が特に好ましい。す
なわち、FE型ではエミッタコーンとゲート電極の相対
位置や形状が電子放出特性を大きく左右するため、極め
て高精度の製造技術を必要とするが、これは大面積化や
製造コストの低減を達成するには不利な要因となる。ま
た、MIM型では、絶縁層と上電極の膜厚を薄くてしか
も均一にする必要があるが、これも大面積化や製造コス
トの低減を達成するには不利な要因となる。その点、表
面伝導型放出素子は、比較的製造方法が単純なため、大
面積化や製造コストの低減が容易である。また、発明者
らは、表面伝導型放出素子の中でも、電子放出部もしく
はその周辺部を微粒子膜から形成したものがとりわけ電
子放出特性に優れ、しかも製造が容易に行えることを見
いだしている。したがって、高輝度で大画面の画像表示
装置のマルチ電子ビーム源に用いるには、最も好適であ
ると言える。そこで、上記実施形態の表示パネルにおい
ては、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成した表面伝導型放出素子を用いた。そこで、まず好適
な表面伝導型放出素子について基本的な構成と製法およ
び特性を説明し、その後で多数の素子を単純マトリクス
配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0080】[表面伝導型放出素子の好適な素子構成と
製法]電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面型
と垂直型の2種類があげられる。
【0081】[平面型の表面伝導型放出素子]まず最初
に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法につ
いて説明する。図5に示すのは、平面型の表面伝導型放
出素子の構成を説明するための平面図(a)および断面
図(b)である。図中、13は基板、27と28は素子
電極、29は導電性薄膜、30は通電フォーミング処理
により形成した電子放出部、31は通電活性化処理によ
り形成した薄膜である。
【0082】基板13としては、たとえば、石英ガラス
や青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミ
ナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上述の
各種基板上にたとえばSiO2 を材料とする絶縁層を積
層した基板、などを用いることができる。
【0083】また、基板13上に基板面と平行に対向し
て設けられた素子電極27と28は、導電性を有する材
料によって形成されている。たとえば、Ni,Cr,A
u,Mo,W,Pt,Ti,Cu,Pd,Ag等をはじ
めとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいは
In2 3 −SnO2 をはじめとする金属酸化物、ポリ
シリコンなどの半導体、などの中から適宜材料を選択し
て用いればよい。電極を形成するには、たとえば真空蒸
着などの製膜技術とフォトリソグラフィー、エッチング
などのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易に
形成できるが、それ以外の方法(たとえば印刷技術)を
用いて形成してもさしつかえない。
【0084】素子電極27と28の形状は、当該電子放
出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的に
は、電極間隔Lは通常は数10nmから数100μmの
範囲から適当な数値を選んで設計されるが、なかでも表
示装置に応用するために好ましいのは数μmより数10
μmの範囲である。また、素子電極の厚さdについて
は、通常は数10nmから数μmの範囲から適当な数値
が選ばれる。
【0085】また、導電性薄膜29の部分には、微粒子
膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素とし
て多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のこ
とをさす。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、個々
の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子
が互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに重な
り合った構造が観測される。
【0086】微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、0.数
nmから数100nmの範囲に含まれるものであるが、
なかでも好ましいのは1nmから20nmの範囲のもの
である。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような
諸条件を考慮して適宜設定される。すなわち、素子電極
27あるいは28と電気的に良好に接続するのに必要な
条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに必要
な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値に
するために必要な条件、などである。具体的には、0.
数nmから数100nmの範囲の中で設定するが、中で
も好ましいのは1nmから50nmの間である。
【0087】また、微粒子膜を形成するのに用いられう
る材料としては、たとえば、Pd,Pt,Ru,Ag,
Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,T
a,W,Pb,などをはじめとする金属や、PdO,S
nO2 ,In2 3 ,PbO,Sb2 3 ,などをはじ
めとする酸化物や、HfB2 ,ZrB2 ,LaB6 ,C
eB6 ,YB4 ,GdB4 ,などをはじめとする硼化物
や、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC,
などをはじめとする炭化物や、TiN,ZrN,Hf
N,などをはじめとする窒化物や、Si,Ge,などを
はじめとする半導体や、カーボン、などがあげられ、こ
れらの中から適宜選択される。
【0088】以上述べたように、導電性薄膜29を微粒
子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、10
3 から107 [Ω/□]の範囲に含まれるよう設定し
た。
【0089】なお、導電性薄膜29と素子電極27およ
び28とは、電気的に良好に接続されるのが望ましいた
め、互いの一部が重なりあうような構造をとっている。
その重なり方は、図8の例においては、下から、基板1
3、素子電極27、28、導電性薄膜29の順序で積層
したが、場合によっては下から基板13、導電性薄膜2
9、素子電極27、28の順序で積層してもさしつかえ
ない。
【0090】また、電子放出部30は、導電性薄膜29
の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周
囲の導電性薄膜29よりも高抵抗な性質を有している。
亀裂は、導電性薄膜29に対して、後述する通電フォー
ミングの処理を行うことにより形成する。亀裂内には、
0.数nmから数10nmの粒径の微粒子を配置する場
合がある。なお、実際の電子放出部の位置や形状を精密
かつ正確に図示するのは困難なため、図5においては模
式的に示した。
【0091】また、薄膜31は、炭素もしくは炭素化合
物よりなる薄膜で、電子放出部30およびその近傍を被
覆している。薄膜31は、通電フォーミング処理後に、
後述する通電活性化の処理を行うことにより形成する。
【0092】薄膜31は、単結晶グラファイト、多結晶
グラファイト、非晶質カーボン、のいずれかか、もしく
はその混合物であり、膜厚は50nm以下とするが、3
0nm以下とするのがさらに好ましい。なお、実際の薄
膜31の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、
図5においては模式的に示した。また、平面図(a)に
おいては、薄膜31の一部を除去した素子を図示した。
【0093】以上、好ましい素子の基本構成を述べた
が、実施形態においては以下のような素子を用いた。
【0094】すなわち、基板13には青板ガラスを用
い、素子電極27と28にはNi薄膜を用いた。素子電
極の厚さdは100nm、電極間隔Lは2μmとした。
【0095】微粒子膜の主要材料としてPdもしくはP
dOを用い、微粒子膜の厚さは約10nm、幅Wは10
0μmとした。
【0096】次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子
の製造方法について説明する。
【0097】図7の(a)〜(d)は、表面伝導型放出
素子の製造工程を説明するための断面図で、各部材の符
号は前記図5と同一である。
【0098】1)まず、図7(a)に示すように、基板
13上に素子電極27および28を形成する。
【0099】形成するにあたっては、あらかじめ基板1
3を洗剤、純水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、素子
電極の材料を堆積させる。(堆積する方法としては、た
とえば、蒸着法やスパッタ法などの真空成膜技術を用い
ればよい。)その後、堆積した電極材料を、フォトリソ
グラフィー・エッチング技術を用いてパターニングし、
(a)に示した一対の素子電極(27と28)を形成す
る。
【0100】2)次に、同図(b)に示すように、導電
性薄膜29を形成する。
【0101】形成するにあたっては、まず前記(a)の
基板13に有機金属溶液を塗布して乾燥し、加熱焼成処
理して微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・
エッチングにより所定の形状にパターニングする。ここ
で、有機金属溶液とは、導電性薄膜29に用いる微粒子
の材料を主要元素とする有機金属化合物の溶液である。
(具体的には、本実施形態では主要元素としてPdを用
いた。また、実施形態では塗布方法として、ディッピン
グ法を用いたが、それ以外のたとえばスピンナー法やス
プレー法を用いてもよい。) また、微粒子膜で作られる導電性薄膜29の成膜方法と
しては、本実施形態で用いた有機金属溶液の塗布による
方法以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ法、あるい
は化学的気相堆積法などを用いる場合もある。
【0102】3)次に、同図(c)に示すように、フォ
ーミング用電源32により素子電極27と28の間に適
宜の電圧を印加し、通電フォーミング処理を行って、電
子放出部30を形成する。
【0103】通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作
られた導電性薄膜29に通電を行って、その一部を適宜
に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うの
に好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜
で作られた導電性薄膜のうち電子放出を行うのに好適な
構造に変化した部分(すなわち電子放出部30)におい
ては、薄膜に適当な亀裂が形成されている。なお、電子
放出部30が形成される前と比較すると、形成された後
は素子電極27と28の間で計測される電気抵抗は大幅
に増加する。
【0104】通電方法をより詳しく説明するために、図
8に、フォーミング用電源29から印加する適宜の電圧
波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電性薄膜29
をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好まし
く、本実施形態の場合には同図に示したようにパルス幅
T1の三角波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加し
た。その際には、三角波パルスの波高値Vpfを、順次
昇圧した。また、電子放出部30の形成状況をモニター
するための波高値VpmのモニターパルスPmを適宜の
間隔で三角波パルスの間に挿入し、その際に流れる電流
を電流計33で計測した。
【0105】実施形態においては、たとえば10-3Pa
程度の真空雰囲気下において、たとえばパルス幅T1を
1msec、パルス間隔T2を10msecとし、波高
値Vpfを1パルスごとに0.1Vずつ昇圧させた。そ
して、三角波を5パルス印加するたびに1回の割りで、
モニターパルスPmを挿入した。フォーミング処理に悪
影響を及ぼすことがないように、モニターパルスの電圧
Vpmは0.1Vに設定した。そして、素子電極27と
28の間の電気抵抗が1×106 Ωになった段階、すな
わちモニターパルス印加時に電流計33で計測される電
流が1×10-7A以下になった段階で、フォーミング処
理にかかわる通電を終了した。
【0106】なお、上記の方法は、本実施形態の表面伝
導型放出素子に関する好ましい方法であり、たとえば微
粒子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表面
伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じ
て通電の条件を適宜変更するのが望ましい。
【0107】4)次に、図7の(d)に示すように、活
性化用電源34により素子電極27と28の間に適宜の
電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性
の改善を行う。
【0108】通電活性化処理とは、前記通電フォーミン
グ処理により形成された電子放出部30に適宜の条件で
通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆
積せしめる処理のことである。(図においては、炭素も
しくは炭素化合物よりなる堆積物を薄膜31として模式
的に示した。)なお、通電活性化処理を行うことによ
り、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流
を典型的には100倍以上に増加させることができる。
【0109】具体的には、10-1乃至10-4Paの範囲
内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期的に印加するこ
とにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源と
する炭素もしくは炭素化合物を堆積させる。堆積物31
は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質
カーボン、のいずれかか、もしくはそれらの混合物であ
り、膜厚は50nm以下、より好ましくは30nm以下
である。
【0110】通電方法をより詳しく説明するために、図
9の(a)に、活性化用電源34から印加する適宜の電
圧波形の一例を示す。本実施形態においては、一定電圧
の矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行った
が、具体的には、矩形波の電圧Vacは14V,パルス
幅T3は1msec,パルス間隔T4は10msecと
した。なお、上述の通電条件は、本実施形態の表面伝導
型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型放
出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を
適宜変更するのが望ましい。
【0111】図7の(d)に示す35は該表面伝導型放
出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するためのア
ノード電極で、直流高電圧電源36および電流計37が
接続されている。(なお、基板13を、表示パネルの中
に組み込んでから活性化処理を行う場合には、表示パネ
ルの蛍光面をアノード電極35として用いる。)活性化
用電源34から電圧を印加する間、電流計37で放出電
流Ieを計測して通電活性化処理の進行状況をモニター
し、活性化用電源34の動作を制御する。電流計37で
計測された放出電流Ieの一例を図9(b)に示すが、
活性化電源31からパルス電圧を印加しはじめると、時
間の経過とともに放出電流Ieは増加するが、やがて飽
和してほとんど増加しなくなる。このように、放出電流
Ieがほぼ飽和した時点で活性化用電源34からの電圧
印加を停止し、通電活性化処理を終了する。
【0112】なお、上述の通電条件は、本実施形態の表
面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝
導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて
条件を適宜変更するのが望ましい。
【0113】以上のようにして、図5(b)に示す平面
型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0114】[垂直型の表面伝導型放出素子]次に、電
子放出部もしくはその周辺を微粒子膜から形成した表面
伝導型放出素子のもうひとつの代表的な構成、すなわち
垂直型の表面伝導型放出素子の構成について説明する。
【0115】図10は、垂直型の基本構成を説明するた
めの模式的な断面図であり、図中の38は基板、39と
40は素子電極、43は段差形成部材、41は微粒子膜
を用いた導電性薄膜、42は通電フォーミング処理によ
り形成した電子放出部、44は通電活性化処理により形
成した薄膜である。
【0116】垂直型が先に説明した平面型と異なる点
は、素子電極のうちの片方39が段差形成部材43上に
設けられており、導電性薄膜41が段差形成部材43の
側面を被覆している点にある。したがって、前記図5の
平面型における素子電極間隔Lは、垂直型においては段
差形成部材43の段差高Lsとして設定される。なお、
基板38、素子電極39および40、微粒子膜を用いた
導電性薄膜41、については、前記平面型の説明中に列
挙した材料を同様に用いることが可能である。また、段
差形成部材43には、たとえばSiO2 のような電気的
に絶縁性の材料を用いる。
【0117】次に、垂直型の表面伝導型放出素子の製法
について説明する。図11の(a)〜(f)は、製造工
程を説明するための断面図で、各部材の符号は前記図1
0と同一である。
【0118】1)まず、図11(a)に示すように、基
板38上に素子電極40を形成する。
【0119】2)次に、同図(b)に示すように、段差
形成部材43を形成するための絶縁層を積層する。絶縁
層は、たとえばSiO2 をスパッタ法で積層すればよい
が、たとえば真空蒸着法や印刷法などの他の成膜方法を
用いてもよい。
【0120】3)次に、同図(c)に示すように、絶縁
層の上に素子電極39を形成する。
【0121】4)次に、同図(d)に示すように、絶縁
層の一部を、たとえばエッチング法を用いて除去し、素
子電極40を露出させる。
【0122】5)次に、同図(e)に示すように、微粒
子膜を用いた導電性薄膜41を形成する。形成するに
は、前記平面型の場合と同じく、たとえば塗布方法など
の成膜技術を用いればよい。
【0123】6)次に、前記平面型の場合と同じく、通
電フォーミング処理を行い、電子放出部42を形成す
る。(図7(c)を用いて説明した平面型の通電フォー
ミング処理と同様の処理を行えばよい。)
【0124】7)次に、前記平面型の場合と同じく、通
電活性化処理を行い、電子放出部近傍に炭素もしくは炭
素化合物を堆積させる。(図7(d)を用いて説明した
平面型の通電活性化処理と同様の処理を行えばよい。) 以上のようにして、図10に示す垂直型の表面伝導型放
出素子を製造した。
【0125】[表示装置に用いた表面伝導型放出素子の
特性]以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子につ
いて素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用い
た素子の特性について述べる。
【0126】図12に、表示装置に用いた素子の、(放
出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素
子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例
を示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著
しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、
これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータ
を変更することにより変化するものであるため、2本の
グラフは各々任意単位で図示した。
【0127】表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに
関して以下に述べる3つの特性を有している。
【0128】第一に、ある電圧(これを閾値電圧Vth
と呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に
放出電流Ieが増加するが、一方、閾値電圧Vth未満
の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。
【0129】すなわち、放出電流Ieに関して、明確な
閾値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0130】第二に、放出電流Ieは素子に印加する電
圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流I
eの大きさを制御できる。
【0131】第三に、素子に印加する電圧Vfに対して
素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電
圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出され
る電子の電荷量を制御できる。
【0132】以上のような特性を有するため、表面伝導
型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。た
とえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表
示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を
順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、
駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vt
h以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には閾値
電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次
切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表
示を行うことが可能である。
【0133】また、第二の特性かまたは第三の特性を利
用することにより、発光輝度を制御することができるた
め、階調表示を行うことが可能である。
【0134】図13は、NTSC方式のテレビ信号に基
づいてテレビジョン表示を行う為の駆動回路の概略構成
をブロック図で示したものである。同図中、表示パネル
1701は前述した表示パネルに相当するもので、前述
した様に製造され、動作する。また、走査回路1702
は表示ラインを走査し、制御回路1703は走査回路1
702へ入力する信号等を生成する。シフトレジスタ1
704は1ライン毎のデータをシフトし、ラインメモリ
1705は、シフトレジスタ1704からの1ライン分
のデータを変調信号発生器1707に出力する。同期信
号分離回路1706はNTSC信号から同期信号を分離
する。
【0135】以下、図13の装置各部の機能を詳しく説
明する。
【0136】まず表示パネル1701は、端子Dx1乃
至Dxmおよび端子Dy1乃至Dyn、および高圧端子
Hv を介して外部の電気回路と接続されている。このう
ち、端子Dx1乃至Dxmには、表示パネル1701内
に設けられているマルチ電子ビーム源、すなわちm行n
列の行列状にマトリクス配線された冷陰極素子を1行
(n素子)ずつ順次駆動してゆく為の走査信号が印加さ
れる。一方、端子Dy1乃至Dynには、前記走査信号
により選択された1行分のn個の各素子の出力電子ビー
ムを制御する為の変調信号が印加される。また、高圧端
子Hv には、直流電圧源Vaより、たとえば5[kV]
の直流電圧が供給されるが、これはマルチ電子ビーム源
より出力される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分
なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0137】次に、走査回路1702について説明す
る。同回路は、内部にm個のスイッチング素子(図中、
S1乃至Smで模式的に示されている)を備えるもの
で、各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧
もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を
選択し、表示パネル1701の端子Dx1乃至Dxmと
電気的に接続するものである。S1乃至Smの各スイッ
チング素子は、制御回路1703が出力する制御信号T
SCANに基づいて動作するものだが、実際にはたとえばF
ETのようなスイッチング素子を組合わせる事により容
易に構成することが可能である。なお、前記直流電圧源
Vxは、電子放出素子の特性に基づき走査されていない
素子に印加される駆動電圧が電子放出閾値電圧Vth電
圧以下となるよう、一定電圧を出力するよう設定されて
いる。
【0138】また、制御回路1703は、外部より入力
する画像信号に基づいて適切な表示が行なわれるように
各部の動作を整合させる働きをもつものである。次に説
明する同期信号分離回路1706より送られる同期信号
SYNCに基づいて、各部に対してTSCANおよびTSFT
よびTMRY の各制御信号を発生する。同期信号分離回路
1706は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ
信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為
の回路である。同期信号分離回路1706により分離さ
れた同期信号は、良く知られるように垂直同期信号と水
平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上、TSYNC
信号として図示した。一方、前記テレビ信号から分離さ
れた画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表す
が、同信号はシフトレジスタ1704に入力される。
【0139】シフトレジスタ1704は、時系列的にシ
リアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライ
ン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記
制御回路1703より送られる制御信号TSFT に基づい
て動作する。すなわち、制御信号TSFT は、シフトレジ
スタ1704のシフトクロックであると言い換えること
もできる。シリアル/パラレル変換された画像1ライン
分(電子放出素子n素子分の駆動データに相当する)の
データは、Id1乃至Idnのn個の信号として前記シフト
レジスタ1704より出力される。
【0140】ラインメモリ1705は、画像1ライン分
のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路1703より送られる制御信号TMRY にし
たがって適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶され
た内容は、I′d1乃至I′dnとして出力され、変調信号
発生器1707に入力される。
【0141】変調信号発生器1707は、前記画像デー
タI′d1乃至I′dnの各々に応じて、電子放出素子12
の各々を適切に駆動変調する為の信号源で、その出力信
号は、端子Dy1乃至Dynを通じて表示パネル170
1内の電子放出素子12に印加される。
【0142】図12を用いて説明したように、本発明に
関わる表面伝導型放出素子は放出電流Ieに対して以下
の基本特性を有している。すなわち、電子放出には明確
な閾値電圧Vth(後述する実施形態の表面伝導型放出
素子では8[V])があり、閾値Vth以上の電圧を印
加された時のみ電子放出が生じる。また、電子放出閾値
Vth以上の電圧に対しては、図12のグラフのように
電圧の変化に応じて放出素子Ieも変化する。このこと
から、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、たとえ
ば電子放出閾値Vth以下の電圧を印加しても電子放出
は生じないが、電子放出閾値Vth以上の電圧を印加す
る場合には表面伝導型放出素子から電子ビームが出力さ
れる。その際、パルスの波高値Vmを変化させることに
より出力電子ビームの強度を制御することが可能であ
る。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力
される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能で
ある。
【0143】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器1707として、一定長さの電圧パ
ルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの
波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いるこ
とができる。また、パルス幅変調方式を実施するに際し
ては、変調信号発生器1707として、一定の波高値の
電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電
圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路
を用いることができる。
【0144】シフトレジスタ1704やラインメモリ1
705は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式の
ものでも採用できる。すなわち、画像信号のシリアル/
パラレル変換や記憶が所定の速度で行われればよいから
である。
【0145】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路1706の出力信号DATAをデジタル信号
化する必要があるが、これには同期信号分離回路170
6の出力部にA/D変換器を設ければよい。これに関連
してラインメモリ1705の出力信号がデジタル信号か
アナログ信号かにより、変調信号発生器に用いられる回
路が若干異なったものとなる。すなわち、デジタル信号
を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器1707
には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅
回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信
号発生器1707には、例えば高速の発振器および発振
器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)および
計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器
(コンパレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応
じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を
電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅
器を付加することもできる。
【0146】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器1707には、例えばオペアンプな
どを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてシフトレ
ベル回路などを付加することもできる。パルス幅変調方
式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)
を採用でき、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧まで
電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0147】このような構成をとりうる本発明の適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dynを介して電
圧を印加することにより、電子放出が生じる。高圧端子
Hvを介してメタルバック21あるいは透明電極(不図
示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速され
た電子は、蛍光膜18に衝突し、発光が生じて画像が形
成される。
【0148】ここで述べた画像表示装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の思
想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号につい
てはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限るも
のではなく、PAL、SECAM方式など他、これらよ
り多数の走査線からなる高品位テレビジョン方式などを
も採用できる。
【0149】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について図面
を用いて説明する。
【0150】[実施例1]本実施例では、まず、未フォ
ーミングの複数の表面伝導型電子源14を基板13に形
成した。基板13として表面を清浄化した青板ガラスを
用い、これに、図5に示した表面伝導型電子放出素子を
160個×720個マトリクス上に形成した。素子電極
27、28はNiスパッタ膜であり、X方向配線15、
Y方向配線16はスクリーン印刷法により形成したAg
配線である。導電性薄膜29はPdアミン錯体溶液を焼
成したPdO微粒子膜である。
【0151】画像形成部材であるところの蛍光膜20は
図6(a)に示すように、各色蛍光体がY方向に伸びる
ストライプ形状を採用し、黒色体20aとしては各色蛍
光体間だけでなく、X方向にも設けることでY方向の画
素間を分離しかつスペーサ22を設置するための部分を
加えた形状を用いた。先に黒色体(導電体)20aを形
成し、その間隙部に各色蛍光体を塗布して蛍光膜20を
作成した。ブラックストライプ(黒色体20a)の材料
として通常良く用いられている黒鉛を主成分とする材料
を用いた。フェースプレート19に蛍光体を塗布する方
法としてはスラリー法を用いた。
【0152】また、蛍光膜20より内面側(電子源側)
に設けられるメタルバック21は、蛍光膜20の作成
後、蛍光膜20の内面側表面の平滑化処理(通常フィル
ミングと呼ばれる)を行い、その後、Alを真空蒸着す
ることで作成した。フェースプレート19には、更に蛍
光膜20の導電性を高めるため、蛍光膜20より外面側
(ガラス基板と蛍光膜の間)に透明電極が設けられる場
合もあるが、本実施例ではメタルバックのみで十分な導
電性が得られたので省略した。
【0153】次にスペーサ22の製造方法について説明
する。図1において表面を清浄化したソーダライムガラ
スからなる絶縁性基板24(幅3.8mm、板厚200
μm、長さ20mm)上に、まず、CrとAl合金窒化
膜からなる帯電防止膜23aを形成した。本実施例で用
いたCrとAl合金窒化膜はスパッタリング装置を用い
てアルゴンと窒素混合雰囲気中でCrとAlのターゲッ
トを同時スパッタすることにより成膜した。スパッタ装
置については図14のようになっている。図14におい
て、48は成膜室、57はスペーサ基板、45、46、
47はそれぞれ、Cr、Al、グラファイトのターゲッ
ト、49、50、51はターゲット45、46、47に
それぞれ高周波電圧を印加するための高周波電源、5
2、53、54はマッチングボックス、55、56はア
ルゴン、水素を導入するための導入管である。
【0154】成膜室48にアルゴンと窒素を分圧比7:
3、全圧0.45Paで導入し、Crターゲット45と
Alターゲット46およびスペーサ基板57間に高周波
電圧を印加して放電をおこしスパッタを行う。それぞれ
のターゲットにかける電力を変化することにより組成の
調整を行い、最適の抵抗値を有するCrとAl合金窒化
物から成る帯電防止膜23aを得た。次に、成膜室48
を一旦排気した後、スパッタガスとしてアルゴンを1m
Torr導入し、カーボンターゲット47とスペーサ基
板57間に高周波電圧を印加してスパッタによりアモル
ファスカーボンの酸化防止犠牲層23bを帯電防止膜2
3a上に作製した。本実施例ではターゲット投入電力を
3.8W/cm2 、成膜時間を3minとすることで画
像表示装置作製工程後に酸化防止犠牲層が消失するアモ
ルファスカーボン膜23bが得られた。TEM(透過電
子顕微鏡)の観察からアモルファスカーボンの平均的な
膜厚は18nmであった。
【0155】次に、帯電防止膜23aと、X方向配線お
よびメタルバックとの電気的接続を確実にするためにそ
の接続部にAlによる電極25をスパッタにより形成し
た。この電極25はX方向配線からフェースプレートに
向かって150μm、メタルバックからリアプレートに
向かって100μmの範囲で帯電防止膜および絶縁性基
板24の底面を完全に被覆した。
【0156】その後、電子源14の3.8mm上方にフ
ェースプレート19を支持枠18を介して配置し、リア
プレート13、フェースプレート19、支持枠18およ
びスペーサ22の接合部を固定した。スペーサはX方向
配線15上に等間隔に固定した。スペーサ22はフェー
スプレート19側では黒色体20a(線幅300μm)
上に、Auを被覆シリカ球を含有した導電性フリットガ
ラス26を用いることにより、帯電防止膜23とフェー
スプレート19との導通を確保した。なお、メタルバッ
ク21とスペーサ22とが当接する領域においてはメタ
ルバック21の一部を除去した。リアプレート17と支
持枠18の接合部はフリットガラス(不図示)を塗布
し、大気中で420℃で10分以上焼成することで封着
した。
【0157】以上のようにして完成したあと、排気管を
通じ真空ポンプにて排気し、十分低い圧力に達した後、
容器外端子Dx1〜DxmとDy1〜Dynを通じ電子
放出素子14の素子電極27、28間に電圧を印加し、
導電性薄膜29を通電処理(フォーミング処理)するこ
とにより電子放出部30を形成した。フォーミング処理
は、図11に示した波形の電圧を印加することにより行
った。
【0158】次に排気管を通してアセトンを0.013
Paの圧力となるように真空容器に導入し、容器外端子
Dx1〜Dxmと、Dy1〜Dynに電圧パルスを定期
的に印加することにより、炭素あるいは炭素化合物を堆
積する通電活性化処理を行った。通電活性化は図12に
示すような波形を印加することにより行った。
【0159】次に容器全体を200℃に加熱しつつ10
時間真空排気した後、10-4Pa程度の圧力で、排気管
をガスバーナーで熱することで溶着し封止を行った。
【0160】最後に、封止後の圧力を維持するために、
ゲッター処理を行った。
【0161】以上のように完成した画像形成装置におい
て、各電子放出素子14には、容器外端子Dx1〜Dx
m、Dy1〜Dynを通じ走査信号及び変調信号を不図
示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより電子
を放出させ、メタルバック21には、高圧端子Hv を通
じて高圧を印加することにより放出電子ビームを加速
し、蛍光膜20に電子を衝突させ、蛍光体20bを励起
・発光させることで画像を表示した。なお高圧端子Hv
への印加電圧Va は3〜7kV、素子電極27、28間
への印加電圧Vfは14Vとした。スペーサ近傍にある
電子放出素子からの放出電子による発光スポットは二次
元上に等間隔のスポット列として形成され、スペーサに
帯電が起きてないことを示した。
【0162】当該画像形成装置を分解してXPS(X線
光電子分光法)でスペーサ22表面の組成を測定したと
ころC:10.6atomic%、N:26.9ato
mic%、O:7.5atomic%、Cr:1.2a
tomic%、Al:46.3atomic%、その
他:7.5atomic%であった。アモルファスカー
ボンを形成せずに大気中で420℃、10分間熱処理を
行った試料表面の組成をXPS(X線光電子分光法)で
測定したところC:7.9atomic%、N:20.
1atomic%、O:32.7atomic%、C
r:0.9atomic%、Al:34.6atomi
c%、その他:3.8atomic%であり、スペーサ
22はアモルファスカーボンを酸化防止犠牲層23bと
して形成したことにより、表面の酸素濃度は約1/4に
低下し、窒素濃度は約1.3倍増加し、熱処理時の表面
の酸化が抑制されたことを示した。ここで検出されたカ
ーボンは画像形成装置の分解からXPS(X線光電子分
光法)測定までの操作に伴って試料表面に吸着したカー
ボンと考えられる。
【0163】[実施例2]実施例2においては実施例1
で述べた酸化防止犠牲層23bの成膜条件として、CH
4 をArプラズマ中で分解して水素化アモルファスカー
ボン膜を成膜したこと以外は実施例1と同じにした。本
実施例では成膜室48中に導入管55、56を介してC
4 とArを分圧比7:3、全圧3mTorr導入し、
プラズマのパワーを1W/cm2 とした。
【0164】その後の組み立て工程は実施例1と同様で
行い、実施例1と同様の条件で駆動した。スペーサ近傍
にある電子放出素子からの放出電子による発光スポット
は二次元上に等間隔のスポット列として形成され、スペ
ーサに帯電が起きてないことを示した。実施例1と同様
に当該画像形成装置を分解してXPS(X線光電子分光
法)でスペーサ22表面の組成を測定したところC:
9.0atomic%、N:27.5atomic%、
O:8.5atomic%、Cr:1.2atomic
%、Al:46.3atomic%、その他:7.5a
tomic%であった。これに対して、窒素を含むアモ
ルファスカーボンを形成せずに大気中で420℃で10
分間大気中で熱処理を行った試料表面の組成をXPS
(X線光電子分光法)で測定したところC:7.9at
omic%、N:20.1atomic%、O:32.
7atomic%、Cr:0.9atomic%、A
l:34.6atomic%、その他:3.8atom
ic%であり、スペーサ22は窒素を含有するアモルフ
ァスカーボン層を酸化防止犠牲層として形成したことに
より、表面の酸素濃度は約1/4に低下し、窒素濃度は
約1.4倍に増加し、熱処理時の表面の酸化が抑制され
たことを示した。ここで検出されたカーボンは画像形成
装置の分解からXPS(X線光電子分光法)測定までの
操作に伴って試料表面に吸着したカーボンと考えられ
る。
【0165】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、ス
ペーサ抵抗として適当な抵抗値を持つ合金窒化物からな
る帯電防止膜の上に、構成元素として少なくともカーボ
ンを含む非晶質な構造を有する酸化防止犠牲層を被覆す
ることにより最表面の酸化が抑制された合金窒化物から
なる良好な帯電防止機能を持つスペーサを得た。これを
使用した画像形成装置はスペーサ近傍でのビーム電位の
乱れは抑止され、ビームが蛍光体に衝突する位置と、本
来発光するべき蛍光体との位置ずれのない鮮明な画像表
示が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形態である画像表示装置のスペーサ近
傍の断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態によるスペーサの断面模式図
である。
【図3】本発明の実施形態による表示パネルの斜視図で
ある。
【図4】本発明の実施形態で用いたマルチ電子ビーム源
の基板の平面図である。
【図5】本発明の実施形態で用いた平面型の表面伝導型
放出素子の平面図(a),断面図(b)である。
【図6】表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を
例示した平面図である。
【図7】図5の平面型の表面伝導型放出素子の製造工程
を示す断面図である。
【図8】通電フォーミング処理の際の印加電圧波形の図
である。
【図9】通電活性化処理の際の印加電圧波形(a)、放
出電流Ieの変化(b)を示す図である。
【図10】本発明の実施形態で用いた垂直型の表面伝導
型放出素子の断面図である。
【図11】図10の垂直型の表面伝導型放出素子の製造
工程を示す断面図。
【図12】本発明の実施形態で用いた表面伝導型放出素
子の典型的な特性を示すグラフである。
【図13】画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に
応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック
図である。
【図14】本発明の実施例によるスパッタ装置の模式図
である。
【図15】複数の電子放出素子を梯子型に配置した模式
図である。
【図16】複数の電子放出素子を梯子型に配置した画像
形成装置の一例を示す斜視図である。
【図17】従来例による表面伝導型電子放出素子の平面
図である。
【図18】従来例によるFE素子の断面図である。
【図19】従来例によるMIM素子の断面図である。
【符号の説明】
1 基板 2 導電性薄膜 3 電子放出部 4 基板 5 エミッタ配線 6 エミッタコーン 7 絶縁層 8 ゲート電極 9 基板 10 下電極 11 絶縁層 12 上電極 13 基板 14 冷陰極素子 15 行方向配線 16 列方向配線 17 リアプレート 18 側壁 19 フェースプレート 20 蛍光膜 21 メタルバック 22 スペーサ 23 導電膜 23a 帯電防止膜 23b 酸化防止犠牲層 24 絶縁性基材 25 中間層電極 26 導電性フリット(当接材) 27,28 素子電極 29 導電性薄膜 30 電子放出部 31 通電活性化処理により形成した薄膜 32 フォーミング用電源 33 電流計 34 活性化用電源 35 アノード電極 36 直流高電圧電源 37 電流計 38 基板 39 素子電極 40 素子電極 41 導電性薄膜 42 電子放出部 43 段差形成部材 44 通電活性化により形成した薄膜 45,46,47 ターゲット 48 成膜室 49,50,51 高周波電源 52,53,54 マッチングボックス 55,56 成膜ガス導入口 57 排気口 1701 表示パネル 1702 走査回路 1703 制御回路 1704 シフトレジスタ 1705 ラインメモリ 1706 同期信号分離回路 1707 変調信号発生器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5C012 AA05 BB01 5C032 AA01 5C036 EE02 EE14 EF01 EF06 EG02 EG12 EG15 EG24 EG29 EG30 EG36 EG47 EG48 EH01 EH06 EH08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子放出素子および該電子放出素子を駆
    動するための配線を形成した基板と、該電子放出素子か
    ら放出された電子により画像が形成される画像形成部材
    を形成した基板とをスペーサを介して対向させた構造を
    有する画像形成装置の製造方法において、スペーサ基板
    表面に帯電防止膜を被覆する工程に連続して、該帯電防
    止膜表面に酸化防止犠牲層を形成することを特徴とする
    画像形成装置の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化防止犠牲層は酸化雰囲気中で3
    00℃以上の熱処理を施すことにより消失することを特
    徴とする請求項1に記載の画像形成装置の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化防止犠牲層は構成元素として少
    なくともカーボンを含む非晶質な構造を有することを特
    徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記酸化防止犠牲層は膜厚が50nm以
    下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1
    項に記載の画像形成装置の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100622533B1 (ko) * 2002-03-04 2006-09-13 캐논 가부시끼가이샤 화상표시장치

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