JP3728099B2 - 帯電防止膜及び表示装置 - Google Patents

帯電防止膜及び表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3728099B2
JP3728099B2 JP14425598A JP14425598A JP3728099B2 JP 3728099 B2 JP3728099 B2 JP 3728099B2 JP 14425598 A JP14425598 A JP 14425598A JP 14425598 A JP14425598 A JP 14425598A JP 3728099 B2 JP3728099 B2 JP 3728099B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
electron
voltage
substrate
spacer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP14425598A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11335814A (ja
Inventor
博光 高瀬
博嗣 高木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP14425598A priority Critical patent/JP3728099B2/ja
Publication of JPH11335814A publication Critical patent/JPH11335814A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3728099B2 publication Critical patent/JP3728099B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は帯電防止膜、及び帯電防止膜を応用した画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子として熱陰極素子と冷陰極素子の2種類が知られている。このうち冷陰極素子では、たとえば表面伝導型放出素子や、電界放出型素子(以下FE型と記す)や、金属/絶縁層/金属型放出素子(以下MIM型と記す)などが知られている。
【0003】
表面伝導型放出素子としては、たとえば、M.I.Elinson,Radio Eng.Electron Phys.,10,1290,(1965)や、後述する他の例が知られている。
【0004】
表面伝導型放出素子は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型放出素子としては、前記エリンソン等によるSnO2 薄膜を用いたものの他に、Au薄膜によるもの[G.Dittmer:“Thin Solid Films",9,317(1972)]や、In2 3 /SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and C.G.Fonstad:“IEEE Trans.ED Conf.",519(1975)]や、カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第1号、22(1983)]等が報告されている。
【0005】
これらの表面伝導型放出素子の素子構成の典型的な例として、図16に前述のM.Hartwellらによる素子の平面図を示す。同図において、1は基板、4はスパッタで形成された金属酸化物よりなる導電性薄膜である。導電性薄膜4は図示のようにH字形の平面形状に形成されている。該導電性薄膜4に後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理を施すことにより、電子放出部5が形成される。図中の間隔Lは、0.5〜1[mm]、Wは、0.1[mm]で設定されている。尚、図示の便宜から、電子放出部5は導電性薄膜4の中央に矩形の形状で示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0006】
M.Hartwellらによる素子をはじめとして上述の表面伝導型放出素子においては、電子放出を行う前に導電性薄膜4に通電フォーミングと呼ばれる通電処理を施すことにより電子放出部5を形成するのが一般的であった。すなわち、通電フォーミングとは、前記導電性薄膜4の両端に一定の直流電圧、もしくは、例えば1V/分程度の非常にゆっくりとしたレートで昇圧する直流電圧を印加して通電し、導電性薄膜4を局所的に破壊もしくは変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部5を形成することである。尚、局所的に破壊もしくは変形もしくは変質した導電性薄膜4の一部には、亀裂が発生する。前記通電フォーミング後に導電性薄膜4に適宜の電圧を印加した場合には、前記亀裂付近において電子放出が行われる。
【0007】
また、FE型の例は、たとえば、W.P.Dyke&W.W.Dolan,“Field emission",Advance in Electron Physics,8,89(1956)や、あるいは、C.A.Spindt,“Physical properties of thin-film field emission cathodes with molybdenium cones",J.Appl.Phys.,47,5248(1976)などが知られている。
【0008】
FE型の素子構成の典型的な例として、図17に前述のC.A.Spindtらによる素子の断面図を示す。同図において、4は基板で、5は導電材料よりなるエミッタ配線、6はエミッタコーン、7は絶縁層、8はゲート電極である。本素子は、エミッタコーン6とゲート電極8の間に適宜の電圧を印加することにより、エミッタコーン6の先端部より電界放出を起こさせるものである。
【0009】
また、FE型の他の素子構成として、図17のような積層構造ではなく、基板上に基板平面とほぼ平行にエミッタとゲート電極を配置した例もある。
【0010】
また、MIM型の例としては、たとえば、C.A.Mead,“Operation of tunnel-emission Devices,J.Appl.Phys.,32,646(1961)などが知られている。MIM型の素子構成の典型的な例を図18に示す。同図は断面図であり、図において、9は基板で、10は金属よりなる下電極、111は厚さ100オングストローム程度の薄い絶縁層、12は厚さ80〜300オングストローム程度の金属よりなる上電極である。MIM型においては、上電極12と下電極10の間に適宜の電圧を印加することにより、上電極12の表面より電子放出を起こさせるものである。
【0011】
上述の冷陰極素子は、熱陰極素子と比較して低温で電子放出を得ることができるため、加熱用ヒーターを必要としない。したがって、熱陰極素子よりも構造が単純であり、微細な素子を作製可能である。また、基板上に多数の素子を高い密度で配置しても、基板の熱溶融などの問題が発生しにくい。また、熱陰極素子がヒーターの加熱により動作するため応答速度が遅いのとは異なり、冷陰極素子の場合には応答速度が速いという利点もある。
【0012】
このため、冷陰極素子を応用するための研究が盛んに行われてきている。
【0013】
たとえば、表面伝導型放出素子は、冷陰極素子のなかでも特に構造が単純で製造も容易であることから、大面積にわたり多数の素子を形成できる利点がある。そこで、たとえば本出願人による特開昭64−31332号公報において開示されるように、多数の素子を配列して駆動するための方法が研究されている。また、表面伝導型放出素子の応用については、たとえば、画像表示装置、画像記録装置などの画像形成装置や、荷電ビーム源等が研究されている。
【0014】
特に、画像表示装置への応用としては、たとえば本出願人によるUSP5,066,883や特開平2−257551号公報や特開平4−28137号公報において開示されているように、表面伝導型放出素子と電子ビームの照射により発光する蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置が研究されている。表面伝導型放出素子と蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置は、従来の他の方式の画像表示装置よりも優れた特性が期待されている。たとえば、近年普及してきた液晶表示装置と比較しても、自発光型であるためバックライトを必要としない点や、視野角が広い点が優れていると言える。
【0015】
また、FE型を多数個ならべて駆動する方法は、たとえば本出願人によるUSP4,904,895に開示されている。また、FE型を画像表示装置に応用した例として、たとえば、R.Meyerらにより報告された平板型表示装置が知られている[R.Meyer:“Recent Development on Micro-tips Display at LETI",Tech.Digest of 4th Int.Vacuum Microelectronics Conf.,Nagahama,pp.6〜9(1991)]。
【0016】
また、MIM型を多数個並べて画像表示装置に応用した例は、たとえば本出願人による特開平3−55738号公報に開示されている。
【0017】
上記のような電子放出素子を用いた画像形成装置のうちで、奥行きの薄い平面型表示装置は省スペースかつ軽量であることから、ブラウン管型の表示装置に置き換わるものとして注目されている。
【0018】
図1は平面型の画像表示装置をなす表示パネル部の一例を示す斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0019】
図中、15はリアプレート、16は側壁、17はフェースプレートであり、リアプレート15、側壁16及びフェースプレート17により、表示パネルの内部を真空に維持するための外囲器(気密容器)を形成している。
【0020】
リアプレート15には基板11が固定されているが、この基板11上には冷陰極素子12がN×M個形成されている(N、Mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。)。また、前記N×M個の冷陰極素子12は、従来図5に示すとおり、M本の行方向配線13とN本の列方向配線14により配線されている。これら基板11、冷陰極素子12、行方向配線13及び列方向配線14によって構成される部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。また、行方向配線13と列方向配線14の少なくとも交差する部分には、両配線間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0021】
フェースプレート17の下面には、蛍光体からなる蛍光膜18が形成されており、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体(不図示)が塗り分けられている。また、蛍光膜18をなす上記各色蛍光体の間には黒色体(不図示)が設けてあり、さらに蛍光膜18のリアプレート15側の面には、Al等からなるメタルバック19が形成されている。
【0022】
Dx1〜Dxm及びDy1〜Dyn及びHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行方向配線13と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビーム源の列方向配線14と、Hvはメタルバック19と各々電気的に接続している。
【0023】
また、上記気密容器の内部は10-3Pa程度の真空に保持されており、画像表示装置の表示面積が大きくなるにしたがい、気密容器内部と外部の気圧差によるリアプレート15及びフェースプレート17の変形あるいは破壊を防止する手段が必要となる。リアプレート15及びフェースプレート17を厚くすることによる方法は、画像表示装置の重量を増加させるのみならず、斜め方向から見たときに画像のゆがみや視差を生ずる。これに対し、図1においては、比較的薄いガラス板からなり大気圧を支えるための構造支持体(スペーサあるいはリブと呼ばれる)20が設けられている。このようにして、マルチビーム電子源が形成された基板15と蛍光膜18が形成されたフェースプレート17間は通常サブミリないし数ミリに保たれ、前述したように気密容器内部は高真空に保持されている。
【0024】
以上説明した表示パネルを用いた画像表示装置は、容器外端子Dx1ないしDxm、Dy1ないしDynを通じて各冷陰極素子12に電圧を印加すると、各冷陰極素子12から電子が放出される。それと同時にメタルバック19に容器外端子Hvを通じて数100[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレート17の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜18をなす各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の画像表示装置の表示パネルにおいては、以下のような問題点があった。
【0026】
第1に、スペーサ20の近傍から放出された電子の一部がスペーサ20に当たることにより、あるいは放出電子の作用でイオン化したイオンがスペーサに付着することにより、スペーサ帯電をひきおこす可能性がある。このスペーサの帯電により冷陰極素子12から放出された電子はその軌道を曲げられ、蛍光体上の正規な位置とは異なる場所に到達し、スペーサ近傍の画像がゆがんで表示される。
【0027】
第2に、冷陰極素子12からの放出電子を加速するためにマルチビーム電子源とフェースプレート17との間には数100V以上の高電圧(即ち1kV/mm以上の高電界)が印加されるため、スペーサ20表面での沿面放電が懸念される。特に、上記のようにスペーサが帯電している場合は、放電が誘発される可能性がある。
【0028】
この問題点を解決するために、スペーサに微小電流が流れるようにして帯電を除去する提案がなされている(特開昭57−118355号公報、特開昭61−124031号公報)。そこでは絶縁性のスペーサの表面に高抵抗薄膜を形成することにより、スペーサ表面に微小電流が流れるようにしている。
【0029】
スペーサ帯電防止膜の帯電特性は表面から100Å程度までの深さの二次電子放出効率、及び表面形状により大きく影響される。しかし100Å程度までの厚さの膜は成膜の再現性や安定性が問題になるために実際の膜厚は500Å〜2000Å程度に設定する必要がある。貴金属や一部の窒化物等は非常に二次電子放出係数が小さく帯電防止膜に適しているが、上記に述べた好ましい膜厚ではスペーサの帯電防止膜として適正な抵抗値に設定することが非常に困難である。
【0030】
また、島状膜は形状的には二次電子放出による帯電防止に有効だと考えられるが、同様な理由でスペーサの帯電防止膜としては問題がある。
【0031】
そこで、本発明は上記従来スペーサの欠点を克服するものであり、極端に膜厚を薄くする必要がなく、膜厚制御が容易で、かつ安定性が高いスペーサ用帯電防止膜及びそれを用いた画像表示装置を提供するものである。
【0032】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明に係る帯電防止膜は、Al、B、Siから選ばれた少なくとも一つの元素と、Cr、Ti、Taからなる一群の遷移金属から選ばれた少なくとも一つの元素とからなる合金窒化膜であって、前記遷移金属の濃度が表面ほど高くなる濃度勾配を有している
【0033】
又、本発明に係る表示装置は、冷陰極型電子放出素子を配列した素子列を少なくとも一列以上有する電子源を駆動するための電子源駆動用配線を形成した基板と、発光材料を形成した透明基板とをスペーサを介して対抗させてなる表示装置であって、前記スペーサは、Al、B、Siから選ばれた少なくとも一つの元素と、Cr、Ti、Taからなる一群の遷移金属から選ばれた少なくとも一つの元素とからなる窒化膜で被覆された絶縁性部材を有し、該窒化膜は該遷移金属の濃度が該絶縁性部材表面ほど低くなる濃度勾配を有している
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明に係る帯電防止膜は、はAl、B、Siから選ばれる少なくとも一種と遷移金属としてTi、Ta、Crから選ばれる少なくとも一種を組み合わせた合金窒化膜において、該表面ほど遷移金属濃度が高くなる濃度勾配を膜厚方向に持つことを特徴とする帯電防止膜である。該合金窒化膜は成膜時の雰囲気の圧力を段階的に変え、かつ同時に雰囲気中の遷移金属の量を段階的に変えることにより膜厚方向に遷移金属の濃度勾配を形成することを特徴とする帯電防止膜である。該合金窒化膜は比抵抗が0.1〜108 Ωcmで膜厚が10nm〜1μmの帯電防止膜である。図2は本発明帯電防止膜の断面模式図であり、20aは帯電防止が施される絶縁性部材、20bは絶縁性部材20aの表面に形成した帯電防止膜である。図3は本発明の帯電防止膜の構成を示すものであり、帯電防止膜20bにおける遷移金属の濃度は絶縁性部材20aから帯電防止膜20bの表面まで段階的に変化する構成である。
【0035】
また、本発明に係る表示装置は、上記帯電防止膜をスペーサに用いた平面型の表示装置(電子線装置)であり、図1にその構造概略を示すように(詳細は後述)、複数の冷陰極素子12を形成した基板15と発光材料である蛍光膜18を形成した透明なフェースプレート17とをスペーサ20を介して対向させた構造を有する表示装置であり、スペーサ20が絶縁部材の表面に比抵抗が0.1〜108 Ωcmで遷移金属の濃度勾配を有する合金窒素化合物膜により被覆されていることを特徴とする表示装置である。
【0036】
本発明表示装置において、上記スペーサ20の一方の辺は冷陰極素子を形成した基板11上の配線に電気的に接続されている。また、その対向する辺は冷陰極素子より放出した電子を高いエネルギで発光材料(蛍光膜18)に衝突させるための加速電極(メタルバック19)に電気的接続される。すなわち、スペーサの表面に形成された帯電防止膜にはほぼ加速電圧を帯電防止膜の抵抗値で除した電流が流される。
【0037】
そこで、スペーサの抵抗値Rsは帯電防止及び消費電力からその望ましい範囲に設定される。帯電防止の観点から表面抵抗R□は1012Ω以下であることが好ましい。十分な帯電防止効果を得るためには1011Ω以下がさらに好ましい。表面抵抗の下限はスペーサ形状とスペーサ間に印加される電圧により左右されるが、105 Ω以上であることが好ましい。絶縁材料上に形成された帯電防止膜の厚みtは10nm〜1μmの範囲が望ましい。材料の表面エネルギー及び基板との密着性や基板温度によっても異なるが、一般的に10nm以下の薄膜は島状に形成され、抵抗が不安定で再現性に乏しい。一方膜厚tが1μm以上では膜応力が大きくなって膜はがれの危険性が高まり、かつ成膜時間が長くなるため生産性が悪い。従って、膜厚は50〜500nmであることが望ましい。
【0038】
表面抵抗R□はρ/tであり、以上に述べたR□とtの好ましい範囲から、帯電防止膜の比抵抗ρは0.1〜108 Ωcmが好ましい。さらに表面抵抗と膜厚のより好ましい範囲を実現するためには、ρは102 〜106 Ωcmとするのが良い。
【0039】
スペーサは上述したようにその上に形成した帯電防止膜を電流が流れることにより、あるいはディスプレイ全体が動作中に発熱することによりその温度が上昇する。帯電防止膜の抵抗温度係数が大きな負の値であると温度が上昇した時に抵抗値が減少し、スペーサに流れる電流が増加し、さらに温度上昇をもたらす。そして電流は電源の限界を越えるまで増加しつづける。このような電流の暴走が発生する抵抗温度係数の値は経験的に負の値で絶対値が1%以上である。すなわち、帯電防止膜の抵抗温度係数は−1%未満であることが望ましい。
【0040】
帯電防止膜特性を有する材料として、金属窒化物、金属酸化物が優れている。金属酸化物の中ではクロム、ニッケル、銅の酸化物が好ましい材料である。その理由はこれらの酸化物は二次電子放出効率が比較的小さく、電子放出素子から放出された電子がスペーサに当たった場合においても帯電しにくいためと考えられる。これら以外にも金属は二次電子放出効率が小さく好ましい。特にPt、Au等貴金属は酸化しにくく、組立工程中に酸化しないという利点を持つ。
【0041】
しかしながら、上記金属酸化物、あるいは金属はその抵抗値が帯電防止膜として望ましい比抵抗の範囲に調整することが難しかったり、雰囲気により抵抗が変化しやすいため、これらの材料のみで帯電防止膜を構成すると抵抗の制御性に問題がある。
【0042】
二種以上の元素を組み合わせた合金の窒化物はその元素の選択、組成を調整することにより、良伝導体から絶縁体まで広い範囲に抵抗値を制御できる。さらには後述する表示装置作製の工程において抵抗値の変化が少なく安定な材料である。かつ、その抵抗温度係数が−1%未満であり、実用的に使いやすい材料である。元素の組み合わせとしてはTi、Cr、Taなどの低抵抗の窒化物を作る遷移金属の中から何種かと、Al、B、Siなどの高抵抗の窒化物を作る元素の中から何種かを選び出して組み合わせることが行われる。
【0043】
これらの元素の混合比率を変えることにより抵抗値の調節を行うことが可能である。元素によって比率は異なるが、帯電防止膜として好ましい抵抗値を得るための比率はTi、Cr、Taが1at.%以上である。更にスペーサに用いた場合において好ましい組成範囲は1から20at.%である。
【0044】
本発明帯電防止膜は図2に示すように前述の合金窒化膜20aの膜厚方向に遷移金属の濃度分布を有する構成としているが、その理由を以下に述べる。
【0045】
合金窒化膜はスパッタ、窒素ガス雰囲気中での反応性スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法等の薄膜形成手段により絶縁性部材上に形成される。窒素ガス雰囲気中での反応性スパッタ、イオンプレーティング、イオンアシスト蒸着法等の手段により形成する場合には、成膜時の圧力を高めに設定する下で遷移金属のターゲットの投入電力を高くするなどで雰囲気中の遷移金属量を増加させることにより比抵抗を所望の値に維持したまま遷移金属の濃度が高い膜を作製できる。しかしこの場合、膜厚を厚く形成すると電子電流を多く流入させた場合に部分的な膜はがれを発生することがあるため、あらかじめ低圧下で遷移金属濃度の低い膜を作製し、表面近傍において成膜時の圧力と遷移金属濃度を高める方法が望ましい。
【0046】
本発明帯電防止膜を平面型の表示装置のスペーサ帯電防止に対して説明したが、これに限らず他の用途における帯電防止膜として使用できることができる。
【0047】
次に、本発明を適用した画像表示装置の表示パネルの構成と製造法について、具体的な例を示して説明する。
【0048】
図1は、実施例に用いた表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0049】
図中、15はリアプレート、16は側壁、17はフェースプレートであり、15,16,17により表示パネルの内部を真空に維持するための気密容器を形成している。気密容器を組み立てるにあたっては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持させるため封着する必要があるが、たとえばフリットガラスを接合部に塗布し、大気中ありは窒素雰囲気中で、400〜500℃で10分以上焼成することにより封着を達成した。気密容器内部を真空に排気する方法については後述する。また、上記気密容器の内部は10-3[Pa]程度の真空に保持されるので、大気圧や不意の衝撃などによる気密容器の破壊を防止する目的で、耐大気圧構造体として、スペーサ20が設けられている。
【0050】
リアプレート15には、基板11が固定されているが、該基板上には冷陰極素子12がn×m個形成されている(n、mは2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。たとえば、高品位テレビジョンの表示を目的とした表示装置においては、n=3000、m=1000以上の数を設定することが望ましい。)。前記N×M個の冷陰極素子は、m本の行方向配線13とn本の列方向配線14により単純マトリクス配線されている。前記、11,12,13,14によって構成される部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。
【0051】
本発明の画像表示装置に用いるマルチ電子ビーム源は、冷陰極素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、冷陰極素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。したがって、たとえば表面伝導型放出素子やFE型、あるいはMIM型などの冷陰極素子を用いることができる。
【0052】
次に、冷陰極素子として表面伝導型放出素子(後述)を基板上に配列して単純マトリクス配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0053】
図4に示すのは、図1の表示パネルに用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。基板11上には、後述の図5で示すものと同様な表面伝導型放出素子が配列され、これらの素子は行方向配線電極13と列方向配線電極14により単純マトリクス状に配線されている。行方向配線電極13と列方向配線電極14の交差する部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0054】
図4のD−D′に沿った断面を図5に示す。
【0055】
なお、このような構造のマルチ電子源は、あらかじめ基板上に行方向配線電極1103、列方向配線電極1104、電極間絶縁層(不図示)、及び表面伝導型放出素子の素子電極と導電性薄膜を形成した後、行方向配線電極1103及び列方向配線電極1104を介して各素子に給電して通電フォーミング処理(後述)と通電活性化処理(後述)を行うことにより製造した。
【0056】
本実施例においては、気密容器のリアプレート15にマルチ電子ビーム源の基板11を固定する構成としたが、マルチ電子ビーム源の基板11が十分な強度を有するものである場合には、気密容器のリアプレートとしてマルチ電子ビーム源の基板11自体を用いてもよい。
【0057】
また、フェースプレート17の下面には、蛍光膜18が形成されている。本実施例はカラー表示装置であるため、蛍光膜18の部分にはCRTの分野で用いられる赤、緑、青の3原色の蛍光体が塗り分けられている。各色の蛍光体は、たとえば図6の(A)に示すようにストライプ状に塗り分けられ、蛍光体のストライプの間には黒色の導電体21bが設けてある。黒色の導電体21bを設ける目的は、電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても表示色にずれが生じないようにすることや、外光の反射を防止して表示コントラストの低下を防ぐこと、電子ビームによる蛍光膜のチャージアップを防止することなどである。黒色の導電体21bには、黒鉛を主成分として用いたが、上記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いても良い。
【0058】
また、3原色の蛍光体の塗り分け方は前記図6(A)に示したストライプ状の配列に限られるものではなく、たとえば図6(B)に示すようなデルタ状配列や、それ以外の配列であってもよい。
【0059】
なお、モノクロームの表示パネルを作成する場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜18に用いればよく、また黒色導電材料は必ずしも用いなくともよい。
【0060】
また、蛍光膜18のリアプレート側の面には、CRTの分野では公知のメタルバック19を設けてある。メタルバック19を設けた目的は、蛍光膜18が発する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させることや、負イオンの衝突から蛍光膜18を保護することや、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させることや、蛍光膜18を励起した電子の導電路として作用させることなどである。メタルバック19は、蛍光膜18をフェースプレート基板17上に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理し、その上にAlを真空蒸着する方法により形成した。なお、蛍光膜18に低電圧用の蛍光体材料を用いた場合には、メタルバック19は用いない。
【0061】
また、本実施例では用いなかったが、加速電圧の印加用や蛍光膜の導電性向上を目的として、フェースプレート基板17と蛍光膜18との間に、たとえばITOを材料とする透明電極を設けてもよい。
【0062】
図7は図1のA−A′の断面模式図であり、各部の番号は図1に対応している。スペーサ20は絶縁性部材20aの表面に帯電防止を目的とした高抵抗膜20bを成膜し、かつフェースプレート17の内側(メタルバック19等)及び基板11の表面(行方向配線13または列方向配線14)に面したスペーサの当接面に低抵抗膜29を成膜した部材からなるもので、上記目的を達成するのに必要な数だけ、かつ必要な間隔をおいて配置され、フェースプレートの内側及び基板11の表面に接合材40により固定される。また、高抵抗膜20bは、絶縁性部材20aの表面のうち、少なくとも気密容器内の真空中に露出している面に成膜されており、スペーサ20上の低抵抗膜29及び接合材40を介して、フェースプレート17の内側(メタルバック19等)及び基板11の表面(行方向配線13または列方向配線14)に電気的に接続される。ここで説明される態様においては、スペーサ20の形状は薄板状とし、行方向配線13に平行に配置され、行方向配線14に電気的に接続されている。
【0063】
スペーサ20としては、基板11上の行方向配線13及び列方向配線14とフェースプレート17内面のメタルバック19との間に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、かつスペーサ20の表面への帯電を防止する程度の導電性を有する必要がある。この点に関しては、既に述べた通りである。
【0064】
スペーサ20の絶縁性部材20aとしては、例えば石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少したガラス、ソーダライムガラス、アルミナ等のセラミックス部材等が挙げられる。なお、絶縁性部材20aはその熱膨張率が気密容器及び基板11を成す部材と近いものが好ましい。
【0065】
また、高抵抗膜20bとしては、既に述べたように帯電防止効果の維持及びリーク電流による消費電力抑制を考慮して、その表面抵抗値が105 [Ω/□]から102 [Ω/□]の範囲のものであることが好ましく、その材料としては、前述の各種の材料が用いられる。
【0066】
また、低抵抗膜29は、高抵抗膜20bに比べ十分に低い抵抗値を選択すればよく、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属、あるいは合金、及びPd、Ag、Au、RuO2 、Pd−Ag等の金属や金属酸化物とガラス等から構成される印刷導体、あるいはIn2 3 −SnO2 等の透明導体及びポリシリコン等の半導体材料等より適宜選択される。
【0067】
接合材40はスペーサ20が行方向配線13及びメタルバック19と電気的に接続するように、導電性をもたせる必要がある。すなわち、導電性接着材や金属粒子や導電性フィラーを添加したフリットガラスが好適である。
【0068】
また、Dx1〜Dxm及びDy1〜Dyn及びHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用端子である。Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行方向配線13と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビーム源の列方向配線14と、Hvはフェースプレートのメタルバック19と電気的に接続している。
【0069】
また、気密容器内部を真空に排気するには、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポンプとを接続し、気密容器内を10-5[Pa]程度の真空度まで排気する。その後、排気管を封止するが、気密容器内の真空度を維持するために、封止の直前あるいは封止後に気密容器内の所定の位置にゲッター膜(不図示)を形成する。ゲッター膜とは、たとえばBaを主成分とするゲッター材料をヒーターもしくは高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜であり、該ゲッター膜の吸着作用により気密容器内は1×10-3ないしは1×10-5[Pa]の真空度に維持される。
【0070】
以上説明した表示パネルを用いた画像表示装置は、容器外端子Dx1ないしDxm、Dy1ないしDynを通じて各冷陰極素子12に電圧を印加すると、各冷陰極素子12から電子が放出される。それと同時にメタルバック19に容器外端子Hvを通じて数100[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上記放出された電子を加速し、フェースプレート17の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜18をなす各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
【0071】
通常、冷陰極素子である本発明の表面伝導型放出素子12への印加電圧は12〜16[V]程度、メタルバック19と冷陰極素子12との距離dは0.1[mm]から8[mm]程度、メタルバック19と冷陰極素子12間の電圧0.1[kV]から10[Kv]程度である。
【0072】
以上、本発明の実施例の表示パネルの基本構成と製法、及び画像表示装置の概要を説明した。
【0073】
次に、前記実施例の表示パネルに用いたマルチ電子ビーム源の製造方法について説明する。本発明の画像表示装置に用いるマルチ電子ビーム源は、冷陰極素子を単純マトリクス配線した電子源であれば、冷陰極素子の材料や形状あるいは製法に制限はない。したがって、たとえば表面伝導型放出素子やFE型、あるいはMIM型などの冷陰極素子を用いることができる。
【0074】
ただし、表示画面が大きくてしかも安価な表示装置が求められる状況のもとでは、これらの冷陰極素子の中でも、表面伝導型放出素子が特に好ましい。すなわち、FE型ではエミッタコーンとゲート電極の相対位置や形状が電子放出特性を大きく左右するため、極めて高精度の製造技術を必要とするが、これは大面積化や製造コストの低減を達成するには不利な要因となる。また、MIM型では、絶縁層と上電極の膜厚を薄くてしかも均一にする必要があるが、これも大面積化や製造コストの低減を達成するには不利な要因となる。その点、表面伝導型放出素子は、比較的構造方法が単純なため、大面積化や製造コストの低減が容易である。また、発明者らは、表面伝導型放出素子の中でも、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成したものがとりわけ電子放出特性に優れ、しかも製造が容易に行えることを見いだしている。したがって、高輝度で大画面の画像表示装置のマルチ電子ビーム源に用いるには、最も好適であると言える。そこで、上記実施例の表示パネルにおいては、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子を用いた。そこで、まず好適な表面伝導型放出素子について基本的な構成と製法及び特性を説明し、その後で多数の素子を単純マトリクス配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0075】
(表面伝導型放出素子の好適な素子構成と製法)
電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面型と垂直型の2種類があげられる。
【0076】
(平面型の表面伝導型放出素子)
まず最初に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法について説明する。図8に示すのは、平面型の表面伝導型放出素子の構成を説明するための平面図(a)及び断面図(b)である。図中、11は基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、6は通電活性化処理により形成した薄膜である。
【0077】
基板11としては、たとえば、石英ガラスや青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上述の各種基板上にたとえばSiO2 を材料とする絶縁層を積層した基板、などを用いることができる。
【0078】
また、基板11上に基板面と平行に対向して設けられた素子電極2と3は、導電性を有する材料によって形成されている。たとえば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Cu、Pd、Ag等をはじめとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいはIn2 3 −SnO2 をはじめとする金属酸化物、ポリシリコンなどの半導体、などの中から適宜材料を選択して用いればよい。電極を形成するには、たとえば真空蒸着などの製膜技術とフォトリソグラフィー、エッチングなどのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以外の方法(たとえば印刷技術)を用いて形成してもさしつかえない。
【0079】
素子電極2と3の形状は、当該電子放出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的には、電極間隔Lは通常は数10nmから数100μmの範囲から適当な数値を選んで設計されるが、なかでも表示装置に応用するために好ましいのは数μmより数10μmの範囲である。また、素子電極の厚さdについては、通常は数10nmから数μmの範囲から適当な数値が選ばれる。
【0080】
また、導電性薄膜4の部分には、微粒子膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素として多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のことをさす。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、個々の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子が互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに重なり合った構造が観測される。
【0081】
微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、10分の数nmから数100nmの範囲に含まれるものであるが、なかでも好ましいのは数nmから20nmの範囲のものである。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような諸条件を考慮して適宜設定される。すなわち、素子電極2あるいは3と電気的に良好に接続するのに必要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条件、などである。具体的には、10分の数nmから数100nmの範囲の中で設定するが、中でも好ましいのは1nmから50nmの間である。
【0082】
また、微粒子膜を形成するのに用いられうる材料としては、たとえば、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pbなどをはじめとする金属や、PdO、SnO2 、In2 3 、PbO、Sb2 3 などをはじめとする酸化物や、HfB2 、ZrB2 、LaB6 、CeB6 、YB4 、GdB4 などをはじめとする硼化物や、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WCなどをはじめとする炭化物や、TiN、ZrN、HfNなどをはじめとする窒化物や、Si、Geなどをはじめとする半導体や、カーボンなどが挙げられ、これらの中から適宜選択される。
【0083】
以上述べたように、導電性薄膜4を微粒子膜で形成したが、そのシート抵抗値Rsについては、103 から107 [オーム/□]の範囲に含まれるように設定した。
【0084】
なお、導電性薄膜4と素子電極2及び3とは、電気的に良好に接続されるのが望ましいため、互いの一部が重なりあうような構造をとっている。その重なり方は、図7の例においては、下から、基板、素子電極、導電性薄膜の順序で積層したが、場合によっては下から、基板、導電性薄膜、素子電極の順序で積層してもさしつかえない。
【0085】
また、電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気的には周囲の導電性薄膜よりも高抵抗な性質を有している。亀裂は、導電性薄膜4に対して、後述する通電フォーミングの処理を行うことにより形成する。亀裂内には、10分の数nmから数10nmの粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、実際の電子放出部の位置や形状を精密かつ正確に図示するのは困難なため、図8においては模式的に示した。
【0086】
また、薄膜6は、炭素もしくは炭素化合物よりなる薄膜で、電子放出部5及びその近傍を被覆している。薄膜6は、通電フォーミング処理後に、後述する通電活性化の処理を行うことにより形成する。
【0087】
薄膜6は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は50[nm]以下とするが、30[nm]以下とするのがさらに好ましい。なお、実際の薄膜6の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、図8においては模式的に示した。
【0088】
以上、好ましい素子の基本構成を述べたが、実施例においては以下のような素子を用いた。
【0089】
すなわち、基板11には青板ガラスを用い、素子電極2と3にはNi薄膜を用いた。素子電極の厚さdは100[nm]、電極間隔Lは2[μm]とした。
【0090】
微粒子膜の主要材料としてPdもしくはPdOを用い、微粒子膜の厚さは約10[nm]、幅Wは10[nm]とした。
【0091】
次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子の製造方法について説明する。図9の(a)〜(e)は、表面伝導型放出素子の製造工程を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図8と同一である。
【0092】
1)まず、図9(a)に示すように、基板11上に素子電極2及び3を形成する。
【0093】
形成するにあたっては、あらかじめ基板11を洗剤、純水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、素子電極の材料を堆積させる(堆積する方法としては、たとえば、蒸着法やスパッタ法などの真空成膜技術を用いればよい。)。その後、堆積した電極材料を、フォトリソグラフィー・エッチング技術を用いてパターニングし、(a)に示した一対の素子電極(2と3)を形成する。
【0094】
2)次に、同図(b)に示すように、導電性薄膜4を形成する。
【0095】
形成するにあたっては、まず前記(a)の基板に有機金属溶液を塗布して乾燥し、加熱焼成処理して微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・エッチングにより所定の形状にパターニングする。ここで、有機金属溶液とは、導電性薄膜に用いる微粒子の材料を主要元素とする有機金属化合物の溶液である(具体的には、本実施例では主要元素としてPdを用いた。また、実施例では塗布方法として、ディッピング法を用いたが、それ以外のたとえばスピンナー法やスプレー法を用いてもよい。)。
【0096】
また、微粒子膜で作られる導電性薄膜の成膜方法としては、本実施例で用いた有機金属溶液の塗布による方法以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ法、あるいは化学的気相堆積法などを用いる場合もある。
【0097】
3)次に、同図(c)に示すように、フォーミング用電源22から素子電極2と3の間に適宜の電圧を印加し、通電フォーミング処理を行って、電子放出部5を形成する。
【0098】
通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作られた導電性薄膜4に通電を行って、その一部を適宜に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うのに好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜で作られた導電性薄膜のうち電子放出を行うのに好適な構造に変化した部分(すなわち電子放出部5)においては、薄膜に適当な亀裂が形成されている。なお、電子放出部5が形成される前と比較すると、形成された後は素子電極2と3の間で計測される電気抵抗は大幅に増加する。
【0099】
通電方法をより詳しく説明するために、図10に、フォーミング用電源22から印加する適宜の電圧波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電性薄膜をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好ましく、本実施例の場合には同図に示したようにパルス幅T1の三角波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加した。その際には、三角波パルスの波高値Vpfを、順次昇圧した。また、電子放出部5の形成状況をモニターするためのモニターパルスPmを適宜の間隔で三角波パルスの間に挿入し、その際に流れる電流を電流計23で計測した。
【0100】
実施例においては、たとえば10-3[Pa]程度の真空雰囲気下において、たとえばパルス幅T1を1[msec]、パルス間隔T2を10[msec]とし、波高値Vpfを1パルスごとに0.1[V]ずつ昇圧した。そして、三角波を5パルス印加するたびに1回の割りで、モニターパルスPmを挿入した。フォーミング処理に悪影響を及ぼすことがないように、モニターパルスの電圧Vpmは0.1[V]に設定した。そして、素子電極2と3の間の電気抵抗が1×106[Ω]になった段階、すなわちモニターパルス印加時に電流計23で計測される電流が1×10-7[A]以下になった段階で、フォーミング処理にかかわる通電を終了した。
【0101】
なお、上記の方法は、本実施例の表面伝導型放出素子に関する好ましい方法であり、たとえば微粒子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて通電の条件を適宜変更するのが望ましい。
【0102】
4)次に、図8の(d)に示すように、活性化用電源24から素子電極2と3の間に適宜の電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電子放出特性の改善を行う。
【0103】
通電活性化処理とは、前記通電フォーミング処理により形成された電子放出部5に適宜の条件で通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積せしめる処理のことである(図においては、炭素もしくは炭素化合物よりなる堆積物を部材5′として模式的に示した)。なお、通電活性化処理を行うことにより、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流を典型的には100倍以上に増加させることができる。
【0104】
具体的には、10-2ないし10-3[Pa]の範囲内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは炭素化合物を堆積させる。堆積物5′は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は50[nm]以下、より好ましくは30[nm]以下である。
【0105】
通電方法をより詳しく説明するために、図11(a)に、活性化用電源24から印加する適宜の電圧波形の一例を示す。本実施例においては、一定電圧の矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行ったが、具体的には、矩形波の電圧Vacは14[V]、パルス幅T3は1[msec]、パルス間隔T4は10[msec]とした。なお、上述の通電条件は、本実施例の表面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜変更するのが望ましい。
【0106】
図9の(d)に示す25は該表面伝導型放出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極で、直流高電圧電源26及び電流計27が接続されている(なお、基板11を、表示パネルの中に組み込んでから活性化処理を行う場合には、表示パネルの蛍光面をアノード電極25として用いる。)。活性化用電源24から電圧を印加する間、電流計27で放出電流Ieを計測して通電活性化処理の進行状況をモニターし、活性化用電源24の動作を制御する。電流計27で計測された放出電流Ieの一例を図11(b)に示すが、活性化用電源24からパルス電圧を印加しはじめると、時間の経過とともに放出電流Ieは増加するが、やがて飽和してほとんど増加しなくなる。このように、放出電流Ieがほぼ飽和した時点で活性化用電源24からの電圧印加を停止し、通電活性化処理を終了する。
【0107】
なお、上述の通電条件は、本実施例の表面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて条件を適宜変更するのが望ましい。
【0108】
以上のようにして、図9(e)に示す平面型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0109】
(垂直型の表面伝導型放出素子)
次に、電子放出部もしくはその周辺を微粒子膜から形成した表面伝導型放出素子のもうひとつの代表的な構成、すなわち垂直型の表面伝導型放出素子の構成について説明する。
【0110】
図12は、垂直型の基本構成を説明するための模式的な断面図であり、図中の11は基板、2と3は素子電極、28は段差形成部材、4は微粒子膜を用いた導電性薄膜、5は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、6は通電活性化処理により形成した薄膜である。
【0111】
垂直型が先に説明した平面型と異なる点は、素子電極のうちの片方(3)が段差形成部材28上に設けられており、導電性薄膜4が段差形成部材28の側面を被覆している点にある。したがって、前記図8の平面型における素子電極間隔Lは、垂直型においては段差形成部材28の段差高Lsとして設定される。なお、基板11、素子電極3及び4、微粒子膜を用いた導電性薄膜5については、前記平面型の説明中に列挙した材料を同様に用いることが可能である。また、段差形成部材28には、たとえばSiO2 のような電気的に絶縁性の材料を用いる。
【0112】
次に、垂直型の表面伝導型放出素子の製法について説明する。図13の(a)〜(f)は、製造工程を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図11と同一である。
【0113】
1)まず、図13(a)に示すように、基板11上に素子電極44を形成する。
【0114】
2)次に、同図(b)に示すように、段差形成部材を形成するための絶縁層を積層する。絶縁層は、たとえばSiO2 をスパッタ法で積層すればよいが、たとえば真空蒸着法や印刷法などの他の成膜方法を用いてもよい。
【0115】
3)次に、同図(c)に示すように、絶縁層の上に素子電極3を形成する。
【0116】
4)次に、同図(d)に示すように、絶縁層の一部を、たとえばエッチング法を用いて除去し、素子電極4を露出させる。
【0117】
5)次に、同図(e)に示すように、微粒子膜を用いた導電性薄膜5を形成する。形成するには、前記平面型の場合と同じく、たとえば塗布法などの成膜技術を用いればよい。
【0118】
6)次に、前記平面型の場合と同じく、通電フォーミング処理を行い、電子放出部を形成する(図9(c)を用いて説明した平面型の通電フォーミング処理と同様の処理を行えばよい。)。
【0119】
7)次に、前記平面型の場合と同じく、通電活性化処理を行い、電子放出部近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積させる(図9(d)を用いて説明した平面型の通電活性化処理と同様の処理を行えばよい。)。
【0120】
以上のようにして、図13(f)に示す垂直型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0121】
(表示装置に用いた表面伝導型放出素子の特性)
以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子について素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用いた素子の特性について述べる。
【0122】
図14に、表示装置に用いた素子の、(放出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、及び(素子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例を示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータを変更することにより変化するものであるため、2本のグラフは各々任意単位で図示した。
【0123】
表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに関して以下に述べる3つの特性を有している。
【0124】
第一に、ある電圧(これを閾値電圧Vthと呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に放出電流Ieが増加するが、一方、閾値電圧Vth未満の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。
【0125】
すなわち、放出電流Ieに関して、明確な閾値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0126】
第二に、放出電流Ieは素子に印加する電圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流Ieの大きさを制御できる。
【0127】
第三に、素子に印加する電圧Vfに対して素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出される電子の電荷量を制御できる。
【0128】
以上のような特性を有するため、表面伝導型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。たとえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vth以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には閾値電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表示を行うことが可能である。
【0129】
また、第二の特性かまたは第三の特性を利用することにより、発光輝度を制御することができるため、階調表示を行うことが可能である。
【0130】
(多数素子を単純マトリクス配線したマルチ電子ビーム源の構造)
次に、上述の表面伝導型放出素子を基板上に配列して単純マトリクス配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0131】
図4に示すのは、前記図1の表示パネルに用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。基板上には、前記図8で示したものと同様な表面伝導型放出素子が配列され、これらの素子は行方向配線電極13と列方向配線電極14により単純マトリクス状に配線されている。行方向配線電極13と列方向配線電極14の交差する部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0132】
図4のD−D′に沿った断面を、図5に示す。
【0133】
なお、このような構造のマルチ電子源は、あらかじめ基板上に行方向配線電極13、列方向配線電極14、電極間絶縁層(不図示)、及び表面伝導型放出素子の素子電極と導電性薄膜を形成した後、行方向配線電極13及び列方向配線電極14を介して各素子に給電して通電フォーミング処理と通電活性化処理を行うことにより製造した。
【0134】
図15は、NTSC方式のテレビ信号に基づいてテレビジョン表示を行うための駆動回路の概略構成をブロック図で示したものである。同図中、表示パネル1701は前述した表示パネルに相当するもので、前述したように製造され、動作する。また、走査回路1702は表示ラインを走査し、制御回路1703は走査回路へ入力する信号等を生成する。シフトレジスタ1704は1ライン毎のデータをシフトし、ラインメモリ1705は、シフトレジスタ1704からの1ライン分のデータを変調信号発生器1707に入力する。同期信号分離回路1706はNTSC信号から同期信号を分離する。
【0135】
以下、図15の装置各部の機能を詳しく説明する。
【0136】
まず表示パネル1701は、端子Dx1ないしDxm及び端子Dy1ないしDyn、及び高圧端子Hvを介して外部の電気回路と接続されている。このうち、端子Dx1ないしDxmには、表示パネル1701内に設けられているマルチ電子ビーム源、すなわちm行n列の行列状にマトリクス配線された冷陰極素子を1行(n素子)ずつ順次駆動してゆくための走査信号が印加される。一方、端子Dy1ないしDynには、前記走査信号により選択された1行分のn個の各素子の出力電子ビームを制御するための変調信号が印加される。また、高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、たとえば5[kV]の直流電圧が供給されるが、これはマルチ電子ビーム源より出力される電子ビームに蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与するための加速電圧である。
【0137】
次に、走査回路1702について説明する。同回路は、内部にm個のスイッチング素子(図中、S1ないしSmで模式的に示されている)を備えるもので、各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル1701の端子Dx1ないしDxmと電気的に接続するものである。S1ないしSmの各スイッチング素子は、制御回路1703が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するものだが、実際にはたとえばFETのようなスイッチング素子を組合わせることにより容易に構成することが可能である。なお、前記直流電圧源Vxは、図14に例示した電子放出素子の特性に基づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子放出しきい値電圧Vth電圧以下となるよう、一定電圧を出力するよう設定されている。
【0138】
また、制御回路1703は、外部より入力する画像信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作を整合させる働きをもつものである。次に説明する同期信号分離回路1706より送られる同期信号Tsyncに基づいて、各部に対してTscan及びTsft 及びTMRY の各制御信号を発生する。同期信号分離回路1706は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離するための回路で、良く知られているように周波数分離(フィルタ)回路を用いれば容易に構成できるものである。同期信号分離回路1706により分離された同期信号は、良く知られるように垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜上、TSYNC信号として図示した。一方、前記テレビ信号から分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表すが、同信号はシフトレジスタ1704に入力される。
【0139】
シフトレジスタ1704は、時系列的にシリアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制御回路1703より送られる制御信号TSFT に基づいて動作する。すなわち、制御信号TSFT は、シフトレジスタ1704のシフトクロックであると言い換えることもできる。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放出素子n素子分の駆動データに相当する)のデータは、Id1ないしIdnのn個の信号として前記シフトレジスタ1704より出力される。
【0140】
ラインメモリ1705は、画像1ライン分のデータを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であり、制御回路1703より送られる制御信号TMRY にしたがって適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶された内容は、I′d1ないしI′dnとして出力され、変調信号発生器1707に入力される。
【0141】
変調信号発生器1707は、前記画像データI′d1ないしI′dnの各々に応じて、電子放出素子12の各々を適切に駆動変調するための信号源で、その出力信号は、端子Dy1ないしDynを通じて表示パネル1701内の電子放出素子12に印加される。
【0142】
図14を用いて説明したように、本発明に関わる表面伝導型放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有している。すなわち、電子放出には明確な閾値電圧Vth(後述する実施例の表面伝導型放出素子では8[V])があり、閾値Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出が生じる。また電子放出閾値Vth以上の電圧に対しては、図14のグラフのように電圧の変化に応じて放出電流Ieも変化する。このことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、たとえば電子放出閾値Vth以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電子放出閾値Vth以上の電圧を印加する場合には表面伝導型放出素子から電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能である。
【0143】
従って、入力信号に応じて、電子放出素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器1707として、一定長さの電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いることができる。また、パルス幅変調方式を実施するに際しては、変調信号発生器1707として、一定の波高値の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いることができる。
【0144】
シフトレジスタ1704やラインメモリ1705は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のものでも採用できる。すなわち、画像信号のシリアル/パラレル変換や記憶が所定の速度で行われればよいからである。
【0145】
デジタル信号式を用いる場合には、同期信号分離回路1706の出力信号DATAをデジタル信号化する必要があるが、これには同期信号分離回路1706の出力部にA/D変換器を設ければよい。これに関連してラインメモリ1705の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変調信号発生器に用いられる回路が若干異なったものとなる。すなわち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器1707には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器1707には、例えば高速の発振器及び発振器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0146】
アナログ信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器1707には、例えばオペアンプなどを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてシフトレベル回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を採用でき、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0147】
このような構成をとりうる本発明の適用可能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dynを介して電圧を印加することにより、電子放出が生じる。高圧端子Hvを介してメタルバック21あるいは透明電極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速された電子は、蛍光膜18に衝突し、発光が生じて画像が形成される。
【0148】
ここで述べた画像表示装置の構成は、本発明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号についてはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限るものではなく、PAL、SECAM方式など他、これらより多数の走査線からなるTV信号(MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0149】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述する。
【0150】
以下に述べる各実施例においては、マルチ電子ビーム源として、前述した、電極間の導電性微粒子膜に電子放出部を有するタイプのN×M個(N=3072、M=1024)の表面伝導型放出素子を、M本の行方向配線とN本の列方向配線とによりマトリクス配線(図1及び図4参照)したマルチ電子ビーム源を用いた。
【0151】
〔実施例1〕
アルゴンと窒素の混合雰囲気中でCr及びAlのターゲットを高周波電源で同時スパッタすることにより、Cr−Al合金窒化膜を形成した。Alターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Crターゲットに加える高周波電力とスパッタガスの圧力を表1のように変化させた。
【表1】
Figure 0003728099
すなわち最初の30min間を条件1、次の10min間を条件2で成膜した。トータルの膜厚は200nmであった。この時スパッタガスの分圧はAr:N2 を7:3とし、絶縁性部材は青板ガラスを用いた。EPMA(電子線マイクロアナライザー)によって各条件で個別に成膜された膜中のCr濃度を測定した。条件1で成膜された膜中のCr濃度は1.2atom%、条件2で成膜された膜中のCr濃度は1.6atom%であった。このように作製された膜厚200nmの合金窒化膜のCr濃度をEPMAによって測定したところ1.5atom%であった。また、比抵抗は1×107Ωcmであった。これを試料Aとした。
【0152】
〔実施例2〕
実施例1のCrに代えてTiターゲットを用い、青板ガラスにTi−Al合金窒化膜を200nm厚形成した。スパッタガスは実施例1と同じであり、Alターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Tiターゲットに加える高周波電力とスパッタガスの圧力を表2のように変化させた。
【表2】
Figure 0003728099
その結果、比抵抗9×106 Ωcmの膜が得られた。EPMAによって測定されたTi濃度は6atom%であった。これを試料Bとした。
【0153】
〔実施例3〕
実施例1のCrに代えてTaターゲットを用い、青板ガラスにTa−Al合金窒化膜を200nm厚形成した。スパッタガスは実施例1と同じであり、Alターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Taターゲットに加える高周波電力とスパッタガスの全圧を表3のように変化させた。
【表3】
Figure 0003728099
その結果、比抵抗1.0×107 Ωcm、EPMAによって測定されたTa濃度は1.5atom%の膜が得られた。これを試料Cとした。
【0154】
〔実施例4〕
アルゴンと窒素の混合雰囲気中でCr及びBNのターゲットをRFを用いて同時スパッタをすることによりCr−B合金窒化膜を成膜した。この時、BNターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Crターゲットに加える高周波電力とスパッタガスの全圧を表4のように変化させた。
【表4】
Figure 0003728099
スパッタガス分圧はAr:N2 =8:2とした。絶縁性部材には青板ガラスを用い膜厚370nmの合金窒化膜の比抵抗は1×108 Ωcm、EPMAによって測定されたCr濃度は5.5atom%であった。これを試料Dとした。
【0155】
〔実施例5〕
アルゴンと窒素の混合雰囲気中でCrとSiのターゲットをRFを用いて同時スパッタすることによりCr−Si合金窒化膜を形成した。この時、Siターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Crターゲットに加えるDC電力とスパッタガスの全圧を表5のように変化させた。
【表5】
Figure 0003728099
その際、基板温度を150℃とした。スパッタガス分圧はAr:N2 =8.5:1.5とした。絶縁性部材は青板ガラスを用い膜厚280nmの合金窒化膜の比抵抗は5.0×106 Ωcm、EPMAによって測定されたCr濃度は4atom%であった。これを試料Eとした。
【0156】
〔比較例1〕
実施例1と同様にCr及びAlのターゲットをアルゴンと窒素の混合雰囲気中で高周波電源で同時スパッタすることにより、Cr−Al合金窒化膜を形成した。この時Alターゲットに加える高周波電力を600Wとし、Crターゲットに加える高周波電力を表6のように変化させた。
【表6】
Figure 0003728099
その際、スパッタガスの分圧はAr:N2を7:3とし、スパッタガスの全圧を0.45Paとした。絶縁性部材は青板ガラスを用いた。膜厚は200nmであった。EPMAによって測定されたCr濃度は0.9atom%で、比抵抗は9×106 Ωcmであった。これを比較試料1とした。
【0157】
〔比較例2〕
実施例1と同様にCr及びAlのターゲットをアルゴンと窒素の混合雰囲気中で高周波電源で同時スパッタすることにより、Cr−Al合金窒化膜を形成した。この時Al、Crターゲットに加える高周波電力をそれぞれ600W、21Wとし、スパッタガスの分圧はAr:N2 を7:3とし、スパッタガスの全圧を1.5Paとした。絶縁性部材は青板ガラスを用いた。膜厚は200nmであった。EPMAによって測定されたCr濃度は1.6atom%、比抵抗は1×107 Ωcmであった。これを比較試料2とした。
【0158】
〔比較例3〕
絶縁体基板に青板ガラスを用い、スパッタ法により膜厚200nmの酸化クロム膜を形成した。比抵抗は2×106 Ωcmであった。これを比較試料3とした。
【0159】
〔比較例4〕
絶縁性部材として青板ガラス上に比較例1で述べたのと同じCr−Al−Nを200nm成膜し、さらに該Cr−Al−N膜上にPtを40nm成膜した。これを比較試料4とする。
【0160】
以上本発明帯電防止膜を形成した試料A〜E及び比較例の試料1、試料2、試料3及び比較試料4をそれぞれ、425℃熱処理、真空中、真空中200℃熱処理後の抵抗値を測定した。比較試料3は抵抗値が大きく変動する。すなわち、比較例3で示した酸化クロムは比抵抗値が帯電防止膜として好ましい範囲にあるが、抵抗値の安定性が悪い。これに対し、本発明帯電防止膜は熱処理後も抵抗変化が小さいので、電子線ディスプレイのように使用環境が真空であったり、作製工程に高温熱処理、真空熱処理を含む用途に対して特に有効なものである。一方、比較試料1の抵抗値はプロセスを通して安定はしているものの絶対値にはバラツキが見られた。また、Ptのトップコート層の膜厚を40nmにした比較試料4は比抵抗が105 Ωcmを示し、電子線ディスプレイのスペーサ帯電防止膜としては抵抗値が低すぎ、十分な高圧をかけることができない。さらに、成膜時の雰囲気の圧力を一貫して高く設定した比較試料2は照射する電子電流量が大きい場合に部分的な膜剥離が見られた。
【0161】
次に本発明を適用した表示装置の表示パネルの構成について、具体的な例を示して説明する。図1は実施例に用いた表示パネルの斜視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。図中、15はリアプレート、16は支持枠、17はフェースプレートであり、15,16,17により表示パネルの内部は真空に維持されている。リアプレート15には、基板11が固定されているが、該基板上には冷陰極型電子放出素子として表面伝導型放出素子12が1920×480個形成されている。図1では個数は簡略化して表示してある。
【0162】
本実施例においては、気密容器のリアプレート15にマルチ電子ビーム源の基板11を固定する構成としたが、マルチ電子ビーム源の基板11が十分な強度を有するものである場合は、気密容器のリアプレートとしてマルチ電子ビーム源の基板11自体を用いてもよい。
【0163】
図4は前記図1の表示パネルに用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。基板上には、表面伝導型放出素子が配列され、これらの素子はX方向配線電極13とY方向配線電極14により単純マトリクス状に配線されている。X方向配線電極13とY方向配線電極14の交差する部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0164】
図4のD−D′に沿った断面を、図5に示す。
【0165】
(平面型の表面伝導型放出素子)
本実施例に用いた平面型の表面伝導型放出素子の素子構成について図8を用いて説明する。図中、11は基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、6は通電活性化処理により形成した薄膜である。
【0166】
基板11は石英ガラスや青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、アルミナをはじめとする各種セラミクス基板あるいは上述の各種基板上にSiO2 等の絶縁層などを用いることができる。
【0167】
また、基板11上に基板面と平行に対向して設けられた素子電極2と3は、導電性を有する材料によって形成されている。例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Cu、Pd、Ag等をはじめとする金属、あるいはこれらの金属の合金、あるいはIn2 3 −SnO2 をはじめとする金属酸化物、ポリシリコンなどの半導体、などの中から適宜材料を選択して用いればよい。電極を形成するには、例えば真空蒸着などの成膜技術とフォトリソグラフィー、エッチングなどのパターニング技術を組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以外の方法(例えば印刷技術)を用いて形成しても差し支えない。
【0168】
素子電極81と82の形状は、当該電子放出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。一般的には、電極間隔Lは通常数10nmから数100μmの範囲から適当な数値を選んで設計されるが、中でも表示装置に応用するために好ましいのは数μmより数10μmの範囲から適当な数値が選ばれる。
【0169】
また、導電性薄膜4の部分には、微粒子膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素として多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)のことを指す。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は個々の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微粒子がたがいに重なり合った構造が観測される。
【0170】
微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、10分の数nmから数100nmの範囲に含まれるものであるが、中でも好ましいのは1から20nmの範囲のものである。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような諸条件を考慮して適宜設定される。すなわち、素子電極2あるいは3と電気的に良好に接続するのに必要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の値にするために必要な条件などである。具体的には、10分の数nmから数100nmの範囲の中で設定するが、中でも好ましいのは1nmから50nmの間である。
【0171】
また、微粒子膜を形成するのに用いられうる材料としては、例えば、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pbなどをはじめとする金属や、PdO、SnO2 、In2 3 、PbO、Sb2 3 などをはじめとする酸化物や、HfB2 、ZrB2 、LaB6 、CeB6 、YB4 、GdB4 などをはじめとする硼化物や、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WCなどをはじめとする炭化物や、TiN、ZrN、HfNなどをはじめとする窒化物や、Si、Geなどをはじめとする半導体や、カーボンなどがあげられ、これらの中から適宜選択される。
【0172】
以上述べたように、導電性薄膜84を微粒子膜で形成したが、その表面抵抗値については、103 から107 Ωの範囲に含まれるように設定した。なお、導電性薄膜4と素子電極2及び3とは電気的に良好に接続されるのが望ましいため、たがいの一部が重なり合うような構造をとっている。その重なりかたは、図8の例においては、下から、基板、素子電極、導電性薄膜の順序で積層したが、場合によっては、下から、基板、導電性薄膜、素子電極の順序で積層しても構わない。
【0173】
また電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形成された亀裂上の部分であり、電気的には周囲の導電性薄膜よりも高抵抗な性質を有している。亀裂は、導電性薄膜4に対して、通電フォーミングの処理を行うことにより形成する。通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作られた導電性薄膜4に対して、通電を行って、その一部を適宜に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行うのに好適な構造に変化させる処理のことである。微粒子膜で作られた導電性薄膜のうち電子放出を行うのに好適な構造に変化した部分(すなわち電子放出部5)においては、薄膜に適当な亀裂が形成されている。なお、電子放出部5が形成される前と比較すると、形成された後は素子電極2と3の間で計測される電気抵抗は大幅に増加する。薄膜6は、炭素もしくは炭素化合物よりなる薄膜で、電子放出部5及びその近傍を被覆している。薄膜6は通電フォーミング処理後に、通電活性化の処理を行うことにより形成した。薄膜6は単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は50nm以下とするが、30nm以下とするのが更に好ましい。通電活性化処理とは、前記通電フォーミング処理により形成された電子放出部5に適宜の条件で通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物を堆積せしめる処理のことである(図においては、炭素もしくは炭素化合物よりなる堆積物を部材6として模式的に示した。)。なお、通電活性化処理を行うことにより、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電流を典型的には100倍以上に増加させることができる。具体的には、10-2Paないし10-3Paの範囲内の真空雰囲気中で、電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは炭素化合物を堆積させる。堆積物6は、単結晶グラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボンのいずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は50nm以下、より好ましくは30nm以下である。
【0174】
以上、好ましい素子の基本構成を述べたが、実施例においては以下のような素子を用いた。すなわち、基板11には青板ガラスを用い、素子電極2と3にはNi薄膜を用いた。素子電極の厚さdは100nm、電極間隔Lは20μmとした。微粒子膜の主要材料としてPdもしくはPdOを用い、微粒子膜の厚さは約10nm、幅Wは100μmである。
【0175】
なお、このような構造のマルチ電子源は、あらかじめ基板上にX方向配線電極13、Y方向配線電極14、電極間絶縁層(不図示)及び表面伝導型放出素子の素子電極と導電性薄膜を形成した後、X方向配線電極13及びY方向配線電極14を介して、各素子に給電して通電フォーミング処理と通電活性化処理を行うことにより製造した。
【0176】
(スペーサ)
長さ40mm、幅2.8mm、厚み0.2mmのリアプレートと同質のガラスを絶縁性部材として用いた。帯電防止膜として、実施例1に示したCr−Al合金窒化膜を使用した。膜厚は200nmである。これに限らず本発明帯電防止膜を使用することが可能である。
【0177】
次に低抵抗膜29として、フェースプレート、リアプレートとの接続部に接続部と平行に30μmの帯状に0.1μm厚みのPt膜を形成した。
【0178】
スペーサはX方向配線上及びフェースプレート上のメタルバックと導電性フリットガラスを用いて接続されている。導電性フリットガラスはフリットガラスに、表面を金コーティングした導電性微粒子を混合したものを使用し、スペーサ表面の帯電防止膜とX方向配線あるいはフェースプレートと電気的に接続してある。
【0179】
以上の構造の表示装置のX方向配線とY方向配線を不図示の画像信号回路に接続し、テレビ画像を表示したところ、スペーサ近傍における発光位置ずれはわずかであり、実用上問題ないものであった。
【0180】
冷陰極型電子放出素子として上記平面型表面伝導型放出素子のほか、図12にその断面模式図を示す垂直型の表面伝導型放出素子も使用可能である。この図において各部の番号は図8に対応するものである。表面伝導型放出素子以外の電界放出型電子放出素子も用いることができる。
【0181】
[本発明の他の実施形態]
本発明の電子線装置は、電子線を応用した装置であるので、以下のような形態を有するものであってもよい。
【0182】
1.前記電子線装置は、前記電極が前記電子源より放出された電子を加速する加速電極であり、入力信号に応じて前記冷陰極素子から放出された電子を前記ターゲットに照射して画像を形成する画像形成装置をなす。特に、前記ターゲットが蛍光体である画像表示装置をなす。
【0183】
2.前記冷陰極素子は、電子放出部を含む導電性膜を一対の電極間に有する冷陰極素子であり、特に好ましくは表面伝導型放出素子である。
【0184】
3.前記電子源は、複数の行方向配線と複数の列方向配線とでマトリクス配線された複数の冷陰極素子を有する単純マトリクス状配置の電子源をなす。
【0185】
4.前記電子源は、並列に配置した複数の冷陰極素子の個々を両端で接続した冷陰極素子の行を複数配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方向と呼ぶ)に沿って、冷陰極素子の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、冷陰極素子からの電子を制御するはしご状配置の電子源をなす。
【0186】
5.また、本発明の思想によれば、表示用として好適な画像形成装置に限るものでなく、感光性ドラムと発光ダイオード等で構成された光プリンタの発光ダイオード等の代替の発光源として、上述の画像形成装置を用いることもできる。またこの際、上述のm本の行方向配線とn本の列方向配線を、適宜選択することで、ライン状発光源だけでなく、2次元状の発光源としても応用できる。この場合、画像形成部材としては、以下の実施例で用いる蛍光体のような直接発光する物質に限るものではなく、電子の帯電による潜像画像が形成されるような部材を用いることもできる。
【0187】
また、本発明の技術的思想によれば、例えば電子顕微鏡のように、電子源からの放出電子の被照射部材が、蛍光体等の画像形成部材以外のものである場合についても、本発明は適用できる。従って、本発明は被照射部材を特定しない一般的電子線装置としての形態も取りうる。
【0188】
【発明の効果】
以上説明した本発明帯電防止膜によれば、この帯電防止膜は、成膜時の雰囲気の圧力を段階的に高くしながらかつ雰囲気中の遷移金属量を増加させて作製した帯電防止膜であり、表面ほど遷移金属とアルミの組成比が高くかつ比抵抗も106 Ωcmから108Ωcm程度に制御可能であるので、耐高圧性も十分でありかつ安定性が高いものであり、帯電防止膜に電子が流入した場合の2次電子放出量を低下しかつ除電性を高めることができる。
【0189】
又、本発明表示装置は、この帯電防止膜をスペーサに応用しているので、各スペーサの帯電量を少なくすることができ、スペーサ部の放電をなくすことができる。そして、これに伴って、スペーサ近傍での電子ビーム軌道の乱れが抑止され、本来発光させる位置にある蛍光体に電子を当てることができ、画像コントラストの鮮明な画像表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である画像表示装置の、表示パネルの一部を切り欠いて示した斜視図。
【図2】本発明帯電防止膜の概略断面図。
【図3】本発明帯電防止膜における膜厚方向の遷移金属濃度変化の概略図。
【図4】実施例で用いたマルチ電子ビーム源の基板の平面図。
【図5】実施例で用いた平面型の表面伝導型放出素子の断面図。
【図6】表示パネルのフェースプレートの蛍光体配列を例示した平面図。
【図7】本発明表示装置のスペーサの断面図。
【図8】実施例で用いた平面型の表面伝導型放出素子の平面図(a)、断面図(b)。
【図9】平面型の表面伝導型放出素子の製造工程を示す断面図。
【図10】通電フォーミング処理の際の印加電圧波形。
【図11】通電活性化処理の際の印加電圧波形(a)、放出電流Ieの変化(b)。
【図12】垂直型の表面伝導型放出素子の断面図。
【図13】垂直型の表面伝導型放出素子の製造工程を示す断面図。
【図14】実施例で用いた表面伝導型放出素子の典型的な特性を示すグラフ。
【図15】本発明の実施例である画像表示装置の駆動回路の概略構成を示すブロック図。
【図16】従来知られた表面伝導型放出素子の一例。
【図17】従来知られたFE型素子の一例。
【図18】従来知られたMIM型素子の一例。
【符号の説明】
1 基板
2、3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 通電活性化処理により形成した薄膜
7 絶縁層
12 冷陰極素子
13 行方向配線
14 列方向配線
15 リアプレート
16 側壁
17 フェースプレート
18 蛍光膜
19 メタルバック
20 スペーサ
20a 絶縁性部材
20b 帯電防止膜
23、27 電流計
24 活性化用電源
25 アノード電極
26 直流高電圧電源
28 段差形成部材

Claims (7)

  1. Al、B、Siから選ばれた少なくとも一つの元素と、Cr、Ti、Taからなる一群の遷移金属から選ばれた少なくとも一つの元素とからなる合金窒化膜であって、該遷移金属の濃度が表面ほど高くなる濃度勾配を有することを特徴とする帯電防止膜。
  2. 前記遷移金属の濃度が1atom%以上10atom%以下であることを特徴とする請求項記載の帯電防止膜。
  3. 膜厚が10nm以上で1μm以下であり、比抵抗が0.1Ωcm以上で108Ωcm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電防止膜。
  4. 冷陰極型電子放出素子を配列した素子列を少なくとも一列以上有する電子源を駆動するための電子源駆動用配線を形成した基板と、発光材料を形成した透明基板とをスペーサを介して対抗させてなる表示装置であって、前記スペーサは、Al、B、Siから選ばれた少なくとも一つの元素と、Cr、Ti、Taからなる一群の遷移金属から選ばれた少なくとも一つの元素とからなる窒化膜で被覆された絶縁性部材を有し、該窒化膜は該遷移金属の濃度が該絶縁性部材表面ほど低くなる濃度勾配を有することを特徴とする表示装置。
  5. 前記窒化膜は、前記遷移金属の濃度が1atom%以上10atom%以下であることを特徴とする請求項記載の表示装置。
  6. 前記窒化膜は、膜厚が10nm以上で1μm以下であり、比抵抗が0.1Ωcm以上で108Ωcm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の表示装置。
  7. 前記スペーサが前記電子源駆動用配線に電気的に接続されている請求項記載の表示装置。
JP14425598A 1998-05-26 1998-05-26 帯電防止膜及び表示装置 Expired - Fee Related JP3728099B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14425598A JP3728099B2 (ja) 1998-05-26 1998-05-26 帯電防止膜及び表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14425598A JP3728099B2 (ja) 1998-05-26 1998-05-26 帯電防止膜及び表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11335814A JPH11335814A (ja) 1999-12-07
JP3728099B2 true JP3728099B2 (ja) 2005-12-21

Family

ID=15357855

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP14425598A Expired - Fee Related JP3728099B2 (ja) 1998-05-26 1998-05-26 帯電防止膜及び表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3728099B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2213761A1 (en) * 2007-11-30 2010-08-04 Canon Anelva Corporation Substrate processing apparatus and substrate processing method

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11335814A (ja) 1999-12-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3689598B2 (ja) スペーサの製造方法および前記スペーサを用いた画像形成装置の製造方法
JP3187367B2 (ja) 電子装置及びそれを用いた画像形成装置
JP3305252B2 (ja) 画像形成装置
JPH10334837A (ja) 画像形成装置
JP3703287B2 (ja) 画像形成装置
US6522064B2 (en) Image forming apparatus and method of manufacture the same
JP3466870B2 (ja) 画像形成装置の製造方法
JP3302293B2 (ja) 画像形成装置
JP4095195B2 (ja) 電子線発生装置および画像形成装置
JP3639732B2 (ja) スペーサの製造方法及び画像表示装置の製造方法
JP3624111B2 (ja) 画像形成装置
JP3728099B2 (ja) 帯電防止膜及び表示装置
JP3740296B2 (ja) 画像形成装置
JP3768697B2 (ja) 画像形成装置
JP3619043B2 (ja) 画像形成装置
JP3581586B2 (ja) スペーサの製造方法及び電子線装置の製造方法
JP3478706B2 (ja) 電子線装置および画像形成装置
JP3466868B2 (ja) 電子線発生装置及び画像形成装置
JPH10284284A (ja) 帯電防止膜及び表示装置
JP3230729B2 (ja) 電子線装置とその電子源及びそれを用いた画像形成装置
JP3745078B2 (ja) 画像形成装置
JP2001332194A (ja) 電子線発生装置及び画像形成装置
JP2000243319A (ja) 画像形成装置
JP2000113997A (ja) 帯電防止膜、部材、この部材を用いた電子線装置、画像形成装置
JPH11339696A (ja) 画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050420

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050425

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050623

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050914

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050930

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091007

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091007

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101007

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101007

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111007

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111007

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121007

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131007

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees