JPH11339696A - 画像形成装置 - Google Patents

画像形成装置

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JPH11339696A
JPH11339696A JP10149998A JP14999898A JPH11339696A JP H11339696 A JPH11339696 A JP H11339696A JP 10149998 A JP10149998 A JP 10149998A JP 14999898 A JP14999898 A JP 14999898A JP H11339696 A JPH11339696 A JP H11339696A
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Koji Yamazaki
康二 山▲崎▼
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スペーサの長手方向の低抵抗部材による帯状
電極によって局部の帯電を電子源基板やフェースプレー
トに平行な方向に除電でき、電子ビームのフェースプレ
ート上での位置ずれを抑えることを課題とする。 【解決手段】 複数の冷陰極型電子放出素子を複数の走
査信号用配線と直交する複数の変調信号用配線で連結し
た電子源基板と、透明基板の内面に蛍光膜と陽極を形成
されたフェースプレートとを前記走査信号用配線に垂直
に配置されたスペーサを介して対向させた構造を有する
画像形成装置において、前記スペーサは表面に高抵抗膜
を有し、前記高抵抗膜が前記電子源基板および前記陽極
と電気的に接続されており、かつ前記スペーサはその長
手方向が前記走査信号用配線に非平行になるように前記
電子源基板と前記陽極との間に配置されていることを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子線を用いた表
示装置等の画像形成装置に関し、特に画像形成装置の外
囲器内部に支持部材(スペーサ)を備えた画像形成装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、電子放出素子として熱陰極素
子と冷陰極素子の2種類が知られている。このうち冷陰
極素子では、たとえば表面伝導型放出素子や、電界放出
型素子(以下、FE型と記す)や、金属/絶縁層/金属
型放出素子(以下、MIM型と記す)、などが知られて
いる。
【0003】表面伝導型放出素子としては、たとえば、
M.I.Elinson, Radio Eng. ElectronPhys.,10,1290,(196
5)や、後述する他の例が知られている。
【0004】この表面伝導型放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より電子放出が生ずる現象を利用するものである。この
表面伝導型放出素子としては、前記エリンソン等による
SnO2 薄膜を用いたものの他に、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:“Thin Solid Films",9,317(1972)]や、I
2 3 /SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwell and C.
G.Fonstad:“IEEE Trans.ED Conf.",519(1975)]や、カ
ーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、
第1号、22(1983)]等が報告されている。
【0005】これらの表面伝導型放出素子の電子構成の
典型的な例として、図17に前述のM.Hartwellらによる
素子の平面図を示す。同図において、3001は基板
で、3004はスパッタで形成された金属酸化物よりな
る導電性薄膜である。導電性薄膜3004は図示のよう
にH字型の平面形状に形成されている。該導電性薄膜3
004に後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理を
施すことにより、電子放出部3005が形成される。図
中の間隔Lは、0.5〜1[mm]、Wは、0.1[m
m]で設定されている。尚、図示の便宜から、電子放出
部3005は導電性薄膜3004の中央に矩形の形状で
示したが、これは模式的なものであり、実際の電子放出
部の位置や形状を忠実に表現しているわけではない。
【0006】このM.Hartwallらによる素子をはじめとし
て、上述の表面伝導型放出素子においては、電子放出を
行う前に導電性薄膜3004に通電フォーミングと呼ば
れる通電処理を施すことにより電子放出部3005を形
成するのが一般的であった。すなわち、通電フォーミン
グとは、前記導電性薄膜3004の両端に一定の直流電
圧、もしくは、例えば1V/分程度の非常にゆっくりと
したレートで昇圧する直流電圧を印加して通電し、導電
性薄膜3004を局所的に破壊もしくは変形もしくは変
質せしめ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部3005
を形成することである。
【0007】尚、局所的に破壊もしくは変形もしくは変
質した導電性薄膜3004の一部には、亀裂が発生す
る。前記通電フォーミング後に導電性薄膜3004に適
宜の電圧を印加した場合には、前記亀裂付近において電
子放出が行われる。
【0008】また、FE型の例は、たとえば、W.P.Dyke
& W.W.Dolan,"Field emission",Advance in Electron
Physics, 8,89(1956)や、あるいは、C.A.Spindt,"Physi
calproperties of thin-film field emission cathodes
with molybdenium cones",J.Appl.Phys.,47,5248(197
6)などが知られている。
【0009】FE型の素子構成の典型的な例として、図
18に前述のC.A.Spindtらによる素子の断面図を示す。
同図において、3010は基板で、3011は導電材料
よりなるエミッタ配線、3012はエミッタコーン、3
013は絶縁層、3014はゲート電極である。本素子
は、エミッタコーン3012とゲート電極3014の間
に適宜の電圧を印加することにより、エミッタコーン3
012の先端部より電界により電子放出を起こさせるも
のである。
【0010】また、FE型の他の素子構成として、図1
8のような積層構造ではなく、基板上に基板平面とほぼ
平行に、エミッタとゲート電極を配置した例もある。
【0011】また、MIM型の例としては、たとえば、
C.A.Mead,"Operation of tunnel-emission Devices, J.
Appl.Phys., 32,646(1961)などが知られている。MIM
型の素子構成の典型的な例を図19に示す。同図は断面
図であり、図において、3020は基板で、3021は
金属よりなる下電極、3022は厚さ100オングスト
ローム程度の薄い絶縁層、3023は厚さ80〜300
オングストローム程度の金属よりなる上電極である。M
IM型においては、上電極3023と下電極3021の
間に適宜の電圧を印加することにより、上電極3023
の表面より電子放出を起こさせるものである。
【0012】上述の各冷陰極素子は、熱陰極素子と比較
して低温で電子放出を得ることができるため、加熱用ヒ
ーターを必要としない。したがって、熱陰極素子よりも
構造が単純であり、微細な素子を作成可能である。ま
た、基板上に多数の素子を高い密度で配置しても、基板
の熱溶融などの問題が発生しにくい。また、熱陰極素子
がヒーターの加熱により動作するため、応答速度が遅い
のとは異なり、冷陰極素子の場合には応答速度が速いと
いう利点もある。
【0013】このため、冷陰極素子を応用するための研
究が盛んに行われてきている。
【0014】たとえば、表面伝導型放出素子は、冷陰極
素子のなかでも特に構造が単純で製造も容易であること
から、大面積にわたり多数の素子を形成できる利点があ
る。そこで、たとえば本出願人による特開昭64−31
332号公報において開示されるように、多数の素子を
配列して駆動するための方法が研究されている。また、
表面伝導型放出素子の応用については、たとえば、画像
表示装置、画像記録装置などの画像形成装置や、荷電ビ
ーム源、等が研究されている。
【0015】特に、画像表示装置への応用としては、た
とえば本出願人によるUSP5,066,883や特開
平2−257551号公報や特開平4−28137号公
報において開示されているように、表面伝導型放出素子
の電子ビームの照射により発光する蛍光体とを組み合わ
せて用いた画像表示装置が研究されている。表面伝導型
放出素子と蛍光体とを組み合わせて用いた画像表示装置
は、従来の他の方式の画像表示装置よりも優れた特性が
期待されている。たとえば、近年普及してきた液晶表示
装置と比較しても、自発光型であるためバックライトを
必要としない点や、視野角が広い点が優れているといえ
る。
【0016】また、FE型を多数個ならべて駆動する方
法は、たとえば本出願人によるUSP4,904,89
5に開示されている。また、FE型を画像表示装置に応
用した例として、たとえば、R.Meyerらにより報告され
た平板型表示装置が知られている[R.Meyer:"Recent Dev
elopment on Microtips Display at LETI", Tech. Dige
stof 4th Int. Vacuum Microelectronics Conf., Nagah
ama,pp.6〜9(1991)]。
【0017】また、MIM型を多数個並べて画像表示装
置に応用した例は、たとえば本出願人による特開平3−
55738号公報に開示されている。
【0018】上記のような電子放出素子を用いた画像形
成装置のうちで、奥行きの薄い平面型表示装置は省スペ
ースかつ軽量であることから、ブラウン管型の表示装置
に置き換わるものとして注目されている。
【0019】また、図20は平面型の画像表示装置をな
す表示パネル部の一例を示す斜視図であり、内部構造を
示すためにパネルの一部を切り欠いて示している。
【0020】図中、3115はリアプレート、3116
は側壁、3117はフェースプレートであり、リアプレ
ート3115、側壁3116およびフェースプレート3
117により、表示パネルの内部を真空に維持するため
の外囲器(気密容器)を形成している。
【0021】リアプレート3115には基板3111が
固定されているが、この基板3111上には冷陰極素子
3112が、N×M個形成されている(N,Mは2以上
の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜
設定される。)。また、前記N×M個の冷陰極素子31
12は、図20に示すとおり、M本の行方向配線311
3とN本の列方向配線3114により配線されている。
これら基板3111、冷陰極素子3112、行方向配線
3113および列方向配線3114によって構成される
部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。また、行方向配線3
113と列方向配線3114の少なくとも交差する部分
には、両配線間に絶縁層(不図示)が形成されており、
電気的な絶縁が保たれている。
【0022】フェースプレート3117の下面には、蛍
光体からなる蛍光膜3118が形成されており、赤
(R)、緑(G)、育(B)の3原色の蛍光体(不図
示)が塗り分けられている。また、蛍光膜3118をな
す上記各色蛍光体の間にはブラックストライプの黒色体
(不図示)が設けてあり、さらに蛍光膜3118のリア
プレート3115側の面には、Al等からなるメタルバ
ック3119が形成されている。
【0023】また、Dx1〜DxmおよびDy1〜Dy
nおよびHvは、当該表示パネルと不図示の電気回路と
を電気的に接続するために設けた気密構造の電気接続用
端子である。Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行
方向配線3113と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビー
ム源の列方向配線3114と、Hvはメタルバック31
19と各々電気的に接続している。
【0024】また、上記気密器の内部は10のマイナス
6乗Torr程度の真空に保持されており、画像表示装
置の表示面積が大きくなるに従い、気密容器内部と外部
の気圧差によるリアプレート3115およびフェースプ
レート3117の変形あるいは破壊を防止する手段が必
要となる。リアプレート3115およびフェースプレー
ト3117を厚くすることによる方法は、画像表示装置
の重量を増加させるのみならず、斜め方向から見たとき
に画像のゆがみや視差を生ずる。これに対し、図20に
おいては、比較的薄いガラス板からなり、大気圧を支え
るための構造支持体(スペーサあるいはリブと呼ばれ
る)3120が設けられている。このようにして、マル
チビーム電子源が形成された基板3111と蛍光膜31
18が形成されたフェースプレート3117間は、通常
サブミリないし数ミリに保たれ、前述したように気密容
器内部は高真空に保持されている。
【0025】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dx1ないしDxm、Dy1ないし
Dynを通じて各冷陰極素子3112に電圧を印加する
と、各冷陰極素子3112から電子が放出される。それ
と同時にメタルバック3119に、容器外端子Hvを通
じて数百[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上
記放出された電子を加速し、フェースプレート3117
の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜3118をな
す各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示され
る。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】以上述べた、従来の画
像形成装置等の電子線装置は、装置内部の真空雰囲気を
維持するための外囲器、該外囲器内に配置された電子
源、該電子源から放出された電子線が照射されるターゲ
ット、電子線をターゲットに向けて加速するための加速
電極等を有するが、さらに、外囲器に加わる大気圧に耐
圧するため、外囲器内部から支持するための支持部材
(スペーサ)が外囲器内部に配置されることがある。
【0027】このような画像表示装置の表示パネルにお
いては、以下のような問題点があった。
【0028】まず、スペーサの近傍から放出された電子
の一部がスペーサに当たることにより、あるいは放出電
子の作用でイオン化したイオンがスペーサに付着するこ
とにより、スペーサ帯電をひきおこす可能性がある。更
には、フェースプレートに到達した電子が一部反射、散
乱され、その一部がスペーサに当たることにより、スペ
ーサ帯電をひきおこす可能性がある。このため、スペー
サ表面に高抵抗膜を施し、除電する工夫をしていた。
【0029】しかし、電子放出量が大きくなるような状
況で、スペーサが走査信号用配線に垂直に配置されてい
ると、スペーサの面全体が帯電してしまい除電しきれな
くなり、電子ビームのフェースプレート上の位置がず
れ、スペーサ近傍の画像がゆがんで表示される問題があ
った。
【0030】本発明は上記従来スペーサの欠点を改善す
るものであり、画像のゆがみが小さい画像表示装置を提
供するものである。
【0031】
【課題を解決するための手段】上記目的は、以下の構成
を有する画像形成装置により達成される。すなわち、複
数の電子放出素子を複数の行方向配線と複数の列方向配
線でマトリクス状に連結した電子源基板、前記電子源基
板に対向配置され前記電子源より放出された電子を加速
するための加速電極、前記電子源から放出された電子線
が照射されるターゲット(蛍光体)、前記電子源基板と
前記加速電極を真空に維持するための密閉構造を有する
外囲器と、前記外囲器を支持するためのスペーサとを有
する画像形成装置であって、前記スペーサは走査信号用
である行または列方向配様(ここでは行方向とする)に
垂直に配置され、前記スペーサは表面に高抵抗膜を有
し、前記高抵抗膜が前記電子源基板および前記陽極と電
気的に接続されており、前記スペーサには、少なくとも
1つの低抵抗部材が前記電子源基板と前記陽極との間の
電場のなす方向とほぼ垂直方向に沿って設けられている
ことを特徴とする画像形成装置である。
【0032】ここで、図1を用いて本発明の原理につい
て説明する。図1は本発明の画像形成装置の基本的な構
成を示すスペーサを含む電子源基板の一部の簡略平面図
である。この図1において、34及び35は素子電極、
36は電子放出部を含む導電性薄膜、13は走査信号用
配線(行方向)、14は変調信号用配線(行方向)、2
0はスペーサである。
【0033】以下、本発明に至った考え方を順を追って
説明する。まず、スペーサ20の近傍から放出された電
子の一部がスペーサ20に当たることにより、あるいは
放出電子の作用でイオン化したイオンがスペーサ20に
付着することによりスペーサ帯電が起こる。このために
スペーサ20の表面に高抵抗膜を施し、除電する工夫を
していた。しかし電子放出量が大きくなるような状況
で、スペーサ20が走査信号用配線13に平行に配置さ
れていると、スペーサの面全体が同時に帯電してしまい
除電しきれなくなり、電子ビームのフェースプレート上
の位置がずれ、スペーサ近傍の画像がゆがんで表示され
る問題があった。
【0034】よって、図1に示すように、スペーサを走
査信号用配線13に垂直かつ変調信号用配線14上に配
置することにより、スペーサ20は常に1ライン分の電
子ビームに依ってしか帯電しなくなる。
【0035】加えて、図2のスペーサ周辺の概念図に示
すように、帯状電極16に示すように、スペーサ1に少
なくとも1つの低抵抗部材による帯状電極16を前記電
子源基板1011と前記陽極1019との間の電場のな
す方向とほぼ垂直方向に沿って設けることによって、上
記帯電を前記帯状電極16方向に逃がし、素早く除電で
きるようになる。
【0036】また、前記帯状電極は前記電子源基板と前
記陽極との間の電場のなす方向と、ほぼ垂直な方向に沿
って、前記スペーサの周囲を一周する形状であるとよ
り、除電能力が向上し好ましい。
【0037】本発明の画像形成装置は、以下のような形
態を有するものであってもよい。
【0038】前記冷陰極素子は、電子放出部を含む導
電性膜を一体の電極間に有する冷陰極素子であり、特に
好ましくは表面伝導型放出素子である。
【0039】前記電子源は、複数の行方向配線と複数
の列方向配線とでマトリクス配線された複数の冷陰極素
子を有する単純マトリクス状配置の電子源をなす。
【0040】前記電子源は、並列に配置した複数の冷
陰極素子の個々を両端で接続した冷陰極素子の行を複数
配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向(列方
向と呼ぶ)に沿って、冷陰極素子の上方に配した制御電
極(グリッドとも呼ぶ)により、冷陰極素子からの電子
を制御するはしご状配置の電子源をなす。
【0041】また、本発明の技術的思想によれば、表
示用として好適な画像形成装置に限るものでなく、感光
性ドラムと発光ダイオード等で構成された光プリンタの
発光ダイオード等の代替の発光源として、上述の画像形
成装置を用いることもできる。またこの際、上述のm本
の行方向配線とn本の列方向配線を、適宜選択すること
で、ライン状発光源だけでなく、2次元状の発光源とし
ても応用できる。この場合、画像形成部材としては、以
下の実施形態で用いる蛍光体のような直接発光する物質
に限るものではなく、電子の帯電による潜像画像が形成
されるような部材を用いることもできる。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施形態につ
いて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0043】(1)画像表示装置概要 次に、本発明を適用した画像表示装置の表示パネルの構
成と製造法について、具体的な例を示して説明する。
【0044】図3は、実施形態に用いた表示パネルの斜
視図であり、内部構造を示すためにパネルの一部を切り
欠いて示している。
【0045】図中、1015はリアプレート、1016
は側壁、1017はフェースプレートであり、リアプレ
ート1015と、側壁1016、フェースプレート10
17とにより表示パネルの内部を真空に維持するための
気密容器を形成している。気密容器を組み立てるにあた
っては、各部材の接合部に十分な強度と気密性を保持さ
せるために封着する必要があるが、たとえばフリットガ
ラスを接合部に塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中
で、摂氏400〜500度で10分以上焼成することに
より封着を達成した。気密容器内部を真空に排気する方
法については後述する。また、上記気密容器の内容は1
0のマイナス6乗[Torr]程度の真空に保持される
ので、大気圧や不意の衝撃などによる気密容器の破壊を
防止する目的で、耐大気圧構造体として、スペーサ10
20が設けられている。
【0046】リアプレート1015には、基板1011
が固定されているが、該基板1011上には冷陰極素子
1012がN×M個形成されている。ここで、N,Mは
2以上の正の整数であり、目的とする表示画素数に応じ
て適宜設定される。たとえば、高品位テレビジョンの表
示を目的とした表示装置においては、N=3000、M
=1000以上の数を設定することが望ましい。前記N
×M個の冷陰極素子は、M本の行方向配線1013と、
N本の列方向配線1014により単純マトリクス配線さ
れている。基板1011と、冷陰極素子1012、行方
向配線1013、列方向配線1014とによって構成さ
れる部分をマルチ電子ビーム源と呼ぶ。
【0047】本発明の画像表示装置に用いるマルチ電子
ビーム源は、冷陰極素子1012を単純マトリクス配線
した電子源であれば、冷陰極素子の材料や形状あるいは
製法に制限はない。したがって、たとえば表面伝導型放
出素子やFE型、あるいはMIM型などの冷陰極素子を
用いることができる。
【0048】次に、冷陰極素子1012として表面伝導
型放出素子(後述)を基板上に配列して単純マトリクス
配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0049】図4に示すのは、図3の表示パネルに用い
たマルチ電子ビーム源の平面図である。基板1011上
には、後述の図102で示すものと同様な表面伝導型放
出素子が配列され、これらの電子は行方向配線1013
と列方向配線1014により単純マトリクス状に配線さ
れている。行方向配線1013と列方向配線1014の
交差する部分には、電極間に絶縁層(不図示)が形成さ
れており、電気的な絶縁が保たれている。
【0050】図4のB−B′に沿った断面を、図5に示
す。図において、1101は基板、1102,1103
は素子電極、1013,1014は行方向配線と列方向
配線、1104は導電性薄膜、1105は通電フォーミ
ング処理により形成した電子放出部、1113は通電活
性化処理により形成した薄膜である。
【0051】なお、このような構造のマルチ電子ビーム
源は、あらかじめ基板1011上に行方向配線101
3、列方向配線1014、電極間絶縁層(不図示)、お
よび表面伝導型放出素子の電子電極と導電性薄膜を形成
した後、行方向配線1013および列方向配線1014
を介して、各素子に給電して、通電フォーミング処理
(後述)と通電活性化処理(後述)を行うことにより製
造した。
【0052】本実施形態においては、気密容器のリアプ
レート1015にマルチ電子ビーム源の基板1011を
固定する構成としたが、マルチ電子ビーム源の基板10
11が十分な強度を有するものである場合には、気密容
器のリアプレートとしてマルチ電子ビーム源の基板10
11自体を用いてもよい。
【0053】また、フェースプレート1017の下面に
は、蛍光膜1018が形成されている。本実施形態はカ
ラー表示装置であるため、蛍光膜1018の部分にはC
RTの分野で用いられる赤、緑、青、の3原色の蛍光体
が塗り分けられている。各色の蛍光体は、たとえば図6
の(A)に示すようにストライプ状に塗り分けられ、蛍
光体RGBのストライプの間には黒色の導電体1010
が設けてある。黒色の導電体1010を設ける目的は、
電子ビームの照射位置に多少のずれがあっても表示色に
ずれが生じないようにする事や、外光の反射を防止して
表示コントラストの低下を防ぐ事、電子ビームによる蛍
光膜のチャージアップを防止する事などである。黒色の
導電体1010には、黒鉛を主成分として用いたが、上
記の目的に適するものであればこれ以外の材料を用いて
も良い。
【0054】また、3原色の蛍光体の塗り分け方は、図
6(A)に示したストライプ状の配列に限られるもので
はなく、たとえば図6(B)に示すようなデルタ状配列
や、それ以外の配列、例えば図7(C)に示す配列であ
ってもよい。
【0055】なお、モノクロームの表示パネルを作成す
る場合には、単色の蛍光体材料を蛍光膜1018に用い
ればよく、また黒色導電材料は必ずしも用いなくてもよ
い。
【0056】また、フェースプレート1017に対する
蛍光膜1018のリアプレート側の面には、CRTの分
野では公知のメタルバック1019を設けてある。メタ
ルバック1019を設けた目的は、蛍光膜1018が発
する光の一部を鏡面反射して光利用率を向上させる事
や、負イオンの衝突から蛍光膜1018を保護する事
や、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作
用させる事や、蛍光膜1018を励起した電子導電路と
して作用させる事などである。メタルバック1019
は、蛍光膜1018をフェースプレート基板1017上
に形成した後、蛍光膜表面を平滑化処理し、その上にA
lを真空蒸着する方法により形成した。なお、蛍光膜1
018に低電圧用の蛍光体材料を用いた場合には、メタ
ルバック1019は用いない。
【0057】また、本実施形態では用いなかったが、加
速電圧の印加用や蛍光膜1018の導電性向上を目的と
して、フェースプレート基板1017と蛍光膜1018
との間に、たとえばITOを材料とする透明電極を設け
てもよい。
【0058】図2は図3のA−A′の上下部分の断面模
式図であり、各部の番号は図3に対応している。スペー
サ1020は、絶縁性部材1の表面に低抵抗部材による
電子源基板に平行な電極16を成膜し、さらにその上に
帯電防止を目的とした高抵抗膜11を成膜し、かつフェ
ースプレート1017の内側(メタルバック1019
等)及び基板1011の表面(行方向配線1013また
は列方向配線1014)に面したスペーサの当接面3、
及び接する側面部5に低抵抗膜21を成膜した部材から
なるもので、上記目的を達成するのに必要な数だけ、か
つ必要な間隔をおいて配置され、フェースプレート10
17の内側および基板1011の表面に接合材1041
により固定される。また、高抵抗膜11は、絶縁性部材
1の表面のうち、少なくとも気密容器内の真空中に露出
している面に成膜されており、スペーサ1020上の低
抵抗膜21および接合材1041を介して、フェースプ
レート1017の内側(メタルバック1019等)及び
基板1011の表面(行方向配線1013または列方向
配線1014)に電気的に接続される。
【0059】ここで説明される態様においては、スペー
サ1020の形状は薄板状とし、行方向配線1013に
平行に配置され、行方向配線1013上に電気的に接続
されている。
【0060】スペーサ1020としては、基板1011
上の行方向配線1013および列方向配線1014とフ
ェースプレート1017内面のメタルバック1019と
の間に印加される高電圧に耐えるだけの絶縁性を有し、
かつスペーサ1020の表面への帯電を防止する程度の
導電性を有する必要がある。
【0061】スペーサ1020の絶縁性部材1として
は、例えば石英ガラス、Na等の不純物含有量を減少し
たガラス、ソーダライムガラス、アルミナ等のセラミッ
クス部材等が挙げられる。なお、絶縁性部材1はその熱
膨張率が気密容器および基板1011を成す部材と近い
ものが好ましい。
【0062】スペーサ1020を構成する高抵抗膜11
には、高電位側のフェースプレート1017(メタルバ
ック1019等)に印加される加速電圧Vaを帯電防止
膜である高抵抗膜11の抵抗値Rsで除した電流(=V
a/Rs)が流される。そこで、スペーサの抵抗値Rs
は帯電防止および消費電力からその望ましい範囲に設定
される。帯電防止の観点から表面抵抗R/□は10の1
2乗Ω以下であることが好ましい。十分な帯電防止効果
を得るためには、10の11乗Ω以下がさらに好まし
い。表面抵抗R/□の下限はスペーサ形状とスペーサ間
に印加される電圧により左右されるが、10の5乗Ω以
上であることが好ましい。
【0063】絶縁材料上に形成された帯電防止膜11の
厚みtは10nm〜1μmの範囲が望ましい。材料の表
面エネルギーおよび基板との密着性や基板温度によって
も異なるが、一般的に10nm以下の薄膜は島状に形成
され、抵抗が不安定で再現性に乏しい。一方、膜厚tが
1μm以上では膜応力が大きくなって、膜はがれの危険
性が高まり、かつ成膜時間が長くなるため生産性が悪
い。従って、膜厚は50〜500nmであることが望ま
しい。表面抵抗R/□はρ/tであり、以上に述べた表
面抵抗R/□と膜厚tの好ましい範囲から、帯電防止膜
の比抵抗ρは0.1[Ωcm]乃至10の8乗[Ωc
m]が好ましい。さらに表面抵抗と膜厚のより好ましい
範囲を実現するためには、ρは10の2乗乃至10の6
乗Ωcmとするのが良い。
【0064】スペーサ1020は、上述したようにその
上に形成した帯電防止膜11を電流が流れることによ
り、あるいはディスプレイ全体が動作中に発熱すること
によりその温度が上昇する。帯電防止膜11の抵抗温度
係数が大きな負の値であると、温度が上昇した時に抵抗
値が減少し、スペーサに流れる電流が増加し、さらに温
度上昇をもたらす、そして電流は電源の限界を越えるま
で増加しつづける。このような電流の暴走が発生する抵
抗温度係数の値は、経験的に負の値で絶対値が1%以上
である。すなわち、帯電防止膜11の抵抗温度係数は−
1%未満であることが望ましい。
【0065】帯電防止特性を有する高抵抗膜11の材料
としては、例えば金属酸化物を用いることが出来る。金
属酸化物の中でも、クロム、ニッケル、銅の酸化物が好
ましい材料である。その理由はこれらの酸化物は二次電
子放出効率が比較的小さく、冷陰極素子1012から放
出された電子が、スペーサ1020に当たった場合にお
いても、帯電しにくいためと考えられる。金属酸化物以
外にも炭素は二次電子放出効率が小さく、好ましい材料
である。特に、非晶質カーボンは高抵抗であるため、ス
ペーサ抵抗を所望の値に制御しやすい。
【0066】帯電防止特性を有する高抵抗膜11の他の
材料として、アルミと遷移金属合金の窒化物は、遷移金
属の組成を調整することにより、良伝導体から絶縁体ま
で広い範囲に抵抗値を制御できるので好適な材料であ
る。さらには後述する表示装置の作製工程において、抵
抗値の変化が少なく安定な材料である。かつ、その抵抗
温度係数が−1%未満であり、実用的に使いやすい材料
である。遷移金属元素としてはTi,Cr,Ta等があ
げられる。
【0067】アルミと遷移金属合金の窒化物として、合
金窒化膜はスパッタ、窒素ガス雰囲気中での反応性スパ
ッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、イオン
アシスト蒸着法等の薄膜形成手段により絶縁性部材上に
形成される。金属酸化膜も同様の薄膜形成法で作製する
ことができるが、この場合窒素ガスに代えて酸素ガスを
使用する。その他、CVD法、アルコキシド塗布法でも
金属酸化膜を形成できる。カーボン膜は蒸着法、スパッ
タ法、CVD法、プラズマCVD法で作製され、特に非
晶質カーボンを作製する場合には、成膜中の雰囲気に水
素が含まれるようにするか、成膜ガスに炭化水素ガスを
使用する。
【0068】また、図2に示すように、スペーサ102
0を構成する低抵抗膜21は、高抵抗膜11を高電位側
のフェースプレート1017(メタルバック1019
等)及び低電位側の基板1011(配線1013,10
14等)と電気的に接続する為に設けられたものであ
り、以下では、中間電極層(中間層)という名称も用い
る。中間電極層(中間層)は、以下に列挙する複数の機
能を有することが出来る。
【0069】高抵抗膜11をフェースプレート101
7及び基板1011と電気的に接続する。
【0070】既に記載したように、高抵抗膜11はスペ
ーサ1020表面での帯電を防止する目的で設けられた
ものであるが、高抵抗膜11をフェースプレート101
7(メタルバック1019等)及び基板1011(配線
1013、1014等)と直接或いは当接材1041を
介して接続した場合、接続部界面に大きな接触抵抗が発
生し、スペーサ表面に発生した電荷を速やかに除去でき
なくなる可能性がある。これを避ける為に、フェースプ
レート1017、基板1011及び当接材1041と接
触するスペーサ1020の当接面3或いは側面部5に、
低抵抗の中間層を設けた。
【0071】高抵抗膜11の電位分布を均一化する。
【0072】冷陰極素子1012より放出された電子
は、フェースプレート1017と基板1011の間に形
成された電位分布に従って電子軌道を成す。スペーサ1
020の近傍で電子軌道に乱れが生じないようにする為
には、高抵抗膜11の電位分布を全域にわたって制御す
る必要がある。高抵抗膜11をフェースプレート101
7(メタルバック1019等)及び基板1011(配線
1013、1014等)と直接或いは当接材1041を
介して接続した場合、接続部界面の接触抵抗の為に、接
続状態のむらが発生し、高抵抗膜11の電位分布が所望
の値からずれてしまう可能性がある。これを避ける為
に、スペーサ1020がフェースプレート1017及び
基板1011と当接するスペーサ端部(当接面3或いは
側面部5)の全長域に、低抵抗の中間層を設け、この中
間層部に所望の電位を印加することによって、高抵抗膜
11全体の電位を制御可能とした。
【0073】放出電子の軌道を制御する。
【0074】冷陰極素子1012より放出された電子
は、フェースプレート1017と基板1011の間に形
成された電位分布に従って、電子軌道を成す。スペーサ
近傍の冷陰極素子からの放出された電子に関しては、ス
ペーサを設置することに伴う制約(配線、素子位置の変
更等)が生じる場合がある。このような場合、歪みやむ
らの無い画像を形成する為には、放出された電子の軌道
を制御して、フェースプレート1017上の所望の位置
に電子を照射する必要がある。フェースプレート101
7及び基板1011と当接する面の側面部5に低抵抗の
中間層を設けることにより、スペーサ1020近傍の電
位分布に所望の特性を持たせ、放出された電子の軌道を
制御することが出来る。
【0075】低抵抗膜21は、高抵抗膜11に比べ十分
に低い抵抗値を有する材料を選択すればよく、Ni,C
r,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,Cu,Pd等
の金属、あるいは合金、及びPd,Ag,Au,RuO
2 ,Pd−Ag等の金属や金属酸化物とガラス等から構
成される印刷導体、あるいはIn2 3 −SnO2 等の
透明導体及びポリシリコン等の半導体材料等より適宜選
択される。
【0076】接合材1041はスペーサ1020が行方
向配線1013およびメタルバック1019と電気的に
接続するように、導電性をもたせる必要がある。すなわ
ち、導電性接着材や、金属粒子や、導電性フィラーを添
加したフリットガラスが好適である。
【0077】また、図3に示すように、Dx1〜Dxm
およびDy1〜DynおよびHvは、当該表示パネルと
不図示の電気回路とを電気的に接続するために設けた気
密構造の電気接続用端子である。
【0078】Dx1〜Dxmはマルチ電子ビーム源の行
方向配線1013と、Dy1〜Dynはマルチ電子ビー
ム源の列方向配線1014と、Hvはフェースプレート
のメタルバック1019と電気的に接続している。
【0079】また、気密容器内部を真空に排気するに
は、気密容器を組み立てた後、不図示の排気管と真空ポ
ンプとを接続し、気密容器内を10のマイナス7乗[T
orr]程度の真空度まで排気する。その後、排気管を
封止するが、気密容器内の真空度を維持するために、封
止の直前あるいは封止後に気密容器内の所定の位置にゲ
ッター膜(不図示)を形成する。ゲッター膜とは、たと
えばBaを主成分とするゲッター材料をヒーターもしく
は高周波加熱により加熱し蒸着して形成した膜であり、
該ゲッター膜の吸着作用により気密容器内は1×10マ
イナス5乗ないしは1×10マイナス7乗[Torr]
の真空度に維持される。
【0080】以上説明した表示パネルを用いた画像表示
装置は、容器外端子Dx1ないしDxm,Dy1ないし
Dynを通じて各冷陰極素子1012に電圧を印加する
と、各冷陰極素子1012から電子が放出される。それ
と同時にメタルバック1019に容器外端子Hvを通じ
て、数百[V]ないし数[kV]の高圧を印加して、上
記放出された電子を加速し、フェースプレート1017
の内面に衝突させる。これにより、蛍光膜1018をな
す各色の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示され
る。
【0081】通常、冷陰極素子である本発明の表面伝導
型放出素子1012への印加電圧は12〜16[V]程
度、メタルバック1019と冷陰極素子1012との距
離dは0.1[mm]から8[mm]程度、メタルバッ
ク1019と冷陰極素子1012間の電圧0.1[k
V]から10[kV]程度である。
【0082】以上、本発明の実施形態の表示パネルの基
本構成と製法、および画像表示装置の概要を説明した。
【0083】(2)マルチ電子ビーム源の製造方法 次に、前記実施形態の表示パネルに用いたマルチ電子ビ
ーム源の製造方法について説明する。本発明の画像表示
装置に用いるマルチ電子ビーム源は、冷陰極素子を単純
マトリクス配線した電子源であれば、冷陰極素子の材料
や形状あるいは製法に制限はない。したがって、たとえ
ば表面伝導型放出素子やFE型、あるいはMIM型など
の冷陰極素子を用いることができる。
【0084】ただし、表示画面が大きくて、しかも安価
な表示装置が求められる状況のもとでは、これらの冷陰
極素子の中でも、表面伝導型放出素子が特に好ましい。
すなわち、FE型ではエミッタコーンとゲート電極の相
対位置や形状が電子放出特性を大きく左右するため、極
めて高精度の製造技術を必要とするが、これは大面積化
や製造コストの低減を達成するには不利な要因となる。
また、MIM型では、絶縁層と上電極の膜厚を薄くてし
かも均一にする必要があるが、これも大面積化や製造コ
ストの低減を達成するには不利な要因となる。その点、
表面伝導型放出素子は、比較的製造方法が単純なため、
大面積化や製造コストの低減が容易である。また、本発
明者らは、表面伝導型放出素子の中でも、電子放出部も
しくはその周辺部を微粒子膜から形成したものがとりわ
け電子放出特性に優れ、しかも製造が容易に行えること
を見いだしている。したがって、高輝度で大画面の画像
表示装置のマルチ電子ビーム源に用いるには、最も好適
であると言える。
【0085】そこで、上記実施形態の表示パネルにおい
ては、電子放出部もしくはその周辺部を微粒子膜から形
成した表面伝導型放出素子を用いた。そこで、まず好適
な表面伝導型放出素子について基本的な構成と製法およ
び特性を説明し、その後で多数の素子を単純マトリクス
配線したマルチ電子ビーム源の構造について述べる。
【0086】(表面伝導型放出素子の好適な素子構成と
製法)電子放出部もしくはその周辺部を、微粒子膜から
形成する表面伝導型放出素子の代表的な構成には、平面
型と垂直型の2種類があげられる。
【0087】(平面型の表面伝導型放出素子)まず最初
に、平面型の表面伝導型放出素子の素子構成と製法につ
いて説明する。図8に示すのは、平面型の表面伝導型放
出素子の構成を説明するための平面図(a)および断面
図(b)である。図中、1101は基板、1102と1
103は素子電極、1104は導電性薄膜、1105は
通電フォーミング処理により形成した電子放出部、11
13は通電活性化処理により形成した薄膜である。
【0088】基板1101としては、たとえば、石英ガ
ラスや青板ガラスをはじめとする各種ガラス基板や、ア
ルミナをはじめとする各種セラミクス基板、あるいは上
述の各種基板上にたとえばSiO2 を材料とする絶縁層
を積層した基板、などを用いることができる。
【0089】また、基板1101上に基板面と平行に対
向して設けられた素子電極1102と1103は、導電
性を有する材料によって形成されている。たとえば、N
i,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Cu,Pd,
Ag等をはじめとする金属、あるいはこれらの金属の合
金、あるいはIn2 3 ,SnO2 をはじめとする金属
酸化物、ポリシリコンなどの半導体、などの中から適宜
材料を選択して用いればよい。電極1102,1103
を形成するには、たとえば真空蒸着などの製膜技術とフ
ォトリソグラフィー、エッチングなどのパターニング技
術を組み合わせて用いれば容易に形成できるが、それ以
外の方法(たとえば印刷技術)を用いて形成してもさし
つかえない。
【0090】素子電極1102と1103の形状は、当
該電子放出素子の応用目的に合わせて適宜設計される。
一般的には、電極間隔Lは通常は数百オングストローム
から数百マイクロメーターの範囲から適当な数値を選ん
で設計されるが、なかでも表示装置に応用するために好
ましいのは数マイクロメーターより数十マイクロメータ
ーの範囲である。また、素子電極の厚さdについては、
通常は数百オングストロームから数マイクロメーターの
範囲から適当な数値が選ばれる。
【0091】また、導電性薄膜1104の部分には、微
粒子膜を用いる。ここで述べた微粒子膜とは、構成要素
として多数の微粒子を含んだ膜(島状の集合体も含む)
のことをさす。微粒子膜を微視的に調べれば、通常は、
個々の微粒子が離間して配置された構造か、あるいは微
粒子が互いに隣接した構造か、あるいは微粒子が互いに
重なり合った構造が観測される。
【0092】微粒子膜に用いた微粒子の粒径は、数オン
グストロームから数千オングストロームの範囲に含まれ
るものであるが、なかでも好ましいのは10オングスト
ロームから200オングストロームの範囲のものであ
る。また、微粒子膜の膜厚は、以下に述べるような諸条
件を考慮して適宜設定される。すなわち、素子電極11
02あるいは1103と電気的に良好に接続するのに必
要な条件、後述する通電フォーミングを良好に行うのに
必要な条件、微粒子膜自身の電気抵抗を後述する適宜の
値にするために必要な条件、などである。具体的には、
数オングストロームから数千オングストロームの範囲の
なかで設定するが、なかでも好ましいのは10オングス
トロームから500オングストロームの間である。
【0093】また、微粒子膜を形成するのに用いられう
る材料としては、たとえば、Pd,Pt,Ru,Ag,
Au,Ti,In,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,T
a,W,Pb,などをはじめとする金属や、PdO,S
nO2 ,In2 3 ,PbO,Sb2 3 ,などをはじ
めとする酸化物や、HfB2 ,ZrB2 ,LaB6 ,C
eB6 ,YB4 ,GdB4 ,などをはじめとする硼化物
や、TiC,ZrC,HfC,TaC,SiC,WC,
などをはじめとする炭化物や、TiN,ZrN,Hf
N,などをはじめとする窒化物や、Si,Ge,などを
はじめとする半導体や、カーボン、などがあげられ、こ
れらの中から適宜選択される。
【0094】以上述べたように、導電性薄膜1104を
微粒子膜で形成したが、そのシート抵抗値については、
10の3乗から10の7乗[オーム/sq]の範囲に含
まれるよう設定した。
【0095】なお、導電性薄膜1104と素子電極11
02および1103とは、電気的に良好に接続されるの
が望ましいため、互いの一部が重なりあうような構造を
とっている。その重なり方は、図8の例においては、下
から、基板、素子電極、導電性薄膜の順序で積層した
が、場合によっては下から基板、導電性薄膜、素子電
極、の順序で積層してもさしつかえない。
【0096】また、電子放出部1105は、導電性薄膜
1104の一部に形成された亀裂状の部分であり、電気
的には周囲の導電性薄膜よりも高抵抗な性質を有してい
る。亀裂は、導電性薄膜1104に対して、後述する通
電フォーミングの処理を行うことにより形成する。亀裂
内には、数オングストロームから数百オングストローム
の粒径の微粒子を配置する場合がある。なお、実際の電
子放出部の位置や形状を精密かつ正確に図示するのは困
難なため、図8においては模式的に示した。
【0097】また、薄膜1113は、炭素もしくは炭素
化合物よりなる薄膜で、電子放出部1105およびその
近傍を被覆している。薄膜1113は、通電フォーミン
グ処理後に、後述する通電活性化の処理を行うことによ
り形成する。
【0098】薄膜1113は、単結晶グラファイト、多
結晶グラファイト、非晶質カーボン、のいずれかか、も
しくはその混合物であり、膜厚は500[オングストロ
ーム]以下とするが、300[オングストローム]以下
とするのがさらに好ましい。なお、実際の薄膜1113
の位置や形状を精密に図示するのは困難なため、図8に
おいては模式的に示した。また、平面図(a)において
は、薄膜1113の一部を除去した素子を図示した。
【0099】以上、好ましい素子の基本構成を述べた
が、本実施形態においては以下のような素子を用いた。
【0100】すなわち、基板1101には青板ガラスを
用い、素子電極1102と1103にはNi薄膜を用い
た。素子電極の厚さdは1000[オングストロー
ム]、電極間隔Lは2[マイクロメーター]とした。
【0101】微粒子膜の主要材料としてPdもしくはP
dOを用い、微粒子膜の厚さは約100[オングストロ
ーム]、幅Wは100[マイクロメーター]とした。
【0102】次に、好適な平面型の表面伝導型放出素子
の製造方法について説明する。
【0103】図9の(a)〜(d)は、表面伝導型放出
素子の製造工程を説明するための断面図で、各部材の表
記は前記図8と同一である。
【0104】(1)まず、図9(a)に示すように、基
板1101上に素子電極1102および1103を形成
する。
【0105】形成するにあたっては、あらかじめ基板1
101を洗剤、純水、有機溶剤を用いて十分に洗浄後、
素子電極の材料を堆積させる(堆積する方法としては、
たとえば、蒸着法やスパッタ法などの真空成膜技術を用
ればよい)。その後、堆積した電極材料を、フォトリソ
グラフィー・エッチング技術を用いてパターニングし、
図9(a)に示した一対の素子電極(1102と110
3)を形成する。
【0106】(2)次に、同図(b)に示すように、導
電性薄膜1104を形成する。
【0107】形成するにあたっては、まず前記(a)の
基板に有機金属溶液を塗布して乾燥し、加熱焼成処理し
て微粒子膜を成膜した後、フォトリソグラフィー・エッ
チングにより所定の形状にパターニングする。ここで、
有機金属溶液とは、導電性薄膜に用いる微粒子の材料を
主要元素とする有機金属化合物の溶液である。具体的に
は、本実施形態では主要元素としてPdを用いた。ま
た、実施形態では塗布方法として、ディッピング法を用
いたが、それ以外のたとえばスピンナー法やスプレー法
を用いてもよい。
【0108】また、微粒子膜で作られる導電性薄膜の成
膜方法としては、本実施形態で用いた有機金属溶液の塗
布による方法以外の、たとえば真空蒸着法やスパッタ
法、あるいは化学的気相堆積法などを用いる場合もあ
る。
【0109】(3)次に、図9(c)に示すように、フ
ォーミング用電源1110から素子電極1102と11
03の間に適宜の電圧を印加し、通電フォーミング処理
を行って、電子放出部1105を形成する。
【0110】通電フォーミング処理とは、微粒子膜で作
られた導電性薄膜1104に通電を行って、その一部を
適宜に破壊、変形、もしくは変質せしめ、電子放出を行
うのに好適な構造に変化させる処理のことである。微粒
子膜で作られた導電性薄膜のうち電子放出を行うのに好
適な構造に変化した部分(すなわち電子放出部110
5)においては、薄膜に適当な亀裂が形成されている。
なお、電子放出部1105が形成される前と比較する
と、形成された後は、素子電極1102と1103の間
で計測される電気抵抗は大幅に増加する。
【0111】通電方法をより詳しく説明するために、図
10に、フォーミング用電源1110から印加する適宜
の電圧波形の一例を示す。微粒子膜で作られた導電性薄
膜をフォーミングする場合には、パルス状の電圧が好ま
しく、本実施形態の場合には同図に示したようにパルス
幅T1の三角波パルスをパルス間隔T2で連続的に印加
した。その際には、三角波パルスの波高値Vpfを、順
次昇圧した。また、電子放出部1105の形成状況をモ
ニターするためのモニターパルスPmを適宜の間隔で三
角波パルスの間に挿入し、その際に流れる電流を電流計
1111で計測した。
【0112】本実施形態においては、たとえば10のマ
イナス5乗[torr]程度の真空雰囲気下において、
たとえばパルス幅T1を1[ミリ秒]、パルス間隔T2
を10[ミリ秒]とし、波高値Vpfを1パルスごとに
0.1[V]ずつ昇圧した。そして、三角波を5パルス
印加するたびに1回の割りで、モニターパルスPmを挿
入した。フォーミング処理に悪影響を及ぼすことがない
ように、モニターパルスの電圧Vpmは0.1[V]に
設定した。そして、素子電極1102と1103の間の
電気抵抗が1×10の6乗[オーム]になった段階、す
なわちモニターパルス印加時に電流計1111で計測さ
れる電流が1×10のマイナス7乗[A]以下になった
段階で、フォーミング処理にかかわる通電を終了した。
【0113】なお、上記の方法は、本実施形態の表面伝
導型放出素子に関する好ましい方法であり、たとえば微
粒子膜の材料や膜厚、あるいは素子電極間隔Lなど表面
伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じ
て通電の条件を適宜変更するのが望ましい。
【0114】(4)次に、図9(d)に示すように、活
性化用電源1112から素子電極1102と1103の
間に適宜の電圧を印加し、通電活性化処理を行って、電
子放出特性の改善を行う。
【0115】通電活性化処理とは、前記通電フォーミン
グ処理により形成された電子放出部1105に適宜の条
件で通電を行って、その近傍に炭素もしくは炭素化合物
を堆積せしめる処理のことである。図においては、炭素
もしくは炭素化合物よりなる堆積物を部材1113とし
て模式的に示した。なお、通電活性化処理を行うことに
より、行う前と比較して、同じ印加電圧における放出電
流を典型的には100倍以上に増加させることができ
る。
【0116】具体的には、10のマイナス4乗ないし1
0のマイナス5乗[torr]の範囲内の真空雰囲気中
で、電圧パルスを定期的に印加することにより、真空雰
囲気中に存在する有機化合物を起源とする炭素もしくは
炭素化合物を堆積させる。堆積物1113は、単結晶グ
ラファイト、多結晶グラファイト、非晶質カーボン、の
いずれかか、もしくはその混合物であり、膜厚は500
[オングストローム]以下、より好ましくは300[オ
ングストローム]以下である。
【0117】通電方法をより詳しく説明するために、図
11(a)に、活性化用電源1112から印加する適宜
の電圧波形の一例を示す。本実施形態においては、一定
電圧の矩形波を定期的に印加して通電活性化処理を行っ
たが、具体的には、矩形波の電圧Vacは14[V]、
パルス幅T3は1[ミリ秒]、パルス間隔T4は10
[ミリ秒]とした。なお、上述の通電条件は、本実施形
態の表面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、
表面伝導型放出素子の設計を変更した場合には、それに
応じて条件を適宜変更するのが望ましい。
【0118】図9(d)に示す1114は該表面伝導型
放出素子から放出される放出電流Ieを捕捉するための
アノード電極で、直流高電圧電源1115および電流計
1116が接続されている。なお、基板1101を、表
示パネルの中に組み込んでから活性化処理を行う場合に
は、表示パネルの蛍光面をアノード電極1114として
用いる。活性化用電源1112から電圧を印加する間、
電流計1116で放出電流Ieを計測して通電活性化処
理の進行状況をモニターし、活性化用電源1112の動
作を制御する。電流計1116で計測された放出電流I
eの一例を図11(b)に示すが、活性化電源1112
からパルス電圧を印加しはじめると、時間の経過ととも
に放出電流Ieは増加するが、やがて飽和してほとんど
増加しなくなる。このように、放出電流Ieがほぼ飽和
した時点で活性化用電源1112からの電圧印加を停止
し、通電活性化処理を終了する。
【0119】なお、上述の通電条件は、本実施形態の表
面伝導型放出素子に関する好ましい条件であり、表面伝
導型放出素子の設計を変更した場合には、それに応じて
条件を適宜変更するのが望ましい。
【0120】以上のようにして、図9(e)に示す平面
型の表面伝導型放出素子を製造した。なお、通電フォー
ミング処理の場合にも、通電活性化処理工程と同様に、
所定の真空度の雰囲気で行うことにより、好ましくない
素材の混入を防止することができる。
【0121】(垂直型の表面伝導型放出素子)次に、電
子放出部もしくはその周辺を微粒子膜から形成した表面
伝導型放出素子のもうひとつの代表的な構成、すなわち
垂直型の表面伝導型放出素子の構成について説明する。
【0122】図12は、垂直型の基本構成を説明するた
めの模式的な断面図であり、図中の1201は基板、1
202と1203は素子電極、1206は段差形成部
材、1204は微粒子膜を用いた導電性薄膜、1205
は通電フォーミング処理により形成した電子放出部、1
213は通電活性化処理により形成した薄膜、である。
【0123】垂直型の表面伝導型放出素子が先に説明し
た平面型と異なる点は、素子電極のうちの片方(120
2)が段差形成部材1206上に設けられており、導電
性薄膜1204が段差形成部材1206の側面を被覆し
ている点にある。したがって、前記図8の平面型におけ
る素子電極間隔Lは、垂直型においては段差形成部材1
206の段差高Lsとして設定される。なお、基板12
01、素子電極1202および1203、微粒子膜を用
いた導電性薄膜1204、については、前記平面型の説
明中に列挙した材料を同様に用いることが可能である。
また、段差形成部材1206には、たとえばSiO2
ような電気的に絶縁性の材料を用いる。
【0124】次に、垂直型の表面伝導型放出素子の製造
について説明する。図13(a)〜(f)は、製造工程
を説明するための断面図で、各部材の表記は前記図12
と同一である。
【0125】(1)まず、図13(a)に示すように、
基板1201上に素子電極1203を形成する。
【0126】(2)次に、同図(b)に示すように、段
差形成部材を形成するための絶縁層を積層する。絶縁層
は、たとえばSiO2 をスパッタ法で積層すればよい
が、たとえば真空蒸着法や印刷法などの他の成膜方法を
用いてもよい。
【0127】(3)次に、同図(c)に示すように、絶
縁層の上に素子電極1202を形成する。
【0128】(4)次に、同図(d)に示すように、絶
縁層の一部を、たとえばエッチング法を用いて除去し、
素子電極1203を露出させる。
【0129】(5)次に、同図(e)に示すように、微
粒子膜を用いた導電性薄膜1204を形成する。形成す
るには、前記平面型の場合と同じく、たとえば塗布法な
どの成膜技術を用いればよい。
【0130】(6)次に、前記平面型の場合と同じく、
通電フォーミング処理を行い、電子放出部を形成する。
この場合、図9(c)を用いて説明した平面型の通電フ
ォーミング処理と同様の処理を行えばよい。
【0131】(7)次に、前記平面型の場合と同じく、
通電活性化処理を行い、電子放出部近傍に炭素もしくは
炭素化合物を堆積させる。この場合も、図9(d)を用
いて説明した平面型の通電活性化処理と同様の処理を行
えばよい。
【0132】以上のようにして、図13(f)に示す垂
直型の表面伝導型放出素子を製造した。
【0133】(表示装置に用いた表面伝導型放出素子の
特性)以上、平面型と垂直型の表面伝導型放出素子につ
いて素子構成と製法を説明したが、次に表示装置に用い
た素子の特性について述べる。
【0134】図14に、表示装置に用いた素子の、(放
出電流Ie)対(素子印加電圧Vf)特性、および(素
子電流If)対(素子印加電圧Vf)特性の典型的な例
を示す。なお、放出電流Ieは素子電流Ifに比べて著
しく小さく、同一尺度で図示するのが困難であるうえ、
これらの特性は素子の大きさや形状等の設計パラメータ
を変更することにより変化するものであるため、2本の
グラフは各々任意単位で図示した。
【0135】表示装置に用いた素子は、放出電流Ieに
関して、以下に述べる3つの特性を有している。
【0136】第一に、ある電圧(これを閾値電圧Vth
と呼ぶ)以上の大きさの電圧を素子に印加すると急激に
放出電流Ieが増加するが、一方、閾値電圧Vth未満
の電圧では放出電流Ieはほとんど検出されない。
【0137】すなわち、放出電流Ieに関して、明確な
閾値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0138】第二に、放出電流Ieは素子に印加する電
圧Vfに依存して変化するため、電圧Vfで放出電流I
eの大きさを制御できる。
【0139】第三に、素子に印加する電圧Vfに対して
素子から放出される電流Ieの応答速度が速いため、電
圧Vfを印加する時間の長さによって素子から放出され
る電子の電荷量を制御できる。
【0140】以上のような特性を有するため、表面伝導
型放出素子を表示装置に好適に用いることができた。た
とえば多数の素子を表示画面の画素に対応して設けた表
示装置において、第一の特性を利用すれば、表示画面を
順次走査して表示を行うことが可能である。すなわち、
駆動中の素子には所望の発光輝度に応じて閾値電圧Vt
h以上の電圧を適宜印加し、非選択状態の素子には閾値
電圧Vth未満の電圧を印加する。駆動する素子を順次
切り替えてゆくことにより、表示画面を順次走査して表
示を行うことが可能である。
【0141】また、第二の特性かまたは第三の特性を利
用することにより、発光輝度を制御することができるた
め、階調表示を行うことが可能である。
【0142】(多数素子を単純マトリクス配線したマル
チ電子ビーム源の構造)次に、上述の表面伝導型放出素
子を基板上に配列して単純マトリクス配線したマルチ電
子ビーム源の構造について述べる。
【0143】図4に示すのは、前記図3の表示パネルに
用いたマルチ電子ビーム源の平面図である。基板上に
は、前記図8で示したものと同様な表面伝導型放出素子
が配列され、これらの素子は行方向配線電極1013と
列方向配線電極1014により単純マトリクス状に配線
されている。行方向配線電極1013と列方向配線電極
1014の交差する部分には、電極間に絶縁層(不図
示)が形成されており、電気的な絶縁が保たれている。
【0144】図4のB−B′に沿った断面を、図5に示
す。図5については上記説明した内容と同様である。
【0145】なお、このような構造のマルチ電子源は、
あらかじめ基板上に行方向配線電極1013、列方向配
線電極1014、電極間絶縁層(不図示)、および表面
伝導型放出素子の素子電極と導電性薄膜を形成した後、
行方向配線電極1013および列方向配線電極1014
を介して各素子に給電して通電フォーミング処理と通電
活性化処理を行うことにより製造した。
【0146】(3)駆動回路構成(および駆動方法) 図15は、NTSC方式のテレビ信号に基づいてテレビ
ジョン表示を行う為の駆動回路の概略構成をブロック図
で示したものである。同図中、表示パネル1701は前
述した表示パネルに相当するもので、前述した様に製造
され、動作する。また、走査回路1702は表示ライン
を走査し、制御回路1703は走査回路へ入力する信号
等を生成する。シフトレジスタ1704は1ライン毎の
データをシフトし、ラインメモリ1705は、シフトレ
ジスタ1704からの1ライン分のデータを変調信号発
生器1707に入力する。同期信号分離回路1706は
NTSC信号から同期信号を分離する。
【0147】以下、図15の装置各部の機能動作を詳し
く説明する。
【0148】まず表示パネル1701は、端子Dx1な
いしDxmおよび端子Dy1ないしDyn、および高圧
端子Hvを介して外部の電気回路と接続されている。こ
のうち、端子Dx1ないしDxmには、表示パネル17
01内に設けられているマルチ電子ビーム源、すなわち
m行n列の行列状にマトリクス配線された冷陰極素子を
1行(n素子)ずつ順次駆動してゆく為の走査信号が印
加される。一方、端子Dy1ないしDynには、前記走
査信号により選択された1行分のn個の各素子の出力電
子ビームを制御する為の変調信号が印加される。また、
高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、たとえば5
[kV]の直流電圧が供給されるが、これはマルチ電子
ビーム源より出力される電子ビームに蛍光体を励起する
のに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧である。
【0149】次に、走査回路1702について説明す
る。同回路は、内部にm個のスイッチング素子(図中、
S1ないしSmで模式的に示されている)を備えるもの
で、各スイッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧
もしくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を
選択し、表示パネル1701の端子Dx1ないしDxm
と電気的に接続するものである。S1ないしSmの各ス
イッチング素子は、制御回路1703が出力する制御信
号Tscanに基づいて動作するものだが、実際にはた
とえばFETのようなスイッチング素子を組合わせる事
により容易に構成することが可能である。なお、前記直
流電圧源Vxは、図14に例示した電子放出素子の特性
に基づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧
が電子放出しきい値電圧Vth電圧以下となるよう、一
定電圧を出力するよう設定されている。
【0150】また、制御回路1703は、外部から同期
信号分離回路1706に入力される画像信号に基づい
て、適切な表示が行なわれるように、各部の動作を整合
させる働きをもつものである。次に説明する同期信号分
離回路1706より送られる同期信号Tsyncに基づ
いて、各部に対してTscanおよびTsftおよびT
mryの各制御信号を発生する。同期信号分離回路17
06は、外部から入力されるNTSC方式のテレビ画像
信号から、同期信号成分と輝度信号成分とを分離する為
の回路で、良く知られているように周波数分離(フィル
タ)回路を用いれば、容易に構成できるものである。同
期信号分離回路1706により分離された同期信号は、
良く知られるように垂直同期信号と水平同期信号より成
るが、ここでは説明の便宜上、Tsync信号として図
示した。一方、前記テレビ信号から分離された画像の輝
度信号成分を便宜上DATA信号と表すが、同信号はシ
フトレジスタ1704に入力される。
【0151】シフトレジスタ1704は、時系列的にシ
リアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライ
ン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記
制御回路1703より送られる制御信号Tsftに基づ
いて動作する。すなわち、制御信号Tsftは、シフト
レジスタ1704のシフトクロックであると言い換える
こともできる。シリアル/パラレル変換された画像1ラ
イン分(電子放出素子n素子分の駆動データに相当す
る)のデータは、IdlないしIdnのn個の信号とし
て前記シフトレジスタ1704より出力される。
【0152】ラインメモリ1705は、画像1ライン分
のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路1703より送られる制御信号Tmryに
したがって適宜IdlないしIdnの内容を記憶する。
記憶された内容は、I′dlないしI′dnとして出力
され、変調信号発生器1707に入力される。
【0153】変調信号発生器1707は、前記画像デー
タI′dlないしI′dnの各々に応じて、電子放出素
子1015の各々を適切に駆動変調する為の信号源で、
その出力信号は、端子DylないしDynを通じて表示
パネル1701内の電子放出素子1015に印加され
る。
【0154】図14を用いて説明したように、本発明に
関わる表面伝導型放出素子は放出電流Ieに対して以下
の基本特性を有している。すなわち、電子放出には明確
な閾値電圧Vth(後述する実施例の表面伝導型放出素
子では8[V])があり、閾値Vth以上の電圧を印加
された時のみ電子放出が生じる。また、電子放出閾値V
th以上の電圧に対しては、図14のグラフのように電
圧の変化に応じて放出電流Ieも変化する。このことか
ら、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、たとえば
電子放出閾値Vth以下の電圧を印加しても、電子放出
は生じないが、電子放出閾値Vth以上の電圧を印加す
る場合には表面伝導型放出素子から電子ビームが出力さ
れる。その際、パルスの波高値Vmを変化させることに
より出力電子ビームの強度を制御することが可能であ
る。また、パルスの幅Pwを変化させることにより出力
される電子ビームの電荷の総量を制御することが可能で
ある。
【0155】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器1707として、一定長さの電圧パ
ルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの
波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いるこ
とができる。また、パルス幅変調方式を実施するに際し
ては、変調信号発生器1707として、一定の波高値の
電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて、適宜
電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回
路を用いることができる。
【0156】シフトレジスタ1704やラインメモリ1
705は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式の
ものでも採用できる。すなわち、画像信号のシリアル/
パラレル変換や記憶が所定の速度で行われればよいから
である。
【0157】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路1706の出力信号DATAをデジタル信号
化する必要があるが、これには同期信号分離回路170
6の出力部に、A/D変換器を設ければよい。これに関
連してラインメモリ115の出力信号がデジタル信号か
アナログ信号かにより、変調信号発生器1707に用い
られる回路が若干異なったものとなる。すなわち、デジ
タル信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器
1707には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応
じて増幅回路などを付加する。パルス幅変調方式の場
合、変調信号発生器1707には、例えば高速の発振器
および発振器の出力する波数を計数する計数器(カウン
タ)、および計数器の出力値と前記メモリの出力値を比
較する比較器(コンパレータ)を組み合せた回路を用い
る。必要に応じて、比較器の出力するパルス幅変調され
た変調信号を電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅す
るための増幅器を付加することもできる。
【0158】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器1707には、例えばオペアンプな
どを用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてシフトレ
ベル回路などを付加することもできる。パルス幅変調方
式の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)
を採用でき、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧まで
電圧増幅するための増幅器を付加することもできる。
【0159】このような構成をとりうる本発明の適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dynを介して電
圧を印加することにより、電子放出が生じる。高圧端子
Hvを介してメタルバック1019あるいは透明電極
(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加
速された電子は、蛍光膜1018に衝突し、発光が生じ
て画像が形成される。
【0160】ここで述べた画像表示装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の思
想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号につい
てはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限るも
のではなく、PAL,SECAM方式など他、これらよ
り多数の走査線からなるTV信号(MUSE方式をはじ
めとする高品位TV)方式をも採用できる。
【0161】(4)本発明の画像形成装置の構成 本発明はスペーサを用いた平面型の画像形成装置であ
り、図3にその構造概略を示すように(詳細は前述)、
複数の冷陰極素子1012を形成した基板1011と、
発光材料である蛍光体1018を形成した透明なフェー
スプレート1017とをスペーサ1020を介して対向
させた構造を有する表示装置であり、前記スペーサは走
査信号用である行または列方向配線(ここでは行方向と
する)に垂直に配置され、前記スペーサは表面の高抵抗
膜を有し、前記高抵抗膜が前記電子源基板および前記陽
極と電気的に接続されており、前記スペーサには、少な
くとも1つの低抵抗部材が前記電子源基板と前記陽極と
の間の電場のなす方向とほぼ垂直方向に沿って設けられ
ていることを特徴とする画像形成装置である。
【0162】本発明画像形成装置において、前記スペー
サ1020の一方の辺は冷陰極素子を形成した基板10
11上の走査信号用配線に垂直でかつ変調信号用配線上
に配置されている。また、その対向する辺は冷陰極素子
より放出された電子を高いエネルギーで発光材料(蛍光
膜1018)に衝突させるための加速電極(メタルバッ
ク1019)に接続される。
【0163】従来は絶縁性スペーサを用いていたため、
スペーサの近傍から放出された電子の一部がスペーサに
当たることにより、あるいは放出電子の作用でイオン化
したイオンがスペーサに付着することにより、スペーサ
帯電をひきおこす可能性があった。更には、フェースプ
レートに到達した電子が一部反射、散乱され、その一部
がスペーサに当たることによりスペーサ帯電をひきおこ
す可能性があった。このスペーサの帯電によりスペーサ
付近の冷陰極素子から放出された電子はその軌道を曲げ
られ、蛍光体上の到達位置はスペーサ側に近寄る、また
は完全に吸い寄せられてしまう。このスペーサ帯電また
はスペーサ帯電による位置ずれは、駆動開始後しばらく
すると飽和する。更にこれらの除電は非常に遅いため、
例えばNTSC画像の走査間隔では除電されることはな
い。そこで上記の帯電による電子ビームの軌道ずれの緩
和を図るため、前記スペーサの表面に高抵抗膜を施し除
電する工夫をしていた。しかしながら、冷陰極素子から
の電子放出量が大きくなるような状況で、スペーサが走
査信号用配線に平行に配置されていると、スペーサの面
全体が同時に帯電してしまい除電しきれなくなる。
【0164】そこで、前記スペーサを走査信号用配線に
平行に配置するのではなく、走査信号用配線に非平行で
あって、走査信号用配線に垂直にかつ変調信号用配線上
に配置することにより、スペーサ隣接ラインにおいて
は、同時には変調信号用配線に交わる素子列1ラインし
か駆動されず、前記スペーサの帯電が緩和される。加え
て、前記スペーサに少なくとも1つの低抵抗部材による
帯状電極を前記電子源基板と前記陽極との間の電場のな
す方向とほぼ垂直方向に沿って設けることによって、ス
ペーサの局所的な帯電が横方向に拡散され、上記帯電を
前記帯状電極方向に逃がし、素早く除電できるようにな
り有効である。
【0165】前記低抵抗部材は高抵抗膜を成膜する前
に、例えば金を真空蒸着し成膜し、必要に応じて所望の
形状になるように、エッチングし形成する。
【0166】また、スペーサの電子源基板に面する当接
面、または/かつスペーサの電子源基板に接する側面に
低抵抗膜からなる電極を設けると導電膜と電子源基板の
電気的接続が良好になり望ましい。更に、スペーサのフ
ェースプレートに面する当接面、または/かつスペーサ
のフェースプレートに接する側面に低抵抗膜からなる電
極を設けると導電膜とフェースプレートの電気的接続が
良好になり望ましい。前記低抵抗膜は、絶縁性基板およ
び導電膜に比べ十分に低い抵抗値を有する材料を選択す
ればよく、Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,
Al,Cu,Pd等の金属、あるいは合金、及びPd,
Ag,Au,RuO2 ,Pd−Ag等の金属や金属酸化
物とガラス等から構成される印刷導体、あるいはIn2
3 −SnO2 等の透明導体及びポリシリコン等の半導
体材料等より適宜選択される。この時の接合材(不図
示)はスペーサが電子源基板または/かつフェースプレ
ートと電気的に接続するように、導電性をもたせる必要
がある。すなわち、導電性接着材や金属粒子や導電性フ
ィラーを添加したフリットガラスが好適である。
【0167】また、前記帯状電極は前記電子源基板と前
記陽極との間の電場のなす方向とほぼ垂直な方向に沿っ
て、前記スペーサの周囲を一周する形状であるとより除
電能力が向上し好ましい。
【0168】また、本発明画像形成装置の電子放出素子
は表面伝導型冷陰極素子に限らず、ほかの冷陰極素子で
あっても同じ効果が得られる。
【0169】更に、特に前記冷陰極電子放出素子が平面
型の場合、前記冷陰極電子放出素子の1対の素子電極の
向かい合う方向が、前記スペーサの乗る前記変調信号用
配線に平行であると、前記スペーサが正常である電子ビ
ーム軌道の妨げにならず好ましい。
【0170】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述
する。
【0171】本実施例および比較例においては、マルチ
電子ビーム源として、前述した、電極間の導電性微粒子
膜に電子放出部を有するタイプのN×M個(N=307
2、M=1024)の表面伝導型放出素子を、M本の行
方向配線とN本の列方向配線とによりマトリクス配線
(図3および図4参照)したマルチ電子ビーム源を用い
た。
【0172】ここでフェースプレート側の陽極と電子源
基板の間に印加する電圧をアノード電圧、素子電極対に
印加する電圧を駆動電圧、電子放出素子からの放出電流
をエミッション電流とする。
【0173】(比較例1)比較例1について、図16を
用いて説明する。図16はパネル内部の概略平面図であ
る。ここで、13は走査信号用配線、14は変調信号用
配線、2,3は素子電極、5は電子放出部を含む薄膜
(素子部)、20はスペーサである。ここで、スペーサ
20は走査信号用配線13上に配置されている。また、
フェースプレート−電子源基板間距離は3mm、走査信
号用配線は700μm間隔である。スペーサには高抵抗
膜として酸化ニッケルを成膜しており、表面抵抗は約1
0の9乗[Ω/□]、スペーサの電子源基板に接する側
面の低抵抗電極(不図示)の高さ100μmで、走査信
号用配線13上に走査信号用配線と平行に配置されてい
る。また、図中→はある瞬間に駆動されているラインを
示す。
【0174】この時、アノード電極3kV、駆動電圧1
4Vで駆動すると、1素子当たりのエミッション電流が
約3μAで、その時のスペーサの最近接の素子列(図中
灰色の素子列)からの電子ビームはフェースプレート上
でスポットが確認できないほどスペーサ側にずれてい
た。
【0175】(比較例2)本比較例が比較例1と異なる
のは、スペーサの高抵抗膜として表面抵抗が約10の1
2乗[Ω/□]の酸化ニッケルを用いたことである。
【0176】この時、アノード電圧3kV、駆動電圧1
4Vで駆動すると、1素子当たりのエミッション電流が
約3μAで、その時のスペーサに最近接の素子列から放
出された電子ビームはフェースプレート上でスポットが
確認できないほどスペーサ側にずれていた。
【0177】(実施例1)図1を用いて説明する。ここ
で13は走査信号用配線、14は変調信号用配線、3
4,35は素子電極、36は電子放出部を含む薄膜(素
子部)、20はスペーサである。ここで、スペーサ20
は、変調信号用配線14上に配置されている。また、フ
ェースプレート−電子源基板間距離は3mm、変調信号
用配線間隔は700μm、スペーサには低抵抗部材をフ
ェースプレート−電子源基板間のほぼ中央になる位置に
約100μmの幅でスペーサを一周するように作製し、
さらに高抵抗膜として厚さ1000オングストロームの
酸化ニッケルを、電子ビーム法を用いたイオンプレーテ
ィングによって酸素雰囲気中で成膜してあり、表面抵抗
は約10の9乗[Ω/□]、スペーサの電子源基板に接
する側面の低抵抗電極(不図示)の高さは100μm
で、比較例と異なるのはスペーサ20が走査信号用配線
13と垂直かつ変調信号用配線14上に配置されている
ことである。さらに、これに付随して走査信号用配線1
3と変調信号用配線14の上下を逆転し、素子電極の向
かい合う方向も90度向きを変え、スペーサ20と平行
になるようにしている。また、図中→はある瞬間に駆動
されているラインを示す。
【0178】この時、アノード電圧3kV、駆動電圧1
4Vで駆動し、1素子当たりのエミッション電流が約3
μAで、その時のスペーサの最近接の素子(図中灰色の
素子)からの電子ビームのフェースプレート到達位置
(可視スポットの中心)は設計位置よりもスペーサ側に
約150μmずれていたが、比較例1に対して改善され
ている。
【0179】(実施例2)本実施例が実施例1と異なる
のはスペーサの高抵抗膜として厚さ1000オングスト
ロームの酸化ニッケルを電子ビーム法を用いたイオンプ
レーティングによってアルゴン雰囲気中で成膜した点で
ある。この高抵抗膜の表面抵抗は約10の12乗[Ω/
□]であった。
【0180】この時、アノード電圧3kV、駆動電圧1
4Vで駆動し、1素子当たりのエミッション電流が約3
μAで、その時のスペーサの最近接の素子からの電子ビ
ームのフェースプレート上の到達位置は設計位置よりも
スペーサ側に約250μmずれていたが比較例2に対し
て改善されている。
【0181】(実施例3)本実施例が実施例1と異なる
のは低抵抗部材を1mm間隔で2ラインを幅100μm
でスペーサを一周するように作製したことである。
【0182】この時、実施例1と同様の効果が得られ、
比較例1に対して電子ビームの位置ずれが改善されてい
る。
【0183】(実施例4)本実施例が実施例2と異なる
のは低抵抗部材を1mm間隔で2ラインを幅100μm
でスペーサを一周するように作製したことである。
【0184】この時、実施例2と同様の効果が得られ、
比較例2に対して電子ビームの位置ずれが改善されてい
る。
【0185】
【発明の効果】以上説明したように、走査信号用配線と
スペーサが垂直に配置されているため、スペーサは同時
に複数の素子による帯電はせず、また、スペーサの長手
方向の低抵抗部材による帯状電極によって局部の帯電を
電子源基板やフェースプレートに平行な方向に除電でき
るため、電子ビームのフェースプレート上での位置ずれ
が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像表示装置の概略平面図である。
【図2】本発明の実施例である表示パネルのA−A′断
面図である。
【図3】本発明の実施例である画像表示装置の、表示パ
ネルの一部を切り欠いて示した斜視図である。
【図4】本発明の実施例で用いたマルチ電子ビーム源の
基板の平面図である。
【図5】本発明の実施例で用いたマルチ電子ビーム源の
基板の一部断面図である。
【図6】本発明の表示パネルのフェースプレートの蛍光
体配列を例示した平面図である。
【図7】本発明の表示パネルのフェースプレートの蛍光
体配列を例示した平面図である。
【図8】本発明の実施例で用いた平面型の表面伝導型放
出素子の平面図(a)、断面図(b)である。
【図9】本発明の平面型の表面伝導型放出素子の製造工
程を示す断面図である。
【図10】本発明の通電フォーミング処理の際の印加電
圧波形である。
【図11】本発明の通電活性化処理の際の印加電圧波形
(a)、放出電流Ieの変化(b)である。
【図12】本発明の実施例で用いた垂直型の表面伝導型
放出素子の断面図である。
【図13】本発明の垂直型の表面伝導型放出素子の製造
工程を示す断面図である。
【図14】本発明の実施例で用いた表面伝導型放出素子
の典型的な特性を示すグラフである。
【図15】本発明の実施例である画像表示装置の駆動回
路の概略構成を示すブロック図である。
【図16】実施例比較のために用いた比較例の電子ビー
ム源の平面図である。
【図17】従来知られた表面伝導型放出素子の一例であ
る。
【図18】従来知られたFE型素子の一例である。
【図19】従来知られたMIM型素子の一例である。
【図20】画像表示装置の表示パネルの一部を切り欠い
て示した斜視図である。
【符号の説明】
1 絶縁性部材 3 電子源基板に面したスペーサの当接面 5 電子源基板に接するスペーサの側面 11 高抵抗膜 16 低抵抗部材 13 走査信号用配線 14 変調信号用配線 15 基板を含むリアプレート 20 スペーサ 21 抵抵抗膜 29 蛍光体とメタルバックを含むフェースプレート 34 素子電極 36 電子放出部 40 層間絶縁層 111 素子 112 電子線 1011 基板 1012 冷陰極素子 1013 行方向配線 1014 列方向配線 1015 リアプレート 1016 側壁 1017 フェースプレート 1018 蛍光体 1019 メタルバック 1020 スペーサ 1101 基板 1102,1103 素子電極 1104 導電性薄膜 1105 電子放出部 1113 薄膜 1010 黒色導電材 1041 接合材 1110 フォーミング用電源 1111 電流計 1112 活性化用電源 1114 アノード電極 1115 直流高電圧電源 1116 電流計 1201 基板 1202,1203 素子電極 1204 導電性薄膜 1205 電子放出部 1206 段差形成部材 1701 表示パネル 1702 走査回路 1703 制御回路 1704 シフトレジスタ 1705 ラインメモリ 1706 同期信号分離回路 1707 変調信号発生器 3001 基板 3004 導電性薄膜 3005 電子放出部 3010 基板 3011 エミッタ配線 3012 エミッタコーン 3013 絶縁層 3014 ゲート電極 3020 基板 3021,3023 電極 3022 絶縁層 3111 基板 3112 冷陰極素子 3113 行方向配線 3114 列方向配線 3115 リアプレート 3116 側壁 3117 フェースプレート 3118 蛍光体 3119 メタルバック 3120 スペーサ

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の冷陰極型電子放出素子を複数の走
    査信号用配線と、前記走査信号用配線と交差する複数の
    変調信号用配線とで連結した電子源基板と、透明基板の
    内面に蛍光膜と陽極を形成されたフェースプレートとを
    スペーサを介して対向させた構造を有する画像形成装置
    において、 前記スペーサは表面に高抵抗膜を有し、前記高抵抗膜が
    前記電子源基板および前記陽極と電気的に接続されてお
    り、かつ前記スペーサはその長手方向が前記走査信号用
    配線に非平行になるように前記電子源基板と前記陽極と
    の間に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記スペーサは、少なくとも1つの低抵抗部材が前
    記電子源基板と前記陽極との間の電場のなす方向とほぼ
    垂直方向に沿って設けられていることを特徴とする画像
    形成装置。
  3. 【請求項3】 前記少なくとも1つの低抵抗部材は、前
    記電子源基板と前記陽極との間の電場のなす方向とほぼ
    垂直な方向に沿って、前記スペーサの周囲を一周する形
    状であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装
    置。
  4. 【請求項4】 前記少なくとも1つの低抵抗部材は、前
    記電子源基板と前記陽極との間の電場のなす方向とほぼ
    垂直な方向に沿って、前記走査信号用配線にほぼ垂直で
    ある前記スペーサの長手方向に形成されることを特徴と
    する請求項2に記載の画像形成装置。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記スペーサのフェースプレートに接する側面およ
    び/または前記スペーサのフェースプレートに面する当
    接面に電極を有することを特徴とする画像形成装置。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記スペーサの前記電子源基板に接する側面および
    /または前記スペーサの前記電子源基板に面する当接面
    に電極を有することを特徴とする画像形成装置。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記冷陰極型電子放出素子が表面伝導型電子放出素
    子であることを特徴とする画像形成装置。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記冷陰極型電子放出素子が平面型であり、前記冷
    陰極型電子放出素子の1対の素子電極の向かい合う方向
    が、前記スペーサ型と平行であることを特徴とする画像
    形成装置。
  9. 【請求項9】 請求項1に記載の画像形成装置におい
    て、前記スペーサは矩形形状であることを特徴とする画
    像形成装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004506285A (ja) * 2000-08-07 2004-02-26 コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 高速デジタルパンチルトズームビデオ
CN100407360C (zh) * 2004-01-05 2008-07-30 佳能株式会社 图像形成装置

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