JP2000011424A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】明細書
【発明の名称】光ヘッド装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための集光手段と、前記光記録媒体からの反射戻り光を回折させる回折素子と、前記回折素子を透過した反射戻り光を受光する光検出素子とを備えた光ヘッド装置において、前記回折素子は光学異方性媒質からなりその格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状であり、前記格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填され、かつ前記光学等方性媒質の屈折率の値が前記光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値であることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記回折素子の光学異方性媒質の異常光屈折率を示す方向が、前記光記録媒体からの反射戻り光であり前記格子に入射する光の偏光方向に対して略45°の角度をなしていることを特徴とする請求項1記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記回折素子が、前記光検出素子とともに光記録媒体上に結ぶ光焦点の誤差検出器としての機能を有するように、前記回折素子の格子が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ヘッド装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスクなどの光記録媒体の光学的情報の書き込み・読み取りを行う光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光磁気ヘッド装置の一例を示す概念的斜視図を図9に示す。図9中、半導体レーザ1から出射した光はコリメートレンズ2、ビームスプリッタ3を透過し、反射プリズム4で反射した後、集光レンズ5にて光磁気記録媒体6に集光される。光磁気記録媒体6で反射された戻り光は集光レンズ5、反射プリズム4を透過した後、ビームスプリッタ3で反射されコリメートレンズ7を透過しビームスプリッタ8に入射する。ビームスプリッタ8で反射された光はシリンドリカルレンズ9を透過して4分割光検出器10で受光される。
【0003】
一方、ビームスプリッタ8を透過した光は1/2波長板11にて偏光方向が45゜回転され、検光子12によりP偏光成分およびS偏光成分に分離されて2分割光検出器13で受光される。
【0004】
光磁気記録媒体6上に結ぶ光の焦点誤差の検出は、シリンドリカルレンズ9と4分割光検出器10を使用して、4分割光検出器10の検出面上にできる楕円形の光スポットの長軸・短軸の向きを判定する非点収差法によって行われる。また、光磁気記録媒体6に記録された情報は2分割光検出器13に到達し2分割された光スポットの差分信号により検出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の光磁気ヘッド装置においては、光学部品の点数が多いため構成が複雑であり、組立工数が多くなることから量産性がよくない。さらに小型化、薄型化が困難であり、近年需要が増大している携帯向けの用途などには不向きである。また、検光子には通常高価なウオラストンプリズムを使用しており、さらに光学部品の点数が多いことによって光磁気ヘッド装置のコストアップを招いている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであり、光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための集光手段と、前記光記録媒体からの反射戻り光を回折させる回折素子と、前記回折素子を透過した反射戻り光を受光する光検出素子とを備えた光ヘッド装置において、前記回折素子は光学異方性媒質からなりその格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状であり、前記格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填され、かつ前記光学等方性媒質の屈折率の値が前記光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値であることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0007】
また、前記回折素子の光学異方性媒質の異常光屈折率を示す方向が、前記光記録媒体からの反射戻り光であり前記格子に入射する光の偏光方向に対して略45°の角度をなしていることを特徴とする上記の光ヘッド装置を提供する。
さらに、前記回折素子が、前記光検出素子とともに光記録媒体上に結ぶ光焦点の誤差検出器としての機能を有するように、前記回折素子の格子が形成されていることを特徴とする上記の光ヘッド装置を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の光ヘッド装置の場合、光記録媒体として光磁気記録媒体を使用する光磁気ヘッド装置として好ましく使用されるので、光磁気ヘッド装置に限定して説明する。
【0009】
本発明の光磁気ヘッド装置においては、使用される回折素子に特徴がある。この回折素子は光学的複屈折性を示す光学異方性媒質からなり、その格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状である。そしてこの格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填されている、すなわち光学等方性媒質が格子の溝部のみを埋めているかまたは格子の溝の深さ以上の厚みの光学等方性媒質で埋められていてもよい。さらに光学等方性媒質の屈折率の値が光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値を有している。以下、それぞれの構成要素の個所において具体的に本発明を詳細に説明する。また、格子の溝の深さのことを単に溝の深さという。
【0010】
本発明の実施の形態において、光源の位置の違いによって説明を大きく2つの部分に分けてある。第一の実施の形態は、光源である半導体レーザチップが光検出素子に近接して設置されている場合であり、第二の実施の形態は、光源である半導体レーザが光検出素子から分離されて、異なる場所に設置されている場合である。
【0011】
まず、第一の実施の形態について詳細に説明する。
図2は本発明の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図である。この装置は光磁気記録媒体6に情報を記録したり、光磁気記録媒体6から情報の再生を行う。
【0012】
光検出モジュール14は回折素子14aおよびサブモジュール14bから構成されており、上述した従来の光ヘッド装置を示す図9における、半導体レーザ1、ビームスプリッタ3および8、シリンドリカルレンズ9、4分割光検出器10、1/2波長板11、検光子12、2分割光検出器13の全てが有する機能と同等の機能を備える。すなわち、これらの光学部品などを1つの光検出モジュール14に置換することができる。
【0013】
光検出モジュール14から出た光はコリメートレンズ2にて平行光束化され、反射プリズム4を透過した後、集光手段である集光レンズ5にて光磁気記録媒体6上に結像される。光磁気記録媒体6で反射された戻り光は、集光レンズ5を透過した後、反射プリズム4、コリメートレンズ2を透過し光検出モジュール14に入射する。
【0014】
図1は本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュール14の模式的断面図であり、上述の多くの光学部品が置換可能な部分である。サブモジュール14bはサブモジュールパッケージ100および光源である半導体レーザチップ101および光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103からなる。半導体レーザチップ101からの出射光104は、回折素子14aを透過して、コリメートレンズ、反射プリズム、集光レンズを透過した後、光磁気記録媒体にて反射し、集光レンズ、反射プリズム、コリメートレンズを通過して戻り光105となり、回折素子14aに入射した後、−1次回折光106a、+1次回折光106b、0次透過光106cに回折され、光検出素子102a、102bにて受光される。
【0015】
以下、回折素子14aに関して図1を用いて詳述する。図1において、回折素子14aはガラスの基板107と108、粘着層109、1/2波長板110、光学的等方媒質である等方性充填材111および、鋸歯状または階段状の断面形状を有する格子であって、光学異方性媒質である異方性格子112からなる積層構造を有している。この異方性格子112は半導体プロセスなどで用いられているプレーナ法により一平面内で多数個を一括作製したのち、ダイシングソーなどを使用した切断により素子化されればよい。
【0016】
ガラスの基板107と108は光吸収の少ない光学ガラスを用い、軽量化のため、厚みは0.3〜0.6mmの薄板ガラスを用いることが好ましい。また、ガラス表面には誘電体多層膜などによる反射防止膜が施されていることが好ましい。1/2波長板110は、異方性格子112に入射する光磁気記録媒体からの反射戻り光の偏光方向が、異方性格子112の異常光屈折率を示す方向である光学異方軸に対して45°となるよう、回折素子に入射する偏光方向を回転させる作用を有する。以下、光学異方軸ということがある。
【0017】
ここでは1/2波長板110を使用して、入射する直線偏光の偏光方向が、異方性格子112の光学異方軸に対して45°となるように設定したが、45°の角度でなくとも任意の角度であってもよい。ただし、0°と90°に近づくにつれて光信号の大きさが小さくなる。
【0018】
また、上記の角度中特に45°の角度をなすことにより、後述するように異方性格子112に入射する直線偏光を分解した常光成分と異常光成分の強度が等しくかつ最大値に近くなり、光検出素子102a、102bにて受光される光量が略等しくなって、信号処理上極めて都合がよい。
【0019】
しかし、1/2波長板110は必須ではない。つまり、1/2波長板110を使用する代わりに、回折素子に入射する直線偏光の偏光方向と、回折素子を形成する光学異方性媒質が示す光学異方軸の方向とが略45°をなすように、回折素子が配置されていてもよい。したがってこのようにあらかじめ異方性格子の光学異方軸が、入射偏光方向に対して45°傾くように設置されていれば、1/2波長板は必要なく光学部品数が減らせ、また、回折素子の製造工程で1/2波長板の偏光方向を特定の方向に合わせてを組み込む工程が省けて好ましい。1/2波長板110の材質は、水晶板、ポリカーボネートなどの延伸した有機フィルムなどが通常用いられる。1/2波長板110は光学軸が入射光の偏光方向と合った適切な向きになるよう、粘着層109、等方性充填材111により、ガラス基板107と108に保持される。
【0020】
等方性充填材111は以下述べる所望の屈折率を有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂などの有機接着剤を用い、異方性格子112を形成したガラスの基板108上に適量を滴下した後、波長板を接着したガラスの基板107と圧着させ固化接着すればよい。その際、格子溝部に気泡が取り残されないよう、低粘度の接着剤を選択する方が好ましく、また、接着剤滴下後の圧着時に工夫を要する。等方性充填材111の屈折率は、複屈折性を示す光学異方性媒質である異方性格子の常光屈折率と異常光屈折率の中間の大きさを有している。
【0021】
異方性格子は、ガラスの基板107上に形成された高分子液晶薄膜などをドライエッチング法などを用いて作製される。ここで使用する高分子液晶としては、側鎖型を有する構造のものが好ましく、アクリル系、シリコーン系、メタクリル系などを主成分とするものが例示できる。ここで、異方性格子を作製する材料としては高分子液晶薄膜に限られず光学的異方性を有する誘電体光学結晶などであってもよく、この場合は直接異方性格子が形成される。
【0022】
しかし、高分子液晶薄膜の場合は材料そのものの作製が容易であり、さらに格子の形成も容易であって、高分子液晶薄膜を使用するすることが好ましい。
高分子液晶薄膜の形成は、ポリイミドなどの有機薄膜をラビング法により配向処理させたガラス基板上に光重合型モノマー液晶をスピンコート法などで所望の膜厚になるよう塗布した後、適切な温度環境下にて紫外線を照射し重合高分子化されて行われる。
【0023】
格子の断面形状は、非対称な鋸歯状または階段状である。鋸歯状であれば回折の特性に優れ好ましいが、製作に困難を伴う。階段状の格子で所望の回折の特性が得られれば、製作の容易さから有利となる。薄膜化された高分子液晶は、フォトリソグラフィー法を用いたエッチング法や金型を用いたプレス法などで格子パターンが形成される。
【0024】
ここでは、断面形状が階段状の格子の作製法について説明する。フォトリソグラフィー法によって4段階のステップを経て作製する方法である、4段ステップ格子の形成法を図3に示す。図3(a)は、高分子液晶薄膜上に形成したフォトレジストをパターニングした様子を示す断面図である。すなわち、高分子液晶薄膜42を成膜したガラスの基板43上にフォトレジスト41をスピンコートし、通常の半導体プロセスなどで用いられるフォトリソグラフィー法により、マスクパターンを感光した後現像を行い、フォトレジストの格子パターンを形成する。この場合、フォトマスクは高分子液晶の配向方向、つまり光学異方性媒質の異方軸方向に対して格子の長手方向が一致するように配置する。
【0025】
図3(b)は、ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をエッチングした様子を示す断面図である。つまり、フォトレジストパターンが形成された基板はドライエッチング法によりエッチング部の高分子液晶薄膜厚が未エッチング部の高分子液晶薄膜厚の1/3程度になるまでエッチングする。その際、フォトレジストも同時にエッチングされる。また、図3(c)は、フォトレジストを再塗布してパターニングした様子を示す断面図である。ここでは、フォトレジストをスピンコートにて塗布し、露光、現像を行うが、このとき用いるフォトマスクは図3(a)にて使用したフォトマスクの半分の格子周期にする。
【0026】
図3(d)は、再ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をさらにエッチングした様子を示す断面図である。つまり、再度ドライエッチングすることにより、先程(b)でエッチングした部分のうちで、さらに除去すべき部分をエッチングして、4段ステップ格子を形成できる。
【0027】
回折効率などの光学特性をさらに向上させる場合、さらにプロセス数を増加することで多段化し、一直線の理想的な斜面に近づける方が望ましい。また、理想的な鋸歯状であるブレーズ型格子を得るために、精密金型によるプレス法も格子形成手段として有効である。
【0028】
次に、本発明における回折素子14aの機能に関して、図1および図4を用いて詳述する。回折素子14aに内蔵している異方性格子112の常光屈折率をno、異常光屈折率をne とし、等方性充填材111の屈折率をnsとする。本発明ではこのnsをnoとneとの中間の値とする。特にno、ne、ns間の関係を式(1)のようにすることが好ましい。
ns=(ne+no)/2 ・・・(1)
【0029】
異方性格子112の溝の深さをdとすると、異方性格子112と等方性充填材111とにより生じる位相差形状は図4のようになる。図4は異方性格子の格子形状とこれにより生じる位相差を示す図であり、図4(a)は異方性格子112の格子形状を示す模式的断面図であり、図4(b)と図4(c)はそれぞれ異常光線、常光線に対する位相差形状を示す図である。式(1)よりnsはneとnoとのちょうど中間の値を有することから、図4に示す常光線と異常光線の位相差形状は、絶対値は等しく、形状が反転したものになる。
【0030】
回折理論より、周期的な位相差形状を有する格子に光が入射した場合、回折光が生じ、その回折光強度は入射光強度に対する割合である回折効率ηmにより表される。ここでmは回折次数であり、m=0、±1、±2・・である。本発明のように、回折格子の断面形状を、非対称な鋸歯状または階段状にして最適化した場合、m次回折効率はmの正負で非対称になり、+次数の回折光と−次数の回折光の間に回折効率の強度差が生じる。
【0031】
図4(a)の格子に異常光線が入射した場合の位相差形状は、図4(b)のようになるから、図の右側の回折光を+1次回折光、左側のそれを−1次回折光として、異常光線の回折効率の+1次回折光と−1次回折光をそれぞれηe,+1およびηe,-1とすると回折効率は、ηe,+1>>ηe,-1となり、+1次回折光が強く、−1次回折光は弱い。ここでηe,-1は略0である。
【0032】
常光線の場合には、位相差形状は図4(c)のようになるため、異常光線の場合とは反対側に回折しηo,-1>>ηo,+1になり、−1次回折光が強く、+1次回折光は弱い。ここで、ηo,+1は略0である。
0次透過光と1次回折光の効率比ηo,0/ηo,-1(常光線の場合)またはηe,0/ηe,+1(異常光線の場合)は、適切に溝の深さdを選ぶことにより略1とすることができる。
【0033】
以上をまとめると、本発明における回折素子は、図4(a)に示した格子の断面形状および溝の深さを適切に選ぶことで、式(2)〜式(5)を満たす回折特性を有するようにできる。
ηo,0≒ηo,-1>>ηo,+1≒0・・・(2)
ηe,0≒ηe,+1>>ηe,-1≒0・・・(3)
ηo,0=ηe,0 ・・・(4)
ηo,-1=ηe,+1 ・・・(5)
【0034】
すなわち、異方性格子に入射する光を、常光成分が主である−1次回折光と異常光成分が主である+1次回折光に偏光分離することができ、かつ、0次透過光の偏光状態は、入射光のそれに等しくなる特徴を有する。特に、入射光の偏光方向が、異方性格子の光学異方軸方向(異常光屈折率を示す方向)に対して45°傾いていた場合では、上述のように回折される常光および異常光の強度が等しくなる。
【0035】
次に、本発明における信号検出方法に関して詳述する。図5は、本発明の光磁気ヘッド装置における回折素子を透過する光の偏光特性を示す概念図である。異方性格子112の格子方向を異常光屈折率を示す方向60に一致させ、この方向を異常光方向61、これと直交する方向を常光方向62とする。
【0036】
光源である半導体レーザチップ101からの出射光は、異常光方向61に対して45°傾いた出射光の偏光方向63とすると、異方性格子112を透過した光の偏光方向は、前述の説明により入射前後で保存されるため、異常光方向61に対して45°傾いた偏光方向Aである64になる。次に透過光の偏光方向Aである64は、1/2波長板110により偏光方向が45°回転して、異常光方向に偏光した偏光方向Bである65になり、光磁気記録媒体に向かう。
【0037】
一方、光磁気記録媒体で反射した戻り光は、出射光と同じ偏光方向の偏光方向Bである65になり、1/2波長板110を再度透過して、異常光方向61に対して45°傾いた直線偏光の偏光方向Aである64になる。次に、異方性格子112により回折されるが、式(2)および式(3)から、45°に傾いた偏光方向Aである64の直線偏光の異常光成分は+1次回折光の偏光方向66の光および0次透過光に回折され、常光成分は−1次回折光の偏光方向67の光および0次透過光に回折される。偏光分離された66および67の偏光方向の光はそれぞれ光検出素子102b、102aに入射する。
【0038】
また、異方性格子112に入射する光の偏光方向が、異常光方向61に対して45°傾いた場合、つまり、常光成分と異常光成分の強度が等しい場合には、式(5)より常光と異常光の回折効率が等しいため、異常光+1次回折光と、常光−1次回折光の強度は等しくなる。しかし、光磁気記録媒体により反射された戻り光の偏光方向は、光磁気記録媒体の磁気モーメントに基づくカー効果により、記録された情報(磁気モーメントの向き)に対応したカー回転角、+θkまたは−θkだけ回転している。そのために、1/2波長板110を透過して、異方性格子112に入射する光の偏光方向も、異常光方向に対して(45±θk)°になる。
【0039】
したがって、異方性格子に入射する光の常光および異常光成分強度のみをそれぞれ100とすると、θkに比例した強度変調±αがこれに加わり、光検出素子102a、102bに入射する光強度Io、Ieは式(6)、式(7)となる。光磁気記録媒体の情報を読み出す場合は、IeとIoの信号の差分から戻り光変調αを得ればよく、光磁気信号Rfは式(8)により検出される。ここで、式(5)よりηe,+1=ηo,-1であるからこれをη1とおけばRfはそれぞれ+2αη1または−2αη1となる。
【0040】
【数1】
【0041】
一方、焦点誤差信号やトラッキング誤差信号は、光検出素子102a、102bを各々複数個に分割して、分割された光検出素子の各々からの信号を演算することにより得ることができる。
【0042】
通常、焦点誤差検出法にはスポットサイズ法、非点収差法、ナイフエッジ法などを用いる。これらは、2つの光検出素子に入射する2つの回折光の光スポットの大きさの違いで焦点誤差を検出するもの(スポットサイズ法)、1つの光スポットが円形となるかまたは楕円形となりその長軸と短軸の向きがどちらかよって焦点誤差を検出するもの(非点収差法)、半月形の光スポットの向きに応じて焦点誤差を検出するもの(ナイフエッジ法)である。
【0043】
これらの形状の光スポットが、光磁気記録媒体上での焦点誤差の発生に伴って、光検出素子上に生じるように、各々の検出法に応じて異方性格子の上面から見た形状を変形して作製すればよい。通常このような光スポットを変形する収差を発生させる格子の上面形状は、曲線状となる。
【0044】
図6は、本発明の光磁気ヘッド装置における光検出素子上の光スポットを示す模式的上面図であり、図6を用いてさらに詳しくスポットサイズ法を説明する。異方性格子を光のレンズ機能を有する格子の上面形状とすることで、3分割後の光検出素子70a、70b、70c、70d、70eおよび70fに入射する回折光の焦点距離を変え、焦点誤差に対応する光検出素子上の−1次回折光の光スポット71および+1次回折光の光スポット72のサイズ変化から、焦点誤差信号Sfeは式(9)より検出する。
【0045】
ここで、Ia、Ib、Ic、Id、IeおよびIfはそれぞれ、分割された光検出素子70a、70b、70c、70d、70eおよび70fより得られた信号強度である。図6(a)は光磁気記録媒体が焦点位置より遠い場合で、Sfe>0、(b)は光磁気記録媒体が焦点位置にある場合で、Sfe=0、(c)は光磁気記録媒体が焦点位置より近い場合で、Sfe<0を示す。
【0046】
【数2】
【0047】
一方、光磁気記録媒体上のトラックからの光の外れである、トラッキング誤差検出法には、再生専用に用いられる3ビーム法や、記録および再生の両方に用いられるプッシュプル法などがある。3ビーム法の場合、半導体レーザ出射端近傍(出射口の前)に3ビーム回折素子および3ビーム光検出素子を設置する必要がある。また、プッシュプル法の場合には、図6の3分割光検出素子において、トラッキング誤差信号Steは式(10)より検出できる。
【0048】
上述の構成は、図1の光検出モジュール内に半導体レーザチップを備え、また、回折素子14aによって、光磁気記録媒体に入射する光線である往路光線および光磁気記録媒体により反射した戻り光である復路光線の両者が、入射し回折される。したがって、往路光線の場合には、±1次以上の回折光が損失光(不要光)となり光磁気記録媒体に入射する光強度の低下を招いている。また、復路の場合には、0次透過光が損失光となるため、光検出素子に入射される光の利用効率は低下する。光源である半導体レーザチップの出力および信号増幅回路の性能がよい場合には、上述した構成の光磁気ヘッド装置で十分に信号の読み書きができる。
【0049】
以上が、第一の実施の形態についての説明であったが、次に、第二の実施の形態について光検出モジュールと光磁気ヘッド装置の構成ついてのみ簡単に説明する。他の部分は第一の実施の形態の説明で述べたものと同じである。
第一の実施の形態で述べた以上に往復路の光利用効率を高める手段として、光源である半導体レーザが光検出素子から分離されて、異なる場所に設置されている。
【0050】
図7は、本発明の他の実施態様の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図である。
光検出モジュール15とは別に配された、光源である半導体レーザ1からの出射光は、コリメートレンズ2、ビームスプリッタ3、全反射プリズム4、集光レンズ5を透過した後、光磁気記録媒体6で反射して、再度集光レンズ5、全反射プリズム4を透過し、ビームスプリッタ3にて反射し、コリメートレンズ7を透過して光検出モジュール15に入射する。ここで、15aおよび15bはそれぞれ回折素子およびサブモジュールである。本発明による光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図を図8に示す。図1に示した光検出モジュールとの相違点は、図1の半導体レーザチップ101が本構成では内蔵されていないこと、および異方性格子112の溝の深さdを変化させ、0次透過効率を略0にしたことであり、その他は全て同じ構成である。
【0051】
本構成における回折素子の回折効率は、式(11)〜式(14)となり、0次透過光強度が略0になる結果、信号検出に使用する1次回折効率ηo,-1及びηe,+1が前述の構成に比べ高くなり、往復での光利用効率はおよそ1.5倍に向上する。しかし、図2と図7を比べてわかるように、図2の構成に比べ、本構成は部品点数が多いものの、従来例である図9と比べて約半分に低減できて、小型化、コストダウンが図れる。
ηo,-1>>ηo,+1≒0・・・(11)
ηe,+1>>ηe,-1≒0・・・(12)
ηo,0=ηe,0 ≒0 ・・・(13)
ηo,-1=ηe,+1 ・・・(14)
【0052】
【実施例】
「例1」
本例を、図1を用いて説明する。まず、異方性格子の形成法について述べる。異方性格子は常光屈折率が1.55、異常光屈折率が1.65の重合した高分子液晶薄膜を用いて形成した。配向処理されたガラスの基板108上に、スピンコート法により厚さ7.5μmのモノマー液晶薄膜を形成後、紫外線照射を行い重合固化させ、高分子液晶薄膜とした。
【0053】
格子の形成は、図3に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて行い、光学異方軸と格子の長手方向が略一致するようにして、格子周期が約10μm、溝の深さ7.5μmの4段ステップ格子のホログラムを形成した。本例では、焦点誤差検出法にスポットサイズ法を使用したため、コンピュータシミュレーションによりスポットサイズ法として使用するのに最適なホログラムパターンを設計した。
【0054】
次に、この異方性格子を組み込んだ回折素子の作製法について述べる。厚さ0.5mmで片面に誘電体多層膜の反射防止膜が施されている光学ガラスの基板107の反射防止膜のない面と、1/2波長板110で粘着層109が塗布された面とを貼合わせた。ここで使用した1/2波長板110は、延伸されたポリカーボネートフィルム製で、厚さ100μmのものであった。
【0055】
次に、異方性格子112が形成されたガラスの基板108の異方性格子側の面にスピンコート法により厚さ20μmにアクリル系の等方性充填材111を塗布し、この塗布面と上記層状物の1/2波長板110側とを合わせ、紫外線照射により重合固化して接着した。重合固化後の等方性充填材111の屈折率は1.6であった。
【0056】
以上のようにして形成された積層物を切断・分離して回折素子とした。作製された回折素子の大きさは、縦3mm、横3mm、厚さ1.3mmであり、光学特性は、P偏光が入射した場合、透過効率が36%、+1次回折効率が36%、−1次回折効率が0.2%であり、S偏光が入射した場合、透過効率が36%、−1次回折効率が36%、+1次回折効率が0.2%であり、弱い高次回折光もあった。ただし、ここでS偏光とは、格子の長手方向に平行な偏光であり、P偏光とは格子の長手方向に直交した方向の偏光である。
【0057】
回折素子14aは、半導体レーザチップ101、3分割光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103が搭載された樹脂のサブモジュールパッケージ100に組み付けられ、調整されて接着剤で固定された。
【0058】
作製された光検出モジュール14を図2に示す光磁気ヘッド装置に組み込み、波長650nmのレーザ光を使用し、光磁気記録媒体6の情報の記録・再生を行った。前述のように、焦点誤差検出にはスポットサイズ法を用い、3分割光検出素子102a、102bの各分割検出素子からの信号を演算し、合焦点制御を行った。また、トラッキング誤差検出は、プッシュプル法により、光検出素子102aと102bにより制御した。
光磁気記録情報の再生信号は、光検出素子102aと102bの差動信号により得られ、本例においては良好な再生信号を得ることができた。
【0059】
「例2」
本例を、図8を参照にして説明する。まず、異方性格子の形成法について述べる。異方性格子は常光屈折率が1.55、異常光屈折率が1.65の重合した高分子液晶薄膜を用いて形成した。配向処理されたガラスの基板108上に、スピンコート法により厚さ9.8μmのモノマー液晶薄膜を形成後、紫外線照射を行い重合固化させ、高分子液晶薄膜とした。
【0060】
格子の形成は、図3に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて行い、光学異方軸と格子の長手方向が略一致するようにして、格子周期が約10μm、溝の深さ9.8μmの4段ステップ格子のホログラムを形成した。本例では、焦点誤差検出法にスポットサイズ法を使用したため、コンピュータシミュレーションによりスポットサイズ法として使用するのに最適なホログラムパターンを設計した。
【0061】
次に、この異方性格子を組み込んだ回折素子の作製法に関して述べる。
異方性格子112が形成されたガラスの基板108の異方性格子側の面にスピンコート法により厚さ20μmにアクリル系の等方性充填材111を塗布し、この塗布面と厚さ0.5mmで片面に誘電体多層膜の反射防止膜が施されている光学ガラスの基板107の反射防止膜のない面とを合わせ、紫外線照射により重合固化して接着した。重合固化後の等方性充填材111の屈折率は1.6であった。ただし、本例では、図8の1/2波長板110は組み込まなかった。
【0062】
以上のようにして作製された積層物を切断・分離して回折素子とした。作製された回折素子の大きさは、縦3mm、横3mm、厚さ1.2mmであり、光学特性は、P偏光が入射した場合、透過効率が0.2%、+1次回折効率が78%、−1次回折効率が0.2%であり、S偏光が入射した場合、透過効率が0.2%、−1次回折効率が78%、+1次回折効率が0.2%であり、弱い高次回折光もあった。これらの値は例1と大きく異なり、透過効率は低いが、P偏光に対する+1次回折効率およびS偏光に対する−1次回折効率は2倍以上と大きかった。
【0063】
回折素子15aは、3分割光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103が搭載された樹脂製のサブモジュールパッケージ100に組み付けられ、調整されて接着剤で固定された。
【0064】
作製された光検出モジュール15を図7に示す光磁気ヘッド装置に組み込み、波長650nmのレーザ光を使用し、光磁気記録媒体6に情報の記録・再生を行った。このとき、光検出モジュール15に入射する光の偏光方向と、異方性格子の異常光屈折率を示す方向とのなす角度が45゜になるように、光検出モジュール15を組み込んだ。前述のように、焦点誤差検出にはスポットサイズ法を用い、3分割光検出素子102a、102bの各分割検出素子からの信号を演算し、合焦点制御を行った。また、トラッキング誤差検出は、プッシュプル法により、光検出素子102aと102bにより制御した。
光磁気記録情報の再生信号は、光検出素子102aと102bの差動信号により得られ、本例においては光利用効率の高い良好な再生信号が得られた。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光ヘッド装置においては、装置を構成する光学部品の点数が少ないため構成が単純であり、組立工数が少なくなることから量産性がよい。さらに小型化、薄型化が可能であり、携帯向けの用途などには好適である。 また本発明の光ヘッド装置の場合、光記録媒体として光磁気記録媒体(光磁気ディスク)を使用する光磁気ヘッド装置が好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図。
【図2】本発明の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図。
【図3】4段ステップ格子の形成法を示す概念図。(a)高分子液晶薄膜上に形成したフォトレジストをパターニングした様子を示す断面図、(b)ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をエッチングした様子を示す断面図、(c)フォトレジストを再塗布してパターニングした様子を示す断面図、(d)再ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をさらにエッチングした様子を示す模式的断面図。
【図4】異方性格子の格子形状とこれにより生じる位相差を示す図。(a)異方性格子の格子形状を示す断面図、(b)異常光線に対する位相差形状を示す概念図、(c)常光線に対する位相差形状を示す概念図。
【図5】本発明の光磁気ヘッド装置における回折素子を透過する光の偏光特性を示す概念図。
【図6】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出素子上の光スポットを示す模式的上面図。(a)光磁気記録媒体が焦点位置より遠い場合、(b)光磁気記録媒体が焦点位置にある場合、(c)光磁気記録媒体が焦点位置より近い場合。
【図7】本発明の他の実施態様の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図。
【図8】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図。
【図9】従来の光磁気ヘッド装置の一例を示す概念的斜視図。
【符号の説明】
1:半導体レーザ
2:コリメートレンズ
3:ビームスプリッタ
4:反射プリズム
5:集光レンズ
6:光磁気記録媒体
7:コリメートレンズ
8:ビームスプリッタ
9:シリンドリカルレンズ
10:4分割光検出器
11:1/2波長板
12:検光子
13:2分割光検出器
14:光検出モジュール
14a:回折素子
14b:サブモジュール
15:光検出モジュール
15a:回折素子
15b:サブモジュール
41:フォトレジスト
42:高分子液晶薄膜
43:基板
44:フォトレジスト
60:異常光屈折率を示す方向
61:異常光方向
62:常光方向
63:出射光の偏光方向
64:偏光方向A
65:偏光方向B
66:+1次回折光の偏光方向
67:−1次回折光の偏光方向
70a〜70c:3分割光検出素子
70d〜70f:3分割光検出素子
71:−1次回折光の光スポット
72:+1次回折光の光スポット
100:サブモジュールパッケージ
101:半導体レーザチップ
102a:光検出素子
102b:光検出素子
103:シリコン基板
104:出射光
105:戻り光
106a:−1次回折光
106b:+1次回折光
106c:0次透過光
107:基板
108:基板
109:粘着層
110:1/2波長板
111:等方性充填材
112:異方性格子
【発明の名称】光ヘッド装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための集光手段と、前記光記録媒体からの反射戻り光を回折させる回折素子と、前記回折素子を透過した反射戻り光を受光する光検出素子とを備えた光ヘッド装置において、前記回折素子は光学異方性媒質からなりその格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状であり、前記格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填され、かつ前記光学等方性媒質の屈折率の値が前記光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値であることを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記回折素子の光学異方性媒質の異常光屈折率を示す方向が、前記光記録媒体からの反射戻り光であり前記格子に入射する光の偏光方向に対して略45°の角度をなしていることを特徴とする請求項1記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記回折素子が、前記光検出素子とともに光記録媒体上に結ぶ光焦点の誤差検出器としての機能を有するように、前記回折素子の格子が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ヘッド装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスクなどの光記録媒体の光学的情報の書き込み・読み取りを行う光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光磁気ヘッド装置の一例を示す概念的斜視図を図9に示す。図9中、半導体レーザ1から出射した光はコリメートレンズ2、ビームスプリッタ3を透過し、反射プリズム4で反射した後、集光レンズ5にて光磁気記録媒体6に集光される。光磁気記録媒体6で反射された戻り光は集光レンズ5、反射プリズム4を透過した後、ビームスプリッタ3で反射されコリメートレンズ7を透過しビームスプリッタ8に入射する。ビームスプリッタ8で反射された光はシリンドリカルレンズ9を透過して4分割光検出器10で受光される。
【0003】
一方、ビームスプリッタ8を透過した光は1/2波長板11にて偏光方向が45゜回転され、検光子12によりP偏光成分およびS偏光成分に分離されて2分割光検出器13で受光される。
【0004】
光磁気記録媒体6上に結ぶ光の焦点誤差の検出は、シリンドリカルレンズ9と4分割光検出器10を使用して、4分割光検出器10の検出面上にできる楕円形の光スポットの長軸・短軸の向きを判定する非点収差法によって行われる。また、光磁気記録媒体6に記録された情報は2分割光検出器13に到達し2分割された光スポットの差分信号により検出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の光磁気ヘッド装置においては、光学部品の点数が多いため構成が複雑であり、組立工数が多くなることから量産性がよくない。さらに小型化、薄型化が困難であり、近年需要が増大している携帯向けの用途などには不向きである。また、検光子には通常高価なウオラストンプリズムを使用しており、さらに光学部品の点数が多いことによって光磁気ヘッド装置のコストアップを招いている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであり、光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための集光手段と、前記光記録媒体からの反射戻り光を回折させる回折素子と、前記回折素子を透過した反射戻り光を受光する光検出素子とを備えた光ヘッド装置において、前記回折素子は光学異方性媒質からなりその格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状であり、前記格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填され、かつ前記光学等方性媒質の屈折率の値が前記光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値であることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0007】
また、前記回折素子の光学異方性媒質の異常光屈折率を示す方向が、前記光記録媒体からの反射戻り光であり前記格子に入射する光の偏光方向に対して略45°の角度をなしていることを特徴とする上記の光ヘッド装置を提供する。
さらに、前記回折素子が、前記光検出素子とともに光記録媒体上に結ぶ光焦点の誤差検出器としての機能を有するように、前記回折素子の格子が形成されていることを特徴とする上記の光ヘッド装置を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の光ヘッド装置の場合、光記録媒体として光磁気記録媒体を使用する光磁気ヘッド装置として好ましく使用されるので、光磁気ヘッド装置に限定して説明する。
【0009】
本発明の光磁気ヘッド装置においては、使用される回折素子に特徴がある。この回折素子は光学的複屈折性を示す光学異方性媒質からなり、その格子の断面形状が非対称な鋸歯状または階段状である。そしてこの格子の少なくとも溝部には光学等方性媒質が充填されている、すなわち光学等方性媒質が格子の溝部のみを埋めているかまたは格子の溝の深さ以上の厚みの光学等方性媒質で埋められていてもよい。さらに光学等方性媒質の屈折率の値が光学異方性媒質の常光屈折率と異常光屈折率の中間の値を有している。以下、それぞれの構成要素の個所において具体的に本発明を詳細に説明する。また、格子の溝の深さのことを単に溝の深さという。
【0010】
本発明の実施の形態において、光源の位置の違いによって説明を大きく2つの部分に分けてある。第一の実施の形態は、光源である半導体レーザチップが光検出素子に近接して設置されている場合であり、第二の実施の形態は、光源である半導体レーザが光検出素子から分離されて、異なる場所に設置されている場合である。
【0011】
まず、第一の実施の形態について詳細に説明する。
図2は本発明の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図である。この装置は光磁気記録媒体6に情報を記録したり、光磁気記録媒体6から情報の再生を行う。
【0012】
光検出モジュール14は回折素子14aおよびサブモジュール14bから構成されており、上述した従来の光ヘッド装置を示す図9における、半導体レーザ1、ビームスプリッタ3および8、シリンドリカルレンズ9、4分割光検出器10、1/2波長板11、検光子12、2分割光検出器13の全てが有する機能と同等の機能を備える。すなわち、これらの光学部品などを1つの光検出モジュール14に置換することができる。
【0013】
光検出モジュール14から出た光はコリメートレンズ2にて平行光束化され、反射プリズム4を透過した後、集光手段である集光レンズ5にて光磁気記録媒体6上に結像される。光磁気記録媒体6で反射された戻り光は、集光レンズ5を透過した後、反射プリズム4、コリメートレンズ2を透過し光検出モジュール14に入射する。
【0014】
図1は本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュール14の模式的断面図であり、上述の多くの光学部品が置換可能な部分である。サブモジュール14bはサブモジュールパッケージ100および光源である半導体レーザチップ101および光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103からなる。半導体レーザチップ101からの出射光104は、回折素子14aを透過して、コリメートレンズ、反射プリズム、集光レンズを透過した後、光磁気記録媒体にて反射し、集光レンズ、反射プリズム、コリメートレンズを通過して戻り光105となり、回折素子14aに入射した後、−1次回折光106a、+1次回折光106b、0次透過光106cに回折され、光検出素子102a、102bにて受光される。
【0015】
以下、回折素子14aに関して図1を用いて詳述する。図1において、回折素子14aはガラスの基板107と108、粘着層109、1/2波長板110、光学的等方媒質である等方性充填材111および、鋸歯状または階段状の断面形状を有する格子であって、光学異方性媒質である異方性格子112からなる積層構造を有している。この異方性格子112は半導体プロセスなどで用いられているプレーナ法により一平面内で多数個を一括作製したのち、ダイシングソーなどを使用した切断により素子化されればよい。
【0016】
ガラスの基板107と108は光吸収の少ない光学ガラスを用い、軽量化のため、厚みは0.3〜0.6mmの薄板ガラスを用いることが好ましい。また、ガラス表面には誘電体多層膜などによる反射防止膜が施されていることが好ましい。1/2波長板110は、異方性格子112に入射する光磁気記録媒体からの反射戻り光の偏光方向が、異方性格子112の異常光屈折率を示す方向である光学異方軸に対して45°となるよう、回折素子に入射する偏光方向を回転させる作用を有する。以下、光学異方軸ということがある。
【0017】
ここでは1/2波長板110を使用して、入射する直線偏光の偏光方向が、異方性格子112の光学異方軸に対して45°となるように設定したが、45°の角度でなくとも任意の角度であってもよい。ただし、0°と90°に近づくにつれて光信号の大きさが小さくなる。
【0018】
また、上記の角度中特に45°の角度をなすことにより、後述するように異方性格子112に入射する直線偏光を分解した常光成分と異常光成分の強度が等しくかつ最大値に近くなり、光検出素子102a、102bにて受光される光量が略等しくなって、信号処理上極めて都合がよい。
【0019】
しかし、1/2波長板110は必須ではない。つまり、1/2波長板110を使用する代わりに、回折素子に入射する直線偏光の偏光方向と、回折素子を形成する光学異方性媒質が示す光学異方軸の方向とが略45°をなすように、回折素子が配置されていてもよい。したがってこのようにあらかじめ異方性格子の光学異方軸が、入射偏光方向に対して45°傾くように設置されていれば、1/2波長板は必要なく光学部品数が減らせ、また、回折素子の製造工程で1/2波長板の偏光方向を特定の方向に合わせてを組み込む工程が省けて好ましい。1/2波長板110の材質は、水晶板、ポリカーボネートなどの延伸した有機フィルムなどが通常用いられる。1/2波長板110は光学軸が入射光の偏光方向と合った適切な向きになるよう、粘着層109、等方性充填材111により、ガラス基板107と108に保持される。
【0020】
等方性充填材111は以下述べる所望の屈折率を有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂などの有機接着剤を用い、異方性格子112を形成したガラスの基板108上に適量を滴下した後、波長板を接着したガラスの基板107と圧着させ固化接着すればよい。その際、格子溝部に気泡が取り残されないよう、低粘度の接着剤を選択する方が好ましく、また、接着剤滴下後の圧着時に工夫を要する。等方性充填材111の屈折率は、複屈折性を示す光学異方性媒質である異方性格子の常光屈折率と異常光屈折率の中間の大きさを有している。
【0021】
異方性格子は、ガラスの基板107上に形成された高分子液晶薄膜などをドライエッチング法などを用いて作製される。ここで使用する高分子液晶としては、側鎖型を有する構造のものが好ましく、アクリル系、シリコーン系、メタクリル系などを主成分とするものが例示できる。ここで、異方性格子を作製する材料としては高分子液晶薄膜に限られず光学的異方性を有する誘電体光学結晶などであってもよく、この場合は直接異方性格子が形成される。
【0022】
しかし、高分子液晶薄膜の場合は材料そのものの作製が容易であり、さらに格子の形成も容易であって、高分子液晶薄膜を使用するすることが好ましい。
高分子液晶薄膜の形成は、ポリイミドなどの有機薄膜をラビング法により配向処理させたガラス基板上に光重合型モノマー液晶をスピンコート法などで所望の膜厚になるよう塗布した後、適切な温度環境下にて紫外線を照射し重合高分子化されて行われる。
【0023】
格子の断面形状は、非対称な鋸歯状または階段状である。鋸歯状であれば回折の特性に優れ好ましいが、製作に困難を伴う。階段状の格子で所望の回折の特性が得られれば、製作の容易さから有利となる。薄膜化された高分子液晶は、フォトリソグラフィー法を用いたエッチング法や金型を用いたプレス法などで格子パターンが形成される。
【0024】
ここでは、断面形状が階段状の格子の作製法について説明する。フォトリソグラフィー法によって4段階のステップを経て作製する方法である、4段ステップ格子の形成法を図3に示す。図3(a)は、高分子液晶薄膜上に形成したフォトレジストをパターニングした様子を示す断面図である。すなわち、高分子液晶薄膜42を成膜したガラスの基板43上にフォトレジスト41をスピンコートし、通常の半導体プロセスなどで用いられるフォトリソグラフィー法により、マスクパターンを感光した後現像を行い、フォトレジストの格子パターンを形成する。この場合、フォトマスクは高分子液晶の配向方向、つまり光学異方性媒質の異方軸方向に対して格子の長手方向が一致するように配置する。
【0025】
図3(b)は、ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をエッチングした様子を示す断面図である。つまり、フォトレジストパターンが形成された基板はドライエッチング法によりエッチング部の高分子液晶薄膜厚が未エッチング部の高分子液晶薄膜厚の1/3程度になるまでエッチングする。その際、フォトレジストも同時にエッチングされる。また、図3(c)は、フォトレジストを再塗布してパターニングした様子を示す断面図である。ここでは、フォトレジストをスピンコートにて塗布し、露光、現像を行うが、このとき用いるフォトマスクは図3(a)にて使用したフォトマスクの半分の格子周期にする。
【0026】
図3(d)は、再ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をさらにエッチングした様子を示す断面図である。つまり、再度ドライエッチングすることにより、先程(b)でエッチングした部分のうちで、さらに除去すべき部分をエッチングして、4段ステップ格子を形成できる。
【0027】
回折効率などの光学特性をさらに向上させる場合、さらにプロセス数を増加することで多段化し、一直線の理想的な斜面に近づける方が望ましい。また、理想的な鋸歯状であるブレーズ型格子を得るために、精密金型によるプレス法も格子形成手段として有効である。
【0028】
次に、本発明における回折素子14aの機能に関して、図1および図4を用いて詳述する。回折素子14aに内蔵している異方性格子112の常光屈折率をno、異常光屈折率をne とし、等方性充填材111の屈折率をnsとする。本発明ではこのnsをnoとneとの中間の値とする。特にno、ne、ns間の関係を式(1)のようにすることが好ましい。
ns=(ne+no)/2 ・・・(1)
【0029】
異方性格子112の溝の深さをdとすると、異方性格子112と等方性充填材111とにより生じる位相差形状は図4のようになる。図4は異方性格子の格子形状とこれにより生じる位相差を示す図であり、図4(a)は異方性格子112の格子形状を示す模式的断面図であり、図4(b)と図4(c)はそれぞれ異常光線、常光線に対する位相差形状を示す図である。式(1)よりnsはneとnoとのちょうど中間の値を有することから、図4に示す常光線と異常光線の位相差形状は、絶対値は等しく、形状が反転したものになる。
【0030】
回折理論より、周期的な位相差形状を有する格子に光が入射した場合、回折光が生じ、その回折光強度は入射光強度に対する割合である回折効率ηmにより表される。ここでmは回折次数であり、m=0、±1、±2・・である。本発明のように、回折格子の断面形状を、非対称な鋸歯状または階段状にして最適化した場合、m次回折効率はmの正負で非対称になり、+次数の回折光と−次数の回折光の間に回折効率の強度差が生じる。
【0031】
図4(a)の格子に異常光線が入射した場合の位相差形状は、図4(b)のようになるから、図の右側の回折光を+1次回折光、左側のそれを−1次回折光として、異常光線の回折効率の+1次回折光と−1次回折光をそれぞれηe,+1およびηe,-1とすると回折効率は、ηe,+1>>ηe,-1となり、+1次回折光が強く、−1次回折光は弱い。ここでηe,-1は略0である。
【0032】
常光線の場合には、位相差形状は図4(c)のようになるため、異常光線の場合とは反対側に回折しηo,-1>>ηo,+1になり、−1次回折光が強く、+1次回折光は弱い。ここで、ηo,+1は略0である。
0次透過光と1次回折光の効率比ηo,0/ηo,-1(常光線の場合)またはηe,0/ηe,+1(異常光線の場合)は、適切に溝の深さdを選ぶことにより略1とすることができる。
【0033】
以上をまとめると、本発明における回折素子は、図4(a)に示した格子の断面形状および溝の深さを適切に選ぶことで、式(2)〜式(5)を満たす回折特性を有するようにできる。
ηo,0≒ηo,-1>>ηo,+1≒0・・・(2)
ηe,0≒ηe,+1>>ηe,-1≒0・・・(3)
ηo,0=ηe,0 ・・・(4)
ηo,-1=ηe,+1 ・・・(5)
【0034】
すなわち、異方性格子に入射する光を、常光成分が主である−1次回折光と異常光成分が主である+1次回折光に偏光分離することができ、かつ、0次透過光の偏光状態は、入射光のそれに等しくなる特徴を有する。特に、入射光の偏光方向が、異方性格子の光学異方軸方向(異常光屈折率を示す方向)に対して45°傾いていた場合では、上述のように回折される常光および異常光の強度が等しくなる。
【0035】
次に、本発明における信号検出方法に関して詳述する。図5は、本発明の光磁気ヘッド装置における回折素子を透過する光の偏光特性を示す概念図である。異方性格子112の格子方向を異常光屈折率を示す方向60に一致させ、この方向を異常光方向61、これと直交する方向を常光方向62とする。
【0036】
光源である半導体レーザチップ101からの出射光は、異常光方向61に対して45°傾いた出射光の偏光方向63とすると、異方性格子112を透過した光の偏光方向は、前述の説明により入射前後で保存されるため、異常光方向61に対して45°傾いた偏光方向Aである64になる。次に透過光の偏光方向Aである64は、1/2波長板110により偏光方向が45°回転して、異常光方向に偏光した偏光方向Bである65になり、光磁気記録媒体に向かう。
【0037】
一方、光磁気記録媒体で反射した戻り光は、出射光と同じ偏光方向の偏光方向Bである65になり、1/2波長板110を再度透過して、異常光方向61に対して45°傾いた直線偏光の偏光方向Aである64になる。次に、異方性格子112により回折されるが、式(2)および式(3)から、45°に傾いた偏光方向Aである64の直線偏光の異常光成分は+1次回折光の偏光方向66の光および0次透過光に回折され、常光成分は−1次回折光の偏光方向67の光および0次透過光に回折される。偏光分離された66および67の偏光方向の光はそれぞれ光検出素子102b、102aに入射する。
【0038】
また、異方性格子112に入射する光の偏光方向が、異常光方向61に対して45°傾いた場合、つまり、常光成分と異常光成分の強度が等しい場合には、式(5)より常光と異常光の回折効率が等しいため、異常光+1次回折光と、常光−1次回折光の強度は等しくなる。しかし、光磁気記録媒体により反射された戻り光の偏光方向は、光磁気記録媒体の磁気モーメントに基づくカー効果により、記録された情報(磁気モーメントの向き)に対応したカー回転角、+θkまたは−θkだけ回転している。そのために、1/2波長板110を透過して、異方性格子112に入射する光の偏光方向も、異常光方向に対して(45±θk)°になる。
【0039】
したがって、異方性格子に入射する光の常光および異常光成分強度のみをそれぞれ100とすると、θkに比例した強度変調±αがこれに加わり、光検出素子102a、102bに入射する光強度Io、Ieは式(6)、式(7)となる。光磁気記録媒体の情報を読み出す場合は、IeとIoの信号の差分から戻り光変調αを得ればよく、光磁気信号Rfは式(8)により検出される。ここで、式(5)よりηe,+1=ηo,-1であるからこれをη1とおけばRfはそれぞれ+2αη1または−2αη1となる。
【0040】
【数1】
【0041】
一方、焦点誤差信号やトラッキング誤差信号は、光検出素子102a、102bを各々複数個に分割して、分割された光検出素子の各々からの信号を演算することにより得ることができる。
【0042】
通常、焦点誤差検出法にはスポットサイズ法、非点収差法、ナイフエッジ法などを用いる。これらは、2つの光検出素子に入射する2つの回折光の光スポットの大きさの違いで焦点誤差を検出するもの(スポットサイズ法)、1つの光スポットが円形となるかまたは楕円形となりその長軸と短軸の向きがどちらかよって焦点誤差を検出するもの(非点収差法)、半月形の光スポットの向きに応じて焦点誤差を検出するもの(ナイフエッジ法)である。
【0043】
これらの形状の光スポットが、光磁気記録媒体上での焦点誤差の発生に伴って、光検出素子上に生じるように、各々の検出法に応じて異方性格子の上面から見た形状を変形して作製すればよい。通常このような光スポットを変形する収差を発生させる格子の上面形状は、曲線状となる。
【0044】
図6は、本発明の光磁気ヘッド装置における光検出素子上の光スポットを示す模式的上面図であり、図6を用いてさらに詳しくスポットサイズ法を説明する。異方性格子を光のレンズ機能を有する格子の上面形状とすることで、3分割後の光検出素子70a、70b、70c、70d、70eおよび70fに入射する回折光の焦点距離を変え、焦点誤差に対応する光検出素子上の−1次回折光の光スポット71および+1次回折光の光スポット72のサイズ変化から、焦点誤差信号Sfeは式(9)より検出する。
【0045】
ここで、Ia、Ib、Ic、Id、IeおよびIfはそれぞれ、分割された光検出素子70a、70b、70c、70d、70eおよび70fより得られた信号強度である。図6(a)は光磁気記録媒体が焦点位置より遠い場合で、Sfe>0、(b)は光磁気記録媒体が焦点位置にある場合で、Sfe=0、(c)は光磁気記録媒体が焦点位置より近い場合で、Sfe<0を示す。
【0046】
【数2】
【0047】
一方、光磁気記録媒体上のトラックからの光の外れである、トラッキング誤差検出法には、再生専用に用いられる3ビーム法や、記録および再生の両方に用いられるプッシュプル法などがある。3ビーム法の場合、半導体レーザ出射端近傍(出射口の前)に3ビーム回折素子および3ビーム光検出素子を設置する必要がある。また、プッシュプル法の場合には、図6の3分割光検出素子において、トラッキング誤差信号Steは式(10)より検出できる。
【0048】
上述の構成は、図1の光検出モジュール内に半導体レーザチップを備え、また、回折素子14aによって、光磁気記録媒体に入射する光線である往路光線および光磁気記録媒体により反射した戻り光である復路光線の両者が、入射し回折される。したがって、往路光線の場合には、±1次以上の回折光が損失光(不要光)となり光磁気記録媒体に入射する光強度の低下を招いている。また、復路の場合には、0次透過光が損失光となるため、光検出素子に入射される光の利用効率は低下する。光源である半導体レーザチップの出力および信号増幅回路の性能がよい場合には、上述した構成の光磁気ヘッド装置で十分に信号の読み書きができる。
【0049】
以上が、第一の実施の形態についての説明であったが、次に、第二の実施の形態について光検出モジュールと光磁気ヘッド装置の構成ついてのみ簡単に説明する。他の部分は第一の実施の形態の説明で述べたものと同じである。
第一の実施の形態で述べた以上に往復路の光利用効率を高める手段として、光源である半導体レーザが光検出素子から分離されて、異なる場所に設置されている。
【0050】
図7は、本発明の他の実施態様の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図である。
光検出モジュール15とは別に配された、光源である半導体レーザ1からの出射光は、コリメートレンズ2、ビームスプリッタ3、全反射プリズム4、集光レンズ5を透過した後、光磁気記録媒体6で反射して、再度集光レンズ5、全反射プリズム4を透過し、ビームスプリッタ3にて反射し、コリメートレンズ7を透過して光検出モジュール15に入射する。ここで、15aおよび15bはそれぞれ回折素子およびサブモジュールである。本発明による光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図を図8に示す。図1に示した光検出モジュールとの相違点は、図1の半導体レーザチップ101が本構成では内蔵されていないこと、および異方性格子112の溝の深さdを変化させ、0次透過効率を略0にしたことであり、その他は全て同じ構成である。
【0051】
本構成における回折素子の回折効率は、式(11)〜式(14)となり、0次透過光強度が略0になる結果、信号検出に使用する1次回折効率ηo,-1及びηe,+1が前述の構成に比べ高くなり、往復での光利用効率はおよそ1.5倍に向上する。しかし、図2と図7を比べてわかるように、図2の構成に比べ、本構成は部品点数が多いものの、従来例である図9と比べて約半分に低減できて、小型化、コストダウンが図れる。
ηo,-1>>ηo,+1≒0・・・(11)
ηe,+1>>ηe,-1≒0・・・(12)
ηo,0=ηe,0 ≒0 ・・・(13)
ηo,-1=ηe,+1 ・・・(14)
【0052】
【実施例】
「例1」
本例を、図1を用いて説明する。まず、異方性格子の形成法について述べる。異方性格子は常光屈折率が1.55、異常光屈折率が1.65の重合した高分子液晶薄膜を用いて形成した。配向処理されたガラスの基板108上に、スピンコート法により厚さ7.5μmのモノマー液晶薄膜を形成後、紫外線照射を行い重合固化させ、高分子液晶薄膜とした。
【0053】
格子の形成は、図3に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて行い、光学異方軸と格子の長手方向が略一致するようにして、格子周期が約10μm、溝の深さ7.5μmの4段ステップ格子のホログラムを形成した。本例では、焦点誤差検出法にスポットサイズ法を使用したため、コンピュータシミュレーションによりスポットサイズ法として使用するのに最適なホログラムパターンを設計した。
【0054】
次に、この異方性格子を組み込んだ回折素子の作製法について述べる。厚さ0.5mmで片面に誘電体多層膜の反射防止膜が施されている光学ガラスの基板107の反射防止膜のない面と、1/2波長板110で粘着層109が塗布された面とを貼合わせた。ここで使用した1/2波長板110は、延伸されたポリカーボネートフィルム製で、厚さ100μmのものであった。
【0055】
次に、異方性格子112が形成されたガラスの基板108の異方性格子側の面にスピンコート法により厚さ20μmにアクリル系の等方性充填材111を塗布し、この塗布面と上記層状物の1/2波長板110側とを合わせ、紫外線照射により重合固化して接着した。重合固化後の等方性充填材111の屈折率は1.6であった。
【0056】
以上のようにして形成された積層物を切断・分離して回折素子とした。作製された回折素子の大きさは、縦3mm、横3mm、厚さ1.3mmであり、光学特性は、P偏光が入射した場合、透過効率が36%、+1次回折効率が36%、−1次回折効率が0.2%であり、S偏光が入射した場合、透過効率が36%、−1次回折効率が36%、+1次回折効率が0.2%であり、弱い高次回折光もあった。ただし、ここでS偏光とは、格子の長手方向に平行な偏光であり、P偏光とは格子の長手方向に直交した方向の偏光である。
【0057】
回折素子14aは、半導体レーザチップ101、3分割光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103が搭載された樹脂のサブモジュールパッケージ100に組み付けられ、調整されて接着剤で固定された。
【0058】
作製された光検出モジュール14を図2に示す光磁気ヘッド装置に組み込み、波長650nmのレーザ光を使用し、光磁気記録媒体6の情報の記録・再生を行った。前述のように、焦点誤差検出にはスポットサイズ法を用い、3分割光検出素子102a、102bの各分割検出素子からの信号を演算し、合焦点制御を行った。また、トラッキング誤差検出は、プッシュプル法により、光検出素子102aと102bにより制御した。
光磁気記録情報の再生信号は、光検出素子102aと102bの差動信号により得られ、本例においては良好な再生信号を得ることができた。
【0059】
「例2」
本例を、図8を参照にして説明する。まず、異方性格子の形成法について述べる。異方性格子は常光屈折率が1.55、異常光屈折率が1.65の重合した高分子液晶薄膜を用いて形成した。配向処理されたガラスの基板108上に、スピンコート法により厚さ9.8μmのモノマー液晶薄膜を形成後、紫外線照射を行い重合固化させ、高分子液晶薄膜とした。
【0060】
格子の形成は、図3に示すようにフォトリソグラフィー法を用いて行い、光学異方軸と格子の長手方向が略一致するようにして、格子周期が約10μm、溝の深さ9.8μmの4段ステップ格子のホログラムを形成した。本例では、焦点誤差検出法にスポットサイズ法を使用したため、コンピュータシミュレーションによりスポットサイズ法として使用するのに最適なホログラムパターンを設計した。
【0061】
次に、この異方性格子を組み込んだ回折素子の作製法に関して述べる。
異方性格子112が形成されたガラスの基板108の異方性格子側の面にスピンコート法により厚さ20μmにアクリル系の等方性充填材111を塗布し、この塗布面と厚さ0.5mmで片面に誘電体多層膜の反射防止膜が施されている光学ガラスの基板107の反射防止膜のない面とを合わせ、紫外線照射により重合固化して接着した。重合固化後の等方性充填材111の屈折率は1.6であった。ただし、本例では、図8の1/2波長板110は組み込まなかった。
【0062】
以上のようにして作製された積層物を切断・分離して回折素子とした。作製された回折素子の大きさは、縦3mm、横3mm、厚さ1.2mmであり、光学特性は、P偏光が入射した場合、透過効率が0.2%、+1次回折効率が78%、−1次回折効率が0.2%であり、S偏光が入射した場合、透過効率が0.2%、−1次回折効率が78%、+1次回折効率が0.2%であり、弱い高次回折光もあった。これらの値は例1と大きく異なり、透過効率は低いが、P偏光に対する+1次回折効率およびS偏光に対する−1次回折効率は2倍以上と大きかった。
【0063】
回折素子15aは、3分割光検出素子102a、102bを備えたシリコン基板103が搭載された樹脂製のサブモジュールパッケージ100に組み付けられ、調整されて接着剤で固定された。
【0064】
作製された光検出モジュール15を図7に示す光磁気ヘッド装置に組み込み、波長650nmのレーザ光を使用し、光磁気記録媒体6に情報の記録・再生を行った。このとき、光検出モジュール15に入射する光の偏光方向と、異方性格子の異常光屈折率を示す方向とのなす角度が45゜になるように、光検出モジュール15を組み込んだ。前述のように、焦点誤差検出にはスポットサイズ法を用い、3分割光検出素子102a、102bの各分割検出素子からの信号を演算し、合焦点制御を行った。また、トラッキング誤差検出は、プッシュプル法により、光検出素子102aと102bにより制御した。
光磁気記録情報の再生信号は、光検出素子102aと102bの差動信号により得られ、本例においては光利用効率の高い良好な再生信号が得られた。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光ヘッド装置においては、装置を構成する光学部品の点数が少ないため構成が単純であり、組立工数が少なくなることから量産性がよい。さらに小型化、薄型化が可能であり、携帯向けの用途などには好適である。 また本発明の光ヘッド装置の場合、光記録媒体として光磁気記録媒体(光磁気ディスク)を使用する光磁気ヘッド装置が好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図。
【図2】本発明の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図。
【図3】4段ステップ格子の形成法を示す概念図。(a)高分子液晶薄膜上に形成したフォトレジストをパターニングした様子を示す断面図、(b)ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をエッチングした様子を示す断面図、(c)フォトレジストを再塗布してパターニングした様子を示す断面図、(d)再ドライエッチング法により高分子液晶薄膜をさらにエッチングした様子を示す模式的断面図。
【図4】異方性格子の格子形状とこれにより生じる位相差を示す図。(a)異方性格子の格子形状を示す断面図、(b)異常光線に対する位相差形状を示す概念図、(c)常光線に対する位相差形状を示す概念図。
【図5】本発明の光磁気ヘッド装置における回折素子を透過する光の偏光特性を示す概念図。
【図6】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出素子上の光スポットを示す模式的上面図。(a)光磁気記録媒体が焦点位置より遠い場合、(b)光磁気記録媒体が焦点位置にある場合、(c)光磁気記録媒体が焦点位置より近い場合。
【図7】本発明の他の実施態様の光磁気ヘッド装置を示す概念的斜視図。
【図8】本発明の光磁気ヘッド装置における光検出モジュールの模式的断面図。
【図9】従来の光磁気ヘッド装置の一例を示す概念的斜視図。
【符号の説明】
1:半導体レーザ
2:コリメートレンズ
3:ビームスプリッタ
4:反射プリズム
5:集光レンズ
6:光磁気記録媒体
7:コリメートレンズ
8:ビームスプリッタ
9:シリンドリカルレンズ
10:4分割光検出器
11:1/2波長板
12:検光子
13:2分割光検出器
14:光検出モジュール
14a:回折素子
14b:サブモジュール
15:光検出モジュール
15a:回折素子
15b:サブモジュール
41:フォトレジスト
42:高分子液晶薄膜
43:基板
44:フォトレジスト
60:異常光屈折率を示す方向
61:異常光方向
62:常光方向
63:出射光の偏光方向
64:偏光方向A
65:偏光方向B
66:+1次回折光の偏光方向
67:−1次回折光の偏光方向
70a〜70c:3分割光検出素子
70d〜70f:3分割光検出素子
71:−1次回折光の光スポット
72:+1次回折光の光スポット
100:サブモジュールパッケージ
101:半導体レーザチップ
102a:光検出素子
102b:光検出素子
103:シリコン基板
104:出射光
105:戻り光
106a:−1次回折光
106b:+1次回折光
106c:0次透過光
107:基板
108:基板
109:粘着層
110:1/2波長板
111:等方性充填材
112:異方性格子
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