JP2000007697A - 低分子ペプチドの製造方法 - Google Patents

低分子ペプチドの製造方法

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JP2000007697A
JP2000007697A JP10188190A JP18819098A JP2000007697A JP 2000007697 A JP2000007697 A JP 2000007697A JP 10188190 A JP10188190 A JP 10188190A JP 18819098 A JP18819098 A JP 18819098A JP 2000007697 A JP2000007697 A JP 2000007697A
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peptide
amino acid
molecular peptide
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JP10188190A
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English (en)
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Kazuhiko Hirano
和彦 平野
Motonori Koide
元紀 小出
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Taiyo Kagaku KK
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Taiyo Kagaku KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低重合のペプチドは血圧降下作用、抗酸化作
用、脂質代謝促進作用、免疫力増強作用、血中コレステ
ロール低下作用、アルコール吸収阻害作用、鉄及びカル
シウム吸収促進作用等の生理機能が見出されており、
又、アレルゲン性が低下することが知られており、これ
らの機能特性が食品分野、化粧品分野、医薬品分野など
で素材として注目されており、安価で塩を含まない低分
子ペプチドを提供することを目的としている。 【解決手段】 低分子ペプチドの製造においてアミノ酸
スコアが良好な、動植物蛋白質を低級アルコールおよび
/または低級カルボン酸存在下で加水分解して、平均ア
ミノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドで、塩が存在せず
に、工程中に脱塩工程のいらない、平均アミノ酸鎖長3
以下の低分子ペプチドを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動植物蛋白質を原
料として、加水分解して得られ、塩を含まない平均アミ
ノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドで、アミノ酸スコアが
良好であり、食品、調味料、飼料、肥料、栄養剤、化粧
品、医薬品等あらゆる分野に、アミノ酸源として利用可
能な低分子ペプチドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ペプチドはペプチド結合により繋
がったアミノ酸の重合体の総称であり、狭義には、重合
度100以上のものを蛋白質、これらより重合度の低い
ものをペプチドと分類している。ペプチドは重合度の高
い蛋白質を蛋白分解酵素若しくは酸分解等による加水分
解で得られ、原料蛋白質の供給源としては植物由来、動
物由来の蛋白質が用いられる。植物由来の蛋白質として
は、大豆、小麦、トウモロコシ等があり、動物由来で
は、魚肉、畜肉、牛乳、鶏卵等がある。
【0003】蛋白質を分解する方法は強酸もしくは強ア
ルカリで加熱分解した後、中和して塩が生成されて作る
方法や、カビ等の微生物や蛋白質分解酵素によって、腐
敗を防ぐために食塩を加えて分解する方法。さらに、化
学的合成法により単一のペプチドを合成する方法などが
ある。
【0004】これらの従来技術のうち、酸またはアルカ
リで加水分解する方法は発癌性の高い塩素化合物が生じ
ることが知られており、また、必須アミノ酸の一部が酸
またはアルカリに分解されることが知られている。さら
に、最終的には酸またはアルカリを中和する必要があ
り、塩を含んだペプチドとならざるを得ないために、ペ
プチド単体にするためには脱塩工程が必須となる。
【0005】次に、カビ等の微生物や蛋白質分解酵素に
よる蛋白質の分解では、分解に有害となる腐敗菌の増殖
を抑える目的で食塩を加えるため、食塩を含んだペプチ
ドが得られる。この様な塩を含む蛋白質は、酵素分解が
進行しにくく低分子化に限界があり、平均アミノ酸鎖長
3以下に調整することは至難である。また、食塩が混入
しているため醤油や調味液としての用途以外には利用範
囲が狭くなる。脱塩技術によって食塩を除くことは可能
であるが100%除くことは非常に困難であり、また脱
塩中にペプチドが損失したり、有用なミネラル成分も消
失する。また、脱塩により価格が高価になったりして、
産業上利用できない場合が多く見られる。さらに、食塩
の添加無しに分解することも可能であるが、有害な腐敗
菌の影響を抑える目的で短時間の加水分解や高温域、も
しくは低温域の加水分解となるため、ペプチドの低分子
化が出来ないのが実情である。さらに化学的合成法は単
一のペプチドを得るには良い方法であるが、アミノ酸ス
コアや必須アミノ酸のバランスを考えた場合は栄養的に
劣るものとなる。また、その他従来技術では、特開昭4
8−68773号において卵白にエタノールやその他多
価アルコール(2価以上のOH基を持つアルコール)を
0.02〜1.0Mの少量を加えて分解する技術が開示
されているが、苦みのない卵白ペプチドの製造方法であ
り、そのペプチドは加熱凝固性を有するほど大きなもの
であり、最も有用となる低分子ペプチドまでは至ってい
ない技術である。
【0006】産業上、ペプチドの動植物に関する生理機
能の研究が進み、ペプチドに血圧降下作用、抗酸化作
用、脂質代謝促進作用、免疫力増強作用、血中コレステ
ロール低下作用、アルコール吸収阻害作用、鉄およびカ
ルシウム吸収促進作用等の生理機能が見出されており、
また、蛋白質のアレルゲン性は低分子化することで低下
することが知られている。ペプチドの有するこれらの機
能特性は食品分野、化粧品分野、医薬品分野などで素材
として注目されており、安価で塩を含まない低分子ペプ
チドが得られれば産業上非常に有益なものとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の
背景において、本発明の目的はアミノ酸スコアが良好
な、動植物蛋白質を加水分解して、平均アミノ酸鎖長3
以下のペプチドで、塩が存在せずに、工程中に脱塩工程
を含まない、平均アミノ酸鎖長3以下の低分子ペプチド
の製造方法を確立するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題の
解決に鋭意工夫を重ねた結果、動植物蛋白に低級アルコ
ールおよび/または低級カルボン酸存在下で蛋白分解酵
素により加水分解すると、平均アミノ酸鎖長3以下のペ
プチドが製造できるという知見に至り本発明を完成し
た。
【0009】すなわち、本発明のペプチドの製造法は、
従来の加水分解によるペプチドの製造方法では平均アミ
ノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドを得ることが困難であ
ったものを低級アルコールおよび/または低級カルボン
酸存在下で動植物蛋白を加水分解することにより、効率
良く蛋白質が分解され、容易に平均アミノ酸分子3以下
の低分子ペプチドを得ることを可能とするものである。
さらに、本発明の低分子ペプチドは、製造工程中、食塩
の添加あるいは中和による塩の生成がないため、ペプチ
ド生成後の脱塩工程が不要であり、産業上有用な低分子
ペプチドの製造方法である。
【0010】ここで、アミノ酸鎖長については、既知の
種々の方法により測定可能であり、Na2 SO3 −TN
BS法やHPLC法等により測定するものであり、一例
としてNa2 SO3 −TNBS法によるアミノ酸鎖長の
測定は、通常下記の方法により行われる。
【0011】<原理>Na2 SO3 −TNBS法は蛋白
質のTNP化に基づいたアミノ基の定量方法で、TNB
S(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリ
ウム塩−2H2 O)がアミノ基を持つ化合物と混合し、
適度のアルカリ性にすると反応が始まり、橙色を呈する
ときの吸光度(420nm)を測定するものである。平
均アミノ酸鎖長としては、TNBS法にて測定した値を
用い下式にて平均アミノ酸鎖長を算出するものである。
【0012】<方法>試料(本測定法に測定可能な希釈
した試料)0.5mlに呈色用緩衝液2.0ml、0.
01M亜硫酸溶液0.5ml、TNBS溶液0.5ml
を加えて、37℃×60分反応させた後、吸光度 42
0nmで測定する。
【0013】<試薬>TNBS溶液:2,4,6−トリ
ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩−2H2 O、1
00mgをとり、100ml の蒸留水に溶解する
(0.00284M)。尚、この試薬を0.5mlを用
いた場合、1.42μmoleのTNBSが含まれてい
るので、0.5μmole程度までのアミノ酸の定量に
は支障はない。 呈色用緩衝液:0.15Mホウ酸ナトリウム緩衝液(ホ
ウ砂3.81gを100mlの温水に溶かす)あるいは
4M−ホウ酸カリウム緩衝液(ホウ酸24.7gに水酸
化カリウムを入れ、溶解しながらpH9.2に調整を行
う、後に蒸留水で100mlとする)を使用する。
【0014】また、遊離のアミノ酸の測定は公知の測定
方法であるフォルモール滴定により測定され、総アミノ
酸量についてはケルダール法により測定するものであ
る。以下本発明を詳述する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において使用される、動物
蛋白質としては特に限定するものではないが通常以下に
述べる蛋白質が用いられる。すなわち、鶏卵液、鶏卵粉
末を原料として有機溶剤抽出法もしくは超臨界抽出法に
て脂質部分を取り除いた鶏卵蛋白質であり、液体、粉末
体の形態は問わない。また、卵黄蛋白質、卵白蛋白質の
割合は任意の割合で使用可能である。
【0016】本発明において使用される植物蛋白質と
は、特に限定するものではないが通常以下に述べる蛋白
質が用いられる。すなわち、搾油目的で絞り滓として残
った大豆滓、とうもろこし滓等の若干油が残った絞り滓
であり、また豆腐の残査であるおからや、有機溶剤抽出
法もしくは超臨界抽出法にて脂質部分を完全に取り除い
た植物蛋白質であり、一例を挙げれば、小麦蛋白質や大
豆蛋白質やその精製品のグルテン、グリアジン、グリテ
ニン、ツエイン等が単独あるいは混合物として使用可能
である。
【0017】本発明の低級アルコールとは、メタノー
ル、エタノールなどの炭素数1〜11個のアルコールで
あり、アルコール分子に含まれるヒドロキシル基(−O
H)の数が1個の一価アルコールであり、これらの精製
品や粗製品が利用でき、好ましくは炭素数1〜6個の低
級アルコールであり、さらに好ましくは炭素数1〜4個
の低級アルコールであるメタノール、エタノール、ブタ
ノール、プロパノールが好ましい。
【0018】本発明の低級カルボン酸とは、ギ酸、酢
酸、プロピオン酸、酪酸等の炭素数が8個以下の水に可
溶なカルボキシル基(−COOH)を有する化合物であ
り、これらの精製品や粗製品が利用でき、好ましくは炭
素数1〜5個の低級カルボン酸であり、さらに好ましく
は炭素数1〜4個の低級カルボン酸であるギ酸、酢酸、
プロピオン酸、酪酸が好ましい。
【0019】本発明の蛋白分解酵素とは、蛋白質を加水
分解するプロテアーゼ、ペプチダーゼの酵素であり、通
常Rhizopus属、Aspergillus属、M
ucor属、Bacillus属、Pseudomon
as属、Streptococcus属、Escher
ichia属等の微生物由来、レンニン、パンクレアチ
ン等の動物由来、パパイン、ブロメライン、フィシン等
の植物に由来する酵素が用いられ、好ましくはRhiz
opus属、Aspergillus属、Bacill
us属由来の酵素が望ましく、その精製品や粗製品が単
独もしくは2種以上を併用して利用できる。
【0020】蛋白分解酵素は至適pHによってアルカリ
性、中性、酸性に大きく分けられ、さらに基質を分解す
る部位によりエンド型とエキソ型に分けられるが、本発
明ではこれら蛋白分解酵素の活性が最も発揮される条件
で使用すれば良い。これら蛋白分解酵素の使用量は、用
いる蛋白分解酵素の種類や組み合わせによって適宜決め
られるものであり、特に限定されるものではないが、通
常基質である蛋白質1g当たりに対する蛋白分解酵素の
活性単位で表され、通常250〜7000単位、好まし
くは1000〜5000単位、さらに好ましくは100
0〜3000単位の範囲から任意に選ばれるものであ
る。
【0021】尚、上記活性単位の測定法として一例を挙
げれば、カゼインに蛋白分解酵素が作用するときにペプ
チド結合の切断に伴って増加する酸可溶性分解物(TC
A可溶性分解物)の量を測定する方法があり、蛋白分解
酵素がカゼインに30℃で作用するとき、反応初期の1
分間に1マイクログラム(μg)のチロシンに相当する
非蛋白性のフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素
量を1単位とするものである。
【0022】測定法の詳細は、カゼイン溶液(注1)5
mlを正確に量り、試験管に入れ、30±0.5℃で1
0分間加温した後、試料溶液(注2)1mlを正確に量
って加え、直ちに振り混ぜ、30±0.5℃で正確に1
0分間放置し、トリクロル酢酸溶液5mlを加えてよく
振り混ぜ、再び30±0.5℃で30分間放置した後、
濾紙で濾過する。その濾液2mlを正確に量り、炭酸ナ
トリウム溶液5ml及び薄めたフォリン試液1mlを加
えてよく振り混ぜ、30±0.5℃で30分間放置した
後、この液について波長660nmにおける吸光度AT
を測定する。別に試料溶液1mlにトリクロル酢酸溶液
5mlを加え、次に、カゼイン溶液5mlを加えて振り
混ぜ、30±0.5℃で30分間放置し、以下同様の操
作にて吸光度AB 測定する。
【0023】 F:吸光度差が1.000に相当するチロシン量を検量
線より求めた値(μg) W:試料溶液1ml中の試料の量(g)
【0024】(注1) 1)酸性プロテアーゼの場合:カゼイン1.20g(無
水物換算)を量り、0.05N乳酸100mlを加えて
加温溶解し、0.5N水酸化ナトリウムを加えてpH
3.0に調整し、Mcllvaine緩衝液40ml及
び水を加えて200mlとする。 2)中性及びアルカリ性プロテアーゼの場合:カゼイン
1.20g(無水物換算)を量り、0.05Nリン酸二
ナトリウム溶液160mlを加えて加温溶解し、0.5
N塩酸を加えてpH7.0に調整し、水を加えて200
mlとする。
【0025】(注2) 1)酸性プロテアーゼの場合:試料1.000gを正確
に量り、水を加えて溶かし100mlとする。必要なら
ば遠心分離する。次いで蛋白分解力が25〜40単位/
mlの範囲に入るように水を用いて希釈し、試料溶液と
する。 2)中性及びアルカリ性プロテアーゼの場合:試料1.
000gを正確に量り、酢酸カルシウム・塩化ナトリウ
ム混液を加えて溶かし、100mlとする。必要ならば
遠心分離する。次いで蛋白分解力が中性プロテアーゼの
場合は30〜40単位/ml、アルカリ性プロテアーゼ
の場合は15〜20単位/mlの範囲に入るように酢酸
カルシウム・塩化ナトリウム混液を用いて希釈して試料
溶液とする。
【0026】<試薬・試液の調製> 1)トリクロル酢酸溶液 酸性プロテアーゼの場合:トリクロル酢酸71.7gに
水を加えて溶かし、1000mlとする。 中性及びアルカリ性プロテアーゼの場合:トリクロル酢
酸18g及び酢酸ナトリウム(無水)18gに6N酢酸
55ml及び水を加えて溶かし1000mlとする。 2)炭酸ナトリウム(0.55M) 炭酸ナトリウム(無水)58.3gに水を加えて溶か
し、1000mlとする。 3)フォリン試液 市販品のフェノール試薬10mlに水を加えて30ml
とする。 4)Mcllvaine緩衝液 0.2Mリン酸ナトリウム溶液に0.1Mクエン酸溶液
を加えてpH3.0に調整する。 0.2Mリン酸ナトリウム溶液:リン酸ナトリウム(1
2水塩)71.6gを水に溶かし、1000mlとす
る。 0.1Mクエン酸溶液:クエン酸21.0gに水を加え
て溶かし、1000mlとする。 5)酢酸カルシウム・塩化ナトリウム混液 酢酸カルシウム0.35g及び塩化ナトリウム0.58
gを量り、水を加えて溶かした後、1N塩酸又は1N水
酸化ナトリウム溶液を加えてpH6.0に調整し、水を
加えて1000mlとする。
【0027】<チロシン検量線の作成>市販のチロシン
標準品を105℃で3時間乾燥し、その0.500gを
正確に量り、0.2N塩酸を加えて溶かし、正確に50
0mlとする。この液1ml、2ml、3ml及び4m
lを正確に量り、それぞれに0.2N塩酸を加えて正確
に100mlとする。それぞれの液2ml中にはチロシ
ンが20μg、40μg、60μg及び80μg含まれ
る。それぞれの液2mlを正確に量り、炭酸ナトリウム
溶液5ml及び薄めたフォリン試液1mlを加え、30
±0.5℃で30分間放置した後、この液につき660
nmにおける吸光度A1、A2、A3及びA4を測定す
る。別に0.2N塩酸2mlを用いて同様に操作して吸
光度A0を測定する。これより縦軸に吸光度差(A1−
A0、A2−A0、A3−A0及びA4−A0)を、横
軸にそれぞれの液2ml中のチロシン量(μg)をとり
検量線とする。
【0028】以上の操作より、吸光度差1.000に対
するチロシン量(Fμg)を求めるものである。
【0029】本発明においては、まず動植物蛋白質の混
合液を調整することから始まる。動植物蛋白質の純度に
もよるが、通常、粗蛋白値として1〜30%、好ましく
は1〜20%、更に好ましくは1〜10%に調整後、低
級アルコールおよび/または低級カルボン酸を5〜30
%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは5〜10
%加えるものである。
【0030】この低級アルコールおよび/または低級カ
ルボン酸を動植物蛋白質の混合液に加えることにより、
後の加水分解が加速的に向上し、平均アミノ酸鎖長3以
下の低分子ペプチドが容易に得られるものである。尚、
低級アルコールおよび/または低級カルボン酸は単独で
も使用可能であるが、2種以上を併用して使用しても何
ら問題はなく、一例としてはエタノールと酢酸、ブタノ
ールと酪酸等任意に選ぶことが可能である。
【0031】次に、低級アルコールおよび/または低級
カルボン酸を加えた動植物蛋白質の混合液に、さらに蛋
白分解酵素を加えて、加水分解するものである。蛋白分
解酵素の添加量としては前述の、通常基質である蛋白質
1g当たりに対する蛋白分解酵素の活性単位で表され、
通常250〜7000単位、好ましくは1000〜50
00単位、更に好ましくは1000〜3000単位の範
囲から任意に選ばれるものである。
【0032】その他加水分解の条件として、温度は蛋白
分解酵素が働く温度域で有れば如何なる温度帯でも加水
分解可能であるが、本特許の平均アミノ酸鎖長3以下の
低分子ペプチドを得るためには、通常−5〜50℃の範
囲で良く、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0
〜30℃が良い。−5℃以下では完全に凍結してしまう
ために加水分解が出来なくなり、また、50℃以上では
蛋白分解酵素の酵素活性が低下してしまい蛋白質の効率
的な分解が出来なくなるためである。次に、加水分解の
時間は、平均アミノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドを得
るに足る時間だけ分解すれば良く、基質の蛋白質の量、
蛋白質分解酵素の量、加水分解の温度によって適宜決定
されるが、通常、加水分解の温度が−5〜10℃であれ
ば1時間〜90日、10〜20℃であれば1時間〜60
日、20〜30℃であれば1時間〜30日で十分であ
る。
【0033】本発明は、低級アルコールおよび/または
低級カルボン酸を加えた動植物蛋白質の混合液に蛋白分
解酵素を加えて、加水分解することを特徴としており、
低級アルコールおよび/または低級カルボン酸を加える
ことにより如何なる理由で平均アミノ酸鎖長3以下の低
分子ペプチドが容易に得られるものであるかは定かでは
無いが、低級アルコールおよび/または低級カルボン酸
の存在下で加水分解した場合、基質の蛋白質のアミノ酸
結合部位に蛋白分解酵素が特異的に働くものである。低
級アルコールおよび/または低級カルボン酸を加えない
場合では、平均アミノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドは
得られない。
【0034】以上の工程で得られる低分子ペプチドは加
水分解工程中に食塩や中和による塩が加えられていない
ために、脱塩工程は必要なく、産業上、塩が存在してい
ないことは有益であり、この状態のペプチドで利用可能
であるが、さらに本特許では低級アルコールおよび/ま
たは低級カルボン酸を取り除くことにより、利用範囲を
広範囲なものとした。低級アルコールおよび/または低
級カルボン酸を取り除く方法としては、減圧濃縮、スプ
レードライ、フリーズドライ等によって容易に取り除く
ことが可能であり、一例として減圧濃縮の場合、水流式
の真空ポンプを使用しながら10〜60mmHgの減圧
下で、60〜70℃程度に加熱することにより、容易に
取り除くことができる。
【0035】かくして得られる本発明のペプチドは、モ
ノ・ジペプチド、トリペプチドの形態であり、アミノ酸
単体やジペプチドで有ればAsp−Glu、Glu−S
er、Ser−Gly、Val−Leu等であり、トリ
ペプチドで有れば、Asp−Glu−Ser、Glu−
Leu−Ser等であり、そのままで食品分野、化粧品
分野、医薬品分野などで素材として利用可能であるが、
必要に応じて、他のペプチド、または調味や栄養価、保
存性を向上させる目的で核酸系調味料、化学調味料、旨
味調味料、味噌、醤油、塩、食塩、油脂等あらゆる素材
と混合することは何ら問題はなく、食品、調味料、飼
料、肥料、栄養剤、化粧品、医薬品等の分野に、アミノ
酸源として利用可能な低分子ペプチドである。以下実施
例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれ
によって限定されるものではない。
【0036】
【実施例】実施例1 脱脂卵黄粉末(蛋白質含有量82%)0.827kgと
小麦蛋白粉末(蛋白質含量80%)1.65kgに水1
0.72kgを加えて混合液を調整し、さらに苛性ソー
ダ13.2gを加えた後、エタノール2.68kgを混
合し、加水分解するために蛋白質分解酵素として細菌ア
ルカリプロテアーゼ(Bacillussubtili
s起源:活性単位220000単位/g)を対蛋白質1
g当たり6000単位を混合して、これを8℃にて70
日間加水分解を行った。その後85℃で30分間加熱し
て酵素を失活させ、低分子ペプチド液を得た。得られた
低分子ペプチド液をNo.2濾紙(ADOVANTEC
TOYO製)を用いて濾過して、濾液7.2kgを得
た。このもののペプチドを測定したところ、総アミノ酸
チッソ量(以下T.N)1.38%、遊離アミノ酸チッ
ソ量(以下F.N)0.938%、平均アミノ酸鎖長
1.46であり、その食塩含有量(モール法)は0%で
あった。
【0037】比較例1 一方、脱脂卵黄粉末(蛋白質含有量82%)0.827
kgと小麦蛋白粉末(蛋白質含量80%)1.65kg
に水13.4kgを加えて混合液を調整し、さらに苛性
ソーダ13.2gを加えた。加水分解するために蛋白質
分解酵素として細菌アルカリプロテアーゼ(Bacil
lus subtilis起源:活性単位220000
単位/g)を対蛋白質1g当たり6000単位を混合し
て、これを8℃にて70日間加水分解を行った。その後
85℃で30分間加熱して酵素を失活させ、低分子ペプ
チド液を得た。得られた低分子ペプチド液をNo.2濾
紙(ADOVANTEC TOYO製)を用いて濾過し
て、濾液7.2kgを得た。このもののペプチドを測定
したところ、T.N1.38%、F.N0.582%、
平均アミノ酸鎖長8.88であり、その食塩含有量(モ
ール法)は0%であった。
【0038】実施例1と比較例1の結果より、低級アル
コール存在下で加水分解を行うことにより、平均アミノ
酸鎖長3以下の優れた品質の低分子ペプチドが得られる
ことは明らかである。
【0039】実施例2 おから(蛋白質含有量4.0%)3.3kgと脱脂全卵
粉末(蛋白質含量85.2%)2.64kgに水10.
72Kgを加えて混合液を調整し、ブタノール2.68
Kgを加え、加水分解するために蛋白質分解酵素として
細菌中性プロテアーゼ(Asperugillus o
ryzae起源:活性単位3000000単位/g)を
対蛋白質1g当たり4000単位を混合して、これを1
5℃にて40日間加水分解を行った。その後85℃で3
0分間加熱して酵素を失活させ、低分子ペプチド液を得
た。得られた低分子ペプチド液をNo.2濾紙(ADO
VANTEC TOYO製)を用いて濾過して、濾液
5.9kgを得、このもののペプチドを測定したところ
T.N0.92%、F.N0.686%、平均アミノ酸
鎖長1.35であり、その食塩含有量(モール法)は0
%であった。さらに定法通り、凍結真空乾燥法でブタノ
ールと水を除去しペプチドを得た。
【0040】比較例2 一方、おから(蛋白質含有量4.0%)3.3kgと脱
脂全卵粉末(蛋白質含量85.2%)2.64kgに水
13.4Kgを加えて混合液を調整し、加水分解するた
めに蛋白質分解酵素として細菌中性プロテアーゼ(As
perugillus oryzae起源:活性単位3
000000単位/g)を対蛋白質1g当たり4000
単位を混合して、これを15℃にて40日間加水分解を
行った。その後85℃で30分間加熱して酵素を失活さ
せ、低分子ペプチド液を得た。得られた低分子ペプチド
液をNo.2濾紙(ADOVANTEC TOYO製)
を用いて濾過して、濾液5.9kgを得、このもののペ
プチドを測定したところ、T.N0.92%、F.N
0.354%、平均アミノ酸鎖長7.96であり、その
食塩含有量(モール法)は0%であった。さらに定法通
り、凍結真空乾燥法で水を除去しペプチドを得た。
【0041】実施例2と比較例2の結果より、低級アル
コール存在下で加水分解を行うことにより、平均アミノ
酸鎖長3以下の優れた品質の低分子ペプチドが得られる
ことが明らかである。
【0042】実施例3 小麦グルテン(蛋白質含有量76.6%)0.885k
gと脱脂大豆(蛋白質含量82.0%)2.64kgに
水10.72kgを加えて混合液を調整し、さらに低級
カルボン酸である酢酸(酸度20)2.68kgを加
え、加水分解するために蛋白質分解酵素として細菌酸性
プロテアーゼ(Bacillus subtilis起
源:活性単位220000単位/g)を対蛋白質1g当
たり6000単位を混合して、これを25℃にて10日
間加水分解を行った。その後85℃で30分間加熱して
酵素を失活させ、低分子ペプチド液を得た。得られた低
分子ペプチド液をNo.2濾紙(ADOVANTEC
TOYO製)を用いて濾過して、濾液10.0kgを
得、このもののペプチドを測定したところ、T.N1.
52%、F.N0.896%、平均アミノ酸鎖長1.3
3であり、その食塩含有量(モール法)は0%であっ
た。さらに定法通り、減圧濃縮法で酢酸と水を除去しペ
プチドを得た。
【0043】比較例3 一方、小麦グルテン(蛋白質含有量76.6%)0.8
85kgと脱脂大豆(蛋白質含量82.0%)2.64
kgに水13.4kgを加えて混合液を調整し、加水分
解するために蛋白質分解酵素として細菌酸性プロテアー
ゼ(Bacillus subtilis起源:活性単
位220000単位/g)を対蛋白質1g当たり600
0単位を混合して、これを25℃にて10日間加水分解
を行った。その後85℃で30分間加熱して酵素を失活
させ、低分子ペプチド液を得た。得られた低分子ペプチ
ド液をNo.2濾紙(ADOVANTEC TOYO
製)を用いて濾過して、濾液10.0kgを得、このも
ののペプチドを測定したところ、T.N1.52%、
F.N0.754%、平均アミノ酸鎖長7.53であ
り、その食塩含有量(モール法)は0%であった。さら
に定法通り、減圧濃縮法で酢酸と水を除去しペプチドを
得た。
【0044】実施例3と比較例3の結果より、低級カル
ボン酸存在下で加水分解を行うことにより、平均アミノ
酸鎖長3以下の優れた品質の低分子ペプチドが得られる
ことが明らかである。上記で得られた本発明実施例1〜
3の低分子ペプチドについてアミノ酸分析をアミノ酸ア
ナライザー(日立製作所、835型高速アミノ酸分析
計)を用いて行った。得られた結果を、T.N1.0当
たりのアミノ酸量(mg/dl)にて、表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】本発明の実施態様を挙げれば、たとえば以
下のとおりである。 (1)動植物蛋白質を低級アルコールおよび/または低
級カルボン酸存在下で加水分解した、平均アミノ酸鎖長
3以下の低分子ペプチドの製造方法。 (2)ペプチドの製造過程で食塩が無添加もしくは、ま
たは中和による食塩が存在しない、脱塩工程のない前記
(1)記載の低分子ペプチドの製造方法。 (3)減圧濃縮又はスプレードライ、フリーズドライに
より低級アルコール、低級カルボン酸を除いた前記
(1)記載の低分子ペプチドの製造方法。 (4)前記(1)〜(3)いずれか記載のペプチドを含
む食品、調味料、飼料、肥料、栄養剤、化粧品、医薬
品。
【0047】(5)動物蛋白質が、鶏卵液、鶏卵粉末を
原料として有機溶剤抽出法もしくは超臨界抽出法にて脂
質部分を取り除いた鶏卵蛋白質であり、液体、粉末体の
形態は問わず、卵黄蛋白質、卵白蛋白質の割合について
特に限定なしに、任意の割合で使用する前記(1)〜
(3)いずれか記載の低分子ペプチドの製造方法。 (6)植物蛋白質が、大豆滓、とうもろこし滓、おか
ら、有機溶剤抽出法もしくは超臨界抽出法にて脂質部分
を完全に取り除いた植物蛋白質、小麦蛋白質、大豆蛋白
質、グルテン、グリアジン、グリテニン、ツエイン等が
単独あるいは混合物として使用する前記(1)〜(3)
いずれか記載の低分子ペプチドの製造方法。 (7)低級アルコールが、メタノール、エタノールなど
の炭素数1〜11個のアルコールで、アルコール分子の
含まれるヒドロキシル基(−OH)の数が1個の一価ア
ルコールであり、これらの精製品や粗製品を利用する前
記(1)〜(3)いずれか記載の低分子ペプチドの製造
方法。 (8)低級カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、
酪酸等の炭素数が1〜8個の水に可溶なカルボキシル基
(−COOH)であり、これらの精製品や粗製品を利用
する前記(1)〜(3)いずれか記載の低分子ペプチド
の製造方法。
【0048】(9)蛋白分解酵素が、プロテアーゼ、ペ
プチダーゼの酵素で、通常Rhizopus属、Asp
ergillus属、Mucor属、Bacillus
属、Pseudomonas属、Streptococ
cus属、Escherichia属等の微生物由来、
レンニン、パンクレアチン等の動物由来、パパイン、ブ
ロメライン、フィシン等の植物に由来する酵素であり、
好ましくはRhizopus属、Aspergillu
s属、Bacillus属由来の酵素で、その精製品や
粗製品が単独もしくは2種以上を併用して利用する前記
(1)〜(3)いずれか記載のペプチドの製造方法。 (10)粗蛋白値として1〜30%、好ましくは1〜2
0%、更に好ましくは1〜10%の混液に調整する前記
(1)〜(3)いずれか記載の低分子ペプチドの製造方
法。 (11)低級アルコールおよび/または低級カルボン酸
を5〜30%、好ましくは5〜20%、さらに好ましく
は5〜10%加える前記(1)〜(3)いずれか記載の
低分子ペプチドの製造方法。
【0049】(12)蛋白分解酵素の添加量が、通常基
質である蛋白質1g当たりに対する蛋白分解酵素の活性
単位で、通常250〜7000単位、好ましくは100
0〜5000単位、更に好ましくは1000〜3000
単位の範囲から任意に選ばれる前記(1)〜(3)いず
れか記載の低分子ペプチドの製造方法。 (13)加水分解の温度が、通常−5〜50℃の範囲で
良く、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0〜3
0℃である前記(1)〜(3)いずれか記載の低分子ペ
プチドの製造方法。(14)加水分解時間が、加水分解
の温度が−5〜10℃であれば1時間〜90日、10〜
20℃であれば1時間〜60日、20〜30℃であれば
1時間〜30日で十分である前記(1)〜(3)いずれ
か記載の低分子ペプチドの製造方法。
【0050】
【発明の効果】動植物蛋白質を原料として、加水分解し
て得られた、塩を含まない平均アミノ酸鎖長3以下のペ
プチドで、アミノ酸スコアが良好であり、食品、調味
料、飼料、肥料、栄養剤、化粧品、医薬品等あらゆる分
野に、アミノ酸源として広く利用可能な低分子ペプチド
を提供するするものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 1/12 C07K 1/14 1/14 5/08 5/08 A61K 35/12 // A61K 35/12 37/02 ADD Fターム(参考) 4C083 AA072 AA112 AB032 AC061 AC102 AC231 AD411 AD412 AD472 FF01 4C084 AA06 CA41 MA01 4C087 AA01 AA03 BB61 MA01 4H045 AA20 AA30 BA11 BA12 CA32 CA33 CA40 EA01 EA05 EA07 EA15 EA20 FA16 4H061 AA01 BB01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動植物蛋白質を低級アルコールおよび/
    または低級カルボン酸存在下で加水分解した、平均アミ
    ノ酸鎖長3以下の低分子ペプチドの製造方法。
  2. 【請求項2】 ペプチドの製造過程で食塩の添加工程、
    中和工程、または脱塩工程を有さないことを特徴とする
    請求項1記載の低分子ペプチドの製造方法。
  3. 【請求項3】 減圧濃縮もしくはスプレードライまたは
    フリーズドライにより低級アルコール、低級カルボン酸
    を除くことを特徴とする請求項1記載の低分子ペプチド
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載の低分子ペプチドを含
    む食品、調味料、飼料、肥料、栄養剤、化粧品、医薬
    品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7547761B2 (en) 2003-03-21 2009-06-16 Velvet Antler Research New Zealand Limited Low molecular weight extraction process

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