JP2000001413A - 義歯床人工歯咬合面再構築用組成物及びその重合方法 - Google Patents

義歯床人工歯咬合面再構築用組成物及びその重合方法

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JP2000001413A
JP2000001413A JP10164648A JP16464898A JP2000001413A JP 2000001413 A JP2000001413 A JP 2000001413A JP 10164648 A JP10164648 A JP 10164648A JP 16464898 A JP16464898 A JP 16464898A JP 2000001413 A JP2000001413 A JP 2000001413A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 重合を充分にし、硬化時間を任意にでき、変
形を少なくする。 【解決手段】 ラジカル重合可能なメタクリレート、ラ
ジカル重合促進剤からなる液剤と、メタクリレート重合
体あるいは共重合体、ラジカル重合開始剤からなる粉剤
の少なくとも一方に、光重合開始剤を配合した組成物に
おいて、粉剤と液剤の混合物を常温下で重合硬化させた
後に可視光線を照射し、光重合反応を起こさせることに
より重合度を高める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科用暫間被覆冠
の製作、義歯床人工歯咬合面の再構築、義歯床の修理等
に使用される常温硬化型の歯科用組成物の重合度を高
め、物性、特に表面硬度を向上するようにした歯科用組
成物及びその重合硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】(加熱重
合法)従来、重合硬化型の歯科用組成物としては、加熱
により重合反応が開始して硬化する、いわゆる加熱重合
型が一般的であり、それらは現在でも義歯床用レジン等
に広く用いられている。この方法は、硬化物の重合度が
高くなるという長所があるものの、操作はきわめて煩雑
である。
【0003】(常温重合法)その後、レドックス触媒を
応用した常温硬化型の組成物が開発され、加熱しなくて
も硬化するという手軽さが受けて、暫間被覆冠の製作、
義歯床人工歯咬合面の再構築、義歯床の修理等に広く普
及している。
【0004】この常温硬化型組成物には加熱の必要がな
いという利点があるものの、一方では充分な重合度が得
られないため、硬化物の物性が劣るという欠点がある。
特に材料表面は大気中の酸素による重合阻害を強く受け
るため、重合が不充分となり、表面硬度が著しく低下す
るという問題がある。
【0005】このようなことは、暫間被覆冠や咬合面再
構築等、高い表面硬度と優れた耐摩耗性を必要とする用
途には大きな欠点となる。
【0006】(光重合法)一方、重合硬化させるもう一
つの方法として可視光線を照射して行う光重合法も開発
された。この方法は常温硬化型充填用コンポジットレジ
ンの操作性を改善する目的で開発されたものである。
【0007】すなわち、当初、充填用コンポジットレジ
ンは、重合開始剤を配合した成分と、重合促進剤を配合
した成分を使用時に混合し、レドックス触媒系で重合反
応を起こさせる常温重合型が主流であった。この方法
は、特別な装置を必要としないということで広く普及し
たが、一方で、硬化時間によって操作時間が制限される
という問題が指摘されるようになった。
【0008】すなわち、硬化時間内に充填等の操作をす
べて完了しなければならず、さもなければ、操作途中で
材料が硬化してしまうという問題が生じた。硬化速度は
優れた物性を得るためにはある程度早目に設定しなけれ
ばならず、それが操作時間をさらに短くし、操作性を悪
くする要因となった。
【0009】そのような問題を解決するものとして、前
述の光重合法が取り入れられた。本方法によれば、光を
照射するまでは重合反応が開始しないため、術者は充填
操作に充分な時間を費やすことが可能となる。
【0010】しかしながら、光重合法は操作性の面から
は利点があるものの、それ以外では特に優れた点はな
く、逆に以下のようないくつかの欠点も指摘されてい
る。 大気中の酸素により重合阻害を受けるため、表面の
重合が不充分となる。 重合が表面から起こるため、硬化時に変形が生じ
る。 厚肉の場合、内部の硬化が不充分となる。 光が当たらない部分は硬化が起こらない。 使用する光照射器の光強度によって、重合度が大き
く影響される。
【0011】このように、従来の光重合法は、あくまで
も操作性を高めるということを主目的においたものであ
り、重合度を高くし、材料の物性を向上させることを意
図したものではない。
【0012】この光重合法は、最近では粉液混合型の材
料にも一部応用されるようになっており、光硬化型の暫
間被覆冠用材料、義歯床補修用材料等が開発されてい
る。しかしこれらは、いずれも操作時間の制限を受けな
いことによる操作性の改善という観点から導入されたも
のであり、材質向上等のメリットは何ら考慮されていな
い。そのため前述した光重合特有の欠点はすべて含んで
いる。
【0013】前記欠点はいずれも好ましからざるもので
あるが、その中でも表面の重合が阻害され、表面硬度が
低くなることは、高い硬度と、優れた耐摩耗性を必要と
する暫間被覆冠の製作、とりわけ義歯床人工歯咬合面の
再構築には致命的な欠点となる。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は、粉液混合型の常温硬化型歯科用組成物に
おいて、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方に光重合開
始剤を配合し、常温硬化性の他に光重合性をも付与し、
粉液混合物が常温硬化した後に、光を照射することによ
り光重合反応を起こさせ、重合度を高めることにより、
材料の物性、特に表面硬度を向上させることを特徴とす
る歯科用組成物及びその重合硬化方法である。
【0015】従って、常温重合と光重合とを行うことに
よりつぎの長所を有する。 常温重合の不足分を光重合で補える。 常温での硬化時間を任意に設定できる。 最低限、常温重合による重合が保証される。 表面の重合が阻害されない。 厚肉の場合でも、内部硬化不良の心配がない。 光が当たらない部分でも、未硬化とならない。 光重合による変形が非常に少なくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は、ラジカル重合可能なメ
タクリレート、ラジカル重合促進剤からなる液剤と、メ
タクリレート重合体あるいは共重合体、ラジカル重合開
始剤からなる粉剤とで構成される常温硬化型の歯科用組
成物において、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方に光
重合開始剤を配合し、粉液混合物が常温下で重合硬化し
た後に可視光線を照射することにより光重合反応を起こ
させ、重合度を高めることにより、硬化物の物性、特に
表面硬度をさらに向上させることを特徴とする歯科用組
成物及びその重合硬化方法である。
【0017】この発明により、従来の加熱重合法、常温
重合法及び光重合法の問題点を大幅に改善することが可
能となる。
【0018】すなわち、従来の常温硬化型組成物におい
ては、高い重合度を得るために硬化速度を早めに設定し
なければならず、それが操作時間の面で大きな障害であ
り、一方、充分な操作時間を確保するため硬化時間を遅
目に設定すると、充分な重合度が得られず、硬化物の物
性は非常に低いものとなる。
【0019】特に材料表面は大気中の酸素による重合阻
害を強く受けるため、表面硬度は非常に低くなり、常温
硬化型組成物の場合、硬化後も経時的に重合反応が進行
し、徐々に硬くはなっていくが、やはりそれにも限界が
あり、高い重合度を得ることはできない。
【0020】しかし、本発明では、まず始めに常温硬化
した後に、可視光線を照射して光重合させることによ
り、重合度が高くなるため、瞬時にして材料の物性は大
幅に向上し、特に材料の表面硬度は著しく高くなる。ま
た、この場合、大気中の酸素による重合阻害をほとんど
受けることがないため、エアーバリア剤の塗布は必要と
しない。
【0021】このように、本発明の方法を用いると、光
重合により高い重合度が確保できるため、常温重合の段
階で高い重合度を得る必要がなく、従って、充分余裕を
持って操作ができるように、硬化速度を自由に設定する
ことが可能となる。
【0022】また、本発明は、光によって一気に硬化さ
せる従来の光重合法とは異なり、一旦常温硬化させた後
に、光照射により重合硬化させるため、従来の光重合法
に見られたような多くの欠点を、すべて解消することが
できる。
【0023】例えば、本発明では予め常温下で硬化させ
るため、最低限常温下での重合は保証される。従って、
厚肉の材料の場合でも内部が硬化しないという問題はな
くなる。また、光が当たらない部分でも未重合となる心
配がない。
【0024】一方、従来の光硬化型材料の場合、光が照
射されなければ重合度はゼロであり、従って、光が照射
されなかった時のリスクは極めて大きなものとなる。
【0025】また、従来の光硬化型材料の場合、材料の
表面から重合硬化が開始されるため、表面から重合によ
る収縮が起こり、その結果、材料の変形は非常に大きな
ものとなる。
【0026】しかし、本発明の方法では、先行する常温
での重合が内部より均一に進行するため、硬化収縮によ
る影響は非常に少なくなる。この常温での反応により大
部分の重合収縮が起こるため、その後の光による重合収
縮は、極力抑えられる。
【0027】さらに、従来の光硬化型材料は、大気中の
酸素による重合阻害を強く受けるため、表面の重合度が
低くなり、表面硬度はかなり低いものとなる。
【0028】しかし、本発明では、酸素による重合阻害
をほとんど受けないため、表面硬度は極めて高いものと
なる。
【0029】本来、光重合法のメリットは、操作時間の
拘束をなくすという操作性の改善にあった。しかし、光
重合との併用により常温硬化法においても、硬化時間を
充分余裕を持って操作ができるよう設定しておくことは
可能である。例えば、義歯咬合面再構築用の材料におい
ては、常温下で10分程度の操作時間を設ければ、充分
操作は可能である。ただ硬化時間を遅くすれば、それだ
け硬化後の物性は低くなり、表面硬度が著しく低下する
という問題が生じる。
【0030】しかし、本発明では、常温で重合硬化させ
た後に光重合させ、常温重合反応の不足分を光重合反応
で補うため、常温重合による重合度は低いレベルであっ
ても問題とはならない。従って、重合度を高くするた
め、硬化速度を必要以上に早くする必要は全くなく、用
途に応じた適正な硬化時間の設定が可能となる。
【0031】本発明では、常温硬化後に光を照射する
が、この場合、常温硬化から光を照射するまでの時間に
は特に制約はなく、必要に応じて照射すればよい。
【0032】例えば、咬合面再構築の場合は、不要部分
のトリミングを終え、バーによる形態修正が終わった後
に光照射しても良いし、あるいは、トリミング終了後、
光照射を行い、硬化させた後で形態修正しても良い。
【0033】ただし、常温での重合反応が完結した後で
は、光重合反応は極めて起こりにくくなるため、常温硬
化後、数時間以内に光照射させることが好ましい。1日
経過後に光照射した場合でも、光重合は起こるものの、
その程度は、常温硬化直後に照射した場合に比べ、かな
り低いものとなる。なお、常温硬化後、数時間以内であ
れば、どの段階で光照射しても、ほぼ同程度の結果が得
られる。
【0034】本発明は、常温での重合反応の不足分を光
重合反応で補うことを特徴としている。すなわち、常温
での反応には限界があり、モノマーの総てを高分子化さ
せることはできず、かなりのモノマーが未反応物として
材料内に残存する。それが可塑剤としての作用をなし、
材料の物性を低下させる。この段階で光を照射すること
により、未反応として残留していたモノマーが反応を起
こし、その結果、材料の物性は飛躍的に向上する。
【0035】
【実施例】本発明は、粉液混合型の材料に対して応用が
可能であるが、それらについて以下に詳細に説明する。
まず液剤は、ラジカル重合可能なメタクリレート、ラジ
カル重合促進剤を必須成分としているが、ここでラジカ
ル重合可能なメタクリレートとしては、メチルメタクリ
レート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレ
ート、n−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ラ
ウリルメタクリレート等の一官能性メタクリレート、エ
チレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリ
コールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ
メタクリレート等の多官能性メタクリレートが含まれ
る。これらは単独で使用しても、また、2種以上を併用
しても良い。
【0036】次に、液剤に使用するラジカル重合促進剤
としては、NN′−ジメチルアニリン、NN′−ジエチ
ルアニリン、NN′−ジメチルパラトルイジン、パラト
リルジエタノールアミン等の第三級アミンがあげられ
る。これらは単独で使用しても、2種以上を併用しても
良い。
【0037】このラジカル重合促進剤の添加量は、使用
するメタクリレートの種類、及び後述するラジカル重合
開始剤の種類、添加量によって、また、要求される常温
での硬化時間によって異なるが、使用するメタクリレー
トの全量に対し、0.05〜5重量%の範囲内で設定す
ることが好ましい。ここで、ラジカル重合促進剤の添加
量が0.05重量%より少なくなれば、常温での硬化が
著しく遅くなるとともに、光照射による重合反応が充分
に起こらず、硬化物の物性は非常に劣ったものとなる。
また、添加量を5重量%より多くしても充分な促進効果
が得られず、逆に変色等の弊害が大きくなる。
【0038】粉剤に使用できるメタクリレート重合体あ
るいは共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、
ポリエチルメタクリレート等の重合体、メチルメタクリ
レート/エチルメタクリレート共重合体、メチルメタク
リレート/n−ブチルメタクリレート共重合体等が含ま
れる。これらは単独で使用しても、あるいは2種以上を
ブレンドして用いても良い。
【0039】これら重合体あるいは共重合体の分子量は
広範囲のものが使用できるが、平均分子量が1万〜10
0万の範囲のものが適している。また、粒子径は液成分
への溶解性を良くするため、できるだけ細かいものが好
ましく、10μm〜100μmの範囲のものが好まし
い。
【0040】粉剤に使用できるラジカル重合開始剤とし
ては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキ
サイド等のジアシルパーオキサイド等が含まれる。
【0041】これらのラジカル重合開始剤の添加量は、
使用するメタクリレートの種類、ラジカル重合促進剤の
種類及び添加量、さらに要求される常温での硬化時間に
より異なるが、使用するメタクリレート重合体、あるい
は共重合体の全量に対し、0.05〜5重量%の範囲で
あることが好ましい。ここで、添加量が0.05重量%
より低くなると、常温重合性、光重合性のいずれもが低
下し、充分な物性が得られなくなる。また、添加量を5
重量%より多くしても、充分な効果が得られない。
【0042】また、本発明に使用する材料には、光重合
性を付与するため、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方
に光重合開始剤を添加する。ここで使用できる光重合開
始剤としては特に限定されるものではないが、ベンジ
ル、2.3−ペンタンジオンのような鎖状α−ジケトン
化合物、カンファーキノンのような指環式α−ジケトン
化合物、アントラキノン、ナフトキノン等のような多核
キノン、2−メチル−1.4−ナフトキノン、1.2−
ベンズアントラキノンのような多核キノン誘導体があげ
られる。これらは、単独で使用しても、何種類かを併用
しても良い。
【0043】この光重合開始剤の添加量は、液剤及び粉
剤成分の組成によって異なるが、0.01〜3重量%の
範囲であることが好ましい。ここで、添加量が0.01
重量%より少なくなると、光を照射した場合に効率的に
重合反応が起こらなくなり、また、3重量%より多くし
ても、効果はほとんど変わらず、逆に材料の黄変が著し
くなる等の弊害が生じる。なお、これら光重合開始剤
は、粉剤、液剤のいずれに添加しても良い。
【0044】本発明に使用する光照射器としては、現在
歯科用として用いられている可視光線照射器があげられ
る。義歯床人工歯咬合面再構築、あるいは義歯床の修理
等、広い面積に使用する場合は、技工用の光照射器を使
用することが好ましいが、暫間被覆冠等の狭い面積に対
して使用する場合は、充填用コンポジットレジンに用い
るハンドタイプの光照射器で充分である。照射時間は使
用する材料の反応性により異なるが、一般的には1〜2
0分程度で所定の物性が得られる。
【0045】(実験例)以下に本発明の具体的実験例を
示す。ただし、ここに示した実験例に限定されるもので
はない。 〔実験例1〕メチルメタクリレート80部、2−ヒドロ
キシエチルメタクリレート10部、トリメチロールプロ
パントリメタクリレート10部、NN′−ジメチルパラ
トルイジン0.5部をビーカーに入れ、10分間混合し
て液剤を調製した。
【0046】平均粒子径50μm、平均分子量25万の
メチルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体
(モル比=3/2)100部、ベンゾイルパーオキサイ
ド0.5部、カンファーキノン0.3部をボールミルに
入れ、10分間混合して粉剤を調製した。
【0047】液剤1gと粉剤2gをポリエチレン容器内
で混合し、内部に熱電対を挿入した。混合開始から試料
内部の温度を測定し、最高温度を記録した時間を求め、
それを硬化時間とした。
【0048】同様の割合で粉液を混合した試料を25×
25×3mmのテフロン製型に充填し、上面をテフロン板
で圧接し、そのまま硬化させた。粉液混合開始から10
分後に型から試験片を取り出し、125wのハロゲンラ
ンプを2個取り付けた光照射器で10分間光を照射し
た。照射後、試験片の表面を800番の耐水研磨紙で研
磨し、アカシ微小硬度計を用いて表面硬度(ビッカース
硬さ)を測定した。また、同試験片を37℃の恒温槽に
7日間保管後、再度、表面を測定した。さらに、光照射
後の試験片の変形状態を肉眼で観察した。結果を表1に
示す。
【0049】
【 表1】
【0050】〔実験例2〕実験例1に示した液剤成分中
のNN′−ジメチルパラトルイジンの添加量を0.25
重量%としたこと以外は、実験例1に示した内容と同様
の実験を行った。結果を表1に示す。
【0051】〔実験例3〕型から試験片を取り出し、2
時間後に光照射したこと以外は、実験例2と同様の実験
を実施した。結果を表1に示す。
【0052】〔比較例1〕平均粒子径50μm、平均分
子量25万のメチルメタクリレート/エチルメタクリレ
ート共重合体(モル比=3/2)100部、ベンゾイル
パーオキサイド0.5部をボールミルに入れ、10分間
混合して粉剤を調製した。
【0053】この粉剤2gと実験例1で使用した液剤1
gをポリエチレン容器内で混合し、実験例1と同様にし
て硬化時間を測定した。
【0054】同様の割合で混合した試料を25×25×
3mmのテフロン製型に充填し、上面をテフロン板で圧接
し、そのまま硬化させた。粉液混合開始から20分後に
型から試験片を取り出し、表面を800番の耐水研磨紙
で研磨し、アカシ微小硬度計を用いて表面硬度を測定し
た。また、硬化後の試験片の変形状態を、肉眼で観察し
た。結果を表1に示す。
【0055】〔比較例2〕比較例1で使用した粉剤と、
実験例2で使用した液剤を用いて、比較例1と同様の実
験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】〔比較例3〕メチルメタクリレート80
部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、トリ
メチロールプロパントリメタクリレート10部をビーカ
ーに入れ、10分間混合して液剤を調製した。
【0057】この液剤と、実験例1で使用した粉剤を用
いて、実験例1と同様の方法で実験を実施した。結果を
表1に示す。
【0058】表1の実験結果に示すように、本発明の実
験例1,2,3は充分な表面硬度が得られ、変形もほと
んど無いが、比較例1,2,3は表面硬度が低く、比較
例3では変形が非常に大きい。
【0059】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載する効果を奏する。ラジカル重
合可能なメタクリレート、ラジカル重合促進剤からなる
液剤と、メタクリレート重合体あるいは共重合体、ラジ
カル重合開始剤からなる粉剤の少なくとも一方に、光重
合開始剤を配合し、前記粉剤と液剤の混合物が常温下で
重合硬化した後に、可視光線を照射することにより光重
合反応を起こさせ、重合度を高めることにより、重合硬
化物の物性、特に表面硬度をさらに向上させることが可
能となる。このように、常温重合の不足分を光重合で補
うことができるため、常温での硬化時間を任意に設定で
き、また、最低限、常温重合による重合が保証され、表
面の重合が阻害されなく、厚肉の場合でも内部硬化不良
の心配がなく、光が当たらない部分でも未硬化となら
ず、光重合による変形が非常に少なくなるという利点が
得られる。
【手続補正書】
【提出日】平成11年4月27日(1999.4.2
7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 義歯床人工歯咬合面再構築用組成物及
びその重合方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯床人工歯咬合
面の再構築に使用される常温重合型の組成物の重合度を
高め、表面硬度を向上するようにした義歯床人工歯咬合
面再構築用組成物及びその重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】(加熱重
合法)従来、重合型の歯科用組成物としては、加熱によ
り重合反応が開始して硬化する、いわゆる加熱重合型が
一般的であり、それらは現在でも義歯床用レジン等に広
く用いられている。この方法は、硬化物の重合度が高く
なるという長所があるものの、操作はきわめて煩雑であ
る。
【0003】(常温重合法)その後、レドックス触媒を
応用した常温重合型の組成物が開発され、加熱しなくて
も重合するという手軽さが受けて、義歯床人工歯咬合面
の再構築等に広く使用されている。
【0004】この常温重合型組成物には加熱の必要がな
いという利点があるものの、一方では充分な重合度が得
られないため、硬化物の物性が劣るという欠点がある。
特に材料表面は大気中の酸素による重合阻害を強く受け
るため、重合が不充分となり、表面硬度が著しく低下す
るという問題がある。
【0005】このようなことは、義歯床人工歯咬合面再
構築のような高い表面硬度と優れた耐摩耗性を必要とす
る用途には大きな欠点となる。
【0006】(光重合法)一方、重合させるもう一つの
方法として可視光線を照射して行う光重合法も開発され
た。この方法は常温重合型充填用コンポジットレジンの
操作性を改善する目的で開発されたものである。
【0007】すなわち、当初、充填用コンポジットレジ
ンは、重合開始剤を配合した成分と、重合促進剤を配合
した成分を使用時に混合し、レドックス触媒系で重合反
応を起こさせる常温重合型が主流であった。この方法
は、特別な装置を必要としないということで広く普及し
たが、一方で、硬化時間によって操作時間が制限される
という問題が指摘されるようになった。
【0008】すなわち、硬化時間内に充填等の操作をす
べて完了しなければならず、さもなければ、操作途中で
材料が硬化してしまうという問題が生じた。硬化速度は
優れた物性を得るためにはある程度早目に設定しなけれ
ばならず、それが操作時間をさらに短くし、操作性を悪
くする要因となった。
【0009】そのような問題を解決するものとして、前
述の光重合法が取り入れられた。本方法によれば、光を
照射するまでは重合反応が開始しないため、術者は充填
操作に充分な時間を費やすことが可能となる。
【0010】しかしながら、光重合法は操作性の面から
は利点があるものの、それ以外では特に優れた点はな
く、逆に以下のようないくつかの欠点も指摘されてい
る。 大気中の酸素により重合阻害を受けるため、表面の
重合が不充分となる。 重合が表面から起こるため、硬化時に変形が生じ
る。 厚肉の場合、内部の硬化が不充分となる。 光が当たらない部分は硬化が起こらない。 使用する光照射器の光強度によって、重合度が大き
く影響される。
【0011】このように、従来の光重合法は、あくまで
も操作性を高めるということを主目的においたものであ
り、重合度を高くし、材料の物性を向上させることを意
図したものではない。
【0012】この光重合法は、最近では粉液混合型の材
料にも一部応用されるようになっており、光重合型の義
歯床補修用材料等が開発されている。しかしこの材料
は、操作時間の制限を受けないことによる操作性の改善
という観点から導入されたものであり、表面硬度の向上
等のメリットは何ら考慮されていない。そのため前述し
た光重合特有の欠点はすべて含んでいる。
【0013】前記欠点はいずれも好ましからざるもので
あるが、その中でも表面の重合が阻害され、表面硬度が
低くなることは、高い硬度と、優れた耐摩耗性を必要と
する義歯床人工歯咬合面の再構築には致命的な欠点とな
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は、粉液混合型の常温重合型組成物におい
て、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方に光重合開始剤
を配合し、常温重合性の他に光重合性をも付与し、粉液
混合物が常温重合した後に、光を照射することにより光
重合反応を起こさせ、重合度を高めることにより、材料
の表面硬度を向上させることを特徴とする義歯床人工歯
咬合面再構築用組成物及びその重合方法である。
【0015】本発明の常温重合と光重合の併用法は、常
温重合後の光重合により、重合度を大幅に高めることが
できるという長所を有するが、その他にもつぎのような
長所を有する。 常温での硬化時間を任意に設定できる。 最低限、常温重合による重合が保証される。 表面の重合が阻害されない。 厚肉の場合でも、内部硬化不良の心配がない。 光が当たらない部分でも、未硬化とならない。 光重合による変形が非常に少なくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明は、ラジカル重合可能なメ
タクリレート、ラジカル重合促進剤からなる液剤と、メ
タクリレート重合体あるいは共重合体、ラジカル重合開
始剤からなる粉剤とで構成される常温重合型の組成物に
おいて、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方に光重合開
始剤を配合し、粉液混合物が常温下で重合した後に可視
光線を照射することにより光重合反応を起こさせ、重合
度を高めることにより、硬化物の表面硬度をさらに向上
させることを特徴とする義歯床人工歯咬合面再構築用組
成物及びその重合方法である。
【0017】この発明により、従来の常温重合型の義歯
床人工歯咬合面再構築用組成物の問題点を大幅に改善す
ることが可能となる。
【0018】すなわち、従来の常温重合型義歯床人工歯
咬合面再構築用組成物においては、高い重合度を得るた
めに硬化速度を早めに設定しなければならず、それが操
作時間の面で大きな障害であり、一方、充分な操作時間
を確保するため硬化時間を遅目に設定すると、充分な重
合度が得られず、硬化物の表面硬度は非常に低いものと
なる。
【0019】特に材料表面は大気中の酸素による重合阻
害を強く受けるため、表面硬度は非常に低くなる。常温
重合型組成物の場合、硬化後も経時的に重合反応が進行
し、徐々に硬くはなっていくが、やはりそれにも限界が
あり、高い重合度を得ることはできない。
【0020】しかし、本発明では、まず始めに常温重合
させた後に、可視光線を照射して光重合させることによ
り、重合度が大幅に高くなるため、材料の表面硬度は著
しく高くなる。また、この場合、大気中の酸素による重
合阻害をほとんど受けることがないため、エアーバリア
剤の塗布は必要としない。
【0021】このように、本発明の組成物及びその重合
方法を用いると、常温重合後の光重合により高い重合度
が確保できるため、常温重合の段階で高い重合度を得る
必要がなく、従って、充分余裕を持って操作ができるよ
うに、硬化速度を自由に設定することが可能となる。
【0022】また、本発明は、従来の光重合法とは異な
り、一旦常温重合させた後に、光照射によりさらに重合
させるため、従来の光重合法に見られたような多くの欠
点を、すべて解消することができる。
【0023】例えば、本発明では予め常温下で重合させ
るため、最低限常温下での重合は保証される。従って、
厚肉の材料の場合でも内部が硬化しないという問題はな
くなる。また、光が当たらない部分でも未重合となる心
配がない。
【0024】一方、従来の光重合型材料の場合、光が照
射されなければ重合度はゼロであり、従って、光が照射
されなかった時のリスクは極めて大きなものとなる。
【0025】また、従来の光重合型材料の場合、材料の
表面から重合硬化が開始されるため、表面から重合によ
る収縮が起こり、その結果、材料の変形は非常に大きな
ものとなる。
【0026】しかし、本発明の方法では、先行する常温
での重合が内部より均一に進行するため、硬化収縮によ
る影響は非常に少なくなる。この常温での反応により大
部分の重合収縮が起こるため、その後の光による重合収
縮は、極力抑えられる。
【0027】さらに、従来の光重合型材料は、大気中の
酸素による重合阻害を強く受けるため、表面の重合度が
低くなり、表面硬度はかなり低いものとなる。
【0028】しかし、本発明では、酸素による重合阻害
をほとんど受けないため、表面硬度は極めて高いものと
なる。
【0029】本来、光重合法のメリットは、操作時間の
拘束をなくすという操作性の改善にあった。しかし、光
重合との併用により常温重合法においても、硬化時間を
充分余裕を持って操作ができるよう設定しておくことは
可能である。すなわち、義歯床人工歯咬合面再構築用の
材料においては、常温下で10分程度の操作時間を設け
れば、充分操作は可能である。ただ硬化時間を遅くすれ
ば、それだけ常温重合後の物性は低くなり、表面硬度が
著しく低下するという問題が生じる。
【0030】しかし、本発明では、常温で重合させた後
に光重合させることにより、著しく重合度が向上するた
め、常温重合による重合度は低いレベルであっても問題
とはならない。従って、重合度を高くするため、硬化速
度を必要以上に早くする必要は全くなく、用途に応じた
適正な硬化時間の設定が可能となる。
【0031】本発明では、常温重合後に光を照射する
が、この場合、常温重合から光を照射するまでの時間に
は特に制約はなく、必要に応じて照射すればよい。
【0032】すなわち、義歯床人工歯咬合面再構築の場
合は、不要部分のトリミングを終え、バーによる形態修
正が終わった後に光照射しても良いし、あるいは、トリ
ミング終了後、光照射を行った後で形態修正しても良
い。
【0033】ただし、常温重合から光を照射するまでの
時間が非常に長くなると、光重合反応は極めて起こりに
くくなるため、常温重合後、数時間以内に光照射させる
ことが好ましい。1日経過後に光照射した場合でも、光
重合は起こるものの、その程度は、常温重合直後に照射
した場合に比べ、かなり低いものとなる。なお、常温重
合後、数時間以内であれば、どの段階で光照射しても、
ほぼ同程度の重合度が得られる。
【0034】本発明は、常温重合による重合度を光重合
反応で大幅に高めることを特徴としている。すなわち、
常温での反応には限界があり、モノマーの総てを高分子
化させることはできず、かなりのモノマーが未反応物と
して材料内に残存する。それが可塑剤としての作用をな
し、材料の硬度を低下させる。この段階で光を照射する
ことにより、未反応として残留していたモノマーが反応
を起こし、その結果、材料の硬度は飛躍的に向上する。
【0035】
【実施例】本発明は、粉液混合型の義歯床人工歯咬合面
再構築用組成物であるが、それらについて以下に詳細に
説明する。まず液剤は、ラジカル重合可能なメタクリレ
ート、ラジカル重合促進剤を必須成分としているが、こ
こでラジカル重合可能なメタクリレートとしては、メチ
ルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチル
メタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−ヒド
ロキシエチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリ
レート、ラウリルメタクリレート等の一官能性メタクリ
レート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエ
チレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプ
ロパントリメタクリレート等の多官能性メタクリレート
が含まれる。これらは単独で使用しても、また、2種以
上を併用しても良い。
【0036】次に、液剤に使用するラジカル重合促進剤
としては、NN′−ジメチルアニリン、NN′−ジエチ
ルアニリン、NN′−ジメチルパラトルイジン、パラト
リルジエタノールアミン等の第三級アミンがあげられ
る。これらは単独で使用しても、2種以上を併用しても
良い。
【0037】このラジカル重合促進剤の添加量は、使用
するメタクリレートの種類、及び後述するラジカル重合
開始剤の種類、添加量によって、また、要求される常温
での硬化時間によって異なるが、使用するメタクリレー
トの全量に対し、0.05〜5重量%の範囲内で設定す
ることが好ましい。ここで、ラジカル重合促進剤の添加
量が0.05重量%より少なくなれば、常温での重合反
応が著しく遅くなるとともに、光照射による重合反応が
充分に起こらず、硬化物の硬度は非常に低いものとな
る。また、添加量を5重量%より多くしても充分な促進
効果が得られず、逆に変色等の弊害が大きくなる。
【0038】粉剤に使用できるメタクリレート重合体あ
るいは共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、
ポリエチルメタクリレート等の重合体、メチルメタクリ
レート/エチルメタクリレート共重合体、メチルメタク
リレート/n−ブチルメタクリレート共重合体等が含ま
れる。これらは単独で使用しても、あるいは2種以上を
ブレンドして用いても良い。
【0039】これら重合体あるいは共重合体の分子量は
広範囲のものが使用できるが、平均分子量が1万〜10
0万の範囲のものが適している。また、粒子径は液成分
への溶解性を良くするため、できるだけ細かいものが好
ましく、10μm〜100μmの範囲のものが好まし
い。
【0040】粉剤に使用できるラジカル重合開始剤とし
ては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキ
サイド等のジアシルパーオキサイド等が含まれる。
【0041】これらのラジカル重合開始剤の添加量は、
使用するメタクリレートの種類、ラジカル重合促進剤の
種類及び添加量、さらに要求される常温での硬化時間に
より異なるが、使用するメタクリレート重合体、あるい
は共重合体の全量に対し、0.05〜5重量%の範囲で
あることが好ましい。ここで、添加量が0.05重量%
より低くなると、常温重合性、光重合性のいずれもが低
下し、充分な硬度が得られなくなる。また、添加量を5
重量%より多くしても、充分な促進効果が得られない。
【0042】また、本発明に使用する材料には、光重合
性を付与するため、粉剤あるいは液剤の少なくとも一方
に光重合開始剤を添加する。ここで使用できる光重合開
始剤としては特に限定されるものではないが、ベンジ
ル、2.3−ペンタンジオンのような鎖状α−ジケトン
化合物、カンファーキノンのような指環式α−ジケトン
化合物、アントラキノン、ナフトキノン等のような多核
キノン、2−メチル−1.4−ナフトキノン、1.2−
ベンズアントラキノンのような多核キノン誘導体があげ
られる。これらは、単独で使用しても、何種類かを併用
しても良い。
【0043】この光重合開始剤の添加量は、液剤及び粉
剤成分の組成によって異なるが、0.01〜3重量%の
範囲であることが好ましい。ここで、添加量が0.01
重量%より少なくなると、光を照射した場合に効率的に
重合反応が起こらなくなり、また、3重量%より多くし
ても、効果はほとんど変わらず、逆に材料の黄変が著し
くなる等の弊害が生じる。なお、これら光重合開始剤
は、粉剤、液剤のいずれに添加しても良い。
【0044】本発明に使用する光照射器としては、現在
歯科用として用いられている可視光線照射器があげられ
る。義歯床人工歯咬合面再構築において、総義歯のよう
に広い面積に使用する場合は、技工用の光照射器を使用
することが好ましいが、極部義歯のような狭い面積に対
して使用する場合は、充填用コンポジットレジンに用い
るハンドタイプの光照射器で充分である。照射時間は使
用する材料の反応性により異なるが、一般的には1〜2
0分程度で所定の硬度が得られる。
【0045】(実験例)以下に本発明の具体的実験例を
示す。ただし、ここに示した実験例に限定されるもので
はない。 〔実験例1〕メチルメタクリレート80部、2−ヒドロ
キシエチルメタクリレート10部、トリメチロールプロ
パントリメタクリレート10部、NN′−ジメチルパラ
トルイジン0.5部をビーカーに入れ、10分間混合し
て液剤を調製した。
【0046】平均粒子径50μm、平均分子量25万の
メチルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体
(モル比=3/2)100部、ベンゾイルパーオキサイ
ド0.5部、カンファーキノン0.3部をボールミルに
入れ、10分間混合して粉剤を調製した。
【0047】液剤1gと粉剤2gをポリエチレン容器内
で混合し、内部に熱電対を挿入した。混合開始から試料
内部の温度を測定し、最高温度を記録した時間を求め、
それを硬化時間とした。
【0048】同様の割合で粉液を混合した試料を25×
25×3mmのテフロン製型に充填し、上面をテフロン板
で圧接し、そのまま硬化させた。粉液混合開始から10
分後に型から試験片を取り出し、125wのハロゲンラ
ンプを2個取り付けた光照射器で10分間光を照射し
た。照射後、試験片の表面を800番の耐水研磨紙で研
磨し、アカシ微小硬度計を用いて表面硬度(ビッカース
硬さ)を測定した。また、同試験片を37℃の恒温槽に
7日間保管後、再度、表面を測定した。さらに、光照射
後の試験片の変形状態を肉眼で観察した。結果を表1に
示す。
【0049】
【表1】
【0050】〔実験例2〕実験例1に示した液剤成分中
のNN′−ジメチルパラトルイジンの添加量を0.25
重量%としたこと以外は、実験例1に示した内容と同様
の実験を行った。結果を表1に示す。
【0051】〔実験例3〕型から試験片を取り出し、2
時間後に光照射したこと以外は、実験例2と同様の実験
を実施した。結果を表1に示す。
【0052】〔比較例1〕平均粒子径50μm、平均分
子量25万のメチルメタクリレート/エチルメタクリレ
ート共重合体(モル比=3/2)100部、ベンゾイル
パーオキサイド0.5部をボールミルに入れ、10分間
混合して粉剤を調製した。
【0053】この粉剤2gと実験例1で使用した液剤1
gをポリエチレン容器内で混合し、実験例1と同様にし
て硬化時間を測定した。
【0054】同様の割合で混合した試料を25×25×
3mmのテフロン製型に充填し、上面をテフロン板で圧接
し、そのまま硬化させた。粉液混合開始から20分後に
型から試験片を取り出し、表面を800番の耐水研磨紙
で研磨し、アカシ微小硬度計を用いて表面硬度を測定し
た。また、硬化後の試験片の変形状態を、肉眼で観察し
た。結果を表1に示す。
【0055】〔比較例2〕比較例1で使用した粉剤と、
実験例2で使用した液剤を用いて、比較例1と同様の実
験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】〔比較例3〕メチルメタクリレート80
部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、トリ
メチロールプロパントリメタクリレート10部をビーカ
ーに入れ、10分間混合して液剤を調製した。
【0057】この液剤と、実験例1で使用した粉剤を用
いて、実験例1と同様の方法で実験を実施した。結果を
表1に示す。
【0058】表1の実験結果に示すように、本発明の実
験例1,2,3は充分な表面硬度が得られ、変形もほと
んど無いが、比較例1,2,3は表面硬度が低く、比較
例3では変形が非常に大きい。
【0059】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載する効果を奏する。ラジカル重
合可能なメタクリレート、ラジカル重合促進剤からなる
液剤と、メタクリレート重合体あるいは共重合体、ラジ
カル重合開始剤からなる粉剤の少なくとも一方に、光重
合開始剤を配合し、前記粉剤と液剤の混合物が常温下で
重合硬化した後に、可視光線を照射することにより光重
合反応を起こさせ、重合度を高めることにより、重合物
の物性、特に表面硬度をさらに向上させることが可能と
なる。このように、常温重合後に光重合を起こさせるた
め、常温での硬化時間を任意に設定でき、また、最低
限、常温重合による重合が保証され、表面の重合が阻害
されなく、厚肉の場合でも内部重合不良の心配がなく、
光が当たらない部分でも未重合とならないという利点が
得られる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラジカル重合可能なメタクリレート、ラ
    ジカル重合促進剤からなる液剤と、メタクリレート重合
    体あるいは共重合体、ラジカル重合開始剤からなる粉剤
    とで構成される常温硬化型の歯科用組成物において、 前記粉剤あるいは液剤の少なくとも一方に光重合開始剤
    を配合したことを特徴とする歯科用組成物。
  2. 【請求項2】 ラジカル重合可能なメタクリレート、ラ
    ジカル重合促進剤からなる液剤と、メタクリレート重合
    体あるいは共重合体、ラジカル重合開始剤からなる粉剤
    の少なくとも一方に、光重合開始剤を配合した組成物に
    おいて、 前記粉剤と液剤の混合物を常温下で重合硬化させた後に
    可視光線を照射し、光重合反応を起こさせることにより
    重合度を高めることを特徴とする歯科用組成物の重合硬
    化方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020050595A (ja) * 2018-09-26 2020-04-02 株式会社ジーシー 歯科パターンレジン用組成物

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