WO2024185687A1 - 含フッ素化合物 - Google Patents

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昌弘 東
諒 芥
達記 坂巻
俊 柴田
育男 山本
正人 柏木
礼生 松田
正樹 福森
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ダイキン工業株式会社
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Abstract

ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の活性水素含有基を有する化合物(a)から誘導された部分、及び Rf1又はRf2を有する化合物(b)から誘導された部分、 を有する、含フッ素化合物であって、 Rf1は-CF、-CFH、又は-CFHであり、 Rf2は-CF-又は-CFH-であり、 Rf1及びRf2は炭素数2以上のフルオロアルキル基の一部ではない、含フッ素化合物により、新たな含フッ素化合物を提供する。

Description

含フッ素化合物
 本開示は、含フッ素化合物に関する。
 ある種の非フッ素重合体は、基材の表面処理に用いると、耐油性を付与し得ることが知られている(特許文献1)。
国際公開第2020-054856号
 本開示は、新たな含フッ素化合物を提供することを目的とする。
 本開示は以下の態様を含む:
[項1]
 ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の活性水素含有基を有する化合物(a)から誘導された部分、及び
 Rf1又はRf2を有する化合物(b)から誘導された部分、
を有する、含フッ素化合物であって、
f1は-CF、-CFH、又は-CFHであり、
f2は-CF-又は-CFH-であり、
f1及びRf2は炭素数2以上のフルオロアルキル基の一部ではない、含フッ素化合物。
[項2]
前記Rf1の隣接位は酸素原子又は窒素原子であり、
前記Rf2の隣接位の少なくとも片方は酸素原子又は窒素原子である、項1に記載の含フッ素化合物。
[項3]
前記Rf1はCF-であり、
前記Rf2は-CF-である、
項1又は2に記載の含フッ素化合物。
[項4]
前記化合物(b)が、
式:
-Y-Z α
[式中、各記号は各出現において独立して、
は、Yf1及びYf2からなる群から選択される一以上から構成される1+α価の基であり、
f1は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、水素原子又は有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f2は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基であり、
αは1~3である。]
で表される基を有する、項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項5]
前記化合物(b)が、
式:
-Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
[式中、各記号は各出現において独立して、
f11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-であり、
f21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-からなる群から選択される一以上から構成される基であり(R’は水素原子又は有機基である。)、
βは、0~3であり、
f22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であり(R’は水素原子又は有機基である。)
は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基である。]
で表される基を有する、項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項6]
f22は、式
-Yf221-Yf222
[式中、
f221は、直接結合又は炭素数2~40の炭化水素基であり、
f222は、直接結合又はフェニル基である。]
で表される基であり、
f13は、-O-又は-NR’-(R’は水素原子又は有機基である。)であり、
βは、0又は1であり、
はRf1である、項5に記載の含フッ素化合物。
[項7]
前記化合物(b)が、活性水素反応性化合物;重合性単量体又はその重合体である、項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項8]
前記化合物(a)が天然物である、項1~7のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項9]
前記化合物(a)がポリオール、ポリアミン又はポリカルボン酸である、項1~8のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項10]
前記化合物(a)が単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール類、ヒドロキシ酸類、アミノ酸類、ビタミン類、フラボノール類、ヒドロキシ炭化水素類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体、有機酸、有機アミン、又は飽和/不飽和脂肪族炭化水素化合物である、項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項11]
前記化合物(a)が
 グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース;
 スクロース、シクロアミロース、シクロデキストリン、マルトース、トレハロース、ラクトース、スクラロース;
 ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ラクチトール;
 澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ジェランガム、タマリンドシードガム;
 アスコルビン酸、コウジ酸、キナ酸、クロロゲン酸、グルコン酸;
 グルコサミン;
 イノシトール;
 カテキン、ケルセチン、アントシアニン;
 グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;
 ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート重合体、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート重合体、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート重合体;
 クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、アルギン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アルダル酸;
 トリカルバリル酸、t-アコニット酸、トリメリット酸;
 ピロメリット酸;
アルキレンジアミン、アルキレントリアミン、芳香族ジアミン;
又は活性水素基を有する飽和/不飽和脂肪族炭化水素化合物である、項1~10のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項12]
含フッ素化合物のバイオベース度が20%以上である、項1~11のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項13]
重量平均分子量が1000以上である、項1~12のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項14]
重量平均分子量が1000未満である、項1~12のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項15]
-Y-Z 以外の修飾基として、一価の炭素数6以上40以下の炭化水素基を有する、
項1~14のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
[項16]
前記化合物(b)が、
式:
-Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
[式中、各記号は各出現において独立して、
f11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-であり、
f21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-からなる群から選択される一以上から構成される基であり(R’は水素原子又は有機基である。)、
βは、0~3であり、
f22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であり(R’は水素原子又は有機基である。)
は、-CFである。]
で表される基を有する化合物である、項11に記載の含フッ素化合物。
[項17]
項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物及び液状媒体を含む、分散液。
[項18]
項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物を含む、撥水撥油剤。
[項19]
繊維製品又は紙製品用である、項18に記載の撥水撥油剤。
[項20]
項18又は19に記載の撥水撥油剤で基材を処理する、処理された基材の製造方法。
[項21]
前記基材が繊維製品又は紙製品である、項20に記載の製造方法。
[項22]
項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物が付着した製品。
 本開示によれば、新たな含フッ素化合物を提供することができる。
<用語の定義>
 本明細書において用いられる場合、「n価の基」とは、n個の結合手を有する基、すなわちn個の結合を形成する基を意味する。また、「n価の有機基」とは、炭素を含有するn価の基を意味する。かかる有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖において、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ、ハロゲン等を有している基を意味する。
 本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-40炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、明示的に記載した場合、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
 本明細書において、「各出現において独立して」、「互いにそれぞれ独立して」、「それぞれ独立して」又はこれと同様の表現が明示的に記載されているか否かに関わらず、例外である旨の記載がある場合を除き、化学構造中に複数出現し得る用語(記号)が定義される場合、出現毎に独立して当該定義が適用される。
 本明細書において説明される化学構造は、当業者によって化学的に不可能または極めて不安定であると認識される化学構造を包含しないように理解されるべきである。
<含フッ素化合物>
 本開示における含フッ素化合物は、
 (a)ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の基を有する化合物から誘導された部分、及び
 (b)Rf1又はRf2を有する化合物から誘導された部分、
を有する。
 含フッ素化合物は、化合物(a)の有する活性水素と、化合物(b)の有する活性水素反応性基とが反応して形成されていてもよい。含フッ素化合物は、化合物(a)の分子鎖上の活性点から化合物(b)をグラフト重合させることにより、形成されていてもよい。
〔含フッ素化合物の特性等〕
 本開示における含フッ素化合物は、基材に付着して、基材に撥液性(例えば、撥油性、撥水性、耐油性、耐水性)を付与し得るものである。
 含フッ素化合物のHD(n-ヘキサデカン)接触角は10°以上、15°以上、25°以上、35°以上、40°以上、45°以上、55°以上、又は65°以上であってよく、好ましくは20°以上、特に30°以上であり、また、100°以下、90°以下、又は75°以下であってよい。含フッ素化合物が上記の下限以上のHD接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥油性)を付与し得る。HD接触角とは、含フッ素化合物のスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLのHDを滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
 含フッ素化合物の水接触角は20°以上、25°以上、30°以上、35°以上、40°以上、45°以上、50°以上、55°以上、65°以上、75°以上、85°以上、90°以上、又は100°以上であってよく、また、160°以下、140°以下、130°以下、120°以下、110°以下、100°以下、又は90°以下であってよい。含フッ素化合物が上記の下限以上の水接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥水性)を付与し得る。水接触角とは、含フッ素化合物のスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
 含フッ素化合物の融点又はガラス転移点(例えば融点)は、0℃以上、20℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、又は55℃以上であってよく、また、200℃以下、150℃以下、100℃以下、80℃以下、又は70℃以下であってよい。融点は、通常30℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、例えば75℃以上である。
 含フッ素化合物は、バイオベース起源の炭素を有する化合物であることが好ましい。バイオベース度は、ASTM D6866に準拠して測定される。含フッ素化合物のバイオベース度は、20%以上であってよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上または90%以上、例えば100%である。バイオベース度が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味しており、かかる観点において、含フッ素化合物のバイオベース度は高いほど好ましいといえる。
 本開示における含フッ素化合物は上述したRf又はRfを有する。一方で、本開示における含フッ素化合物は炭素数8以上のフルオロアルキル基、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基、炭素数4以上のフルオロアルキル基、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基、炭素数2以上のフルオロアルキル基、及び炭素数2以上のパーフルオロアルキル基からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。本開示における含フッ素化合物は、これらのフッ素含有基を含まなくても、基材に撥液性を付与し得る。なお、本明細書においてフルオロアルキル基とはアルキル基の各炭素原子における一以上の水素原子がフッ素原子に置換された基が意図されてよい。
 含フッ素化合物は、低分子(例えば重量平均分子量1500未満、1000未満、500以下)および/または高分子であってもよい。含フッ素化合物の重量平均分子量は、100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、1000以上、3000以上、5000以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、又は500000以上であってよく、また、1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、50000以下、30000以下、10000以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、3000以下、2000以下、1000以下、又は500以下であってよい。
 含フッ素化合物における活性水素の置換率は、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%であってよく、好ましくは10%以上、例えば30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、特に80%以上であり、また、100%以下、95%以下、85%以下、75%以下、65%以下、55%以下、45%以下、35%以下、25%以下、15%以下であってよく、例えば95%以下である。ここで、当該「置換率」とは、化合物(a)由来の活性水素のうち、修飾されている割合(mol%)を意味し、化合物(b)から誘導された構造により修飾されている割合(mol%)を意味してよい。
 含フッ素化合物における活性水素の残存率は、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であってよく、例えば5%以上であってよく、また、100%以下、95%以下、85%以下、75%以下、65%以下、55%以下、45%以下、35%以下、25%以下、15%以下、又は5%以下であってよく、例えば50%以下、30%以下、又は10%以下であってよい。ここで、当該「残存率」とは、化合物(a)由来の活性水素のうち、修飾されていない割合(mol%)を意味する。
 含フッ素化合物が有する修飾基の数は、2以上、5以上、7以上、10以上、15以上、30以上、又は50以上であってよく、また、20000以下、10000以下、5000以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、100以下、50以下、30以下、又は20以下であってよい。ここで、修飾基は、化合物(b)から誘導された部分であってよい。
 含フッ素化合物の修飾基当量は、100以上、150以上、250以上、350以上、450以上、550以上、650以上、750以上、又は1000以上であってよく、また、10000以下、5000以下、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、500以下、又は400以下であってよい。含フッ素化合物の重量平均分子量を修飾基の数で除した値である。ここで、修飾基は、化合物(b)から誘導された部分であってよい。
〔Rf1及びRf2
 含フッ素化合物は、Rf1又はRf2を有し、例えばRf1を有する。ここで、Rf1及びRf2は炭素数2以上のフルオロアルキル基の一部ではない。Rf2は-CH-CF-CH-の一部でなくてもよい。
 Rf1は-CF、-CFH、又は-CFHであり、好ましくは-CFである。Rf1の隣接位は酸素原子又は窒素原子であってよい。
 Rf2は-CF-又は-CFH-であり、好ましくは-CF-である。Rf2の隣接位の少なくとも片方は酸素原子又は窒素原子であってよい。
[化合物(a)]
 化合物(a)は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の活性水素含有基を有する化合物であり、含フッ素化合物の原料となる化合物である。化合物(a)は、脂肪族又は芳香族であってもよいが、好ましくは脂肪族である。ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の活性水素含有基を有する化合物は、天然物に由来する化合物が多く、含フッ素化合物のバイオベース度を高くしやすい。
 化合物(a)は、バイオベース起源の炭素を有する化合物であることが好ましい。バイオベース度は、ASTM D6866に準拠して測定される。含フッ素化合物のバイオベース度は、20%以上であってよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上または90%以上、例えば100%である。バイオベース度が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味しており、かかる観点において、化合物(a)のバイオベース度は高いほど好ましいといえる。
 化合物(a)は、低分子(例えば重量平均分子量1000未満、500以下)および/または高分子であってもよい。化合物(a)の重量平均分子量は、100以上、300以上、500以上、1000以上、3000以上、5000以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、又は500000以上であってよく、また、5000000以下、3000000以下、1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、50000以下、30000以下、10000以下、5000以下、3000以下、2000以下、1000以下、又は500以下であってよい。
 化合物(a)が有する活性水素含有基の数は、2以上、5以上、7以上、10以上、15以上、30以上、50以上、又は100以上であってよく、また、20000以下、10000以下、5000以下、3000以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、100以下、50以下、30以下、又は20以下であってよい。であってよい。
 化合物(a)の活性水素含有基当量は、20以上、40以上、60以上、80以上、100以上、120以上、150以上であってよく、また、20000以下、10000以下、5000以下、1000以下、800以下、600以下、400以下、200以下、100以下、又は75以下であってよい。化合物(a)の活性水素含有基当量は、化合物(a)の重量平均分子量を活性水素含有基の数で除した値である。
 化合物(a)は、天然物であってもよい。化合物(a)は、高分子天然物、低分子天然物またはこれらの誘導体であってよい。上記天然物の中に微生物から変換された化合物も含む。
 化合物(a)は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される活性水素含有基を1つ有する化合物であってもよいが、複数有しているポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、又はポリチオールであることが好ましい。化合物(a)はポリチオール以外であってもよい。
 化合物(a)の例としては、単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール類(還元糖)、ヒドロキシ酸類、アミノ酸類、ビタミン類、フラボノール類、その他多価アルコール類、ヒドロキシ基含有化合物重合体、ポリカルボン酸、ポリアミン、ポリワックス類等が挙げられるが、これらに限定されない。
 単糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース等が挙げられる。
 オリゴ糖類の例としては、スクロース、シクロアミロース、シクロデキストリン、マルトース、トレハロース、ラクトース、スクラロース等が挙げられる。
 糖アルコール類(還元糖)の例としては、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、グリセリン、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ラクチトール等が挙げられる。
 多糖類の例としては、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ジェランガム、タマリンドシードガム等が挙げられる。
 ヒドロキシ酸類の例としては、コウジ酸、キナ酸、クロロゲン酸、グルコン酸等が挙げられる。
 アミノ酸類の例としては、グルコサミン等が挙げられる。
 ビタミン類の例としては、アスコルビン酸、イノシトール等が挙げられる。
 フラボノール類の例としては、カテキン、ケルセチン、アントシアニン等が挙げられる。
 ヒドロキシ炭化水素類の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等が挙げられる。ヒドロキシ炭化水素は、ヒドロキシ基を有する炭化水素であり、芳香族又は脂肪族であってもよいが、好ましくは脂肪族である。ヒドロキシ炭化水素というとき、多糖類等の他のグループに含まれる化合物以外のヒドロキシ炭化水素類(その他のヒドロキシ炭化水素類)を意味してもよい。
 ヒドロキシ基含有化合物重合体の例としては、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート重合体、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート重合体、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート重合体等が挙げられる。
 ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、アルギン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アルダル酸;トリカルバリル酸、t-アコニット酸、トリメリット酸;ピロメリット酸、イタコン酸等が挙げられる。ポリカルボン酸は、(メタ)アクリル酸等の重合性化合物を重合したものであってもよい。
 ポリアミンの例としては、アルキレンジアミン、アルキレントリアミン、芳香族ジアミン等が挙げられ、具体例として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、1,3-ビス(アミノメチルシクロヘキサン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4'-メチレンビス [N-(1-メチルプロピル)アニリン]、アミノベンジルアミン、ビス [2-(4-アミノフェニル)-2-プロピルベンゼン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-メチレンビス [N-(1-メチルプロピル)アニリン]、トリメチレン-ビス (4-アミノベンゾアート)、ジエチレントリアミン、2,2'-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリス (2-アミノエチル)アミン等が挙げられる。ポリアミンは、アリルアミン等の重合性化合物を重合したものであってもよい。
 活性水素基を有する飽和/不飽和脂肪族炭化水素化合物の例としては脂肪族アルコール、アミド基含有脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ酸、脂肪族チオール等が挙げられる。
[化合物(b)]
 化合物(b)は、Rf1又はRf2を有する化合物である。化合物(b)は、化合物(a)の有する活性水素、又は活性水素含有基と反応できる活性水素反応性基を有していてもよい。また、化合物(b)は、重合性(グラフト重合性)を有してもよく、例えばエチレン性不飽和重合性基を有していてもよい。
 化合物(b)は、
式:
-Y-Z α
[式中、各記号は各出現において独立して、
は、Yf1及びYf2からなる群から選択される一以上から構成される1+α価の基であり、
f1は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は水素原子又は有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f2は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基であり、
αは1~3である。]
で表される基を有してもよい。
 Rf1は例えば、Zに含まれてよい。Rf2は、例えば、有機基、Yf2、Z、Rf2に含まれていてよい。
 -Y-Z αのYの末端において酸ハロゲン化物、酸無水物、カルボン酸、イソシアネート、チオイソシアネート、エポキシ、ハロゲン化物、アミン、ヒドロキシ等の化合物(a)の活性水素基と反応性を有する基を形成していてもよい。例えば、化合物(b)は、
-Y-Z α
で表されてもよい。ここで、Xは化合物(a)の活性水素基と反応性を有する基を形成する基である。例えばX単独で、当該基を形成してもよいし、Yと共同で当該基を形成してもよい。
 重合性を有する化合物(b)は、
CH2=C(-X)-Y-Z α 
[式中、各記号は各出現において独立して、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
その他は上記で説明したとおりである。]
で表される化合物であってもよい。ここで、Xは、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子である。Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基又は塩素原子であることが好ましい。重合性を有する化合物(b)は、アクリル単量体、スチレン単量体又はアリル単量体等のエチレン性不飽和重合性化合物であってよい。
 ただし、化合物(b)は上記構造に限定されず、化合物(b)、特に活性水素反応性基を有する化合物(b)又は重合性を有する化合物(b)における任意の部分を-Y-Z αが構成していてもよい。
(Y
 Yは、Yf1及びYf2からなる群から選択される一以上から構成される1+α価の基であり、
f1は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(R’は水素原子又は一価の有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f2は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基である。
 Yの分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、500以上、又は750以上であってよく、また、3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、200以下、100以下、又は50以下であってよい。
 以下にて、Yf1及びYf2について説明する。
○ Yf1
 Yf1は、非炭化水素のリンカーである。
 Yf1は、直接結合若しくは二価以上の基である。Yf1の価数は2~4、2~3、又は2であってよい。Yf1は直接結合のみでないことが好ましい。
 Yf1の分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよく、また、1000以下、750以下、500以下、300以下、200以下、100以下、又は50以下であってよい。
 Yf1は、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は一価の有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される。
 R’は、水素原子、一価の有機基である。有機基は例えば、炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の脂肪族基又は芳香族基(例えば、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基)であってよい。本明細書中、その他のR’についても同様であってよい。
 Yf1の例としては、
直接結合、
-O-、
-O-C(=O)-、
-O-C(=O)-O-、
-O-C(=O)-NR’-、
-NR’-、
-NR’-C(=O)-、
-NR’-C(=O)-O-、
-NR’-C(=O)-NR’-、
-C(=O)-、
-C(=O)-O-、
-C(=O)-NR’-、
-SO-、
-SONR’-、
-C(OR’)R’-、
-C(OR’)(-)
(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は一価の有機基である。)
が挙げられる。
○ Yf2
 Yf2は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であってよい。
 Yf2は、二価以上の基である。Yf2の価数は例えば、2~4、2~3、又は2であってよい。
 Yf2の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であってよく、また、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、又は5以下であってよい。
 Yf2の分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよく、また、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、200以下、100以下、又は50以下であってよい。
 Yf2は炭化水素基又は非炭化水素基(ヘテロ原子を含む)であってよい。Yf2は脂肪族又は芳香族であってよい。Yf2は直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。
 Yf2は、置換基を有してもよい炭化水素又は置換基を有してもよい炭化水素芳香環又は置換基を有してもよいヘテロ環のリンカー、又はこれらの組み合わせであってよい。例えば、Yf2は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成されてよい。
 2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、環状、分岐鎖、又は直鎖の炭化水素基であってよい。2~4価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和(例えば飽和)の脂肪族炭化水素基であってよい。炭素数1~20の脂肪族炭化水素基の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、又は10以上であってよく、また、15以下、10以下、又は5以下であってよい。脂肪族炭化水素基の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。
 脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、一価の有機基である)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する脂肪族炭化水素基において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上であり、また、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
 2~4価の炭化水素芳香環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ピレン、及びコロネン等の炭化水素芳香環から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。炭化水素芳香環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。炭化水素芳香環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、また、4以下、3以下、又は2であってよい。
 炭化水素芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-R’、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は一価の有機基である)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する炭化水素芳香環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上であり、また、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
 2~4価のヘテロ環は、脂肪族基又は芳香族基であってよい。2~4価のヘテロ環の例としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン等から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。ヘテロ環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。ヘテロ環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、また、4以下、3以下、又は2であってよい。
 ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-R’、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は一価の有機基である)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有するヘテロ環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、例えば65mol%以上であり、また、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以以下であってよい。
 Yf2の例としては、
-Ali-
-Cy-
-Ali(-)
-Cy(-)
(-)Ali-
(-)Cy-
(-)Ali(-)
(-)Cy(-)
-Ali-Cy-
-Cy-Ali-
-Cy-Ali-Cy-
-Ali-Cy-Ali-
[式中、Aliは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である。]
等が挙げられる。
 Yf2の具体例としては、
-(CH-(pは1~20、例えば1~10である)、
炭素数1~40、例えば1~10の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、
炭素数1~40、例えば1~10の枝分かれ構造を有する炭化水素基、
-(CH-Cy-(CH-(q及びrはそれぞれ独立して0~20、例えば1~10であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である)
等が挙げられる。
○ Yの例
 Yの例を説明する。
 Yの例としては、Yが二価の場合、-Yf1-、-Yf1-Yf2-、-Yf1-Yf2-Yf1-、-Yf1-Yf2-Yf1-Yf2-、-Yf2-、-Yf2-Yf1-、-Yf2-Yf1-Yf2-、-Yf2-Yf1-Yf2-Yf1-等が挙げられる。Z αに隣接する基はYf1であってよい。
 Yの例としては、Yが三価の場合、-Yf1(-)、-Yf1-Yf2(-)、-Yf1-(Yf2-)、-Yf1-Yf2-Yf1(-)、-Yf1-Yf2(-Yf1-)、-Yf1-(Yf2-Yf1-)、-Yf1-Yf2-Yf1-Yf2(-)、-Yf1-Yf2-Yf1-(Yf2-)2、-Yf1-Yf2-(Yf1-Yf2-)2、-Yf1-(Yf2-Yf1-Yf2-)
-Yf2(-)、-Yf2-Yf1(-)、-Yf2-(Yf1-)、-Yf2-Yf1-Yf2(-)、-Yf2-Yf1(-Yf2-)、-Yf2-(Yf1-Yf2-)、-Yf2-Yf1-Yf2-Yf1(-)、-Yf2-Yf1-Yf2-(Yf1-)2、-Yf2-Yf1-(Yf2-Yf1-)2、-Yf2-(Yf1-Yf2-Yf1-)等が挙げられる。
 Yの例としては、Yが4価の場合、-Yf1(-)、-Yf1-Yf2(-)、-Yf1-(Yf2-)、-Yf1-Yf2-Yf1(-)、-Yf1-Yf2(-Yf1-)、-Yf1-(Yf2-Yf1-)、-Yf1-Yf2-Yf1-Yf2(-)、-Yf1-Yf2-Yf1-(Yf2-)3、-Yf1-Yf2-(Yf1-Yf2-)3、-Yf1-(Yf2-Yf1-Yf2-)
-Yf2(-)、-Yf2-Yf1(-)、-Yf2-(Yf1-)、-Yf2-Yf1-Yf2(-)、-Yf2-Yf1(-Yf2-)、-Yf2-(Yf1-Yf2-)、-Yf2-Yf1-Yf2-Yf1(-)、-Yf2-Yf1-Yf2-(Yf1-)3、-Yf2-Yf1-(Yf2-Yf1-)3、-Yf2-(Yf1-Yf2-Yf1-)等が挙げられる。
 Yの好ましい例としては
-Yf1-、-Yf1-Yf2-、-Yf1-Yf2-Yf1-、-Yf1-Yf2(-)
-Yf2-、-Yf2-Yf1-、-Yf2-Yf1-Yf2-、-Yf2-Yf1(-)等が挙げられる。
(Z
 Zは、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基であり、例えばRf1である。Rf1又はRf2を含む炭化水素基は、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよく、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。Rf1又はRf2を含む炭化水素基は、分岐鎖状又は直鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。Rf1又はRf2を含む炭化水素基は、飽和又は不飽和であってよい。Rf1又はRf2を含む炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。Rf1又はRf2を含む炭化水素基の炭素数は、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、20以上、又は22以上であってよく、好ましくは10以上、12以上、14以上、又は16以上であり、また、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよく、好ましくは30以下、25以下、又は20以下である。
(α)
 αは1~3(1、2、又は3)であり、例えば1又は2、例えば1である。
(化合物(b)の例)
 化合物(b)は、
式:
-Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
[式中、各記号は各出現において独立して、
f11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-であり、
f21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-、からなる群から選択される一以上から構成される基であり(R’は水素原子又は有機基である。)、
βは、0~3であり、
f22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
f13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であり(R’は水素原子又は有機基である。)
は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基である。]
で表される基を有する化合物であってよい。
 Yf11側の末端において酸ハロゲン化物、酸無水物、イソシアネート、エポキシ等の活性水素反応性基を形成していてもよい。
 Yf11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-である。
 Yf21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であってよく、上述のYf2と同様の説明を援用できる。ただし、Yf21は2価の基である。
 Yf12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-からなる群から選択される一以上から構成される基であってよく、上述のYf1と同様の説明を援用できる。ただし、Yf12は2価の基である。
 βは0~3(0、1、2、又は3)であってよく、例えば0~2、特に0~1である。
 Yf22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であってよく、上述のYと同様の説明を援用できる。ただし、Yf22は2価の基である。Yf22は、式
-Yf221-Yf222
[式中、
f221は、直接結合又は炭素数2~40の炭化水素基であり、
f222は、直接結合又はフェニレン基である。]
で表される基であってよい。ここで、炭化水素基は、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよく、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってよい。炭化水素基は、分岐鎖状又は直鎖状であり、例えば直鎖状である。炭化水素基は、飽和又は不飽和であってよい。炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってよい。炭化水素基の炭素数は、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、20以上、又は22以上であってよく、また、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよい。
 Yf13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であってよい(R’は水素原子又は一価の有機基である。)。Yf13は例えば-O-又は-NR’-である。
 Zは、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基であり、上記において説明したとおりであり、特にRf1である。
 あるいは、化合物(b)が重合性の場合、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z、又は
CH2=C(-X)-CH-Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
[式中、各記号は各出現において独立して、
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、他は上記のとおりである。]
で表されるアクリル単量体又はアリル単量体であってよい。
 一態様において、
f22は、式
-Yf221-Yf222
[式中、
f221は、直接結合又は炭素数2~40の炭化水素基であり、
f222は、直接結合又はフェニレン基である。]
で表される基であってよい。
ここで、Yf13は、-O-又は-NR’-(R’は水素原子又は一価の有機基である。)であってよい。βは、0又は1であってよい。ZはRf1であってよい。
(化合物(b)の具体例)
 化合物(b)の具体例は次のとおりである:
酸ハロゲン化物       G(O=)C-Y-Z α
酸無水物        O(C(=O)-Y-Z α
カルボン酸       HO(O=)C-Y-Z α
イソシアネート     O=C=N-Y-Z α
チオイソシアネート   S=C=N-Y-Z α
エポキシ        (CHOCH)CHO-Y-Z α
ハロゲン化物       G-Y-Z α
アミン         HN-Y-Z α
ヒドロキシ       HO-Y-Z α
[式中、Y、Z、αは上述のとおりであり、Gはハロゲン原子(例えばF、Cl、Br、又はI)である。]
 なお、上記式は、Y-Z αに隣接する末端の官能基(G(O=)C等)は、-Y-に含まれないものとして表現しているが、当該末端の官能基の構造の一部(例えば(O=)C)をYに組み込んだ記載として表現し直すことも可能である。
 化合物(b)の具体例としては、上記具体例に挙げた化合物と、エチレン性不飽和重合性基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリルクロライド、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、α-エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアミン、アリルアルコール等)とを反応して得られる、重合性の化合物(b)又はその重合体も挙げられる。
 化合物(b)のより具体的な例としては、(例えば上記具体例で挙げた式において)-Y-Z α
-Ali-O-Rf1
-Ali-Cy-O-Rf1
-Ali-Cy-Ali-O-Rf1
-Cy-O-Rf1
-Cy-Ali-O-Rf1
-Cy-Ali-Cy-O-Rf1
-Ali-N(R’)-Rf1
-Ali-Cy-N(R’)-Rf1
-Ali-Cy-Ali-N(R’)-Rf1
-Cy-N(R’)-Rf1
-Cy-Ali-N(R’)-Rf1
-Cy-Ali-Cy-N(R’)-Rf1
[式中、Aliは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である。R’は水素原子又は有機基である。Rf1は-CF、-CFH、又は-CFHである。]
である化合物であり、
 化合物(b)のより具体的な例としては、(例えば上記具体例で挙げた式において)-Y-Z α
-(CHn-O-Rf1
-(CHn-Cy-O-Rf1
-(CHn-Cy-(CHn-O-Rf1
-Cy-O-Rf1
-Cy-(CHn-O-Rf1
-Cy-(CHn-Cy-O-Rf1
-(CHn-N(R’)-Rf1
-(CHn-Cy-N(R’)-Rf1
-(CHn-Cy-(CH)n-N(R’)-Rf1
-Cy-N(R’)-Rf1
-Cy-(CHn-N(R’)-Rf1
-Cy-(CHn-Cy-N(R’)-Rf1
[式中、nは1~40の整数であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環であり、R’は水素原子又は有機基であり、Rf1は-CF、-CFH、又は-CFHである。]
ある化合物等が挙げられる。
 化合物(b)のより具体的な例としては、
トリフルオロメトキシアルキルカルボン酸、トリフルオロメトキシアルキルカルボン酸ハロゲン化物、
トリフルオロメトキシ安息香酸、トリフルオロメトキシ安息香酸ハロゲン化物、
トリフルオロメトキシフェニル酢酸、トリフルオロメトキシフェニル酢酸ハロゲン化物、
トリフルオロメトキシアルキルアミン、
トリフルオロメトキシアニリン、
トリフルオロメトキシアルキルアルコール、
トリフルオロメトキシフェノール、
トリフルオロメトキシアルキルイソシアネート
CF-O-CF-R-OH
CF-O-R-O-CF-R-OH
CF-O-R-CF-O-R-OH
CF-O-Ph-O-CF-R-OH
CF-O-Ph-CF-O-R-OH
-O-CF-R-OH
-CF-O-R-OH
(ここで、R~Rは独立して炭素数1~40の炭化水素基である。)
等が挙げられる。
[化合物(b)の製造方法の例]
 本方法では水酸基とオレフィンを有する化合物(111):HO-Rj33-CH=CHを原料として用い、トリフルオロメトキシ基含有化合物を合成する。ここで、Rj33は、アルキレン基、例えば、C1-30アルキレン基である。
 オレフィン基含有化合物としては、例えば3-ヒドロキシプロペン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、5-ヒドロキシ-1-ペンテン、6-ヒドロキシ-1-ヘキセン、7-ヒドロキシ-1-ヘプテン、8-ヒドロキシ-1-オクテン、9-ヒドロキシ-1-ノネン、10-ヒドロキシ-1-デケン、11-ヒドロキシ-1-ウンデケン、12-ヒドロキシ-1-ドデケン、13-ヒドロキシ-1-トリデケン、14-ヒドロキシ-1-テトラデケン、15-ヒドロキシ-1-ペンタデケン、16-ヒドロキシ-1-ヘキサデケン、17-ヒドロキシ-1-ヘプタデケン、18-ヒドロキシ-1-オクタデケン、19-ヒドロキシ-1-ノナデケン、20-ヒドロキシ-1-イコセン、21-ヒドロキシ-1-ヘンイコセン、24-ヒドロキシ-1-テトラコセン、30-ヒドロキシ-1-トリアコンテンなどが挙げられる。
 化合物(111)の水酸基に、水素化ナトリウムなどの塩基存在下で二硫化炭素を作用させ、ヨードメタンを加えることで、キサントゲン酸エステル(112):HCS-C(=S)-O-Rj33-COORj32が得られる。ここで、Rj32は、低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基であり、具体的にはメチル基、tert-ブチル基である。上記キサントゲン酸エステル(102)に対してフッ化水素ピリジンと1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインを作用させることで目的とするトリフルオロメトキシ基含有化合物(113):FCO-Rj33-CH=CHを得る。
 また、別法として、化合物(111)の水酸基に、フッ化セシウム、テトラブチルアンモニウムブロミドなどの存在下、NMP、DMF、HMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)などの非プロトン極性溶媒中、アリールスルホン酸トリフルオロメチルエステルを作用させることで、目的とするトリフルオロメトキシ基含有化合物(113):FCO-Rj33-CH=CHを得る。
 得られたFCO-Rj33-CH=CHは定法によりFCO-Rj33CHCH-OHとできる。さらにエチレン性不飽和重合性基を有する化合物と反応させてよい。例えば、(メタ)アクリル酸との反応により(メタ)アクリレート単量体を合成することができる。イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレートと反応させることにより、ウレタン基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを合成することができる。アルコールとアクリル酸メチルを塩基性触媒(たとえば水酸化カルシウム)存在下、反応を行い、含フッ素アクリレートを得てもよい。
 ここで、FCO-Rj33CHCH-OHの他の製造方法としては、WO2020/168011Al等に記載されるように、銀トリフラート、フッ化カリウム、1-(クロロメチル)-4-フルオロ-4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラフルオロボレートの塩、および、ベンジルオキシアルコール(例えば、ベンジルオキシエタノール)を反応させ、得られる生成物(例えば[2-(トリフルオロメトキシ)エトキシ]メチル]ベンゼン)を、パラジウム触媒下水素還元を行うことにより、合成する方法も可能である。FCO-Rj33CHCH-OHは、さらには(メタ)アクリル酸との反応により(メタ)アクリレート単量体を合成することができる。イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレートと反応させることにより、ウレタン基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを合成することができる。アルコールとアクリル酸メチルを塩基性触媒(たとえば水酸化カルシウム)存在下、反応を行い、含フッ素アクリレートを得てもよい。
[その他部分]
 含フッ素化合物が上述した構造以外に、化合物(a)に対する修飾基(例えば-Y-Z 以外の修飾基)を有していてもよい。修飾基の例は、アニオン性基、カチオン性基、一価の炭素数2以上40以下の炭化水素基である。
 アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を有する単量体が挙げられる。
 アニオン性基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、例えばメチルアンモニウム塩、エタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩などが挙げられる。
 カチオン性基としては、アミノ基、好ましくは、三級アミノ基及び四級アミノ基である。三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C H -CH -))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C-CH-))であることが好ましい。三級アミノ基及び四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。カチオン性基は塩の形でもよい。 
 塩であるカチオン性基は、酸(有機酸又は無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1~20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。
 一価の炭素数2以上40以下の炭化水素基は、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよく、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってよい。炭化水素基は、分岐鎖状又は直鎖状であり、例えば直鎖状である。炭化水素基は、飽和又は不飽和であってよい。炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってよい。炭化水素基の炭素数は、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、20以上、又は22以上であってよく、また、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよい。
〔含フッ素化合物の製造方法〕
 含フッ素化合物は、化合物(a)と化合物(b)とを反応させることにより得ることができる。反応条件は当業者であれば適宜決定できる。化合物(a)の有する活性水素と、化合物(b)の有する活性水素反応性基とを反応させて含フッ素化合物を形成してもよい。或いは、化合物(a)の存在下、適切な触媒(例えばCe4+、V5+、Cr6+及びMn 3+から選択された多価のイオン)とともに化合物(b)をグラフト重合させることにより、形成されていてもよい。例えば、当業者周知のGrafting-to法、Grafting-from法等を用いることができる。グラフト重合については、教科書「重合の原理」(G.G.Odian、Wiley Interscience、1991年、第三版、715-725ページ)等を参考にできる。
<撥水撥油剤>
 本開示における撥水撥油剤は基材(例えば、繊維基材、紙基材)に撥液性(撥水性、撥油性、耐油性、及び/又は耐水性)を付与するものであり、撥水剤、撥油剤、耐油剤、及び耐水剤からなる群から選択される少なくとも一として機能し得る。本開示における撥水撥油剤は、基材に耐油性(撥油性)及び/又は耐水性(撥水性)を良好に付与し得、例えば耐油性と耐水性の両方を良好に付与し得る。
〔含フッ素化合物〕
 本開示の撥水撥油剤は、上述した含フッ素化合物を含む。含フッ素化合物自体を撥水撥油剤として使用してもよいし、下記に説明するようなその他の成分と組み合わせて撥水撥油剤として使用してもよい。
 本開示における撥水撥油剤は上述したRf又はRfを有する含フッ素化合物を含む。一方で、本開示における撥水撥油剤は炭素数8以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数2以上のフルオロアルキル基を有する化合物、及び炭素数2以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。本開示における撥水撥油剤は、これらのフッ素化合物を含まなくても、基材に撥液性を付与し得る。なお、本明細書においてフルオロアルキル基とはアルキル基の各炭素原子における一以上の水素原子がフッ素原子に置換された基が意図されてよい。
[含フッ素化合物の量]
 含フッ素化合物の量は、撥水撥油剤中、0.01重量%以上、0.03重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上であってよく、また、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は3重量%以下であってよい。含フッ素化合物自体を撥水撥油剤として用いてもよい。
〔その他の撥水撥油剤成分〕
 本開示の撥水撥油剤は、その他の撥水撥油剤成分を含有してもよい。その他の撥水撥油剤としては公知の撥水撥油剤を使用することができ、例えば非フッ素の撥水撥油剤成分であってよい。非フッ素の撥水撥油剤成分の例としては、例えばWO/2020/054856、WO/2017/159754、WO/2020/162547等に記載されるアクリル重合体、特表2016-524628、特表2017-533976、特表2017-504730、WO/2021/132170、WO/2021/132172等に記載されるようなポリウレタン、WO/2022/065382、及びWO/2022/065385等に記載されるような天然物修飾体等が挙げられるがこれらに限定されない。
〔その他撥水撥油剤成分の量〕
 その他撥水撥油剤成分の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、又は1重量部以下であってよい。
〔分散剤〕
 本開示の撥水撥油剤は、分散剤を含んでもよい。
 分散剤は、有機分散剤及び無機分散剤から選択される。少なくとも一種であってよい。分散剤は、非アニオン性であってよく、ノニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤、及び無機分散剤から選択される少なくとも一種であってよい。撥水撥油剤がアニオン性分散剤を含まなくてもよい。
 分散剤は有機分散剤及び無機分散剤のそれぞれを用いてもよいし、有機分散剤及び無機分散剤の組み合わせであってもよい。
 分散剤として有機分散剤を用いてもよい。有機分散剤はノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤に分類でき、有機分散剤は界面活性剤を意味してよい。
 分散剤は非フッ素であってもよい。
[ノニオン性分散剤]
 分散剤はノニオン性分散剤を含んでいてもよい。ノニオン性分散剤はノニオン性界面活性剤であってよい。
 ノニオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であってよく、また、100000以下、50000以下、25000以下、10000以下、7500以下、5000以下、2500以下、1000以下、750以下、又は250以下であってよい。
 ノニオン性分散剤の例としては、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、ポリオール及びアミンオキシドが挙げられる。
 エーテルの例は、オキシアルキレン基(好ましくは、ポリオキシエチレン基)を有する化合物である。
 エステルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルである。アルコールの例は、1~6価(特に2~5価)の炭素数1~50(特に炭素数10~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
 エステルエーテルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルに、アルキレンオキシド(特にエチレンオキシド)を付加した化合物である。アルコールの例は、1~6価(特に2~5価)の炭素数1~50(特に炭素数3~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
 アルカノールアミドの例は、脂肪酸とアルカノールアミンから形成されている。アルカノールアミドは、モノアルカノールアミド又はジアルカノールアミノであってよい。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。アルカノールアミンは、1~3のアミノ基及び1~5ヒドロキシル基を有する炭素数2~50、特に5~30のアルカノールであってよい。
 ポリオールは、2~5価の炭素数10~30のアルコールであってよい。
 アミンオキシドは、アミン(二級アミン又は好ましくは三級アミン)の酸化物(例えば炭素数5~50)であってよい。
 ノニオン性分散剤は、オキシアルキレン基(好ましくはポリオキシエチレン基)を有するノニオン性分散剤であることが好ましい。オキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2~10であることが好ましい。ノニオン性分散剤の分子におけるオキシアルキレン基の数は、一般に、2~100であることが好ましい。
 ノニオン性分散剤は、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、ポリオール及びアミンオキシドからなる群から選択されており、オキシアルキレン基を有するノニオン性分散剤であることが好ましい。
 ノニオン性分散剤は、直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基のアルキレンオキシド付加物、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のポリアルキレングリコールエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のソルビタンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のグリセリンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のポリグリセリンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のショ糖エステル、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体)、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加物等であってよい。これらの中で、アルキレンオキシド付加部分及びポリアルキレングリコール部分の構造がポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)又はPOE/POP共重合体(ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってよい)であるものが好ましい。
 また、ノニオン性分散剤は、芳香族基を含まなくてもよい。
 ノニオン性分散剤は、式:
   R1O-(CHCHO)p-(R2O)q-R3
[式中、R1は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基又はアシル基であり、
2のそれぞれは、独立的に同一又は異なって、炭素数3以上(例えば、3~10)のアルキレン基であり、
3は水素原子、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基であり、
pは2以上の数であり、
qは0又は1以上の数である。]
で示される化合物であってよい。
 R1は、炭素数8~20、特に10~18であることが好ましい。R1の好ましい具体例としては、ラウリル基、トリデシル基、オレイル基が挙げられる。
 R2の例は、プロピレン基、ブチレン基である。
 ノニオン性分散剤において、pは3以上の数(例えば、5~200)であってよい。qは、2以上の数(例えば5~200)であってよい。すなわち、-(R2O)q-がポリオキシアルキレン鎖を形成してもよい。
 ノニオン性分散剤は、中央に親水性のポリオキシエチレン鎖と疎水性のオキシアルキレン鎖(特に、ポリオキシアルキレン鎖)を含有したポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルであってよい。疎水性のオキシアルキレン鎖としては、オキシプロピレン鎖、オキシブチレン鎖、スチレン鎖等が挙げられるが、中でも、オキシプロピレン鎖が好ましい。
 ノニオン性分散剤の具体例には、エチレンオキシドとヘキシルフェノール、イソオクタチルフェノール、ヘキサデカノール、オレイン酸、アルカン(C12-C16)チオール、ソルビタンモノ脂肪酸(C-C19)又はアルキル(C12-C18)アミン等との縮合生成物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン誘導体等が包含される。
 ポリオキシエチレンブロックの割合がノニオン性分散剤(コポリマー)の分子量に対して5~80重量%、例えば30~75重量%、特に40~70重量%であることができる。
 ノニオン性分散剤の平均分子量は、一般に300~5,000、例えば、500~3,000である。
 ノニオン性分散剤は、一種単独であってよく、あるいは二種以上の混合物であってもよい。ノニオン分散剤は、HLB(親水性疎水性バランス)が15未満(特に5以下)である化合物とHLBが15以上である化合物の混合物であってよい。
[カチオン性分散剤]
 分散剤はカチオン性分散剤を含んでいてもよい。カチオン性分散剤は、カチオン性界面活性剤であってよい。カチオン性分散剤は低分子型(例えば、分子量2000以下、特に10000以下)であってもよいし、高分子型(例えば、分子量2000以上)であってもよい。カチオン性分散剤は、アミド基を有しない化合物であってもよい。
 カチオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であってよく、また、100000以下、50000以下、25000以下、10000以下、7500以下、5000以下、2500以下、1000以下、750以下、又は250以下であってよい。
 カチオン性分散剤は、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩であってよい。カチオン性分散剤の具体例としては、特に限定されないが、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型分散剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型分散剤等が挙げられる。
 カチオン性分散剤の好ましい例は、
 R21-N(-R22)(-R23)(-R24)X
[式中、R21、R22、R23及びR24は炭素数1~40の炭化水素基、
Xはアニオン性基である。]
で表される化合物である。
 R21、R22、R23及び-R24の具体例は、アルキル基(例えば、メチル基、ブチル基、ステアリル基、パルミチル基)である。Xの具体例は、ハロゲン(例えば、塩素)、酸(例えば、塩酸、酢酸)である。
 カチオン性分散剤は、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(アルキルの炭素数4~40)であることが特に好ましい。
 カチオン性分散剤は、アンモニウム塩であることが好ましい。カチオン性分散剤は、式:
 R -N
[式中、RはC12以上(例えばC12~C50)の直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基、
はH又はC1~4のアルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基(オキシエチレン基の数例えば1(特に2、特別には3)~50)
(CH、Cが特に好ましい)、
Xはハロゲン原子(例えば、)、C~Cの脂肪酸塩基、
pは1又は2、qは2又は3で、p+q=4である。]
で示されるアンモニウム塩であってよい。Rの炭素数は、12~50、例えば12~30であってよい。
 カチオン性分散剤の具体例には、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が包含される。
[アニオン性分散剤]
 分散剤はアニオン性分散剤を含んでいてもよい。アニオン性分散剤はアニオン性界面活性剤であってよい。分散剤はアニオン性分散剤を含まなくてもよい。
 アニオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であってよく、また、100000以下、50000以下、25000以下、10000以下、7500以下、5000以下、2500以下、1000以下、750以下、又は250以下であってよい。
 アニオン性分散剤の例としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型分散剤、リン酸モノ又はジエステル型分散剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。
[両性分散剤]
 分散剤は両性分散剤を含んでいてもよい。両性分散剤は、両性界面活性剤であってよい。
 両性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であってよく、また、100000以下、50000以下、25000以下、10000以下、7500以下、5000以下、2500以下、1000以下、750以下、又は250以下であってよい。
 両性分散剤の例としては、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられ、具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
[無機分散剤]
 分散剤は無機分散剤を含んでいてもよい。
 無機分散剤の平均一次粒子径は、5nm以上、30nm以上、100nm以上、1μm以上、10μm以上、又は25μm以上であってよく、また、100μm以下、50μm以下、10μm以下、1μm以下、500nm以下、又は300nm以下であってよい。平均一次粒子径は例えば顕微鏡(走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡)による観察で測定することができる。無機分散剤は親水性粒子であってもよい。
 無機分散剤の例としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等のリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;メタケイ酸カルシウム等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物等が挙げられる。
[分散剤の量]
 分散剤の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、又は1重量部以下であってよい。
〔液状媒体〕
 本開示における撥水撥油剤は、液状媒体を含んでもよい。液状媒体は水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物であってよい。撥水撥油剤は分散液又は溶液であってよい。本開示における撥水撥油剤は、水分散型であってよく、少なくとも水を含んでよい。
 有機溶媒の例は、エステル(例えば、炭素数2~40のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~40のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~40のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、芳香族系溶剤(例えば、トルエン及びキシレン)、石油系溶剤(例えば、炭素数5~10のアルカン、具体的には、ナフサ、灯油)である。有機溶媒は水溶性有機溶媒であることが好ましい。水溶性有機溶媒は少なくとも一のヒドロキシ基を有している化合物(例えば、アルコール、グリコール系溶媒等のポリオール、ポリオールのエーテル体(例えばモノエーテル体)等)を含んでいてもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
[液状媒体の量]
 液状媒体の量は、含フッ素化合物1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、又は50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよく、また、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
 水の量は、含フッ素化合物1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよく、また、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
 有機溶媒の量は、含フッ素化合物1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であってよく、また、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
〔シリコーン〕
 本開示における撥水撥油剤は、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)を含んでもよい。シリコーンを含むことで、良好な撥液性に加え、風合いや耐久性を良好に兼ね備え得る。
 シリコーンとしては、公知のシリコーンを用いることができ、シリコーンの例としては、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン(アミノ変性、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等)が挙げられる。シリコーンはワックス状の性質を有するシリコーンワックスであってもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
 シリコーンの重量平均分子量は、1000以上、10000以上、又は50000以上であってよく、また、500000以下、250000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。
[シリコーンの量]
 シリコーンの量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
〔ワックス〕
 本開示における撥水撥油剤は、ワックスを含んでもよい。ワックスを含むことで、撥液性を良好に基材に付与し得る。
 ワックスの例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、酸化ポリオレフィンワックス、シリコーンワックス、動植物蝋、及び鉱物蝋等が挙げられる。パラフィンワックスが好ましい。ワックスを構成する化合物の具体例は、ノルマルアルカン(例えば、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)、ノルマルアルケン(例えば、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、1-ノナコセン、1-トリアコンテン、1-ヘントリアコンテン、1-ドトリアコンテン、1-トリトリアコンテン、1-テトラトリアコンテン、1-ペンタトリアコンテン、1-ヘキサトリアコンテン)である。ワックスを構成する化合物の炭素数は、20~60、例えば、25~45であることが好ましい。ワックスの分子量は、200~2000、例えば250~1500、300~1000であってよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
 ワックスの融点は、40℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上であってよく、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であり、また、200℃以下、150℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、80℃以下、又は50℃以下であってよく、好ましくは120℃以下である。ワックスの融点は、JIS K 2235-1991に準拠して測定される。
[ワックスの量]
 ワックスの量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
〔有機酸〕
 本開示の撥水撥油剤は有機酸を含んでもよい。有機酸としては、公知のものを用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸等が好ましく挙げられ、特にカルボン酸が好ましい。該カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられ、特にギ酸又は酢酸が好ましい。本開示においては、有機酸は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば、ギ酸と酢酸とを組み合わせて用いてもよい。
[有機酸の量]
 有機酸の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。撥水撥油剤のpHが、3~10、例えば5~9、特に6~8となるように有機酸の量は調整されてもよい。撥水撥油剤は酸性(pH7以下、例えば6以下)であってもよい。
〔硬化剤〕
 本開示の撥水撥油剤は、硬化剤(活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物)を含んでよい。
 撥水撥油剤における硬化剤(架橋剤)は含フッ素化合物を良好に硬化させ得る。硬化剤は、含フッ素化合物の有する活性水素又は活性水素反応性基と反応する活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物であってよい。活性水素反応性化合物の例は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、クロロメチル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物及びヒドラジド化合物である。活性水素含有化合物の例は、ヒドロキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物、ケトン基含有化合物、ヒドラジド化合物及びメラミン化合物である。
 硬化剤はイソシアネート化合物を含んでよい。イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物であってよい。ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物は、架橋剤として働く。ポリイソシアネート化合物の例は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。イソシアネート化合物は、ブロックドイソシアネート化合物(例えばブロックドポリイソシアネート化合物であってよい)。ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でマスクし反応を抑制した化合物である。
 脂肪族ポリイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートの脂肪族ジイソシアネート、及びリジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
 脂環族ポリイソシアネートの例は、脂環族ジイソシアネート及び脂環族トリイソシアネート等である。脂環族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
 芳香脂肪族ポリイソシアネートの例は、芳香脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族トリイソシアネートである。芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
 芳香族ポリイソシアネートの例は、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートの具体例は、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
 ポリイソシアネートの誘導体は、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン等の各種誘導体を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
 これらポリイソシアネートは、一種又は二種以上を組合せて使用することができる。
 ポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート)を使用することが好ましい。溶液中でも比較的安定であり、撥水撥油剤と同じ溶液中でも使用可能である等の理由からブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
 ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、例えば130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、ヒドロキシル基と容易に反応することができる。ブロック剤の例は、フェノール系化合物、ラクタム系化合物、脂肪族アルコール系化合物、オキシム系化合物等である。ポリイソシアネート化合物は、単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
 エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の例は、ポリオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコ-ルジグリシジルエ-テル;並びにソルビトールポリグリシジルエーテル等である。
 クロロメチル基含有化合物はクロロメチル基を有する化合物である。クロロメチル基含有化合物の例は、クロロメチルポリスチレン等である。
 カルボキシル基含有化合物はカルボキシル基を有する化合物である。カルボキシル基含有化合物の例は、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)メタクリル酸等である。
 ケトン基含有化合物の具体例としては、(ポリ)ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
 ヒドラジド化合物の具体例としては、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
 メラミン化合物の具体例としては、メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。
[硬化剤の量]
 硬化剤の量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
〔他の成分〕
 撥水撥油剤は、上記成分以外の他の成分を含んでよい。他の成分の例としては、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、凝結剤、バインダー樹脂、スリップ防止剤、サイズ剤、紙力増強剤、PVA、浸透剤、有機酸、顔料、充填剤、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤、香料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
前記の成分以外に、その他成分として、その他の撥水及び/又は撥油剤、分散剤、風合い調整剤、柔軟剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、ポリビニルピロリドン等の移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS-X)等の蛍光増白剤、染料固定剤、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等の退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤としてセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ケラチナーゼ等の酵素、抑泡剤、水分吸放出性等絹の風合い・機能を付与できるものとしてシルクプロテインパウダー、それらの表面改質物又は乳化分散液(例えばK-50、K-30、K-10、A-705、S-702、L-710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス))、汚染防止剤(例えばアルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位からなる非イオン性高分子化合物(例えば互応化学工業製FR627)、クラリアントジャパン製SRC-1等)等を配合することができる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
[多糖類]
 多糖類の例としては、澱粉、キサンタンガム、カラヤガム、ウェランガム、グアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン、キトサン、アラビアガム、ローカストビーンガム、セルロース、アルギン酸、寒天、デキストラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キチンナノファイバー、セルロースナノファイバー及びプルラン等が挙げられる。多糖類は、置換されている変性多糖類であってよく、特に、水酸基やカチオン性基を導入した変性多糖類であってよい。
[紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤]
 紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤の例としては、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、及びオレフィン/無水マレイン酸重合体等が挙げられる
[サイズ剤]
 サイズ剤の例としては、セルロース反応性サイズ剤、例えばロジン系石鹸などのロジン系サイズ剤、ロジン系乳濁液/分散液、セルロース反応性サイズ剤、例えばアルキルおよびアルケニルコハク酸無水物(ASA)などの酸無水物の乳濁液/分散液、アルケニルおよびアルキルケテン二量体(AKD)および多量体、ならびにエチレン性不飽和モノマーのアニオン性、カチオン性および両性のポリマー、例えばスチレンとアクリレートとの共重合体が挙げられる。
[帯電防止剤]
 帯電防止剤の例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタイン及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、アラニン及びその誘導体等の両性型帯電防止剤、アミノアルコール及びその誘導体、グリセリン及びその誘導体、ポリエチレングリコール及びその誘導体等のノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。これらのカチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合若しくは共重合して得られたイオン導電性重合体であってもよい。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用してもよい。
[防腐剤]
 防腐剤は、主に、防腐力、殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために用いられ得る。防腐剤としては、例えば、イソチアゾロン系有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
[紫外線吸収剤]
 紫外線吸収剤は、紫外線を防御する効果のある薬剤であり、紫外線を吸収し、赤外線や可視光線等に変換して放出する成分である。紫外線吸収剤としては、例えば、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾール系化合物、4-t-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
[抗菌剤]
 抗菌剤は、繊維上での菌の増殖を抑え、さらには微生物の分解物由来の嫌なにおいの発生を抑える効果を有する成分である。抗菌剤としては、例えば、四級アンモニウム塩等のカチオン性殺菌剤、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン等が挙げられる。
[消臭剤]
 消臭剤としては、クラスターデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アミノカルボン酸系金属錯体(国際公開第2012/090580号記載のメチルグリシンジ酢酸3ナトリウムの亜鉛錯体)等が挙げられる。
[他の成分の量]
 他の成分の各量又は総量は、含フッ素化合物100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であってよく、また、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
<処理された繊維製品又は紙製品の製造方法>
 本開示における撥水撥油剤で処理された製品の製造方法は、上述した撥水撥油剤で基材を処理する処理工程を含む。
 「処理」とは、撥水撥油剤を、浸漬、噴霧、塗布等により基材に適用することを意味する。処理により、撥水撥油剤の有効成分である含フッ素化合物が基材の内部及び/又は表面に付着する。ここで、付着とは物理的な付着又は化学的な付着であってもよく、例えば、含フッ素化合物が基材(繊維、紙、ガラス等)の有する水酸基に物理的又は(反応して)化学的に修飾されていてもよい。
[基材]
 本開示における撥水撥油剤で処理される基材は限定されないが、好適には繊維製品又は紙製品、特に紙製品である。
 本開示における撥水撥油剤は基材(例えば、繊維基材、紙基材)に撥液性を付与するものであり、撥水剤、撥油剤、耐油剤、及び耐水剤からなる群から選択される少なくとも一として機能し得る。本開示における撥水撥油剤で処理された基材は、例えば、耐油紙又は耐水紙である。
 繊維製品の基材の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品には、織物、編物及び不織布、衣料品形態(例えば撥水性衣服、例えば雨合羽)の布及びカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
 紙製品の基材の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品包装材、食品容器、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等が挙げられ、好適な例としては食品包装材及び食品容器が挙げられる。
 本開示の撥水撥油剤で処理される基材としては、繊維製品又は紙製品に限られず、他にも、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。
 基材がガラスである場合、製造されるガラス製品は光学部材であってよい。ガラス基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiOおよび/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
[処理方法]
 本開示の撥水撥油剤は、処理剤(特に表面処理剤)として、従来既知の方法により基材に適用することができる。処理の方法としては、本開示における撥水撥油剤を、必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、基材の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。乾燥後、撥水撥油剤における固形成分が付着した製品が得られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。本開示の撥水撥油剤に、必要により、さらに、撥水及び/又は撥油剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、風合い調整剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤等の各種添加剤とを併用することも可能である。各種添加剤の例としては、上述の説明における「他の成分」で説明したものと同様であってよい。基材と接触させる処理剤における撥水撥油剤の濃度は、用途によって適宜変更されてよいが、0.01~10重量%、例えば0.05~5重量%であってよい。
 撥水撥油剤は、基材を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって基材に適用することができる。基材を撥水撥油剤に浸してよく、あるいは、基材に溶液を付着又は噴霧してよい。処理された基材は、撥液性を発現させるために、好ましくは、加熱により乾燥及びキュアリングが行われる。加熱温度は例えば100℃~200℃、100℃~170℃又は100℃~120℃であってよい。本開示において低温加熱(例えば、100℃~140℃)であっても良好な性能が得られる。本開示において加熱時間は5秒~60分であってよく、例えば30秒~3分であってよい。基材が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。あるいは、撥水撥油剤はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
[紙製品の処理]
  紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。 本開示の含フッ素化合物は、紙基材に良好に付着する。
 紙は、従来既知の抄造方法によって製造できる。抄造前のパルプスラリーに撥水撥油剤を添加する内添処理方法、又は抄造後の紙に撥水撥油剤を適用する外添処理方法を用いることができる。
 外添処理方法のサイズプレスは、塗布方式によって以下のように分けることも可能である。
 1つの塗布方式は、2本のゴムロールの間に紙を通して形成されるニップ部に塗布液(サイズ液)を供給し、ポンドと呼ばれる塗液溜りを作り、この塗液溜りに紙を通して紙の両面にサイズ液を塗布する、いわゆるポンド式ツーロールサイズプレスである。他の塗布方式は、サイズ液を表面転写型により塗布するゲートロール型、及び、ロッドメタリングサイズプレスである。ポンド式ツーロールサイズプレスにおいてサイズ液は紙の内部まで浸透しやすく、表面転写型においてサイズ液成分は紙の表面に留まりやすい。表面転写型は、ポンド式ツーロールサイズプレスと比べて、塗布層が紙の表面に留まりやすく、表面に形成される塗布層がポンド式ツーロールサイズプレスより多い。本開示では、前者のポンド式2ロールサイズプレスを用いた場合でも紙に性能を付与できる。このように処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して300℃まで、例えば200℃まで、特に80℃~180℃の温度範囲をとり得る熱処理を伴うことで、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
 内添処理方法は抄造前のパルプスラリーに撥水撥油剤を添加する処理方法を意味してよい。内添処理方法として、パルプスラリーに撥水撥油剤を添加して攪拌混合する工程と、当該工程で調製したパルプ組成物を所定形状の網状体を介して吸引脱水してパルプ組成物を堆積さてパルプモールド中間体を形成する工程と、当該パルプモールド中間体を加温された成形型によって成型乾燥することで、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体を得る工程の一以上を含んでもよいが、この限りではない。処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して熱処理を施してもよい。熱処理の温度は150℃以上、180℃以上、又は210℃以上であってよく、また、300℃以下、250℃以下、又は200℃以下であってよく、特に80℃~180℃であってよい。斯かる温度範囲で熱処理を行うことにより、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
 本開示は、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙などにおいて使用することができる。また、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙においても用いることができる。
 パルプ原料としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の
晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプのいずれも使用することができる。また、上記パルプ原料と石綿、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物も使用することができる。
 サイズ剤を加えて、紙の耐水性を向上させることができる。サイズ剤の例は、カチオン性サイズ剤、アニオン性サイズ剤、ロジン系サイズ剤(例えば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)である。サイズ剤の量は、パルプに対して0.01~5重量%であってよい。
 紙には必要に応じて、通常使用される程度の製紙用薬剤として、澱粉、変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂等の紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留り向上剤、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤等の紙の製造で使用される添加剤を使用することができる。澱粉及び変性澱粉を用いることが好ましい。 必要により、澱粉、ポリビニルアルコール、染料、コーティングカラー、防滑剤等を用いて、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等によって、撥水撥油剤を紙に塗布することができる。
 外添においては、塗布層に含まれる含フッ素化合物の量が0.01~2.0g/m、特に0.1~1.0g/mであることが好ましい。塗布層は、撥水撥油剤と澱粉及び/又は変性澱粉によって形成されることが好ましい。塗布層における紙用撥水撥油剤の固形分量は2g/m以下であることが好ましい。
  内添においては、紙を形成するパルプ100重量部に対して、撥水撥油剤の量が0.01~50重量部又は0.01~30重量部、例えば0.01~10重量部、特に0.2~5.0重量部となるように、撥水撥油剤をパルプと混合することが好ましい。
 外添において、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いても紙に耐油性を付与することができる。
 外添処理において、紙基材はサイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤等の添加剤を含んでよい。添加剤はノニオン性、カチオン性、アニオン性又は両性であってよい。添加剤のイオン電荷密度は-10000~10000 μeq/g、好ましくは-4000~8000 μeq/gであり、より好ましくは-1000~7000 μeq/gであってよい。添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤等。例えば固形分又は活性成分。)は、パルプに対して、一般に、0.1~10重量%(例えば、0.2~5.0重量%)の量で使用できる。カチオン性の添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤)を含む紙基材の場合は、撥水撥油剤はアニオン性であってもよいし、アニオン性の添加剤を含む場合、撥水撥油はカチオン性であってもよいが、これらに限られるものではない。
 内添処理において、パルプ濃度が0.5~5.0重量%(例えば、2.5~4.0重量%)であるパルプスラリーを抄紙することが好ましい。パルプスラリーに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)及び含フッ素化合物を添加することができる。添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)の例は、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、オレフィン/無水マレイン酸重合体である。
 内添処理において、紙基材はサイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤等の添加剤を含んでよい。添加剤はノニオン性、カチオン性、アニオン性又は両性であってよい。添加剤のイオン電荷密度は-10000~10000 μeq/gであってよく、好ましくは-4000~8000 μeq/gであり、より好ましくは-1000~7000 μeq/gである。添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤等。例えば、固形分又は活性成分。)は、パルプに対して、一般に、0.1~10重量%(例えば、0.2~5.0重量%)の量で使用できる。カチオン性の添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤)を含む紙基材の場合は、撥水撥油剤はアニオン性であってもよいし、アニオン性の添加剤を含む場合、撥水撥油剤はカチオン性であってもよいが、これらに限られるものではない。
[繊維製品の前処理]
 繊維製品は、本開示の撥水撥油剤で処理する前に前処理されていてもよい。繊維製品の前処理を行うことで、撥水撥油剤で処理後の繊維製品に優れた堅牢性を付与し得る。
 繊維製品の前処理の例は、反応性第四級アンモニウム塩との反応等によるカチオン化処理、スルホン化、カルボキシル化、リン酸化等のアニオン化処理、アニオン化処理後のアセチル化処理、ベンゾイル化処理、カルボキシメチル化処理、グラフト化処理、タンニン酸処理、高分子コーティング処理等が挙げられる。
 繊維製品を前処理する方法としては、限定されないが、従来既知の方法により繊維製品を前処理することができる。前処理液を必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、繊維製品の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。求める処理の程度に応じて前処理液のpH及び温度等が調整されてよい。繊維製品を前処理する方法の一例として、繊維製品を上述の処理剤で前処理する方法について詳述する。
 繊維製品の前処理方法は、繊維に-SO(式中、Mは一価のカチオンを示す)で示される1価の基、-COOM(式中、Mは一価のカチオンを示す)で示される1価の基、及び-O-P(O)(OX)(OX)(式中、X及びXはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を示す)で示される1価の基からなる群より選ばれる一以上の官能基(以下、「特定官能基」という場合もある)を付与する工程を備えてもよい。
 Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。X又はXがアルキル基である場合、炭素数1~22のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましい。
 上記特定官能基を含む繊維(以下、「官能基含有繊維」という場合もある)は、例えば、以下の方法により用意することができる。
(i)繊維材料に、上記特定官能基を有する化合物を付着させる。なお、化合物の付着は、上記特定官能基が十分な量で残される範囲で化合物の一部と繊維の一部とが化学的に結合している状態であってもよい。
(ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維を用意する。
 (i)の場合、例えば、繊維材料を、上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液で処理する官能基導入工程により、官能基含有繊維を得ることができる。
 繊維材料の素材としては、特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維等が挙げられる。繊維材料の形態は繊維(トウ、スライバー等)、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布等のいずれの形態であってもよい。
 本実施形態においては、得られる繊維製品の撥水性が良好になる観点から、ポリアミド及びポリエステルを素材として含む繊維材料を用いることが好ましく、特に、ナイロン6、ナイロン6,6等のナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチルテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、及びこれらが含まれる混合繊維を用いることが好ましい。
 上記-SOを有する化合物としては、フェノール系高分子を用いることができる。このようなフェノール系高分子としては、例えば、下記一般式で表される化合物を少なくとも一種含むものが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000001

[式中、Xは-SO(式中、Mは1価のカチオンを示す)又は下記一般式で表される基を表し、nは20~3000の整数である。]
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000002

[式中、Mは1価のカチオンを表す。]
 上記Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
 上記Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
 上記一般式で表される化合物は、例えば、フェノールスルホン酸のホルマリン縮合物、スルホン化ビスフェノールSのホルマリン縮合物であってもよい。
 上記-COOMを有する化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマーが挙げられる。
 ポリカルボン酸系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等をモノマーとして用いて従来公知のラジカル重合法で合成したポリマー、又は、市販されているものを使用することができる。
 ポリカルボン酸系ポリマーの製造方法としては、例えば、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液にラジカル重合開始剤を添加して、30~150℃で2~5時間加熱反応させる方法が挙げられる。このとき、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン等の水性溶剤を添加してもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸塩と重亜硫酸ナトリウム等の組み合わせによるレドックス系重合開始剤、過酸化水素、水溶性アゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。さらに、ラジカル重合の際には、重合度を調整する目的で連鎖移動剤(例えば、チオグリコール酸オクチル)を添加してもよい。
 ラジカル重合には、上記モノマーのほかに共重合可能なモノマーを使用することができる。共重合可能なモノマーとしては、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、アクリルアミド、アクリレート類、メタクリレート類等が挙げられる。アクリレート類及びメタクリレート類は、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい炭素数1~3の炭化水素基を有するものが好ましい。このようなアクリレート類又はメタクリレート類としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。
 ポリカルボン酸系ポリマー中のカルボキシル基はフリーであっても、アルカリ金属やアミン系化合物等によって中和されていてもよい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、アミン系化合物としてはアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
 ポリカルボン酸系ポリマーの重量平均分子量は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、1000~20000が好ましく、3000~15000がより好ましい。
 ポリカルボン酸系ポリマーは、「ネオクリスタル770」(日華化学株式会社製、商品名)、「セロポールPC-300」(三洋化成工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
 上記-O-P(O)(OX)(OX)を有する化合物としては、例えば、下記一般式で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000003
[式中、X又はXは上記と同義であり、Xは炭素数1~22のアルキル基を示す。]
 上記リン酸エステル化合物としては、アルキルエステル部分が、炭素数1~22のアルキル基であるリン酸モノエステル、ジエステル及びトリエステル、並びにこれらの混合物を用いることができる。
 得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、ラウリルリン酸エステル、デシルリン酸エステルを用いることが好ましい。
 リン酸エステル化合物は、例えば、「フォスファノールML-200」(東邦化学工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
 上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液は、例えば、上述した化合物の水溶液とすることができる。また、前処理液には、酸、アルカリ、界面活性剤、キレート剤等を含有させてもよい。
 繊維材料を上記前処理液で処理する方法としては、例えば、パディング処理、浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理が挙げられる。パディング処理としては、例えば、繊維染色加工辞典(昭和38年、日刊工業新聞社発行)の396~397頁や色染化学III(1975年、実教出版株式会社発行)の256~260頁に記載のパディング装置を用いた方法が挙げられる。コーティング処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の473~477頁に記載のコーティング機を用いる方法が挙げられる。浸漬処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の196~247頁に記載のバッチ式染色機を用いる方法が挙げられ、液流染色機、気流染色機、ドラム染色機、ウインス染色機、ワッシャー染色機、チーズ染色機等を用いることができる。スプレー処理としては、例えば、圧搾空気で処理液を霧状にして吹き付けるエアースプレーや、液圧霧化方式のエアースプレーを用いた方法が挙げられる。このときの処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整することができる。また、前処理液が水を含有する場合は、繊維材料に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度も特に制限されないが、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100~180℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。
 なお、繊維材料が染色されるものである場合、前処理液による処理は、染色前でも、染色と同浴で行ってもよいが、還元ソーピングを行う場合は、その過程で吸着した上記特定官能基を有する化合物(例えば、フェノール系高分子化合物等)が、脱落してしまうおそれがあるので、染色後の還元ソーピング後に行うことが好ましい。
 浸漬処理における処理温度は、60~130℃とすることができる。処理時間は、5~60分とすることができる。
 前処理液による官能基導入工程は、上記特定官能基を有する化合物の付着量が、繊維材料100重量部に対し、1.0~7.0重量部になる量で処理することが好ましい。この範囲内であると、耐久撥水性及び風合いを高水準で両立させることができる。
 前処理液は、pHを7未満、例えば3~5に調整してもよい。pH調整は、酢酸、リンゴ酸等のpH調整剤を用いることができる。
 前処理液には、上記特定官能基を有する化合物を塩析効果により有効に繊維材料に吸着させるために塩を併用することもできる。使用できる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムが挙げられる。
 前処理液による官能基導入工程では、過剰に処理された上記特定官能基を有する化合物を除去することが好ましい。除去方法としては、水洗による方法が挙げられる。十分な除去を行うことにより、後段の撥水加工において撥水性の発現が阻害されることを抑制することができ、加えて、得られる繊維製品の風合が良好となる。また、得られる官能基含有繊維は、上述の処理剤に接触させる前に、十分乾燥させておくことが好ましい。
 (ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維としては、例えば、カチオン可染ポリエステル(CD-PET)が挙げられる。
 官能基含有繊維は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、表面のゼータ電位が-100~-0.1mVであることが好ましく、-50~-1mVであることがより好ましい。繊維の表面のゼータ電位は、例えば、ゼータ電位・粒径測定システムELSZ-1000ZS(大塚電子株式会社製)にて測定することができる。
 以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
 以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験方法>
 試験の手順は次のとおりである。
[撥水性評価(液滴転落試験)]
 含フッ素化合物を含む分散液又は溶液(含フッ素化合物濃度0.2g/ml)にPET布(目付:88g/m、70デニール、グレー)を浸漬した後、マングルに通し、70℃で1時間加熱し、処理したPET布を用意し、全自動接触角計(協和界面科学製DropMaster701)によって、水平から30°の傾斜をつけた土台にPET布を固定した。PET布にマイクロシリンジから水を20μL滴下し、滴下した水が転落するか確認した。液滴が転落する場合を〇、滴下した箇所から液滴が動かない場合や布に染み込む場合は×と評価する。
[撥油性評価(耐油試験)]
(処理紙の作成)
 木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/mであった。
 この原紙に対して、含フッ素化合物1.0wt%の水分散体または水溶液を調製し、ギャップを0mil(0μm)、または7mil(170μm)の設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、100℃で10分アニールすることで、処理紙を作成した。
(コーン油耐性評価)
 コーン油を処理紙の表面におき、15 秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。
 裏染みがない場合を〇、裏染みが見られるときを×とする。
[実施例1]
 反応容器に、ポリグリセリン(平均分子量500 10mmol)5.0g、ピリジン20mL、7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chloride (85mmol)を加え、オイルバス温度60℃で加熱攪拌した。分液、精製処理を行い、含フッ素化合物目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000004
[実施例2]
 実施例1において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを3-(trifluoromethoxy)propanoyl chlorideに変更した以外同様の操作を行い、目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000005
[実施例3]
 実施例1において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを2-(4-(trifluoromethoxy)phenyl)acetyl chlorideに変更した以外同様の操作を行い、目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000006
[実施例4]
 実施例1において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを4-(trifluoromethoxy)benzoyl chlorideに変更した以外同様の操作を行い、目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000007
[実施例5]
 実施例1において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを7-chloro-7-oxoheptyl (trifluoromethyl)carbamateに変更した以外同様の操作を行い、目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000008
[実施例6]
 実施例1において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを7-((trifluoromethyl)amino)heptanoyl chlorideに変更した以外同様の操作を行い、目的のポリグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000009
[実施例7]
 反応容器に、ソルビトール(10mmol)1.8g、ピリジン20mL、7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chloride (60mmol)を加え、オイルバス温度60℃で加熱攪拌した。分液、精製処理を行い、目的のソルビトール誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000010
[実施例8]
 実施例7において7-(trifluoromethoxy)heptanoyl chlorideを3-(trifluoromethoxy)propanoyl chlorideに変更した以外同様の操作を行い、目的のソルビトール誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000011
[実施例9]
 還流冷却器及びディーンスタークを備えた反応容器にクエン酸2.8g(15mmol)、6-(trifluoromethoxy)hexan-1-amine (48mmol)を加え、オイルバス温度70℃まで加熱しトルエンを加え、さらに135℃で加熱攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、分液、精製処理を行い、目的のクエン酸誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000012
[実施例10]
 実施例9において6-(trifluoromethoxy)hexan-1-amineを2-(trifluoromethoxy)ethan-1-amineに変更した以外同様の操作を行い、目的のクエン酸誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000013
[実施例11]
 実施例9において6-(trifluoromethoxy)hexan-1-amineを4-(trifluoromethoxy)anilineに変更した以外同様の操作を行い、目的のクエン酸誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000014
[実施例12]
実施例9において6-(trifluoromethoxy)hexan-1-amineを6-aminohexyl (trifluoromethyl)carbamateに変更した以外同様の操作を行い、目的のクエン酸誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000015
[実施例13]
 実施例9において6-(trifluoromethoxy)hexan-1-amineをN-(trifluoromethyl)hexane-1,6-diamineに変更した以外同様の操作を行い、目的のクエン酸誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000016
[実施例14]
 エチレンジアミン0.29g(4.8mmol), 7-(trifluoromethoxy)heptanoic acid 11mmol、4、4-ジメチルアミノピリジン0.12g、クロロホルムを加え、1(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド2.1gを加えた。その後、オイルバス温度50℃で加熱撹拌する。反応液を室温まで冷却後、分液、精製処理を行い、目的のエチレンジアミン誘導体(ジアミド体)である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000017
[実施例15]
 実施例14において7-(trifluoromethoxy)heptanoic acidを3-(trifluoromethoxy)propanoic acidに変更した以外同様の操作を行い、目的のエチレンジアミン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000018
[実施例16]
 実施例14において7-(trifluoromethoxy)heptanoic acidを2-(4-(trifluoromethoxy)phenyl)acetic acidに変更した以外同様の操作を行い、目的のエチレンジアミン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000019
[実施例17]
 実施例14において7-(trifluoromethoxy)heptanoic acidを4-(trifluoromethoxy)benzoic acidに変更した以外同様の操作を行い、目的のエチレンジアミン誘導体である含フッ素化合物を得た。本化合物について、液滴転落試験、耐油試験を行い、〇であることを確認した。

Figure JPOXMLDOC01-appb-I000020
[実施例18]
 実施例14において7-(trifluoromethoxy)heptanoic acidを7-(((trifluoromethyl)carbamoyl)oxy)heptanoic acidに変更した以外同様の操作を行い、目的のエチレンジアミン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000021
[実施例19]
 実施例14において7-(trifluoromethoxy)heptanoic acidを7-((trifluoromethyl)amino)heptanoic acidに変更した以外同様の操作を行い、目的のエチレンジアミン誘導体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000022
[実施例20]
 4-(Trifluoromethoxy)phenylacetic Acid(東京化成工業(株))、グリセリン、4、4-ジメチルアミノピリジンを脱水トルエンに溶解後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを添加し、オイルバス温度50℃で一晩撹拌した。
反応溶液を室温まで冷却後、濃縮することで得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄し、固体を乾燥させることで、グリセリンを4-(Trifluoromethoxy)phenylacetic Acid(東京化成工業(株))で修飾したポリオール修飾体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000023
[実施例21]
 4-(Trifluoromethoxy)benzoic Acid(東京化成工業(株))、グリセリン、4、4-ジメチルアミノピリジンを脱水トルエンに溶解後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを添加し、オイルバス温度50℃で一晩撹拌した。
反応溶液を室温まで冷却後、濃縮することで得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄し、固体を乾燥させることで、グリセリンを4-(Trifluoromethoxy)benzoic Acidで修飾したポリオール修飾体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000024
[実施例22]
 反応容器に、グリセリン、脱水トルエン、4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanate(東京化成工業(株))を加え、ジラウリン酸ジブチルすず 1滴を加え、60℃で1時間攪拌した。
4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanate(東京化成工業(株))の消失を確認した後、ヘキサンに滴下し、固体を析出させる。吸引濾過にて析出した固体を回収し、グリセリンを4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanateで修飾したポリオール修飾体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000025
[実施例23]
 反応容器に、攪拌子、エチレンジアミン、トルエン、4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanateを加え、ジラウリン酸ジブチルすず 1滴を加え、60℃で1時間攪拌した。
4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanateの消失を確認した後、ヘキサンに滴下し、固体を析出させる。吸引濾過にて析出した固体を回収し、エチレンジアミンを4-(Trifluoromethoxy)phenyl Isocyanate(東京化成工業(株))で修飾した多価アミン修飾体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000026
[実施例24]
 4-(Trifluoromethoxy)phenol、クエン酸、4、4-ジメチルアミノピリジンをトルエンに溶解後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを添加し、オイルバス温度50℃で一晩撹拌した。
反応溶液を室温まで冷却後、濃縮することで得られた固体をメタノール、ジエチルエーテルで洗浄し、固体を乾燥させることで、クエン酸を4-(Trifluoromethoxy)phenolで修飾した多価カルボン酸修飾体である含フッ素化合物を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000027
[実施例25]
 反応容器に、モノグリセリン5.0g、ピリジン20mL、4-(trifluoromethoxy)benzoyl chloride (85mmol)を加え、オイルバス温度60℃で加熱攪拌する。分液、精製処理を行い、含フッ素化合物目的のモノグリセリン誘導体である含フッ素化合物を得た。本化合物について液滴転落試験、耐油試験を行い、〇であることを確認した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000028
 本開示の含フッ素化合物により、良好な撥液性を基材に付与する。

Claims (22)

  1.  ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、及びチオール基から選択される一以上の活性水素含有基を有する化合物(a)から誘導された部分、及び
     Rf1又はRf2を有する化合物(b)から誘導された部分、
    を有する、含フッ素化合物であって、
    f1は-CF、-CFH、又は-CFHであり、
    f2は-CF-又は-CFH-であり、
    f1及びRf2は炭素数2以上のフルオロアルキル基の一部ではない、含フッ素化合物。
  2. 前記Rf1の隣接位は酸素原子又は窒素原子であり、
    前記Rf2の隣接位の少なくとも片方は酸素原子又は窒素原子である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
  3. 前記Rf1はCF-であり、
    前記Rf2は-CF-である、請求項1又は2に記載の含フッ素化合物。
  4. 前記化合物(b)が、
    式:
    -Y-Z α
    [式中、各記号は各出現において独立して、
    は、Yf1及びYf2からなる群から選択される一以上から構成される1+α価の基であり、
    f1は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、水素原子又は有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    f2は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基であり、
    αは1~3である。]
    で表される基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  5. 前記化合物(b)が、
    式:
    -Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
    [式中、各記号は各出現において独立して、
    f11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-であり、
    f21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    f12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-からなる群から選択される一以上から構成される基であり(R’は水素原子又は有機基である。)、
    βは、0~3であり、
    f22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    f13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であり(R’は水素原子又は有機基である。)
    は、Rf1、又は、Rf1又はRf2を含む炭素数2以上40以下の炭化水素基である。]
    で表される基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  6. f22は、式
    -Yf221-Yf222
    [式中、
    f221は、直接結合又は炭素数2~40の炭化水素基であり、
    f222は、直接結合又はフェニレン基である。]
    で表される基であり、
    f13は、-O-又は-NR’-(R’は水素原子又は有機基である。)であり、
    βは、0又は1であり、
    はRf1である、請求項5に記載の含フッ素化合物。
  7. 前記化合物(b)が、活性水素反応性化合物;重合性単量体又はその重合体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  8. 前記化合物(a)が天然物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  9. 前記化合物(a)がポリオール、ポリアミン又はポリカルボン酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  10. 前記化合物(a)が単糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール類、ヒドロキシ酸類、アミノ酸類、ビタミン類、フラボノール類、ヒドロキシ炭化水素類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体、有機酸、有機アミン、又は飽和/不飽和脂肪族炭化水素化合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  11. 前記化合物(a)が
     グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース;
     スクロース、シクロアミロース、シクロデキストリン、マルトース、トレハロース、ラクトース、スクラロース;
     ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ラクチトール;
     澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ジェランガム、タマリンドシードガム;
     アスコルビン酸、コウジ酸、キナ酸、クロロゲン酸、グルコン酸;
     グルコサミン;
     イノシトール;
     カテキン、ケルセチン、アントシアニン;
     グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;
     ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート重合体、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート重合体、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート重合体;
     クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、アルギン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アルダル酸;
     トリカルバリル酸、t-アコニット酸、トリメリット酸;
     ピロメリット酸、イタコン酸;
    アルキレンジアミン、アルキレントリアミン、芳香族ジアミン;
    又は活性水素基を有する飽和/不飽和脂肪族炭化水素化合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  12. 含フッ素化合物のバイオベース度が20%以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  13. 重量平均分子量が1000以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  14. 重量平均分子量が1000未満である、請求項1~13のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  15. -Y-Z 以外の修飾基として、一価の炭素数2以上40以下の炭化水素基を有する、
    請求項1~14のいずれか一項に記載の含フッ素化合物。
  16. 前記化合物(b)が、
    式:
    -Yf11-(Yf21-Yf12β-Yf22-Yf13-Z
    [式中、各記号は各出現において独立して、
    f11は、直接結合、-O-、-NH-、-C(=O)-、-C(=O)-NH-又は-S-であり、
    f21は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    f12は、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、及び-C(OR’)R’-からなる群から選択される一以上から構成される基であり(R’は水素原子又は有機基である。)、
    βは、0~3であり、
    f22は、脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
    f13は、-O-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、又は-SONR’-であり(R’は水素原子又は有機基である。)
    は、-CFである。]
    で表される基を有する化合物である、請求項11に記載の含フッ素化合物。
  17. 請求項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物及び液状媒体を含む、分散液。
  18. 請求項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物を含む、撥水撥油剤。
  19. 繊維製品又は紙製品用である、請求項18に記載の撥水撥油剤。
  20. 請求項18又は19に記載の撥水撥油剤で基材を処理する、処理された基材の製造方法。
  21. 前記基材が繊維製品又は紙製品である、請求項20に記載の製造方法。
  22. 請求項1~16のいずれか一項に記載の含フッ素化合物が付着した製品。
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