WO2024143448A1 - 絶縁フィルム、銅張積層板、及びミリ波アンテナ - Google Patents

絶縁フィルム、銅張積層板、及びミリ波アンテナ Download PDF

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3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなり、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070未満である絶縁フィルム。

Description

絶縁フィルム、銅張積層板、及びミリ波アンテナ
 本発明は、絶縁フィルム、当該絶縁フィルムを含む銅張積層板、並びに当該銅張積層板を含むミリ波アンテナに関する。
 電気、電子機器の高性能化、高機能化に伴い、自動車やバス等の車両にもLRR(Long Range Radar)やSRR(Short Range Radar)といったレーダーが搭載されている。当該レーダーは、大容量高速通信の社会実現に伴い10GHzを超える高周波域の電波であって、例えば、ミリ波(周波数30GHz~300GHz)帯の電波を検出することが求められる。
 レーダーは、通常、アンテナと当該アンテナを包む筐体から構成される。従来、上記アンテナや筐体に用いられる材料には、高周波域で使用可能な優れた誘電特性を有していることが求められ、ポリフェニレンエーテルやマレイミドトリアジン樹脂等が用いられてきた。また、誘電特性に優れる樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等も知られている。
 例えば、特許文献1には、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物とガラスフィラーとを含んでなる樹脂組成物からなる高周波用誘電体アンテナが開示されている。また、特許文献2には、誘電体基板の裏面全体を地導体とし、表面に円偏波放散マイクロストリップ素子を形成するための金属箔を設けてなり、上記誘電体層が、3-メチルブテン-1の単独重合体、又は、3-メチルブテン-1と炭素数2~12のオレフィン及び/又はポリエンとの共重合体を含むものであることを特徴とする平面アンテナ用両面金属張り誘電体基板が開示されている。
特開2013-256596号公報 特開昭63-086320号公報
 アンテナを構成するアンテナ基板には、絶縁フィルム等の絶縁部材が用いられる。例えば、ポリフェニレンエーテルやマレイミドトリアジン樹脂等からなる絶縁フィルムを含むアンテナは、数GHz帯で使用することに問題はないが、数十GHz帯での使用には伝送ロスが大きい等の問題があった。
 特許文献2に開示されている平面アンテナ用誘電体は、周波数12GHzで誘電率2.2、誘電正接10-3であることが記載されている。しかし、上記平面アンテナ用誘電体であっても、高周波域であるミリ波帯での使用には伝送ロスが生じるおそれがあり改善の余地がある。そのため、誘電特性がより一層優れた新規材料が要望されている。
 また、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は耐熱性に劣るため、リフローはんだ付け等の製造工程に耐えられない。特許文献1では、ガラスフィラー等によりリフロー工程等の高温状態に耐え得ることが記載されているが、さらなるリフロー耐熱性の向上が求められている。また、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂は成形加性が悪く、生産性が低く高価である。
 本発明は、このような現状に鑑み、低い比誘電率及び低い誘電正接を有すると共に、成形性に優れ、かつリフロー耐熱性に優れるミリ波アンテナを与えることができる絶縁フィルム、当該絶縁フィルムを含む銅張積層板、並びに当該銅張積層板を含むミリ波アンテナを提供することを課題とする。
 上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
 すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] 3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなり、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070未満である絶縁フィルム。
[2] 前記3-メチル-1-ブテン系重合体が、3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又はα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記α-オレフィンが炭素数3~20である、前記[1]に記載の絶縁フィルム。
[3] 前記共重合体における、前記エチレン又は前記α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超20モル%以下である、前記[2]に記載の絶縁フィルム。
[4] 前記共重合体における、前記エチレン又は前記α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超10モル%以下である、前記[2]または[3]に記載の絶縁フィルム。
[5] 前記3-メチル-1-ブテン系重合体の融点が260~310℃である、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の絶縁フィルム。
[6] 前記材料が、前記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物である、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の絶縁フィルム。
[7] 前記アルキルラジカル捕捉剤が、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記[6]に記載の絶縁フィルム。
[8] 前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の絶縁フィルムを含む銅張積層板。
[9] 前記[8]に記載の銅張積層板を含むミリ波アンテナ。
[10]前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の絶縁フィルムを含むミリ波アンテナ。
 本発明によれば、低い比誘電率及び低い誘電正接を有すると共に、成形性及びリフロー耐熱性に優れ、かつリフロー耐熱性に優れるミリ波アンテナを与えることができる絶縁フィルム、当該絶縁フィルムを含む銅張積層板、並びに当該銅張積層板を含むミリ波アンテナを提供することができる。
 以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
 本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
 本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
<絶縁フィルム>
 本実施形態の絶縁フィルムは、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなり、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070未満であることを特徴とする。すなわち、本実施形態の絶縁フィルムは、3-メチル-1-ブテン系重合体を含有する。
 絶縁フィルムを形成する材料が、3-メチル-1-ブテン系重合体を含むことで、低い比誘電率及び低い誘電正接を有すると共に、成形性及びリフロー耐熱性に優れる。
 また、本実施形態の絶縁フィルムを形成する材料は、耐熱性に優れるため、任意の形状にも形成できる。
 また、3-メチル-1-ブテン系重合体は高融点及び吸水性が低いので、本実施形態の絶縁フィルムは、リフローはんだ付けでソリ、メルト、及びブリスターが発生しにくく、また、湿熱環境下で保管していてもリフローはんだ付けでブリスターが発生せず、保管管理が容易であることが期待できる。
 さらに、3-メチル-1-ブテン系重合体は比較的低い比重を有することから、本実施形態の絶縁フィルムは、軽量化にも寄与できる。
 本実施形態の絶縁フィルムに用いられる材料は、3-メチル-1-ブテン系重合体からなるものであってもよく、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の成分を含む樹脂組成物であってもよい。
[材料]
 本実施形態の絶縁フィルムに用いられる材料は、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む。すなわち、本実施形態の絶縁フィルムは、3-メチル-1-ブテン系重合体を含有する。
〈3-メチル-1-ブテン系重合体〉
 3-メチル-1-ブテン系重合体は、少なくとも3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位を含む重合体である。3-メチル-1-ブテン系重合体は、3-メチル-1-ブテン単独重合体であってもよく、3-メチル-1-ブテンと不飽和炭化水素との共重合体であってもよい。不飽和炭化水素は、1種であってもよいし、複数種であってもよい。上記不飽和炭化水素は、例えば、エチレン又はα-オレフィンが挙げられる。なお、本実施形態において、3-メチル-1-ブテン系重合体に用いられるα-オレフィンは、3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィンを意味する。つまり、α-オレフィンは、3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィンを意味し、α-オレフィン(3-メチル-1-ブテンを除く)とも表記される。上記不飽和炭化水素は、共重合性がよい観点から、好ましくはエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンである。炭素数3~20のα-オレフィンは、1種であってもよいし、複数種であってもよい。
 機械特性(適度な強度と柔軟性、及び耐衝撃性)を好適に発揮させる観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体は、好ましくは3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは3-メチル-1-ブテンとエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体である。3-メチル-1-ブテンとエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体とは、すなわち、3-メチル-1-ブテンとエチレンとの共重合体又は3-メチル-1-ブテンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、を意味する。3-メチル-1-ブテンとエチレン又はα-オレフィンとの共重合体を、以下、単に「共重合体」とも記載する。
 上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよい。上記共重合体の製造方法は、本発明の効果を損なわなければ制限されず、公知の共重合法を採用することができる。
 3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体100モル%における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは0モル%超20モル%以下である。
 柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体100モル%における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上である。
 また、リフロー耐熱性の観点から、共重合体100モル%における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
 これらの観点から、共重合体100モル%における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1~15モル%、さらに好ましくは0.5~10モル%である。ある一態様において、共重合体100モル%における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0モル%超10モル%以下である。
 なお、上記共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって求めることができる。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
 3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体100モル%における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは80モル%以上100モル%未満である。
 リフロー耐熱性の観点から、共重合体100モル%における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは50モル%超、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは92モル%以上、よりさらに好ましくは93モル%以上である。
 また、柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体100モル%における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは99.9モル%以下、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
 これらの観点から、共重合体100モル%における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは85~99.9モル%、さらに好ましくは90~99.5モル%、よりさらに好ましくは92~99.5モル%以下、よりさらに好ましくは93~99.5モル%である。
 3-メチル-1-ブテン系重合体の物性を好適に発揮させる観点から、エチレン又はα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~20のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~16のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~12のα-オレフィン、よりさらに好ましくは炭素数4~10のα-オレフィン、よりさらに好ましくは炭素数6~10のα-オレフィンである。また、α-オレフィンは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよく、環状部を含んでいてもよい。
 炭素数3~20のα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-へプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルナン等が挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンは、好ましくは直鎖状のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくは1-オクテン、1-ノネン、1-デセンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、よりさらに好ましくは1-デセンである。
 炭素数2~20のα-オレフィン、すなわち、エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 3-メチル-1-ブテン系重合体の融点は、好ましくは260~310℃である。3-メチル-1-ブテン系重合体の融点が、上記範囲内であると、絶縁フィルムに用いられる材料を押出成形等により容易に成形することができ、また、ミリ波アンテナのリフロー耐熱性がより良好なものとなる。
 なお、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点とは、示差走査熱量測定器を用い、試験片(3-メチル-1-ブテン系重合体)を窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた後、-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際のピーク温度を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
 生産効率と、リフロー耐熱性とのバランスの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点は、より好ましくは270~305℃、さらに好ましくは280~305℃、さらに好ましくは280~300℃である。
 本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、好ましくは10~1,000Pa・sである。3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度が、10Pa・s以上であると、より機械的強度が向上し、1,000Pa・s以下であると、成形時に良好な流動性を得やすくなる。
 機械的強度と成形時の流動性とのバランスの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、より好ましくは30~500Pa・s、さらに好ましくは50~300Pa・s、よりさらに好ましくは50~200Pa・s、よりさらに好ましくは70~150Pa・sである。
 なお、本実施形態の3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、キャピラリーレオメーターを用い、バレル温度320℃、せん断速度1220sec-1(キャピラリー:内径1.0mm×長さ10mm、押出速度10mm/min)の条件下で測定した値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
 成形性及びリフロー耐熱性の観点から、絶縁フィルムに用いられる材料100質量%中の3-メチル-1-ブテン系重合体の含有割合は、好ましくは80.0~99.9質量%、より好ましくは85.0~99.9質量%、さらに好ましくは90.0~99.9質量%である。3-メチル-1-ブテンは融点が高いので、3-メチル-1-ブテンの割合を増やすとミリ波アンテナのリフロー耐熱性が上がる傾向にある。絶縁フィルム中の3-メチル-1-ブテン系重合体の含有割合も上記と同様である。
 3-メチル-1-ブテン系重合体は、比較的低い比重を有するので、絶縁フィルムの軽量化に寄与し得る。また、3-メチル-1-ブテン系重合体は、焼却時に有害なガスを発生することもない。さらに、不活性雰囲気下での分解生成物は低分子量炭化水素であり、ケミカルリサイクルに適したものである。
[樹脂組成物]
 本実施形態の絶縁フィルムに含まれる材料は、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む。また、本実施形態の絶縁フィルムに含まれる材料は樹脂組成物であってもよい。したがって、本実施形態の絶縁フィルムに含まれる「材料」と「樹脂組成物」は同義である。
〈アルキルラジカル捕捉剤>
 絶縁フィルムに用いられる材料は、より一層優れた誘電特性及び機械特性を発揮する観点から、上記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物であってもよい。この場合、本実施形態の絶縁フィルムもまたアルキルラジカル捕捉剤又はその反応物又はその分解物を含むこととなる。
 本実施形態において、「アルキルラジカル捕捉剤」とは、3-メチル-1-ブテン系重合体に由来するアルキルラジカルと反応し、その後ラジカルを安定化させる機能を有する化合物を意味し、アルキルラジカルを起点とした連鎖的な主鎖切断反応を抑制する機能を果たす。
 アルキルラジカル捕捉剤は、より機械特性を発揮する観点から、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
 アルキルラジカル捕捉剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 (アクリルフェノール化合物)
 本実施形態において用いられるアクリルフェノール化合物は、例えば、下記一般式(I)で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~9のアルキル基を示す。
 炭素数1~3のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
 炭素数1~9のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
 炭素数1~9のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基等が挙げられる。
 Rは、好ましくは水素原子である。
 Rは、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
 R,R,R及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3~8のアルキル基、より好ましくは炭素数5のアルキル基、さらに好ましくは1,1-ジメチルプロピル基である。
 一般式(I)で表されるアクリルフェノール化合物は、例えば、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2,4-ジ-t-ブチル-6-〔1-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、及び2-t-ブチル-6-〔(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル〕-4-メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
 アルキルラジカル捕捉剤は市販品を用いてもよく、一般式(I)で表されるアクリルフェノール化合物としては、例えば、住友化学社製の商品名「スミライザー(登録商標)GS」及び商品名「スミライザー(登録商標)GM」等が挙げられる。
 (ベンゾフラノン化合物)
 本実施形態において用いられるベンゾフラノン化合物は、例えば、下記一般式(II)で表すことができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 一般式(II)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R及びR10はそれぞれ独立に炭素数1~9のアルキル基を示す。
 炭素数1~4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基等が挙げられる。
 炭素数1~9のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。炭素数1~9のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基等が挙げられる。
 R及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくはメチル基である。
 R及びR10は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~4のアルキル基、より好ましくはt-ブチル基である。
 一般式(II)で表されるベンゾフラノン化合物は、例えば、5,7-ジ-t-ブチル-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン、5,7-ジ(t-ブチル)-3-(3,4-ジ-プロピル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン等が挙げられる。
 アルキルラジカル捕捉剤は市販品を用いてもよく、一般式(II)で表されるベンゾフラノン化合物としては、例えば、BASFジャパン社製の商品名「Irganox(登録商標)HP-136」、Chitec社製の商品名「Revonox(登録商標)501」等が挙げられる。
 (アルキルラジカル捕捉剤の含有量)
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、好ましくは0.01~1.00質量部である。絶縁フィルム中のアルキルラジカル捕捉剤の含有割合も上記と同様である。
 アルキルラジカル捕捉剤の含有量が0.01質量部以上であると、樹脂組成物の溶融混錬時に樹脂組成物の物性をより安定して保つことができる。また、溶融成形時に分解ガスが発生し、成形不良となることも抑制できる。
 また、アルキルラジカル捕捉剤の含有量が1.00質量部以下であると、より機械特性に優れた絶縁フィルムが得られやすい。また、アルキルラジカル捕捉剤がブリードアウトし、或いは、吸湿性が悪化する等の樹脂組成物として求められる物性が損なわれることを抑制できる。
 溶融混錬時の樹脂組成物の物性をより安定して保つ観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。
 また、樹脂組成物の物性の安定性を保つことと経済性とのバランスの観点、及びより低い比誘電率及びより低い誘電正接を有する絶縁フィルムを得る観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.80質量部以下、さらに好ましくは0.70質量部以下である。
 これらの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.02~0.80質量部、さらに好ましくは0.05~0.70質量部である。
 なお、2種以上のアルキルラジカル捕捉剤を含有する場合、上記アルキルラジカル捕捉剤の含有量はアルキルラジカル捕捉剤の総含有量を意味する。
〈酸化防止剤〉
 樹脂組成物は、重合体の安定性確保の観点から、酸化防止剤を含んでもよい。
 酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
 酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 (フェノール系酸化防止剤)
 フェノール系酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-α,α’,α’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-t-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ]フェノール、3,9-ビス[2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4’、4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピネート、及びベンゼンプロピオン酸3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C-C分岐アルキルエステル等が挙げられる。
 フェノール系酸化防止剤は市販品を用いてもよく、例えば、ADEKA社製の「アデカスタブ(登録商標)AOシリーズ」、BASFジャパン社製の「Irganox(登録商標)シリーズ」等が挙げられる。
 (リン系酸化防止剤)
 リン系酸化防止剤は、例えば、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-フェニル)-4,4’-ビフェニレンホスホナイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスホナイト、ジエチル[(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル]ホスホネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、3,9-ビス(オクタデシオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラ-C12-C15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及び3,9-ビス[2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
 リン系酸化防止剤は市販品を用いてもよく、例えば、ADEKA社製の「アデカスタブ(登録商標)PEPシリーズ」「アデカスタブ(登録商標)HPシリーズ」、BASFジャパン社製の「Irgafos(登録商標)シリーズ」、クラリアント社製の商品名「HOSTANOX(登録商標)P-EPQ」等が挙げられる。
 (イオウ系酸化防止剤)
 イオウ系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオ-プロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
 (その他の酸化防止剤)
 また、樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤以外のその他の酸化防止剤を含有してもよい。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤以外の酸化防止剤は、例えば、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
 (酸化防止剤の含有量)
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、3-メチル-1-ブテン系重合体の安定性確保の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上であり、比誘電率及び誘電正接の観点から、好ましくは1.00質量部以下、より好ましくは0.80質量部以下である。すなわち、好ましくは0.01~1.00質量部、より好ましくは0.10~0.80質量である。絶縁フィルム中の酸化防止剤の含有割合も上記と同様である。
 なお、樹脂組成物が2種以上の酸化防止剤を含有する場合、上記酸化防止剤の含有量は酸化防止剤の総含有量を意味する。
〈その他の添加剤〉
 樹脂組成物は、アルキルラジカル捕捉剤、及び酸化防止剤以外のその他の添加剤を含有してもよい。
 その他の添加剤は、例えば、制酸剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、重合禁止剤、重金属不活性化剤、紫外線吸収剤、核剤、透明化剤、滑剤、蛍光増白剤、発錆防止剤、摺動化剤等が挙げられる。
 その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(制酸剤)
 溶融混錬する際の残留金属分等から発生する酸成分による劣化を抑制する観点から、樹脂組成物は制酸剤を含むことが好ましい。
 制酸剤としては、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
 制酸剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の制酸剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.01~200質量部であってもよい。または、0.01~0.5質量部でもよく、0.01~0.3質量部であってもよい。絶縁フィルム中の制酸剤の含有割合も上記と同様である。
(帯電防止剤)
 帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム塩、ステアリン酸のグリセリンエステルである脂肪酸エステルヒドロキシアミン系化合等が挙げられる。
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の帯電防止剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、5質量部以下であってもよい。絶縁フィルム中の帯電防止剤の含有割合も上記と同様である。
(充填剤)
 樹脂組成物は、絶縁フィルムの機械特性をより向上させる観点から、充填剤を含んでもよい。
 充填剤は、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、樹脂繊維、炭素繊維、セルロース繊維等の繊維状化合物;マイカ、タルク、モンモリロナイト、平板状アルミ等の平板状化合物;ガラスビーズ、シラスバルーン、アクリルバルーン等の球状化合物;針状チタン酸金属塩、ウォラストナイト、針状シリカ、酸化スズ等の針状化合物;粉末状チタン酸金属塩、微粉化木質チップ、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等の粉末状化合物;等が挙げられる。これらの充填剤は、例えばシランカップリング剤等で表面処理していてもよい。また、充填剤の分散性を高めるため相容化剤を用いてもよい。
 これらの中でも、絶縁フィルムの機械特性をより向上させる観点から、ガラス繊維が好ましい。
 充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の充填剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.01~300質量部であってもよく、0.1~100質量部であってもよい。絶縁フィルム中の充填剤の含有割合も上記と同様である。
(紫外線吸収剤)
 紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.001~5質量部であってもよく、0.01~1質量部であってもよい。絶縁フィルム中の紫外線吸収剤の含有割合も上記と同様である。
(滑剤)
 滑剤としては、一般的に無機微粒子が用いられる。ここで、無機微粒子としては、周期表の1族、2族、4族、6族、7族、8~10族、11族、12族、13族、14族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物、天然鉱物等の粒子が挙げられる。
 無機微粒子としては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)等の1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシウア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、炭酸バリウム、燐酸バリウム、硫酸バリウム、亜燐酸バリウム等の2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等の4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等の6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガン等の7族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト等の8~10族元素化合物;ヨウ化第一銅等の11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の12族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)等の13族元素化合物、酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等の14族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の微粒子が挙げられる。無機微粒子の平均粒径は、特に制限はないが、好ましくは0.01~3μmである。
 3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の滑剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.001~5質量部であってもよく、0.005~3質量部であってもよい。絶縁フィルム中の滑剤の含有割合も上記と同様である。
〈その他の樹脂〉
 樹脂組成物は、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の樹脂を含んでもよく、含まなくてもよい。
 樹脂組成物は、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の樹脂として、極性基を含む添加剤の分散性を向上させる観点から、酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン等、その他の樹脂を含んでもよい。反応性官能基で変性された変性ポリオレフィンを構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数3~20のα-オレフィンを構造単位とするポリオレフィンが挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、上記〈3-メチル-1-ブテン系重合体〉に記載のものが挙げられる。これらは、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、これらのポリオレフィンは高密度または低密度であっても良く、チーグラ・ナッタ触媒、及びメタロセン触媒の少なくとも1種の触媒により重合されていてもよい。
 3-メチル-1-ブテン系重合体以外の樹脂は、これらの中でも、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、無水マレイン酸変性されたポリプロピレンがさらに好ましい。
 本発明の効果をより発揮する観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
 酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン以外のその他の樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
 熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンランダム共重合体等の芳香族ビニルモノマーと共役ジエン系モノマーのランダムまたはブロック共重合体;ポリイソプレンゴム;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンゴム;エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、α-オレフィン-ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、イソブチレン-ジエン共重合体等のジエン系共重合体;ノルボルネン系単量体とエチレンまたはα-オレフィンの共重合体、ノルボルネン系単量体とエチレンとα-オレフィンの三元共重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体等のノルボルネン系ゴム質重合体、またはこれらを水素添加したもの等が挙げられる。
 絶縁フィルムの柔軟性、屈曲性、及び耐衝撃性をさらに向上させる観点から、樹脂組成物は、熱可塑性エラストマーを含んでもよい。樹脂組成物が熱可塑性エラストマーを含むと、絶縁フィルムが歪や衝撃を受け難く、ひび割れを生じることを抑制できる。
 熱可塑性エラストマーは、耐衝撃性の観点から、40℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するものが好ましい。ブロック共重合体では、2点以上のTgを有するものもあるが、そのうち一点が40℃以下であれば、好ましく用いることができる。また、熱可塑性エラストマーの数平均分子量は好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上、好ましくは200,000以下である。数平均分子量が10,000以上であれば、より機械的特性に優れ、200,000以下であると製造がより容易になる。また、3-メチル-1-ブテン系重合体との相容性の点から、熱可塑性エラストマーは、非極性のもの、すなわち、炭素と水素のみから構成されたものが好ましい。
 低い比誘電率及び低い誘電正接を有する絶縁フィルムを得る観点から、樹脂組成物は、金属元素量を低減することが好ましい。よって、金属元素量を低減させやすい観点から、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニルモノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体が好ましく、そのブロック共重合体がより好ましい。
 また、耐候性向上の観点から、その水素添加物がさらに好ましい。
 樹脂組成物中の熱可塑性エラストマー等、酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン以外のその他の樹脂の含有量は、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、より好ましくは2~50質量部、さらに好ましくは3~30質量部である。絶縁フィルム中の熱可塑性エラストマー等、酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリオレフィンが部分的に酸化された及び/またはマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン以外のその他の樹脂の含有割合も上記と同様である。上記範囲であると、耐熱性、耐薬品性等の3-メチル-1-ブテン系重合体の優れた物性が発揮されやすい。
〈樹脂組成物の融点〉
 本実施形態の樹脂組成物の融点は、好ましくは260~310℃である。樹脂組成物の融点が、上記範囲内であると、より容易に成形することができ、また、リフロー耐熱性をより向上することができる。
 なお、樹脂組成物の融点とは、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点の測定方法と同様の方法で測定した際のピーク温度を意味し、具体的には実施例に記載の3-メチル-1-ブテン系重合体の融点の測定方法で測定することができる。
 加工性と耐熱性とのバランスの観点から、樹脂組成物の融点は、好ましくは270~305℃、より好ましくは280~305℃、さらに好ましくは280~300℃である。
 なお、本実施形態の樹脂組成物の融点は、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点とほとんど差がない。そのため、本明細書において、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点を、樹脂組成物の融点とみなすことができる。
〈樹脂組成物の製造方法〉
 本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、3-メチル-1-ブテン系重合体含む樹脂組成物を製造できれば特に制限はない。より詳細には、樹脂組成物の製造方法は、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程と、樹脂組成物を得る工程とを含む。各工程の詳細は、後述の[3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程]、[樹脂組成物を得る工程]に記載された内容を使用可能である。
[絶縁フィルム]
 本実施形態の絶縁フィルムは、本実施形態の樹脂組成物を含む。本実施形態の絶縁フィルムは、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む。
 本実施形態の絶縁フィルムは、樹脂組成物のみからなるものであってもよく、樹脂組成物以外の成分を含んでもよい。
〈誘電正接〉
 本実施形態の絶縁フィルムの誘電正接は、特定の周波数で測定された誘電正接を意味し、具体的には、周波数10GHz~300GHzで測定された誘電正接である。周波数10GHz~300GHzにおける本実施形態の絶縁フィルムの誘電正接は、0.00070未満である。上記誘電正接が0.00070以上であると、ミリ波アンテナはミリ波帯での使用において伝送ロスが大きくなり、ミリ波アンテナとして実用性が損なわれるおそれが生じる。伝送損失をより一層低減させる観点から、上記誘電正接は、好ましくは0.00060以下、より好ましくは0.00055以下、さらに好ましくは0.00050以下である。上記誘電正接は、好ましくは0.00010以上、より好ましくは0.00013以上、さらに好ましくは0.00015以上である。すなわち、周波数10GHz~300GHzにおける絶縁フィルムの誘電正接は、好ましくは0.00010~0.00060、より好ましくは0.00013~0.00055、さらに好ましくは0.00015~0.00050である。
 なお、10GHz~300GHzにおける絶縁フィルムの誘電正接とは、静電容量法、共振法、周波数変化法等、一般的な手法で測定した値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。周波数が10GHz以上50GHz以下の場合は、共振法にて測定することが好ましい。周波数が50GHz超300GHz以下の場合は、周波数変化法にて測定することが好ましい。
 一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、共振法にて測定した周波数10GHzにおける誘電正接が、0.00010~0.00060、好ましくは0.00013~0.00055、より好ましくは0.00015~0.00050である。一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、周波数変化法にて測定した周波数100GHzにおける誘電正接が、0.00010~0.00060、好ましくは0.00013~0.00055、より好ましくは0.00015~0.00050である。一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、周波数変化法にて測定した周波数200GHzにおける誘電正接が、0.00010~0.00060、好ましくは0.00013~0.00055、より好ましくは0.00015~0.00050である。
〈比誘電率〉
 本実施形態の絶縁フィルムの誘電正接は、特定の周波数で測定された比誘電率を意味し、具体的には、周波数10GHz~300GHzで測定された比誘電率である。周波数10GHz~300GHzにおける本実施形態の絶縁フィルムの比誘電率は、経済性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。伝送損失の低減の観点から、上記比誘電率は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、よりさらに好ましくは3.5以下である。すなわち、周波数10GHz~300GHzにおける絶縁フィルムの比誘電率は、好ましくは0.5~5.0、より好ましくは1.5~4.0、さらに好ましくは2.0~3.5である。
 なお、10GHz~300GHzにおける絶縁フィルムの比誘電率とは、静電容量法、共振法、周波数変化法等、一般的な手法で測定した値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
 測定波長が10GHz以上50GHz以下の場合は、共振法にて測定することが好ましい。測定周波数が50GHz超300GHz以下の場合は、周波数変化法にて測定することが好ましい。
 一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、共振法にて測定した10GHzにおける比誘電率が、0.5~5.0、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは2.0~3.5である。一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、周波数変化法にて測定した100GHzにおける比誘電率が、0.5~5.0、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは2.0~3.5である。一態様において、本実施形態の絶縁フィルムは、周波数変化法にて測定した200GHzにおける比誘電率が、0.5~5.0、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは2.0~3.5である。
〈吸水率〉
 本実施形態の絶縁フィルムの吸水率は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
 絶縁フィルムの吸水率が上記範囲内であれば、リフローはんだ付け時のブリスターの発生をより抑制することができる。また、リフローはんだ付け前の保管管理も容易となる。
 なお、絶縁フィルムの吸水率とは、JIS K 7209:2000 A法に準拠して測定される値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
<絶縁フィルムの製造方法>
 本実施形態の絶縁フィルムの製造方法は、公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
 本実施形態の絶縁フィルムの製造方法は、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程と、絶縁フィルムを得る工程を有することが好ましい。
 また、3-メチル-1-ブテン系重合体以外に、アルキルラジカル捕捉剤及び酸化防止剤やその他添加剤等の他の成分を配合して樹脂組成物を得る場合、後述の樹脂組成物を得る工程を経ることが好ましい。
[3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程]
 本実施形態において、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程とは、3-メチル-1-ブテン系重合体を得られる工程であれば特に限定されるものではない。3-メチル-1-ブテン系重合体を得る方法としては、特に限定されるものではなく、チーグラ・ナッタ触媒、及びメタロセン系触媒等の周知の触媒を用いて製造することができる。より具体的には、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程とは、3-メチル-1-ブテンを含む原料を準備し、この原料を重合することにより3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程である。3-メチル-1-ブテン系重合体を得る方法は、例えば、特開昭61-103910号公報に記載されているように触媒の存在下に3-メチル-1-ブテンを単独重合、又は、3-メチル-1-ブテンとエチレン又は上記α-オレフィンとを共重合することでパウダーとして得ることができる。単独重合の場合は、前記原料は、少なくとも3-メチル-1-ブテンを含み、さらに触媒を含んでいても良い。共重合の場合は、前記原料は、少なくとも3-メチル-1-ブテンとエチレン又は上記α-オレフィンを含み、さらに触媒を含んでいても良い。
 また、3-メチル-1-ブテン系重合体の立体規則性は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。
[樹脂組成物を得る工程]
 樹脂組成物を得る工程とは、3-メチル-1-ブテン系重合体及び他の成分を配合し、混合することにより、樹脂組成物を得る工程である。具体的には、3-メチル-1-ブテン系重合体と、他の成分を含む樹脂組成物を得る工程である。3-メチル-1-ブテン系重合体と、他の成分を混合することにより、樹脂組成物を得る。混合方法は特に限定されず、二軸混練押出機を用いて溶融混練する方法等を用いることができる。また、溶融混錬の前に、各原料をドライブレンドしても良い。
 なお、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の他の成分を配合しない場合、樹脂組成物を得る工程を経る必要はない。
 他の成分としては、上記[樹脂組成物]に記載のものと同様のものが挙げられ、例えば、アルキルラジカル捕捉剤、酸化防止剤、制酸剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、重合禁止剤、重金属不活性化剤、紫外線吸収剤、核剤、透明化剤、滑剤、蛍光増白剤、発錆防止剤、摺動化剤等が挙げられる。
 〈溶融混錬条件〉
 溶融混錬条件は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されるものではないが、大気よりも低酸素状態で溶融混錬を行うことが好ましく、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬する、又は、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬することがより好ましい。
 酸素による樹脂組成物の物性低下を抑制し、より一層優れた誘電特性及び機械特性を有する絶縁フィルムを製造するために、不活性雰囲気下又は低酸素状態で溶融混錬することが好ましい。
 ここで、本実施形態において、「低酸素状態」とは、溶融混錬機の内部を減圧脱気することで、減圧脱気前に比べて酸素濃度が低くなった状態である。もしくは、窒素ガス等の不活性気体を注入することで、注入前に比べて酸素濃度が低くなった状態である。「低酸素状態」において、溶融混錬機内部の酸素濃度は、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、上記酸素濃度の測定は、隔膜型ガルバニ式等の酸素濃度計よって行う値とする。
 溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬する手法は、例えば、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入しながら各成分を投入して溶融混錬を行ってもよく、溶融混錬機の内部に各成分を投入した後、不活性気体を注入して溶融混錬を行ってもよい。また、溶融混錬している間、不活性気体は、溶融混錬機内部へ注入され続けてもよい。
 不活性気体の注入方法は、各溶融混錬機に備わっている設備に応じて行うことができ、例えば、溶融混錬機に備え付けられている不活性気体等の気体の供給部から行ってもよく、溶融混錬機に備え付けられている各成分の供給部から行ってもよく、溶融混錬機に備え付けられているガス抜きベントから行ってもよい。
 不活性気体の供給部から溶融混錬を行う加熱部までの全体に不活性気体を注入して溶融混錬することができれば、注入方法に制限はない。
 不活性気体としては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられ、入手性及び汎用性が高い観点から、窒素ガスが好ましい。
 溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬する手法は、例えば、溶融混錬機の内部に各成分を投入した後、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬を行ってもよい。また、溶融混錬している間、溶融混錬機内部の減圧脱気は、断続的又は連続的に行われてもよい。
 溶融混錬機の内部を減圧脱気する方法は、各溶融混錬機に備わっている設備に応じて行うことができ、例えば、真空ベントから行ってもよい。
 減圧脱気を行う場合、溶融混錬機の内部は、例えば、0.1kPa以上50kPa以下の真空状態とすることができる。
 溶融混錬機は、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬することができる設備、又は、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬することができる設備を備える、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いてもよい。
 溶融混錬温度は、好ましくは300~380℃である。
 溶融混錬温度が300℃以上であると、3-メチル-1-ブテン系重合体を十分に溶融することができ、添加剤等を分散させ易くなる。溶融混錬温度が380℃以下であると、3-メチル-1-ブテン系重合体や添加剤の熱による分解を抑制することができる。
 3-メチル-1-ブテン系重合体全体に、十分に添加剤を分散させる観点から、溶融混錬温度は、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは310℃以上である。
 また、原料が著しく分解することを抑制する観点から、溶融混錬温度は、より好ましくは380℃以下、さらに好ましくは360℃以下である。
 溶融混錬時間は、混錬装置の大きさ等に応じて調整することができる。例えば、1~15分間であってもよいが、当該溶融混錬時間の数値範囲に限定されない。また、本実施形態において「溶融混錬時間」は、バッチ式混錬機ではミキサーを回転している時間、連続押出式混錬機の場合には装置内における原料の滞留時間を示す。
 溶融混錬時のミキサー回転数は、80rpm以上又は100rpm以上であってあってもよく、300rpm以下又は250rpm以下であってもよい。
 溶融混錬後、樹脂組成物は、溶融混錬機から取り出され、冷却される。
[絶縁フィルムを得る工程]
 本実施形態において、絶縁フィルムを得る工程とは、絶縁フィルムに用いられる材料を成形することにより絶縁フィルムを得る工程である。
 上記材料から絶縁フィルムを成形する方法は、例えば、押出成形、熱プレス成形等が挙げられる。
 本実施形態において、絶縁フィルムをミリ波アンテナ基板として用いることが可能である。絶縁フィルムをミリ波アンテナ基板として用いる場合、ミリ波アンテナ基板の形状は、ミリ波アンテナを用いる部材、及び性能等に合わせて選択される。
 ミリ波アンテナ基板の厚みは、例えば、0.01~5mmであってもよい。
<銅張積層板及びミリ波アンテナ>
 本実施形態において、絶縁フィルムをミリ波アンテナ基板として用いる場合、絶縁フィルムは表面に導電性層を含むことが好ましい。つまり、本実施形態において、絶縁フィルムと、導電性層とを含むミリ波アンテナとして用いることが可能である。導電性層は電極として機能する。導電性層は、導電性材料を含む。導電性材料としては、導電性であれば良く、例えば、金属材料や炭素系導電性材料を含んでいても良い。金属材料としては、銅、銀、金、アルミニウムなどの金属材料またはこれらを用いた合金が挙げられる。本実施形態において、絶縁フィルムに導電性層を形成する方法は、特に限定されず、めっき法、印刷法、スパッタリング法、蒸着法などが挙げられる。本実施形態において、導電性層は、金属箔を用いて形成することも可能である。具体的には、絶縁フィルムは、表面に金属箔を備えることが可能である。金属箔としては、前述の金属材料を用いることが可能であり、銅、銀、金、アルミニウムを含む金属箔を用いることが可能である。本実施形態において、導電性の観点からは、銅箔を用いることが好ましい。つまり、本実施形態において、絶縁フィルムと銅箔を有することが好ましく、絶縁フィルムの表面に銅箔が積層された銅張積層板であることがより好ましい。
 本実施形態の銅張積層板は上記絶縁フィルムを含む。上記絶縁フィルムは上述したように優れた誘電特性等の特性を有することから、上記銅張積層板は、例えば、ミリ波アンテナ、半導体サブストレート、基地局用基板等に用いることができる。中でも、上記銅張積層板は、ミリ波アンテナに好適に用いることができる。よって、本実施形態のミリ波アンテナは上記銅張積層板を含む。
 銅張積層板は、絶縁フィルムの表面に銅箔を備えることが好ましい。銅張積層板は、具体的には、絶縁フィルムの少なくとも片面又は両面に銅箔を備えることができる。また、銅張積層板における銅箔及び絶縁性フィルムの枚数は特に限定されない。
 なお、銅張積層板をミリ波アンテナに用いる場合、銅張積層板に含まれる絶縁フィルムはミリ波アンテナ基板として機能し、銅箔は電極として機能する。
 絶縁フィルムの表面に銅箔を設ける方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、エッチング法、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
 また、上記銅箔を絶縁フィルムの片面又は両方の表面に重ね合わせ、熱プレスすることにより銅張積層板を作製してもよい。
 熱プレスの条件に特に制限は無く、プレス温度は200~350℃であってもよく、プレス圧力は50~150f/cmであってもよい。
 絶縁フィルムの表面に設けられる銅箔の厚さは、例えば、0.1~100μmであってもよい。
 絶縁フィルムの表面に銅箔を設ける前に、絶縁フィルムの表面に脱脂処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、レーザー処理等の前処理を施してもよい。上記前処理の処理条件は、本発明の効果を損なわなければ制限されない。
<ミリ波アンテナの用途>
 本実施形態のミリ波アンテナは、周波数30GHz~300GHz(即ち、ミリ波)に対して好適に用いることができるアンテナである。ただし、本発明の効果が損なわない限りにおいてにおいて、用いることができる周波数はミリ波に限定されない。
 本実施形態のミリ波アンテナは、低い比誘電率及び低い誘電正接を有すると共に、成形性に優れる絶縁フィルムを含んでなり、数十GHz帯での使用であっても伝送ロスが生じ難い。さらに、本実施形態のミリ波アンテナは、リフロー耐熱性に優れる。よって、本実施形態のミリ波アンテナは、近距離無線通信用途、自動車等の車載レーダー用途、携帯電話、PHS、スマートフォン、タブレット(タブレット型コンピューター)、モバイルコンピューター(モバイルPC)、携帯情報端末(PDA)等に用い得る。
 以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<測定及び評価方法>
 以下の方法により、各種物性を測定又は評価した。
[コモノマーに由来する構造単位の含有割合]
 製造例1及び2で得られた共重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)中の3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィンである1-デセン(コモノマー)に由来する構造単位の含有割合を、分析装置としてFT-IR(Ailent Techonolies社製、装置名「cary 600 series FTIR spectrometer」)を用い、ATR法にてIR測定を行い、次のとおり求めた。
 3-メチル-1-ブテン単独重合体の主鎖メチレン基由来の変角振動1,461cm-1のピーク面積と、α-オレフィンの単独重合体の側鎖メチレン基由来の変角振動727cm-1のピーク面積との比、及びそれぞれの重合体の添加割合から検量線を作成した。製造例1及び2で得られた共重合体について上記IR測定を行い、得られた測定値(ピーク面積の比)を上記検量線に挿入し、3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィン(1-デセン)に由来する構造単位の含有割合を求めた。
[融点]
 製造例1~3で得られた共重合体又は単独重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)を、示差走査熱量測定器(TA Instrument社製「DSC25」)を用い、窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた。-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際の融解に伴う吸熱ピークのピーク温度を測定し、その温度を融点とした。
[溶融粘度]
 製造例1~3で得られた共重合体又は単独重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)の溶融粘度(Pa・s)を、キャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフィー 1C」)を用い、バレル温度320℃、せん断速度1220sec-1(キャピラリー:内径1.0mm×長さ10mm、押出速度10mm/min)の条件下で測定した。
[溶融成形性]
 絶縁フィルム(長さ:1000mm、幅:80mm、厚み:0.5mm)を押成形にて製造可能か否かを評価した。
 実施例1~4で得られた樹脂組成物、比較例1で得られた樹脂組成物、及び比較例3の樹脂については、それぞれ、後述する実施例1~4及び比較例1、3に記載の条件で押出成形を行った。比較例2の樹脂については、シリンダー温度を380℃にした以外は実施例1と同様の条件で押出成形を行った。上記絶縁フィルムが成形できた場合は「A」、できなかった場合は「B」とした。
[機械強度]
 実施例1~4及び比較例1で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:150mm、幅:25mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用い、23℃、湿度49%下に24時間以上保管し、万能材料試験機「INSTRON5900R-5666」(インストロン社製)を用い、JIS K 7161-1:2014に準じて、23℃、湿度49%にて引張速度100mm/分で降伏応力(MPa)を測定した。測定は5回ずつ行い、平均値を採用した。
 降伏応力が27MPa以上のものを「A」、27MPa未満のものを「B」とした。
[比重]
 実施例1~4及び比較例1~3で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:60mm、幅:60mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用いて、JIS K 7112:1999のA法に準拠して比重を測定した。
[吸水率]
 実施例1~4及び比較例1~3で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:60mm、幅:60mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用いて、JIS K 7209:2000のA法に準拠して吸水率を測定した。
[比誘電率及び誘電正接]
 実施例1~4及び比較例1~3で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:40mm、幅:40mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用いて、ベクトルネットワークアナライザ「Keysight E8361A」(Agilent Technologies社製)により、摂動方式空洞共振法にて、測定周波数10GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。
 また、実施例1~4及び比較例1で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:40mm、幅:40mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用いて、ミリ波モジュール(Virginia Diodes Inc製,WR10 67GHz-115GHz)を用い、周波数変化法にて、測定周波数100GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。
 また、実施例1~4及び比較例1で用いた絶縁フィルムを切り出し、試験片(長さ:40mm、幅:40mm、厚さ:0.5mm)を作製した。その試験片を用いて、ベクトルネットワークアナライザ(Anritsu ME7838G 70kHz-220GHz)を用い、周波数変化法にて、測定周波数は200GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。
[リフロー耐熱性]
 実施例1~4及び比較例1~3で得られたミリ波アンテナを85℃、85%RH雰囲気下で7日間静置した。静置後のミリ波アンテナを、高温観察装置「SMT Scope Light SL-1」(山陽精工株式会社製)を用いて、下記のリフロー温度プロファイルで熱処理した後、ミリ波アンテナの外観を観察し評価した。具体的には、そり、融解、及びブリスターのそれぞれにおいて、少なくとも1つ発生が見られたものについては「B」とし、全て発生が見られなかったものについては「A」とした。
 リフロー温度プロファイル:25℃から60秒かけて150℃まで昇温した後、80秒かけて180℃まで昇温し、さらに60秒かけて280℃まで昇温し、280℃にて10秒間保持した。その後空冷を行った。
[触媒の調製]
チタン触媒成分の調製
 無水塩化マグネシウム47.6g(500mmol)、デカン250mL及び2-エチルヘキシルアルコール234mL(1.5mo1)を130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした。得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、-20℃に保持された四塩化チタン2L(18mol)中に1時間に渡って滴下した。滴下終了後、混合液の温度を2時間かけて90℃に昇温し、90℃に達したところで安息香酸エチル11.4mL(80mmol)を添加し、2時間同温度にて攪拌しながら保持した。2時間の反応終了後、静置してから、上澄み液を除去した。ここにデカン及びヘキサンを加え、固体成分を3回洗浄した後、2Lの四塩化チタンにて再懸濁させ、再び90℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、デカン及びヘキサンを用いて再び静置、上澄み液の除去を繰り返し、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなる迄充分洗浄した。得られた懸濁成分を室温下で6時間減圧乾燥して、チタン触媒成分を得た。
 得られたチタン触媒成分の組成は、チタン4.0質量%、塩素56.0質量%、マグネシウム17.0質量%、安息香酸エチル10.4質量%、並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒12.6質量%であった。
[製造例1]
共重合体(A)の製造
 20Lのステンレス製オートクレーブに、3-メチル-1-ブテン8.0kg、1-デセン0.6kg、1mol/Lの濃度になるようにヘキサンで希釈されたトリエチルアルミニウム50g、上記[触媒の調製]で製造したチタン触媒成分4gを添加し、70℃で4時間重合反応を実施した。重合反応中、水素を40mL/分の速度で連続的に供給した。4時間後に3-メチル-1-ブタノール200gを圧入し、反応を停止して余剰の未反応モノマーを追い出した。次いでノルマルヘプタン2kgを導入し、60℃で30分間攪拌させた後に、加圧ろ過器で固形分を濾別した。この操作を2回繰り返した後、溶媒をノルマルヘプタン2kgから2-プロパノール3kgに変えて同じ操作を2回繰り返した。
 得られた粗ポリマー7.7kgを、攪拌機を備えた50Lの容器に入れ、その後、1mol/Lの塩酸8kg及び2-プロパノール16kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。この粗ポリマーを、攪拌機を備えた50Lの容器に入れ、その後、2-プロパノール20kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。得られた洗浄後のポリマーを80℃で2日間減圧乾燥させることで3-メチル-1-ブテンと1-デセンの共重合体である、共重合体(A)を3.2kg得た。
 得られた共重合体(A)について、上述の測定を行ったところ、融点は286℃であり、溶融粘度は104Pa・sであった。また、共重合体(A)における、コモノマーである1-デセンに由来する構造単位の含有割合は1.1モル%であった。
[製造例2]
共重合体(B)の製造
 1-デセン0.6kgを1-デセン3.6kgに変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、3-メチル-1-ブテンと1-デセンの共重合体である、共重合体(B)2.8kg得た。
 得られた共重合体(B)について、上述の測定を行ったところ、融点は281℃であり、溶融粘度は99Pa・sであった。また、共重合体(B)における、コモノマーである1-デセンに由来する構造単位の含有割合は6.4モル%であった。
[製造例3]
単独重合体(C)の製造
 1-デセン0.6kgを加えなかった以外は製造例1と同様の操作を行い、3-メチル-1-ブテンの単独重合体である、単独重合体(C)を3.3kg得た。
 得られた単独重合体(C)について、上述の測定を行ったところ、融点は305℃であり、溶融粘度は126Pa・sであった。
[実施例1]
(1)樹脂組成物の製造
 製造例1で得た共重合体(A)100質量部に、フェノール系酸化防止剤としての、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「AO-60」、ADEKA社製)0.2質量部、リン系酸化防止剤としての、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(「PEP-36」、ADEKA社製)0.2質量部、アルキルラジカル捕捉剤(アクリルフェノール化合物)としての、2,4-ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート(「スミライザー(登録商標)GS」、住友化学社製)0.1質量部、及びステアリン酸亜鉛(制酸剤)0.25質量部をドライブレンドした後、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて窒素雰囲気下にて溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物(M1)を得た。
(2)ミリ波アンテナの製造
 得られたペレット状の樹脂組成物(M1)を、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて窒素雰囲気下にてシリンダー温度310℃で溶融混錬し、Tダイよりフィルム状に溶融押出した。次いで、得られたフィルムを110℃の冷却ロール上で冷却固化し、厚さ:0.5mmの絶縁フィルムを得た。
 上記絶縁フィルムをプラズマ処理した後、両面に厚み35μmの銅箔を積層し、300℃、70kgf/cmで熱プレスして銅張積層板を作製し、ミリ波アンテナとした。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
[実施例2]
(1)樹脂組成物の製造
 製造例1で得た共重合体(A)100質量部に、フェノール系酸化防止剤としての、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「AO-60」、ADEKA社製)0.2質量部、リン系酸化防止剤としての、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(「PEP-36」、ADEKA社製)0.2質量部及びステアリン酸亜鉛(制酸剤)0.25質量部をドライブレンドした後、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて窒素雰囲気下にて溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物(M2)を得た。
(2)ミリ波アンテナの製造
 得られたペレット状の樹脂組成物(M2)を、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて窒素雰囲気下にてシリンダー温度310℃で溶融混錬し、Tダイよりフィルム状に溶融押出した。次いで、得られたフィルムを110℃の冷却ロール上で冷却固化し、厚さ:0.5mmの絶縁フィルムを得た。
 上記絶縁フィルムをプラズマ処理した後、両面に厚み35μmの銅箔を積層し、300℃、70kgf/cmで熱プレスして銅張積層板を作製し、ミリ波アンテナとした。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
[比較例1]
(1)樹脂組成物の製造
 製造例1で得た共重合体(A)100質量部に、フェノール系酸化防止剤としての、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「AO-60」、ADEKA社製)0.67質量部、リン系酸化防止剤としての、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(「PEP-36」、ADEKA社製)1.33質量部、及びステアリン酸亜鉛(制酸剤)0.25質量部をドライブレンドした後、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて空気雰囲気下にて溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物(M3)を得た。
(2)ミリ波アンテナの製造
 得られたペレット状の樹脂組成物(M3)を、二軸混錬押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いて空気雰囲気下にてシリンダー温度310℃で溶融混錬し、Tダイよりフィルム状に溶融押出した。次いで、得られたフィルムを110℃の冷却ロール上で冷却固化し、厚さ:0.5mmの絶縁フィルムを得た。
 上記絶縁フィルムをプラズマ処理した後、両面に厚み35μmの銅箔を積層し、300℃、70kgf/cmで熱プレスして銅張積層板を作製し、ミリ波アンテナとした。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
[実施例3]
 共重合体(A)の替わりに製造例2で得た共重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物(M4)、絶縁フィルム及びミリ波アンテナを作製した。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
[実施例4]
 共重合体(A)の替わりに製造例3で得た単独重合体(C)を用いた以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物(M5)、絶縁フィルム及びミリ波アンテナを作製した。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
[比較例2]
 PTFE「ポリフロン(登録商標)M12」(ダイキン工業社製)を、100mm角の金型、金型長さ500mmの圧縮成形用金型に投入し、圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所製、AYS10)を用い、室温、成形圧力200kgf/cm、保圧時間10分にて圧縮成形した。上記圧縮成形により、厚さ:0.5mmのシート状に成形し、370℃の電気炉で焼成して絶縁フィルムを得た。
 実施例1と同様の方法で上記絶縁フィルムをプラズマ処理した後、両面に厚み35μmの銅箔を積層し、380℃、70kgf/cmで熱プレスして銅張積層板を作製し、ミリ波アンテナとした。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表2に示す。
[比較例3]
 樹脂組成物(M1)の代わりに、ポリメチルペンテン「TPX(登録商標)MX0020」(三井化学株式会社製)を用い、シリンダー温度を270℃、冷却固化を80℃の冷却ロール上で行った以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ:0.5mmのシート状の絶縁フィルムを得た。
 実施例1と同様の方法で上記絶縁フィルムをプラズマ処理した後、両面に厚さ35μmの銅箔を積層し、300℃、70kgf/cmで熱プレスして銅張積層板を作製し、ミリ波アンテナとした。
 上述の評価方法に従い評価した結果を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 表1から、実施例1~4の絶縁フィルムは3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなり、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070未満であることから誘電特性に優れることがわかる。さらに、実施例1,3及び4では、上記材料がアルキルラジカル捕捉剤を含むことによって機械強度が「A」となり、絶縁フィルムの機械特性がより一層優れることがわかる。一方、比較例1の絶縁フィルムは3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなるが、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070以上であり、実施例1~4に比べ誘電特性に劣る結果になった。比較例1では3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料が酸素による物性低下を防止するため、酸化防止剤が多量に必要であり、優れた誘電特性を発現することができなかったと考えられる。
 表2から、比較例2では溶融成形性が「B」となり、比較例3では誘電正接が0.00070以上であってリフロー耐熱性が「B」となった。したがって、比較例2及び3は誘電特性、成形性、及びリフロー耐熱性の全てに優れることができなかった。
 表1及び2から分かるように、本実施形態のミリ波アンテナはリフロー耐熱性に優れる。また、本実施形態の絶縁フィルムは、低い比誘電率及び低い誘電正接を有しており、誘電特性に優れ、当該絶縁フィルムを用いてなるミリ波アンテナも同等の特性を有するといえる。また、上記絶縁フィルムに用いられる材料は成形性にも優れているため、生産性が高い。さらに、本実施形態の絶縁フィルムに用いられる材料は吸水率が低いため、リフロー時のブリスターがないか又はブリスター発生の可能性が低減されており、保管管理が容易であり、湿熱環境下においても性能の低下が小さい。

Claims (10)

  1.  3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を含有してなり、10GHz~300GHzにおける誘電正接が0.00070未満である絶縁フィルム。
  2.  前記3-メチル-1-ブテン系重合体が、3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又はα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記α-オレフィンが炭素数3~20である、請求項1に記載の絶縁フィルム。
  3.  前記共重合体における、前記エチレン又は前記α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超20モル%以下である、請求項2に記載の絶縁フィルム。
  4.  前記共重合体における、前記エチレン又は前記α-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超10モル%以下である、請求項2または3に記載の絶縁フィルム。
  5.  前記3-メチル-1-ブテン系重合体の融点が260~310℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
  6.  前記材料が、前記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の絶縁フィルム。
  7.  前記アルキルラジカル捕捉剤が、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載の絶縁フィルム。
  8.  請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルムを含む銅張積層板。
  9.  請求項8に記載の銅張積層板を含むミリ波アンテナ。
  10.  請求項1~7のいずれか1項に記載の絶縁フィルムを含むミリ波アンテナ。
PCT/JP2023/046867 2022-12-28 2023-12-27 絶縁フィルム、銅張積層板、及びミリ波アンテナ WO2024143448A1 (ja)

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