WO2024116746A1 - イオン注入装置およびイオン注入方法 - Google Patents

イオン注入装置およびイオン注入方法 Download PDF

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Abstract

イオン注入装置10は、イオンを生成するイオン源20と、イオン源20からイオンを引き出してイオンビームを生成する引出部22と、イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームSBを生成するよう構成されるビーム走査部28と、被処理物W1,W2を保持可能に構成される保持装置40,42であって、保持装置40,42に保持される被処理物W1,W2をスキャンビームSBを横切る方向に往復移動させるよう構成される保持装置40,42と、を備える。

Description

イオン注入装置およびイオン注入方法
 本開示は、イオン注入装置およびイオン注入方法に関する。
 半導体デバイス製造工程では、半導体の導電性を変化させる目的、半導体の結晶構造を変化させる目的などのため、半導体ウェハにイオンを注入する工程(イオン注入工程ともいう)が標準的に実施されている。被処理物であるウェハの全面にイオンを注入するため、イオンビームを水平方向にスキャンし、ウェハを鉛直方向に往復運動させるよう構成されるイオン注入装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2021-18904号公報
 イオン注入装置を用いるイオン注入工程の生産性をさらに向上させることが好ましい。
 本開示のある態様の例示的な目的のひとつは、イオン注入工程の生産性を向上させるための技術を提供することにある。
 本開示のある態様のイオン注入装置は、イオンを生成するイオン源と、イオン源からイオンを引き出してイオンビームを生成する引出部と、イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成するよう構成されるビーム走査部と、被処理物を保持可能に構成される保持装置であって、保持装置に保持される被処理物をスキャンビームを横切る方向に往復移動させるよう構成される保持装置と、を備える。
 本開示の別の態様は、イオン注入方法である。この方法は、イオン源を用いてイオンを生成することと、イオン源からイオンを引き出してイオンビームを生成することと、イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成することと、スキャンビームを横切る方向に被処理物を往復移動させることと、を備える。
 なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
 本発明の限定的ではない例示的な実施の形態によれば、イオン注入工程の生産性を向上させるための技術を提供できる。
実施の形態に係るイオン注入装置の概略構成を示す上面図である。 実施の形態に係るイオン注入装置の概略構成を示す側面図である。 第1保持装置および第2保持装置の概略構成を示す正面図である。 図4(a),(b)は、第1保持装置に保持される第1被処理物の水平方向の向きを模式的に示す上面図である。 図5(a)~(c)は、第1保持装置に保持される第1被処理物の鉛直方向の向きを模式的に示す側面図である。 第1保持装置および第2保持装置の動作の一例を示す正面図である。 第1保持装置および第2保持装置の動作の一例を示す正面図である。 第1保持装置および第2保持装置の動作の一例を示す正面図である。 第1保持装置および第2保持装置の動作の一例を示す正面図である。 実施の形態に係るイオン注入方法の流れを示すフローチャートである。 変形例に係るイオン注入方法の流れを示すフローチャートである。
 以下、図面を参照しながら、本開示に係るイオン注入装置およびイオン注入方法を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
 図1は、実施の形態に係るイオン注入装置10の概略構成を示す上面図である。図2は、実施の形態に係るイオン注入装置10の概略構成を示す側面図である。イオン注入装置10は、被処理物W1,W2の表面にイオン注入処理を施すよう構成される。被処理物W1,W2は、例えば基板であり、例えば半導体ウェハである。説明の便宜のため、本明細書において被処理物を「基板」または「ウェハ」と呼ぶことがあるが、これは注入処理の対象を特定の物体に限定することを意図しない。被処理物は、フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる大型基板(例えばガラス基板または樹脂基板)であってもよい。
 イオン注入装置10は、イオンビームを所定のスキャン方向に往復走査させ、被処理物W1,W2をスキャン方向と交差する方向に往復運動させることにより、被処理物W1,W2の被処理面全体にわたってスポット状のイオンビームを照射するよう構成される。イオン注入装置10は、ビーム生成装置12と、注入処理室14と、搬送装置16と、制御装置18とを備える。
 ビーム生成装置12は、イオンビームを生成し、イオンビームを注入処理室14へ輸送するよう構成される。注入処理室14は、注入処理の対象となる被処理物W1,W2を収容する。注入処理室14において、ビーム生成装置12から与えられるイオンビームが被処理物W1,W2に照射される。搬送装置16は、注入処理前の被処理物W1,W2を注入処理室14に搬入し、注入処理後の被処理物W1,W2を注入処理室14から搬出するよう構成される。制御装置18は、イオン注入装置10を構成する各種装置の動作全般を制御するよう構成される。イオン注入装置10は、ビーム生成装置12、注入処理室14および搬送装置16に所望の真空環境を提供するための真空排気系(図示せず)を備える。
 ビーム生成装置12は、ビームラインAの上流側から順に、イオン源20、引出部22、質量分析部24、ビーム成形部26、ビーム走査部28、ビーム平行化部30、加速減速部32、エネルギー分析部34を備える。ここで、ビームラインAは説明の便宜上使用されるものであり、ビーム走査部28によってイオンビームをスキャンしない場合における設計上の理想的なビーム軌道と同義である。また、ビームラインAの上流とは、イオン源20に近い側のことをいい、ビームラインAの下流とは注入処理室14(またはビームストッパ38)に近い側のことをいう。
 ビーム生成装置12は、ビームラインAが途中で屈曲するように構成される。ビームラインAの進行方向は、質量分析部24およびエネルギー分析部34において変化する。ビームラインAは、鉛直方向に直交する水平面内において延びるように構成される。本書では説明の便宜上、ビームラインAに沿って進むイオンビームの進行方向をz方向とし、鉛直方向をy方向とし、y方向およびz方向に直交する方向をx方向とする。特に、イオン源20から質量分析部24までのビームラインAの進行方向をz1方向とし、y方向およびz1方向に直交する方向をx1方向とする。また、質量分析部24からエネルギー分析部34までのビームラインAの進行方向をz2方向とし、y方向とz2方向に直交する方向をx2方向とする。さらに、エネルギー分析部34よりも下流におけるビームラインAの進行方向をz3方向とし、y方向とz3方向に直交する方向をx3方向とする。
 イオン源20は、イオンビームを構成するイオンを生成するよう構成される。イオン源20は、アークチャンバ20aを備える。アークチャンバ20aは、プラズマが生成される内部空間20bを有する。アークチャンバ20aは、内部空間20bを区画する略直方体の箱形状を有する。アークチャンバ20aは、内部空間20bにて生成されるプラズマからイオンを引き出すためのフロントスリット20cを有する。フロントスリット20cは、水平方向(x1方向)の開口幅が長く、鉛直方向(y方向)の開口幅が短いスリット形状を有する。つまり、フロントスリット20cの水平方向の開口幅は、フロントスリット20cの鉛直方向の開口幅よりも大きい。
 イオン源20は、ソース磁石装置20dを備える。ソース磁石装置20dは、アークチャンバ20aの内部空間20bに水平方向(x1方向)の磁場B1を印加するよう構成される。ソース磁石装置20dは、磁場B1を印加することにより、アークチャンバ20aの内部空間20bで生成されるプラズマの生成効率を高める。ソース磁石装置20dによる磁場B1の印加方向は、フロントスリット20cの長手方向に対応する。
 引出部22は、イオン源20の下流に設けられる。引出部22は、イオン源20からイオンを引き出してイオンビームを生成する。引出部22は、アークチャンバ20aの内部空間20bにて生成されるプラズマからイオンを引き出すよう構成される。引出部22は、第1引出電極22aと、第2引出電極22bとを備える。第1引出電極22aは、アークチャンバ20aの下流側に設けられ、第2引出電極22bは、第1引出電極22aの下流側に設けられる。第1引出電極22aには、負のサプレッション電圧が印加される。第2引出電極22bには、グランド電圧が印加される。なお、アークチャンバ20aには、正の引出電圧が印加されている。
 第1引出電極22aは、イオンビームが通過する第1引出開口22cを有する。第1引出開口22cは、フロントスリット20cと同様、水平方向(x1方向)の開口幅が長く、鉛直方向(y方向)の開口幅が短いスリット形状を有する。つまり、第1引出開口22cの水平方向の開口幅は、第1引出開口22cの鉛直方向の開口幅よりも大きい。第2引出電極22bは、イオンビームが通過する第2引出開口22dを有する。第2引出開口22dは、フロントスリット20cと同様、水平方向(x1方向)の開口幅が長く、鉛直方向(y方向)の開口幅が短いスリット形状を有する。つまり、第2引出開口22dの水平方向の開口幅は、第2引出開口22dの鉛直方向の開口幅よりも大きい。
 引出部22によって引き出されるイオンビームは、水平方向(x1方向)に拡がったリボン状ビームであってもよい。フロントスリット20c、第1引出開口22cおよび第2引出開口22dの水平方向の開口幅を大きくすることにより、リボン状ビームの水平方向のサイズを大きくすることができる。その結果、イオン源20から引き出されるイオンビームのビーム電流を大きくすることが容易となる。
 質量分析部24は、引出部22の下流に設けられる。質量分析部24は、引出部22によって引き出されたイオンビームから必要なイオン種を質量分析により選択するよう構成される。質量分析部24は、質量分析磁石装置24aと、質量分析スリット24bと、インジェクタファラデーカップ24cとを備える。
 質量分析磁石装置24aは、イオンビームに磁場B2を印加し、イオンの質量電荷比M=m/q(mは質量、qは電荷)の値に応じて異なる経路でイオンビームを偏向させる。質量分析磁石装置24aは、鉛直方向(-y方向)の磁場B2を印加し、イオンビームを水平方向(x1方向)に偏向させる。質量分析磁石装置24aによる磁場B2の印加強度は、所望の質量電荷比Mを有するイオン種が質量分析スリット24bを通過するように調整される。質量分析スリット24bを通過するイオンビームは、例えば、質量分析磁石装置24aによって90度偏向する。
 質量分析スリット24bは、質量分析磁石装置24aの下流に設けられる。質量分析スリット24bは、水平方向(x2方向)の開口幅が短く、鉛直方向(y方向)の開口幅が長いスリット形状を有する。つまり、質量分析スリット24bの鉛直方向の開口幅は、質量分析スリット24bの水平方向の開口幅よりも大きい。
 質量分析スリット24bは、質量分解能の調整のために水平方向(x2方向)の開口幅(つまり、スリット幅)が可変となるように構成されてもよい。質量分析スリット24bは、スリット幅方向に移動可能な二枚のビーム遮蔽体により構成され、二枚のビーム遮蔽体の間隔を変化させることによりスリット幅が調整可能となるように構成されてもよい。質量分析スリット24bは、スリット幅の異なる複数のスリットのいずれか一つに切り替えることによりスリット幅が可変となるよう構成されてもよい。
 インジェクタファラデーカップ24cは、質量分析スリット24bの下流に設けられる。インジェクタファラデーカップ24cは、質量分析スリット24bを通過する質量分析されたイオンビームのビーム電流を計測する。インジェクタファラデーカップ24cは、質量分析磁石装置24aの磁場強度を変化させながらビーム電流を測定することにより、イオンビームの質量分析スペクトラムを計測できる。計測した質量分析スペクトラムは、質量分析部24の質量分解能の算出に用いることができる。
 インジェクタファラデーカップ24cは、インジェクタ駆動部24dの動作によりビームラインAに出し入れ可能となるよう構成される。インジェクタ駆動部24dは、インジェクタファラデーカップ24cをビームラインAが延びるz2方向と直交する方向(例えばx2方向)に移動させる。インジェクタファラデーカップ24cは、図1の破線で示すようにビームラインAに配置された場合、下流側に向かうイオンビームを遮断する。一方、図1の実線で示すように、インジェクタファラデーカップ24cがビームラインAから退避された場合、下流側に向かうイオンビームの遮断が解除される。
 引出部22と質量分析部24の間には、磁気シールド23が設けられてもよい。磁気シールド23は、イオン源20に印加される磁場B1と質量分析部24に印加される磁場B2の間の磁場干渉を抑制するよう構成される。磁気シールド23は、電磁鋼板などの磁性材料で構成される。磁気シールド23は、引出部22から質量分析部24に向かうイオンビームを通過させる通過開口23aを備える。通過開口23aは、フロントスリット20cと同様、水平方向(x1方向)の開口幅が長く、鉛直方向(y方向)の開口幅が短いスリット形状を有してもよい。つまり、通過開口23aの水平方向の開口幅は、通過開口23aの鉛直方向の開口幅よりも大きくてもよい。
 ビーム成形部26は、質量分析部24の下流に設けられる。ビーム成形部26は、質量分析部24を通過したイオンビームを所望の断面形状および収束発散角に成形するよう構成されている。ビーム成形部26は、イオンビームの断面形状および収束発散角の少なくとも一方を調整するレンズ装置を備える。ビーム成形部26は、例えば、水平方向に拡がったリボン状のイオンビームを集束させ、スポット状のイオンビームに成形するよう構成される。
 ビーム成形部26は、複数のレンズ装置を備え、例えば、三つのレンズ装置26a,26b,26cを備える。三つのレンズ装置26a~26cは、例えば、電場式の三段四重極レンズ(トリプレットQレンズともいう)として構成される。ビーム成形部26は、複数のレンズ装置を組み合わせて用いることにより、イオンビームの収束または発散を水平方向(x2方向)および鉛直方向(y方向)のそれぞれについて独立に調整できる。ビーム成形部26は、磁場式のレンズ装置を備えてもよい。ビーム成形部26は、電場と磁場の双方を利用してイオンビームを成形するレンズ装置を備えてもよい。
 ビーム走査部28は、ビーム成形部26の下流に設けられる。ビーム走査部28は、イオンビームを所定のスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームSBを生成するよう構成される。ビーム走査部28は、ビーム成形部26によって成形されたイオンビームを所定のスキャン方向に偏向させるビーム偏向装置ともいえる。ビーム走査部28は、スキャン方向が水平方向とは異なる方向となるように構成され、例えば、スキャン方向が鉛直方向(y方向)となるように構成される。
 ビーム走査部28は、鉛直方向(y方向)に対向する走査電極対28a,28bを備える。走査電極対28a,28bは可変電圧電源(図示せず)に接続される。走査電極対28a,28bの間に印加される電圧を周期的に変化させることにより、走査電極対28a,28bの間に生じる電界を変化させてイオンビームをさまざまな角度に偏向させる。その結果、イオンビームが鉛直方向(y方向)の走査範囲全体にわたって走査される。図2において、矢印Yによりイオンビームのスキャン方向及び走査範囲を例示し、走査範囲におけるイオンビームの複数の軌跡を破線で示している。なお、ビーム走査部28は、電場式ではなく、磁場式であってもよい。ビーム走査部28は、イオンビームを偏向させるための磁石装置を備えてもよい。
 ビーム平行化部30は、ビーム走査部28の下流に設けられる。ビーム平行化部30は、ビーム走査部28によって往復走査されたイオンビームの進行方向をビームラインAの方向と平行にするよう構成される。ビーム平行化部30は、水平方向(x2方向)の中央部にイオンビームの通過スリットが設けられた円弧形状の複数の平行化レンズ電極30a,30bを有する。平行化レンズ電極30a,30bは、高圧電源(図示せず)に接続されており、電圧印加により生じる電界をイオンビームに作用させて、イオンビームの進行方向を平行化する。なお、ビーム平行化部30は、電場式ではなく、磁場式であってもよい。ビーム平行化部30は、イオンビームを偏向させるための磁石装置を備えてもよい。
 加速減速部32は、ビーム平行化部30の下流に設けられる。加速減速部32は、ビーム平行化部30によって平行化されたスキャンビームを加速または減速させるよう構成される。加速減速部32は、静電式の加減速装置であり、加速減速部32の上流側に印加される第1電位と、加速減速部32の下流側に印加される第2電位との間の電位差を利用してイオンビームを加速または減速させる。
 エネルギー分析部34は、加速減速部32の下流に設けられる。エネルギー分析部34は、イオンビームのエネルギーを分析し、所望のエネルギーを有するイオンを注入処理室14に向けて通過させるよう構成される。エネルギー分析部34は、イオンビームを水平方向に偏向させ、その偏向角θによって所望のエネルギーを選択する角度エネルギーフィルタ(AEF)である。偏向角θは、例えば、10度以上20度以下であり、15度程度である。エネルギー分析部34は、AEF電極対34a,34bと、エネルギー分析スリット34cとを備える。
 AEF電極対34a,34bは、スキャン方向と直交する方向に対向するように配置される。AEF電極対34a,34bは、水平方向(x2方向またはx3方向)に対向するように配置される。AEF電極対34a,34bは、高圧電源(図示せず)に接続され、イオンビームに電場を作用させて偏向させる。AEF電極対34a,34bは、スキャンビームを水平方向に偏向させる偏向装置である。エネルギー分析スリット34cは、AEF電極対34a,34bの下流側に設けられる。
 エネルギー分析スリット34cは、鉛直方向(y方向)の開口幅が長く、水平方向(x3方向)の開口幅が短いスリット形状を有する。つまり、エネルギー分析スリット34cの鉛直方向の開口幅は、エネルギー分析スリット34cの水平方向の開口幅よりも大きい。エネルギー分析スリット34cは、所望のエネルギー値またはエネルギー範囲のイオンビームを被処理物W1,W2に向けて通過させ、それ以外のイオンビームを遮蔽する。
 エネルギー分析部34は、電場式ではなく、磁場式であってもよい。エネルギー分析部34は、磁場偏向用の磁石装置を備えてもよい。エネルギー分析部34は、電場と磁場の双方を利用してもよく、電界偏向用のAEF電極対と磁場偏向用の磁石装置とを備えてもよい。
 このようにして、ビーム生成装置12は、被処理物W1,W2に照射されるべきイオンビームを注入処理室14に供給する。ビーム生成装置12は、ビームライン装置と呼ばれてもよい。ビーム生成装置12は、ビーム生成装置12を構成する各種機器の動作パラメータを調整することにより、所望の注入条件を実現するためのイオンビームを生成するよう構成される。
 注入処理室14は、プラズマシャワー装置36と、ビームストッパ38と、第1保持装置40と、第2保持装置42とを備える。
 プラズマシャワー装置36は、エネルギー分析部34の下流に位置する。プラズマシャワー装置36は、イオンビームのビーム電流量に応じてイオンビームおよび被処理物W1,W2の表面(被処理面)に低エネルギー電子を供給し、イオン注入で生じる被処理面における正電荷の蓄積に起因するチャージアップを抑制する。プラズマシャワー装置36は、例えば、イオンビームが通過するシャワーチューブ36aと、シャワーチューブ36a内に電子を供給するプラズマ発生部36bとを備える。シャワーチューブ36aは、鉛直方向(y方向)の開口幅が長く、水平方向(x3方向)の開口幅が短い形状を有する。
 ビームストッパ38は、ビームラインAの最下流に設けられ、例えば、注入処理室14の側壁に取り付けられる。ビームラインAに被処理物W1,W2が存在しない場合、イオンビームはビームストッパ38に入射する。ビームストッパ38には、複数のチューニングカップ38a,38b,38c,38dが設けられる。複数のチューニングカップ38a~38dは、ビームストッパ38に入射するイオンビームのビーム電流を測定するよう構成されるファラデーカップである。複数のチューニングカップ38a~38dは、例えば、鉛直方向(y方向)に間隔をあけて配置される。
 第1保持装置40は、注入処理の対象となる第1被処理物W1を保持可能に構成される。第1保持装置40は、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1をスキャンビームを横切る方向に往復移動させるよう構成される。第1保持装置40は、第1被処理物W1を水平方向(x3方向)に往復移動させるよう構成される。第1保持装置40は、水平方向(x3方向)に延びるガイドレール44に沿って移動可能である。
 第1保持装置40は、第1チャック機構50と、第1ツイスト機構52と、第1鉛直角度調整機構54と、第1水平角度調整機構56と、第1往復運動機構58とを備える。
 第1チャック機構50は、第1被処理物W1の裏面と接触して第1被処理物W1を保持するよう構成される。第1チャック機構50は、例えば、第1被処理物W1を保持するための静電チャック等を含む。第1チャック機構50は、第1被処理物W1を冷却または加熱するための温度調整機構を備えてもよい。第1チャック機構50は、第1チャック機構50から第1被処理物W1が離れるように第1被処理物W1を持ち上げるための第1リフト機構を備える。
 第1ツイスト機構52は、第1チャック機構50を回動可能に支持する。第1ツイスト機構52は、第1チャック機構50に保持される第1被処理物W1の被処理面の法線方向に延びる回転軸(ツイスト軸ともいう)まわりに第1チャック機構50を回転させ、第1被処理物W1のツイスト角φa1を調整する。第1ツイスト機構52は、例えば、第1被処理物W1の外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角φa1を調整する。ここで、第1被処理物W1のアライメントマークとは、例えば、ウェハの外周部に設けられるノッチやオリフラのことをいい、ウェハの結晶軸方向や周方向の角度位置の基準となるマークをいう。
 第1鉛直角度調整機構54は、第1ツイスト機構52を回動可能に支持する。第1鉛直角度調整機構54は、水平方向に延びる回転軸(搬送チルト軸ともいう)まわりに第1ツイスト機構52を回転させ、第1被処理物W1の鉛直方向の向きを調整する。第1被処理物W1の鉛直方向の向きは、水平方向の回転軸まわりの鉛直回動角φb1によって定義することができる。
 第1水平角度調整機構56は、第1鉛直角度調整機構54を回動可能に支持する。第1水平角度調整機構56は、鉛直方向に延びる回転軸(注入チルト軸ともいう)まわりに第1鉛直角度調整機構54を回転させ、第1被処理物W1の水平方向の向きを調整する。第1被処理物W1の水平方向の向きは、鉛直方向の回転軸まわりの水平回動角φc1によって定義することができる。
 第1往復運動機構58は、第1水平角度調整機構56を水平方向(x3方向)に移動させるよう構成される。第1往復運動機構58は、第1水平角度調整機構56をガイドレール44に沿って移動させる。第1往復運動機構58は、例えば、ガイドレール44に沿って水平方向(x3方向)に延びる第1ボールねじ58aを備える。第1往復運動機構58は、第1ボールねじ58aを回転させることにより、第1水平角度調整機構56を水平方向に直線移動させる。
 第2保持装置42は、注入処理の対象となる第2被処理物W2を保持可能に構成される。第2保持装置42は、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2をスキャンビームを横切る方向に往復移動させるよう構成される。第2保持装置42は、第2被処理物W2を水平方向(x3方向)に往復移動させるよう構成される。第2保持装置42は、水平方向(x3方向)に延びるガイドレール44に沿って移動可能である。
 第2保持装置42は、第1保持装置40と同様に構成されることができる。第2保持装置42は、第1保持装置40と同じ方向に移動可能である。第2保持装置42は、第1保持装置40と共通のガイドレール44に沿って移動可能である。なお、第2保持装置42は、第1保持装置40とは異なるガイドレールに沿って移動可能となるよう構成されてもよい。つまり、注入処理室14には、第1保持装置40が移動するための第1ガイドレールと、第2保持装置42が移動するための第2ガイドレールとが設けられてもよい。第2保持装置42は、第1保持装置40と同時に移動可能である。第2保持装置42は、第1保持装置40とは独立して移動可能である。
 第2保持装置42は、第2チャック機構60と、第2ツイスト機構62と、第2鉛直角度調整機構64と、第2水平角度調整機構66と、第2往復運動機構68とを備える。
 第2チャック機構60は、第2被処理物W2の裏面と接触して第2被処理物W2を保持するよう構成される。第2チャック機構60は、例えば、第2被処理物W2を保持するための静電チャック等を含む。第2チャック機構60は、第2被処理物W2を冷却または加熱するための温度調整機構を備えてもよい。第2チャック機構60は、第2チャック機構60から第2被処理物W2が離れるように第2被処理物W2を持ち上げるための第2リフト機構を備える。
 第2ツイスト機構62は、第2チャック機構60を回動可能に支持する。第2ツイスト機構62は、第2チャック機構60に保持される第2被処理物W2の被処理面の法線方向に延びる回転軸(ツイスト軸ともいう)まわりに第2チャック機構60を回転させ、第2被処理物W2のツイスト角φa2を調整する。第2ツイスト機構62は、例えば、第2被処理物W2の外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角φa2を調整する。
 第2鉛直角度調整機構64は、第2ツイスト機構62を回動可能に支持する。第2鉛直角度調整機構64は、水平方向に延びる回転軸(搬送チルト軸ともいう)まわりに第2ツイスト機構62を回転させ、第2被処理物W2の鉛直方向の向きを調整する。第2被処理物W2の鉛直方向の向きは、水平方向の回転軸まわりの鉛直回動角φb2によって定義することができる。
 第2水平角度調整機構66は、第2鉛直角度調整機構64を回動可能に支持する。第2水平角度調整機構66は、鉛直方向に延びる回転軸(注入チルト軸ともいう)まわりに第2鉛直角度調整機構64を回転させ、第2被処理物W2の水平方向の向きを調整する。第2被処理物W2の水平方向の向きは、鉛直方向の回転軸まわりの水平回動角φc2によって定義することができる。
 第2往復運動機構68は、第2水平角度調整機構66を水平方向(x3方向)に移動させるよう構成される。第2往復運動機構68は、第2水平角度調整機構66をガイドレール44に沿って移動させる。第2往復運動機構68は、例えば、ガイドレール44に沿って水平方向(x3方向)に延びる第2ボールねじ68aを備え、第2ボールねじ68aを回転させることにより、第2水平角度調整機構66を水平方向に直線移動させる。
 搬送装置16は、第1搬送装置70と、第2搬送装置72とを備える。第1搬送装置70および第2搬送装置72は、ビームラインAから水平方向(x3方向)に離れて配置される。図1の例において、第1搬送装置70は、ビームラインAから-x3方向に離れて配置され、第2搬送装置72は、ビームラインAから+x3方向に離れて配置される。第1搬送装置70および第2搬送装置72は、例えば、第1搬送装置70と第2搬送装置72の間にビームストッパ38が位置するように配置される。
 第1搬送装置70は、注入処理前の第1被処理物W1を注入処理室14に搬入し、注入処理後の第1被処理物W1を注入処理室14から搬出するよう構成される。第1搬送装置70は、第1保持装置40に第1被処理物W1を搬入し、第1保持装置40から第1被処理物W1を搬出する。第1搬送装置70は、例えば、第1被処理物W1を搬送するための第1搬送ロボット(図示せず)を備える。第1搬送装置70は、注入処理室14の側壁に設けられる第1搬送口74を通じて第1被処理物W1を搬送する。
 第2搬送装置72は、注入処理前の第2被処理物W2を注入処理室14に搬入し、注入処理後の第2被処理物W2を注入処理室14から搬出するよう構成される。第2搬送装置72は、第2保持装置42に第2被処理物W2を搬入し、第2保持装置42から第2被処理物W2を搬出する。第2搬送装置72は、例えば、第2被処理物W2を搬送するための第2搬送ロボット(図示せず)を備える。第2搬送装置72は、注入処理室14の側壁に設けられる第2搬送口76を通じて第2被処理物W2を搬送する。
 制御装置18は、イオン注入装置10の動作全般を制御する。制御装置18は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。制御装置18により提供される各種機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現されうる。
 制御装置18は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ18aと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ18bとを備える。制御装置18は、例えば、メモリ18bに格納されたプログラムをプロセッサ18aが実行することにより、プログラムにしたがってイオン注入装置10の動作全般を制御する。プロセッサ18aは、メモリ18bとは異なる任意の記憶装置に記憶されるプログラムを実行してもよいし、読取装置により任意の記録媒体から取得されるプログラムを実行してもよいし、ネットワークを介して取得されるプログラムを実行してもよい。プログラムが格納されるメモリ18bは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリであってもよいし、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、磁気抵抗メモリ、抵抗変化型メモリ、強誘電体メモリなどの不揮発性メモリであってもよい。不揮発性メモリ、磁気テープおよび磁気ディスクなどの磁気記録媒体ならびに光学ディスクなどの光学記録媒体は、非一時的(non-transitory)かつ有形(tangible)なコンピュータ読み取り可能(computer readable)である記録媒体(storage medium)の一例である。
 制御装置18が提供する各種機能は、プロセッサ18aおよびメモリ18bを備える単一の装置によって実現されてもよいし、それぞれがプロセッサ18aおよびメモリ18bを備える複数の装置の連携によって実現されてもよい。
 図3は、第1保持装置40および第2保持装置42の概略構成を示す正面図であり、注入処理室14におけるビーム進行方向(z3方向)に見たときの構成を示す。図3において、第1保持装置40は第1搬送位置80に配置され、第2保持装置42は第2搬送位置82に配置されている。第1搬送位置80は、第1搬送口74を通じて第1被処理物W1を第1保持装置40に搬入または第1保持装置40から搬出するための位置である。第1搬送位置80は、第1搬送口74の位置に対応する。第2搬送位置82は、第2搬送口76を通じて第2被処理物W2を第2保持装置42に搬入または第2保持装置42から搬出するための位置である。第2搬送位置82は、第2搬送口76の位置に対応する。第1搬送位置80および第2搬送位置82は、被処理物W1,W2にイオンビームを照射するための注入位置84から水平方向(x3方向)に離れている。
 注入位置84は、水平方向(x3方向)において注入処理室14の中央部に位置する。注入位置84は、第1搬送位置80と第2搬送位置82の間に位置する。注入位置84は、注入中央位置84Cと、注入左端位置84Lと、注入右端位置84Rとを含む。図3において、注入中央位置84C、注入左端位置84Lおよび注入右端位置84Rのそれぞれに位置する被処理物WC,WL,WRを二点鎖線で示している。注入中央位置84Cは、ビーム生成装置12によって生成されるスキャンビームSBが照射される位置に対応する。注入左端位置84Lは、注入中央位置84Cから左側(図3の+x3方向)にずれた位置であり、注入左端位置84Lに配置される被処理物WLの被処理面全体がスキャンビームSBと重ならないように設定される。注入右端位置84Rは、注入中央位置84Cから右側(図3の-x3方向)にずれた位置であり、注入右端位置84Rに配置される被処理物WRの被処理面全体がスキャンビームSBと重ならないように設定される。
 スキャンビームSBの鉛直方向(y方向)の照射範囲のサイズhは、被処理物W1,W2の被処理面の鉛直方向(y方向)のサイズhよりも大きい。スキャンビームSBの鉛直方向のサイズhは、例えば、被処理物W1,W2の被処理面の鉛直方向のサイズhの1.1倍以上3倍以下であり、好ましくは1.2倍以上2倍以下である。
 第1保持装置40は、注入位置84において水平方向(x3方向)に往復運動することにより、第1被処理物W1の被処理面の全体にスキャンビームSBを照射させる。第1保持装置40は、注入左端位置84Lから注入右端位置84Rまでの移動範囲Cにおいて往復運動することにより、第1被処理物W1の被処理面の全体にスキャンビームSBを照射させる。第1保持装置40は、第1搬送位置80に移動することにより、第1被処理物W1を搬入可能または搬出可能にする。第1保持装置40は、注入位置84と第1搬送位置80の間で移動可能である。第1保持装置40は、第1搬送位置80から注入左端位置84Lまでの第1可動範囲E1にわたって移動可能である。第1保持装置40は、第2搬送位置82には移動不可である。
 第2保持装置42は、注入位置84において水平方向(x3方向)に往復運動することにより、第2被処理物W2の被処理面の全体にスキャンビームSBを照射させる。第2保持装置42は、注入左端位置84Lから注入右端位置84Rまでの移動範囲Cにおいて往復運動することにより、第2被処理物W2の被処理面の全体にスキャンビームSBを照射させる。第2保持装置42は、第2搬送位置82に移動することにより、第2被処理物W2を搬入可能または搬出可能にする。第2保持装置42は、注入位置84と第2搬送位置82の間で移動可能である。第2保持装置42は、第2搬送位置82から注入右端位置84Rまでの第2可動範囲E2にわたって移動可能である。第2保持装置42は、第1搬送位置80には移動不可である。
 第1保持装置40に保持される第1被処理物W1にイオンビームを照射するための第1注入位置は、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2にイオンビームを照射するための第2注入位置と共通である。つまり、第1注入位置および第2注入位置は、共通の注入位置84に一致する。また、第1注入位置にて第1保持装置40が第1被処理物W1を往復移動させる第1移動範囲は、第2注入位置にて第2保持装置42が第2被処理物W2を往復移動させる第2移動範囲と共通である。つまり、第1移動範囲および第2移動範囲は、共通の移動範囲Cに一致する。第1移動範囲および第2移動範囲は、ビーム進行方向に見て重なっている。第1注入位置にて第1保持装置40によって保持される第1被処理物W1の鉛直方向の位置は、第2注入位置にて第2保持装置42によって保持される第2被処理物W2の鉛直方向の位置と共通である。第1注入位置にて第1保持装置40によって保持される第1被処理物W1のビーム進行方向の位置は、第2注入位置にて第2保持装置42によって保持される第2被処理物W2のビーム進行方向の位置と共通である。したがって、第1保持装置40および第2保持装置42は、第1被処理物W1および第2被処理物W2をスキャンビームSBに対して同じように往復移動できるよう構成される。したがって、第1被処理物W1および第2被処理物W2は、共通する注入環境においてスキャンビームSBが照射される。
 図4(a),(b)は、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1の水平方向の向きを模式的に示す上面図である。図4(a),(b)は、第1水平角度調整機構56による第1被処理物W1の水平方向の向きの変化を示す。なお、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2の水平方向の向きについても同様である。
 図4(a),(b)は、第1被処理物W1にスキャンビームSBが照射される注入工程における第1被処理物W1の向きを示す。図4(a)は、第1被処理物W1の被処理面がスキャンビームSBの進行方向(z3方向)と直交する場合を示す。図4(b)は、第1被処理物W1の被処理面がスキャンビームSBの進行方向(z3方向)と斜めに交差する場合を示す。図4(b)において、第1被処理物W1の被処理面は、スキャンビームSBの進行方向(z3方向)に対して水平チルト角α1を有する。水平チルト角α1は、第1被処理物W1の被処理面の法線に対するスキャンビームSBの入射方向の水平方向における傾きを示す。第1保持装置40は、第1水平角度調整機構56を駆動して水平回動角φc1を調整することにより、第1被処理物W1の水平チルト角α1を調整できる。第1保持装置40は、イオン注入時において、例えば±30度の範囲内、または±60度の範囲内で水平チルト角α1を調整できるよう構成される。
 図5(a)~(c)は、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1の鉛直方向の向きを模式的に示す側面図である。図5(a)~(c)は、第1鉛直角度調整機構54による第1被処理物W1の鉛直方向の向きの変化を示す。なお、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2の鉛直方向の向きについても同様である。
 図5(a)は、第1被処理物W1にスキャンビームSBが照射される注入工程における第1被処理物W1の向きの一例を示す。図5(a)において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面がスキャンビームSBの進行方向(z3方向)と直交する向きとなるように第1被処理物W1を保持する。つまり、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面が水平方向に沿わない向きで第1被処理物W1を保持する。図5(a)の例において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面が鉛直方向に沿う向きで第1被処理物W1を保持する。
 図5(b)は、第1被処理物W1にスキャンビームSBが照射される注入工程における第1被処理物W1の向きの別の例を示す。図5(b)において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面が鉛直方向に対して傾斜する向きで第1被処理物W1を保持する。図5(b)において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面が水平方向に沿わない向きで第1被処理物W1を保持する。図5(b)において、第1被処理物W1の被処理面は、スキャンビームSBの進行方向(z3方向)に対して鉛直チルト角β1を有する。鉛直チルト角β1は、第1被処理物W1の被処理面の法線に対するスキャンビームSBの入射方向の鉛直方向における傾きを示す。第1保持装置40は、第1鉛直角度調整機構54を駆動して鉛直回動角φb1を調整することにより、鉛直チルト角β1を調整できる。第1保持装置40は、イオン注入時において、例えば±30度の範囲内、または±60度の範囲内で鉛直チルト角β1を調整できるように構成される。
 図5(c)は、第1被処理物W1を第1保持装置40に搬入または第1保持装置40から搬出する搬送工程における第1被処理物W1の向きを示す。図5(c)において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面が水平方向に沿う向きで第1被処理物W1を保持する。図5(c)において、第1保持装置40は、第1被処理物W1が第1チャック機構50から離れるように、第1リフト機構50aを用いて第1被処理物W1を持ち上げる。これにより、第1被処理物W1を搬入または搬出するための第1搬送ロボットのアームが第1チャック機構50と第1被処理物W1の間の隙間50bに挿入できるようにする。なお、第1搬送ロボットのアームが第1チャック機構50と第1被処理物W1の間の隙間50bに挿入されることは必須ではない。第1搬送ロボットのアームは、第1被処理物W1の裏面ではなく、第1被処理物W1の外周部を支持するように構成されてもよい。この場合、隙間50bはごく僅かであってもよい。
 図6~図9は、第1保持装置40および第2保持装置42の動作の一例を示す正面図である。図6は、第1被処理物W1への第1注入工程が実施されている状況を示す。図6において、第1保持装置40は、注入位置84に配置され、第2保持装置42は、第2搬送位置82に配置されている。第1保持装置40は、第1被処理物W1への注入処理のために、注入位置84において矢印Xで示されるように水平方向に往復運動する。第2保持装置42は、第2搬送口76を通じて注入処理後の第2被処理物W2を搬出するために、第2搬送位置82において第2リフト機構60aを用いて第2被処理物W2をリフトアップする。第2保持装置42は、第2搬送口76を通じて注入処理前の第2被処理物W2を搬入するために、第2搬送位置82において第2リフト機構60aを用いて第2被処理物W2を受け取る。
 図6において、第1保持装置40は、第1被処理物W1の被処理面にスキャンビームSBが照射される向きとなるように第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、例えば、図4(a)に示されるように、水平チルト角α1が0となる向きで第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、例えば、図5(a)に示されるように、鉛直チルト角β1が0となる向きで第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、図4(b)に示されるように、水平チルト角α1が0ではない向きで第1被処理物W1を保持してもよい。第1保持装置40は、図5(b)に示されるように、鉛直チルト角β1が0ではない向きで第1被処理物W1を保持してもよい。第1保持装置40は、水平チルト角α1および鉛直チルト角β1のいずれも0ではない向きで第1被処理物W1を保持してもよい。
 図6において、第2保持装置42は、第2搬送口76を通じた第2被処理物W2の搬入または搬出が可能となる向きとなるように第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、図5(c)と同様に、第2被処理物W2の被処理面が水平方向に沿う向きで第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、第2リフト機構60aを用いて第2被処理物W2をリフトアップし、第2チャック機構60と第2被処理物W2の間に隙間60bを形成する。第2搬送装置72は、第2チャック機構60と第2被処理物W2の間の隙間60bに第2搬送ロボットのアームを挿入することにより、注入処理後の第2被処理物W2を搬出する。第2保持装置42は、第2搬送ロボットのアームによって第2リフト機構60aに注入処理前の第2被処理物W2が載置された場合、第2被処理物W2のリフトアップを解除し、第2チャック機構60に第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、注入処理前の第2被処理物W2を保持した後、第2鉛直角度調整機構64を駆動して鉛直回動角φb2を変化させ、第2被処理物W2の被処理面が水平方向に沿わない向きで第2被処理物W2を保持する。
 図7は、第1被処理物W1への第1注入工程から第2被処理物W2への第2注入工程に切り替える状況を示す。つまり、第1被処理物W1への第1注入工程が終了し、第2被処理物W2への第2注入工程が開始する状況を示す。図7において、第1保持装置40は、矢印F1で示されるように注入位置84から第1搬送位置80に向けて移動し、第2保持装置42は、矢印F2で示されるように、第2搬送位置82から注入位置84に向けて移動している。図7に示されるように、第1保持装置40および第2保持装置42を同時に同じ方向に移動させることにより、第1注入工程から第2注入工程への切り替えにかかる時間を短縮できる。
 図7において、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1と第2保持装置42に保持される第2被処理物W2の間の相対距離dが維持されるように第1保持装置40および第2保持装置42を移動させることができる。例えば、第1保持装置40および第2保持装置42の移動速度を同じとすることにより相対距離dを一定に維持できる。なお、第1保持装置40および第2保持装置42の移動速度を調整することにより、相対距離dが所定の上限値から下限値までの範囲内に維持されるように第1保持装置40および第2保持装置42を移動させてもよい。この場合、第1保持装置40の移動速度を第2保持装置42の移動速度より速くしてもよいし、遅くしてもよい。被処理物に対して水平方向に均一なドーズ分布とするイオン注入の場合、相対距離dはできるだけ小さいことが好ましい。被処理物に対して水平方向に不均一なドーズ分布とするイオン注入の場合、相対距離dは、スキャンビームSBの水平方向(x3方向)のサイズより大きいことが好ましい。
 図7において、注入工程が終了する第1被処理物W1を保持する第1保持装置40の移動速度は、第1保持装置40が取り得る最大速度であってもよい。第1保持装置40を最大速度で移動させることにより、第1被処理物W1への第1注入工程の完了から第1被処理物W1の搬出までにかかる時間を短縮でき、生産性を向上できる。一方、注入工程が開始する第2被処理物W2を保持する第2保持装置42の移動速度は、第2被処理物W2の注入条件に応じて定められてもよい。第2保持装置42を注入条件に応じた移動速度で移動させることにより、第2被処理物W2が注入位置84に移動した後にそのままの移動速度で第2被処理物W2への第2注入工程を開始できる。これにより、第2注入工程の開始を早めることができ、生産性を向上できる。
 図8は、第2被処理物W2への第2注入工程が実施されている状況を示す。図8において、第2保持装置42は、注入位置84に配置され、第1保持装置40は、第1搬送位置80に配置されている。第2保持装置42は、第2被処理物W2への注入処理のために、注入位置84において矢印Xで示されるように水平方向に往復運動する。第1保持装置40は、第1搬送口74を通じて注入処理後の第1被処理物W1を搬出するために、第1搬送位置80において第1リフト機構50aを用いて第1被処理物W1をリフトアップする。第1保持装置40は、第1搬送口74を通じて注入処理前の第1被処理物W1を搬入するために、第1搬送位置80において第1リフト機構50aを用いて第1被処理物W1を受け取る。
 図8において、第2保持装置42は、第2被処理物W2の被処理面にスキャンビームSBが照射される向きとなるように第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、例えば、図4(a)と同様に、水平チルト角α2が0となる向きで第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、例えば、図5(a)と同様に、鉛直チルト角β2が0となる向きで第2被処理物W2を保持する。第2保持装置42は、図4(b)と同様に、水平チルト角α2が0ではない向きで第2被処理物W2を保持してもよい。第2保持装置42は、図5(b)と同様に、鉛直チルト角β2が0ではない向きで第2被処理物W2を保持してもよい。第2保持装置42は、水平チルト角α2および鉛直チルト角β2のいずれも0ではない向きで第2被処理物W2を保持してもよい。
 図8において、第1保持装置40は、第1搬送口74を通じた第1被処理物W1の搬入または搬出が可能となる向きとなるように第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、図5(c)に示されるように、第1被処理物W1の被処理面が水平方向に沿う向きとなるように第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、第1リフト機構50aを用いて第1被処理物W1をリフトアップし、第1チャック機構50と第1被処理物W1の間に隙間50bを形成する。第1搬送装置70は、第1チャック機構50と第1被処理物W1の間の隙間50bに第1搬送ロボットのアームを挿入することにより、注入処理後の第1被処理物W1を搬出する。第1保持装置40は、第1搬送ロボットのアームによって第1リフト機構50aに注入処理前の第1被処理物W1が載置された場合、第1被処理物W1のリフトアップを解除し、第1チャック機構50に第1被処理物W1を保持する。第1保持装置40は、注入処理前の第1被処理物W1を保持した後、第1鉛直角度調整機構54を駆動して鉛直回動角φb1を変化させ、第1被処理物W1の被処理面が水平方向に沿わない向きで第1被処理物W1を保持する。
 図9は、第2被処理物W2への第2注入工程から第1被処理物W1への第1注入工程に切り替える状況を示す。つまり、第2被処理物W2への第2注入工程が終了し、第1被処理物W1への第1注入工程が開始する状況を示す。図9において、第1保持装置40は、矢印F3で示されるように第1搬送位置80から注入位置84に向けて移動し、第2保持装置42は、矢印F4で示されるように、注入位置84から第2搬送位置82に向けて移動している。図9に示されるように、第1保持装置40および第2保持装置42を同時に同じ方向に移動させることにより、第2注入工程から第1注入工程への切り替えにかかる時間を短縮できる。
 図9において、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1と第2保持装置42に保持される第2被処理物W2の間の相対距離dが維持されるように第1保持装置40および第2保持装置42を移動させることができる。例えば、第1保持装置40および第2保持装置42の移動速度を同じとすることにより相対距離dを一定に維持できる。なお、第1保持装置40および第2保持装置42の移動速度を調整することにより、相対距離dが所定の上限値から下限値までの範囲内に維持されるように第1保持装置40および第2保持装置42を移動させてもよい。この場合、第1保持装置40の移動速度を第2保持装置42の移動速度より速くしてもよいし、遅くしてもよい。相対距離dは、スキャンビームSBの水平方向(x3方向)のサイズより大きいことが好ましい。
 図9において、注入工程が終了する第2被処理物W2を保持する第2保持装置42の移動速度は、第2保持装置42が取り得る最大速度であってもよい。第2保持装置42を最大速度で移動させることにより、第2被処理物W2への第2注入工程の完了から第2被処理物W2の搬出までにかかる時間を短縮でき、生産性を向上できる。一方、注入工程が開始する第1被処理物W1を保持する第1保持装置40の移動速度は、第1被処理物W1の注入条件に応じて定められてもよい。第1保持装置40を注入条件に応じた移動速度で移動させることにより、第1被処理物W1が注入位置84に移動した後にそのままの移動速度で第1被処理物W1への第1注入工程を開始できる。これにより、第1注入工程の開始を早めることができ、生産性を向上できる。
 図10は、実施の形態に係るイオン注入方法の流れを示すフローチャートである。まず、第1保持装置40に注入処理前の第1被処理物W1を搬入する(S10)。S10において、第1保持装置40に保持される注入処理済の第1被処理物W1を搬出した後に、第1保持装置40に注入処理前の第1被処理物W1を搬入してもよい。次に、第2保持装置42を第2搬送位置82に移動させ(S12)、第1保持装置40を第1注入位置(例えば注入位置84)に移動させる(S14)。S12とS14は、同時に実行することができ、S12およびS14のそれぞれの実行期間が少なくとも部分的に重なるように実行できる。つづいて、第1注入位置にて第1保持装置40を往復移動させることにより、往復移動する第1被処理物W1にイオンビームを照射する(S16)。
 S16の実行前、実行中または実行後において、第2保持装置42に注入処理前の第2被処理物W2を搬入する(S18)。S18において、第2保持装置42に保持される注入処理済の第2被処理物W2を搬出した後に、第2保持装置42に注入処理前の第2被処理物W2を搬入してもよい。次に、第1保持装置40を第1搬送位置80に移動させ(S20)、第2保持装置42を第2注入位置(例えば注入位置84)に移動させる(S22)。S20とS22は、同時に実行することができ、S20およびS22のそれぞれの実行期間が少なくとも部分的に重なるように実行できる。つづいて、第2注入位置にて第2保持装置42を往復移動させることにより、往復移動する第2被処理物W2にイオンビームを照射する(S24)。
 図10に示すフローは、繰り返し実行することができる。例えば、繰り返し後のS10の処理は、S24の実行前、実行中または実行後において実行することができる。S24の実行前、実行中または実行後において、第1保持装置40に保持される注入処理済の第1被処理物W1を搬出し、第1保持装置40に注入処理前の第1被処理物W1を搬入することができる。図10に示すフローを繰り返すことにより、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1への第1注入工程と、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2への第2注入工程とを交互に繰り返し実行できる。図10に示すフローは、連続的に処理すべき複数の被処理物に対する注入工程が完了するまで、繰り返し実行できる。
 本実施の形態によれば、注入処理室14に複数の保持装置を設けることにより、被処理物の注入工程と搬送工程を並行して実行できる。例えば、第1保持装置40に保持される第1被処理物W1への第1注入工程と同時に、第2保持装置42にて第2被処理物W2の搬送工程を実行できる。また、第2保持装置42に保持される第2被処理物W2への第2注入工程と同時に、第1保持装置40にて第1被処理物W1の搬送工程を実行できる。その結果、単一の保持装置を用いて注入工程と搬送工程を交互に実行する場合に比べて、複数の被処理物の連続処理にかかる時間を短縮でき、生産性を向上できる。
 本実施の形態によれば、複数の保持装置を水平方向に往復移動させる構成とすることにより、複数の保持装置を鉛直方向に往復移動させる構成に比べて、注入処理室14および搬送装置16の構成の複雑化を抑制できる。また、複数の保持装置を水平方向に往復移動させる構成とすることにより、注入処理室14および搬送装置16の鉛直方向のサイズを抑制できる。その結果、一般的な半導体プロセス工場のフロアにおける高さ制限の範囲内となる外形サイズを有するイオン注入装置10を提供できる。
 本実施の形態によれば、複数の保持装置が共通のガイドレール44に沿って移動する構成とすることにより、注入位置における複数の保持装置のそれぞれの往復移動を共通化できる。その結果、複数の保持装置を用いることによって注入環境に差異が生じることを防ぐことができる。その結果、複数の被処理物に対する注入処理のばらつきを抑制しつつ、複数の被処理物に対する注入処理の生産性を向上できる。
 本実施の形態によれば、イオンビームを鉛直方向に往復走査し、被処理物を水平方向に往復移動させることにより、被処理物の被処理面全体にスキャンビームを効率的に照射できる。また、質量分析部24およびエネルギー分析部34においてイオンビームを水平方向に偏向させることにより、水平面内に沿って進行するビームラインAを構成することができ、ビーム生成装置12の鉛直方向のサイズを抑制できる。
 本実施の形態によれば、イオン源20のフロントスリット20cを水平方向に長いスリット形状とすることにより、引出部22を通じて水平方向に拡がったイオンビームを生成できる。その結果、イオン源20からスポット状のイオンビームを引き出す場合に比べて、ビーム電流のより大きなイオンビームの生成が容易となる。また、イオン源20から引き出されるイオンビームの鉛直方向のサイズが小さいため、イオンビームが通過するための質量分析磁石装置24aの対向磁極間の間隔を小さくできる。その結果、質量分析磁石装置24aのサイズを抑制できる。例えば、イオン源のフロントスリットを水平方向に狭くし、鉛直方向に長いスリット形状とする比較例に比べて、質量分析磁石装置24aのサイズを抑制しつつ、ビーム電流のより大きなイオンビームを生成できる。
 本実施の形態によれば、水平方向に拡がったイオンビームをビーム成形部26にてスポット状に成形することにより、ビーム走査部28による鉛直方向のビームスキャンに適したスポットビームを形成できる。ビーム走査部28によってスポットビームを鉛直方向にスキャンすることにより、鉛直方向のサイズが大きな被処理物へのイオン注入が可能となる。本実施の形態によれば、鉛直方向のサイズが大きな被処理物に対してビーム電流のより大きなスキャンビームを照射できるため、注入処理の生産性を向上できる。
 本実施の形態では、イオン源20における磁場B1の印加方向と質量分析部24における磁場B2の印加方向が直交するため、両者が干渉することによってビーム品質や磁場制御に悪影響を与える可能性が高くなる。一方、イオン源における磁場の印加方向が鉛直方向となる比較例の場合、イオン源における磁場の印加方向と質量分析部における磁場の印加方向が平行であるため、両者の磁場が多少干渉しても大きな問題とはならない。本実施の形態によれば、引出部22と質量分析部24の間に磁気シールド23を設けることにより、イオン源20に印加される水平方向の磁場B1と質量分析部24に印加される鉛直方向の磁場B2の間の磁場干渉を抑制できる。これにより、イオン源20におけるプラズマ生成効率と質量分析部24の質量分析精度を両立させることができる。
 本実施の形態は、鉛直方向のサイズが大きな被処理物へのイオン注入処理に適用できる。鉛直方向のサイズが大きな被処理物の一例は、フラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に用いられる大型基板である。このような大型基板の鉛直方向および水平方向のサイズは、例えば1m×2m以上である。このような大型の被処理物を鉛直方向に往復移動させることは現実的ではない。本実施の形態によれば、被処理物を水平方向に往復移動させるため、被処理物を鉛直方向に往復移動させる場合に比べて、大型基板の往復移動が容易である。水平方向に往復移動する大型基板に対し、鉛直方向にスキャンされるスキャンビームを照射することにより、大型基板に対するイオン注入処理を実行できる。
 イオン注入装置10は、被処理物がFPD用の大型基板の場合、ビーム平行化部30、加速減速部32およびエネルギー分析部34の少なくとも一つを備えなくてもよい。注入処理室14は、被処理物がFPD用の大型基板の場合、被処理物を水平方向に移動させることにより、被処理物を注入処理室14に搬入し、被処理物を注入処理室14から搬出してもよい。例えば、注入処理前の大型基板を注入処理室14の右側(または左側)から搬入し、大型基板を注入処理室14にて左方向(または右方向)に移動させてイオン注入処理を実行し、注入処理後の大型基板を注入処理室14の左側(または右側)から搬出してもよい。これにより、イオン注入装置10は、大型基板をインラインで連続的に処理してもよい。
 図11は、変形例に係るイオン注入方法の流れを示すフローチャートである。図11のフローでは、第1被処理物W1に対する第1注入工程と第2被処理物W2に対する第2注入工程を並行して実行する。
 まず、第1保持装置40に注入処理前の第1被処理物W1を搬入する(S30)。S30において、第1保持装置40に保持される注入処理済の第1被処理物W1を搬出した後に、第1保持装置40に注入処理前の第1被処理物W1を搬入してもよい。また、第2保持装置42に注入処理前の第2被処理物W2を搬入する(S32)。S32において、第2保持装置42に保持される注入処理済の第2被処理物W2を搬出した後に、第2保持装置42に注入処理前の第2被処理物W2を搬入してもよい。S30とS32の工程の順序は問わず、S30の開始後にS32を開始してもよいし、S32の開始後にS30を開始してもよい。S30およびS32の工程は同時に実行されてもよい。
 つづいて、第1保持装置40を第1注入位置(例えば注入位置84)に移動させる(S34)。第1注入位置にて第1保持装置40を往復移動させることにより、往復移動する第1被処理物W1にイオンビームを照射する(S36)。S36における第1被処理物W1の往復移動の回数は特に限られないが、例えば、1往復のみでもよい。その後、第1保持装置40を第1注入位置から退避させ(S38)、第2保持装置42を第2注入位置(例えば注入位置84)に移動させる(S40)。第1保持装置40を退避させる第1退避位置は、例えば、第1搬送位置80と第1注入位置の間に位置する。第1保持装置40を退避させる第1退避位置は、第1搬送位置80と同じであってもよい。
 つづいて、第2注入位置にて第2保持装置42を往復移動させることにより、往復移動する第2被処理物W2にイオンビームを照射する(S42)。S42における第2被処理物W2の往復移動の回数は特に限られないが、例えば、1往復のみでもよい。その後、第2保持装置42を第2注入位置から退避させる(S44)。第2保持装置42を退避させる第2退避位置は、例えば、第2搬送位置82と第2注入位置の間に位置する。第2保持装置42を退避させる第2退避位置は、第2搬送位置82と同じであってもよい。
 第1被処理物W1および第2被処理物W2に対する注入処理が完了していなければ(S46のN)、注入処理が完了するまで、S34~S44の工程を繰り返す。例えば、第1被処理物W1および第2被処理物W2の注入処理の完了に必要な往復移動の回数が3回(つまり、3往復)であれば、S34~S44の工程が3回繰り返される。この場合、第1被処理物W1が1往復してイオンビームが照射される工程と、第2被処理物W2が1往復してイオンビームが照射される工程とが交互に3回ずつ実行される。この場合、第1被処理物W1と第2被処理物W2の間の相対距離dをできるだけ小さくしてS38とS40を同時に実行することができ、また、第1被処理物W1と第2被処理物W2の間の相対距離dをできるだけ小さくしてS44とS34を同時に実行できる。つまり、第1被処理物W1と第2被処理物W2の間の相対距離dをできるだけ小さくした状態を維持して、第1被処理物W1および第2被処理物W2を同一方向に同期させて往復移動させることができる。これにより、イオンビームの利用効率を向上させることができる。
 S46にて注入処理が完了していれば(S46のY)、第1保持装置40を第1搬送位置80に移動させ(S48)、第2保持装置42を第2搬送位置82に移動させる(S50)。S48とS50の工程の順序は問わず、S48の開始後にS50を開始してもよいし、S50の開始後にS48を開始してもよい。S48およびS50の工程は同時に実行されてもよい。また、第1退避位置が第1搬送位置80である場合、S38の工程において第1保持装置40が第1搬送位置80にすでに配置されているため、S48の工程が省略されてもよい。同様に、第2退避位置が第2搬送位置82である場合、S44の工程において第2保持装置42が第2搬送位置82にすでに配置されているため、S50の工程が省略されてもよい。
 図11に示すフローは、連続的に処理すべき複数の被処理物に対する注入工程が完了するまで、繰り返し実行できる。図11のフローによれば、第1保持装置40にて第1被処理物W1を搬入および搬出する第1搬送工程と、第2保持装置42にて第2被処理物W2を搬入および搬出する第2搬送工程とを同時に実行できるため、生産性を向上できる。図11に示すフローは、被処理物の搬出および搬入にかかる搬送時間に比べて、被処理物にイオンビームが照射される注入時間が十分に短い(例えば半分以下である)場合に適用されることが好ましい。また、図11に示すフローは、被処理物の搬出および搬入にかかる搬送時間に比べて、被処理物にイオンビームが照射される注入時間が十分に長い(例えば2倍以上である)場合に適用されることも好ましい。図11に示すフローは、被処理物にイオンビームが照射される注入時間が被処理物の搬出および搬入にかかる搬送時間と同程度の場合にも適用できるが、この場合、図10に示すフローの方が生産性が高いかもしれない。
 上述の実施の形態では、ビーム走査部28およびビーム平行化部30を用いて、ビーム生成装置12がスキャンビームを生成する場合について示した。別の実施の形態では、ビーム生成装置がリボンビームを生成してもよい。ビーム生成装置は、ビーム走査部28の代わりにリボンビーム生成部を備えてもよい。リボンビーム生成部は、スポット状のイオンビームを鉛直方向に発散させることによってリボンビームを生成する。リボンビーム生成部は、電場式または磁場式のビーム発散装置によって構成されてもよい。
 上述の実施の形態では、イオン源20から引き出されるイオンビームが水平方向に拡がったリボン状ビームである場合について示した。別の実施の形態では、イオン源から引き出されるイオンビームが鉛直方向に拡がったリボンビームであってもよい。この場合、イオン源のフロントスリットは、鉛直方向の開口幅が長く、水平方向の開口幅が短いスリット形状を有する。同様に、引出部の引出電極は、鉛直方向の開口幅が長く、水平方向の開口幅が短いスリット形状を有する。この場合、質量分析部は、鉛直方向に拡がったリボンビームを水平方向に偏向させるよう構成される。この場合、ビーム生成装置は、ビーム走査部28およびビーム平行化部30を備えなくてもよい。この場合、イオン源および引出部は、鉛直方向に拡がったリボンビームを生成するためのリボンビーム生成部ということができる。
 上述の別の実施の形態において、鉛直方向に拡がったリボンビームの鉛直方向における照射範囲のサイズは、被処理物の鉛直方向のサイズよりも大きい。したがって、リボンビームを生成するビーム生成装置は、鉛直方向における照射範囲のサイズが被処理物の被処理面のサイズよりも大きい照射範囲にわたってイオンビームを照射するよう構成される。なお、上述の実施の形態において、スキャンビームを生成するビーム生成装置12は、鉛直方向における照射範囲のサイズが被処理物の被処理面のサイズよりも大きい照射範囲にわたってイオンビームを照射するよう構成される。
 上述の実施の形態では、注入処理室14に複数の保持装置40,42を設ける場合について示した。別の実施の形態では、注入処理室14に単一の保持装置のみが設けられてもよい。単一の保持装置は、上述の第1保持装置40または第2保持装置42のいずれかと同様に構成されてもよい。
 上述の実施の形態では、スキャンビームSBのスキャン方向が鉛直方向である場合について示した。別の実施の形態では、スキャンビームSBのスキャン方向が鉛直方向に対して傾斜するように構成されてもよい。この場合、ビーム走査部28、ビーム平行化部30、加速減速部32およびエネルギー分析部34は、(例えば、質量分析部24より下流であってビーム走査部28より上流の位置において)z2方向に延びるビームラインAを回転軸として回転させた位置に(つまり、傾斜した向きで)配置される。なお、ビーム走査部28およびビーム平行化部30のみを回転させ、加速減速部32およびエネルギー分析部34の少なくとも一方については回転させない配置としてもよい。この場合、スキャンビームSBのスキャン方向は、鉛直方向から45度以内であることが好ましい。
 上述の実施の形態では、第1保持装置40および第2保持装置42が水平方向に移動する場合について示した。別の実施の形態では、第1保持装置40および第2保持装置42の移動方向が水平方向でなくてもよく、水平方向に対して傾斜してもよい。第1保持装置40および第2保持装置42の移動方向は、水平方向とは異なる方向であって、スキャンビームを横切る任意の方向であってもよい。
 本開示のある態様は以下の通りである。
(項1)イオンを生成するイオン源と、
 前記イオン源から前記イオンを引き出してイオンビームを生成する引出部と、
 前記イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成するよう構成されるビーム走査部と、
 被処理物を保持可能に構成される保持装置であって、前記保持装置に保持される前記被処理物を前記スキャンビームを横切る方向に往復移動させるよう構成される保持装置と、を備えるイオン注入装置。
(項2)前記保持装置は、前記保持装置に保持される前記被処理物を前記水平方向に往復移動させるよう構成される、項1に記載のイオン注入装置。
(項3)前記スキャン方向は、鉛直方向から45度以内となる方向である、項1または項2に記載のイオン注入装置。
(項4)前記スキャン方向は、鉛直方向である、項1または項2に記載のイオン注入装置。
(項5)前記イオン源は、前記引出部によって引き出される前記イオンが通過するフロントスリットを備え、
 前記フロントスリットの前記水平方向の開口幅は、前記フロントスリットの鉛直方向の開口幅よりも大きい、項1から項4のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項6)前記イオン源は、
 内部空間を有し、前記内部空間にて生成されるプラズマから前記イオンを引き出すための前記フロントスリットを有するアークチャンバと、
 前記内部空間に前記水平方向の磁場を印加する磁石装置と、を備える項5に記載のイオン注入装置。
(項7)前記引出部は、前記イオンビームが通過する引出開口を有する引出電極を備え、
 前記引出開口の前記水平方向の開口幅は、前記引出開口の前記鉛直方向の開口幅よりも大きい、項5または項6に記載のイオン注入装置。
(項8)前記引出部と前記ビーム走査部の間に設けられ、前記イオンビームを前記水平方向に偏向させる質量分析部をさらに備える、項1から項7のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項9)前記質量分析部は、前記イオンビームに鉛直方向の磁場を印加する磁石装置を備える、項8に記載のイオン注入装置。
(項10)前記引出部と前記質量分析部の間に設けられ、前記イオンビームが通過する通過開口を有する磁気シールドをさらに備える、項8または項9に記載のイオン注入装置。
(項11)前記質量分析部と前記ビーム走査部の間に設けられ、前記イオンビームの断面形状および収束発散角の少なくとも一方を調整するための少なくとも一つのレンズ装置を備えるビーム成形部をさらに備える、項8から項10のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項12)前記ビーム走査部の下流側に設けられ、前記スキャンビームを平行化するビーム平行化部をさらに備える、項1から項11のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項13)前記スキャンビームを前記水平方向に偏向させる偏向装置と、前記偏向装置の下流側に設けられるエネルギー分析スリットとを備えるエネルギー分析部をさらに備える、項1から項12のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項14)前記偏向装置は、前記スキャンビームを挟んで対向する電極対と、前記電極対に直流電圧を印加する電源とを備える、項13に記載のイオン注入装置。
(項15)前記偏向装置の前記電極対は、前記水平方向に対向するように配置される、項14に記載のイオン注入装置。
(項16)前記偏向装置の前記電極対は、前記スキャン方向と直交する方向に対向するように配置される、項14に記載のイオン注入装置。
(項17)イオン源を用いてイオンを生成することと、
 前記イオン源から前記イオンを引き出してイオンビームを生成することと、
 前記イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成することと、
 前記スキャンビームを横切る方向に被処理物を往復移動させることと、を備えるイオン注入方法。
 本開示のある態様は以下の通りである。
(項18)被処理物に照射されるイオンビームを生成し、鉛直方向における照射範囲のサイズが前記被処理物の被処理面のサイズよりも大きい前記照射範囲にわたって前記イオンビームを照射するよう構成されるビーム生成装置と、
 第1被処理物を保持可能に構成される第1保持装置であって、前記第1保持装置に保持される前記第1被処理物が前記照射範囲を横切るように前記第1被処理物を水平方向に往復移動させるよう構成される第1保持装置と、
 第2被処理物を保持可能に構成される第2保持装置であって、前記第2保持装置に保持される前記第2被処理物が前記照射範囲を横切るように前記第2被処理物を前記水平方向に往復移動させるよう構成される第2保持装置と、を備えるイオン注入装置。
(項19)前記第1保持装置は、前記第1被処理物に前記イオンビームを照射するための第1注入位置と、前記第1被処理物を前記第1保持装置に搬入または前記第1保持装置から搬出するための第1搬送位置との間で移動可能となるよう構成され、
 前記第2保持装置は、前記第2被処理物に前記イオンビームを照射するための第2注入位置と、前記第2被処理物を前記第2保持装置に搬入または前記第2保持装置から搬出するための第2搬送位置との間で移動可能となるよう構成される、項18に記載のイオン注入装置。
(項20)前記第1注入位置および前記第2注入位置は、前記第1搬送位置と前記第2搬送位置の間に位置する、項19に記載のイオン注入装置。
(項21)前記第1注入位置にて前記第1保持装置が前記第1被処理物を往復移動させる第1移動範囲は、前記第2注入位置にて前記第2保持装置が前記第2被処理物を往復移動させる第2移動範囲とビーム進行方向に見て重なる、項19または項20に記載のイオン注入装置。
(項22)前記第1移動範囲は、前記第2移動範囲と共通である、項21に記載のイオン注入装置。
(項23)前記第1注入位置にて前記第1保持装置によって保持される前記第1被処理物の前記鉛直方向の位置は、前記第2注入位置にて前記第2保持装置によって保持される前記第2被処理物の前記鉛直方向の位置と共通である、項19から項22のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項24)前記第1注入位置にて前記第1保持装置によって保持される前記第1被処理物のビーム進行方向の位置は、前記第2注入位置にて前記第2保持装置によって保持される前記第2被処理物の前記ビーム進行方向の位置と共通である、項19から項23のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項25)前記第1保持装置は、前記第2搬送位置に移動不可となるよう構成され、
 前記第2保持装置は、前記第1搬送位置に移動不可となるよう構成される、項19から項24のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項26)前記第1保持装置および前記第2保持装置は、同じ方向に移動可能である、項18から項25のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項27)前記第1保持装置および前記第2保持装置は、前記第1保持装置によって保持される前記第1被処理物と前記第2保持装置によって保持される前記第2被処理物の間の相対距離を維持したまま、同じ方向に同時に移動可能である、項18から項26のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項28)前記第1保持装置および前記第2保持装置は、共通のガイドレールに沿って移動可能である、項18から項27のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項29)前記第1保持装置は、前記第1被処理物の前記鉛直方向の向きを調整する第1鉛直角度調整機構と、前記第1被処理物の前記水平方向の向きを調整する第1水平角度調整機構とを備え、
 前記第2保持装置は、前記第2被処理物の前記鉛直方向の向きを調整する第2鉛直角度調整機構と、前記第2被処理物の前記水平方向の向きを調整する第2水平角度調整機構とを備える、項18から項28のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項30)前記第1保持装置は、前記水平方向の回転軸まわりに回動して前記第1被処理物の向きを調整する第1鉛直角度調整機構と、前記鉛直方向の回転軸まわりに回動して前記第1被処理物の向きを調整する第1水平角度調整機構とを備え、
 前記第2保持装置は、前記水平方向の回転軸まわりに回動して前記第2被処理物の向きを調整する第2鉛直角度調整機構と、前記鉛直方向の回転軸まわりに回動して前記第2被処理物の向きを調整する第2水平角度調整機構とを備える、項18から項28のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項31)前記第1保持装置は、前記第1被処理物の向きを調整する第1鉛直角度調整機構を備え、前記第1鉛直角度調整機構は、前記第1被処理物の搬入または搬出時に前記第1被処理物の被処理面が前記水平方向に沿う向きに調整し、前記第1被処理物への前記イオンビームの照射時に前記第1被処理物の前記被処理面が前記水平方向に沿わない向きに調整するように構成され、
 前記第2保持装置は、前記第2被処理物の向きを調整する第2鉛直角度調整機構を備え、前記第2鉛直角度調整機構は、前記第2被処理物の搬入または搬出時に前記第2被処理物の被処理面が前記水平方向に沿う向きに調整し、前記第2被処理物への前記イオンビームの照射時に前記第2被処理物の前記被処理面が前記水平方向に沿わない向きに調整するように構成される、項18から項28のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項32)前記第1保持装置は、前記第1被処理物の前記水平方向の向きを調整する第1水平角度調整機構と、前記第1被処理物のツイスト角度を調整する第1ツイスト機構とを備え、
 前記第2保持装置は、前記第2被処理物の前記水平方向の向きを調整する第2水平角度調整機構と、前記第2被処理物のツイスト角度を調整する第2ツイスト機構とを備える、項18から項31のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項33)前記ビーム生成装置は、前記照射範囲にわたって前記イオンビームを往復スキャンさせるビーム走査部を備える、項18から項32のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項34)前記ビーム生成装置は、前記照射範囲のサイズに対応したビームサイズを有するリボンビームを生成するリボンビーム生成部を備える、項18から項32のいずれか一つに記載のイオン注入装置。
(項35)被処理物に照射されるイオンビームを生成することと、
 鉛直方向における照射範囲のサイズが前記被処理物の被処理面のサイズよりも大きい前記照射範囲にわたって前記イオンビームを照射することと、
 第1被処理物を第1保持装置に保持させることと、
 前記第1保持装置を用いて、前記第1被処理物が前記照射範囲を横切るように前記第1被処理物を水平方向に往復移動させることと、
 第2被処理物を第2保持装置に保持させることと、
 前記第2保持装置を用いて、前記第2被処理物が前記照射範囲を横切るように前記第2被処理物を前記水平方向に往復移動させることと、を備えるイオン注入方法。
 以上、本開示を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本開示は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせてもよいし、置換してもよい。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組み合わせや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような組み替えや変形が加えられた実施の形態も本開示に係るイオン注入装置およびイオン注入方法の範囲に含まれ得る。
 本開示に係る実施の形態は、本開示に係る方法を記述するコンピュータ読み取り可能な一以上のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態を取ってもよいし、このようなコンピュータプログラムが格納される非一時的かつ有形な記録媒体(例えば、不揮発性メモリ、磁気テープ、磁気ディスクまたは光学ディスク)の形態を取ってもよい。プロセッサは、このようなコンピュータプログラムを実行することにより、本開示に係る方法を実現してもよい。
 本発明の限定的ではない例示的な実施の形態によれば、イオン注入工程の生産性を向上させるための技術を提供できる。
 10…イオン注入装置、12…ビーム生成装置、14…注入処理室、16…搬送装置、18…制御装置、20…イオン源、20a…アークチャンバ、20b…内部空間、20c…フロントスリット、22…引出部、22a…第1引出電極、22b…第2引出電極、22c…第1引出開口、22d…第2引出開口、23…磁気シールド、24…質量分析部、24a…質量分析磁石装置、24b…質量分析スリット、26…ビーム成形部、26a…レンズ装置、28…ビーム走査部、28a,28b…走査電極対、30…ビーム平行化部、30a,30b…平行化レンズ電極、34…エネルギー分析部、34a,34b…AEF電極対、34c…エネルギー分析スリット、40…第1保持装置、42…第2保持装置、44…ガイドレール、50…第1チャック機構、50a…第1リフト機構、52…第1ツイスト機構、54…第1鉛直角度調整機構、56…第1水平角度調整機構、58…第1往復運動機構、60…第2チャック機構、60a…第2リフト機構、62…第2ツイスト機構、64…第2鉛直角度調整機構、66…第2水平角度調整機構、68…第2往復運動機構、70…第1搬送装置、72…第2搬送装置、74…第1搬送口、76…第2搬送口、80…第1搬送位置、82…第2搬送位置、84…注入位置、A…ビームライン、SB…スキャンビーム、W1…第1被処理物、W2…第2被処理物、C…移動範囲、E1…第1可動範囲、E2…第2可動範囲。

Claims (17)

  1.  イオンを生成するイオン源と、
     前記イオン源から前記イオンを引き出してイオンビームを生成する引出部と、
     前記イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成するよう構成されるビーム走査部と、
     被処理物を保持可能に構成される保持装置であって、前記保持装置に保持される前記被処理物を前記スキャンビームを横切る方向に往復移動させるよう構成される保持装置と、を備えるイオン注入装置。
  2.  前記保持装置は、前記保持装置に保持される前記被処理物を前記水平方向に往復移動させるよう構成される、請求項1に記載のイオン注入装置。
  3.  前記スキャン方向は、鉛直方向から45度以内となる方向である、請求項1に記載のイオン注入装置。
  4.  前記スキャン方向は、鉛直方向である、請求項1に記載のイオン注入装置。
  5.  前記イオン源は、前記引出部によって引き出される前記イオンが通過するフロントスリットを備え、
     前記フロントスリットの前記水平方向の開口幅は、前記フロントスリットの鉛直方向の開口幅よりも大きい、請求項1に記載のイオン注入装置。
  6.  前記イオン源は、
     内部空間を有し、前記内部空間にて生成されるプラズマから前記イオンを引き出すための前記フロントスリットを有するアークチャンバと、
     前記内部空間に前記水平方向の磁場を印加する磁石装置と、を備える請求項5に記載のイオン注入装置。
  7.  前記引出部は、前記イオンビームが通過する引出開口を有する引出電極を備え、
     前記引出開口の前記水平方向の開口幅は、前記引出開口の前記鉛直方向の開口幅よりも大きい、請求項5または6に記載のイオン注入装置。
  8.  前記引出部と前記ビーム走査部の間に設けられ、前記イオンビームを前記水平方向に偏向させる質量分析部をさらに備える、請求項1に記載のイオン注入装置。
  9.  前記質量分析部は、前記イオンビームに鉛直方向の磁場を印加する磁石装置を備える、請求項8に記載のイオン注入装置。
  10.  前記引出部と前記質量分析部の間に設けられ、前記イオンビームが通過する通過開口を有する磁気シールドをさらに備える、請求項8または9に記載のイオン注入装置。
  11.  前記質量分析部と前記ビーム走査部の間に設けられ、前記イオンビームの断面形状および収束発散角の少なくとも一方を調整するための少なくとも一つのレンズ装置を備えるビーム成形部をさらに備える、請求項8または9に記載のイオン注入装置。
  12.  前記ビーム走査部の下流側に設けられ、前記スキャンビームを平行化するビーム平行化部をさらに備える、請求項1に記載のイオン注入装置。
  13.  前記スキャンビームを前記水平方向に偏向させる偏向装置と、前記偏向装置の下流側に設けられるエネルギー分析スリットとを備えるエネルギー分析部をさらに備える、請求項1に記載のイオン注入装置。
  14.  前記偏向装置は、前記スキャンビームを挟んで対向する電極対と、前記電極対に直流電圧を印加する電源とを備える、請求項13に記載のイオン注入装置。
  15.  前記偏向装置の前記電極対は、前記水平方向に対向するように配置される、請求項14に記載のイオン注入装置。
  16.  前記偏向装置の前記電極対は、前記スキャン方向と直交する方向に対向するように配置される、請求項14に記載のイオン注入装置。
  17.  イオン源を用いてイオンを生成することと、
     前記イオン源から前記イオンを引き出してイオンビームを生成することと、
     前記イオンビームを水平方向とは異なるスキャン方向に往復スキャンさせてスキャンビームを生成することと、
     前記スキャンビームを横切る方向に被処理物を往復移動させることと、を備えるイオン注入方法。
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