WO2024116736A1 - 有価金属の製造方法 - Google Patents

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廃リチウムイオン電池を含む原料から乾式製錬プロセスにより有価金属を回収して製造する方法において、二酸化炭素排出量を低減しながら、有価金属を有効に回収することのできる技術を提供する。 本発明は、廃リチウムイオン電池を含む原料からの有価金属の製造方法であって、廃リチウムイオン電池を含む原料を粉砕して粉砕物とする粉砕工程S1と、粉砕物を篩別する篩別工程S2と、篩下物を焙焼しその篩下物に含まれる有機物を分解する焙焼工程S3と、得られた焙焼物を浮遊選鉱処理に供し、少なくとも、焙焼工程S3にて有機物を分解して得られた炭素を回収する浮遊選鉱工程S4と、得られた浮遊選鉱物を加熱して還元熔融し、スラグと有価金属を含むメタルとを含む熔融物を得る熔融工程S5と、を有し、焙焼工程S3では、篩下物を300℃以上600℃以下の温度で焙焼する。

Description

有価金属の製造方法
 本発明は、廃リチウムイオン電池からの有価金属の製造方法に関する。
 近年、軽量で大出力の二次電池としてリチウムイオン電池が普及している。よく知られているリチウムイオン電池は、外装缶内に、負極材と、正極材と、セパレータと、電解液とを封入した構造を有している。例えば、外装缶は、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)等の金属から構成される。また、負極材は、負極集電体(銅箔等)に固着させた負極活物質(黒鉛等)から構成され、正極材は、正極集電体(アルミニウム箔等)に固着させた正極活物質(ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等)から構成され。また、セパレータは、ポリプロピレンの多孔質樹脂フィルム等から構成され、電解液は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を含んで構成される。
 リチウムイオン電池の主要な用途の一つにハイブリッド自動車や電気自動車があり、自動車のライフサイクルと共に、搭載されたリチウムイオン電池も将来大量に廃棄される見込みとなっている。廃リチウムイオン電池(単に「廃電池」ともいう)の再利用法として、高温炉でその廃電池を全量熔解する乾式製錬プロセスが提案されている。
 廃リチウムイオン電池には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)等の有価金属のほかに、炭素(C)、アルミニウム、フッ素(F)、リン(P)等の不純物成分が含まれる。そのため、廃リチウムイオン電池から有価金属を回収するにあたっては、これらの不純物成分を除去する必要がある。特に、これらの不純物成分の中で、炭素は、残留するとメタルとスラグの分離性を妨げてしまう。また、炭素は、還元剤として寄与するため、他の物質の適正な酸化除去を妨げる場合がある。このような炭素を除去する方法として、空気や酸素を吹き込みながら800℃程度の温度で焙焼を行う酸化焙焼がある。
 例えば特許文献1には、廃電池から有価金属を回収する方法において、乾式工程に先行して酸化処理を行う予備酸化工程を設けることにより、従来困難であった熔融工程での安定した酸化度の制御が可能となり、安定的に高い回収率で有価金属を回収することが可能となることについて開示されている。
 しかしながら、廃電池を含む原料から乾式製錬プロセスにより有価金属を回収するにあたり、二酸化炭素排出量を低減しながらその有価金属を有効に回収することに関する技術は、これまで提案されていない。
特許第5434934号
 本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、廃リチウムイオン電池を含む原料から乾式製錬プロセスにより有価金属を回収して製造する方法において、二酸化炭素排出量を低減しながら、有価金属を有効に回収することのできる技術を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、廃リチウムイオン電池を含む原料を粉砕し、得られた粉砕物を篩別けして得られる篩下物に対し所定の温度で焙焼処理を行うことによってその篩下物に含まれる有機物を分解し、その後、焙焼物に対して浮遊選鉱処理を施して有機物が分解されて得られた炭素を分離回収することで、二酸化炭素排出量を低減しながら、有価金属を有効に回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
 (1)本発明の第1の発明は、廃リチウムイオン電池を含む原料からの有価金属の製造方法であって、前記廃リチウムイオン電池を含む原料を粉砕して粉砕物とする粉砕工程と、前記粉砕物を篩別する篩別工程と、得られた篩下物を焙焼し、該篩下物に含まれる有機物を分解する焙焼工程と、前記焙焼工程で得られた焙焼物を浮遊選鉱処理に供し、少なくとも、該焙焼工程にて有機物を分解して得られた炭素を回収する浮遊選鉱工程と、前記浮遊選鉱工程で得られた浮遊選鉱物を加熱して還元熔融し、スラグと前記有価金属を含むメタルとを含む熔融物を得る熔融工程と、を有し、前記焙焼工程では、前記篩下物を300℃以上600℃以下の温度で焙焼する、有価金属の製造方法である。
 (2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記焙焼工程では、前記篩下物を300℃以上500℃未満の温度で焙焼する、有価金属の製造方法である。
 本発明によれば、二酸化炭素排出量を低減しながら、有価金属を有効に回収することができる。
有価金属の製造方法の流れの一例を示す工程図である。
 以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
 本実施の形態に係る方法は、廃リチウムイオン電池を含む原料から有価金属を分離回収して製造する方法である。したがって、有価金属の回収方法とも言い換えることができる。本実施の形態に係る方法は、主として乾式製錬プロセスによる方法であるが、乾式製錬プロセスと湿式製錬プロセスとから構成されていてもよい。
 従来、廃リチウムイオン電池を含む原料から乾式製錬プロセスによって有価金属を回収する方法は知られているが、二酸化炭素の排出量を低減しながら有効に有価金属を回収する方法が求められている。
 乾式製錬プロセスにおける二酸化炭素の排出量は、その大部分が、原料中に含まれている炭素によるもの(約39%)と、原料中の炭素除去のために行う酸化焙焼法で使用する燃料(約26%)と、が占めている。原料中の炭素は、主として、有価金属であるニッケル(Ni)やコバルト(Co)により構成される正極活物質に付着接着した、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダーとして含まれている。あるいは、負極活物質の構成材料として含まれている。
 本実施の形態に係る方法では、原料中の炭素の除去方法として、従来の酸化焙焼法から浮遊選鉱法に変更し、これにより、廃リチウムイオン電池を含む原料から、二酸化炭素の排出量を低減させるようにしている。
 具体的に、図1は、本実施の形態に係る方法の流れの一例を示す工程図である。この方法は、廃リチウムイオン電池を含む原料を粉砕して粉砕物とする粉砕工程S1と、粉砕物を篩別する篩別工程S2と、篩下物を焙焼してその篩下物に含まれる有機物を分解する焙焼工程S3と、焙焼物を浮遊選鉱処理に供し、少なくとも、その焙焼工程にて有機物を分解して得られた炭素を回収する浮遊選鉱工程S4と、浮遊選鉱物を加熱して還元熔融し、スラグとメタルとを含む熔融物(還元物)を得る熔融工程S5と、を有する。また、熔融物からスラグとメタルとを分離することで、メタルを回収することができる(分離工程S6)。
 このような方法によれば、二酸化炭素の排出量を低減させつつ、廃リチウムイオン電池を含む原料中に含まれている炭素を有効に除去して有価金属を効果的に回収することができる。なお、二酸化炭素の排出量を低減させることから、炭素を除去(燃焼除去)するのではなく、炭素を分離・回収することができる、とも言うことができる。
 [粉砕工程]
 粉砕工程S1は、廃リチウムイオン電池を含む原料を、乾式製錬プロセスに供するために行う前処理の工程であり、原料に対して粉砕処理を施す工程である。
 粉砕処理は、破砕装置を使用して行うことができる。粉砕装置としては、特に限定されず、一般的に用いられる装置を使用することができる。
 なお、粉砕処理を行うに先立ち、廃リチウムイオン電池に含まれている電解液の除去を行うことが好ましい。電解液の除去は、例えば廃リチウムイオン電池を穿孔することで行うことができる。また、粉砕処理で得られた粉砕物から、外装缶の除去を行うことが好ましい。外装缶の除去は、その外装缶がアルミニウム(Al)の場合は粉砕により得られた粉砕物をアルミニウム選別機により分別することで、鉄(Fe)の場合は粉砕物を磁選機により分別することで、除去することができる。
 [篩別工程]
 篩別工程S2は、粉砕工程S1で得られた粉砕物を所定の目開きの篩で篩別けする工程である。このように、廃リチウムイオン電池の粉砕物を篩別けすることで、篩下(篩下物)として、正極活物資であるニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウムを含む粉状物が得られるとともに、それら正極活物質を固着させたバインダーを構成する炭素の一部を含む粉状物が得られる。あるいは、負極活物質である炭素が得られる。
 一方で、篩別けして得られる篩上物として、負極集電体であるアルミニウム箔や正極集電体である銅箔の混合物が得られる。なお、このような篩上物を構成する混合物には、有価金属である銅(Cu)が含まれるため、後述する熔融工程S5での処理に供して、浮遊選鉱工程S4で得られる浮遊選鉱物と共に熔融することができる。
 [焙焼工程]
 焙焼工程S3は、篩別工程S2で得られた篩下物を焙焼する工程であり、続く浮遊選鉱工程S4での浮遊選鉱の処理において炭素を効果的にかつ効率的に分離回収することを可能にするための焙焼である。
 上述したように、廃リチウムイオン電池を含む原料には、正極活物質であるニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウムの周りにポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダーの形態で炭素が含まれている。このような炭素は、ニッケルやコバルト等と共に篩下物を構成するため、後述する浮遊選鉱の処理を行うことにより、ニッケルやコバルト等の有価金属から炭素を分離して除去する。ところが、炭素はその少なくとも一部が、ニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウムの周りに有機物バインダーとして固着しているため、浮遊選鉱による分離の妨げとなる。
 そこで、本実施の形態に係る方法では、篩下物を浮遊選鉱の処理に供するに先立ち、その篩下物を所定の温度で焙焼することによって、炭素により構成される有機物(PVDF等のバインダー)を分解するようにする。このような焙焼処理により、有価金属と炭素の固着を解消することができ、続く浮遊選鉱の処理において、PVDF等の有機物の分解により得られたものを含む炭素を、効率的に分離し回収することができる。
 ここでの篩下物に対する焙焼処理は、有機物の分解により、有価金属と炭素の固着を解消するものであり、炭素を含む有機物を揮発除去するものではない。したがって、焙焼処理の温度(焙焼温度)としては、300℃以上600℃以下の範囲とする。
 PVDFを含めて一般的なバインダー化合物の分解温度の観点から、焙焼温度は300℃以上であることが好ましい。焙焼温度が300℃未満であると、有機物の分解が完全に終了せず不十分となり、有価金属と炭素の固着を解消できず、後述する浮遊選鉱処理にて炭素を分離することができない可能性がある。
 一方で、焙焼温度は600℃以下であることが好ましい。焙焼温度が600℃を超えると、ほとんどのバインダーを構成する有機物が揮発してしまい、得られる焙焼物中に残存しなくなる。すると、後述する浮遊選鉱処理にて炭素を分離して回収することができなくなる。しかも、600℃を超える温度での焙焼によって有機物が燃焼し揮発すると、二酸化炭素排出量が増加するため、二酸化炭素排出量を低減した操業を実現できなくなる。
 また、焙焼温度は、300℃以上500℃未満の範囲とすることがより好ましい。有機物を含む篩下物に対する焙焼処理においては、およそ450℃以上500℃以下の温度域から、炭素の酸化が始まることがある。焙焼温度をより好ましくは300℃以上500℃未満とすることで、その有機物(炭素)の燃焼を抑えて、二酸化炭素排出量を増加させることなく、有機物の分解をより効果的に行うことができる。
 焙焼処理は、例えば、ロータリーキルンやロータリーハースファーネス等の一般的な設備を使用して行うことができる。また、焙焼処理における雰囲気としては、大気雰囲気とすることが操業コストを抑える観点から好ましいが、例えば焙焼温度を上げて分解反応速度を高める際に炭素の燃焼を抑えるために、窒素等の不活性ガスを導入して不活性ガス雰囲気としてもよい。不活性ガスを導入する場合には、例えば、酸素濃度が好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下となるように導入することができる。
 また、焙焼時間としては、篩下物に含まれるPVDF等の有機物成分を十分に分解できる時間であればよく、処理量等に応じて適宜設定すればよい。
 [浮遊選鉱工程]
 浮遊選鉱工程S4は、焙焼工程S3で得られた焙焼物を浮遊選鉱処理に供し、その焙焼物から炭素を分離除去するための工程である。このように、浮遊選鉱処理では、焙焼物から、ニッケルやコバルト等の有価金属の粒状物と、上述した焙焼工程での処理により有機物から分解された炭素とを分離する。なお、浮遊選鉱処理では、少なくとも炭素成分が、浮遊物として分離される。
 浮遊選鉱処理では、一般的な処理と同様に、捕収剤や起泡剤等を添加して行うことができる。補収剤や起泡剤は、炭素を浮遊させて分離回収できるものであれば、特に限定されない。例えば、捕収剤としては、ディーゼル油、ケロシン等の炭化水素基を有する油系捕収剤や、タール油などが挙げられ、その中でもケロシンを用いることが好ましい。また、起泡剤としては、芳香族アルコール系の非イオン浮選剤や、不飽和炭化水素基系列のパイン油等が挙げられ、その中でもメチルイソブチルカルボノール(MIBC)を用いることが好ましい。
 また、浮選機としては、デンバー浮選機等の公知の装置を使用することができる。
 [熔融工程]
 熔融工程S5は、浮遊選鉱工程S4で得られた浮遊選鉱物を加熱して還元熔融し、スラグと、有価金属を含むメタルとを含む熔融物(還元物)を得る工程である。なお、処理対象の浮遊選鉱物は、主として、上述した浮遊選鉱処理において炭素が分離された、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む粒状物で構成される。
 熔融処理では、電気炉等の熔融炉に処理対象である浮遊選鉱物を装入し、所定の熔融温度に加熱することによって浮遊選鉱物を還元熔融する。このような熔融処理により、浮遊選鉱物に含まれる、付加価値の低い金属を酸化物(スラグ)とする一方で、有価金属(Cu、Ni、Co等)を還元して一体化させた合金(メタル)とすることができる。なお、このように熔融処理によりスラグとメタルとを含む熔融物が得られるが、熔融物中においては、比重差によって、上側にスラグ層が、下側にメタル層が形成されることになる。
 熔融処理の対象としては、さらに、篩別工程S2で篩別けられた篩上物を加えることができる。上述したように、篩上物には、例えば正極集電体である銅箔を含む混合物が含まれていることがある。したがって、このような篩上物も併せて熔融処理に供することで、有価金属である銅も有効に回収することができる。
 熔融処理では、還元剤を導入することが好ましい。還元剤としては、公知のものを用いることができ特に限定されないが、回収対象である有価金属の銅、ニッケル、コバルト等の酸化物を容易に還元できる炭素原子を含むものが好ましい。具体的には、還元剤としては、炭素及び/又は一酸化炭素を用いることが好ましい。炭素は、回収対象である有価金属(Cu、Ni、Co)を容易に還元する能力がある。例えば1モルの炭素で、2モルの有価金属酸化物(銅酸化物、ニッケル酸化物等)を還元することができる。また、炭素又は一酸化炭素を用いる還元手法は、金属還元剤を用いる手法(例えば、アルミニウムを用いたテルミット反応法)に比べて安全性が極めて高い。
 熔融処理により生成する合金は、上述したように、有価金属を含有する。そのため、有価金属を含む成分(合金)とその他の成分(スラグ)とを、熔融物(還元物)中において分離させることが可能となる。これは、付加価値の低い金属(Al等)は酸素親和力が高いのに対し、有価金属は酸素親和力が低いためである。
 熔融処理では、フラックスを添加することができる。フラックスとしては、二酸化珪素(SiO)や、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO)等のカルシウム化合物が挙げられる。
 熔融処理における温度(熔融温度)としては、生成するスラグの融点に応じて設定すればよいが、1300℃以上1600℃以下の範囲とすることが好ましい。熔融温度が1600℃を超えると、熱エネルギーが無駄に消費されて熔融炉に使用している耐火物の損耗が著しくなる。また、熔融温度が1300℃未満であると、スラグ層とメタル層の分離が十分に行われなくなるとともに、スラグ層の下に形成されるメタル層を熔融状態に維持するための十分な温度が維持できなくなる可能性がある。
 熔融処理に使用する設備としては、原料である浮遊選鉱物を効率よく加熱できる設備であればよく、例えば電気炉を使用することができる。また、好ましくは、スラグに電極を浸漬させることで効率良く加熱することが可能なサブマージドアーク炉を使用する。
 [分離工程]
 分離工程S6は、熔融工程S5で浮遊選鉱物を熔融して得られた熔融物(還元物)から、スラグとメタルとを分離して、有価金属を含むメタルを回収する工程である。
 上述したように、熔融物中においては、比重差によって、上側にスラグ層が、下側にメタル層が形成される。したがって、例えば電気炉に設けられたスラグホールからスラグを、メタルホールからメタルを、タッピングにより排出することで、スラグとメタルとをそれぞれ分離回収することができる。なお、スラグとメタルの排出方法としては、タッピングに限定されず、炉を傾斜させて流し出すようにしてもよい。
 以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
 [実施例]
  (粉砕工程)
 廃リチウムイオン電池として、18650型円筒型電池、車載用の角形電池の使用済み電池、及び電池製造工程で回収した不良品を用意した。これらの廃リチウムイオン電池を塩水中に浸漬して放電させた後、水分を除去し、260℃の温度で大気中にて焙焼することによって電解液を分解除去し、電池内容物を得た。
 得られた電池内容物を、粉砕機(商品名グッドカッター,氏家製作所社製)により粉砕して粉砕物を得た。
  (篩別工程)
 次に、得られた粉砕物を、目開き2mmの篩で篩別した。これにより、篩下物として、正極活物資であるニッケル酸リチウム、あるいはコバルト酸リチウムに炭素の一部がバインダーとして付着接着した粉状物が得られた。また、篩下物としては、負極活物質である炭素の粒状物も得られた。また、篩上物としては、負極集電体であるアルミニウム箔や正極集電体である銅箔の混合物が得られた。
  (焙焼工程)
 次に、篩別工程にて篩下物として得られた試料250gをアルミナ製匣鉢内に装入し、大気雰囲気下で、350℃、450℃、550℃の温度で8時間保持して焙焼した。
  (浮遊選鉱工程)
 次に、焙焼により得られた焙焼物200gに、捕収剤としてケロシンを40g/tの割合で0.008g添加し、また、水を1800g加えて作成した10%濃度のパルプに起泡剤としてMIBCを60g/tの割合で0.012g投入し、選鉱(粗選ともいう)を行った。具体的には、バブリングを10分行い、泡と一緒に浮上した固形物を炭素含有物(炭素分90質量%以上)として回収した。また、沈殿物を濾過して有価金属含有物(Cu、Ni、Co合計の品位で40質量%程度)として回収した。
 続いて、得られた炭素含有物に対して、再度、選鉱(精選ともいう)を行った。具体的には、バブリングを8分行い、泡と一緒に浮上した固形物を炭素含有物(炭素分90質量%以上)として回収した。また、沈殿物を濾過して有価金属含有物(Cu、Ni、Co合計の品位で40質量%程度)として回収した。
 さらに、得られた炭素含有物に対して、2回目の精選を行った。具体的には、バブリングを5分行い、泡と一緒に浮上した固形物を炭素含有物(炭素分90質量%以上)として回収した。また、沈殿物を濾過して有価金属含有物(Cu、Ni、Co合計の品位で40質量%程度)として回収した。
 最後に、得られた炭素含有物に対して、3回目の精選を行った。具体的には、バブリングを3分行い、泡と一緒に浮上した固形物を炭素含有物(炭素分90質量%以上)として回収した。また、沈殿物を濾過して有価金属含有物(Cu、Ni、Co合計の品位で40質量%程度)として回収した。
 このように、都合、粗選1回と精選3回の浮遊選鉱処理を行い、炭素の分離・除去処理を行うことによって、泡と一緒に浮上した固形物を炭素含有物(炭素分90質量%以上)として回収した。また、沈殿物を濾過して有価金属含有物(Cu、Ni、Co合計の品位で40質量%程度)として回収した。なお、精選の処理に際しては、それぞれにMIBCを30g/tの割合で0.006g投入した。
 浮選機の底部に沈殿したものを濾過した後、110℃にて乾燥することで、浮遊選鉱物として回収した。
  (熔融工程)
 次に、浮遊選鉱工程で得られた浮遊選鉱物10gをアルミナ製坩堝に装入し、フラックスとしてCaOを0.58g、還元剤として黒鉛を0.78g投入して、1550℃の温度で加熱し1時間保持して熔融処理を行った。これにより、スラグと、有価金属を含むメタル(合金)とを含む熔融物が得られた。
  (分離工程)
 得られた熔融物を炉冷し、冷却後にスラグとメタル(合金)とを分離回収した。回収した合金をICP法により分析して、コバルトの回収率(質量%)を算出した。
 [比較例]
 比較例では、上述した実施例とは異なり焙焼工程と浮遊選鉱工程は行わず、熔融工程に先行して、篩別工程で篩別けられた篩下物を予備酸化する予備酸化工程を設け、炭素の除去処理を行った。そして、予備酸化処理後の予備酸化物を熔融工程に供し、熔融処理を行った。なお、それ以外は、実施例と同様にして行った。
 具体的に、比較例における予備酸化工程では、21g~25g試料(篩下物)をアルミナ製るつぼ内に装入し、窒素雰囲気下において、900℃、1100℃の温度に昇温して30分間保持しながら、各所定量の酸素をアルミナチューブを通じて吹き込むことにより処理した。
 また、熔融工程では、予備酸化工程より得られた酸化させた試料(予備酸化物)に、SiO/CaO比が1である混合フラックス7.2gを添加した後、窒素雰囲気において、1450℃~1500℃の温度に加熱し1時間保持して熔融処理を行った。なお、このとき、酸素吹き込みは行わなかった。
 そして、試料を炉冷し、冷却後にスラグとメタル(合金)とを分離回収し、回収した合金をICP法により分析して、コバルトの回収率(質量%)を算出した。
 [結果]
 下記表1に、実施例、比較例の処理条件と、コバルト回収率の結果を示す。また、全工程を通しての炭素(C)増減率を算出した。なお、表中のC増減率の評価に関して、二酸化炭素排出量のうち原料に含まれる炭素によるものの割合を39%とし、(1)浮遊選鉱工程でのC削減率は、「39(%)×(1-揮発率※2)×C回収率」により算出した。また、表中の(4)CO削減率に関しては、「(1)C削減率-(2)C増加率+(3)C削減率」により算出した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1からわかるように、熔融工程に先行して浮遊選鉱により炭素の回収処理を行った実施例と、予備酸化工程にて酸化処理による炭素の除去処理をおこなった比較例とを比べると、コバルト回収率には大きな変化はなかったものの、実施例では二酸化炭素排出量を大きく低減することができた。
 具体的には、実施例1~3では、焙焼工程にて比較例に対して30%~60%程度の二酸化炭素が生成するものの(表中の※1)、従来例である比較例のように予備酸化工程を行わないことで、従来比26%も二酸化炭素排出量を削減することができる。また加えて、焙焼工程及び浮遊選鉱工程での炭素回収分2%~12%(表中の「(1)-(2)」)により、合計で28%~36%程度以上(表中の(4))の二酸化炭素排出量を削減することができる。

Claims (2)

  1.  廃リチウムイオン電池を含む原料からの有価金属の製造方法であって、
     前記廃リチウムイオン電池を含む原料を粉砕して粉砕物とする粉砕工程と、
     前記粉砕物を篩別する篩別工程と、
     得られた篩下物を焙焼し、該篩下物に含まれる有機物を分解する焙焼工程と、
     前記焙焼工程で得られた焙焼物を浮遊選鉱処理に供し、少なくとも、該焙焼工程にて有機物を分解して得られた炭素を回収する浮遊選鉱工程と、
     前記浮遊選鉱工程で得られた浮遊選鉱物を加熱して還元熔融し、スラグと前記有価金属を含むメタルとを含む熔融物を得る熔融工程と、を有し、
     前記焙焼工程では、前記篩下物を300℃以上600℃以下の温度で焙焼する、
     有価金属の製造方法。
  2.  前記焙焼工程では、前記篩下物を300℃以上500℃未満の温度で焙焼する、
     請求項1に記載の有価金属の製造方法。
PCT/JP2023/039914 2022-11-30 2023-11-06 有価金属の製造方法 WO2024116736A1 (ja)

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