WO2024106442A1 - ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法 - Google Patents

ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
WO2024106442A1
WO2024106442A1 PCT/JP2023/040996 JP2023040996W WO2024106442A1 WO 2024106442 A1 WO2024106442 A1 WO 2024106442A1 JP 2023040996 W JP2023040996 W JP 2023040996W WO 2024106442 A1 WO2024106442 A1 WO 2024106442A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
porous membrane
culture
conditions
culture solution
filtration conditions
Prior art date
Application number
PCT/JP2023/040996
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
峻 松田
雄也 杉山
祐太 齊藤
Original Assignee
旭化成メディカル株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 旭化成メディカル株式会社 filed Critical 旭化成メディカル株式会社
Publication of WO2024106442A1 publication Critical patent/WO2024106442A1/ja

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

細胞の増殖が抑制される条件下において、細胞を含む培養液を収容する培養槽11から多孔質膜12に培養液を送り、多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液を培養槽11に戻して、培養液を培養槽11と多孔質膜12の間で循環させることと、多孔質膜12における一又は複数のろ過条件を評価することと、を含む、ろ過条件の評価方法。

Description

ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法
 本発明は、ろ過技術に関し、ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法に関する。
 細胞培養技術は、抗体、成長ホルモン、及びインスリンなどの各種バイオ医薬品の製造において必須の技術であり、近年の医療の進歩に大きく貢献している。バイオ医薬品の中でも特に抗体医薬品が注目を集めている。抗体産生細胞を培養することによって、モノクローナル抗体を高効率かつ安定的に産生することは、工業的に重要なテーマの一つである。
 抗体等の有用な細胞の産生物の産生を目的とした工業的な細胞の培養法は、大きく分けて、接着培養法と、懸濁培養法(浮遊培養法)の2つの方式に分類される。接着培養法においては、細胞は、培養槽の内表面に付着している。懸濁培養法においては、細胞は、培養液中に浮遊している。これらのうち、スケールアップの容易さ、及び大スケールでの制御の容易さなどから、懸濁培養法が主流となっている。
 懸濁培養方法において、細胞を大量かつ高密度で培養し、細胞の産生物を高効率で連続的に生産するために、新鮮な培養液を培養槽中へ一定速度で供給しつつ、細胞の産生物を含む古い培養液をろ過して培養槽外へ一定速度で排出しながら細胞を培養する方式が提案されている。この方式の培養は、一般に連続培養や灌流培養と呼ばれている(例えば、特許文献1から5参照。)。連続培養においては、培養槽に供給される培養液の量と、培養槽から排出される培養液の量が同じになるように制御され得る。連続培養において重要なことは、培養液中の細胞と、古い培養液及び細胞の産生物と、を長期にわたって効率よく分離して、古い培養液及び細胞の産生物を培養槽外へ取り出し、培養槽内の細胞生育環境を長期間最適条件下に維持し続けることである。
特開2018-76291号公報 特開2009-45019号公報 特開2021-48776号公報 特許第5696479号公報 特表2022-516516号公報
 連続培養において、培養槽の培養液中の細胞と、古い培養液及び細胞の産生物と、を分離するために、多孔質膜が用いられている。多孔質膜におけるろ過条件を適切に評価する方法が望まれている。そこで、本発明は、細胞培養液のろ過条件を適切に評価可能なろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法を提供することを課題の一つとする。
 [1] 本発明の態様によれば、細胞の増殖が抑制される条件下において、細胞を含む培養液を収容する培養槽から多孔質膜に培養液を送り、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を培養槽に戻して、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることと、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価することと、を含む、ろ過条件の評価方法が提供される。
 [2] 上記[1]のろ過条件の評価方法において、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を培養槽に戻すことにおいて、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液と多孔質膜でろ過された培養液を培養槽に戻してもよい。
 [3] 上記[1]又は[2]のろ過条件の評価方法が、一又は複数のろ過条件下において多孔質膜のろ過性能を評価することをさらに含み、多孔質膜のろ過性能に基づいて、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価してもよい。
 [4] 上記[1]から[3]のいずれかのろ過条件の評価方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、細胞周期の進行が抑制される条件であってもよい。
 [5] 上記[1]から[4]のいずれかのろ過条件の評価方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [6] 上記[1]から[5]のいずれかのろ過条件の評価方法において、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、10℃以下又は5℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [7] 上記[1]から[6]のいずれかのろ過条件の評価方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、細胞の酵素活性が抑制される条件であってもよい。
 [8] 上記[7]のろ過条件の評価方法において、酵素がサイクリン依存性キナーゼであってもよい。
 [9] 上記[1]から[8]のいずれかのろ過条件の評価方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、培養液における細胞周期の阻害剤の存在であってもよい。
 [10] 上記[1]から[9]のいずれかのろ過条件の評価方法において、多孔質膜における細胞の産生物の透過率に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価してもよい。
 [11] 上記[1]から[10]のいずれかのろ過条件の評価方法において、多孔質膜における透過流束に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価してもよい。
 [12] 上記[1]から[11]のいずれかのろ過条件の評価方法において、多孔質膜における膜間差圧に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価してもよい。
 [13] 上記[1]から[12]のいずれかのろ過条件の評価方法において、ろ液の濁度に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価してもよい。
 [14] 上記[1]から[13]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜の構造、材料、又は物性の一又は複数の条件であってもよい。
 [15] 上記[1]から[14]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、培養液の一又は複数の条件であってもよい。
 [16] 上記[1]から[15]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、培養液における細胞の密度の一又は複数の条件であってもよい。
 [17] 上記[1]から[16]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜に送られる培養液の流量の一又は複数の条件であってもよい。
 [18] 上記[1]から[17]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜でろ過された培養液の流量の一又は複数の条件であってもよい。
 [19] 上記[1]から[18]のいずれかのろ過条件の評価方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜に送られる培養液の流れによる、多孔質膜の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件であってもよい。
 [20] 上記[1]から[19]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養槽と多孔質膜を含む培養液が循環する経路が、温度管理槽内に配置されていてもよい。
 [21] 上記[1]から[20]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養液の組成を維持するための能動的な操作をしなくともよい。
 [22] 上記[1]から[21]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路に、培地を外部から追加しなくともよい。
 [23] 上記[1]から[22]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養液の溶存酸素及びpHの少なくともいずれかを制御しなくともよい。
 [24] 上記[1]から[23]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路から、細胞をブリーディングしなくともよい。
 [25] 上記[1]から[24]のいずれかのろ過条件の評価方法において、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路から、サンプリングのために培養液を採取してもよい。
 [26] 上記[25]のろ過条件の評価方法が、サンプリングした培養液における細胞の密度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [27] 上記[25]又は[26]のろ過条件の評価方法が、サンプリングした培養液における細胞の生存率を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [28] 上記[25]から[27]のいずれかのろ過条件の評価方法が、サンプリングした培養液における細胞の産生物の濃度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [29] 上記[25]から[28]のいずれかのろ過条件の評価方法が、サンプリングした培養液における濁度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [30] 上記[1]から[29]のいずれかのろ過条件の評価方法において、多孔質膜が中空糸膜であってもよい。
 [31] 上記[1]から[30]のいずれかのろ過条件の評価方法において、多孔質膜が精密ろ過膜であってもよい。
 [32] 本発明の態様によれば、細胞が増殖する条件下において、ろ過条件を用いて、細胞を含む培養液を収容する培養槽から多孔質膜に培養液を送り、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を培養槽に戻し、多孔質膜でろ過された細胞の産生物を含む培養液を回収して、培養液の少なくとも一部を培養槽と多孔質膜の間で循環させることを含む細胞産生物の製造方法であって、ろ過条件が、細胞の増殖が抑制される条件下において、細胞を含む培養液を収容する培養槽から多孔質膜に培養液を送り、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を培養槽に戻して、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させて、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価して得られたろ過条件である、細胞産生物の製造方法が提供される。
 [33] 上記[32]の細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を培養槽に戻すことにおいて、多孔質膜でろ過されずに通過した培養液と多孔質膜でろ過された培養液を培養槽に戻してもよい。
 [34] 上記[32]又は[33]の細胞産生物の製造方法において、細胞が増殖する条件が、細胞周期が進行する条件であってもよい。
 [35] 上記[32]から[34]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞が増殖する条件が、15℃以上の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [36] 上記[35]の細胞産生物の製造方法において、15℃より高い雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、20℃、25℃、30℃、又は35℃より高い雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [37] 上記[32]から[36]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞が増殖する条件が、細胞の酵素が活性化されている条件であってもよい。
 [38] 上記[37]の細胞産生物の製造方法において、酵素がサイクリン依存性キナーゼであってもよい。
 [39] 上記[32]から[38]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞が増殖する条件が、前記培養液における細胞周期の阻害剤の非存在であってもよい。
 [40] 上記[32]から[39]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、細胞周期の進行が抑制される条件であってもよい。
 [41] 上記[32]から[40]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [42] 上記[41]の細胞産生物の製造方法において、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、10℃以下又は5℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかであってもよい。
 [43] 上記[32]から[42]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、前記細胞の酵素活性が抑制される条件であってもよい。
 [44] 上記[43]の細胞産生物の製造方法において、酵素がサイクリン依存性キナーゼであってもよい。
 [45] 上記[32]から[44]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞の増殖が抑制される条件が、培養液における細胞周期の阻害剤の存在であってもよい。
 [46] 上記[32]から[45]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における細胞の産生物の透過率に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されていてもよい。
 [47] 上記[32]から[46]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における透過流束に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されていてもよい。
 [48] 上記[32]から[47]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における膜間差圧に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されていてもよい。
 [49] 上記[32]から[48]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、ろ液の濁度に基づき、多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されていてもよい。
 [50] 上記[32]から[49]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜の構造、材料、又は物性の一又は複数の条件であってもよい。
 [51] 上記[32]から[50]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、培養液の一又は複数の条件であってもよい。
 [52] 上記[32]から[51]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、培養液における細胞の密度の一又は複数の条件であってもよい。
 [53] 上記[32]から[52]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜に送られる培養液の流量の一又は複数の条件であってもよい。
 [54] 上記[32]から[53]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜でろ過された培養液の流量の一又は複数の条件であってもよい。
 [55] 上記[32]から[54]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、一又は複数のろ過条件が、多孔質膜に送られる培養液の流れによる、多孔質膜の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件であってもよい。
 [56] 上記[32]から[55]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路が、温度管理槽内に配置されていてもよい。
 [57] 上記[32]から[56]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における複数のろ過条件を評価する際に、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養液の組成を維持するための能動的な操作をしなくともよい。
 [58] 上記[32]から[57]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における複数のろ過条件を評価する際に、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路に、培地を外部から追加しなくともよい。
 [59] 上記[32]から[58]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における複数のろ過条件を評価する際に、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養液の溶存酸素及びpHの少なくともいずれかを制御しなくともよい。
 [60] 上記[32]から[59]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における複数のろ過条件を評価する際に、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路から、細胞をブリーディングしなくともよい。
 [61] 上記[32]から[60]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、培養液を培養槽と多孔質膜の間で循環させることにおいて、培養槽と多孔質膜を含む、培養液が循環する経路から、サンプリングのために培養液を採取してもよい。
 [62] 上記[61]の細胞産生物の製造方法が、サンプリングした培養液における細胞の密度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [63] 上記[61]又は[62]の細胞産生物の製造方法が、サンプリングした培養液における細胞の生存率を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [64] 上記[61]から[63]のいずれかの細胞産生物の製造方法が、サンプリングした培養液における細胞の産生物の濃度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [65] 上記[61]から[64]のいずれかの細胞産生物の製造方法が、サンプリングした培養液における濁度を計測することをさらに含んでいてもよい。
 [66] 上記[32]から[65]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜が中空糸膜であってもよい。
 [67] 上記[32]から[66]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、多孔質膜が精密ろ過膜であってもよい。
 [68] 上記[32]から[67]のいずれかの細胞産生物の製造方法において、細胞が灌流培養されていてもよい。
 本発明によれば、細胞培養液のろ過条件を適切に評価可能なろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法を提供可能である。
実施形態に係る中空糸膜のろ過条件の評価システムを示す模式図である。 実施形態に係る細胞産生物の製造システムを示す模式図である。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。 実施例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。 比較例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 比較例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 比較例に係る培養槽と中空糸膜の間を循環する培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の密度の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における細胞の生存率の時間変化を示すグラフである。 参考例に係る培養槽内の培養液における抗体の濃度の時間変化を示すグラフである。
 以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
 図1を参照して、本実施形態に係るろ過条件の評価方法は、細胞の増殖が抑制される条件下において、細胞を含む培養液を収容する培養槽11から多孔質膜12に培養液を送り、多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液を培養槽11に戻して、培養液を培養槽11と多孔質膜12の間で循環させることと、一又は複数のろ過条件下において多孔質膜12のろ過性能を評価することと、多孔質膜12のろ過性能に基づき、多孔質膜12における一又は複数のろ過条件を評価することと、を含む。多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液を培養槽11に戻すことにおいて、多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液と多孔質膜12でろ過された培養液を培養槽11に戻してもよい。ただし、回収した培養液と同量の培地を培養槽11内の培養液中に補いさえすれば、培養液の全量を培養槽11に戻さずに培養液を回収することを妨げるものではない。培養液の回収は、多孔質膜12でろ過された培養液を、培養槽11に全部又は一部戻さずに回収することにより行ってもよい。回収する培養液量は限定されず、同量の培地を系中に補うことで培養槽11内の培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動が抑制される。なお当該回収は、培養液の分析を目的とした後述するサンプリングとは区別される。
 培養槽11は、例えば、外気から閉鎖された内部空間を有する容器である。ただし、培養槽11には、内圧を一定に保つための通気口やフィルタが設けられていてもよい。通気口やフィルタは、外部の菌が培養槽11の内部に進入することを防ぐために、0.2μm以下の孔径を有することが好ましい。培養槽11には、培養槽11内の培養液を攪拌するための攪拌装置16が設けられていてもよい。培養槽11内の培養液中で、細胞が浮遊培養される。
 培養槽11内で培養される細胞は、特に限定されない。細胞は、ヒトを含む動物由来であってもよいし、微生物由来であってもよい。細胞は真核細胞であってもよいし、原核細胞であってもよい。動物の例としては、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、魚類、及び昆虫が挙げられる。細胞は、遺伝子組換え細胞であってもよい。細胞の例としては、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞、HEK細胞、BHK-21細胞、Sp2/0細胞、SP2/0-Ag14細胞、NS0細胞、Vero細胞、PER.C6細胞、酵母、枯草菌、及び大腸菌が挙げられる。
 細胞は、例えば、医薬品として利用可能な産生物を産生し、培養液中に放出する。医薬品として利用可能な産生物の例としては、ペプチド、タンパク質、及びウイルス(ウイルス様粒子を含む)が挙げられる。タンパク質の例としては、抗体、ホルモン、サイトカイン、成長因子、酵素、及び血漿タンパク質が挙げられる。タンパク質は組換えタンパク質であってもよい。
 抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、ヒト抗体であってもよく、ヒト以外のウシ及びマウス等の哺乳動物由来抗体タンパク質であってもよい。あるいは、抗体は、ヒトIgGとのキメラ抗体タンパク質、及びヒト化抗体であってもよい。ヒトIgGとのキメラ抗体とは、可変領域がマウスなどのヒト以外の生物由来であるが、その他の定常領域がヒト由来の免疫グロブリンに置換された抗体である。また、ヒト化抗体とは、可変領域のうち、相補性決定領域(complementarity-determining  region:CDR)がヒト以外の生物由来であるが、その他のフレームワーク領域(framework  region:FR)がヒト由来である抗体である。ヒト化は、キメラ抗体よりも免疫原性がさらに低減される。
 多孔質膜12の形状は特に限定されない。多孔質膜の例としては、中空糸膜、平膜及び管状膜などが挙げられる。以下においては、多孔質膜12が中空糸膜である例を説明する。多孔質膜12において、培養液が供給される面を、中空糸膜の一次側という。また、中空糸膜を透過した透過液が流れ出る面を、中空糸膜の二次側という。内周面にろ過される培養液が供給される実施形態では、中空糸膜の内周面が一次側、中空糸膜の外周面が二次側となる。外周面にろ過される培養液が供給される実施形態では、中空糸膜の外周面が一次側、中空糸膜の内周面が二次側となる。
 多孔質膜12の種類は特に限定されない。多孔質膜の例としては、粗ろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、透析膜、ナノろ過膜、逆浸透膜および正浸透膜などが挙げられる。
 多孔質膜12におけるろ過方法は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)方法であってもよい。タンジェンシャルフローろ過方法とは、中空糸膜一次側表面において、培養液を中空糸膜一次側表面と平行な方向に流すろ過法である。タンジェンシャルフローろ過方法は、交互タンジェンシャルフローろ過(ATF)方法を含む。本実施形態において、単にタンジェンシャルフローろ過(TFF)法という場合は、中空糸膜一次側表面において、培養液を一方向に流すろ過法を指す場合がある。交互タンジェンシャルフローろ過(ATF)法とは、中空糸膜一次側表面において、往復するように培養液を流すろ過法を指す。
 図1に示す例では、培養槽11と多孔質膜12の間には、培養槽11内の培養液を多孔質膜12に送るための流路13と、多孔質膜12でろ過されずに多孔質膜12を通過した培養液を培養槽11に戻すための流路14と、任意で、多孔質膜12でろ過された培養液を培養槽11に戻すための流路15と、が配置されている。流路13を流れる培養液は、細胞と、細胞の産生物と、を含み得る。流路14を流れる、多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液は、細胞と、細胞の産生物と、を含み得る。流路15を流れる、多孔質膜12でろ過された培養液は、細胞の産生物を含み得る。
 流路13には、例えば、培養槽11内の培養液を多孔質膜12に送るためのポンプ23が設けられている。ポンプの例としては、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、遠心ポンプ、及びロータリーポンプが挙げられるが、これらに限定されない。流路13には、多孔質膜12に供給される培養液の圧力を計測する圧力計33が設けられていてもよい。流路13には、流路13内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路13には、流路13内を流れる培養液の温度を測定する温度計が設けられていてもよい。流路13には、流路13内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 流路14には、多孔質膜12の細孔部分を通過せずに中空部を通過して、多孔質膜12でろ過されなかった培養液を培養槽11に送るためのポンプが設けられていてもよい。なお、ポンプは、流路13及び流路14の両方に設けられていてもよいし、いずれか一方に設けられていてもよい。流路14には、多孔質膜12を通過した培養液の圧力を計測する圧力計34が設けられていてもよい。流路14には、流路14内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路14には、流路14内を流れる培養液の温度を測定する温度計が設けられていてもよい。流路14には、流路14内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 流路15には、例えば、多孔質膜12の細孔部分を通過して多孔質膜12でろ過された培養液を培養槽11に送るためのポンプ25が設けられている。流路15には、多孔質膜12でろ過された培養液の圧力を計測する圧力計35が設けられていてもよい。流路15には、流路15内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路15には、流路15内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 培養槽11と多孔質膜12は、培養液が循環する経路の少なくとも一部をなしている。また、流路13、14、15は、培養液が循環する経路の少なくとも一部をなしている。培養液が循環する経路は、外部から閉鎖されていてもよいが、上述したように、培養槽11には、内圧を一定に保つための通気口やフィルタが設けられていてもよい。
 培養槽11と多孔質膜12は、内部の温度を管理する温度管理槽50内に配置されていてもよい。流路13、14、15は、温度管理槽50内に配置されていてもよい。温度管理槽50は、培養槽11、多孔質膜12、及び流路13、14、15の雰囲気温度を管理する。温度管理槽50は、恒温槽や冷蔵庫であってもよいし、恒温維持されたブースや部屋、建物であってもよい。
 細胞の増殖が抑制される条件は、特に限定されないが、例えば、細胞周期の進行が抑制される条件である。細胞周期の進行が抑制される条件は、例えば、培養槽11及び多孔質膜12の15℃以下の低い雰囲気温度あるいは培養液の15℃以下の温度である。雰囲気温度あるいは培養液の温度は、好ましくは10℃以下又は5℃以下である。なお、細胞の死滅を抑制する観点から、培養槽11及び多孔質膜12の雰囲気温度あるいは培養液の温度は、0℃以上、1℃以上、2℃以上、又は3℃以上であることが好ましい。培養液の温度は、培養液の温度を直接計測してもよいし、培養槽11及び多孔質膜12の雰囲気温度から推定して測定してもよい。測定された培養液の温度に基づいて、培養液の温度を温度制御装置で直接制御してもよいし、培養槽11及び多孔質膜12の雰囲気温度を温度制御装置で制御してもよい。細胞周期の進行が抑制される条件は、例えば、細胞におけるサイクリン依存性キナーゼ等の酵素活性が抑制される条件であってもよい。細胞周期の進行が抑制される条件は、培養液における細胞周期の阻害剤の存在であってもよい。細胞の増殖が抑制される条件下では、細胞の活性が低下し、細胞周期の進行が抑制されて細胞の分裂が抑制され、かつ、産生物の産生が抑制される。
 本実施形態において、多孔質膜12でろ過されずに通過した培養液と、多孔質膜12でろ過された培養液と、の両方を、培養槽11に戻してもよい。この場合、細胞の増殖が抑制される条件下では、系中の細胞の総量及び産生物の総量が維持されるので、培養槽11と多孔質膜12の間を循環する培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動が抑制される。
 細胞の増殖が抑制される条件下では細胞の活性が低下し、細胞が必要とする培養液成分の量も低下するので、培養液が循環する経路に外部から培地を追加しなくともよい。また、培地を追加しないことにより、培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動が抑制される。さらに、細胞の増殖が抑制される条件下では細胞の活性が低下し、培養液における溶存酸素濃度(DO)及びpHの変動が抑制されるので、培養液が循環する経路に外部から酸素や二酸化炭素等の気体を追加して溶存酸素濃度及びpHを制御しなくともよい。またさらに、細胞の増殖が抑制される条件下では、培養液における細胞の密度がほぼ一定になるので、培養液が循環する経路から外部に細胞をブリーディングしなくともよい。したがって、本実施形態に係るろ過条件の評価方法によれば、細胞培養のための操作を簡略化することが可能である。ただし、例えば、細胞の密度、細胞の生存率、及び細胞の産生物の濃度を監視するために、培養液の一部をサンプリングしてもよい。サンプリングは細胞の密度を調整することを目的としないため、ブリーディングとは区別される。
 多孔質膜12における一又は複数のろ過条件は、多孔質膜12のろ過性能に基づいて評価される。多孔質膜12のろ過性能は、例えば、多孔質膜12における細胞の産生物の透過率の高さ、多孔質膜12における夾雑物の遮蔽率の高さ、多孔質膜12における膜間差圧の低さ、多孔質膜12における膜間差圧が上昇するまでにろ過可能な液量の多さ、多孔質膜12における透過流束が低下し始めるまでにろ過可能な液量の多さ、多孔質膜12における圧力損失の低さ、多孔質膜12における流量の大きさ、多孔質膜12における流速の速さ、及び多孔質膜12における透過流束の速さの少なくともいずれかで表されてもよい。
 多孔質膜12における一又は複数のろ過条件は、多孔質膜12における一又は複数のろ過条件によって、多孔質膜12のろ過性能が所定の基準を満たすか否か、あるいは、相対的に優れているか否かに基づいて評価される。あるいは、多孔質膜12における複数のろ過条件のうち、多孔質膜12のろ過性能が所定の基準を満たすか否か、あるいは、相対的に優れているか否かに基づいて、少なくとも一部のろ過条件を抽出してもよい。
 多孔質膜12に供給される培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度が変動すると、多孔質膜12のろ過性能を正確に評価することが困難になり得る。これに対し、上述したように、本実施形態において、細胞の増殖が抑制されており、培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動が抑制される。多孔質膜12でろ過された培養液を培養槽11に戻すと、培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動がより抑制される。そのため、本実施形態によれば、培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度を略一定に保ったまま、多孔質膜12のろ過性能を評価することが可能である。また、多孔質膜12でろ過された培養液を培養槽11に戻すと、培養槽11への培地の補充を省略することが可能になり得る。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12の構造の一又は複数の条件である。多孔質膜12の構造の条件とは、例えば、膜厚、内径、外径、膜表面の開口率、空隙率、孔径、平均孔径、孔径ばらつき、阻止孔径、孔径と繊維径の比、膜表面の異方性、膜孔の異方性、膜表面粗さ及び一次側から二次側への孔径の変化である。例えば、様々な構造を有する複数の多孔質膜12を用意し、それぞれの多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12の構造の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12の材料の一又は複数の条件である。例えば、様々な材料からなる複数の多孔質膜12を用意し、それぞれの多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12の材料の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12の物性の一又は複数の条件である。多孔質膜12の物性の条件とは、例えば、親水性、疎水性、カチオン性、アニオン性、弾性限界圧力、及びバブルポイントである。例えば、様々な物性を有する複数の多孔質膜12を用意し、それぞれの多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12の物性の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、培養液の一又は複数の条件である。培養液の条件とは、例えば、培養液の含有物、培養液における各含有物の濃度、培養液の粘度、培養液のpH、培養液の電気伝導度、及び培養液の濁度である。培養液の含有物の例としては、培養液の組成物、消泡剤、塩、DNAやRNA等の核酸、宿主細胞由来タンパク質(HCP)、脂質、及び多糖類が挙げられる。例えば、条件が異なる複数の培養液を用意し、それぞれの培養液を用いた場合の多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、培養液の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、培養液における細胞の密度の複数の条件である。例えば、細胞の密度が異なる複数の培養液を用意し、それぞれの培養液を用いた場合の多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、細胞の密度の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12に送られる培養液の流量の一又は複数の条件である。例えば、異なる流量で培養液を多孔質膜12に送り、それぞれの流量を用いた場合の多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12に送られる培養液の流量の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。流量は体積流量で表されてもよいし、質量流量で表されてもよいし、線速度で表されてもよいし、多孔質膜12の表面におけるせん断速度で表されてもよい。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12でろ過された培養液の流量の一又は複数の条件である。例えば、多孔質膜12でろ過された培養液を異なる流量で送液し、それぞれの流量を用いた場合の多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12でろ過された培養液の流量の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 一又は複数のろ過条件は、例えば、多孔質膜12の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件である。接液表面とは、ろ過される液が接する多孔質膜12の表面である。多孔質膜12が中空糸膜である場合は、一次側の表面である。例えば、多孔質膜12の接液表面におけるせん断応力を変化させ、それぞれのせん断応力を用いた場合の多孔質膜12のろ過性能が評価される。さらに、多孔質膜12の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件が、所定の基準を満たすろ過性能を与えるか否か、あるいは、相対的に優れているか否かが評価される。
 本実施形態に係るろ過条件の評価方法によれば、培養槽11と多孔質膜12の間を循環する培養液に含まれる細胞の密度及び産生物の濃度の変動を抑制しながら、多孔質膜12に所定の基準を満たすろ過性能を発揮させる一又は複数のろ過条件を選定することが可能である。
 次に、図2を参照して、本実施形態に係る細胞産生物の製造方法は、細胞が増殖する条件下において、上述したろ過条件の評価方法で得られたろ過条件を用いて、細胞を含む培養液を収容する培養槽111から多孔質膜112に培養液を送り、多孔質膜112でろ過されずに通過した培養液を培養槽111に戻し、多孔質膜112でろ過された細胞の産生物を含む培養液を回収して、培養液の少なくとも一部を培養槽111と多孔質膜112の間で循環させることを含む。
 細胞が増殖する条件は、細胞が産生物を産生し、培養液中に産生物が供給され続ける条件であれば特に限定されないが、例えば、細胞周期が進行する条件である。細胞周期が進行する条件は、例えば、培養槽111及び多孔質膜112の15℃以上の雰囲気温度あるいは培養液の15℃以上の温度である。雰囲気温度あるいは培養液の温度は、好ましくは20℃、25℃、30℃、又は35℃より高い温度である。また、細胞の死滅を抑制する観点から、培養槽111及び多孔質膜112の雰囲気温度あるいは培養液の温度は、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下であることが好ましい。培養液の温度は、培養液の温度を直接計測してもよいし、培養槽111及び多孔質膜112の雰囲気温度から推定して測定してもよい。測定された培養液の温度に基づいて、培養液の温度を温度制御装置で直接制御してもよいし、培養槽111及び多孔質膜112の雰囲気温度を温度制御装置で制御してもよい。細胞周期が進行する条件は、例えば、細胞におけるサイクリン依存性キナーゼ等の酵素が活性化されている条件であってもよい。細胞周期が進行する条件は、培養液における細胞周期の阻害剤の非存在であってもよい。
 培養槽111で培養される細胞は、ろ過条件の評価方法で用いられた細胞と同じであることが好ましいが、ろ過条件の評価方法で用いられた細胞と異なっていてもよい。また、多孔質膜112でろ過される細胞の産生物は、ろ過条件の評価方法でろ過された細胞の産生物と同じであることが好ましいが、ろ過条件の評価方法でろ過された細胞の産生物と異なっていてもよい。
 培養槽111と多孔質膜112の間には、培養槽111内の培養液を多孔質膜112に送るための流路113と、多孔質膜112でろ過されずに多孔質膜112を通過した培養液を培養槽111に戻すための流路114と、が配置されている。流路113を流れる培養液は、細胞と、細胞の産生物と、を含み得る。流路114を流れる、多孔質膜112の細孔部分を通過せずに中空部を通過して、多孔質膜112でろ過されなかった培養液は、細胞と、細胞の産生物と、を含み得る。また、多孔質膜112には、多孔質膜112でろ過された培養液を回収するための流路115が接続されている。流路115を流れる、多孔質膜112の細孔部分を通過して多孔質膜112でろ過された培養液は、細胞の産生物を含み得る。多孔質膜112でろ過された培養液は、例えば、容器201内に回収される。容器201は流路115と無菌的に接続されていてもよい。多孔質膜112でろ過された培養液が流れる流路115は、例えば、次の精製工程のために用いられるカラムへと直接接続されていてもよい。多孔質膜112でろ過された培養液は、培養槽111に戻されない。
 流路113には、例えば、培養槽111内の培養液を多孔質膜112に送るためのポンプ123が設けられている。流路113には、多孔質膜112に供給される培養液の圧力を計測する圧力計133が設けられていてもよい。流路113には、流路113内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路113には、流路113内を流れる培養液の温度を測定する温度計が設けられていてもよい。流路113には、流路113内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 流路114には、多孔質膜112の細孔部分を通過せずに中空部を通過して、多孔質膜112でろ過されなかった培養液を培養槽111に送るためのポンプが設けられていてもよい。なお、ポンプは、流路113及び流路114の両方に設けられていてもよいし、いずれか一方に設けられていてもよい。流路114には、多孔質膜112を通過した培養液の圧力を計測する圧力計134が設けられていてもよい。流路114には、流路114内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路114には、流路114内を流れる培養液の温度を測定する温度計が設けられていてもよい。流路114には、流路114内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 流路115には、例えば、多孔質膜112でろ過された培養液を送るためのポンプ125が設けられている。流路115には、多孔質膜112でろ過された培養液の圧力を計測する圧力計135が設けられていてもよい。流路115には、流路115内を流れる培養液の流速及び流量の少なくともいずれかを測定する流量計が設けられていてもよい。流路115には、流路115内を流れる培養液をサンプリングするためのサンプリング部が設けられていてもよい。サンプリング部は、サンプリング時以外は閉鎖される。
 培養槽111と多孔質膜112は、培養液が循環する経路の少なくとも一部をなしている。また、流路113、114は、培養液が循環する経路の少なくとも一部をなしている。
 培養槽111には、培養槽111に培養液を供給するための流路116が接続されていてもよい。流路116は、例えば、培養液を収容する培養液タンク216に接続されている。流路116には、例えば、培養液を培養槽111に送るためのポンプ126が設けられている。例えば、ポンプ125とポンプ126は、多孔質膜112でろ過されて培養槽111に戻らない培養液の量と、培養槽111に供給される培養液の量とが、同じになるように制御される。この制御は、培養槽111に設置された液面センサー(レベルセンサー)を用いて液面高さを観測し、液面高さが一定となるように行われてもよいし、培養液を含んだ培養槽111全体の重量を測定し、重量が一定となるように行われてもよい。
 培養槽111には、培養槽111に二酸化炭素を含む空気を供給するための流路117が接続されていてもよい。流路117は、例えば、二酸化炭素を含む空気を収容する容器217に接続されている。また、培養槽111には、培養槽111に酸素を供給するための流路118が接続されていてもよい。流路118は、例えば、酸素を収容する容器218に接続されている。
 培養槽111には、培養槽111内の細胞の少なくとも一部を排出するための流路119が接続されていてもよい。例えば、流路119を用いて培養槽111内の細胞の少なくとも一部を排出することにより、培養槽111内の培養液における細胞の密度が一定に保たれる。これにより、細胞の密度が上昇して、培養液中の酸素及び培養液成分が不足したり、不純物の濃度が上昇したりすることが抑制される。培養槽111内の細胞の少なくとも一部を排出することは、ブリーディングと呼ばれる。
 培養槽111には、培養槽111内の培養液の温度を測定するための温度計、DO(溶存酸素)を測定するためのDO計、あるいはpHを測定するためのpH計が接続されていてもよい。
 本実施形態に係る細胞産生物の製造方法によれば、予め取得されたろ過条件を用いて細胞の産生物をろ過するため、細胞の産生物を効率的に得ることが可能である。
 (実施例1)
 無血清培地へ馴化および浮遊化した細胞を選別し凍結された、モノクローナル抗体産生チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC CRL-12445)の株を解凍後、表1に示す組成を有する無血清培地を予め10mL分注した125mL三角フラスコに入れ、三角フラスコ中で、細胞と培地を混和させた。生死細胞オートアナライザー(Vi-CELL XR、ベックマン)で細胞数を確認し、細胞の密度が3.5×10cells/mLになるように培地で細胞を希釈した。その後、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で4日間、細胞を振盪培養した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 
 細胞を解凍してから4日目、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む50mLの培養液を新しい2個の125mL三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。3日後、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む120から130mLの培養液を新しい2個の250mL三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。3日後、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む500mLの培養液を新しい3個の1L三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。
 予めオートクレーブ滅菌した12L容量の培養槽に、5.5×10cells/mLの密度で細胞を含む6Lの培養液を無菌的に入れた。37℃,5%CO雰囲気下でDOが70%を下回らないよう酸素を吹き込みながら3日間、細胞を攪拌培養した。3日後、表2に示す組成を有する無血清培地を培養槽に添加することを、0.28mL/分で3日間継続して実施した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 
 次に、1.5×10cells/mLの密度で細胞を含む培養液を無菌的に回収し、あらかじめオートクレーブ滅菌した培養槽としてのスピナーフラスコ中に培養液を600mL移し入れた。接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜(旭化成メディカル製、BioOptimal MF-SL、阻止孔径0.4μm)のミニモジュールを用意した。スピナーフラスコと多孔質中空糸膜の一次側である中空部の第1の開口を第1の流路で接続し、多孔質中空糸膜の中空部の第2の開口とスピナーフラスコを第2の流路で接続し、多孔質中空糸膜の二次側とスピナーフラスコを第3の流路で接続した。
 スピナーフラスコ及び多孔質中空糸膜の雰囲気温度を4℃にし、スピナーフラスコ内で培養液を攪拌した。磁気浮上遠心ポンプ(Levitronix製 PuraLev i30SU)によりスピナーフラスコから多孔質中空糸膜へ第1の流路を介して培養液を送液し、タンジェンシャルフローろ過を行った。多孔質中空糸膜でろ過されずに多孔質中空糸膜の中空部を通過した培養液は、第2の流路を介して、スピナーフラスコに戻された。多孔質中空糸膜でろ過された培養液は、第3の流路を介してスピナーフラスコに戻された。第1及び第3の流路は、内部の培養液をサンプリングすることが可能な構造を有していた。
 多孔質中空糸膜の一次側と二次側にはシングルユース圧力計(PendoTECH製、PREPS-N-000又はPREPS-N-012)を設置し、経時的に膜間差圧(TMP)を測定した。培養液の粘度をEMS粘度計(EMS-1000S)で測定し、スピナーフラスコから多孔質中空糸膜への培養液の送液量は、多孔質中空糸膜の内表面におけるせん断応力が4.58N/mとなるように設定した。多孔質中空糸膜におけるろ過流量は、ポンプにより、一定(1LMH)となるように5μL/minに設定した。
 一日に1回又は2回、スピナーフラスコと多孔質中空糸膜の間を循環する培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。その結果、図3、図5、及び図7に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。BioOptimal MF-SLで培養液を300L/mろ過した時点における、BioOptimal MF-SLにおけるモノクローナル抗体の透過率は78.8%であり、膜間差圧は43.4kPaであった。
 (実施例2)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、旭化成製、Microza UMP、阻止孔径0.2μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例1と同様の方法を実施した。その結果、図3、図5、及び図7に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。MICROZA UMPで培養液を300L/mろ過した時点における、MICROZA UMPにおけるモノクローナル抗体の透過率は80.2%であり、膜間差圧は81.0kPaであった。
 (実施例3)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、旭化成製、Microza UJP、阻止孔径0.65μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例1と同様の方法を実施した。その結果、図3、図5、及び図7に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。MICROZA UJPで培養液を300L/mろ過した時点における、MICROZA UJPにおけるモノクローナル抗体の透過率は99.2%であり、膜間差圧は1.3kPaであった。
 (実施例4)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、Repligen製、阻止孔径0.2μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例1と同様の方法を実施した。その結果、図3、図5、及び図7に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。Repligen社製の中空糸で培養液を300L/mろ過した時点における、Repligen社製の中空糸におけるモノクローナル抗体の透過率は86.4%であり、膜間差圧は1.0kPaであった。
 (実施例5)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、Cytiva製、阻止孔径0.45μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例1と同様の方法を実施した。その結果、図3、図5、及び図7に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。Cytiva社製の中空糸で培養液を300L/mろ過した時点における、Cytiva社製の中空糸におけるモノクローナル抗体の透過率は80.6%であり、膜間差圧は2.0kPaであった。
 (実施例6)
 無血清培地へ馴化および浮遊化した細胞を選別し凍結された、モノクローナル抗体産生チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC CRL-12445)の株を解凍後、表3に示す組成を有する無血清培地を予め10mL分注した125mL三角フラスコに入れ、三角フラスコ中で、細胞と培地を混和させた。生死細胞オートアナライザー(Vi-CELL XR、ベックマン)で細胞数を確認し、細胞の密度が3.5×10cells/mLになるように培地で細胞を希釈した。その後、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で4日間、細胞を振盪培養した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 
 細胞を解凍してから4日目、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む50mLの培養液を新しい2個の125mL三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。3日後、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む120から130mLの培養液を新しい2個の250mL三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。3日後、3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む500mLの培養液を新しい3個の1L三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した。
 予めオートクレーブ滅菌した12L容量の培養槽に、5.5×10cells/mLの密度で細胞を含む5Lの培養液を無菌的に入れた。37℃,5%CO雰囲気下でDOが70%を下回らないよう酸素を吹き込みながら3日間、細胞を攪拌培養した。3日後、多孔質中空糸膜(旭化成メディカル製、BioOptimal MF-SL0190、阻止孔径0.4μm)によるろ過、及び培養槽への培養液の添加を伴う連続培養を開始した。
 ろ過により培養槽から抜き出された培養液の量と同じ量の新鮮培地を50Lバッグ(Thermo Fisher製, Productainer BioProcess Container(BPC),50L)から無菌的に培養槽に送液し、培養槽内の培養液の量が一定となるよう制御した。培養液の培地交換速度は1vvd-1(vessel volumes per day)となるように設定し、グルコース濃度が1g/L以下又はグルタミン濃度が1mmol/L以下になった時点で、培養液の培地交換速度を0.5vvd-1分上げた。
 連続培養を開始してから7日間経過後、1×10cells/mLの密度で細胞を含む培養液を無菌的に回収し、あらかじめオートクレーブ滅菌した培養槽としてのスピナーフラスコ中に培養液を600mL移し入れた。接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜(旭化成メディカル製、BioOptimal MF-SL、阻止孔径0.4μm)のミニモジュールを用意した。スピナーフラスコと多孔質中空糸膜の一次側である中空部の第1の開口を第1の流路で接続し、多孔質中空糸膜の中空部の第2の開口とスピナーフラスコを第2の流路で接続し、多孔質中空糸膜の二次側とスピナーフラスコを第3の流路で接続した。
 スピナーフラスコ及び多孔質中空糸膜の雰囲気温度を4℃にし、スピナーフラスコ内で培養液を攪拌した。磁気浮上遠心ポンプ(Levitronix製 PuraLev i30SU)によりスピナーフラスコから多孔質中空糸膜へ第1の流路を介して培養液を送液し、タンジェンシャルフローろ過を行った。多孔質中空糸膜でろ過されずに多孔質中空糸膜の中空部を通過した培養液は、第2の流路を介して、スピナーフラスコに戻された。多孔質中空糸膜でろ過された培養液は、第3の流路を介してスピナーフラスコに戻された。第1及び第3の流路は、内部の培養液をサンプリングすることが可能な構造を有していた。
 多孔質中空糸膜の一次側と二次側にはシングルユース圧力計(PendoTECH製、PREPS-N-000又はPREPS-N-012)を設置し、経時的に膜間差圧(TMP)を測定した。培養液の粘度をEMS粘度計(EMS-1000S)で測定し、スピナーフラスコから多孔質中空糸膜への培養液の送液量は、多孔質中空糸膜の内表面におけるせん断応力が1.69N/mとなるように設定した。多孔質中空糸膜におけるろ過流量は、ポンプにより、一定(1LMH)となるように5μL/minに設定した。
 一日に1回又は2回、スピナーフラスコと多孔質中空糸膜の間を循環する培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。その結果、図4、図6、及び図8に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。
 (実施例7)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、旭化成製、Microza UMP、阻止孔径0.2μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例6と同様の方法を実施した。その結果、図4、図6、及び図8に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。
 (実施例8)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、旭化成製、Microza UJP、阻止孔径0.65μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例6と同様の方法を実施した。その結果、図4、図6、及び図8に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。
 (実施例9)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、Repligen製、阻止孔径0.2μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例6と同様の方法を実施した。その結果、図4、図6、及び図8に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。
 (実施例10)
 接液部分の膜面積が3cmとなるよう有効長を調整した多孔質中空糸膜のミニモジュールとして、Cytiva製、阻止孔径0.45μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、実施例6と同様の方法を実施した。その結果、図4、図6、及び図8に示すように、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度は、それぞれ、略一定であった。
 (比較例1)
 実施例と同様に3.5×10cells/mLの密度で細胞を含む120から130mLの培養液を新しい2個の250mL三角フラスコに入れ、インキュベーター内で、37℃,5%CO雰囲気下で3日間、細胞を振盪培養した後、あらかじめオートクレーブ滅菌した3L容量の培養槽中に5.5×10cells/mLの密度で細胞を含む1.28Lの培養液を無菌的に入れた。37℃,5%CO雰囲気下でDOが70%を下回らないよう酸素を吹き込みながら3日間、細胞を攪拌培養した。3日後、接液部分の膜面積が200cmとなるよう本数と有効長を調整した多孔質中空糸膜(旭化成メディカル製、BioOptimal MF-SL、阻止孔径0.4μm)のモジュールによるろ過、及び培養槽への培養液の添加を伴う連続培養を開始した。
 培養槽と多孔質中空糸膜の一次側である中空部の第1の開口を第1の流路で接続し、多孔質中空糸膜の中空部の第2の開口と培養槽を第2の流路で接続した。多孔質中空糸膜でろ過された培養液は、培養槽に戻さないようにした。また、培養槽には、内部の培地をサンプリングするための流出口と、新鮮培地を供給するための供給口を設けた。
 ろ過により培養槽から抜き出された培養液の量と同じ量の新鮮培地を20Lバッグ(Thermo Fisher製, Productainer BioProcess Container(BPC),20L)から無菌的に培養槽に送液し、培養槽内の培養液の量が一定となるよう制御した。培養液の培地交換速度は1vvd-1(vessel volumes per day)となるように設定し、グルコース濃度が1g/L以下又はグルタミン濃度が1mmol/L以下になった時点で、培養液の培地交換速度を0.375vvd-1分上げた。
 培養槽内に入った培養液の温度を37℃に制御し、培養槽内で培養液を攪拌した。磁気浮上遠心ポンプ(Levitronix製 PuraLev 200MU)により培養槽から多孔質中空糸膜へ第1の流路を介して培養液を送液し、タンジェンシャルフローろ過を行った。多孔質中空糸膜でろ過されずに多孔質中空糸膜の中空部を通過した培養液は、第2の流路を介して、培養槽に戻された。培養液のDOが70%を下回った場合、スパージャーを用いて、培養槽内の培養液中に酸素を導入した。また、培養槽内には5%の濃度で二酸化炭素を含む空気を常時導入した。
 多孔質中空糸膜の一次側と二次側にはシングルユース圧力計(PendoTECH製、PREPS-N-038)を設置し、経時的に膜間差圧(TMP)を測定した。培養槽から多孔質中空糸膜への培養液の送液量は、多孔質中空糸膜の内表面におけるせん断応力が2.10N/mとなるように設定した。多孔質中空糸膜におけるろ過流量は、ポンプにより、1.0LMH、1.5LMH、2.0LMH、2.5LMH、及び3.0LMHに段階的に上昇させ、細胞の増加にあわせてグルコース濃度及びグルタミン濃度の調整のために新鮮培地の導入量が増えるようにした。また、培養槽中の培養液中の細胞の密度が7.5x10cells/mLとなるようにブリーディングした。さらに、培養槽に液面センサーを配置し、液面が一定となるよう、新鮮培地を培養槽内に導入した。
 一日に1回又は2回、培養槽内の培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。その結果、図9に示すように、培養液における細胞の密度は、ブリーディングを開始するまで上昇し続けた。図10に示すように、細胞の生存率は略一定であった。図11に示すように、抗体の濃度は上昇する傾向にあった。
 (比較例2)
 接液部分の膜面積が200cmとなるよう本数と有効長を調整した多孔質中空糸膜のモジュールとして旭化成製、Microza UMP、阻止孔径0.2μmの多孔質中空糸膜を使用した以外は、比較例1と同様の方法を実施した。
 一日に1回又は2回、培養槽内の培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。その結果、図9に示すように、培養液における細胞の密度は、ブリーディングを開始するまで上昇し続けた。図10に示すように、細胞の生存率は略一定であった。図11に示すように、抗体の濃度は上昇する傾向にあった。
 (参考例1から3)
 実施例1と同様に用意した1.5×10cells/mLの密度で細胞を含む培養液を無菌的に回収し、あらかじめオートクレーブ滅菌した培養槽としてのスピナーフラスコ中に培養液を600mL移し入れた。
 スピナーフラスコの雰囲気温度を4℃にし、スピナーフラスコ内で培養液を攪拌した。スピナーフラスコには中空糸膜を接続せず、スピナーフラスコ内のみで細胞を培養した。一日に1回又は2回、スピナーフラスコ内の培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。雰囲気温度を室温(RT)にした以外は同じ条件による実験と、雰囲気温度を37℃にした以外は同じ条件による実験も行った。その結果、図12に示すように、室温では、細胞の密度が上昇する傾向にあった。図13に示すように、室温及び37℃では、細胞の生存率は低下する傾向にあった。図14に示すように、室温及び37℃では、抗体の濃度が上昇する傾向にあった。
 (参考例4から6)
 実施例1と同様に用意した1.5×10cells/mLの密度で細胞を含む培養液を無菌的に回収し、あらかじめオートクレーブ滅菌した培養槽としてのスピナーフラスコ中に培養液を600mL移し入れた。
 スピナーフラスコの雰囲気温度を8℃にし、スピナーフラスコ内で培養液を攪拌した。スピナーフラスコには中空糸膜を接続せず、スピナーフラスコ内のみで細胞を培養した。一日に1回又は2回、スピナーフラスコ内の培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。雰囲気温度を12℃にした以外は同じ条件による実験と、雰囲気温度を37℃にした以外は同じ条件による実験も行った。その結果、図15に示すように、37℃では、細胞の密度が低下する傾向にあった。図16に示すように、37℃では、細胞の生存率は低下する傾向にあった。
 (参考例7、8)
 実施例1と同様に用意した1.5×10cells/mLの密度で細胞を含む培養液を無菌的に回収し、あらかじめオートクレーブ滅菌した培養槽としてのスピナーフラスコ中に培養液を600mL移し入れた。
 スピナーフラスコの雰囲気温度を4℃にし、スピナーフラスコ内で培養液を攪拌した。スピナーフラスコには中空糸膜を接続せず、スピナーフラスコ内のみで細胞を培養した。一日に1回又は2回、スピナーフラスコ内の培養液をサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。ポンプを用いて培養液を循環する以外は同じ条件による実験も行った。磁気浮上遠心ポンプ(Levitronix製 PuraLev i30SU)によりスピナーフラスコからポンプへ第1の流路を介して培養液を送液し、ポンプを通過した培養液は、第2の流路を介して、スピナーフラスコに戻された。ポンプによる培養液の送液は50mL/minで実施された。第1の流路は、内部の培養液をサンプリングすることが可能な構造を有しており、一日に1回又は2回、スピナーフラスコ内の培養液を第1の流路よりサンプリングし、培養液における細胞の密度、細胞の生存率、及び抗体の濃度を測定した。その結果、図17から図19に示すように、ポンプによる培養液の循環がある場合もない場合も同様に、培養液の経時変化は抑制されていた。
 (分析方法)
 上記した実施例、比較例、及び参考例において使用した分析方法を、以下、説明する。培養液に含まれる細胞の密度及び生存率は、生死細胞オートアナライザー(Beckman Coulter製 Vi-CELL XR)により計測した。サンプルはPBS(-)(富士フイルム和光)を用いて希釈を行い、600μL使用して分析した。画像解析メソッドはVi-CELL XR中における「CHO」を使用し、適宜実態に合うようにMinimum diameter(μm)・Cell brightness(%)・Viable cell spot brightness(%)の設定値を変更したメソッドを使用した。
 抗体濃度のHPLC測定は、下記の方法で行った。
(1)検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
(2)カラム:POROS G 20μmColumn,4.6×50mm,0.8mL(ThermoFisher)
(3)カラム温度:室温
(4)移動相
 移動相A:リン酸水素二ナトリウム(無水)7.098g、塩化ナトリウム8.766gを水800mLに溶かし、1mol/L塩酸を加えてpH7.0に調整した後、水を加えて1000mLとした。
 移動相B:1mol/L塩酸12mL、塩化ナトリウム8.766gを水に溶かし、1000mLとした。
(5)移動相の送液
 流量2mL/minで、移動相A及び移動相Bの割合を下記表4のように変えて送液した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 
 細胞培養液を300×gにて2分間遠心後、上清をサンプリングした。上記手法で市販のヒト免疫グロブリンG(日本血液製剤機構製 献血ヴェノグロブリンIH5%静注2.5g/50mL)の段階希釈溶液9系列、及び細胞培養液上清を上記手順で送液した。ヒト免疫グロブリンGのピーク面積9点を用いて標準曲線を作成後、標準曲線及び試料のピーク面積から各溶液中の抗体濃度を算出した。
 中空糸膜の接液表面における培養液によるせん断応力SSは、下記式に示すように、中空糸膜の中空部を流れる培養液の粘度VC(Pa・s)と、せん断速度SV(/s)と、の積で与えられる。
  SS=VC×SV   
 せん断速度は、線速度及び流路径から算出可能であり、線速度はポンプ出力から取得可能である。したがって、培養液の粘度と、線速度から算出したせん断速度に基づいて、せん断応力を算出した。
 11、111・・・培養槽、12、112・・・中空糸膜、13、14、15、113、114、115、116、117、118、119・・・流路、16・・・攪拌装置、23、25、123、125、126・・・ポンプ、33、34、35、133、134、135・・・圧力計、50・・・温度管理槽、201・・・容器、216・・・培養液タンク、217・・・容器、218・・・容器

Claims (68)

  1.  細胞の増殖が抑制される条件下において、細胞を含む培養液を収容する培養槽から多孔質膜に前記培養液を送り、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を前記培養槽に戻して、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることと、
     前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価することと、
     を含む、
     ろ過条件の評価方法。
  2.  前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を前記培養槽に戻すことにおいて、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液と前記多孔質膜でろ過された培養液を前記培養槽に戻す、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  3.  前記一又は複数のろ過条件下において前記多孔質膜のろ過性能を評価することをさらに含み、
     前記多孔質膜の前記ろ過性能に基づいて、前記多孔質膜における前記一又は複数のろ過条件を評価する、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  4.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、細胞周期の進行が抑制される条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  5.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  6.  前記15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、10℃以下又は5℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項5に記載のろ過条件の評価方法。
  7.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、前記細胞の酵素活性が抑制される条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  8.  前記酵素がサイクリン依存性キナーゼである、請求項7に記載のろ過条件の評価方法。
  9.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、前記培養液における細胞周期の阻害剤の存在である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  10.  前記多孔質膜における前記細胞の産生物の透過率に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  11.  前記多孔質膜における透過流束に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  12.  前記多孔質膜における膜間差圧に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  13.  ろ液の濁度に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  14.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜の構造、材料、又は物性の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  15.  前記一又は複数のろ過条件が、前記培養液の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  16.  前記一又は複数のろ過条件が、前記培養液における前記細胞の密度の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  17.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜に送られる前記培養液の流量の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  18.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜でろ過された前記培養液の流量の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  19.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜に送られる培養液の流れによる、前記多孔質膜の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  20.  前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路が、温度管理槽内に配置されている、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  21.  前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養液の組成を維持するための能動的な操作をしない、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  22.  前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路に、培地を外部から追加しない、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  23.  前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養液の溶存酸素及びpHの少なくともいずれかを制御しない、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  24.  前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路から、前記細胞をブリーディングしない、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  25.  前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路から、サンプリングのために培養液を採取することをさらに含む、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  26.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の密度を計測することをさらに含む、請求項25に記載のろ過条件の評価方法。
  27.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の生存率を計測することをさらに含む、請求項25に記載のろ過条件の評価方法。
  28.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の産生物の濃度を計測することをさらに含む、請求項25に記載のろ過条件の評価方法。
  29.  前記サンプリングした培養液における前記培養液の濁度を計測することをさらに含む、請求項25に記載のろ過条件の評価方法。
  30.  前記多孔質膜が中空糸膜である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  31.  前記多孔質膜が精密ろ過膜である、請求項1に記載のろ過条件の評価方法。
  32.  細胞が増殖する条件下において、ろ過条件を用いて、細胞を含む培養液を収容する培養槽から多孔質膜に前記培養液を送り、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を前記培養槽に戻し、前記多孔質膜でろ過された前記細胞の産生物を含む培養液を回収して、前記培養液の少なくとも一部を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることを含み、
     前記ろ過条件が、細胞の増殖が抑制される条件下において、前記細胞を含む前記培養液を収容する前記培養槽から前記多孔質膜に前記培養液を送り、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を前記培養槽に戻して、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させて、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価して得られたろ過条件である、
     細胞産生物の製造方法。
  33.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液を前記培養槽に戻すことにおいて、前記多孔質膜でろ過されずに通過した培養液と前記多孔質膜でろ過された培養液を前記培養槽に戻す、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  34.  前記細胞が増殖する条件が、細胞周期が進行する条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  35.  前記細胞が増殖する条件が、15℃以上の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  36.  前記15℃より高い雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、20℃、25℃、30℃、又は35℃より高い雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項35に記載の細胞産生物の製造方法。
  37.  前記細胞が増殖する条件が、前記細胞の酵素が活性化されている条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  38.  前記酵素がサイクリン依存性キナーゼである、請求項37に記載の細胞産生物の製造方法。
  39.  前記細胞が増殖する条件が、前記培養液における細胞周期の阻害剤の非存在である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  40.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、細胞周期の進行が抑制される条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  41.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  42.  前記15℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかが、10℃以下又は5℃以下の雰囲気温度及び培養液温度の少なくともいずれかである、請求項41に記載の細胞産生物の製造方法。
  43.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、前記細胞の酵素活性が抑制される条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  44.  前記酵素がサイクリン依存性キナーゼである、請求項43に記載の細胞産生物の製造方法。
  45.  前記細胞の増殖が抑制される条件が、前記培養液における細胞周期の阻害剤の存在である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  46.  前記多孔質膜における前記細胞の産生物の透過率に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  47.  前記多孔質膜における透過流束に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  48.  前記多孔質膜における膜間差圧に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  49.  ろ液の濁度に基づき、前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件が評価されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  50.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜の構造、材料、又は物性の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  51.  前記一又は複数のろ過条件が、前記培養液の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  52.  前記一又は複数のろ過条件が、前記培養液における前記細胞の密度の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  53.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜に送られる前記培養液の流量の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  54.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜でろ過された前記培養液の流量の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  55.  前記一又は複数のろ過条件が、前記多孔質膜に送られる培養液の流れによる、前記多孔質膜の接液表面におけるせん断応力の一又は複数の条件である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  56.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養槽と前記多孔質膜を含む前記培養液が循環する経路が、温度管理槽内に配置されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  57.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養液の組成を維持するための能動的な操作をしない、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  58.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養液が循環する経路に、培地を外部から追加していない、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  59.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養液の溶存酸素及びpHの少なくともいずれかを制御していない、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  60.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路から、前記細胞をブリーディングしていない、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  61.  前記多孔質膜における一又は複数のろ過条件を評価する際に、前記培養液を前記培養槽と前記多孔質膜の間で循環させることにおいて、前記培養槽と前記多孔質膜を含む、前記培養液が循環する経路から、サンプリングのために培養液を採取することを含む、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  62.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の密度を計測することをさらに含む、請求項61に記載の細胞産生物の製造方法。
  63.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の生存率を計測することをさらに含む、請求項61に記載の細胞産生物の製造方法。
  64.  前記サンプリングした培養液における前記細胞の産生物の濃度を計測することをさらに含む、請求項61に記載の細胞産生物の製造方法。
  65.  前記サンプリングした培養液における前記培養液の濁度を計測することをさらに含む、請求項61に記載の細胞産生物の製造方法。
  66.  前記多孔質膜が中空糸膜である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  67.  前記多孔質膜が精密ろ過膜である、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
  68.  前記細胞が灌流培養されている、請求項32に記載の細胞産生物の製造方法。
PCT/JP2023/040996 2022-11-15 2023-11-14 ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法 WO2024106442A1 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022-182784 2022-11-15
JP2022182784 2022-11-15
JP2022182807 2022-11-15
JP2022-182807 2022-11-15

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2024106442A1 true WO2024106442A1 (ja) 2024-05-23

Family

ID=91084482

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2023/040996 WO2024106442A1 (ja) 2022-11-15 2023-11-14 ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
WO (1) WO2024106442A1 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010038613A1 (ja) * 2008-09-30 2010-04-08 東レ株式会社 化学品の製造方法および連続培養装置
US20190169559A1 (en) * 2016-04-15 2019-06-06 Boehringer Ingelheim International Gmbh Cell retention device and method

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010038613A1 (ja) * 2008-09-30 2010-04-08 東レ株式会社 化学品の製造方法および連続培養装置
US20190169559A1 (en) * 2016-04-15 2019-06-06 Boehringer Ingelheim International Gmbh Cell retention device and method

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7227406B2 (ja) 細胞培養物を処理する方法およびシステム
TWI656839B (zh) 高密度細胞儲存方法
JP6530171B2 (ja) 培養産生物の回収方法
SA516371679B1 (ar) وحدة ترشيح فائق من أجل تبادل أوساط أو مثبت أس هيدروجيني مستمر من محلول بروتين
KR102619142B1 (ko) 초고밀도 세포 뱅킹 방법
KR20150013469A (ko) 세포 배양 시스템 및 세포 배양 방법
JP6869423B2 (ja) 生産物の製造方法
JP6282467B2 (ja) タンパク質を生産するための方法
WO2017180724A1 (en) Perfusion filtration systems
WO2024106442A1 (ja) ろ過条件の評価方法及び細胞産生物の製造方法
JP6758194B2 (ja) 高細胞密度フィル・アンド・ドロー発酵プロセス
KR100575461B1 (ko) 생물 배양 장치 및 방법
CN112313326B (zh) 细胞培养方法、产物的制造方法及细胞培养装置
CN117642502A (zh) 病毒的回收方法