WO2024106347A1 - 有機elデバイス、有機elデバイスの製造方法、及び有機elデバイスの特性評価方法 - Google Patents

有機elデバイス、有機elデバイスの製造方法、及び有機elデバイスの特性評価方法 Download PDF

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Abstract

有機ELデバイス(100)は、一対の電極(11,12)と、一対の電極(11,12)の間に配置される発光層(15)と、一対の電極(11,12)のうちの一方の電極(11)と発光層(15)との間に配置されるキャリア輸送層(正孔輸送層(14))と、を備える。キャリア輸送層(正孔輸送層(14))は、キャリア輸送層(正孔輸送層(14))を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、キャリア輸送層(正孔輸送層(14))が対象とするキャリア(正孔)と同じ極性のイオン(カチオン(17))を含む。

Description

有機ELデバイス、有機ELデバイスの製造方法、及び有機ELデバイスの特性評価方法
 本開示は、有機EL(Electro-Luminescence)デバイス、有機ELデバイスの製造方法、及び有機ELデバイスの特性評価方法に関する。
 特許文献1には、光入力型有機EL素子が開示されている。この有機EL素子は、一対の電極の間に、発光層及びキャリア注入層からなる発光表示部と、光応答部とを積層して形成した構造を有する。この有機EL素子は、光応答部に入力された情報に応じて発光表示が行われる。
特開平7-175420号公報
 本開示は、発光効率を含む特性が向上しやすい有機ELデバイス、有機ELデバイスの製造方法、及び有機ELデバイスの特性評価方法を提供する。
 上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る有機ELデバイスは、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される発光層と、前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備える。前記キャリア輸送層は、前記キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを含む。
 また、上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る有機ELデバイスの製造方法は、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される発光層と、前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備える有機ELデバイスの製造方法である。前記有機ELデバイスの製造方法は、前記キャリア輸送層に対して、前記キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを添加する工程を含む。
 また、上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る有機ELデバイスの特性評価方法は、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される発光層と、前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備える有機ELデバイスの特性評価方法であって、変位電流測定を行う工程を含む。前記変位電流測定では、前記キャリア輸送層を構成する構成材料と、前記構成材料における厚さ方向の両側のうちの一方の側のみに配置される絶縁層と、前記構成材料及び前記絶縁層を前記厚さ方向において挟む一対の電極と、を備える測定用素子において、前記一対の電極間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加し、前記電圧の印加により前記測定用素子を流れる電流に基づいて、前記構成材料に含まれるイオンを測定する。前記イオンは、前記構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンである。
 本開示に係る有機ELデバイス等は、発光効率を含む特性が向上しやすい、という利点がある。
図1は、実施の形態に係る有機ELデバイスの構造を示す概要図である。 図2は、実施の形態に係る測定システムの構成を示す概要図である。 図3は、実施の形態に係る測定用素子を示す概要図である。 図4は、実施の形態に係る変位電流測定の一例を示すフローチャートである。 図5は、実施の形態に係る変位電流測定による、昇華精製前後の測定対象の材料についての測定結果の一例を示す図である。 図6は、実施の形態に係る変位電流測定による、昇華精製前後の測定対象の材料についての測定結果の比較例を示す図である。 図7は、実施の形態に係る有機ELデバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。 図8は、実施の形態に係る有機ELデバイスの初期特性における駆動電圧の測定結果を示す図である。 図9は、実施の形態に係る有機ELデバイスの初期特性における発光スペクトルの測定結果を示す図である。 図10は、実施の形態に係る有機ELデバイスの初期特性における電流効率の測定結果を示す図である。 図11は、実施の形態に係る有機ELデバイスの初期特性における外部量子収率の測定結果を示す図である。 図12は、実施の形態に係る有機ELデバイスの劣化解析における駆動電圧の測定結果を示す図である。 図13は、実施の形態に係る有機ELデバイスの劣化解析における発光輝度の測定結果を示す図である。 図14は、実施の形態に係る有機ELデバイスの劣化解析における電流効率の測定結果を示す図である。 図15は、実施の形態に係る有機ELデバイスの劣化解析における電力効率の測定結果を示す図である。 図16は、図15において有機ELデバイスの駆動時間が0~100時間である場合の測定結果を拡大した図である。 図17は、図15において有機ELデバイスの駆動時間が1500~2000時間である場合の測定結果を拡大した図である。
 以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
 なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
 [1.有機ELデバイス]
 図1は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の構造を示す概要図である。実施の形態では、有機ELデバイス100は、有機発光ダイオードである。また、実施の形態では、有機ELデバイス100は、キャリアとしての正孔が過剰となる構成を有している。
 有機ELデバイス100は、図1に示すように、一対の電極11,12と、正孔注入層13と、正孔輸送層14と、電子輸送層を含む発光層15と、電子注入層16と、を備えている。実施の形態では、正孔輸送層14及び電子輸送層は、第1キャリア輸送層及び第2キャリア輸送層に相当する。また、実施の形態では、第1キャリア輸送層が正孔輸送層14であり、第2キャリア輸送層が電子輸送層である。
 一対の電極11,12のうちの一方の第1電極11は、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)を構成材料として形成される陽極である。第1電極11の厚さは、例えば数十nm~百数十nmである。
 一対の電極11,12のうちの他方の第2電極12は、Al(アルミニウム)を構成材料として形成される陰極である。第2電極12の厚さは、例えば数十~百数十nmである。
 正孔注入層13は、第1電極11の厚さ方向の一面(図1における下面)に積層され、MoO3(酸化モリブデン(VI))を構成材料として形成されている。正孔注入層13の厚さは、例えばコンマ数nmである。
 正孔輸送層14は、正孔注入層13の厚さ方向の一面(図1における下面)に積層され、α-NPD(N,N’-bis(1-naphthyl)-N,N’-diphenyl-1,1’- biphenyl-4,4’-diamine)を構成材料として形成されている。言い換えれば、α-NPDは、正孔輸送層14(つまり、第1キャリア輸送層)の構成材料である。正孔輸送層14の厚さは、例えば数十nmである。言い換えれば、正孔輸送層14(キャリア輸送層)は、一対の電極11,12のうちの一方の電極(第1電極11)と発光層15との間に配置されている。
 実施の形態では、正孔輸送層14は、不純物(又は添加物)としてのカチオン17を含んでいる。このカチオン17は、α-NPD由来のイオンではなく、α-NPDとは異なる材料由来のイオンである。ここで、正孔輸送層14においては、アクセプタを添加し、アクセプタが電子を引き抜くことにより、α-NPDがカチオン状態となり、アクセプタがアニオンになるのが通常である。実施の形態では、正孔輸送層14に含まれるカチオン17は、カチオン状態となったα-NPDではなく、α-NPDに不純物として含まれているイオンである。また、カチオン17は、カチオン状態となったα-NPDとは異なり、一対の電極11,12間に電圧を印加することで移動し得る可動性のイオンである。
 このように、実施の形態では、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)は、第1キャリア輸送層を構成する構成材料(ここでは、α-NPD)とは異なる材料由来であって、第1キャリア輸送層が対象とするキャリア(ここでは、正孔)と同じ極性のイオン(ここでは、カチオン17)を含んでいる。第1キャリア輸送層が上記イオンを含んでいるか否かは、変位電流測定により測定することが可能である。変位電流測定については、後述の[2.変位電流測定]にて詳細に説明する。
 電子輸送層を含む発光層15は、正孔輸送層14の厚さ方向の一面(図1における下面)に積層され、Alq3(tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium)を構成材料として形成されている。電子輸送層を含む発光層15の厚さは、例えば数十nmである。言い換えれば、発光層15は、一対の電極11,12の間に配置されている。
 電子注入層16は、電子輸送層を含む発光層15の厚さ方向の一面(図1における下面)と第2電極12の厚さ方向の一面(図1における上面)との間に積層され、LiF(フッ化リチウム)を構成材料として形成されている。電子注入層16の厚さは、例えばコンマ数nmである。
 [2.変位電流測定]
 以下、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)にイオン(ここでは、カチオン17)が含まれるか否かを測定するための変位電流測定について説明する。変位電流測定は、図2に示す測定システム200を用いて行われる。
 図2は、実施の形態に係る測定システム200の構成を示す概要図である。実施の形態に係る測定システム200は、固体である測定対象の材料4に含まれるイオン(不純物イオン)の極性を測定する。具体的には、実施の形態に係る測定システム200では、薄膜である測定対象の材料4を含む測定用素子3について、測定用素子3が有する一対の電極32,33(後述する)に電圧を印加することにより、測定対象の材料4に含まれる不純物イオンを測定する。
 測定システム200は、図2に示すように、電圧印加部21と、測定部22と、を備えている。
 電圧印加部21は、測定用素子3の有する一対の電極32,33間に接続されており、一対の電極32,33間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加する。実施の形態では、電圧印加部21は、ファンクションジェネレータであって、周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧として三角波電圧を生成し、生成した三角波電圧を一対の電極32,33間に印加する。三角波電圧は、一例として周波数が0.001Hz、振幅が±10Vである。
 なお、三角波電圧の周波数及び振幅はいずれも一例であり、これに限定されない。ただし、三角波電圧の周波数は、比較的低い周波数であるのが好ましい。というのも、三角波電圧の周波数が高くなると、測定対象の材料4に含まれるイオンが絶縁層31(後述する)に到達する前に電圧の極性が反転するため、測定対象であるイオンに起因する電流が測定できなくなるからである。
 測定部22は、電圧印加部21による電圧の印加により測定用素子3を流れる電流に基づいて、測定対象の材料4の物性を測定する。実施の形態では、測定対象の材料4の物性は、測定対象の材料4に含まれるイオンの極性を少なくとも含む。また、実施の形態では、測定対象の材料4の物性は、測定対象の材料4に含まれるイオンのイオン量を含む。
 実施の形態では、測定部22は、I-Vコンバータ221と、電圧計222と、を備えている。I-Vコンバータ221は、測定用素子3の一対の電極32,33と直列に接続されており、測定用素子3に流れる電流を電圧に変換する。電圧計222は、I-Vコンバータ221により変換された電圧を計測する。つまり、測定部22は、I-Vコンバータ221により変換された電圧を電圧計222で計測することにより、測定用素子3に流れる電流を計測する。
 そして、詳しくは後述するが、測定部22は、測定用素子3に流れる電流を測定することにより、測定対象の材料4に含まれるイオンの極性及びイオン量を測定する。
 図3は、実施の形態に係る測定用素子3を示す概要図である。図3の(a)は、測定用素子3の平面図であって、図3の(b)は、測定用素子3の断面図である。測定用素子3は、図3に示すように、絶縁層31と、一対の電極32,33と、ガラス基板34と、測定対象の材料4と、で構成されている。実施の形態では、測定用素子3は、平面視で数cm角の正方形状である。
 絶縁層31は、SiN(シリコンナイトライド)絶縁膜である。なお、絶縁層31を構成する材料は特に限定されない。例えば、絶縁層31は、ポリイミド絶縁膜であってもよい。絶縁層31は、一対の電極32,33のうちの一方(ここでは、下方)の電極33の一面(ここでは、上面)に形成されている。また、絶縁層31の他方(ここでは上方)の電極32側の一面(つまり、上面)には、測定対象の材料4が配置されている。
 一対の電極32,33のうち、一方(ここでは、上方)の電極32はAl(アルミニウム)電極である。また、一対の電極32,33のうち、他方(ここでは、下方)の電極33は、ITO電極であって、透明電極である。なお、一対の電極32,33を構成する材料は、特に限定されない。
 一対の電極32,33のうちの一方(ここでは、上方)の電極32は、測定対象の材料4の一面(ここでは、上面)に配置されている。また、一対の電極32,33のうちの他方(ここでは、下方)の電極33は、ガラス基板34の一面(ここでは、上面)に形成されている。一対の電極32,33のうち、電極32及び電極33の一部は外部に露出しており、露出した部位に電圧印加部21及び測定部22が電線を介して電気的に接続可能となっている。
 上述のように、絶縁層31は、測定対象の材料4における厚さ方向(ここでは、上下方向)の両側のうちの一方の側(ここでは、下側)のみに配置されている。また、一対の電極32,33は、測定対象の材料4及び絶縁層31を厚さ方向において挟むように配置されている。したがって、測定対象の材料4の厚さ方向のうちの一方の側の面(ここでは、下面)は、絶縁層31に接しており、他方の側の面(ここでは、上面)は、絶縁層を介さずに電極32に接している。
 なお、実施の形態では、測定用素子3の横方向(ここでは、左右方向)において、電極32の寸法、測定対象の材料4の寸法、絶縁層31の寸法、及び電極33の寸法はこの順に大きくなっているが、横方向の寸法を限定する趣旨ではない。また、実施の形態では、測定用素子3の縦方向(ここでは、紙面奥行き方向)において、測定対象の材料4の寸法は、電極32及び絶縁層31の寸法よりも小さくなっているが、縦方向の寸法を限定する趣旨ではない。
 実施の形態では、測定対象の材料4は、有機ELデバイス100における第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)を構成する構成材料(ここでは、α-NPD)である。なお、測定対象の材料4は、有機ELデバイス100における第2キャリア輸送層(ここでは、電子輸送層)を構成する構成材料であってもよい。
 また、実施の形態では、測定対象の材料4は、固体であって、特には薄膜である。実施の形態では、測定対象の材料4の厚さは数十nmであるが、数百nmであってもよい。なお、測定対象の材料4は、固体であればよく、薄膜でなくてもよい。
 以下、実施の形態に係る測定システム200の動作、つまり変位電流測定について図4を用いて説明する。図4は、実施の形態に係る変位電流測定の一例を示すフローチャートである。
 まず、測定用素子3を作製する(ステップS1)。すなわち、ガラス基板34の一面(ここでは、上面)に、電極33、絶縁層31、測定対象の材料4の薄膜、及び電極32の順に積層した素子を作製する。
 次に、測定用素子3を加熱する(ステップS2)。ここでは、測定用素子3の周囲温度が摂氏40~80度程度になるまで、測定用素子3を加熱する。そして、測定用素子3を加熱しながら、又は測定用素子3が高温の環境に置かれた状態で、電圧印加部21により測定用素子3の一対の電極32,33間に電圧(ここでは、三角波電圧)を印加する(ステップS3)。つまり、実施の形態では、一対の電極32,33間に電圧を印加するステップS3は、常温よりも高い温度(ここでは、摂氏40~80度程度)下で行われる。
 このように測定用素子3を加熱することにより、測定対象の材料4に含まれるイオンの移動度を向上することができると考えられる。そして、測定対象の材料4についてのイオン量を測定するステップS5(後述する)において、測定用素子3を加熱しない場合と比較して、測定対象の材料4に含まれるイオンのイオン量の測定精度を更に向上することができる。
 次に、測定部22により測定用素子3の一対の電極32,33間に流れる電流を測定し、測定した電流に基づいて測定対象の材料4に含まれるイオンの極性を測定する(ステップS4)。また、測定した電流に基づいて、測定対象の材料4に含まれるイオンのイオン量を測定する(ステップS5)。
 ここで、測定対象の材料4に含まれるイオンの極性、及びイオン量の測定の具体例について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態に係る変位電流測定による、昇華精製前後の測定対象の材料4についての測定結果の一例を示す図である。図5の(a)は、昇華精製後の測定対象の材料4についての測定結果の一例を示す図である。図5の(b)は、未精製の測定対象の材料4についての測定結果の一例を示す図である。つまり、図5の(a)は、昇華精製により不純物を取り除いた測定対象の材料4についての測定結果であり、図5の(b)は、不純物を取り除いていない測定対象の材料4についての測定結果である。
 図5に示す測定結果では、縦軸が一対の電極32,33及び測定用素子3に流れる電流(単位は「A」)を、横軸が一対の電極32,33間に印加される電圧(単位は「V」)を表している。また、図5において、一点鎖線は常温(ここでは、摂氏25度)下での測定結果、破線は測定用素子3を摂氏40度まで加熱した際の測定結果、点線は測定用素子3を摂氏60度まで加熱した際の測定結果、及び実線は測定用素子3を摂氏80度まで加熱した際の測定結果を表している。
 図5の(a)に示すように、昇華精製後の測定対象の材料4についての測定結果では、第1象限及び第3象限のいずれにおいても、平行四辺形状のグラフから僅かに突出するピークが生じているが、これらに有意な差が見られない。一方、図5の(b)に示すように、未精製の測定対象の材料4についての測定結果では、特に第3象限において平行四辺形状のグラフから突出するピークが顕著に出現している(図5の(b)における矩形上の枠内を参照)。このピークは、測定用素子3の温度が高くなるにつれて、より顕著となっている。
 したがって、このピークを含む領域の面積を算出することにより、測定対象の材料4に含まれるイオン(不純物イオン)のイオン量を測定することが可能である。また、このピークは、第3象限、つまり測定用素子3に印加する電圧が正電圧から負電圧に切り替わる期間において顕著に出現している。すなわち、一対の電極32,33のうちの当該期間において負極となる電極33側に配置された絶縁層31の表面にイオンが移動することで、このピークが観測される。したがって、測定対象の材料4(ここでは、α-NPD)に含まれるイオン(不純物イオン)がカチオンであることを測定することが可能である。
 また、この変位電流測定により測定されるイオンは、一対の電極32,33間に電圧を印加することで移動する可動性のイオンである。つまり、この変位電流測定では、カチオン状態となった測定対象の材料4ではなく、測定対象の材料4に不純物として含まれている可動性のイオン(ここでは、カチオン)を測定することが可能である。
 なお、第1象限においてピークが出現していないのは、電極32側に絶縁層が配置されていないからである。すなわち、第1象限、つまり測定用素子3に印加する電圧が負電圧から正電圧に切り替わる期間においては、一対の電極32,33のうちの電極32が負極となるが、電極32側に絶縁層が配置されていないため、測定対象の材料4に含まれるイオンが検出されない。このため、第1象限においては、ピークが観測されない。
 また、上述のように、上記ピークは、測定用素子3の温度が高くなるにつれて、より顕著となっている。つまり、測定用素子3の温度を上昇させることで、測定対象の材料4に含まれるイオンのイオン量を測定しやすくなる。
 図6は、実施の形態に係る変位電流測定による、昇華精製前後の測定対象の材料4についての測定結果の比較例を示す図である。図6に示す測定結果では、縦軸が一対の電極32,33及び測定用素子3に流れる電流(単位は「A」)を、横軸が一対の電極32,33間に印加される電圧(単位は「V」)を表している。また、図6において、破線は未精製の測定対象の材料4についての測定結果を、実線は昇華精製後の測定対象の材料4についての測定結果を表している。また、図6に示す測定結果では、測定用素子3の温度を摂氏80度まで加熱した際の測定結果である。図6に示すように、実施の形態に係る変位電流測定を用いることで、測定対象の材料4に含まれるイオン(不純物イオン)に起因するピークを第1象限又は第3象限(ここでは、第3象限)において観測することが可能である。
 ところで、仮に測定対象の材料4に含まれるイオン(不純物イオン)がアニオンである場合は、第3象限ではなく、第1象限において平行四辺形状のグラフから突出するピークが顕著に出現することになる。すなわち、測定用素子3に印加する電圧が負電圧から正電圧に切り替わる期間においては、一対の電極32,33のうちの電極33が負極となる。このため、当該期間においては、電極33側に配置された絶縁層31の表面にイオンが移動することで、ピークが観測される。したがって、この場合、測定対象の材料4に含まれるイオン(不純物イオン)がアニオンであることを測定することが可能である。
 [3.有機ELデバイスの製造方法]
 以下、実施の形態に係る有機ELデバイス100の製造方法について図7を用いて説明する。図7は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の製造方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、第1キャリア輸送層が正孔輸送層14である有機ELデバイス100の製造方法について説明する。また、ここでは、真空蒸着法を用いて有機ELデバイス100を製造しているが、他の方法を用いて有機ELデバイス100を製造してもよい。
 まず、あらかじめパターニングされた透明電極である第1電極11を有するガラス基板を準備し、第1電極11の厚さ方向の一面に積層するように、正孔注入層13を形成する(ステップS11)。次に、正孔注入層13の厚さ方向の一面であって、第1電極11側と反対側の面に積層するように、カチオン17をドープして正孔輸送層14を形成する(ステップS12)。
 なお、正孔輸送層14を構成する構成材料(ここでは、α-NPD)にあらかじめカチオン17をドープしている場合、カチオン17をドープする工程は省略してよい。また、変位電流測定により正孔輸送層14を構成する構成材料に既にカチオン17が不純物イオンとして含まれている場合も、カチオン17をドープする工程を省略してよい。
 次に、正孔輸送層14の厚さ方向の一面であって、第1電極11側と反対側の面に積層するように、電子輸送層を含む発光層15を形成する(ステップS13)。なお、ステップS15は、電子輸送層を形成する工程と、発光層15を形成する工程とに分かれていてもよい。次に、電子輸送層を含む発光層15の厚さ方向の一面であって、第1電極11側と反対側の面に積層するように、電子注入層16を形成する(ステップS14)。そして、電子注入層16の厚さ方向の一面であって、第1電極11側と反対側の面に積層するように、第2電極12を形成する(ステップS15)。以上の一連の工程により、有機ELデバイス100が製造される。
 [4.有機ELデバイスの特性]
 以下、実施の形態に係る有機ELデバイス100の特性について、比較例の有機ELデバイスとの比較を交えて説明する。比較例の有機ELデバイスは、昇華精製された正孔輸送層、つまりカチオンが含まれていない正孔輸送層を用いている点で、実施の形態に係る有機ELデバイス100と相違する。
 まず、実施の形態に係る有機ELデバイス100及び比較例の有機ELデバイスの初期特性について比較した結果について説明する。図8は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の初期特性における駆動電圧の測定結果を示す図である。図8に示す測定結果では、左側の縦軸が有機ELデバイスの電流密度(単位は「mA/cm」)を、右側の縦軸が有機ELデバイスの輝度(単位は「cd/m」)を、横軸が有機ELデバイスの駆動電圧(単位は「V」)を表している。また、図8において、曲線L11が比較例の有機ELデバイスの輝度の測定結果、曲線L12が実施の形態に係る有機ELデバイス100の輝度の測定結果、曲線L13が比較例の有機ELデバイスの電流密度の測定結果、及び曲線L14が実施の形態に係る有機ELデバイス100の電流密度の測定結果を表している。
 図8に示すように、同じ電流密度、又は同じ輝度となる駆動電圧は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が高い、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの駆動電圧が若干上昇する、という知見が得られた。
 図9は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の初期特性における発光スペクトルの測定結果を示す図である。図9に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの放射する光の標準化された強度(単位は「arb unit(Arbitrary Unit:任意単位)」)、横軸が有機ELデバイスの放射する光の波長(単位は「nm」)を表している。また、図9において、曲線L21が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L22が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図9に示すように、発光スペクトルに関しては、実施の形態に係る有機ELデバイス100と、比較例の有機ELデバイスとの間に有意な差が見られない、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含んでいても、有機ELデバイスの発光スペクトルには殆ど影響が無い、という知見が得られた。
 図10は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の初期特性における電流効率の測定結果を示す図である。図10に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの電流効率(単位は「cd/A」)を、横軸が有機ELデバイスの電流密度(単位は「mA/cm」)を表している。また、図10において、曲線L31が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L32が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図10に示すように、電流効率は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が高い、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの電流効率が上昇する、という知見が得られた。
 図11は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の初期特性における外部量子収率の測定結果を示す図である。図11に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの外部量子収率(単位は「%」)を、横軸が有機ELデバイスの電流密度(単位は「mA/cm」)を表している。また、図11において、曲線L41が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L42が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図11に示すように、外部量子収率は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が高い、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの外部量子収率が上昇する、という知見が得られた。
 上述のように、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの駆動電圧は若干上昇するものの、電流効率及び外部量子収率(つまり、発光効率)が上昇する、という知見が得られた。
 次に、実施の形態に係る有機ELデバイス100及び比較例の有機ELデバイスの寿命について比較した結果について説明する。実施の形態に係る有機ELデバイス100、及び比較例の有機ELデバイスの測定は、いずれも一定の電流密度50mA/cmで電流を流した時の電圧、発光輝度、電流効率、及び電力効率の時間変化を室温で測定することで行った。
 図12は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の劣化解析における駆動電圧の測定結果を示す図である。図12に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの駆動電圧(単位は「V」)を、横軸が有機ELデバイスの駆動時間(単位は「h」)を表している。また、図12において、曲線L51が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L52が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図12に示すように、駆動時間が2000時間を経過するまでの間においては、駆動電圧の上昇傾向は、比較例の有機ELデバイスと実施の形態に係る有機ELデバイス100とで殆ど同じである、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことによる、有機ELデバイスの駆動電圧への影響は殆ど見られない、という知見が得られた。
 図13は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の劣化解析における発光輝度の測定結果を示す図である。図13に示す測定結果では、縦軸が初期駆動時(駆動時間が0時間)の有機ELデバイスの輝度を「100」とした場合の相対的な輝度(単位は、「arb unit」)を、横軸が有機ELデバイスの駆動時間(単位は「h」)を表している。また、図13において、曲線L61が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L62が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図13に示すように、駆動時間が2000時間を経過するまでの間においては、輝度の低下傾向は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が低下しにくい、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの輝度が駆動時間の経過に伴って低下しにくくなる、という知見が得られた。
 図14は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の劣化解析における電流効率の測定結果を示す図である。図14に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの電流効率(単位は「cd/A」)を、横軸が有機ELデバイスの駆動時間(単位は「h」)を表している。また、図14において、曲線L71が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L72が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図14に示すように、駆動時間が2000時間を経過するまでの間においては、電流効率の低下傾向は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が低下しにくい、という結果が得られた。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの電流効率が駆動時間の経過に伴って低下しにくくなる、という知見が得られた。
 図15は、実施の形態に係る有機ELデバイス100の劣化解析における電力効率の測定結果を示す図である。図15に示す測定結果では、縦軸が有機ELデバイスの電力効率(単位は「lm/W」)を、横軸が有機ELデバイスの駆動時間(単位は「h」)を表している。また、図16は、図15において有機ELデバイスの駆動時間が0~100時間である場合の測定結果を拡大した図であり、図17は、図15において有機ELデバイスの駆動時間が1500~2000時間である場合の測定結果を拡大した図である。また、図15~図17の各々において、曲線L81が比較例の有機ELデバイスの測定結果、及び曲線L82が実施の形態に係る有機ELデバイス100の測定結果を表している。
 図15及び図16に示すように、駆動時間が25時間を経過するまでの間においては、電力効率は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が低くなっている。しかしながら、図15及び図17に示すように、駆動時間が25時間を経過すると、電力効率は、比較例の有機ELデバイスと比較して、実施の形態に係る有機ELデバイス100の方が高くなっている。したがって、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの電力効率が駆動時間の経過に伴って低下しにくくなる、という知見が得られた。
 上述のように、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)がイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)を含むことにより、有機ELデバイスの輝度、電流効率、及び電力効率が駆動時間の経過に伴って低下しにくくなる、つまり有機ELデバイスの長寿命化を図ることができる、という知見が得られた。
 [5.利点]
 以下、実施の形態に係る有機ELデバイス100の利点について、本開示を創作するに至った知見を交えて説明する。従来、液晶ディスプレイにイオン性不純物が含まれている場合に、電圧保持率の低下、焼き付き、応答速度の低下、又は輝度むら等が生じることで、液晶ディスプレイの機能を低下させることが知られている。しかしながら、有機ELデバイスに含まれるイオン性不純物については、有機ELデバイスの機能を低下させるのか否か不明であった。
 そこで、本願の発明者は、昇華精製前の正孔輸送層を用いた有機ELデバイスと、昇華精製後の正孔輸送層を用いた有機ELデバイスとを作製した。そして、本願の発明者は、これらの有機ELデバイスの特性を比較することにより、イオン性不純物(ここでは、カチオン)の有無が有機ELデバイスの特性にどのような影響を及ぼすかを評価した。
 ここで、上述のように、イオン性不純物が液晶ディスプレイの機能を低下させるという知見から鑑みると、有機ELデバイスにおいても、イオン性不純物が有機ELデバイスの機能を低下させる、ということが想定される。しかしながら、実際には、上述の[4.有機ELデバイスの特性]でも述べたように、イオン性不純物(ここでは、カチオン17)を第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)が含むことで、有機ELデバイス100の発光効率を含む特性が向上し、かつ、有機ELデバイス100の長寿命化を図ることができた。これは、正孔輸送層14にα-NPD以外の材料由来のカチオン17が存在することで駆動電圧が上昇し、過剰な正孔が抑制されたことに依ると考えられる。
 上述のように、実施の形態に係る有機ELデバイス100は、キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)に、キャリア輸送層を構成する構成材料(ここでは、α-NPD)とは異なる材料由来のイオン(ここでは、カチオン17)が含まれているため、発光効率を含む特性が向上しやすい、という利点がある。また、実施の形態に係る有機ELデバイス100は、キャリア輸送層に上記イオンが含まれているため、更に長寿命化を図ることができる、という利点がある。
 [6.有機ELデバイスの特性評価方法]
 以下、実施の形態に係る有機ELデバイス100の特性評価方法について説明する。上述のように、有機ELデバイス100の特性は、第1キャリア輸送層(ここでは、正孔輸送層14)にイオン(不純物イオンであって、ここでは、カチオン17)が含まれているか否かにより変化する。つまり、変位電流測定により第1キャリア輸送層にイオン(不純物イオン)が含まれているか否かを測定することにより、有機ELデバイス100の特性(特には、発光効率を含む特性、及び寿命)を評価することが可能である。
 したがって、実施の形態に係る有機ELデバイス100の特性評価方法は、変位電流測定を行う工程を含んでいる、と言える。なお、変位電流測定を行う工程は、図4に示す工程と同様であるため、ここでは説明を省略する。
 (変形例)
 以上、本開示に係る有機ELデバイス100、有機ELデバイス100の製造方法、及び有機ELデバイス100の特性評価方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施した形態、又は実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
 実施の形態において、第1キャリア輸送層が電子輸送層であって、第1キャリア輸送層に含まれるイオン(不純物イオン)がアニオンであってもよい。例えば、電子輸送層がF8BT(ポリ(9,9-ジオクチフルオレン-alt-ベンゾチアゾール)を構成材料として形成されている場合、有機ELデバイスは、電子が過剰となる構成を有する。この場合、電子輸送層が、不純物として、F8BT由来のイオンではなく、F8BTとは異なる材料由来のイオンであるアニオンを含んでいれば、有機ELデバイスは、発光特性を含む特性が向上しやすい、という利点が期待できる。
 (まとめ)
 以上述べたように、本開示の第1の態様に係る有機ELデバイス100は、一対の電極11,12と、一対の電極11,12の間に配置される発光層15と、一対の電極11,12のうちの一方の電極(第1電極11)と発光層15との間に配置されるキャリア輸送層(第1キャリア輸送層)と、を備える。キャリア輸送層は、キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを含む。
 これによれば、有機ELデバイス100の発光効率を含む特性が向上しやすい、という利点がある。
 また、本開示の第2の態様に係る有機ELデバイス100では、第1の態様において、キャリア輸送層(第1キャリア輸送層)は、正孔輸送層14である。イオンは、カチオン17である。
 これによれば、正孔が過剰となる構成を有する有機ELデバイス100の発光効率を含む特性が向上しやすい、という利点がある。
 また、本開示の第3の態様に係る有機ELデバイス100では、第1又は第2の態様において、イオンは、変位電流測定により測定されるイオンである。変位電流測定では、構成材料(測定対象の材料4)と、構成材料における厚さ方向の両側のうちの一方の側のみに配置される絶縁層31と、構成材料及び絶縁層31を厚さ方向において挟む一対の電極32,33と、を備える測定用素子3において、一対の電極32,33間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加し(ステップS3)、電圧の印加により測定用素子3を流れる電流に基づいて、構成材料に含まれるイオンを測定する(ステップS4,S5)。
 これによれば、変位電流測定により測定可能なイオンをキャリア輸送層が含むことで、有機ELデバイス100の発光効率を含む特性が向上しやすい、という利点がある。
 また、本開示の第4の態様に係る有機ELデバイス100の製造方法は、一対の電極11,12と、一対の電極11,12の間に配置される発光層15と、一対の電極11,12のうちの一方の電極(第1電極11)と発光層15との間に配置されるキャリア輸送層(第1キャリア輸送層)と、を備える有機ELデバイスの製造方法である。有機ELデバイス100の製造方法は、キャリア輸送層に対して、キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを添加する工程を含む。
 これによれば、発光効率を含む特性が向上しやすい有機ELデバイス100を製造することができる、という利点がある。
 また、本開示の第5の態様に係る有機ELデバイス100の製造方法では、第4の態様において、キャリア輸送層(第1キャリア輸送層)は、正孔輸送層14である。イオンは、カチオン17である。
 これによれば、発光効率を含む特性が向上しやすい、正孔が過剰となる構成を有する有機ELデバイス100を製造することができる、という利点がある。
 また、本開示の第6の態様に係る有機ELデバイス100の特性評価方法は、一対の電極11,12と、一対の電極11,12の間に配置される発光層15と、一対の電極11,12のうちの一方の電極(第1電極11)と発光層15との間に配置されるキャリア輸送層(第1キャリア輸送層)と、を備える有機ELデバイス100の特性評価方法であって、変位電流測定を行う工程を含む。変位電流測定では、第1キャリア輸送層を構成する構成材料(測定対象の材料4)と、構成材料における厚さ方向の両側のうちの一方の側のみに配置される絶縁層31と、構成材料及び絶縁層31を厚さ方向において挟む一対の電極32,33と、を備える測定用素子3において、一対の電極間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加し(ステップS3)、電圧の印加により測定用素子3を流れる電流に基づいて、構成材料に含まれるイオンを測定する(ステップS4,S5)。イオンは、構成材料とは異なる材料由来であって、キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンである。
 これによれば、変位電流測定によりキャリア輸送層にイオンが含まれるか否かを測定することで、有機ELデバイス100の発光効率を含む特性を評価しやすい、という利点がある。
 また、本開示の第7の態様に係る有機ELデバイス100の特性評価方法では、第6の態様において、キャリア輸送層(第1キャリア輸送層)は、正孔輸送層14である。イオンは、カチオン17である。
 これによれば、変位電流測定によりキャリア輸送層にイオンが含まれるか否かを測定することで、正孔が過剰となる構成を有する有機ELデバイス100の発光効率を含む特性を評価しやすい、という利点がある。
 本開示は、例えば有機発光ダイオード等の有機ELデバイスに適用することが可能である。
 100 有機ELデバイス
 11 第1電極
 12 第2電極
 13 正孔注入層
 14 正孔輸送層
 15 発光層
 16 電子注入層
 17 カチオン
 200測定システム
 21 電圧印加部
 22 測定部
 221 I-Vコンバータ
 222 電圧計
 3 測定用素子
 31 絶縁層
 32,33 電極
 34 ガラス基板
 4 測定対象の材料

Claims (7)

  1.  一対の電極と、
     前記一対の電極の間に配置される発光層と、
     前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備え、
     前記キャリア輸送層は、前記キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを含む、
     有機ELデバイス。
  2.  前記キャリア輸送層は、正孔輸送層であって、
     前記イオンは、カチオンである、
     請求項1に記載の有機ELデバイス。
  3.  前記イオンは、変位電流測定により測定されるイオンであって、
     前記変位電流測定では、
     前記構成材料と、前記構成材料における厚さ方向の両側のうちの一方の側のみに配置される絶縁層と、前記構成材料及び前記絶縁層を前記厚さ方向において挟む一対の電極と、を備える測定用素子において、前記一対の電極間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加し、前記電圧の印加により前記測定用素子を流れる電流に基づいて、前記構成材料に含まれる前記イオンを測定する、
     請求項1又は2に記載の有機ELデバイス。
  4.  一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される発光層と、前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備える有機ELデバイスの製造方法であって、
     前記キャリア輸送層に対して、前記キャリア輸送層を構成する構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンを添加する工程を含む、
     有機ELデバイスの製造方法。
  5.  前記キャリア輸送層は、正孔輸送層であって、
     前記イオンは、カチオンである、
     請求項4に記載の有機ELデバイスの製造方法。
  6.  一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される発光層と、前記一対の電極のうちの一方の電極と前記発光層との間に配置されるキャリア輸送層と、を備える有機ELデバイスの特性評価方法であって、変位電流測定を行う工程を含み、
     前記変位電流測定では、
     前記キャリア輸送層を構成する構成材料と、前記構成材料における厚さ方向の両側のうちの一方の側のみに配置される絶縁層と、前記構成材料及び前記絶縁層を前記厚さ方向において挟む一対の電極と、を備える測定用素子において、前記一対の電極間に周期的に変化し、かつ、周期的に極性が反転する電圧を印加し、前記電圧の印加により前記測定用素子を流れる電流に基づいて、前記構成材料に含まれるイオンを測定し、
     前記イオンは、前記構成材料とは異なる材料由来であって、前記キャリア輸送層が対象とするキャリアと同じ極性のイオンである、
     有機ELデバイスの特性評価方法。
  7.  前記キャリア輸送層は、正孔輸送層であって、
     前記イオンは、カチオンである、
     請求項6に記載の有機ELデバイスの特性評価方法。
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JP2005276749A (ja) * 2004-03-26 2005-10-06 Sanyo Electric Co Ltd 有機電界発光素子
WO2019167186A1 (ja) * 2018-02-28 2019-09-06 株式会社東陽テクニカ 測定容器、測定システム及び測定方法

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