WO2024080217A1 - 構造基材、構造部材及び構造物 - Google Patents

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Abstract

簡易な構成で、弾性変形可能な材料の特性を生かしつつ、強度を向上させることが可能な構造基材、構造部材及び構造物を提供すること。構造基材(1)は、弾性変形可能な材料からなり、外部からの力が伝達される木材(2)と、木材(2)の外面に沿って木材(2)の一端から他端にわたって配置され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材(3)と、引張材(3)が固定され、木材(2)において引張材(3)に沿って互いに間隔を空けて設けられる複数の支持部(4)とを備え、支持部(4)は、引張材(3)に生じる応力を木材(2)に伝達するように木材(2)に対して固定されている。

Description

構造基材、構造部材及び構造物
 本発明は、構造基材、構造部材及び構造物に関するものである。
 建築物等の構造物、特に木造建築物において用いられる木材が柱や梁、壁などの構造材として用いられる場合、適切な強度を得るため、断面積が大きい木材を適用したり、構造材間隔を狭くしたりする必要がある。または、木材と異なる性質を有する鋼材やFRP材などの部材と木材が組み合わされて構造材が構成されることによって、適切な強度を確保することも行われている。
 下記の特許文献1から3では、木材と異なる性質を有する部材と木材が組み合わされて構造材が形成される例について開示されている。
特開平10-176385号公報 特開2006-328684号公報 特開2021-063337号公報
 従来の木造構造物は、軽量で施工性に優れるが、地震時や強風時の水平抵抗力が低く、構造用合板や筋交などによって架構を補強する必要がある。また、従来の鉄筋コンクリート造構造物や鉄骨鉄筋コンクリート造構造物は、耐震性、耐火性、耐久性に優れるが、重量が大きいため、地震時の水平力が大きくなり、その水平力に対する強化のため、大量の鉄筋が必要となる。また、鉄筋を増加させることによって、構造物の重量がさらに増すというデメリットがある。
 木造構造物の柱及び梁からなる架構を補強するため、構造用合板が柱に固定される場合がある。この構造では、荷重が負荷されると、構造用合板と一体化された柱の変形が拘束されているため、合板に回転力が生じる。その結果、最終的には合板と釘の接合部において、釘によって合板が引き裂かれたり、釘頭が合板を貫通したりして、破壊が生じて終局となる。したがって、構造用合板の性能を十分に活かしきれないという問題がある。
 上記の特許文献1には、従来技術の問題点として、積層木材の間に補強用繊維シートを積層時に挟み込んで接着した構造用集成材、構造用単板積層材等においては、その繊維方向の伸びに対しては強度を発揮するが、曲げに対する許容応力度は充分ではないことが記載されている。また、特許文献1において開示された発明は、繊維部材に緊張力を導入しつつ梁部材の両端部位置に繊維部材を定着する木質梁部材の補強構造である。この補強構造は、繊維部材に緊張力を導入する必要があるため、施工に手間がかかる上、梁部材の両端部に繊維部材を定着するための充填材や止め具が必要であり、補強構造の構成が複雑である。
 特許文献2には、構造物における曲げ荷重が作用したときに引張力が作用する部位と圧縮力が作用する部位との双方に、繊維強化プラスチック板がそれぞれ固着される補強木造構造物が開示されている。この技術では、強化繊維を板状部材に製造する必要があるだけでなく、繊維強化プラスチック板が木材に対して2箇所以上に、かつ、接着剤によって接着されなければならない。そのため、生産性効率が低いだけなく、木材に荷重が作用したときに、繊維強化プラスチック板が剥離又は破断して終局するため、木材が有する柔軟性が活用されていない。
 特許文献3には、木質部材の上面及び下面の少なくとも一方において、木質部材の材軸方向に沿って延びる溝が形成されており、補強部材としての鋼材が溝に挿入される木質部材の補強構造が開示されている。しかし、この技術は、木質部材に対して溝を形成し、かつ、接着剤によって鋼材と木質部材の接着を行う必要がある。さらに、鋼材が設置されることから、全体の重量が増加する。したがって、耐震性、生産性、施工性が低く、木材に荷重が作用したとき、鋼板が剥離して終局するため、木材が有する柔軟性が活用されていない。
 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、弾性変形可能な材料の特性を生かしつつ、強度を向上させることが可能な構造基材、構造部材及び構造物を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するために、本発明の構造基材、構造部材及び構造物は以下の手段を採用する。
 すなわち、本発明に係る構造基材は、弾性変形可能な材料からなり、外部からの力が伝達される被補強体と、前記被補強体の外面に沿って前記被補強体の一端から他端にわたって配置され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材と、前記引張材が固定され、前記被補強体において前記引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる複数の支持部とを備え、前記支持部は、前記引張材に生じる応力を前記被補強体に伝達するように前記被補強体に対して固定されている。
 この構成によれば、構造基材は、被補強体と、引張材と、複数の支持部を備え、被補強体は、弾性変形可能な材料からなり、被補強体には外部からの力が伝達される。引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材は、被補強体の外面に沿って被補強体の一端から他端にわたって配置され、複数の支持部は、被補強体において引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる。支持部には引張材が外周面に巻回されるなどして固定される。支持部は、引張材に生じる応力を被補強体に伝達するように被補強体に対して固定されている。
 これにより、被補強体に外部からの力が伝達されて、被補強体が弾性変形したとき、支持部が被補強体に対して固定された状態で、被補強体の外面に沿って配置された引張材が伸長したり、引張材の伸長方向が自在に変化したりする。引張材は、被補強体の変形に応じて、隣り合う支持部間で引張力を負担する。被補強体の弾性変形によって支持部間の距離が大きくなって、引張材にひずみが生じ、その結果、引張材が引張力を発揮する。そして、支持部が引張材に生じた力を被補強体に伝達することによって、被補強体の引張強度が強化される。
 上記発明において、前記支持部は、負荷時において、前記引張材の破断よりも先に降伏が生じる材料でもよい。
 この構成によれば、支持部が、負荷時において、引張材の破断よりも先に降伏が生じることから、支持部において塑性領域を持つ安定した荷重変形関係を期待でき、構造基材の脆性的な終局を回避できる。
 上記発明において、複数の前記被補強体を備え、前記被補強体同士が互いに接続されてもよい。
 この構成によれば、構造基材が複数の被補強体を備え、被補強体同士が互いに接続されていることから、構造基材の組み合わせの自由度があり、形状や強度を設計条件に応じて調整できる。
 本発明に係る構造部材は、上記の構造基材と、複数の前記被補強体の間において充填され、圧縮力を負担する圧縮材とを備える。
 この構成によれば、構造基材における複数の被補強体の間に、圧縮力を負担する圧縮材が充填されることから、圧縮材を有しない構造基材に比べて、せん断強度、圧縮強度及び弾性剛性を強化できる。
 本発明に係る構造部材は、上記の構造基材と、前記被補強体を被覆し、圧縮力を負担する圧縮材とを備える。
 この構成によれば、圧縮力を負担する圧縮材が被補強体に被覆されることから、圧縮材を有しない構造基材に比べて、せん断強度、圧縮強度及び弾性剛性を強化できる。また、被補強体の外周が圧縮材によって被覆されることから、耐久性、耐火性を向上させることができる。
 本発明に係る構造物は、上記の構造基材を備える。または、本発明に係る構造物は、上記の構造部材を備える。
 本発明によれば、簡易な構成で、弾性変形可能な材料の特性を生かしつつ、強度を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る構造部材の第1実施例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第1実施例を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第2実施例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第2実施例を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第3実施例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第3実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第4実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第5実施例を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材の第6実施例を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る引張材及び支持部を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る構造部材を示す模式図である。 図12に示した模式図の中央部を示す拡大図であり、加力前の状態を示す。 図12に示した模式図の中央部を示す拡大図であり、加力後の状態を示す。 本発明の一実施形態に係る引張材及び支持部を示す模式図である。 荷重と鉛直変位の関係を示すグラフである。 荷重と鉛直変位の関係を示すグラフである。 荷重と鉛直変位の関係を示すグラフである。
 本発明の一実施形態に係る構造部材10は、例えば、建築物や土木構造物、電柱などの構造物に適用される。構造部材10は、例えば、建築物を構成する梁、柱、壁、床、基礎、杭などである。図1から図8では、構造部材10が梁又は柱からなる場合について図示しており、以下では構造部材10が梁又は柱である場合について説明する。
 構造部材10は、以下で説明するとおり、構造基材1を備える。構造基材1は、例えば図1から図6に示すように、木材2と、引張材3と、複数の支持部4を備える。構造基材1は、構造物において、構造部材10に入力される力が伝達されるように、構造部材10そのものとして設置される。例えば、建築物を構成する梁、柱、壁、床、屋根などにおいて、木材2、引張材3及び支持部4からなる構造基材1を適用することができる。
 また、構造基材1は、構造部材10の一部として設置されてもよい。例えば、図7及び図8に示すように、構造基材1の木材2間に圧縮材11を充填させたり、図8に示すように、構造基材1を圧縮材11によって被覆したりしてもよい。さらに、鉄筋コンクリート造のように、構造物全体を圧縮材11で構造基材1を一体化させることも可能である。これにより、構造物に一体性が付与されて、構造物がモノコック構造を有し、強靭な構造体となる。圧縮材11は、構造部材10に作用する圧縮力を負担する構造材であり、例えば、コンクリート、セメント、グラウトなどである。圧縮材11は、引張剛性が構造設計において無視できるほど小さい。
 本実施形態に係る構造基材1では、複数の支持部4の間隔、並びに、引張材3のひずみ、断面積及びヤング率から、木材2単体が有する耐力に対する構造基材1の耐力増分を計算できる。なお、本明細書において、計算例、実験結果を後述する。
 構造基材1の木材2は、弾性変形可能な材料であって、木材2には外部からの力が伝達される。木材2は、一方向に長い棒材でもよいし、厚さ方向に比べて幅方向と長さ方向に長い長さを有する面材でもよい。また、木材2は、密実な1種類の木質材から構成されるものでもよいし、合板、集成材など複数の木質材から構成されるものでもよい。施工性及びコスト面を考慮すると、木材2のサイズは、一般的に使用されている木材と同等のサイズ(柱の場合、長さ3m程度、断面100mm角程度、梁の場合、幅100mm、せい200mm~400mm程度)が好ましい。ただし、本発明に係る構造基材のサイズは、これらに限定されない。
 木材2は、本発明に係る被補強体の一例である。被補強体は、構造基材に用いられるとき、木材とほぼ同等の柔軟性や弾性変形を有するものであれば、他の材質であってもよく、例えば竹材などでもよい。
 引張材3は、構造部材10において引張力を負担可能であり、構造部材10に作用する力のうち引張力を主に負担する。引張材3は、連続繊維による線状部材、例えば、糸状又は紐状である。引張材3は、例えば、合成樹脂繊維(例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維)、又は、炭素繊維などの連続繊維によって構成される。引張材3は、木材2の外面において、木材2の一端から他端にわたって配置される。引張材3は、一の木材2に対して複数本の連続繊維が設けられたものでもよい。
 引張材3は、例えば、木材2の長さ方向に対して平行に設置される。なお、引張材3の設置方向は、この例に限定されず、例えば、長さ方向に対して斜め方向に設置されてもよい。また、木材2に引張材3が斜め方向に設置される場合において、図9に示すように、引張材3は互いに交差するように配置されてもよい。さらに、引張材3は、木材2の周囲において螺旋状に配置されてもよい。
 引張材3は、曲げ剛性、せん断剛性、圧縮剛性とも構造設計において無視できるほど小さく、木材2に配置された状態で圧縮力を受けても座屈しない材料である。これにより、木材2が弾性変形したとき、引張材3が自由に変形する。すなわち、引張材3が伸長したり、引張材3の伸長方向が自在に変化したりすることができる。
 引張材3の引張力は、隣り合う二つの支持部4間で伝達される。引張材3の引張力は、木材2の弾性変形に対する抵抗力として発揮され、木材2の引張強度が強化される。なお、引張材3が圧縮材11に被覆されずに構造基材1の外面で露出しているとき、又は、構造基材1が圧縮材11によって被覆されているときのいずれにおいても、木材2で生じる弾性変形によって、引張材3の引張力が支持部4間で作用する。すなわち、構造基材1が圧縮材11によって被覆されているときは、圧縮材11が有する引張強度以上の荷重がかかると、引張材3において引張力が支持部4間で伝達される。
 図1から図9に示すように、引張材3には、複数の支持部4が引張材3に沿って互いに間隔を空けて設けられる。支持部4は、打ち込みなどによって木材2に固定される。支持部4は、引張材3に生じる応力、すなわち、引張力を木材2に伝達する。支持部4は、例えば、棒状部材などであり、支持部4は、固定される引張材3が外れないように、棒状部材の軸方向に対して垂直な突起を有する釘、かすがい、画鋲などが好ましい。
 支持部4は、引張材3よりもヤング率が大きい、比較的剛な材料である。支持部4は、例えば、金属などであり、金属の場合、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどである。支持部4は、引張材3から引張力を受けて変形を生じる材料でもよい。
 なお、支持部4は、引張材3の破断よりも先に降伏する材料、例えば鋼材とすることが可能である。引張材3に所定以上の引張力が作用したとき、引張材3の破断よりも先に支持部4が降伏することによって、引張材3の破断で終局とならずに支持部4の降伏で終局となるため、構造基材1が安定化する。
 各支持部4には、図10に示すように、引張材3が外周面に巻回される。このとき、引張材3で支持部4を結ぶように周回させてもよい。また、支持部4は、貫通孔が形成されてもよい。この場合、支持部4の貫通孔内に引張材3が挿通されつつ引張材3が外周面に巻回される。これにより、引張材3と支持部4が互いにずれにくくなり、引張材3において支持部4が確実に設置される。引張材3は、支持部4の周方向に巻回されるのではなく、支持部4に括りつけられて固定されればよい。例えば、引張材3に支持部4を設置するためのリング部を予め形成しておき、リング部に支持部4が挿入されて、支持部4が引張材3に固定されるようにしてもよい。
 引張材3及び支持部4は、引張材3に生じる応力を木材2に伝達するように木材2に対して固定されている。引張材3及び支持部4が木材2に固定されることによって、木材2に外部からの力が伝達されて、木材2が弾性変形したとき、引張材3及び支持部4が木材2に対して固定した状態で、木材2の外面に沿って配置された引張材3が伸長したり、引張材3の伸長方向が自在に変化したりする。引張材3は、木材2の変形に応じて、隣り合う支持部4間で引張力を負担する。
 複数の支持部4の間の長さ(間隔)、並びに、引張材3のひずみ、断面積及びヤング率を調整することによって、木材2の強度が強化される。これにより、構造部材10での木材2の破壊が防止され、又は、遅延される。
 以上、本実施形態によれば、木材2の弾性変形によって支持部4間の距離が大きくなって、引張材3にひずみが生じ、その結果、引張材3が引張力を発揮する。そして、支持部4が引張材3に生じた力を木材2に伝達することによって、木材2の引張強度が強化される。したがって、構造部材10は、簡易な構成で、弾性変形可能な材料である木材2の特性を生かしつつ、構造部材10の強度を向上させることができる。
 木材2に対する引張材3の固定は、接着剤や接合金物ではなく、木材2に対して打ち込まれる釘、かすがいなどの支持部4であり、かつ、引張材3は、支持部4に対して巻回されたりして括りつけられて固定される。
 本実施形態と異なり、木材2に対して引張材3が接着剤によって固定される場合、木材2が荷重を受けたとき接着剤が木材2から剥離することから、脆性的な終局となる。支持部4を釘などの鋼材とすることによって、鋼材が有する降伏性能を活用できる。すなわち、鋼材などの支持部4が荷重を受けたとき、引張材3の破断よりも先に支持部4が降伏することで、支持部4において塑性領域を持つ安定した荷重変形関係を期待でき、構造基材1又は構造部材10の脆性的な終局を回避できる。
 また、接着剤が用いられる場合は、接着不良のリスクがあるが、支持部4の木材2への固定は打ち込み等であるため、固定不良が生じにくく、支持部4は木材2に対して確実に固定されやすい。したがって、支持部4による固定は、接着剤と比べて構造基材1の品質向上に寄与する。さらに、接着剤による接着の場合、接着面となる木材2の外面の平滑性が要求される。これに対して、支持部4の木材2への固定は打ち込み等であるため、木材2の外面形状が湾曲した曲面であっても、木材2に支持部4が確実に固定されて、木材2の引張強度が強化される。本実施形態では、木材2の外面における平滑化加工が不要となることから、生産性が向上する。
 引張材3は、木材2に対して支持部4によって固定されており、木材2に対して直接的に固定される必要がないことから、鉄筋コンクリート構造における鉄筋の例などと異なり、木材2に内包される必要がない。すなわち、建築物の構造体における木材2の外面に対して、後施工で引張材3及び支持部4を設置することによっても本実施形態の構成を実現できる。したがって、本実施形態によれば、既存の木造建築物の補強にも適用できる。また、施工後における引張材3や支持部4の点検や交換が容易である。
 木材2が建築物を構成する梁、柱、壁、床、屋根などにおいて架構を構成している場合、引張材3及び支持部4の設置は、架構に対して強度を強化させることができる。すなわち、架構の木材2からなる梁や柱などに対して引張材3及び支持部4が設置されたとき、架構の弾性変形に応じて支持部4間の距離が大きくなって、引張材3にひずみが生じ、引張材3は引張応力を発揮する。釘などである支持部4は、応力を担保して、架構に引張力を伝達する。これにより、構造基材1は、構造合板による架構の強化と同等の効果を得ることができる。
 以下、本実施形態の実施例について説明する。
 構造基材1は、木材2と、引張材3と、支持部4を有する。木材2は、例えば、断面が四角形の角材である。引張材3の固定位置は、図1及び図2に示すように、木材2の1面のみでもよいし、木材2の対向する2面や木材2の全面でもよい。
 構造基材1は、構造部材10において複数設けられてもよい。この場合、複数の構造基材1は、直接的に、又は、他の部材を介して間接的に互いに接続されてもよい。例えば、複数の構造基材1からなる場合、図3及び図4に示すように、支持部4を二つの木材2に連通させて、支持部4を介して二つの構造基材1が接続される。または、図5及び図6に示すように、平板状の板材5が複数組み合わされて、板材5を介して複数の構造基材1が接続されてもよい。このように、構造基材1の組み合わせの自由度があることから、構造物の所定位置に設けられる構造基材1について、形状や強度を構造物などの設計条件に応じて調整することができる。
 図3及び図4に示すように、構造部材10が複数の構造基材1からなる場合、対向する二つの木材2の外側に引張材3が固定されてもよいし、図5及び図6に示すように、対向する二つの木材2の間である構造基材1の内側に引張材3が固定されてもよい。構造部材10において、複数本の引張材3のうち1本の引張材3のみが構造基材1の内側に固定されてもよいし、すべての引張材3が構造基材1の内側に固定されてもよい。
 また、図7に示すように、構造部材10において、圧縮材11が複数の構造基材1の間において充填されてもよい。圧縮材11は、構造部材10に作用する圧縮力を負担する構造材である。これにより、圧縮材11を有しない構造基材1に比べて、せん断強度、圧縮強度及び弾性剛性を強化できる。図7は、図5及び図6に示した構造基材1に圧縮材11を充填した例である。
 さらに、図8に示すように、構造部材10において、圧縮材11は、構造基材1の木材2に密着して、木材2が圧縮材11によって被覆されてもよい。図8は、図3及び図4に示した構造基材1に圧縮材11を被覆しつつ、木材2間に圧縮材11を充填した例である。この場合、構造基材1は、構造部材10の引張力を負担する部材であり、圧縮材11が有する引張強度以上の荷重がかかると、引張材3において引張力が支持部4間で伝達されて、引張材3が木材2と共に引張力を負担する。なお、支持部4が圧縮材11に定着するように、木材2の表面から例えば1cmから2cm程度突起させ、引張材3を支持部4の頭のほうに括りつけ圧縮材11で被覆してもよい。これにより、引張材3と支持部4が圧縮材11に拘束され、構造基材1からの引張力が圧縮材11に伝達されやすくなる。
 図8に示す構成により、圧縮材11を有しない構造基材1に比べて、せん断強度、圧縮強度及び弾性剛性を強化できる。また、木材2の外周が圧縮材11によって被覆されることから、耐久性、耐火性を向上させることができる。さらに、本実施例によれば、構造基材1を鉄筋コンクリート造の鉄筋の代替とすることもでき、鉄筋コンクリート造よりも軽量で、弾性、靭性に富む構造部材10とすることができる。
 以下、図11から図15を参照して、構造部材10である架構の一部を構成する構造基材1において、木材2(以下の例では柱)に対して引張材3及び支持部4が設置されたときの耐力について、従来例との比較で説明する。
 ここで、想定する架構は、図11に示すように、2本の柱を有し、例えば、高さH=2,730mm、柱間=910mm、柱幅b=柱せいD=100mmである。この架構は、構造物において一般的に適用されているものである。
 上記の架構に対して水平抵抗力を強化する従来の方法では、構造合板が使用されている。構造合板が使用された場合、一般に架構がθ=4/100radの変形をしたときに、構造合板は、約14kNの水平力を負担する。
 本実施形態に係る構造基材1を2本の柱に適用した架構が、構造合板を適用した架構に匹敵することを以下のとおり確認した。
 なお、架構の柱である木材2の2本分の水平抵抗力は約7.5kNである。そこで、それぞれの木材2に対して固定される引張材3の合計分が7kN以上の水平力を負担できればよい。
 引張材3を構成する高強度繊維は、1本あたり直径3mm、ヤング率70,500N/mmのアラミド繊維とし、1本の木材2に固定される引張材3の高強度繊維の本数nは6本とする。
 支持部4はN50釘とし、支持部4の間隔を200mm、へりあきをd=90mm、d=10mmとし(図13参照)、引張材3は、木材2の長さ方向に対して平行に配置される。図13は、図12に示す構造基材1の中央部における加力前の拡大図である。
 架構が4/100radの変形をしたとき、曲げモーメントが最大となる柱脚、柱頭部の浮き上がり(換算ひび割れ幅ΔC(図14参照))は、4.03mm(ΔC=b×sinθ)となる。図14は、図12に示す構造基材1の中央部における加力後の拡大図である。
 引張材3のひずみは、1本の木材2につき、
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
となる。
 ここで、
  L:弾性変形前の支持部4の軸方向間距離(mm)(図15参照)
  L:弾性変形後の支持部4の軸方向間距離(mm)(図15参照)
  D:木材2のせい(mm)
  d,d:へりあき(mm)
である。
 引張材3の張力Tを曲げ応力に換算し、さらに水平力に換算すると、引張材3が負担する水平力Pは柱(木材2)2本分の合計で、下記の計算結果となり、7.94kN>7kNとなる。
 P=2×M/(H/2)=7.94kN
なお、
  M=Tcosα×(D-d)=5,419.98kN・mm
  T=n×E×ε×a=60.22kN
  ε=(L-LT0)/LT0=2.01%
 ここで、
  P:引張材3が負担する荷重(kN)
  M:引張材3の抵抗モーメント(kN・mm)
  H:木材2の長さ(mm)
  T:引張材3の張力(kN)
  α:弾性変形後の引張材3と木材2の軸方向のなす角(rad)
  n:高強度繊維本数
  E:高強度繊維のヤング率(N/mm
  ε:高強度繊維のひずみ(無次元)
  a:高強度繊維の繊維1本あたりの断面積(mm
 一般的な架構を形成する際、構造合板は、釘が150mm間隔で打ち込まれることによって、架構を構成する梁、柱に固定される。そこで、架構を構成する梁、柱に、高強度繊維を有する引張材3が、一般的な架構と同様に、釘などの支持部4で連続的に固定されるとした。本実施形態に係る構造基材1についても、一般的な構造合板で補強された架構と同様、引張材3の張力が支持部4を介して問題なく架構に伝達可能と考えることができる。
 次に、本実施形態に係る構造基材1に対して実施した載荷実験の結果について説明する。本実験では、構造基材1の模型を実際に製作して中央載荷実験を行った。載荷位置は、図12に示す矢印Pの位置である。
 構造基材1の模型は、長さ450mm、幅b15mm、せいD15mmの木材2を備える。載荷は、木材2の長さ方向中央に錘を吊るす方法で行い、15kgから2.5kg刻みで最大40kgまでとした。
 引張材3を構成する高強度繊維は、アラミド繊維(ヤング率:70,500N/mm、径1mm)である。
 支持部4は、画鋲(頭寸法:10.5mm、針足寸法:11mm)であり、支持部4の間隔は40mmである。
 引張材3のない木材2のみの無補強試験体と、木材2に引張材3を固定した補強試験体(2通り)の実験結果を図16、図17に示す。
 補強試験体の理論値は、図14のとおり、中央部にひび割れが生じると仮定する単純モデルで、鉛直変位ごとに計算した耐荷重に、無補強試験体の同じ鉛直変位における耐荷重の実験値を累加する方法で計算した。試験体は弾性挙動するとしている。
 図16は、引張材3を木材2の側面にジグザグ状に配置した試験体の結果である。木材2の1面に引張材3がジグザグ状に斜め方向に設置され、かつ、木材2の対向する2面における引張材3は支持部4間の中央位置で互いに交差している。支持部4と引張材3の長さ方向のなす角は0.26rad、引張材3は高強度繊維2本とし、木材2の二つの側面に高強度繊維を1本ずつ配置した。
 曲げヤング係数は、11.0~13.5kN/mmであり、無補強試験体と比較して1.3倍~1.5倍ほど強化されている。
 鉛直変位10mm以降で理論値を下回るが、これは圧縮側で降伏したためである。
 図17は、引張材3を木材2の底面に平行に配置した試験体の結果である。引張材3は高強度繊維2本とし、木材2の底面に高強度繊維を2本配置した。
 曲げヤング係数は、13.6~18.9kN/mmであり、無補強試験体と比較して1.6倍~1.8倍ほど強化されている。
 図17の補強試験体の場合、図16の場合と比較して引張力がさらに強化されたため、鉛直変位10mmを超えても圧縮側での降伏はほとんどみられず、概ね弾性挙動となった。
 図16の補強試験体の場合、木材2の中央部で引張材3が負担する引張力は3.11kNであり、SD345の鉄筋の1本あたりに換算すると直径3.3mmとなる。
 図16、図17のいずれの補強試験体の場合も、載荷後において、支持部4である画鋲の抜けや折れは確認されなかった。これは、引張材3の引張力が木材2に固定された複数の支持部4全体に分散されたためと考えることができる。
 以上から、実験を行った補強試験体のように単一の木材をアラミド繊維と画鋲で強化することで、集成材以上の曲げヤング係数、許容曲げ応力度を有する構造基材1となることが示された。
 次に、本実施形態に係る構造部材10に対して実施した載荷実験の結果について説明する。本実験では、構造部材10の模型を実際に製作して中央載荷実験を行った。以下の例では、構造部材10は、圧縮材11によって被覆される構造基材1を有する。載荷位置は、図12に示す矢印Pの位置である。
 構造部材10の模型は、図8に示すように、構造基材1の木材2、引張材3及び支持部4をインスタントセメントである圧縮材11で被覆した構成を有する。
 圧縮材11で被覆した構造基材1の寸法は、長さ500mm、幅50mm、せい50mmである。
 木材2は、長さ450mm、厚さ5mm、せい20mmである。2本の木材2が平行に配置される。
 引張材3を構成する高強度繊維は、アラミド繊維(ヤング率:70,500N/mm、径2.3mm)である。
 支持部4は、釘(頭寸法:4.5mm、針足寸法:38mm、太さ2.1mm)、支持部4の間隔は50mmである。
 支持部4と引張材3の長さ方向のなす角は0rad、引張材3は2本とし、木材2の内側に2本配置した。
 載荷はプッシュプルスケールを介して人力で行った(加力限界値は1.64kN)。
 実験結果を図18に示す。
 試験体の理論値は、図14のとおり、中央部にひび割れが生じると仮定する単純モデルで、鉛直変位ごとに耐荷重を計算した。
 比較のため、本試験体のアラミド繊維と同じ断面積の鉄筋を使用した鉄筋コンクリート造の梁の理論値も示している。
 図18に示すとおり、1回目の加力では強度、剛性ともに理論値を上回る結果となった(加力限界値1.64kNで加力終了)。
 1回目の加力で圧縮材11にひび割れが生じたため、2回目の加力では圧縮材11は引張に抵抗せず引張材3のみとなる。そのため、1回目よりも剛性が低下するものの、強度は1回目の8割程度発揮している。
 なお、同断面積の鉄筋を使用した場合の理論値に対し、本試験体は、剛性、靭性ともに十分上回る結果となった。
 一連の加力で、引張材3は、最大で705N/mmを負担している。これは、通常の異形鉄筋の降伏強度345N/mmの約2倍となる。
1   :構造基材
2   :木材(被補強体)
3   :引張材
4   :支持部
5   :板材
10  :構造部材
11  :圧縮材
 

Claims (7)

  1.  弾性変形可能な材料からなり、外部からの力が伝達される被補強体と、
     前記被補強体の外面に沿って前記被補強体の一端から他端にわたって配置され、引張力を負担可能な連続繊維を有する引張材と、
     前記引張材が固定され、前記被補強体において前記引張材に沿って互いに間隔を空けて設けられる複数の支持部と、
    を備え、
     前記支持部は、前記引張材に生じる応力を前記被補強体に伝達するように前記被補強体に対して固定されている構造基材。
  2.  前記支持部は、負荷時において、前記引張材の破断よりも先に降伏が生じる材料である請求項1に記載の構造基材。
  3.  複数の前記被補強体を備え、
     前記被補強体同士が互いに接続されている請求項1に記載の構造基材。
  4.  請求項3に記載の構造基材と、
     複数の前記被補強体の間において充填され、圧縮力を負担する圧縮材と、
    を備える構造部材。
  5.  請求項1に記載の構造基材と、
     前記被補強体を被覆し、圧縮力を負担する圧縮材と、
    を備える構造部材。
  6.  請求項1から3のいずれか1項に記載の構造基材を備える構造物。
  7.  請求項4又は5に記載の構造部材を備える構造物。
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