WO2024062669A1 - コンベヤベルトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
コンベヤベルトが低温状態でも、上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対して優れた耐衝撃性を確保できるコンベヤベルトおよびその製造方法を提供する。心体層2を挟んで上カバーゴム3、下カバーゴム4をそれぞれ上下に配置し、心体層2と上カバーゴム3との間にブレーカ層5を配置して、ブレーカ層5を、ベルト長手方向に延在する縦糸6aとベルト幅方向に延在する横糸6bとを有する織物6と、織物6の上面、下面をそれぞれ被覆する上コートゴム層7、下コートゴム層8とを備えた構造にして、織物6のベルト長手方向の繊度を26000dtex/cm以上、ベルト幅方向の繊度を90000dtex/cm以上にするとともに、ベルト長手方向の引張強さを2000N/cm以上、ベルト幅方向の引張強さを6000N/cm以上にして、上コートゴム層7および下コートゴム層8の層厚を0.5mm以上にする。
Description
本発明はコンベヤベルトおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、コンベヤベルトが低温状態でも、上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対して優れた耐衝撃性を確保できるコンベヤベルトおよびその製造方法に関するものである。
コンベヤベルトの上カバーゴムと下カバーゴムとの間には、コンベヤベルトに作用する張力を負担する心体層が埋設されている。上カバーゴムには搬送物が投入され、これに伴い衝撃を受けるので、心体層を保護するために上カバーゴムに保護繊維層が埋設された構造が提案されている(特許文献1参照)。
このような保護繊維層が埋設されていても、投入される搬送物から受ける衝撃が大きくなると心体層は損傷し易くなってコンベヤベルトの耐用期間が短くなる。そして、氷点下などの低温状態で使用されるコンベヤベルトは、常温で使用される場合に時に比して耐衝撃性が低下し、より低温になるほど耐衝撃性は低下する。それ故、コンベヤベルトが低温状態でも、上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対して優れた耐衝撃性を確保するには改善の余地がある。
本発明の目的は、コンベヤベルトが低温状態でも、上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対して優れた耐衝撃性を確保できるコンベヤベルトおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトは、心体層と、この心体層を挟んで上下に配置された上カバーゴムおよび下カバーゴムと、前記心体層よりも上方位置に配置されたブレーカ層と、を有するコンベヤベルトにおいて、前記ブレーカ層が、ベルト長手方向に延在する縦糸とベルト幅方向に延在する横糸とを有する織物と、この織物の上面、下面をそれぞれ被覆する上コートゴム層、下コートゴム層とを備えていて、前記心体層と前記上カバーゴムとの間に配置されていて、前記織物のベルト長手方向の繊度が26000dtex/cm以上、ベルト幅方向の繊度が90000dtex/cm以上であり、ベルト長手方向の引張強さが2000N/cm以上、ベルト幅方向の引張強さが6000N/cm以上であり、前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚が0.5mm以上であることを特徴とする。
本発明のコンベヤベルトの製造方法は、上カバーゴムと下カバーゴムとの間に心体層が配置されていて、前記心体層よりも上方位置にブレーカ層が配置されているコンベヤベルトの製造方法において、前記ブレーカ層となるブレーカ部材が、ベルト長手方向に延在する縦糸とベルト幅方向に延在する横糸とを有する織物と、この織物の上面、下面をそれぞれ被覆する未加硫の上コートゴム層、未加硫の下コートゴム層とを備えていて、前記織物のベルト長手方向の繊度が26000dtex/cm以上、ベルト幅方向の繊度が90000dtex/cm以上であり、ベルト長手方向の引張強さが2000N/cm以上、ベルト幅方向の引張強さが6000N/cm以上であり、未加硫の前記上カバーゴムと未加硫の前記下カバーゴムとの間に前記心体層が配置され、前記心体層と未加硫の前記上カバーゴムとの間に前記ブレーカ部材が配置された成形体を成形し、前記成形体を加硫することにより、前記成形体の構成部材が一体化されるとともに、加硫された前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚が0.5mm以上であるコンベヤベルトを製造することを特徴とする。
本発明によれば、前記ブレーカ層が前記心体層と前記上カバーゴムとの間に配置されることで、前記上カバーゴムの厚さ全体を、前記上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対する緩衝材として機能させることができるので、前記ブレーカ層の損傷を防止するには有利になる。そして、前記織物のベルト長手方向の繊度、ベルト幅方向の繊度、ベルト長手方向の引張強さ、ベルト幅方向の引張強さをそれぞれ、上記範囲にすることにより、前記織物の耐衝撃性が大きく向上する。そして、前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚を0.5mm以上にすることで、前記ブレーカ層を前記心体層および前記上カバーゴムと強固に一体化させることができる。その結果、前記ブレーカ層の優れた耐衝撃性を十分に発揮することが可能になり、前記コンベヤベルトが低温状態であっても、前記上カバーゴムに投入される搬送物による衝撃に対して前記コンベヤベルトは優れた耐衝撃性を得ることが可能になる。これに伴い、前記心体層の損傷を回避するには有利になり、前記コンベヤベルトの耐用期間を長くすることが可能になる。
以下、本発明のコンベヤベルトおよびその製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図中の矢印W、Lはそれぞれベルト幅方向、ベルト長手方向を示し、一点鎖線CLはベルト幅方向中心を示している。
図1~図3に例示するコンベヤベルト1の実施形態は、心体層2と、心体層2を挟んで上下に配置された上カバーゴム3および下カバーゴム4と、心体層2と上カバーゴム3との間に配置されたブレーカ層5とを有している。コンベヤベルト1には、これら構成部材のその他にベルト幅方向W両端部に配置される端部ゴムなどの公知の構成部材が適宜備わる。コンベヤベルト1は、上述した構成部材が加硫工程を経て一体化されて構成されている。図2は、上カバーゴム3およびブレーカ層5の一部を切欠いて心体層2(スチールコード2a)を露出させた状態でコンベヤベルト1を示している。
コンベヤベルト1は、使用される際には必要長さが環状に形成される。環状のコンベヤベルト1では、内周側から外周側に向かって順に積層されている下カバーゴム4、心体層2、ブレーカ層5、上カバーゴム3がそれぞれ、ベルト長手方向Lの全長に延在して環状になる。
心体層2は、コンベヤベルト1に作用する張力を負担する。心体層2は、ベルト幅方向Wに並列された多数本のスチールコード2aを有している。これらスチールコード2aはクッションゴムにより被覆されている。スチールコード2aの外径は例えば6.0mm以上15.0mm以下である。並列されたスチールコード2aの密度(本/5cm)は、例えば2以上8以下である。心体層2は、概ねベルト全幅(ベルト幅の95%以上)に渡って配置される。
クッションゴムは接着性に優れる公知の接着ゴムであり、その層厚(被覆厚さ)は例えばスチールコード2aの上下にそれぞれ0.5mm以上4.0mm以下である。クッションゴムとしては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、もしくはこれらの2種類以上の組合せが用いられる。
上カバーゴム3、下カバーゴム4としては、例えば、少なくとも天然ゴムを含むジエン系ゴムからなり(耐油性が要求される場合には、アクリロニトリル・ブタジエンゴムも含まれる)、カーボンブラックなどによって耐摩耗性を良好にした公知のゴムが用いられる。上カバーゴム3および下カバーゴム4の層厚は、コンベヤベルト1に要求される性能によって適宜決定される。上カバーゴム3の層厚は例えば10mm以上45mm以下、下カバーゴム4の層厚は例えば5mm以上35mm以下である。
ブレーカ層5の主な機能は、心体層2の損傷を防止して保護することである。ブレーカ層5は、織物6と、織物6の上面、下面をそれぞれ被覆する上コートゴム層7、下コートゴム層8とを備えている。コンベヤベルト1に作用する張力は基本的に心体層2によって負担されるので、ブレーカ層5は実質的に張力を負担しない。
ブレーカ層5は、コンベヤベルト1の少なくともベルト幅方向W中央部に配置される。ベルト幅方向W中央部とは、ベルト幅の50%以上70%以下程度のベルト幅方向W中央部の範囲である。ブレーカ層5は、概ねベルト全幅(ベルト幅の95%以上)に渡って配置される仕様にして、実質的に心体層2の上面全幅を覆うようにすることが好ましい。
上コートゴム層7の層厚t1および下コートゴム層8の層厚t2は0.5mm以上であり、一段と強固な接着力を確保するには1.0mm以上にする。それぞれの層厚t1、t2が大きくなると、コンベヤベルト1の重量も増加するので、過大な重量増加を回避するために、その上限は例えば2.0mmである。それぞれの層厚t1、t2は基本的に同じであるが、異ならせることもできる。
上コートゴム層7および下コートゴム層8は公知の同じゴムにより形成されていて、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、或いは、これらを複数種類のブレンドしたゴムが使用される。上コートゴム層7および下コートゴム層8は織物6と強固に接合されている。そして、上コートゴム層7は上カバーゴム3と強固に接合され、下コートゴム層8は心体層2と強固に接合されている。
図3に例示するように、織物6は、ベルト長手方向Lに延在する縦糸6aとベルト幅方向Wに延在する横糸6bとを有している。図3の織物4は、1本の縦糸6aと2本の横糸6bを交互に上下に交差させた平織のマット構造になっている。
織物6は図3に例示するマット構造に限定されず、縦糸6aと横糸6bを有する他の構造を採用することもできる。例えば、図4に例示するように、1本の縦糸6aと1本の横糸6bを交互に上下に交差させた単純な平織構造にすることもできる。
縦糸6aおよび横糸6bの材質は例えば、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系の樹脂が採用される。縦糸6aおよび横糸6bは、複数本の素線を撚り合わせた撚り構造にする。素線の繊度は例えば、900dtex以上2500dtex以下にする。
織物6は、十分な耐衝撃性を確保するために特別な仕様にしている。即ち、織物6のベルト長手方向Lの繊度D1は26000dtex/cm以上、ベルト幅方向Wの繊度D2は90000dtex/cm以上であり、ベルト長手方向Lの引張強さF1は2000N/cm以上、ベルト幅方向Wの引張強さF2は6000N/cm以上になっている。コンベヤベルト1の重量増加や屈曲性低下など回避するために、繊度D1、D2の上限はそれぞれ、例えば35000dtex/cm、110000dtex/cm、引張強さF1、引張強さF2の上限はそれぞれ、例えば3000N/cm、7000N/cmである。
繊度D1、D2は下記式により算出される値である。
繊度D1=縦糸6aの総繊度d1(dtex)×縦糸6aの密度(本/5cm)÷5
繊度D2=横糸6bの総繊度d2(dtex)×横糸6bの密度(本/5cm)÷5
縦糸6aの総繊度d1(dtex)は、縦糸6aを構成する素線の繊度(dtex)×その素線の本数、横糸6bの総繊度d2(dtex)は、横糸6bを構成する素線の繊度(dtex)×その素線の本数である。
繊度D1=縦糸6aの総繊度d1(dtex)×縦糸6aの密度(本/5cm)÷5
繊度D2=横糸6bの総繊度d2(dtex)×横糸6bの密度(本/5cm)÷5
縦糸6aの総繊度d1(dtex)は、縦糸6aを構成する素線の繊度(dtex)×その素線の本数、横糸6bの総繊度d2(dtex)は、横糸6bを構成する素線の繊度(dtex)×その素線の本数である。
縦糸6aは例えば、繊度1400dtexの素線をn本(n=2~4)撚り合わせた1400dtex/n構造や繊度2100dtexの素線をn本(n=2~3)撚り合わせた2100dtex/n構造にする。
横糸6bは例えば、繊度1400dtexの素線をn本(n=7~10)撚り合わせ、この撚り合わせたn本の素線をm組(m=2~3)撚り合わせた1400dtex/n/m構造、或いは、繊度2100dtexの素線をn本(n=5~8)撚り合わせ、この撚り合わせたn本の素線をm組(m=2~3)撚り合わせた2100dtex/n/m構造にする。
縦糸6aの密度(本/5cm)は例えば、50以上70以下である。横糸6bの密度(本/5cm)は例えば、8以上12以下である。
引張強さF1、F2は、JIS L 1096に規定されている引張強さ試験に基づいて測定され、織物6の試験片(長さ400mm、幅10mm)の破断荷重を試験片の幅で除した値である。この試験では引張速度200mm/min、クランプ間隔200mmである。
従来の織物では、繊度D1は10000dtex/cm未満、繊度D2は35000dtex/cm未満、引張強さF1は700N/cm未満、引張強さF2は2000N/cm未満である。したがって、この実施形態では繊度D1、D2、引張強さF1、引張強さF2のいずれも従来に比して大幅に高く、織物6は高剛性化されている。
上述したコンベヤベルト1を製造するには、図5に例示する成形体9を成形する。この成形体9を成形するには、未加硫の上カバーゴム3A、未加硫の下カバーゴム4A、心体層2、ブレーカ部材5Aが使用される。ブレーカ部材5Aは、織物6と、織物6の上面、下面をそれぞれ被覆する未加硫の上コートゴム層7A、未加硫の下コートゴム層8Aとを備えている。
そして例えば、未加硫の下カバーゴム4Aの上に順次、心体層2、ブレーカ部材5A、未加硫の上カバーゴム3Aを積層して成形体9を成形する。或いは、未加硫の上カバーゴム3Aの上に順次、心体層2、ブレーカ部材5A、心体層2,未加硫の下カバーゴム4Aを積層して成形体9を成形してもよい。即ち、上述した構成部材を使用して公知の方法によって、図5の成形体9を成形すればよい。
次いで、成形体9を公知の加硫装置を用いて加硫する。加硫工程を経ることで、成形体9を構成している未加硫ゴムが加硫されて、それぞれの構成部材が接合、一体化してコンベヤベルト1になる。ブレーカ部材5Aは加硫工程を経てブレーカ層5になるが、未加硫の上コートゴム層7A、未加硫の下コートゴム層8Aのそれぞれの層厚は、加硫後に上述した層厚t1、層厚t2になるように設定する。事前の加硫テストなどの結果に基づいて、未加硫の上コートゴム層7A、未加硫の下コートゴム層8Aのそれぞれの層厚を設定すればよい。未加硫の上コートゴム層7A、未加硫の下コートゴム層8Aの層厚はそれぞれ、層厚t1、層厚t2よりも若干大きくなる。
製造されたコンベヤベルト1の必要長さが環状に形成されて、図6~図7に例示するようにコンベヤ装置10に装着されて使用される。コンベヤ装置10では、コンベヤベルト1は一対のプーリ11a、11bの間に張設される。コンベヤ装置10のキャリア側ではコンベヤベルト1の下カバーゴム4が多数の支持ローラ12に支持されて、下方に突出するトラフ状に保持される。それ故、上カバーゴム3に投入された搬送物Cは主にベルト幅方向中央部に載置される。コンベヤ装置10のリターン側では上カバーゴム3が多数の支持ローラ12に支持される。
このコンベヤベルト1では、ブレーカ層5が心体層2と上カバーゴム3との間に配置されているので、上カバーゴム3に投入される搬送物Cにより受ける衝撃を、上カバーゴム3の厚さ全体で緩和、吸収することができる。即ち、上カバーゴム3を緩衝材として最大限機能させることができる。それ故、コンベヤベルト1が氷点下の低温状態であっても衝撃を効果的に緩和、吸収できるので、ブレーカ層5が損傷し難くなり、これに伴い心体層2の損傷を防止するには有利になっている。
また、織物6の繊度D1、繊度D2をそれぞれ、26000dtex/cm以上、90000dtex/cm以上にして、かつ、織物6の引張強さF1、引張強さF2をそれぞれ、2000N/cm以上、6000N/cm以上にしている。即ち、織物6が高剛性化されていて、耐衝撃性が従来に比して大きく向上している。
さらに、上コートゴム層7および下コートゴム層8の層厚t1、t2を0.5mm以上にすることで、ブレーカ層5を心体層2および上カバーゴム3と強固に一体化させることができる。層厚t1、t2を1.0mm以上にすることでブレーカ層5を心体層2および上カバーゴム3と一段と強固に一体化させることができる。ブレーカ層5が周辺の構成部材と剥離し難くなるので、ブレーカ層5の優れた耐衝撃性を十分に発揮させることが可能になる。その結果、コンベヤベルト1が低温状態であっても、外部からの衝撃に対してコンベヤベルト1は優れた耐衝撃性を得ることが可能になる。これに伴い、心体層2の損傷を回避するには有利になり、コンベヤベルト1の耐用期間を長くすることが可能になる。
コンベヤベルト1は使用環境がマイナス20℃以下の場合もある。このような低温の条件下では、ゴムの低温脆化の影響によってコンベヤベルト1の耐衝撃性が低下する。このコンベヤベルト1では、ブレーカ層5を心体層2と上カバーゴム3との間に配置するとともに、上述した特別な仕様の織物6を用いて上コートゴム層7および下コートゴム層8の層厚t1、t2を上述した範囲に設定することで、マイナス20℃以下の使用環境(例えばマイナス50℃程度までの使用環境)でも実用的な耐衝撃性を確保することが可能である。
このコンベヤベルト1では、繊度D2が繊度D1に比して非常に大きく、これに伴い、引張強さF2が引張強さF1に比して非常に大きくなっているので(3倍以上になっているので)、コンベヤベルト1の縦裂きを防止するには有利になっている。縦裂きが発生したとしても、縦裂き長さを最小限に抑えることができる。織物6を図3に例示する織り構造(マット構造)にすると、図4に例示する単純な平織構造に比して、コンベヤベルト1の縦裂きを抑制するより高い効果が期待できる。
コンベヤベルト1は、図6に例示するようにプーリ11a、11bまわりを繰り返し屈曲して走行する。この屈曲の際には、心体層2が中立面になって、心体層2よりも外周側には引張力が生じ、心体層2よりも内周側には圧縮力が生じる。したがって、円弧状の屈曲状態の心体層2に対して半径方向でより離れた位置に剛性が高い部材があると、曲げ剛性が高くなって屈曲性が低下する。このコンベヤベルト1には、従来よりも剛性が高いブレーカ層5を有しているが、上カバーゴム3に埋設されているのではなくて、心体層2に隣接して配置されている。そのため、円弧状の屈曲状態の心体層2に対して半径方向でより近くの位置にブレーカ層5が存在することなるので、コンベヤベルト1の屈曲性の低下を回避するには有利になっている。
また、コンベヤベルト1は、図7に例示するようにコンベヤ装置10のキャリア側では、搬送物Cを載置するために下方に適度に突出したトラフ状に変形される。このようにコンベヤベルト1がトラフ状に変形する際にも心体層2が中立面になる。それ故、このコンベヤベルト1には、従来よりも剛性が高いブレーカ層5を有しているのも拘わらず、コンベヤベルト1のトラフ性の低下(トラフ状に変形し難くなること)を回避するにも有利になっている。コンベヤベルト1の屈曲性およびトラフ性を良好に維持するために、下コートゴム層8の層厚t2を上コートゴム層7の層厚t1よりも小さくして、ブレーカ層5を心体層2により近接させた仕様にすることもできる。
表1に示すように、仕様を異ならせた6種類のブレーカ層(従来例、比較例1~2、実施例1~3)を用意して、それぞれの織物についてベルト長手方向(縦糸の延在方向)の引張強さF1、ベルト幅方向(横糸の延在方向)の引張強さF2を測定した。引張強さF1、F2は上述した試験方法により得られた測定値である。
また、それぞれの織物の上下をコートゴム層(層厚t1とt2は同じに設定した)により被覆したブレーカ層を挟んで上カバーゴムおよびクッションゴムを積層して共通条件下で加硫して一体化させて接着試験片を作製した。それぞれの接着試験片を用いてJIS K6256-1:2013「布との剥離強さ」に準拠して剥離強さを測定した。それぞれの測定結果は表1に示すとおりである。尚、ブレーカ層とクッションゴムの剥離強さは、ブレーカ層と心体層の剥離強さに相当する。
引張強さF1、F2がそれぞれ、2000N/cm以上、6000N/cm以上であると、氷点下であっても実用的な耐衝撃性を十分に有していると評価できる。また、織物と上コートゴム層および下コードゴム層との剥離強さが10.5N/mm以上であると、氷点下であっても実用的な接着性を十分に有していると評価できる。
表1の結果から、従来例に比して、実施例1~3は引張強さF1、F2が大幅に向上しているとともに、織物と上コートゴム層および下コードゴム層との剥離強さも大幅に向上している。そして、実施例1~3は、引張強さF1、F2がそれぞれ、2000N/cm以上、6000N/cm以上になっていて、氷点下でも十分な耐衝撃性を期待できる。また、織物と上コートゴム層および下コードゴム層との剥離強さも十分に優れた性能を有しているので、織物の優れた耐衝撃性を損なうことなく発揮することが可能である。
1 コンベヤベルト
2 心体層
2a スチールコード
3 上カバーゴム
3A 未加硫の上カバーゴム
4 下カバーゴム
4A 未加硫の下カバーゴム
5 ブレーカ層
5A ブレーカ部材
6 織物
6a 縦糸
6b 横糸
7 上コートゴム層
7A 未加硫の上コートゴム層
8 下コートゴム層
8A 未加硫の下コートゴム層
9 成形体
10 コンベヤ装置
11a、11b プーリ
12 支持ローラ
C 搬送物
2 心体層
2a スチールコード
3 上カバーゴム
3A 未加硫の上カバーゴム
4 下カバーゴム
4A 未加硫の下カバーゴム
5 ブレーカ層
5A ブレーカ部材
6 織物
6a 縦糸
6b 横糸
7 上コートゴム層
7A 未加硫の上コートゴム層
8 下コートゴム層
8A 未加硫の下コートゴム層
9 成形体
10 コンベヤ装置
11a、11b プーリ
12 支持ローラ
C 搬送物
Claims (4)
- 心体層と、この心体層を挟んで上下に配置された上カバーゴムおよび下カバーゴムと、前記心体層よりも上方位置に配置されたブレーカ層と、を有するコンベヤベルトにおいて、
前記ブレーカ層が、ベルト長手方向に延在する縦糸とベルト幅方向に延在する横糸とを有する織物と、この織物の上面、下面をそれぞれ被覆する上コートゴム層、下コートゴム層とを備えていて、前記心体層と前記上カバーゴムとの間に配置されていて、
前記織物のベルト長手方向の繊度が26000dtex/cm以上、ベルト幅方向の繊度が90000dtex/cm以上であり、ベルト長手方向の引張強さが2000N/cm以上、ベルト幅方向の引張強さが6000N/cm以上であり、
前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚が0.5mm以上であるコンベヤベルト。 - 前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚が1.0mm以上である請求項1に記載のコンベヤベルト。
- 前記織物が、前記縦糸1本と前記横糸2本を交互に上下に交差させたマット構造である請求項1または2に記載のコンベヤベルト。
- 上カバーゴムと下カバーゴムとの間に心体層が配置されていて、前記心体層よりも上方位置にブレーカ層が配置されているコンベヤベルトの製造方法において、
前記ブレーカ層となるブレーカ部材が、ベルト長手方向に延在する縦糸とベルト幅方向に延在する横糸とを有する織物と、この織物の上面、下面をそれぞれ被覆する未加硫の上コートゴム層、未加硫の下コートゴム層とを備えていて、前記織物のベルト長手方向の繊度が26000dtex/cm以上、ベルト幅方向の繊度が90000dtex/cm以上であり、ベルト長手方向の引張強さが2000N/cm以上、ベルト幅方向の引張強さが6000N/cm以上であり、
未加硫の前記上カバーゴムと未加硫の前記下カバーゴムとの間に前記心体層が配置され、前記心体層と未加硫の前記上カバーゴムとの間に前記ブレーカ部材が配置された成形体を成形し、前記成形体を加硫することにより、前記成形体の構成部材が一体化されるとともに、加硫された前記上コートゴム層および前記下コートゴム層の層厚が0.5mm以上であるコンベヤベルトを製造するコンベヤベルトの製造方法。
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PCT/JP2023/016699 WO2024062669A1 (ja) | 2022-09-20 | 2023-04-27 | コンベヤベルトおよびその製造方法 |
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JPH08244405A (ja) * | 1994-10-28 | 1996-09-24 | Goodyear Tire & Rubber Co:The | 衝撃遮断または差し込み継手用のモックレノ織布を有するベルト構造 |
JPH09239845A (ja) * | 1996-03-14 | 1997-09-16 | Bridgestone Corp | コンベヤベルトの接合方法 |
WO2017010221A1 (ja) * | 2015-07-13 | 2017-01-19 | 横浜ゴム株式会社 | コンベヤベルト |
JP2017100848A (ja) * | 2015-12-02 | 2017-06-08 | ニッタ株式会社 | 無端状平ベルトおよびその製造方法 |
-
2022
- 2022-09-20 JP JP2022148691A patent/JP2024043613A/ja active Pending
-
2023
- 2023-04-27 WO PCT/JP2023/016699 patent/WO2024062669A1/ja unknown
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2017100848A (ja) * | 2015-12-02 | 2017-06-08 | ニッタ株式会社 | 無端状平ベルトおよびその製造方法 |
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