WO2023176930A1

WO2023176930A1 - 衣服の製造方法

Info

Publication number: WO2023176930A1
Application number: PCT/JP2023/010346
Authority: WO
Inventors: 章溝畑; 大介古川
Original assignee: 株式会社瑞光
Priority date: 2022-03-17
Filing date: 2023-03-16
Publication date: 2023-09-21

Abstract

効率良く製造が可能な衣服の製造方法を提供する。重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材と第４シート材とを、部分的に接合し、所定の位置で切断することで、筒状の袖部材（３０）を形成する。袖部材は、搬送される前側部材（１０）を形成するための第１シート材（Ｗ１）と重ね合わせられる。搬送される第１シート材と搬送される第２シート材（Ｗ２）とが、第１シート材と重ね合わせられた袖部材が第１シート材と第２シート材との間に配置されるように、重ね合わせられる。第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に接合され、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に切断される。第２形成工程で形成された衣服は、第１シート材及び第２シート材から分離される。

Description

衣服の製造方法

　本願発明は、衣服の製造方法に関する。

　従来、防護服カバーや手術衣等の衣服の製造方法として、特許文献１（特許６７６２９９１号）に示すような製造方法が知られている。

特許６７６２９９１号

　特許文献１（特許６７６２９９１号）に開示されている衣服は、前側パネル、２つの後側パネル、カラー、袖部、カフ等の複数の部材を曲線状に縫合して製造するものである。そのため、特許文献１（特許６７６２９９１号）に開示されている衣服の製造工程は、複雑であり、大量生産に不向きである。

　本願発明の課題は、製造方法が比較的単純で、効率良く製造が可能な衣服の製造方法を提供することにある。

　本願発明の衣服の製造方法は、第１搬送工程と、第２搬送工程と、第１形成工程と、第１重ね合わせ工程と、第２重ね合わせ工程と、第２形成工程と、分離工程と、を備える。第１搬送工程では、前身頃及び後身頃の一方である第１部材を形成するための第１シート材が搬送される。第２搬送工程では、前身頃及び後身頃の他方である第２部材を形成するための第２シート材が搬送される。第１形成工程では、搬送される第３シート材と搬送される第４シート材とを重ね合わせ、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材と第４シート材とを、部分的に接合し、所定の位置で切断することで、筒状の袖部材が形成される。第１重ね合わせ工程では、搬送される第１シート材と袖部材とが重ね合わせられる。第２重ね合わせ工程では、第１シート材と重ね合わせられた袖部材が、第１シート材と第２シート材との間に配置されるように、搬送される第１シート材と搬送される第２シート材とが重ね合わせられる。第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服の外縁の形状に合わせて部分的に接合される。また、第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服の外縁の形状に合わせて部分的に切断される。分離工程では、第２形成工程で形成された衣服が、第１シート材及び第２シート材から分離される。

　本願発明に係る衣服の製造方法では、比較的単純な工程で衣服を製造でき、衣服を効率良く製造することができる。

　また、本願発明に係る衣服の製造方法では、第１部材を形成するための第１シート材と第２部材を形成するための第２シート材との間に袖部材が配置されるため、前身頃の外面（前面）となる部分及び袖部材を、後身頃で覆うことができる。そのため、本願発明に係る衣服の製造方法では、製造された衣服の前身頃の外面や袖部材に人の手等が触れて汚染される事態の発生を抑制可能な、衛生的に優れた衣服を製造できる。

本願発明の衣服の製造方法により製造される衣服が着用された際の状態を、前方側から見た概略図である。本願発明の衣服の製造方法により製造される衣服が着用された際の状態を、後方側から見た概略図である。本願発明の衣服の製造方法により製造される衣服の着用前の状態を、着用者が着用する際に外側に向けられる側（人に対向しない側）から見た概略図である。本願発明の衣服の製造方法における、第１シート材に対して行われる加工の例を模式的に描画している。図４の続きであり、本願発明の衣服の製造方法における、第１シート材、及び、第１シート材に合流する袖部材及び第２シート材に対して行われる加工の例を模式的に描画している。本願発明の衣服の製造方法における、第３シート材及び第４シート材から袖部材を形成する加工の例を模式的に描画している。本願発明の衣服の製造方法における、第２シート材に対して行われる加工の例を模式的に描画している。本願発明の衣服の製造方法の第２形成工程において、第１シート材及び第２シート材が切断される位置の例を説明するための図である。本願発明の衣服の製造方法の第２形成工程において、第１シート材及び第２シート材が切断される位置の他の例を説明するための図である。図４及び図５における、第１シート材、及び、第１シート材に合流する袖部材及び第２シート材に対して行われる加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。図６における、第３シート材及び第４シート材から袖部材を形成する加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。図７における、第２シート材に対して行われる加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。衣服製造システムの主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第１シート材に対して加工を行う装置と、袖部材を形成する装置と、を描画している。衣服製造システムの主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第２シート材に対して加工を行う装置を描画している。衣服製造システムの主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第１シート材及び袖部材に第２シート材を合流させ衣服を形成する装置を描画している。本願発明の衣服の製造方法により製造される他の例に係る衣服の着用前の状態を、着用者が着用する際に外側に向けられる側（人に対向しない側）から見た概略図である。第３シート材と第４シート材とを接合し、その後に接合箇所を中央部分で切断して形成された袖部材の概略図である。変形例Ｊの衣服の製造方法における、第３シート材及び第４シート材から袖部材を形成する加工の例を模式的に描画している。

　以下に、図面を参照しながら、本願発明に係る衣服の製造方法の実施形態を説明する。

　なお、以下で説明する実施形態は、本願発明の一実施例に過ぎず、本願発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本願発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、以下の実施形態に多様な変更が可能なことが理解されるであろう。

　（１）衣服
　（１－１）概要
　本願発明に係る衣服の製造方法を用いて製造される衣服１について、図１～図３を参照しながら説明する。図１は、衣服１が着用者に着用された際の状態を、前方側から見た概略図である。図２は、衣服１が着用者に着用された際の状態を、後方側から見た概略図である。図３は、衣服１の着用前の状態を、着用者が着用する際に外側に向けられる側（人に対向しない側）から見た概略図である。図３では、図の見やすさの観点から、左後側部材２０Ｌ及び袖部材３０以外の直接見えない部材については、その描画を省略している。

　なお、図１及び図２では、衣服１を身体に密着させるための後述する紐を結んでいない状態を描画している。また、図３では、後述する衣服製造システム１００が衣服１の製造を完了した時点の衣服ではなく、衣服１のコンパクト化のために衣服製造システム１００が折り畳んでいた衣服１を、着用するために展開した状態を描画している。

　以下で衣服１や衣服１を構成する部材の説明をする際に、方向や向きを示すため、「上」、「下」、「前（正面）」、「後（背面）」、「右」、「左」等の語を用いる場合がある。これらの表現は、特記なき場合、衣服１の着用状態における「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」を意味する。具体的に言えば、衣服１の上側とは、衣服１の通常着用状態における着用者の頭部側を意味し、衣服１の前側とは、衣服１の通常着用状態における着用者の胸部（正面）側を意味し、衣服１の右側とは、衣服１の通常着用状態における着用者の右腕側を意味する。他の表現についても同様である。

　また、以下で衣服１や衣服１を構成する部材の説明をする際に、「外面」、「内面」等の語を用いる場合があるが、これらの表現は、特記なき場合、衣服１の着用状態における「外面」、「内面」等を意味する。具体的に言えば、内面とは、衣服１の通常着用状態において着用者に対向する側の面を意味し、外面とは、衣服１の通常着用状態において着用者に対向しない側の面を意味する。

　本願発明の製造方法によって製造される衣服１は、用途を限定するものではないが、例えば、手術衣や、作業の際に用いる防護カバーとして利用可能である。使用回数を限定するものではないが、衣服１は、例えば、使用後に廃棄されるディスポーザブルの衣服である。衣服１は、着用者の上半身に加え、着用者の下半身の腰部分から足首付近までを覆う。

　衣服１は、主な部材として、第１部材の一例である前側部材１０（前身頃）と、第２部材の一例である後側部材２０（後身頃）と、第１袖部材３０Ｒ（右袖）と、第２袖部材３０Ｌ（左袖）と、を有する。なお、第１袖部材３０Ｒと第２袖部材３０Ｌとの違いは、部材１０，２０に対してどちら側に配置されるか（着用者のどちらの腕が挿入されるか）の違いであり、形状や構造は同一である。以下では、第１袖部材３０Ｒと第２袖部材３０Ｌとを特に区別する必要が無い場合には、第１袖部材３０Ｒと第２袖部材３０Ｌとを呼び分けずに、袖部材３０と単一の名称で呼ぶ場合がある。

　前側部材１０、後側部材２０、及び袖部材３０は、前側部材１０と袖部材３０とが所定箇所で接合され、後側部材２０と袖部材３０とが所定箇所で接合され、前側部材１０と後側部材２０とが所定箇所で接合されることで、衣服１を構成する。前側部材１０と袖部材３０との接合、後側部材２０と袖部材３０との接合、及び、前側部材１０と後側部材２０との接合については後述する。

　前側部材１０及び後側部材２０の材質は、限定するものではないが、例えば熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布である。例えば、前側部材１０及び後側部材２０の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等である。このような素材を用いることで、前側部材１０と後側部材２０とを熱溶着することが可能である。なお、前側部材１０及び後側部材２０は、単一種類の素材で製造されたものである必要はなく、複数の素材が積層された、複数の材質からなる素材で製造されてもよい。

　また、前側部材１０及び後側部材２０には、補強や、着用者の快適性の向上の目的で、部分的に他の部材が貼り付けられてもよい。限定するものではないが、本実施形態では、前側部材１０の内面に、前側部材１０とは別の素材の補強部材１２が貼り付けられている（図１参照）。補強部材１２は、前側部材１０の左右方向における概ね全体にわたって、前側部材１０の胸あたりから裾１８の近傍までの領域に配置される。また、前側部材１０の内面の、衣服１の前側の襟ぐり１４の周囲には、図１のように、首回り部材１５ａ（不織布）が貼り付けられている。また、本実施形態では、後側部材２０の内面の、衣服１の後側の襟ぐり２４の周囲に、図１のように、首回り部材２５ａ（不織布）が貼り付けられている。

　前側部材１０、後側部材２０及び袖部材３０について更に詳細を説明する。

　（１－２）各部材の詳細
　（１－２－１）前側部材
　前側部材１０は、図１のように、略矩形状のシート状の部材である。ただし、前側部材１０の上部には、着用者の頭を通すために、下方に凹むように、略Ｃ字形状の襟ぐり１４が形成されている。なお、襟ぐり１４の形状は任意であり、例えば、襟ぐり１４の形状は、略Ｖ字形状であってもよい。また、着用者の肩を覆う前側部材１０の肩部分１６は、着用者の身体にフィットするように、図１のように、襟ぐり１４側から袖部材３０側へと斜め下方へと延びる傾斜部１６ａを含む。また、前側部材１０の肩部分１６には、図１のように、襟ぐり１４と傾斜部１６ａとの間を延びる水平部１６ｂを含む。肩部分１６がこのような構成を有することで、肩部分１６の袖部材３０側の端部１６ｃは、肩部分１６の襟ぐり１４側の端部１６ｄよりも衣服１の裾（前側部材１０の裾１８）の近くに配置される。

　前側部材１０の外面の腰近傍には、付属品として、第１前紐１１ａ及び第２前紐１１ｂが取り付けられる。図１では、第１前紐１１ａ及び第２前紐１１ｂが前側部材１０の前方に描画されているが、着用者が実際に衣服１を着用した際には、第１前紐１１ａ及び第２前紐１１ｂは、着用者の背面側で結束される。第１前紐１１ａ及び第２前紐１１ｂを着用者の背面側で結束することで、着用者の腰部付近で、衣服１を着用者の身体に密着させることができる。

　（１－２－２）後側部材
　後側部材２０は、右後側部材２０Ｒと、左後側部材２０Ｌと、を含む。右後側部材２０Ｒ及び左後側部材２０Ｌは、それぞれ略矩形状のシート状の部材である。衣服１では、右後側部材２０Ｒと左後側部材２０Ｌとが重なりあうように配置される。具体的には、衣服１では、右後側部材２０Ｒの左端近傍部が、左後側部材２０Ｌの右端近傍部に重なるように配置される。図２では、右後側部材２０Ｒの左端近傍部は、左後側部材２０Ｌの右端近傍部より後方に配置されているが、衣服１の形状はこのような形状に限定されるものではなく、左後側部材２０Ｌの右端近傍部が、右後側部材２０Ｒの左端近傍部より後方に配置されるように設計変形されてもよい。

　以下では、右後側部材２０Ｒと左後側部材２０Ｌとのそれぞれの形状について説明をするのではなく、右後側部材２０Ｒと左後側部材２０Ｌとを一体の後側部材２０であると見なしてその形状の説明を行う。

　後側部材２０の外形は、前側部材１０と同様の外形を有する。後側部材２０は、図２のように、略矩形状のシート状の部材である。ただし、後側部材２０の上部には、着用者の頭を通すために、下方に凹むように、略Ｃ字形状の襟ぐり２４が形成されている。なお、襟ぐり２４の形状は任意であり、例えば、襟ぐり２４の形状は、略Ｖ字形状であってもよい。また、着用者の肩を覆う後側部材２０の肩部分２６は、着用者の身体にフィットするように、図２のように、襟ぐり２４側から袖部材３０側へと斜め下方へと延びる傾斜部２６ａを含む。また、後側部材２０の肩部分２６には、図２のように、襟ぐり２４と傾斜部２６ａとの間を延びる水平部２６ｂを含む。肩部分２６がこのような構成を有することで、肩部分２６の袖部材３０側の端部２６ｃは、肩部分２６の襟ぐり２４側の端部２６ｄよりも衣服１の裾（後側部材２０の裾２８）の近くに配置される。

　前側部材１０と後側部材２０とは、以下の部分で接合されて一体化されている。後側部材２０の肩部分２６が、前側部材１０の肩部分１６と接合されている。また、後側部材２０及び前側部材１０の左右の外縁が、前側部材１０及び後側部材２０の袖部材３０の下端部との接合部（脇の部分）から、前側部材１０及び後側部材２０の裾１８，２８まで、その全体が接合されている。

　なお、後側部材２０の襟ぐり２４と、前側部材１０の襟ぐり１４とは、着用者が頭を出す必要があるため接合されていない。また、後側部材２０の裾２８と、前側部材１０の裾１８とは、着用者が足を出すために接合されていない。

　後側部材２０の外面の襟ぐり２４近傍には、付属品として、第１首紐２２ａ及び第２首紐２２ｂが取り付けられる。第１首紐２２ａは、左後側部材２０Ｌに取り付けられ、第２首紐２２ｂは、右後側部材２０Ｒに取り付けられる。着用者が衣服１を着用した際には、第１首紐２２ａ及び第２首紐２２ｂは、着用者の背面側で結束される。第１首紐２２ａ及び第２首紐２２ｂを着用者の背面側で結束することで、着用者の首回りで、衣服１を着用者の身体に密着させることができる。

　また、後側部材２０の腰近傍には、付属品として、腰部外側紐２１ａ及び腰部内側紐２１ｂが取り付けられる。腰部外側紐２１ａは、左後側部材２０Ｌの外面に取り付けられる。腰部内側紐２１ｂは、右後側部材２０Ｒの内面に取り付けられる。着用者が衣服１を実際に着用した際には、腰部外側紐２１ａ及び腰部内側紐２１ｂは、着用者の背面側で結束される。腰部外側紐２１ａ及び腰部内側紐２１ｂを着用者の背面側で結束することで、右後側部材２０Ｒと左後側部材２０Ｌとが離れた状態になることを抑制できる。

　また、左後側部材２０Ｌの外面に対向する右後側部材２０Ｒの内面には、付属品として、面ファスナ２２ｃ（フック部）が設けられる。着用者が衣服１を実際に着用した際には、面ファスナ２２ｃは、左後側部材２０Ｌの外面の繊維（ループ部）に貼り付けられ、着用者の首回りで、衣服１を着用者の身体に密着させるために用いられる。

　（１－２－３）袖部材
　袖部材３０は、衣服１の着用者が腕を通す部分である。

　袖部材３０は、円筒状の部材である。袖部材３０の一端側には衣服１の着用者が手を出す袖口３２が設けられる。袖部材３０の他端側には、衣服１の着用者が腕を差し込むアームホール３４が設けられている。

　袖部材３０は、前側部材１０及び後側部材２０と、アームホール３４側の端部において接合されている。具体的には、第１袖部材３０Ｒの前面のアームホール３４側の端部外縁が、上下方向における全域にわたって、前側部材１０の外面の右側外縁と接合されている。また、第１袖部材３０Ｒの後面のアームホール３４側の端部外縁が、上下方向における全域にわたって、後側部材２０（右後側部材２０Ｒ）の外面の右側外縁と接合されている。また、第２袖部材３０Ｌの前面のアームホール３４側の端部外縁が、上下方向における全域にわたって、前側部材１０の外面の左側外縁と接合されている。また、第２袖部材３０Ｌの後面のアームホール３４側の端部外縁が、上下方向における全域にわたって、後側部材２０（左後側部材２０Ｌ）の外面の左側外縁と接合されている。

　本実施形態の袖部材３０では、袖口３２の開口の寸法が、袖部材３０のアームホール３４の開口の寸法より小さく形成されている。袖部材３０の袖口３２を小さく形成することで（袖口３２の開口寸法を小さくすることで）、余った袖部材３０の袖口３２が作業の邪魔になりにくい。一方で、袖部材３０のアームホール３４の開口の寸法を比較的大きく取ることで、衣服１の着用者は、腕を自由に動かしやすい。

　なお、袖部材３０の袖口３２には、伸縮材Ｅが配置されている（取り付けられている）。伸縮材Ｅは、例えば、伸縮性の高いシート状の部材や、糸ゴムである。袖部材３０の袖口３２の伸縮材Ｅにより袖口３２が絞られることで、袖口３２が作業の邪魔になりにくく、袖口３２から衣服１の内部に異物が侵入しにくい。

　（１－３）衣服の着用方法
　衣服１の着用方法を説明する。

　まず、衣服１の着用方法を説明する前に、着用者による着用前の衣服１の形状について説明する。なお、衣服１を製造する衣服製造システム１００は、製造された衣服１のコンパクト化を図るため、後述するように、折り畳まれた状態の衣服１を製造する。しかし、ここでは、折り畳まれた状態の衣服１ではなく、衣服製造システム１００が製造した折り畳まれた状態の衣服１を展開した後の衣服１の形状を、着用者による着用前の衣服１の形状と呼ぶ。

　衣服１の着用後には、前側部材１０の外面が着用者の前方に、後側部材２０の外面が着用者の後方に、それぞれ配置されることとなる。また、衣服１の着用後には、前側部材１０の内面が着用者の前面に対向し、後側部材２０の内面が着用者の背面に対向する。

　これに対し、着用者による着用前の衣服１では、前側部材１０の内面（着用後に着用者に対向する面）が外側に配置され、後側部材２０の内面（着用後に着用者に対向する面）が外側に配置される。言い換えれば、着用者による着用前の衣服１では、前側部材１０の外面（着用後に着用者に対向しない面）が内側に配置され、後側部材２０の外面（着用後に着用者に対向しない面）が内側に配置される。要するに、着用者による着用前の衣服１では、着用者が着用した時に外側に配置される面が、外部に露出していない。そして、着用者による着用前の衣服１では、前側部材１０の外面と後側部材２０の外面との間に袖部材３０が配置される。なお、前側部材１０と後側部材２０との間に配置される袖部材３０のアームホール３４は、衣服１の側面において開口した状態にある。言い換えれば、着用者による着用前の衣服１では、着用者は、袖部材３０のアームホール３４に、腕を挿入可能な状態にある。

　衣服１を着用者が着用する際、着用者は、図３のような形状の衣服１の前側部材１０の内面（着用後に着用者に対向する面）を着用者の前面に対向させる。そして、着用者は、第１袖部材３０Ｒのアームホール３４から右腕を挿入し、第１袖部材３０Ｒの袖口３２から右手首を出す。また、着着用者は、第２袖部材３０Ｌのアームホール３４から左腕を挿入し、第２袖部材３０Ｌの袖口３２から左手首を出す。

　この状態で、例えば、衣服１の着用を補助する補助者が、着用者の前方に配置されていた後側部材２０の内面（右後側部材２０Ｒの内面及び左後側部材２０Ｌの内面）が、着用者の背面に対向するように、右後側部材２０Ｒ及び左後側部材２０Ｌで着用者の背面を覆う。そして、補助者は、右後側部材２０Ｒの内面に設けられた面ファスナ２２ｃを、左後側部材２０Ｌの外面の繊維（ループ）に貼り付ける。さらに、補助者は、第１首紐２２ａ及び第２首紐２２ｂを着用者の背面側で結束し、腰部外側紐２１ａ及び腰部内側紐２１ｂを着用者の背面側で結束する。次に、補助者又は着用者は、第１前紐１１ａ及び第２前紐１１ｂを着用者の背面側で結束する。以上のような態様で、着用者は、衣服１を着用するできる。

　（２）衣服の製造方法及び製造システム
　本願発明の衣服１の製造方法の実施形態、及び、この製造方法を用いて衣服１を製造する衣服製造システム１００の例について、図４～図１５を参照しながら説明する。

　図４は、第１シート材Ｗ１に対して行われる加工の例を模式的に描画している。図５は、図４からの続きであり、第１シート材Ｗ１、及び、第１シート材Ｗ１に合流する袖部材３０及び第２シート材Ｗ２に対して行われる加工の例を模式的に描画している。図６は、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から袖部材３０を形成する加工の例を模式的に描画している。図７では、第２シート材Ｗ２に対して行われる加工の例を模式的に描画している。

　なお、図４、図５、図７中の、衣服の襟ぐり及び肩部分を示す一点鎖線と、１着の衣服１を製造するために用いられるシート材の領域の境界を示す一点鎖線（衣服１の裾に対応する位置に描画された一点鎖線）とは、理解のしやすさの観点から描画したものであり、物理的にミシン目等が設けられているわけではない。また、図６の搬送されるシート材上に描画された二点鎖線は、その後の工程で、この位置において第３シート材と第４シート材との接合や、第３シート材及び第４シート材の切断が行われることを示したものであり、物理的にミシン目等が設けられているわけではない。また、図４及び図７では、直接見えない部材を破線で示しているが、図５では、図面が煩雑になるのを避けるため、直接見えない部材の描画は省略している。

　図８は、衣服１の製造方法の第２形成工程において、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２が切断される位置の例を説明するための図である。図９は、衣服１の製造方法の第２形成工程において、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２が切断される位置の他の例を説明するための図である。

　図１０は、図４及び図５に対応しており、第１シート材Ｗ１、及び、第１シート材Ｗ１に合流する袖部材３０及び第２シート材Ｗ２に対して行われる加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。図１１は、図６に対応しており、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から袖部材３０を形成する加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。図１２は、図７に対応しており、第２シート材Ｗ２に対して行われる加工の流れの例を模式的に示すフローチャートである。

　図１３は、衣服製造システム１００の主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第１シート材Ｗ１に対して加工を行う装置と、袖部材３０を形成する装置と、を描画している。図１４は、衣服製造システム１００の主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第２シート材Ｗ２に対して加工を行う装置を描画している。図１５は、衣服製造システム１００の主要部分の一部を模式的に描画した図であり、主に、第１シート材Ｗ１及び袖部材３０に第２シート材Ｗ２を合流させ衣服１を形成する装置を描画している。

　（２－１）前側部材及び後側部材の製造に用いられる材料
　衣服１の製造においては、主要な材料として、前側部材１０の製造用の第１シート材Ｗ１と、後側部材２０の製造用の第２シート材Ｗ２と、袖部材３０の製造用の第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４と、が使用される。なお、第１シート材Ｗ１、第２シート材Ｗ２と、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４以外に使用される材料については、衣服１の製造方法の説明の中で説明する。

　第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、例えば熱可塑性樹脂のシートである。第１シート材Ｗ１の幅（第１シート材Ｗ１の搬送方向と直交する方向における長さ、図４参照）は、衣服１の前側部材１０及び後側部材２０の左右の幅の長さＬ１（図１参照）と等しい。

　第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４は、例えば、不織布と補強材とが積層されたシートである。第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の幅（搬送方向と直交する方向における長さ、図６参照）は、袖部材３０の左右の幅の長さＬ２（図２参照）と等しい。

　　第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、原反ロール（図示せず）から繰り出される。

　第３シート材Ｗ３は、原反ロールから繰り出される袖用シート材Ｗ３ｎｗ（不織布）と原反ロールから繰り出される補強材の補強シート材Ｗ３ｒとが重ね合わせられ、接合されることで製造される。第４シート材Ｗ４は、原反ロールから繰り出される袖用シート材Ｗ４ｎｗ（不織布）と原反ロールから繰り出される補強材の補強シート材Ｗ４ｒとが重ね合わせられ、接合されることで製造される。

　（２－２）衣服の製造方法
　衣服製造システム１００による衣服１の製造について説明することで、本願発明の衣服１の製造方法の実施例を説明する。

　衣服製造システム１００は、第１シート材Ｗ１、及び、第１シート材Ｗ１に合流した袖部材３０及び第２シート材Ｗ２に対して加工を行う装置として、主に、第１シート材搬送装置１１０、補強部材接合装置１２０、シート片接合装置１３０、前紐接合装置１４０，１５０、接着剤塗布装置１６０、袖部材重ね合わせ装置２６０，２７０、第２シート材重ね合わせ装置４１０，４２０、身頃縁部接合装置１８０、身頃縁部カット装置１９０、分離装置２００、及び、折込装置１９５を含む（図１３及び図１５参照）。衣服製造システム１００は、袖部材３０を形成する装置として、主に、第３シート材形成搬送装置２１０、第４シート材形成搬送装置２２０、伸縮材接合装置２０５，２１５、袖縁部接合装置２３０、袖縁部カット装置２４０、及び位置調整装置２４５，２５０を含む（図１３参照）。また、衣服製造システム１００は、第２シート材Ｗ２に対して加工を行う装置として、主に、第２シート材搬送装置３１０、シート片接合装置３２０、スリット装置３３０、首紐接合装置３４０，３９０、腰紐接合装置３５０，３８０、面ファスナ接合装置３６０、及び接着剤塗布装置３７０，４００を含む（図１４参照）。各装置の機能については、製造方法の説明と共に行う。

　なお、以下で説明する製造方法のフローは一例に過ぎない。例えば、工程の実施の順番は、矛盾の無い範囲で変更されてもよい。また、例えば、矛盾が無ければ、２つ以上の工程が同時に実行されてもよい。

　また、以下の説明の中で、「Ａ」に「Ｂ」を重ねるというような表現を用いる場合があるが、この表現は、「Ａ」の上に「Ｂ」が配置されるというような位置関係を限定するものではなく、「Ａ」と「Ｂ」とが重なり合う状態になることを意味している。つまり、「Ａ」に「Ｂ」を重ねるという表現は、矛盾が無ければ、「Ｂ」の上に「Ａ」が配置される態様や、「Ａ」と「Ｂ」とが水平方向に並べてられている（水平方向に隣接している）態様も含むものとする。

　第１シート材搬送装置１１０（図１３参照）は、例えば複数のローラを用いて、原反ロール（図示せず）から繰り出される第１シート材Ｗ１を搬送する（図１０中のステップＡ１）。図１０中のステップＡ１の工程は、前身頃及び後身頃の一方である（ここでは前身頃である）前側部材１０を形成するための第１シート材Ｗ１を搬送する第１搬送工程の一例である。なお、ここでは詳細な説明は省略するが、第１シート材Ｗ１は、シートが複数層積層されたシート材であってもよく、衣服１の製造工程は、複数のシートから複数層積層された第１シート材Ｗ１を製造する工程を含んでもよい。

　補強部材接合装置１２０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から繰り出されるシート材（図示せず）から切り出される補強部材１２を、第１シート材搬送装置１１０が搬送する第１シート材Ｗ１に接合する（図１０中のステップＡ２）。接合方法は、溶着であっても、接着であってもよく、適宜選択されればよい。補強部材接合装置１２０（図１３参照）は、製造された衣服１において前側部材１０の内面の所定位置に補強部材１２が配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に補強部材１２を接合する。補強部材１２の形状は、適宜決定されればよいが、例えば矩形状である。

　シート片接合装置１３０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から繰り出されるシート材（図示せず）から切り出される首回りシート片１５を、第１シート材搬送装置１１０が搬送する第１シート材Ｗ１に接合する（図１０中のステップＡ３）。接合方法は、溶着であっても、接着剤を用いた接着であってもよく、適宜選択されればよい。なお、シート片接合装置１３０は、製造された衣服１において前側部材１０の内面の襟ぐり１４周りの所定位置に首回り部材１５ａ（首回りシート片１５が後段の工程で第１シート材Ｗ１と共に切断された結果、前側部材１０に残る部材）が配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に首回りシート片１５を接合する。首回りシート片１５の形状は、適宜決定されればよいが、例えば矩形状である。

　前紐接合装置１４０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から切り出されるシート材Ｗａ１及びシート材Ｗａ２を重ね合わせ、重ね合わせられたシート材を搬送方向に直交する方向に１回以上折り畳んで所定箇所で接合し、これを搬送方向に所定の幅で切断した第１前紐１１ａを、第１シート材搬送装置１１０が搬送する第１シート材Ｗ１に接合する（図１０中のステップＡ４）。前紐接合装置１４０は、製造された衣服１において前側部材１０の所定位置に第１前紐１１ａが配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に第１前紐１１ａを接合する。接合方法は、溶着であっても、接着であってもよく、適宜選択されればよい。

　前紐接合装置１５０（図１３参照）は、前紐接合装置１４０と同様な態様で、シート材Ｗｂ１及びシート材Ｗｂ２から形成される第２前紐１１ｂを、第１シート材搬送装置１１０が搬送する第１シート材Ｗ１に接合する（図１０中のステップＡ５）。前紐接合装置１５０は、製造された衣服１において前側部材１０の所定位置に第２前紐１１ｂが配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に第２前紐１１ｂを接合する。接合方法は、溶着であっても、接着であってもよく、適宜選択されればよい。

　接着剤塗布装置１６０（図１３参照）は、第１シート材搬送装置１１０が搬送する第１シート材Ｗ１の外面（衣服１となった時に前側部材１０の外面となる面）であって、袖部材３０（第１袖部材３０Ｒ及び第２袖部材３０Ｌ）が接合される位置に接着剤を塗布する（図１０中のステップＡ６）。具体的には、接着剤塗布装置１６０は、第１シート材Ｗ１の外面の右側縁部であって、後段の工程で第１シート材Ｗ１上に載せられる第１袖部材３０Ｒが接触する位置に接着剤を塗布する。また、接着剤塗布装置１６０は、第１シート材Ｗ１の外面の左側縁部であって、後段の工程で第１シート材Ｗ１上に載せられる第２袖部材３０Ｌが接触する位置に接着剤を塗布する。限定するものではないが、接着剤塗布装置１６０が塗布する接着剤は、ホットメルト接着剤である。

　ここで一旦、第１シート材Ｗ１に対して行われる工程の説明を中断し、袖部材３０の形成工程について、図６、図１１、図１３を参照して説明する。

　袖部材３０は、主に、第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４とから構成される。

　第３シート材形成搬送装置２１０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から繰り出される不織布の袖用シート材Ｗ３ｎｗと原反ロール（図示せず）から繰り出される補強材の補強シート材Ｗ３ｒとを重ね合わせ（図６参照）、接合することで製造した第３シート材Ｗ３を、搬送する（図１１中のステップＢ１）。なお、図１３では、袖用シート材Ｗ３ｎｗと補強シート材Ｗ３ｒとを合流させ接合する機構の図示は省略している。

　伸縮材接合装置２０５は、搬送される第３シート材Ｗ３に対し、第３シート材Ｗ３を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材Ｅを配置し、接合する（図１１中のステップＢ２）。図１１中のステップＢ２の工程は、配置工程の一例である。

　第４シート材形成搬送装置２２０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から繰り出される不織布の袖用シート材Ｗ４ｎｗと原反ロール（図示せず）から繰り出される補強材の補強シート材Ｗ４ｒとを重ね合わせ（図６参照）、接合することで製造した第４シート材Ｗ４を、搬送する（図１１中のステップＢ３）。なお、図１３では、袖用シート材Ｗ４ｎｗと補強シート材Ｗ４ｒとを合流させ接合する機構の図示は省略している。

　なお、ここでは図示の都合上、ステップＢ１及びステップＢ２の後にステップＢ３を記載しているが、これは、ステップＢ１及びステップＢ２の後にステップＢ３が実行されることを意味するものではない。ステップＢ１及びステップＢ２と、ステップＢ３及び後述するステップＢ４と、は並列的に実行されればよい。

　伸縮材接合装置２１５は、搬送される第４シート材Ｗ４に対し、第４シート材Ｗ４を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材Ｅを配置し、接合する（図１１中のステップＢ４）。図１１中のステップＢ４の工程は、配置工程の一例である。

　伸縮材Ｅの取り付け後の第３シート材Ｗ３と、伸縮材Ｅの取り付け後の第４シート材Ｗ４とは、合流させられ（図１１のステップＢ５）、重ね合わせされた状態となる。重ね合わせされた状態の第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４は、第１方向Ｄ１に搬送される（図１３参照）。

　袖縁部接合装置２３０（図１３参照）は、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１（図６参照）に搬送される第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４とを部分的に接合する（図１１のステップＢ６）。具体的には、袖縁部接合装置２３０は、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４とを、第１方向Ｄ１と交差する方向に沿って、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の幅方向全体にわたって接合する（図６の、参照符号Ｂ６の上方に描画された太い実線参照）。より具体的には、袖縁部接合装置２３０は、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４のシート面に垂直な方向から見た時に、１の接合箇所と、第１方向Ｄ１においてこの接合箇所と隣接する接合箇所とが、袖部材３０の外形の上縁と下縁の形状に概ね一致するように、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の幅方向全体にわたって接合する。袖縁部接合装置２３０がこのように第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を接合することで、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４のシート面に垂直な方向から見ると、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、第２方向Ｄ２における他端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、が交互に配置された状態（ただし、袖部材３０同士が繋がった状態）になっている（図６参照）。

　袖縁部接合装置２３０による第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の接合方法は、熱溶着でもよいし、超音波溶着であってもよい。また、袖縁部接合装置２３０による第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の接合方法は、接着剤を用いた接着であってもよい。

　袖縁部カット装置２４０（図１３参照）は、第１方向Ｄにおいて袖縁部接合装置２３０の下流側に配置され、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の袖縁部接合装置２３０による接合箇所のそれぞれを、接合箇所の延びる方向に沿って、接合箇所の中央部で切断する（ステップＢ７）。言い換えれば、袖縁部カット装置２４０は、搬送されてくる第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４上の互いに連なった状態の袖部材３０を切り離し、他の袖部材３０とは独立した袖部材３０を形成する。

　上述の態様で、第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４との重ね合わせ、接合及び切断が行われることで（第１形成工程の一例としてのステップＢ５～Ｂ７の工程が行われることで）、衣服製造システム１００では、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される筒状の第１袖部材３０Ｒと、第２方向Ｄ２における他端側に袖口３２が配置される筒状の第２袖部材３０Ｌと、が交互に形成される。本実施形態では、第１袖部材３０Ｒは右袖として利用され、第２袖部材３０Ｌは左袖として利用される。このように、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から、第１袖部材３０Ｒと、第２袖部材３０Ｌと、を交互に形成することで、袖口３２側の開口がアームホール３４側の開口より小さな袖部材３０を形成する場合であっても（太さが一様ではない袖部材３０を形成する場合であっても）、端材の発生を抑制することができる。

　なお、袖部材３０では、袖口３２の伸縮材Ｅは、袖口３２を絞ることができるので有用である。しかし、アームホール３４側の伸縮材Ｅは特段不要であり、無い方が好ましい。そこで、例えば、衣服１の製造方法では、ステップＢ６及びステップＢ７の工程と同時に、あるいはその前後に、袖部材３０のアームホール３４となる部分に取り付けられる伸縮材Ｅを切断する切断工程を有することが好ましい。限定するものではないが、切断工程では、例えば、袖部材３０のアームホール３４となる部分に熱を加えることで、伸縮材Ｅを熱で切断する。

　第１形成工程の一例としてのステップＢ５～Ｂ７の工程が行われることで形成された袖部材３０は、位置調整装置２４５，２５０により、袖部材３０を第１シート材Ｗ１に重ね合わせる袖部材重ね合わせ装置２６０，２７０へと搬送される（ステップＢ８）。なお、位置調整装置２４５，２５０は、第１袖部材３０Ｒを袖部材重ね合わせ装置２６０へと搬送し、第２袖部材３０Ｌを袖部材重ね合わせ装置２７０へと搬送する。具体的に説明する。

　位置調整装置２４５は、位置調整装置２５０へと袖部材３０を搬送し、位置調整装置２５０に袖部材３０を引き渡す。なお、位置調整装置２４５は、袖部材３０の搬送方向において隣接する袖部材３０の間の距離を調整する機能を有する。例えば、位置調整装置２４５は、ローラと、ローラの外周に円周方向に沿って複数設けられた保持部材と、を有する（図示省略）。保持部材は、形成された袖部材３０を受け取り、保持する部材である。位置調整装置２４５は、ローラを回転させることで保持部材も回転させて袖部材３０を搬送する際に、保持部材のローラに対する相対位置をローラの周方向において変更することで、袖部材３０の搬送方向において隣接する袖部材３０の間の距離を広げる。

　位置調整装置２５０は、位置調整装置２４５から受け取った袖部材３０のうち、第１袖部材３０Ｒは袖部材重ね合わせ装置２６０へと搬送し、第２袖部材３０Ｌは袖部材重ね合わせ装置２７０へと搬送する。位置調整装置２５０は、少なくとも搬送方向と直交する方向（幅方向）において隣接する袖部材３０の間の距離を調整する機能を有する。例えば、位置調整装置２５０は、ローラと、ローラの外周に円周方向に沿って複数設けられた保持部材と、を有する（図示省略）。保持部材は、形成された袖部材３０を受け取り、保持する部材である。位置調整装置２５０は、ローラを回転させることで保持部材も回転させて袖部材３０を搬送する際に、ローラの回転軸方向に沿って、保持部材のローラに対する相対位置を変更することで、袖部材の搬送方向において隣接する袖部材３０の間の距離を広げる。

　このように位置調整装置２４５，２５０により、第１袖部材３０Ｒと第２袖部材３０Ｌの位置調整が行われることで、第１袖部材３０Ｒと第２袖部材３０Ｌとは、搬送途中で互いに異なる搬送経路を搬送されることとなり、それぞれ別の場所に搬送される。具体的には、第１袖部材３０Ｒは、袖部材重ね合わせ装置２６０へと搬送され、第２袖部材３０Ｌは袖部材重ね合わせ装置２７０へと搬送される。

　第１シート材Ｗ１に対して行う加工の説明に戻る。ここでは、主に図５、図１０、図１３を参照する。

　袖部材重ね合わせ装置２６０（図１３参照）は、搬送される第１シート材Ｗ１と、第１袖部材３０Ｒと、を重ね合わせる（図１０のステップＡ７）。図１０のステップＡ７は、第１重ね合わせ工程の一例である。袖部材重ね合わせ装置２６０は、製造された衣服１において前側部材１０の外面における所定位置に第１袖部材３０Ｒが配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に第１袖部材３０Ｒを重ね合わせる。

　なお、袖部材重ね合わせ装置２６０は、第１シート材Ｗ１と第１袖部材３０Ｒとを重ね合わせる際に、第１シート材Ｗ１の右側縁部の接着剤塗布装置１６０がホットメルト接着剤を塗布した部分に熱を加える。その結果、第１シート材Ｗ１と第１袖部材３０Ｒとが接合される。言い換えれば、図１０のステップＡ７は、第１シート材Ｗ１と袖部材３０とを接合する接合工程の一部でもある。

　袖部材重ね合わせ装置２７０（図１３参照）は、搬送される第１シート材Ｗ１と、第２袖部材３０Ｌと、を重ね合わせる（図１０のステップＡ８）。図１０のステップＡ８は、第１重ね合わせ工程の一例である。袖部材重ね合わせ装置２６０は、製造された衣服１において前側部材１０の外面における所定位置に第２袖部材３０Ｌが配置されるように、搬送されていく第１シート材Ｗ１に第２袖部材３０Ｌを重ね合わせる。

　なお、袖部材重ね合わせ装置２６０は、第１シート材Ｗ１と第２袖部材３０Ｌとを重ね合わせる際に、第１シート材Ｗ１の左側縁部の接着剤塗布装置１６０がホットメルト接着剤を塗布した部分に熱を加える。その結果、第１シート材Ｗ１と第２袖部材３０Ｌとが接合される。言い換えれば、図１０のステップＡ８は、第１シート材Ｗ１と袖部材３０とを接合する接合工程の一部でもある。

　ここで、再度第１シート材Ｗ１に対して行う加工の説明を中断し、第２シート材Ｗ２に対して行う加工について、図７、図１２、図１４を主に参照して説明する。

　第２シート材搬送装置３１０（図１４参照）は、例えば複数のローラを用いて、原反ロール（図示せず）から繰り出される第２シート材Ｗ２を搬送する（図１２中のステップＣ１）。図１２中のステップＣ１の工程は、前身頃及び後身頃の他方である（ここでは後身頃である）後側部材２０を形成するための第２シート材Ｗ２を搬送する第２搬送工程の一例である。なお、ここでは詳細な説明は省略するが、第２シート材Ｗ２は、シートが複数層積層されたシート材であってもよく、衣服１の製造工程は、複数のシートから複数層積層された第２シート材Ｗ２を製造する工程を含んでもよい。

　シート片接合装置３２０（図１３参照）は、原反ロール（図示せず）から繰り出されるシート材（図示せず）から切り出される首回りシート片２５を、第２シート材搬送装置３１０が搬送する第２シート材Ｗ２に接合する（図１２中のステップＣ２）。接合方法は、溶着であっても、接着剤を用いた接着であってもよく、適宜選択されればよい。なお、シート片接合装置３２０は、製造された衣服１において後側部材２０の内面の襟ぐり２４周りの所定位置に首回り部材２５ａ（首回りシート片２５が後段の工程で第２シート材Ｗ２と共に切断された結果、後側部材２０に残る部材）が配置されるように、搬送されていく第２シート材Ｗ２に首回りシート片２５を接合する。首回りシート片２５の形状は、適宜決定されればよいが、例えば矩形状である。

　スリット装置３３０（図１４参照）は、搬送されていく第２シート材Ｗ２に対し、第２シート材Ｗ２の幅方向（第２シート材Ｗ２の搬送方向と直交方向）における中間部分で、第２シート材Ｗ２の搬送方向にスリットを形成する（図１２のステップＣ３）。図１２のステップＣ３の工程は、第３形成工程の一例である。スリット装置３３０でスリットが形成された第２シート材Ｗ２は、第２右側シート材Ｗ２ａと第２左側シート材Ｗ２ｂとに分かれて搬送されていく。

　第２右側シート材Ｗ２ａに対しては、以下のような加工が行われる。

　首紐接合装置３４０は、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに、第２首紐２２ｂを接合する（図１２中のステップＣ４）。首紐接合装置３４０は、製造された衣服１において後側部材２０の外面の所定位置に第２首紐２２ｂが配置されるように、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに第２首紐２２ｂを接合する。なお、首紐接合装置３４０は、紐の接合位置や、接合する紐の長さ等が異なるだけで、機能的には前紐接合装置１４０，１５０と同様である。ここでは説明が冗長になるのを避けるため、首紐接合装置３４０についての詳細な説明は省略する。

　腰紐接合装置３５０は、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに、腰部内側紐２１ｂを接合する（図１２中のステップＣ５）。腰紐接合装置３５０は、製造された衣服１において後側部材２０の内面の所定位置に腰部内側紐２１ｂが配置されるように、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに腰部内側紐２１ｂを接合する。なお、腰紐接合装置３５０は、紐の接合位置や、接合する紐の長さ等が異なるだけで、機能的には前紐接合装置１４０，１５０と同様である。ここでは説明が冗長になるのを避けるため、首紐接合装置３４０についての詳細な説明は省略する。

　面ファスナ接合装置３６０は、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに、面ファスナ２２ｃを接合する（図１２中のステップＣ６）。面ファスナ接合装置３６０は、製造された衣服１において後側部材２０の内面の所定位置に面ファスナ２２ｃが配置されるように、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａに面ファスナ２２ｃを接合する。

　接着剤塗布装置３７０（図１４参照）は、搬送されていく第２右側シート材Ｗ２ａの外面（衣服１となった時に前側部材１０の外面となる面）であって、第１袖部材３０Ｒが接合される位置に接着剤を塗布する（図１２中のステップＣ７）。具体的には、接着剤塗布装置３７０は、第２右側シート材Ｗ２ａの右側縁部であって、後段の工程で第１袖部材３０Ｒが接触する位置に接着剤を塗布する。限定するものではないが、接着剤塗布装置３７０が塗布する接着剤は、ホットメルト接着剤である。

　次に、第２左側シート材Ｗ２ｂに対して行われる加工について説明する。なお、ここでは図示の都合上、ステップＣ４～ステップＣ７の後に、ステップＣ８～ステップＣ１０を記載しているが、これは、ステップＣ４～ステップＣ７の後にステップＣ８～ステップＣ１０が実行されることを意味するものではない。ステップＣ４～ステップＣと、ステップＣ８～ステップＣ１０とは、並列的に実行されればよい。

　腰紐接合装置３８０は、搬送されていく第２左側シート材Ｗ２ｂに、腰部外側紐２１ａを接合する（図１２中のステップＣ８）。腰紐接合装置３８０は、製造された衣服１において後側部材２０の外面の所定位置に腰部外側紐２１ａが配置されるように、搬送されていく第２左側シート材Ｗ２ｂに腰部外側紐２１ａを接合する。なお、腰紐接合装置３８０は、紐の接合位置や、接合する紐の長さ等が異なるだけで、機能的には前紐接合装置１４０，１５０と同様である。ここでは説明が冗長になるのを避けるため、腰紐接合装置３８０についての詳細な説明は省略する。

　首紐接合装置３９０は、搬送されていく第２左側シート材Ｗ２ｂに、第１首紐２２ａを接合する（図１２中のステップＣ９）。首紐接合装置３９０は、製造された衣服１において後側部材２０の外面の所定位置に第１首紐２２ａが配置されるように、搬送されていく第２左側シート材Ｗ２ｂに第１首紐２２ａを接合する。なお、首紐接合装置３９０は、紐の接合位置や、接合する紐の長さ等が異なるだけで、機能的には前紐接合装置１４０，１５０と同様である。ここでは説明が冗長になるのを避けるため、首紐接合装置３９０についての詳細な説明は省略する。

　接着剤塗布装置４００（図１４参照）は、搬送されていく第２左側シート材Ｗ２ｂの外面（衣服１となった時に前側部材１０の外面となる面）であって、第２袖部材３０Ｌが接合される位置に接着剤を塗布する（図１２中のステップＣ１０）。具体的には、接着剤塗布装置４００は、第２左側シート材Ｗ２ｂの左側縁部であって、後段の工程で第２袖部材３０Ｌが接触する位置に接着剤を塗布する。限定するものではないが、接着剤塗布装置４００が塗布する接着剤は、ホットメルト接着剤である。

　再び第１シート材Ｗ１に対して行う加工の説明に戻る。以下では、主に図５、図１０及び図１５を参照して、第１シート材Ｗ１に対して行う加工を説明する。

　第２シート材重ね合わせ装置４１０（図１５参照）は、第１シート材Ｗ１と重ね合わせられた第１袖部材３０Ｒが、第１シート材Ｗ１と第２右側シート材Ｗ２ａとの間に配置されるように、搬送される第１シート材Ｗ１と搬送される第２右側シート材Ｗ２ａ（第２シート材Ｗ２）とを重ね合わせる（図１０中のステップＡ９）。図１０中のステップＡ９は、第２重ね合わせ工程の一例である。

　なお、第２シート材重ね合わせ装置４１０は、第１シート材Ｗ１と第２右側シート材Ｗ２ａとを重ね合わせる際に、第２右側シート材Ｗ２ａの右側縁部の、接着剤塗布装置３７０がホットメルト接着剤を塗布した部分に熱を加える。その結果、第２右側シート材Ｗ２ａと第１袖部材３０Ｒとが接合される。言い換えれば、図１０のステップＡ９は、第２シート材Ｗ２（第２右側シート材Ｗ２ａ）と袖部材３０とを接合する接合工程の一部でもある。

　第２シート材重ね合わせ装置４２０（図１５参照）は、第１シート材Ｗ１と重ね合わせられた第２袖部材３０Ｌが、第１シート材Ｗ１と第２左側シート材Ｗ２ｂとの間に配置されるように、搬送される第１シート材Ｗ１と搬送される第２左側シート材Ｗ２ｂ（第２シート材Ｗ２）とを重ね合わせる（図１０中のステップＡ１０）。図１０中のステップＡ１０は、第２重ね合わせ工程の一例である。

　なお、第２シート材重ね合わせ装置４２０は、第１シート材Ｗ１と第２左側シート材Ｗ２ｂとを重ね合わせる際に、第２左側シート材Ｗ２ｂの左側縁部の、接着剤塗布装置４００がホットメルト接着剤を塗布した部分に熱を加える。その結果、第２左側シート材Ｗ２ｂと第２袖部材３０Ｌとが接合される。言い換えれば、図１０のステップＡ１０は、第２シート材Ｗ２（第２左側シート材Ｗ２ｂ）と袖部材３０とを接合する接合工程の一部でもある。

　ステップＡ９及びステップＡ１０の工程を経ることで、図１５の二点鎖線内に拡大して概略的に描画したように、第１シート材Ｗ１、第１袖部材３０Ｒ、第２袖部材３０Ｌ及び第２シート材Ｗ２が、この順番に配置された状態となる。また、ステップＡ９及びステップＡ１０の工程を経ることで、第１袖部材３０Ｒ及び第２袖部材３０Ｌは、第１シート材Ｗ１の外面（衣服１となった際に前側部材１０の外面となる面）と、第２シート材Ｗ２の外面（衣服１となった際に後側部材２０の外面となる面）と、の間に挟まれた状態となる。

　ステップＡ９及びステップＡ１０の工程を経て重ね合わせられた第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、更に下流に搬送されていく。

　なお、衣服製造システム１００では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の領域Ｚから１着の衣服１が形成される。領域Ｚは、図５に示すように、線分Ｘ１と、線分Ｘ２と、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の搬送方向と直交する方向における両縁部とに囲まれた領域である。線分Ｘ１及び線分Ｘ２は、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の長手方向と直交する、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の幅方向に延びる直線である。線分Ｘ１と線分Ｘ２とは、衣服１の全長である長さＬ３（図３参照）だけ離して配置されている。

　衣服１は、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の領域Ｚの大半の素材を使用して製造される。領域Ｚの第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の中で端材となるのは、衣服１に成形された際に衣服１の襟ぐり（前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４）となる位置に描画した仮想線Ｘ３と線分Ｘ１とにより囲まれた部分と、衣服１に成形された際に衣服１の肩部分の傾斜部（前側部材１０の肩部分１６の傾斜部１６ａ及び後側部材２０の肩部分２６の傾斜部２６ａ）となる位置に描画した仮想線Ｘ４と線分Ｘ１とにより囲まれた部分だけである。なお、ここでの線分Ｘ１は、衣服１に成形された際に衣服１の肩部分の水平部（前側部材１０の肩部分１６の水平部１６ｂ及び後側部材２０の肩部分２６の水平部２６ｂ）となる位置に描画した線分である。また、線分Ｘ２は、衣服１に成形された際に衣服１の裾（前側部材１０の裾１８及び後側部材２０の裾２８）となる位置に描画した線分である。

　さて、以下で説明するステップＡ１１及びＡ１２では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の領域Ｚから、１着の衣服１を形成するために、領域Ｚにおいて、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２とが、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に接合され、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２が、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に接合される。つまり、ステップＡ１１及びＡ１２の工程は、第２形成工程の一例である。

　ステップＡ１１では、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の搬送方向において、第２シート材重ね合わせ装置４２０よりも下流側に配置された身頃縁部接合装置１８０が、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２とを部分的に接合する。

　具体的には、身頃縁部接合装置１８０は、衣服１に成形された際に衣服１の脇部分から裾へと延びる部分と、衣服１に成形された際に衣服１の肩部分となる部分とにおいて、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２とを接合する（太い実線で示された部分）。

　言い換えれば、身頃縁部接合装置１８０は、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の搬送方向と直交する方向における両縁部であって、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２とが直接接触する部分を接合する。さらに、身頃縁部接合装置１８０は、第１シート材Ｗ１の衣服１に成形された際に前側部材１０の肩部分１６となる部分と、第２シート材Ｗ２の衣服１に成形された際に後側部材２０の肩部分２６となる部分と、を接合する。

　身頃縁部接合装置１８０による第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の接合方法は、熱溶着であってもよいし、超音波溶着であってもよい。また、身頃縁部接合装置１８０による第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の接合方法は、接着剤による接着であってもよい。

　ステップＡ１２では、身頃縁部カット装置１９０は、重ねられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の領域Ｚにおいて、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２を、衣服１の外縁の、肩部分の傾斜部（前側部材１０の肩部分１６の傾斜部１６ａ及び後側部材２０の肩部分２６の傾斜部２６ａ）及び襟ぐり（前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４）の形状に合わせて（形状に対応するように）切断する。

　図面を用いて詳しく説明すると、ステップＡ１２では、身頃縁部カット装置１９０は、図９において太線で示した、衣服１に成形された際に前側部材１０の肩部分１６の傾斜部１６ａ及び後側部材２０の肩部分２６の傾斜部２６ａになる部分を切る。また、身頃縁部カット装置１９０は、図９において太線で示した、衣服１に成形された際に前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４になる部分を切る。また、身頃縁部カット装置１９０は、図９において太線で示した、前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４の一端と、前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４の他端と、を結ぶ、線分１７の部分を切る。なお、この際に発生する端材（衣服１に成形された際に前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４になる部分と、線分１７とにより囲まれた部分）は、図示しない端材回収装置により回収される。

　一方で、身頃縁部カット装置１９０は、図９において破線で示した、衣服１に成形された際に前側部材１０の肩部分１６の水平部１６ｂ及び後側部材２０の肩部分２６の水平部２６ｂになる部分は切らない。衣服１に成形された際に前側部材１０の肩部分１６の水平部１６ｂ及び後側部材２０の肩部分２６の水平部２６ｂになる部分を切らないことで、身頃縁部カット装置１９０が第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２を切断しても、身頃縁部カット装置１９０よって切られる箇所より下流側の第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２と、身頃縁部カット装置１９０よって切られる箇所より上流側の第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２とは、繋がった状態にある。そのため、身頃縁部カット装置１９０よって切られる箇所より下流側で第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２を搬送すれば、身頃縁部カット装置１９０よって切られる箇所より上流側の第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２も搬送することができる。

　なお、ステップＡ１２では、身頃縁部カット装置１９０は、図１０に破線で示したように、線分１７の部分を切らなくてもよい。

　身頃縁部カット装置１９０で加工が行われた第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、更に下流に搬送されていく。

　折込装置１９５（図１５参照）は、身頃縁部カット装置１９０で加工が行われた後の、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の搬送される方向（第３方向Ｄ３、図５参照）と直交する方向における両端部を、第３方向に沿って内側に折り込む（図１０のステップＡ１３）。この結果、搬送されていく第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、搬送方向と直交する幅方向における幅が縮小された状態となる。

　折込装置１９５で折り込まれた第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２は、更に下流に搬送され、折込装置１９５の下流側に配置される分離装置２００は、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２から、衣服１の１着分の第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２（言い換えれば、衣服１の製造に用いられる領域Ｚの部分）を切り離す（図１０のステップＡ１４）。言い換えれば、分離装置２００は、第２形成工程（ステップＡ１１及びステップＡ１２）で形成された衣服１を、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２から分離する。ステップＡ１４の工程は、分離工程の一例であり、ステップＡ１４の工程を経ることで、１着の衣服１が、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２からは切り離されて、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２とは独立した状態になる。なお、この際に発生する端材は、図示しない端材回収装置により回収される。

　ステップＡ１４の後、更に衣服１のコンパクト化を図るため、衣服製造システム１００は、衣服１を更に折り畳む装置を有してもよい。ここでは、詳細な説明は省略する。

　（３）特徴
　以下に、上記実施形態の衣服１の製造方法の特徴について説明する。

　（３－１）
　上記実施形態の衣服１の製造方法は、第１搬送工程（ステップＡ１）と、第２搬送工程（ステップＣ１）と、第１形成工程（ステップＢ５，Ｂ６，Ｂ７）と、第１重ね合わせ工程（ステップＡ７，Ａ８）と、第２重ね合わせ工程（ステップＡ９，Ａ１０）と、第２形成工程（ステップＡ１１，Ａ１２）と、分離工程（ステップＡ１４）と、を備える。第１搬送工程では、第１部材の一例としての前側部材１０（前身頃）を形成するための第１シート材Ｗ１が搬送される。第２搬送工程では、第２部材の一例としての後側部材２０（後身頃）を形成するための第２シート材Ｗ２が搬送される。第１形成工程では、搬送される第３シート材Ｗ３と搬送される第４シート材Ｗ４とが重ね合わせられ、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４とを、部分的に接合し、所定の位置で切断することで、筒状の袖部材３０が形成される。第１重ね合わせ工程では、搬送される第１シート材Ｗ１と袖部材３０とが重ね合わせられる。第２重ね合わせ工程では、第１シート材Ｗ１と重ね合わせられた袖部材３０が、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２との間に配置されるように、搬送される第１シート材Ｗ１と搬送される第２シート材Ｗ２とが重ね合わせられる。特に、上記実施形態では、第２重ね合わせ工程において、第１シート材Ｗ１と重ね合わせられた第１袖部材３０Ｒが、第１シート材Ｗ１と第２右側シート材Ｗ２ａとの間に配置されるように、搬送される第１シート材Ｗ１と搬送される第２右側シート材Ｗ２ａとが重ね合わせられる。また、上記実施形態では、第２重ね合わせ工程において、第１シート材Ｗ１と重ね合わせられた第２袖部材３０Ｌが、第１シート材Ｗ１と第２左側シート材Ｗ２ｂとの間に配置されるように、搬送される第１シート材Ｗ１と搬送される第２左側シート材Ｗ２ｂとが重ね合わせられる。第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２が、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に接合される。また、第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２が、衣服１の外縁の形状に合わせて部分的に切断される。分離工程では、第２形成工程で形成された衣服が、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２から分離される。

　上記実施形態の衣服１の製造方法では、比較的単純な工程で衣服１を製造することができ、衣服１を効率良く製造することができる。

　また、上記実施形態の衣服１の製造方法では、前側部材１０を形成するための第１シート材Ｗ１と後側部材２０を形成するための第２シート材Ｗ２との間に袖部材３０が配置されるため、前側部材１０の外面となる部分及び袖部材３０を、後側部材２０で覆うことができる。その結果、上記実施形態の衣服１の製造方法では、製造された衣服１の前側部材１０の外面や袖部材３０に人の手等が触れて汚染される事態の発生を抑制でき、衛生的に優れた衣服を製造できる。

　さらに、上記実施形態の衣服１の製造方法では、後側部材２０についても、着用前の衣服１においてに外側に露出しているのは内面側であることから、着用前に後側部材２０の外面に人の手等が触れて汚染される事態の発生を抑制でき、衛生的に優れた衣服を製造できる。

　（３－２）
　上記実施形態に係る衣服１の製造方法は、第３形成工程（ステップＣ３）を備える。第３形成工程では、第２シート材Ｗ２に、第２シート材を搬送する方向に沿ってスリットが形成される。

　上記実施形態に係る衣服１の製造方法は、衣服１の着用前には、後側部材２０（後身頃）で前側部材１０（前身頃）の外面となる部分や袖部材３０の汚染を抑制しつつ、衣服１の着用時には、身体の後方側に後側部材２０を容易に配置することができる。ようするに、上記実施形態に係る衣服１の製造方法では、衛生面に優れ、かつ、着用が容易な衣服１を製造できる。

　（３－３）
　上記実施形態に係る衣服１の製造方法により製造される衣服１では、袖部材３０の袖口３２の開口の寸法が、袖部材３０のアームホール３４の開口の寸法より小さい。そして、袖部材の形成工程では、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から、第１袖部材３０Ｒと、第２袖部材３０Ｌと、が交互に形成される。第１袖部材３０Ｒは、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４において、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０である。第２袖部材３０Ｌは、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４において、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における他端側（第１袖部材３０Ｒとは反対側）に袖口３２が配置される袖部材３０である。

　上記実施形態に係る衣服１の製造方法で製造される衣服１の袖部材３０は、袖口３２の開口寸法が小さく、アームホール３４の開口寸法が大きい。そのため、この製造方法で製造された衣服は、着用時に腕を動かしやすく、かつ、袖口３２が作業の邪魔になりにくい。

　なお、第１袖部材３０Ｒでは、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４において、第２方向Ｄ２における一端（第１端部と呼ぶ）にシート材の量が少なくてもよい袖口３２が配置され、第２方向Ｄ２における他端（第２端部と呼ぶ）にシート材の量が多く必要なアームホール３４が配置される。一方、第２袖部材３０Ｌでは、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４において、第２方向Ｄ２における第２端部にシート材の量が少なくてもよい袖口３２が配置され、第２方向Ｄ２における第１端部にシート材の量が多く必要なアームホール３４が配置される。そのため、この衣服１の製造方法を用いれば、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から、第１袖部材３０Ｒ又は第２袖部材３０Ｌに相当する袖部材３０だけを連続的に製造する場合に比べ、袖部材３０の製造に必要となる素材の量を抑制できる。

　（３－４）
　上記実施形態の衣服１の製造方法は、第１配置工程（ステップＢ２）と、第２配置工程（ステップＢ４）と、を備える。第１配置工程では、搬送される第３シート材Ｗ３に対し、第３シート材Ｗ３を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材Ｅが配置される。第２配置工程では、搬送される第４シート材Ｗ４に対し、第４シート材Ｗ４を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材Ｅが配置される。

　この衣服１の製造方法では、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４のそれぞれに対し、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の搬送方向と直交する方向における両端部に伸縮材Ｅが配置されるため、袖部材３０の袖口３２に伸縮材Ｅを設けることができる。そのため、この製造方法で製造される衣服１では、袖口３２を伸縮材Ｅにより絞ることができ、袖口３２が作業の邪魔になりにくく、また、袖口３２から衣服１内に異物が侵入しにくい。

　（３－５）
　上記実施形態の衣服１の製造方法では、伸縮材Ｅは、袖部材３０の袖口３２となる部分及び袖部材３０のアームホール３４となる部分の両方に配置される。衣服１の製造方法は、袖部材３０のアームホール３４となる部分に取り付けられる伸縮材Ｅを切断する切断工程を備える。

　袖部材３０のアームホール３４部分に伸縮材Ｅが存在する場合、衣服１の製造中に、袖部材３０を形成するシート材Ｗ３，Ｗ４や、袖部材３０の取り付けられる第１シート材Ｗ１又は第２シート材Ｗ２に、皺が生じ、衣服１をきれいに製造できないおそれがある。また、袖部材３０のアームホール３４部分に伸縮材Ｅが存在すると、衣服１の着用の邪魔になるおそれがある。

　これに対し、この衣服１の製造方法では、袖部材３０のアームホール３４部分に取り付けられる伸縮材Ｅは切断されるため、伸縮材Ｅが、衣服１の製造の邪魔になったり、衣服１の着用の邪魔になったりする事態の発生を抑制できる。

　（３－６）
　上記実施形態の衣服１の製造方法は、接合工程（ステップＡ７，Ａ８，Ａ９，Ａ１０）を備える。接合工程は、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２との接合前に行われる。接合工程では、第１シート材Ｗ１と袖部材３０とが接合され、第２シート材Ｗ２と袖部材３０とが接合される。

　この衣服１の製造方法では、製造過程における袖部材３０の第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２に対する位置ずれを抑制できる。

　（３－７）
　上記実施形態の衣服１の製造方法は、衣服１の肩部分（前側部材１０の肩部分１６及び後側部材２０の肩部分２６）の衣服１の袖部材３０側の端部（１６ｃ，２６ｃ）は、衣服１の肩部分の衣服１の襟ぐり（前側部材１０の襟ぐり１４及び後側部材２０の襟ぐり２４）側の端部（１６ｄ，２６ｄ）よりも衣服１の裾（前側部材１０の裾１８及び後側部材２０の裾２８）の近くに配置される。第２形成工程では、衣服１の外縁の肩部分の少なくとも一部（前側部材１０の肩部分１６の傾斜部１６ａ及び後側部材２０の肩部分２６の傾斜部２６ａ）の形状に合わせて、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２が切断される。

　この製造方法で製造される衣服１は、肩部分が襟ぐり側から袖部に向って低くなる形状である。そのため、この製造方法で製造される衣服１は、身体にフィットしやすい。

　（３－８）
　上記実施形態の衣服１の製造方法は、折り込み工程（ステップＡ１３）を備える。折り込み工程は、第２成形工程（ステップＡ１１，Ａ１２）後であって、分離工程（ステップＡ１４）前に、重ね合わせられた状態で第３方向Ｄ３に搬送される第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２に対して行われる。折り込み工程では、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２の、第３方向Ｄ３と直交する方向における両端部が、第３方向Ｄ３に沿って内側に折り込まれる。

　この衣服１の製造方法では、製造される衣服１のコンパクト化を図ることができる。

　（４）変形例
　以下に、上記実施形態の変形例を説明する。なお、以下の変形例は、互いに矛盾しない範囲で適宜組み合わされてもよい。

　（４－１）変形例Ａ
　前側部材１０及び後側部材２０に設けられる結束用の紐や面ファスナの位置や数は、例示であって、適宜変更可能である。また、結束用の紐や面ファスナは、適宜省略されてもよい。

　（４－２）変形例Ｂ
　上記実施形態のステップＣ３の工程では、第２シート材Ｗ２に、第２シート材Ｗ２を搬送する方向に沿ってスリットが形成される。

　しかし、これに限定されるものではなく、ステップＣ３の工程では、第２シート材Ｗ２に、第２シート材Ｗ２を搬送する方向に沿って、スリットの代わりに、ミシン目が形成されてもよい。なお、この場合には、第２シート材Ｗ２は分離されない。そのため、図１２のステップＣ４～Ｃ１０の工程は、１枚のシート材（第２シート材Ｗ２）に対して行われることとなる。また、この場合には、図１０のステップＡ９及びステップＡ１０のように２回に分けて第２右側シート材Ｗ２ａ及び第２左側シート材Ｗ２ｂが第１シート材Ｗ１に重ね合わせられるのではなく、第２シート材Ｗ２が１回の工程で第１シート材Ｗ１に重ね合わされることとなる。また、この場合に製造される衣服１は、上記実施形態のように、右後側部材２０Ｒと左後側部材２０Ｌとが重なり合う構成にはならない。そして、スリットの代わりに、ミシン目２３が形成されている衣服１（図１６参照）を着用する際には、衣服１の着用を補助する補助者等が、ミシン目２３部分を切り取った後、後側部材２０を着用者の背面側に配置させることとなる。

　また、ステップＣ３の工程は省略されてもよい。この場合には、衣服１着用する際には、衣服１の着用を補助する補助者等が、上下方向に沿って後側部材２０を所定の箇所でカットし（例えば、後側部材２０に描画された切り取り線に沿って後側部材２０をカットし）、後側部材２０を着用者の背面側に配置させることとなる。

　（４－３）変形例Ｃ
　上記実施形態では、第１シート材Ｗ１と袖部材３０とが重ね合わせられ、その後に、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２とが重ね合わせられる。ただし、これに限定されるものではなく、第２シート材Ｗ２と袖部材３０とが重ね合わせられ、その後に、第２シート材Ｗ２と第１シート材Ｗ１とが重ね合わせられてもよい。

　（４－４）変形例Ｄ
　上記実施形態の製造方法で製造される衣服１では、袖部材３０の袖口３２の開口の寸法が、袖部材３０のアームホール３４の開口の寸法より小さい。ただし、これに限定されるものではなく、袖部材３０の袖口３２の開口の寸法と、袖部材３０のアームホール３４の開口の寸法とは同一であってもよい。言い換えれば、袖部材３０の太さは一様であってもよい。

　（４－５）変形例Ｅ
　上記実施形態の製造方法ででは、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４とから、右袖となる袖部材３０と、左袖となる袖部材３０とが製造される。ただし、これに限定されるものではなく、右袖となる袖部材３０が一対のシート材から製造され、左袖となる袖部材３０は、右袖となる袖部材３０とは別の一対のシート材から製造されてもよい。言い換えれば、右袖となる袖部材３０と、左袖となる袖部材３０とは、それぞれ異なる装置で製造されてもよい。ただし、この場合には、右袖用の製造装置と左袖用の製造装置とがそれぞれ必要になり、衣服製造システムのコスト増に繋がる可能性がある。

　（４－６）変形例Ｆ
　上記実施形態の製造方法では、ステップＡ７，Ａ８，Ａ９，Ａ１０において、第１シート材Ｗ１と袖部材３０との接合及び第２シート材Ｗ２と袖部材３０との接合が完了する。

　ただし、これに限定されるものではなく、ステップＡ７，Ａ８，Ａ９，Ａ１０では、第１シート材Ｗ１と袖部材３０との仮止め及び第２シート材Ｗ２と袖部材３０との仮止めが行われてもよい。そして、ステップＡ１１で、第１シート材Ｗ１と第２シート材Ｗ２との接合が行われる際に、第１シート材Ｗ１と袖部材３０との接合及び第２シート材Ｗ２と袖部材３０との接合が行われてもよい。なお、接合手段として、熱溶着や超音波溶着が選択される場合であっても、その出力を調節することで、第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４とが溶着することは避けつつ、第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２と袖部材３０とを接合することができる。

　（４－７）変形例Ｇ
　上記実施形態で説明した衣服１の製造方法は、本願発明の一例に過ぎず、適宜変更可能である。

　例えば、上記実施形態では、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４に対して伸縮材Ｅが取り付けられるが、この工程については省略されてもよい。

　また、例えば、上記実施形態では、折込装置１９５が衣服１を折り畳んだ後に、衣服１が第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２から分離されるが、逆に、衣服１が第１シート材Ｗ１及び第２シート材Ｗ２から分離された後に、衣服１が折り畳まれてもよい。

　（４－８）変形例Ｈ
　上記実施形態で説明した衣服１は、肩部分１６，２６が傾斜部１６ａ，２６ａを有するが、これに限定されるものではない。肩部分１６，２６は、全体が水平部１６ｂ，２６ｂにより構成されてもよい。

　（４－９）変形例Ｉ
　上記実施形態の衣服の製造方法では、第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を切断することで（両シートの接合・切断だけで）、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、第２方向Ｄ２における他端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、が交互に形成される。

　ただし、本開示の衣服の製造方法は、このような態様に限定されるものではない。例えば、本開示の衣服の製造方法では、第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を切断して（両シートの接合・切断を経て）、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０だけを一旦形成してもよい。そして、袖部材３０を形成した後に、袖部材３０を搬送しつつ、搬送方向に沿って、搬送方向と直交する方向における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、搬送方向と直交する方向における他端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、が交互に配置されるように、袖部材３０の搬送姿勢の変更を行ってもよい。

　このような構成でも、結果として、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４から、右袖として利用される袖部材と、左袖として利用される袖部材３０との両方が製造される。

　（４－１０）変形例Ｊ
　上記実施形態の製造方法では、袖縁部カット装置２４０は、袖縁部接合装置２３０による第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４との接合箇所のそれぞれを、接合箇所の延びる方向に沿って、接合箇所の中央部で切断している。この工程の終了時点では、図１７のように、第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４との接合箇所Ｊ（ハッチングを付した部分）が袖部材３０の外側に張り出した状態となる。

　袖部材３０において、このような第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４との接合箇所Ｊが外側に張り出した状態のままで衣服１が製造されると（着用時に接合箇所Ｊが外側に配置されるような形態で衣服１が製造されると）、衣服１の使用時に、接合箇所Ｊが例えば手術中に患者の臓器に引っ掛かる、接触する等の事象が発生し、接合箇所Ｊが、患者の臓器を不用意に傷つけてしまう可能性が考えられる。また、このような衣服１は、見栄えも低下するおそれがある。

　このような観点から、衣服１の製造方法には、裏返し工程が含まれてもよい。裏返し工程は、筒状の袖部材３０を形成する第１形成工程と、第１形成工程により形成された袖部材３０を、第１重ね合わせ工程において第１シート材と重ね合わせる前に実行される工程である。裏返し工程は、第１形成工程の際に外側に配置されている袖部材３０の面が内側に配置されるように、袖部材３０を裏返す工程である。

　裏返し工程は、具体的には、例えば、第１形成工程により形成された、図１７のように第１面Ｆ１（接合箇所Ｊが露出している側）を外側に向けた袖部材において、袖口３２側を把持し、袖口３２が、アームホール３４側の、第３シート材Ｗ３と第４シート材Ｗ４との間に形成されている開口を通過するように袖口３２を移動させることで、第１面Ｆ１が筒状の袖部材３０の内部に配置されるようにする工程である。

　裏返し工程を含む袖部材３０の形成工程の一例について、図１８を参照しながら説明する。なお、ここでは、変形例Ｉのように、第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を接合・切断することで、第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０だけを形成する場合を例に説明する。

　ここで説明する袖部材３０の形成工程も、図１８中のステップＢ１～ステップＢ６の工程については、上記実施形態の袖部材３０の形成工程と、ステップＢ２及びステップＢ４が一部異なる以外は同様であるので、ここでは相違点だけを説明する。

　ここでは、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を接合・切断することで、第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０だけを形成するため、ステップＢ２及びステップＢ４では、第２方向Ｄ２の両端に伸縮材Ｅを配置する必要はなく、第２方向Ｄ２のうち、袖口３２となる側にだけ伸縮材Ｅが配置されればよい。なお、図１８の製造フローでは、アームホール３４側には伸縮材Ｅが配置されないので、アームホール３４側の伸縮材Ｅを切断する工程も不要である。

　ステップＢ７ａでは、上記実施形態と同様に、袖縁部カット装置２４０が、重ね合わせられた状態で第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の袖縁部接合装置２３０による接合箇所のそれぞれを、接合箇所の延びる方向に沿って、接合箇所の中央部で切断する。ただし、好ましくは、袖縁部カット装置２４０は、第２方向Ｄ２において、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４の全体を切断しない。そのため、ステップＢ７ａ終了時点では、ステップＢ７ａの構成を経て形成される袖部材３０は、第２方向Ｄ２におけるアームホール３４側で、第１方向Ｄ１において隣接する袖部材３０と連なった状態にある（図１８参照）。

　次に、図１８中の、参照符号Ｒ１で示した位置で、袖部材３０は、裏返し装置（送風機，吸引機，ロボットアーム等）により裏返される。裏返しの方法については、上述のとおりである。

　その後、図１８中の、参照符号Ｂ７ｂで示した位置で、第１方向Ｄ１において隣接する袖部材３０同士が切断装置により切り離されて、袖部材３０は互いに独立した状態となる。

　ステップＢ７ｂの終了後に、袖部材３０は、上記実施形態のステップＢ８と同様に、位置調整装置２４５，２５０により次の工程へと搬送されていく（ステップＢ８ａ）。ただし、図１８に示すフローでは、第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を接合・切断することで（ステップＢ６及びステップＢ７ａの工程を経て）、第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０だけが形成される。そのため、ステップＢ８ａでは、位置調整装置２４５，２５０は、変形例Ｉで説明したように、袖部材３０の搬送方向に沿って、搬送方向と直交する方向における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、搬送方向と直交する方向における他端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、が交互に配置されるように、袖部材３０の搬送姿勢を変更するという処理も合わせて行う。

　なお、図１８を参照して説明した袖部材３０の形成工程は一例に過ぎず、適宜、変更されてもよい。

　例えば、裏返し工程Ｒ１は、袖部材３０が、互いに独立する部材となった後に行われてもよい。

　また、上記実施形態で説明した、第１方向Ｄ１に搬送される第３シート材Ｗ３及び第４シート材Ｗ４を切断することで（両シートの接合・切断だけで）、第１方向Ｄ１と直交する第２方向Ｄ２における一端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、第２方向Ｄ２における他端側に袖口３２が配置される袖部材３０と、を交互に形成する場合にも、裏返し工程Ｒ１が採用されてもよい。

　＜付記＞
　最後に、上記実施形態及び別例（変形例）から把握できる技術的思想について以下に追記する。

　本発明の第１観点に係る衣服の製造方法は、第１搬送工程と、第２搬送工程と、第１形成工程と、第１重ね合わせ工程と、第２重ね合わせ工程と、第２形成工程と、分離工程と、を備える。第１搬送工程では、第１部材を形成するための第１シート材が搬送される。第２搬送工程では、第２部材を形成するための第２シート材が搬送される。第１部材は、前身頃及び後身頃の一方であり、第２部材は、前身頃及び後身頃の他方である。第１形成工程では、搬送される第３シート材と搬送される第４シート材とを重ね合わせ、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材と第４シート材とを、部分的に接合し、所定の位置で切断することで、筒状の袖部材が形成される。第１重ね合わせ工程では、搬送される第１シート材と袖部材とが重ね合わせられる。第２重ね合わせ工程では、第１シート材と重ね合わせられた袖部材が、第１シート材と第２シート材との間に配置されるように、搬送される第１シート材と搬送される第２シート材とが重ね合わせられる。第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服の外縁の形状に合わせて部分的に接合される。また、第２形成工程では、重ね合わせられた状態で搬送される第１シート材及び第２シート材が、衣服の外縁の形状に合わせて部分的に切断される。分離工程では、第２形成工程で形成された衣服が、第１シート材及び第２シート材から分離される。

　第１観点の衣服の製造方法では、比較的単純な工程で衣服を製造でき、衣服を効率良く製造することができる。

　また、第１観点に係る衣服の製造方法では、第１部材を形成するための第１シート材と第２部材を形成するための第２シート材との間に袖部材が配置されるため、前身頃の外面（前面）となる部分及び袖部材を、後身頃で覆うことができる。その結果、第１観点に係る衣服の製造方法では、製造された衣服の前身頃の外面や袖部材に人の手等が触れて汚染される事態の発生を抑制可能な、衛生的に優れた衣服を製造できる。

　本発明の第２観点に係る衣服の製造方法は、第１観点の衣服の製造方法であって、第３形成工程、を更に備える。第３形成工程では、第１シート材に、第１シート材を搬送する方向に沿ってスリット又はミシン目が形成される。あるいは、第３形成工程では、第２シート材に、第２シート材を搬送する方向に沿ってスリット又はミシン目が形成される。

　第２観点に係る衣服の製造方法では、後身頃となる部材にスリット又はミシン目を形成できる。その結果、衣服の着用前には、後身頃で前身頃の外面となる部分や袖部材の汚染を抑制しつつ、衣服の着用時には、身体の後方側に後身頃を容易に配置することができる。要するに、第２観点に係る衣服の製造方法では、衛生面に優れ、かつ、着用が容易な衣服を製造できる。

　本発明の第３観点に係る衣服の製造方法は、第１観点又は第２観点の衣服の製造方法であって、製造方法により製造される衣服では、袖部材の袖口の開口の寸法が、袖部材のアームホールの開口の寸法より小さい。袖部材の形成工程では、重ね合わせられた状態で第１方向に搬送される第３シート材及び第４シート材から、第１袖部材と、第２袖部材と、が交互に形成される。第１袖部材は、重ね合わせられた状態で第１方向に搬送される第３シート材及び第４シート材において、第１方向と直交する第２方向における一端側に袖口が配置される袖部材である。第２袖部材は、重ね合わせられた状態で第１方向に搬送される第３シート材及び第４シート材において、第１方向と直交する第２方向における他端側（第１袖部材とは反対側）に袖口が配置される袖部材である。

　第３観点に係る衣服の製造方法で製造される衣服の袖部材は、袖口の開口寸法が小さく、アームホールの開口寸法が大きいため、第３観点に係る衣服の製造方法では、着用時に腕を動かしやすく、かつ、袖口が作業の邪魔になりにくい衣服を製造できる。

　なお、第１袖部材では、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材及び第４シート材において、第２方向における一端（第１端部と呼ぶ）にシート材の量が少なくてもよい袖口が配置され、第２方向における他端（第２端部と呼ぶ）にシート材の量が多く必要なアームホールが配置される。一方、第２袖部材では、重ね合わせられた状態で搬送される第３シート材及び第４シート材において、第２方向における第２端部にシート材の量が少なくてもよい袖口が配置され、第２方向における第１端部にシート材の量が多く必要なアームホールが配置される。そのため、第３観点に係る衣服の製造方法を用いれば、第３シート材及び第４シート材から、第１袖部材又は第２袖部材に相当する袖部材だけを連続的に製造する場合に比べ、袖部材の製造における端材の発生を抑制できる。

　本発明の第４観点に係る衣服の製造方法は、第３観点の衣服の製造方法であって、第１配置工程と、第２配置工程と、を更に備える。第１配置工程では、搬送される第３シート材に対し、第３シート材を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材が配置される。第２配置工程では、搬送される第４シート材に対し、第４シート材を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材が配置される。

　第４観点に係る衣服の製造方法では、第３シート及び第４シートのそれぞれに対し、第３シート及び第４シートの搬送方向と直交する方向における両端部に伸縮材が配置されるため、袖部材の袖口に伸縮材を設けることができる。そのため、第４観点の製造方法で製造される衣服では、袖口を伸縮材により絞ることができ、袖口が作業の邪魔になりにくく、また、袖口から衣服内に異物が侵入しにくい。

　本発明の第５観点に係る衣服の製造方法は、第４観点の衣服の製造方法であって、伸縮材は、袖部材の袖口となる部分及び袖部材のアームホールとなる部分の両方に配置される。衣服の製造方法は、袖部材のアームホールとなる部分に取り付けられる伸縮材を切断する切断工程を更に備える。

　袖部材のアームホール部分に伸縮材が存在する場合、衣服の製造中に、袖部材を形成するシートや、袖部材の取り付けられる第１シート材又は第２シート材に、皺が生じ、衣服をきれいに製造できないおそれがある。また、袖部材のアームホール部分に伸縮材が存在すると、衣服の着用の邪魔になるおそれがある。

　これに対し、第５観点に係る衣服の製造方法では、袖部材のアームホール部分に取り付けられる伸縮材は切断されるため、伸縮材が、衣服製造の邪魔になったり、衣服着用の邪魔になったりする事態の発生を抑制できる。

　本発明の第６観点に係る衣服の製造方法は、第１観点から第５観点のいずれかの衣服の製造方法であって、接合工程を更に備える。接合工程は、第１シート材と第２シート材との接合前に行われる。接合工程では、第１シート材と袖部材とが接合され、第２シート材と袖部材とが接合される。

　第６観点に係る衣服の製造方法では、製造過程における袖部材の第１シート材及び第２シート材に対する位置ずれを抑制できる。

　本発明の第７観点に係る衣服の製造方法は、第１観点から第６観点のいずれかの衣服の製造方法であって、衣服の肩部分の衣服の袖部材側の端部は、衣服の肩部分の衣服の襟ぐり側の端部よりも衣服の裾の近くに配置される。第２形成工程では、衣服の外縁の肩部分の少なくとも一部の形状に合わせて、第１シート材及び第２シート材が切断される。

　第７観点に係る製造方法で製造される衣服の肩部分は、襟ぐり側から袖部に向って低くなる形状である。そのため、第７観点に係る製造方法で製造される衣服は、身体にフィットしやすい。

　本発明の第８観点に係る衣服の製造方法は、第１観点から第７観点のいずれかの衣服の製造方法であって、折り込み工程を更に備える。折り込み工程は、第２形成工程後であって、分離工程前に、重ね合わせられた状態で第３方向に搬送される第１シート材及び第２シート材に対して行われる。折り込み工程では、第１シート材及び第２シート材の、第３方向と直交する方向における両端部が、第３方向に沿って内側に折り込まれる。

　第８観点に係る衣服の製造方法では、製造される衣服のコンパクト化を図ることができる。

　本発明の第９観点に係る衣服の製造方法は、第１観点から第８観点のいずれかの衣服の製造方法であって、裏返し工程を更に備える。裏返し工程は、第１形成工程により形成された袖部材を、第１重ね合わせ工程において第１シート材と重ね合わせる前に実行される。裏返し工程では、第１形成工程の際に外側に配置されている袖部材の面が、内側に配置されるように、袖部材が裏返される。

　第９観点に係る衣服の製造方法では、袖部材の第３シート材及び第４シート材の接合箇所を袖部材の内部に配置できるため、袖部材の接合箇所が外側に張り出し、衣服の着用者の作業の邪魔になる事態の発生を抑制できる。また、第９観点に係る衣服の製造方法では、袖部材の第３シート材及び第４シート材の接合箇所を袖部材の内部に配置できるため、製造される衣服の見栄えが良い。

１　　　　　　　衣服
１０　　　　　　前側部材（第１部材）
１４　　　　　　襟ぐり
１６　　　　　　肩部分
１６ａ　　　　　傾斜部
１６ｂ　　　　　水平部
２０　　　　　　後側部材（第２部材）
２３　　　　　　ミシン目
２４　　　　　　襟ぐり
２６　　　　　　肩部分
２６ａ　　　　　傾斜部
２６ｂ　　　　　水平部
３０　　　　　　袖部材
３０Ｒ　　　　　第１袖部材
３０Ｌ　　　　　第２袖部材
３２　　　　　　袖口
３４　　　　　　アームホール
Ｅ　　　　　　　伸縮材
Ｗ１　　　　　　第１シート材
Ｗ２　　　　　　第２シート材
Ｗ３　　　　　　第３シート材
Ｗ４　　　　　　第４シート材

Claims

　衣服の製造方法であって、
　前身頃及び後身頃の一方である第１部材を形成するための第１シート材を搬送する第１搬送工程と、
　前記前身頃及び前記後身頃の他方である第２部材を形成するための第２シート材を搬送する第２搬送工程と、
　搬送される第３シート材と搬送される第４シート材とを重ね合わせ、重ね合わせられた状態で搬送される前記第３シート材と前記第４シート材とを、部分的に接合し、所定の位置で切断することで、筒状の袖部材を形成する第１形成工程と、
　搬送される前記第１シート材と前記袖部材とを重ね合わせる第１重ね合わせ工程と、
　前記第１シート材と重ね合わせられた前記袖部材が、前記第１シート材と前記第２シート材との間に配置されるように、搬送される前記第１シート材と搬送される前記第２シート材とを重ね合わせる第２重ね合わせ工程と、
　重ね合わせられた状態で搬送される前記第１シート材及び前記第２シート材を、前記衣服の外縁の形状に合わせて部分的に接合すると共に、重ね合わせられた状態で搬送される前記第１シート材及び前記第２シート材を、前記衣服の外縁の形状に合わせて部分的に切断する第２形成工程と、
　前記第２形成工程で形成された前記衣服を、前記第１シート材及び前記第２シート材から分離する分離工程と、
を備える、衣服の製造方法。
　前記第１シート材に、前記第１シート材を搬送する方向に沿ってスリット又はミシン目を形成する工程、又は、前記第２シート材に、前記第２シート材を搬送する方向に沿ってスリット又はミシン目を形成する第３形成工程、を更に備える、
請求項１に記載の衣服の製造方法。
　前記袖部材の袖口の開口の寸法は、前記袖部材のアームホールの開口の寸法より小さく、
　前記第１形成工程では、重ね合わせられた状態で第１方向に搬送される前記第３シート材及び前記第４シート材から、前記第１方向と直交する第２方向における一端側に前記袖口が配置される第１袖部材と、前記第２方向における他端側に前記袖口が配置される第２袖部材と、が交互に形成される、
請求項１又は２に記載の衣服の製造方法。
　搬送される前記第３シート材に対し、前記第３シート材を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材を配置する第１配置工程と、
　搬送される前記第４シート材に対し、前記第４シート材を搬送する方向と直交する方向における両端部に伸縮材を配置する第２配置工程と、
を更に備える、
請求項３に記載の衣服の製造方法。
　前記伸縮材は、前記袖部材の前記袖口となる部分及び前記袖部材の前記アームホールとなる部分の両方に配置され、
　前記衣服の製造方法は、前記袖部材の前記アームホールとなる部分に取り付けられる前記伸縮材を切断する切断工程を更に備える、
請求項４に記載の衣服の製造方法。
　前記第１シート材と前記第２シート材との接合前に、前記第１シート材と前記袖部材とを接合し、前記第２シート材と前記袖部材とを接合する接合工程を更に備える、
請求項１から５のいずれか１項に記載の衣服の製造方法。
　前記衣服の肩部分の前記袖部材側の端部は、前記衣服の肩部分の前記衣服の襟ぐり側の端部よりも前記衣服の裾の近くに配置され、
　前記第２形成工程では、前記衣服の外縁の肩部分の少なくとも一部の形状に合わせて、前記第１シート材及び前記第２シート材が切断される、
請求項１から６のいずれか１項に記載の衣服の製造方法。
　前記第２形成工程後であって、前記分離工程前に、重ね合わせられた状態で第３方向に搬送される前記第１シート材及び前記第２シート材に対して行われる、前記第１シート材及び前記第２シート材の前記第３方向と直交する方向における両端部を、前記第３方向に沿って内側に折り込む折り込み工程、を更に備える、
請求項１から７のいずれか１項に記載の衣服の製造方法。
　前記第１形成工程により形成された前記袖部材を、前記第１重ね合わせ工程において前記第１シート材と重ね合わせる前に実行される、前記袖部材を裏返して、前記第１形成工程の際に外側に配置されている前記袖部材の面を内側に配置する裏返し工程、を更に備える、
請求項１から８のいずれか１項に記載の衣服の製造方法。