WO2023149163A1 - シェル形ころ軸受およびシェル形ころ軸受の固定構造 - Google Patents
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Abstract
シェル外輪(11)は、円筒形状の外輪本体(12)と、外輪本体(12)の軸線方向両端縁から内径側に突出する鍔部(14)と、外輪本体(12)と鍔部(14)を結合し外側表面が丸みを帯びた膨らみ面にされる丸み部(16)とを含む。外輪本体(12)の軸線方向外側の外周面は、軸線方向外側に向かうほど徐々に縮径するテーパ面(17)にされる。テーパ面(17)は丸み部(16)の膨らみ面と滑らかに接続する。シェル外輪(11)の中心軸線を含む平面でシェル外輪(11)を切断して現れる切断面に関し、膨らみ面の断面線と重なる仮想円(16c)が、テーパ面(17)の断面線よりも内径側に位置する。
Description
本発明は、ラジアル荷重を受け持つシェル形ころ軸受のシェル外輪に関する。
カーエアコン用コンプレッサに組み込まれるシェル形針状ころ軸受として従来、例えば特開2008―038986号公報(特許文献1)に記載されるように、シェル外輪と、シェル外輪の内径側に組み込まれる保持器と、保持器に保持される転動体としての針状ころとを備えるものが知られている。特許文献1のシェル外輪では、軸方向外側に位置する軸方向両端部が内径側に180°折り返されて形成される。また、軸方向両端部の外周面がテーパ形状に形成される。これらのテーパ角は5度~25度である。この理由として、テーパ角が5度~25度であると、テーパ面によって開口への導入が案内されるため、ハウジングの開口にシェル外輪を圧入する際にシェル外輪の倒れやかじりを抑制でき、汎用の工具を用いてもスムーズな組付けを行うことができる、というものである。テーパ角が5度未満であると、シェル外輪がハウジングの開口に圧入する際の嵌合幅を十分確保できず、ハウジングに対するシェル外輪の座りが不十分になる、というものである。
近年の軽量化の要請に従い、シェル形針状ころ軸受が圧入される軸箱はアルミニウム等を主成分とする軽合金系軸箱が使用されることが多くなってきている。軽合金系軸箱では、鉄系軸箱に比べてシェル外輪のかじりが発生するリスクが上がる。かじり対策として特許文献1では、シェル外輪の軸線方向端部外周に5度以上25度以下のテーパを付けることを推奨としているが、テーパ面の軸方向外側端が稜線のように尖ってエッジが立ってしまう。そうするとエッジが軸箱の内径面に当接してかじりが発生する懸念がある。
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりもかじりの発生を防止することができるシェル外輪を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるシェル形ころ軸受は、シェル外輪と、シェル外輪の中に組み込まれる保持器と、保持器に保持されてシェル外輪の内径面を転動するころとを備える。シェル外輪は、軸箱の丸孔に圧入固定される円筒形状の外輪本体と、外輪本体の軸線方向両端縁から内径側に突出する鍔部と、外輪本体と鍔部を結合し外側表面が丸みを帯びた膨らみ面にされる丸み部とを含む。外輪本体の軸線方向一端縁を含む外周面は、軸線方向外側に向かうほど徐々に縮径する傾き面にされ、傾き面は丸み部の膨らみ面と滑らかに接続し、シェル外輪の中心軸線を含む平面で当該シェル外輪を切断して現れる切断面に関し、膨らみ面の断面線と重なる仮想円が、傾き面の断面線よりもシェル外輪の内径側に位置する。
かかる本発明によれば、外輪本体の傾き面と、丸み部の膨らみ面との接続箇所が稜線にならず、エッジが立たない。したがって軸箱の外側からシェル形ころ軸受を軸箱の丸孔に圧入する際、シェル外輪と軸箱のかじりが防止される。内径側に位置するとは、中心軸線に近いことをいう。なお仮想円は、外輪本体の断面よりもシェル外輪の内径側に位置する。
本発明の一局面として、シェル外輪の外径寸法Dと、前記シェル外輪の全長寸法Lが、0.5≦D/L≦10を満足する。
本発明の好ましい局面として、仮想円の半径Rが、0.5[mm]≦R≦2.5[mm]を満足する。かかる局面によれば、本発明のシェル形ころ軸受が自動車の自動変速機に好適に組み込まれる。
本発明のさらに好ましい局面として、外輪本体の外周面の算術表面粗さRaは、0.5以下である。かかる局面によれば、本発明のシェル形ころ軸受を軸箱の丸孔に円滑に圧入することができる。
本発明の一局面として、シェル形ころ軸受の固定構造は、上述したシェル形ころ軸受と、シェル外輪の外径寸法よりも小さな内径寸法の丸孔を有し当該丸孔の内径面がシェル外輪の外輪本体の外周面と負すきまで密着する軽合金製の軸箱とを具備する。
本発明の一局面として、丸孔の前記内径面の算術表面粗さRaは、1.6以下である。かかる局面によれば、本発明のシェル形ころ軸受を軸箱の丸孔に円滑に圧入することができる。
このように本発明によれば、シェル外輪と軸箱のかじりを防止することができる。またシェル形ころ軸受は、正しい姿勢で軸箱の孔に圧入される。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になるシェル形ころ軸受を示す縦断面図である。図2は、軸箱の丸孔に圧入固定された同実施形態を示す縦断面図である。シェル形ころ軸受10は、シェル外輪11と、保持器21と、ころ31とを具備し、図2に示すように軸箱40の丸孔41に圧入固定される。なお図面が煩雑になることを避けるため、図1~図4の断面図では、断面を表す模様が一部図略される。
軸箱40は、アルミニウム、あるいはその他の軽金属を主成分とする軽金属製である。軸箱40は例えば、自動車用変速機の変速機ケースである。丸孔41の内径面は、算術平均粗さRaを1.6以下にされる。
シェル外輪11は、一体物であって、外輪本体12、鍔部13,14、および丸み部15,16を備える。シェル外輪11は、機械構造用炭素鋼又はステンレス鋼を冷間圧延して形成されたものであり、主な材質としてはSPC、SCM、SUSが挙げられる。外輪本体12の板厚Tは、0.5~2.5mmである。
鍔部13は、円筒形状の外輪本体12の軸線方向一端から、内径側へ略90度に立ち上がる。外輪本体12の板厚Tと鍔部13の板厚は、略等しいか、あるいは鍔部13の板厚の方が大きい。丸み部15は、外輪本体12の軸線方向外側縁と鍔部13の外径縁の間にあってこれらを結合する。丸み部15はシェル外輪11の外側に面する外側表面を有する。丸み部15の外側表面は、シェル外輪11の全周において、外側へ向かって膨らむよう丸みを帯びた膨らみ面である。
図1に示すように、シェル外輪11の外径寸法Dと、軸線方向の全長寸法Lの関係は、式1で示される。
[式1] 0.5≦D/L≦10
つまりシェル外輪の多くは、外径寸法Dのほうが全長寸法Lよりも大きいが、これに限定されない。
[式1] 0.5≦D/L≦10
つまりシェル外輪の多くは、外径寸法Dのほうが全長寸法Lよりも大きいが、これに限定されない。
鍔部14は、円筒形状の外輪本体12の軸線方向他端から、内径側へ略90度に立ち上がる。鍔部14の板厚は、外輪本体12の板厚Tよりも小さい。略90度というのは、鍔部14の角度が外輪本体12に対して90±10度の範囲内でよいという意味である。丸み部16は、外輪本体12の軸線方向外側縁と鍔部14の外径縁の間にあってこれらを結合する。丸み部16の外側表面も、丸み部15の外側表面と同様、シェル外輪11の全周において、外側へ向かって膨らむよう丸みを帯びた膨らみ面である。
鍔部14は、円筒形状の素形材の軸線方向他方縁を、内径側へ徐々に折り曲げて形成される。このため鍔部14および/または丸み部16は縁曲部ともいう。曲げ加工の容易性確保のため、鍔部14の板厚は、外輪本体12の軸線方向中央領域における板厚Tの40%以上75%以下の範囲に含まれる所定値である。
1対の鍔部13,14間には、保持器21およびころ31が配置される。保持器21の外径寸法は鍔部13および/または鍔部14の内径寸法よりも大きい。円筒形状の保持器21は、シェル外輪11の内側に組み込まれ、鍔部13,14によって軸線方向移動を規制される。保持器21には、周方向に間隔を空けてポケット22が複数形成される。各ポケット22にはころ31が配置され、ころ31は保持器21に形成されるころ止め部(図略)によって脱落しないよう保持される。ころ31は、例えば針状ころであり、外輪本体12の内径面12cを転動する。このため外輪本体12の内径面12cは外側軌道面に相当する。本実施形態の針状ころは、ころ全長がころ直径の3~10倍である。
図3は、シェル外輪の鍔部14と、外輪本体12の軸線方向他端縁を示す拡大断面図である。外輪本体12の軸線方向一端縁を含む外周面は緩やかなテーパ面17に形成される。テーパ面17のテーパ角度θは、0.5度以上5度未満の範囲に含まれる所定角度である。テーパ面17は、軸線方向外側に向かうほど徐々に縮径する傾き面である。テーパ面17を含む外輪本体12の外周面は、算術平均粗さRaを0.5以下にされ、好ましくは0.2以下にされる。
丸み部16の外側表面は、鍔部14の外側端面14bおよびテーパ面17と滑らかに接続する。滑らかに接続するとは、テーパ面17と丸み部16の外側表面の接続箇所20に、稜線が生じず、エッジが立たないということである。なお図1に示す外輪本体12の外周面の軸線方向一方端(鍔部13側)にもテーパ面が形成される。丸み部15の外側表面も、鍔部13の外側端面13bおよび外輪本体12の外周面と滑らかに接続する。
本実施形態では、丸み部16の外側表面の断面線が、仮想円16cで表される。仮想円16cは、丸み部16の外側表面の断面線から算出される最小二乗基準円である。この最小二乗基準円は、丸み部16の外側表面の断面線上の少なくとも3点に基づいて算出される。かかる複数の点はテーパ面17の断面線および外側端面13bの断面線に含まれない。仮想円16cは丸み部16の外側表面の断面線に重なる。つまり丸み部16の外側表面の断面線は、円弧である。本実施形態では、丸み部16の外側表面の断面線が、仮想円16cの接線と滑らかに接続する。
テーパ面17は、外輪本体12の外周面のうち最も内径側に位置する。また仮想円16c全体が、テーパ面17よりも内径側に位置する。これによりテーパ面17と丸み部16の外側表面の接続箇所20に、稜線が生じず、エッジが立たなくされる。
仮想円16cの中心点から鍔部14側に回転軸線と平行に延びる仮想線を基準線(0度)とした場合に、この基準線に対する角度が45度~90度となる範囲が特に、軸箱40の丸孔41への圧入時のかじりに影響を及ぼす。本実施形態では、この角度範囲内の略全体を丸み部16が占めており、かつ、80度~90度の範囲に位置する接続箇所20にはエッジが立っていないため、シェル外輪11を丸孔41に圧入する際におけるシェル外輪11と軸箱40のかじりを防止することができる。
本実施形態では、仮想円16cの半径Rが式2を満足する。単位はミリメートル[mm]である。本実施形態のシェル形ころ軸受10は自動車用自動変速機に好適に組み込まれる。
[式2] 0.5[mm]≦R≦2.5[mm]
仮想円16cの半径Rは、外輪本体12の軸線方向中央領域における板厚Tとの関係においては、たとえば板厚Tの1.0~2.0倍である。
[式2] 0.5[mm]≦R≦2.5[mm]
仮想円16cの半径Rは、外輪本体12の軸線方向中央領域における板厚Tとの関係においては、たとえば板厚Tの1.0~2.0倍である。
理解を容易にするため、図4に示す対比例につき説明する。対比例のシェル外輪51では、仮想円16cの一部がテーパ面17よりも外径側に位置する。これによりテーパ面17と丸み部16の外側表面の接続箇所24に、稜線が生じてしまい、エッジが立ちやすくなる。そして、このような接続箇所24が上述の角度範囲の凡そ60度~70度の位置に含まれているため、シェル外輪51を軸箱40に圧入する際、接続箇所24が丸孔41の内径面に当接して、かじりが生じる懸念がある。
丸み部16の内周面には円環溝状の盗み部18が形成される。盗み部18は、外輪本体12の内径面12cよりも外径側へ後退する。盗み部18の表面は、軸線方向内側で内径面12cと接続し、軸線方向外側で鍔部14の内側端面14cと接続する。盗み部18により、曲げ加工による鍔部14および丸み部16の形成が容易にされる。
図2に示すようにシェル外輪11は、丸孔41の軸線方向一方側から、断面円形の丸孔41に圧入固定される。圧入固定前のシェル外輪11の原形状態の外径寸法が、丸孔41の原形状態の内径寸法よりもわずかに大きい。この負すきまの寸法差を締め代領域Sといい、図1および図3の外輪本体外径部分にハッチング模様を付して表示される。締め代領域Sは、全周に亘って外輪本体12の軸線方向一端部から他端部までを占めており、テーパ面17と一部重なる。
ところで本実施形態のテーパ面17は、膨らみ面である丸み部15,16の外側表面と滑らかに接続し、図3に断面図で示すように丸み部の断面線と重なる仮想円16cが、テーパ面17の断面線よりも内径側に位置する。これにより接続箇所20に、稜線が生じず、エッジが立たなくされる。そしてシェル形ころ軸受10は、軽金属製の軸箱40の丸孔41に軸線方向外側から圧入される際、丸孔41に対して傾かず、シェル外輪11と軸箱40の間でかじりが発生せず、軸箱40に傷をつけない。
また本実施形態によれば、外輪本体12の外周面の算術表面粗さRaは、0.5以下であることから、シェル形ころ軸受10は軸箱40に円滑に圧入固定される。丸孔41の内径面の算術表面粗さRaを1.6以下にしても、同様の効果が得られる。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
本発明は、機械要素において有利に利用される。
10 シェル形ころ軸受、 11 シェル外輪、 12 外輪本体、 12c 内径面、 13,14 鍔部、 13b,14b 外側端面、 14c 内側端面、 15,16 丸み部、 16c 仮想円、 17 テーパ面、 20 接続箇所、 21 保持器、 22 ポケット、 40 軸箱、 41 丸孔。
Claims (6)
- シェル外輪と、
前記シェル外輪の中に組み込まれる保持器と、
前記保持器に保持されて前記シェル外輪の内径面を転動するころとを備え、
前記シェル外輪は、軸箱の丸孔に圧入固定される円筒形状の外輪本体と、前記外輪本体の軸線方向両端縁から内径側に突出する鍔部と、前記外輪本体と前記鍔部を結合し外側表面が丸みを帯びた膨らみ面にされる丸み部とを含み、
前記外輪本体の前記軸線方向一端縁を含む外周面は、軸線方向外側に向かうほど徐々に縮径する傾き面にされ、
前記傾き面は前記膨らみ面と滑らかに接続し、
前記シェル外輪の中心軸線を含む平面で当該シェル外輪を切断して現れる切断面に関し、前記膨らみ面の断面線と重なる仮想円が、前記傾き面の断面線よりも内径側に位置する、シェル形ころ軸受。 - 前記シェル外輪の外径寸法Dと、前記シェル外輪の全長寸法Lが、
0.5≦D/L≦10を満足する、請求項1に記載のシェル形ころ軸受。 - 前記仮想円の半径Rが、0.5[mm]≦R≦2.5[mm]を満足する、請求項2に記載のシェル形ころ軸受。
- 前記外輪本体の外周面の算術表面粗さRaは、0.5以下である、請求項1に記載のシェル形ころ軸受。
- 請求項1~4のいずれかに記載のシェル形ころ軸受と、
前記シェル外輪の外径寸法よりも小さな内径寸法の丸孔を有し、前記丸孔の内径面が前記外輪本体の外周面と負すきまで密着する軽合金製の軸箱とを具備する、シェル形ころ軸受の固定構造。 - 前記丸孔の前記内径面の算術表面粗さRaは、1.6以下である、請求項5に記載のシェル形ころ軸受の固定構造。
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