WO2023145800A1 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

本実施形態の無方向性電磁鋼板(1)は、母材鋼板(10)と、母材鋼板(10)の表面に形成されている絶縁被膜(20)とを備える。絶縁被膜(20)は、リン酸金属塩(201)と、リン酸金属塩(201)の100質量部に対して5~35質量部の有機樹脂(202)とを含有する。有機樹脂(202)は、リン酸金属塩(201)の100質量部に対して5質量部以上のアミノ樹脂を含有する。

Description

無方向性電磁鋼板
 本発明は、無方向性電磁鋼板に関する。
 無方向性電磁鋼板は、オーディオ機器等の小型家電の駆動用モータ、ハイブリッドカーおよび電気自動車の駆動用モータ用の鉄芯(モータコア(ロータコア、ステータコア))に利用されている。
 無方向性電磁鋼板の表面には絶縁被膜が形成されている。絶縁被膜は例えば、ステータコアとして積層された電磁鋼板同士の絶縁性を担保する。つまり、絶縁被膜には、優れた絶縁性が求められる。絶縁被膜にはさらに、鋼板に対する密着性および耐蝕性が求められる。
 絶縁性、密着性および耐蝕性に優れる電磁鋼板の絶縁被膜が例えば、国際公開第2016/136515号(特許文献1)、特開2017-141480号公報(特許文献2)、および、特表2015-509994号公報(特許文献3)に提案されている。
 特許文献1に開示された電磁鋼板は、絶縁被膜を鋼板表面に有する。絶縁被膜は、リン酸金属塩100質量部、および、平均粒径が0.05~0.50μmの有機樹脂1~50質量部から構成されるバインダーと、バインダーの固形分100質量部に対する含有量が0.1~10.0質量部である炭素数2~50のカルボン酸系化合物とを含む。有機樹脂は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上である。これにより、クロム化合物を含有しない場合であっても、絶縁性に加えて、密着性、耐蝕性、外観および打ち抜き後の端面防錆性が良好な絶縁被膜を備える電磁鋼板が得られる、と特許文献1に記載されている。
 特許文献2に開示された電磁鋼板は、表面に、主成分であるリン酸金属塩100質量部と、平均粒径が0.05~0.50μmであって、反応性乳化剤を利用したアクリル樹脂1~50質量部と、多価アルコール0.5~10質量部と、から構成された絶縁被膜を有する。リン酸金属塩の金属元素は、少なくとも2価の金属元素と3価の金属元素とが混在している。2価の金属元素の混合比は、リン酸金属塩の金属元素の全体質量に対して、30~80質量%である。これにより、均一性が良好であり、絶縁性に問題が無く、かつ、電着塗装およびモールド時の樹脂に対する密着性が良好な絶縁被膜を保持した電磁鋼板が得られる、と特許文献2に記載されている。
 特許文献3に開示された無方向性電磁鋼板は、絶縁コーティング層が形成されている。絶縁コーティング層は、アルミニウムリン酸塩(Al(HPOx=1~3)とコバルトリン酸塩(Co(HPO)とからなる混合金属リン酸塩;およびエポキシ樹脂とエポキシ樹脂の官能基を置換したシリカ(SiO)ナノ粒子とからなる有機/無機複合材(composite)を含む絶縁被膜組成物を電磁鋼板の表面に塗布した後、乾燥させて形成されたことを特徴とする。これにより、既存の薄膜製品より応力除去焼鈍(SRA)前/後のはるかに優れた絶縁特性を有する無方向性電磁鋼板が得られる、と特許文献3に記載されている。
国際公開第2016/136515号 特開2017-141480号公報 特表2015-509994号公報
 ところで、無方向性電磁鋼板を用いたステータコアの製造方法は次のとおりである。無方向性電磁鋼板を所定形状に打抜き加工する。打抜き加工後の鋼板(コアブランク)を積層して固着し、積層鉄心を製造する。ステータコアのスロットにコイルを配置する。打抜き加工の際、打抜かれた無方向性電磁鋼板には加工歪が付与され、磁気特性が劣化する。そのため、加工歪を除去するために歪取焼鈍が実施されることがある。歪取焼鈍は700℃以上の高温である。歪取焼鈍時に加熱された絶縁被膜は、加熱により分解物を生成する場合がある。
 上述のとおり、無方向性電磁鋼板の絶縁被膜には、優れた密着性が求められており、歪取焼鈍後であっても、優れた密着性が求められる。絶縁被膜の密着性が低い場合、鋼板から剥離した被膜片が、ステータコアと、ロータコアとの間に入り込んで、ステータコアおよびロータコアの回転を阻害する。場合によっては、ロータコアが破損するおそれがある。
 無方向性電磁鋼板の絶縁被膜にはさらに、歪取焼鈍後であっても優れた耐蝕性が求められる。しかしながら、歪取焼鈍の加熱により、絶縁被膜の過度な熱分解、昇華または粉化が生じれば、耐蝕性が低下する場合がある。
 本発明の目的は、歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性に優れる絶縁被膜を備えた無方向性電磁鋼板を提供することである。
 本発明の無方向性電磁鋼板は、
 母材鋼板と、
 前記母材鋼板の表面に形成されている絶縁被膜とを備え、
 前記絶縁被膜は、
 リン酸金属塩と、
 前記リン酸金属塩100質量部に対して、5~35質量部の有機樹脂とを含有し、
 前記有機樹脂は、前記リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有する。
 本発明の無方向性電磁鋼板は、歪取焼鈍後の絶縁被膜の密着性および耐蝕性に優れる。
図1は、本実施形態の無方向性電磁鋼板の板厚方向の断面図である。 図2は、図1中の絶縁被膜を拡大した断面図である。
 本発明者らは、無方向性電磁鋼板の絶縁被膜における、歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性について調査および検討を行った。
 上述の特許文献1および特許文献2には、リン酸金属塩と有機樹脂とを含有する絶縁被膜であれば密着性に優れることが記載されている。そこで本発明者らは、リン酸金属塩と有機樹脂とを含有する絶縁被膜の密着性をさらに高め、かつ、耐蝕性を高める手段を検討した。
 無方向性電磁鋼板の絶縁被膜は、次のとおりに製造される。リン酸金属塩と有機樹脂とを含有する表面処理剤を母材鋼板の上に塗布する。次に、表面処理剤が塗布された母材鋼板を加熱して、絶縁被膜を形成する。
 本発明者らは、絶縁被膜に、耐熱性に優れるアミノ樹脂を含有させれば、絶縁被膜の歪取焼鈍後の密着性を高めることができると考えた。本発明者らの検討の結果、絶縁被膜に、リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有させれば、歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性が高まることが分かった。しかしながら、アミノ樹脂は、表面処理剤に含まれるリン酸金属塩と反応し、表面処理剤の安定性を低下させることが分かった。表面処理剤の安定性が低ければ、形成される絶縁被膜の密着性が低下する。
 そこで本発明者らは、表面処理剤に含まれるリン酸金属塩とアミノ樹脂との反応を抑制し、表面処理剤の安定性を高める手段を検討した。その結果、アミノ樹脂5質量部以上を含む有機樹脂の総含有量を、リン酸金属塩100質量部に対して、35質量部以下に制限すれば、表面処理剤の安定性が高まることが分かった。表面処理剤の安定性を高めることによって、歪取焼鈍後の剥離が抑制された、つまり密着性の高い絶縁被膜が形成できる。
 本実施形態の無方向性電磁鋼板は上述の技術思想に基づいて完成したものであり、その要旨は以下のとおりである。
 (1)母材鋼板と、
 前記母材鋼板の表面に形成されている絶縁被膜とを備え、
 前記絶縁被膜は、
 リン酸金属塩と、
 前記リン酸金属塩100質量部に対して、5~35質量部の有機樹脂とを含有し、
 前記有機樹脂は、前記リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有する、
 無方向性電磁鋼板。
 (2)前記有機樹脂はさらに、
 アクリル樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上を含有する、
 上記(1)に記載の無方向性電磁鋼板。
 (3)前記有機樹脂は、
 前記アミノ樹脂を、前記リン酸金属塩100質量部に対して、5~30質量部、および、
 前記アクリル樹脂および前記ポリエステル樹脂から選択される1種以上を、前記リン酸金属塩100質量部に対して、合計で1~25質量部含有する、
 上記(2)に記載の無方向性電磁鋼板。
 (4)前記リン酸金属塩は、
 リン酸Zn、リン酸Mn、リン酸Al、および、リン酸Moから選択される1種以上である、
 上記(1)から(3)までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
 (5)前記アミノ樹脂は、メラミン樹脂およびベンゾグアナミン樹脂から選択される1種以上である、
 上記(1)から(4)までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
 (6)前記母材鋼板は、質量%で、
 Si:2.5~4.5%、
 Al:0.1~1.5%、
 Mn:0.2~4.0%を含有する、
 上記(1)から(5)までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
 以下、本実施形態の無方向性電磁鋼板について、詳細に説明する。
 [無方向性電磁鋼板の構成]
 図1は、本実施形態の無方向性電磁鋼板の板厚方向の断面図である。図1を参照して、無方向性電磁鋼板1は、母材鋼板10と、絶縁被膜20とを備える。絶縁被膜20は、母材鋼板10の表面に形成されている。図1では、絶縁被膜20は、母材鋼板10の上表面および下表面にそれぞれ形成されている。しかしながら、絶縁被膜20は、母材鋼板10のいずれか一方の表面のみに形成されていてもよい。以下、母材鋼板10および絶縁被膜20について説明する。
 [母材鋼板10]
 母材鋼板10は、無方向性電磁鋼板1として用いられる公知の鋼板から適宜選択することができる。つまり、母材鋼板10は、無方向性電磁鋼板1の用途の公知の鋼板であれば、特に限定されない。なお、方向性電磁鋼板か、無方向性電磁鋼板1かは、鋼板の磁束密度を測定することにより判別可能である。磁束密度は、周知のテスラメーターによって測定可能である。
 母材鋼板10の化学組成は、基本元素を含有し、必要に応じて任意元素を含有し、残部がFeおよび不純物である。母材鋼板10の化学組成は例えば、次の元素を含有する。以下、特に断りがない限り、「%」は質量%を意味する。
 [基本元素]
 母材鋼板10の化学組成は、基本元素として、Si、AlおよびMnを含有する。以下、これらの元素について説明する。
 Si:2.5~4.5%
 珪素(Si)は、鋼の電気抵抗を高め、渦電流損を低減する。その結果、鋼板の鉄損が低下する。Siはさらに、鋼の強度を高める。Si含有量が2.5%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が4.5%を超えれば、鋼の加工性が低下する。したがって、Si含有量は2.5~4.5%である。Si含有量の好ましい下限は2.6%であり、さらに好ましくは2.7%である。Si含有量の好ましい上限は4.3%であり、さらに好ましくは4.2%である。
 Al:0.1~1.5%
 アルミニウム(Al)は、鋼の電気抵抗を高め、渦電流損を低減する。その結果、鋼板の鉄損が低下する。Al含有量が0.1%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、Al含有量が1.5%を超えれば、飽和磁束密度が低下する。したがって、Al含有量は0.1~1.5%である。Al含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.2%である。Al含有量の好ましい上限は1.4%であり、さらに好ましくは1.3%である。
 Mn:0.2~4.0%
 マンガン(Mn)は、鋼の電気抵抗を高め、渦電流損を低減する。その結果、鋼板の鉄損が低下する。Mnはさらに、磁気特性に対して好ましくない{111}<112>集合組織の生成を抑制する。Mn含有量が0.2%未満であれば、上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が4.0%を超えれば、集合組織が変化して、ヒステリシス損が劣化する。したがって、Mn含有量は0.2~4.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.3%であり、さらに好ましくは、0.4%である。Mn含有量の好ましい上限は3.8%であり、さらに好ましくは3.6%である。
 本実施形態では、母材鋼板10の化学組成は、不純物を含有する。ここで、不純物とは、母材鋼板10を工業的に生産するときに、原料として鉱石もしくはスクラップから、または、製造環境等から混入する元素を意味する。不純物は例えば、C、P、S、N等の元素である。
 母材鋼板10の化学組成は、周知の化学分析法により測定できる。例えば、母材鋼板10の化学組成は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。
 [絶縁被膜20]
 絶縁被膜20は、上述のとおり、母材鋼板10の表面に形成されている。無方向性電磁鋼板1は、コアブランクに加工された後、積層されてモータコアを形成する。絶縁被膜20は、積層後の鋼板間(コアブランク間)の渦電流を低減する。その結果、モータコアの渦電流損を低減できる。
 図2は、図1中の絶縁被膜20の拡大した断面図である。図2を参照して、絶縁被膜20は、リン酸金属塩201と有機樹脂202とを含有する。なお、絶縁被膜20はクロム酸化物を含有しない。以下、リン酸金属塩201、および、有機樹脂202について説明する。
 [リン酸金属塩201]
 リン酸金属塩201は、絶縁被膜20のバインダーとして機能する。リン酸金属塩201は、リン酸および金属イオンを含有する水溶液(表面処理剤)を乾燥させて得られる固形分である。リン酸の種類は特に限定されず、公知のリン酸を使用できる。好ましいリン酸はオルトリン酸、メタリン酸、および、ポリリン酸からなる群から選択される1種以上である。
 金属イオンは、絶縁被膜20の耐蝕性および密着性に作用する。金属イオンの種類は特に限定されない。金属イオンは例えば、Li、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Ti、Co、MnおよびNiからなる群から選択される1種以上である。
 好ましくは、リン酸金属塩201は、リン酸Zn、リン酸Mn、リン酸Al、および、リン酸Moからなる群から選択される1種以上を含有する。リン酸Znは絶縁被膜20の耐蝕性を有効に高める。リン酸Mnは、絶縁被膜20の耐熱性を高める。リン酸Alは母材鋼板10に対する絶縁被膜20の密着性を高め、さらに、絶縁被膜20の耐熱性を高める。リン酸Moは、絶縁被膜20の耐熱性を高める。
 [リン酸金属塩の含有量]
 リン酸金属塩201の含有量については特に制限はない。好ましくは、絶縁被膜20中における、リン酸金属塩201の含有量は、質量%で、50%以上である。リン酸金属塩201の含有量が50%以上であれば、バインダーとしての機能が十分に確保できる。リン酸金属塩201の含有量は、より好ましくは、60%以上である。なお、リン酸金属塩201の含有量の実質的な上限は95%である。
 また、絶縁被膜20中における、リンの含有量は、好ましくは、HPO換算において、質量%で、35%以上であり、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
 リン酸金属塩201およびリンの含有量は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDS)により、Pおよび金属元素の含有量を測定することにより求めることが可能である。PはHPOのリン酸として換算し、その含有量を算出する。また、リン酸金属塩は、M(HPO(ここで、Mは金属元素、xは金属元素の価数)として算出し、算出された金属元素とリン酸との含有量からリン酸金属塩の含有量を算出するものとする。
 [有機樹脂202]
 図2を参照して、有機樹脂202は、バインダーとして機能するリン酸金属塩201中に分散して含有される。有機樹脂202は、リン酸金属塩201が粗大に成長するのを抑制し、リン酸金属塩201の多結晶化を促進する。有機樹脂202により、緻密な絶縁被膜20が形成される。
 [アミノ樹脂]
 有機樹脂202はアミノ樹脂を含む。アミノ樹脂は、アミノ基を持つ化合物とアルデヒド化合物との反応から得られる樹脂の総称である。アミノ樹脂は例えば、メラミン樹脂およびベンゾグアナミン樹脂からなる群から選択される1種以上である。メラミン樹脂は例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂、エチルエーテル化メラミン樹脂、プロピルエーテル化メラミン樹脂、イソプロピルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、およびジブトキシメチルトリメチルエーテル化メラミン樹脂等のアルキルエーテル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、プロピル化メラミン樹脂、イソプロピル化メラミン樹脂、およびブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、ならびに、フェノール変性メラミン樹脂からなる群から選択される1種以上である。
 [有機樹脂202の含有量]
 絶縁被膜20中の有機樹脂202の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5~35質量部である。有機樹脂202は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有する。つまり、絶縁被膜20中のアミノ樹脂の含有量は、リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上である。アミノ樹脂は耐熱性が高い。アミノ樹脂を含む有機樹脂202を、絶縁被膜20に含有させれば、絶縁被膜20の歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性が高まる。アミノ樹脂の含有量が、リン酸金属塩201の100質量部に対して5質量部未満では、この効果を得ることができない。
 一方、アミノ樹脂の含有量が、リン酸金属塩201の100質量部に対して35質量部を超えると、表面処理剤中のリン酸金属塩201とアミノ樹脂とが反応して、表面処理剤の安定性が低下する。その結果、得られる絶縁被膜20の歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性が低下する。有機樹脂202がアミノ樹脂に加えて、後述する他の有機樹脂202を含有する場合、有機樹脂202の含有量が、リン酸金属塩201の100質量部に対して35質量部を超えると、絶縁被膜20を安定的に形成できないおそれがある。これは、アミノ樹脂が、有機樹脂202全体の安定性に大きく影響を及ぼすためである。したがって、有機樹脂202の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5~35質量部である。
 有機樹脂202の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、好ましくは6質量部以上であり、より好ましくは8質量部以上であり、さらに好ましくは8質量部超であり、さらに好ましくは9質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。また、有機樹脂202の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、好ましくは33質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下であり、さらに好ましくは28質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部未満であり、さらに好ましくは20質量部以下である。有機樹脂202の含有量とは、絶縁被膜20に含有される有機樹脂202の合計含有量である。なお、本明細書において、有機樹脂202の含有量とは、アミノ樹脂、後述するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の樹脂の合計含有量を意味する。
 [好ましいアミノ樹脂の含有量]
 アミノ樹脂の好ましい含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5~30質量部である。アミノ樹脂の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、より好ましくは6質量部以上であり、さらに好ましくは8質量部以上であり、さらに好ましくは8質量部超であり、さらに好ましくは10質量部以上である。アミノ樹脂の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、さらに好ましくは28質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは25質量部未満であり、さらに好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。
 有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合は特に限定されない。しかしながら、有機樹脂202の合計含有量の上限およびアミノ樹脂含有量の下限を考慮すると、有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合の実質的な下限は14%となる。また、有機樹脂202の含有量に対するアミノ樹脂の含有量の割合が15%以上であれば、アミノ樹脂の含有量を十分に確保できる。これにより、絶縁被膜20の歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性がさらに安定的に高まる。したがって、好ましくは、有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合は15%以上である。有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合の下限は、より好ましくは20%、さらに好ましくは25%、さらに好ましくは30%である。
 有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合の上限は、100%であってもよい。しかしながら、後述するように、アミノ樹脂に加えて、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂を含有することによって、密着性がさらに向上する。そのため、有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合の上限は、好ましくは98%、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは85%である。有機樹脂202の含有量に対する、アミノ樹脂の含有量の割合は、アミノ樹脂の含有量を有機樹脂202の含有量で除して求める。なお、上述のとおり、有機樹脂202の含有量とは、アミノ樹脂、および、後述するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の樹脂の合計含有量を意味する。
 [アクリル樹脂およびポリエステル樹脂]
 好ましくは、有機樹脂202はさらに、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する。有機樹脂202がアクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上を含有することによって、絶縁被膜20の歪取焼鈍前のリン酸の溶出を抑制することができる。その結果、歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性をさらに向上させることができる。
 これは、硬質なアミノ樹脂に加えて、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂を含有させることで、絶縁被膜20が強靭になるためと考えられる。また、アミノ樹脂は熱硬化性樹脂であるのに対して、アクリルおよびポリエステルは熱可塑性樹脂である。そのため、両者の間には、昇温時におけるリン酸金属塩中での挙動に差がある。すなわち、熱硬化性樹脂を含むことにより、樹脂が昇華して被膜中に空洞が生じるのを抑制し、耐蝕性を向上させる。これに加えて、熱可塑性樹脂を含むことにより樹脂の粉化も十分に抑制でき、密着性をさらに向上させることが可能となる。
 なお、有機樹脂202を複数種含有させる場合、処理液の安定性が劣化することから一種類の有機樹脂202のみを用いるのが一般的である。しかしながら、本発明者らの検討により、アミノ樹脂と、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とを複合的に含有させることによる上記の顕著な効果が見出された。
 [好ましいアクリル樹脂およびポリエステル樹脂の含有量]
 アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上がわずかでも含有されれば、歪取焼鈍前のリン酸の溶出を抑制する効果が得られる。一方で、絶縁被膜20の歪取焼鈍後の密着性をさらに高めるためには、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量が、リン酸金属塩100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましい。
 一方、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量が、リン酸金属塩100質量部に対して25質量部以下であれば、アミノ樹脂の含有量を十分に確保できる。これにより、絶縁被膜20の歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性が安定的に高まる。したがって、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量は、好ましくは、リン酸金属塩100質量部に対して1~25質量部である。アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量の下限は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、より好ましくは3質量部であり、さらに好ましくは5質量部であり、さらに好ましくは8質量部であり、さらに好ましくは10質量部である。アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量の上限は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、さらに好ましくは23質量部であり、さらに好ましくは20質量部であり、さらに好ましくは18質量部であり、さらに好ましくは15質量部である。アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上の含有量とは、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の合計含有量である。
 [その他の樹脂]
 有機樹脂202は、その他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂は例えば、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリプロピレン樹脂、および、ポリエチレン樹脂からなる群から選択される1種以上である。
 特にエポキシ樹脂は、絶縁性および耐蝕性に優れる。エポキシ樹脂の種類は特に限定されない。エポキシ樹脂は例えば、ビスフェノールA、F、B型、脂環型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ビフェニル型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、テトラフェニロールエタン型、トリスヒドロキシンフェニルメタン型からなる群から選択される1種以上である。
 [その他の樹脂の好ましい含有量]
 好ましくは、その他の樹脂、すなわち、アミノ樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂以外の樹脂の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、0~10質量部である。その他の樹脂の含有量の下限は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、より好ましくは0.5質量部であり、さらに好ましくは1質量部である。その他の樹脂の含有量の上限は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、より好ましくは9質量部であり、さらに好ましくは8質量部であり、さらに好ましくは7質量部であり、さらに好ましくは6質量部である。その他の樹脂の含有量は、その他の樹脂の合計含有量である。
 [絶縁被膜20中のリン酸金属塩201および有機樹脂202の特定方法]
 絶縁被膜20中のリン酸金属塩201および有機樹脂202は次の方法で特定できる。絶縁被膜20が形成された無方向性電磁鋼板1を加熱したときのガス発生挙動を、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(Pyrolysis-Gas Chromatograph/Mass Spectrometry、Py-GC/MS)法(以下、GC/MS法という)を用いて分析することにより、有機樹脂202の有無、および、有機樹脂202の種類を特定する。上述のGC/MS法とフーリエ変換赤外分光法(以下、FT-IR法という)を併用して、有機樹脂202を特定してもよい。
 さらに、絶縁被膜20に対して、SEM-EDSまたはICP-AESによる化学分析を実施し、P、および、金属元素(Zn、Al等)が検出されれば、絶縁被膜20中にリン酸金属塩201が含まれると判断する。
 [有機樹脂202の含有量の測定方法]
 有機樹脂202の含有量は、次の方法で特定が可能である。まず、上述のGC/MS法および/またはFT-IR法によって特定された有機樹脂202の化学構造から、有機樹脂202の炭素含有量を算出する。次に、絶縁被膜20の表面を、SEM-EDSを用いて測定する。測定箇所は、絶縁被膜20の表面の任意の複数個所とする。元素分析により、炭素(C)の濃度を特定する。複数の測定個所の炭素濃度の算術平均値を、絶縁被膜20の炭素濃度とする。なお、有機樹脂202以外に、例えば後述する水溶性有機化合物等を含有する場合がある。その場合は、GC/MS法によって、有機樹脂由来の炭素と水溶性有機化合物由来の炭素との含有量の割合を求めておき、当該割合に基づき、絶縁被膜20中の有機樹脂202の炭素濃度を求める。以下の説明において、絶縁被膜20の炭素濃度は、絶縁被膜20中の有機樹脂202の炭素濃度を意味することとする。
 続いて、アルカリ溶液を用いて母材鋼板10から剥離した絶縁被膜20の重量を求める。絶縁被膜20の重量と、絶縁被膜20の炭素濃度とから、絶縁被膜20中の炭素含有量の絶対値を算出する。絶縁被膜20中の炭素含有量の絶対値と、有機樹脂202の炭素含有量とから、絶縁被膜20中の有機樹脂202の含有量を算出することが可能である。また、複数種の有機樹脂202を含有する場合は、上述のGC/MS法および/またはFT-IR法によって、各有機樹脂の含有量の割合(質量比)を求めることができる。それによって、アミノ樹脂の含有量、アクリル樹脂の含有量、ポリエステル樹脂の含有量およびその他の樹脂の含有量をそれぞれ測定することができる。
 そして、測定された有機樹脂の含有量を、上述の方法によって測定されたリン酸金属塩の含有量と比較することにより、リン酸金属塩100質量部に対する、各有機樹脂の質量部を求める。
 [その他の成分]
 絶縁被膜20は、リン酸金属塩201および有機樹脂202に加えて、その他の成分を含有してもよい。その他の成分とは例えば、水溶性有機化合物である。水溶性有機化合物とは例えば、界面活性剤、乳化剤、消泡剤、および、レベリング剤からなる群から選択される1種以上である。その他の成分の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5.0質量部以下である。その他の成分の含有量の上限は、好ましくは、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5.0質量部未満であり、より好ましくは4.5質量部であり、さらに好ましくは4.0質量部であり、さらに好ましくは3.5質量部であり、さらに好ましくは3.0質量部である。
 その他の成分の含有量の下限は0%であってもよい。その他の成分の含有量の下限は例えば、0.1%である。なお、絶縁被膜20に含まれるほう酸の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して1質量部未満である。絶縁被膜20に含まれるほう酸の含有量は0質量部であってもよい。絶縁被膜20に含まれるコロイダルシリカの含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して1質量部未満である。絶縁被膜20に含まれるコロイダルシリカの含有量は0質量部であってもよい。ほう酸およびコロイダルシリカの含有量が過剰となると、密着性および耐蝕性が損なわれるおそれがあるためである。
 なお、上記の水溶性有機化合物の含有量は、上述したSEM-EDSによって測定された炭素濃度と、GC/MS法によって測定された有機樹脂由来の炭素と水溶性有機化合物由来の炭素との含有量の割合に基づき、求めることができる。さらに、ほう酸の含有量はICP-AESにより測定し、コロイダルシリカの含有量はSEM-EDSにより測定する。
 [絶縁被膜20の好ましい膜厚]
 絶縁被膜20の膜厚は特に限定されない。絶縁被膜20の好ましい膜厚は、0.20~1.60μmである。膜厚が0.20~1.60μmであれば、絶縁被膜20はさらに優れた絶縁性を示す。しかしながら、絶縁被膜20の膜厚が0.20~1.60μm以外であっても、絶縁被膜20は歪取焼鈍後の優れた密着性および耐蝕性を示す。
 以上のとおり、本実施形態の無方向性電磁鋼板1は、母材鋼板10と、母材鋼板10の表面に形成されている絶縁被膜20とを備える。絶縁被膜20は、リン酸金属塩201と、リン酸金属塩201の100質量部に対して5~35質量部の有機樹脂202とを含有する。有機樹脂202は、リン酸金属塩201の100質量部に対して5質量部以上のアミノ樹脂を含有する。そのため、絶縁被膜20は、歪取焼鈍後の優れた密着性および耐蝕性を示す。
 [製造方法]
 本実施形態の無方向性電磁鋼板1の製造方法の一例を説明する。以降に説明する製造方法は、無方向性電磁鋼板1を製造するための一例である。したがって、無方向性電磁鋼板1は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、無方向性電磁鋼板1の製造方法の好適な一例である。
 本実施形態の無方向性電磁鋼板1の製造方法の一例は、塗布工程と、焼付工程とを含む。塗布工程では、リン酸金属塩201および有機樹脂202を含有する表面処理剤を、母材鋼板10の表面に塗布する。焼付工程では、表面処理剤が塗布された母材鋼板10を加熱して、絶縁被膜20を形成する。以下、各工程について説明する。
 [塗布工程]
 塗布工程では、母材鋼板10の表面に表面処理剤を塗布する。塗布方法は特に限定されない。公知の塗布方法を適用できる。塗布方法は例えば、ロールコータ方式、スプレー方式、ディップ方式等である。
 [表面処理剤]
 表面処理剤は、リン酸金属塩201および有機樹脂202を含有する。ここで、表面処理剤におけるリン酸金属塩201および有機樹脂202は、上述したリン酸金属塩201および有機樹脂202を用いる。したがって、有機樹脂202はアミノ樹脂を含む。リン酸金属塩溶液を調製する際には、オルトリン酸等の各種のリン酸に対し、金属イオンの酸化物、炭酸塩、および、水酸化物の少なくとも何れかを混合することが好ましい。
 [表面処理剤中の有機樹脂の含有量]
 表面処理剤中の有機樹脂202、アミノ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の樹脂の含有量は、絶縁被膜20中の有機樹脂202、アミノ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の樹脂の含有量と同じである。後述する焼付工程を経ても、焼付条件が適切である限りにおいて、リン酸金属塩201および有機樹脂202の構造は変化せず、含有割合は維持されるためである。つまり、表面処理剤中の有機樹脂202の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5~35質量部である。表面処理剤中のアミノ樹脂の含有量は、リン酸金属塩201の100質量部に対して、5質量部以上である。有機樹脂202、アミノ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびその他の樹脂の好ましい含有量についても同様である。
 [焼付工程]
 焼付工程では、表面処理剤が塗布された母材鋼板10を加熱して、絶縁被膜20を形成する。焼付の条件は、熱処理温度200~450℃、熱処理時間10~120秒である。
 熱処理温度:200~450℃
 熱処理温度が200℃未満では、リン酸金属塩201の脱水反応が十分に進行しない。そのため、絶縁被膜20が適切に製膜できない。一方、熱処理温度が450℃超では、有機樹脂202が熱分解する。そのため、絶縁被膜20が適切に製膜できない。したがって、熱処理温度は200~450℃である。熱処理温度の好ましい下限は250℃であり、より好ましくは280℃であり、さらに好ましくは300℃である。熱処理温度の好ましい上限は430℃であり、より好ましくは400℃であり、さらに好ましくは380℃であり、さらに好ましくは350℃であり、さらに好ましくは320℃である。
 熱処理時間:10~120秒
 熱処理時間が10秒未満では、リン酸金属塩201の縮合反応が十分に進行しない。そのため、絶縁被膜20が適切に製膜できない。一方、熱処理時間が120秒超では、過剰な加熱により有機樹脂202が融解するおそれがある。熱処理時間が120秒超ではさらに、有機樹脂202が熱分解して絶縁被膜20が発粉するおそれがある。したがって、熱処理時間は10~120秒である。熱処理時間の好ましい下限は15秒であり、より好ましくは20秒であり、さらに好ましくは25秒であり、さらに好ましくは30秒である。熱処理時間の好ましい上限は100秒であり、より好ましくは90秒であり、さらに好ましくは80秒であり、さらに好ましくは70秒であり、さらに好ましくは60秒である。
 表面処理剤中に、リン酸金属塩201、および、リン酸金属塩201の100質量部に対して5~35質量部の有機樹脂202を含有させる。有機樹脂202は、リン酸金属塩201の100質量部に対して5質量部以上のアミノ樹脂を含有する。この表面処理剤を上述の焼付条件の範囲内で適宜調整して熱処理することによって、絶縁被膜20が形成できる。
 以上の製造工程により、無方向性電磁鋼板1が製造される。
 実施例により本実施形態の無方向性電磁鋼板の効果をさらに具体的に説明する。以下の実施例での条件は、本実施形態の無方向性電磁鋼板の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の無方向性電磁鋼板はこの一条件例に限定されない。
 板厚が0.25mmの母材鋼板(無方向性電磁鋼板)を準備した。母材鋼板は、質量%で、Si:3.1%、Al:0.6%、Mn:0.2%を含有し、残部がFeおよび不純物だった。準備した母材鋼板に対して、塗布工程を実施した。具体的には、母材鋼板の表面に、表1に示す組成の表面処理剤をゴムロール方式の塗布装置で塗布した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1中の「リン酸金属塩(100質量部)」欄には、表面処理剤に含有されるリン酸金属塩の種類、および、リン酸金属塩中の質量比を示す。例えば、試験番号1では、リン酸金属塩はリン酸Alからなる。試験番号3では、リン酸金属塩はリン酸Alとリン酸Mgとが質量比で5:5の割合で含有されている。試験番号4では、リン酸金属塩はリン酸Alとリン酸Moとが質量比で9:1の割合で含有されている。表1中の「アミノ樹脂」欄の「含有量」には、リン酸金属塩を100質量部としたときのアミノ樹脂の質量部を示す。表1中の「アクリル樹脂/ポリエステル樹脂」欄の「含有量」には、リン酸金属塩を100質量部としたときのアクリル樹脂またはポリエステル樹脂の質量部を示す。例えば、試験番号8では、(F)メタクリル酸、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニルを共重合させたアクリル樹脂エマルジョンを5質量部、(H)水酸基含有ポリエステル樹脂を5質量部含有させている。
 表1中の「アミノ樹脂」欄の「種類」A~Eは次の通りである。
 (A)ブチルエーテル化メラミン樹脂(数平均分子量 2000)
 (B)メチルエーテル化メラミン樹脂(数平均分子量 1000)
 (C)ベンゾグアナミン樹脂(数平均分子量 3000)
 (D)メチル化メラミン、メチルグアナミン混合樹脂(数平均分子量 8000)
 (E)ジブトキシメチルトリメチルエーテル化メラミン樹脂(数平均分子量 6000)
 表1中の「アクリル樹脂/ポリエステル樹脂」欄の「種類」F~Jは次の通りである。なお、Jの「水溶性レゾール型フェノール樹脂」はアクリル樹脂およびポリエステル樹脂のいずれにも属さない「その他の樹脂」であるが、「アクリル樹脂/ポリエステル樹脂」欄に併記している。
 (F)メタクリル酸、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニルを共重合させたアクリル樹脂エマルジョン
 (G)スチレン、アクリル酸およびメタクリル酸を共重合させたアクリル樹脂エマルジョン
 (H)水酸基含有ポリエステル樹脂(数平均分子量8000、水酸基価40mgKOH/g)
 (I)水酸基含有ポリエステル樹脂(数平均分子量15000、水酸基価80mgKOH/g)
 (J)水溶性レゾール型フェノール樹脂
 乳化剤を用いて、上の(A)~(J)に示す樹脂を50質量%含む水溶液を得た。この樹脂の水溶液を、30質量%のリン酸金属塩水溶液に、表1の各試験番号の組成となるように混合した。得られた水溶液に、粘度調整剤、酸化防止剤、および、5%以下の含有量で溶媒(エチルアルコール、イソプロピルアルコールまたはブチルセロソルブ)を加えて、30質量%の水溶液を得た。これにより、表1に示す各試験番号の表面処理剤を製造した。
 各試験番号の表面処理剤を、塗布量が0.8g/mになるように母材鋼板の表面に塗布した。表面処理剤が塗布された母材鋼板に対して、焼付処理を実施した。各試験番号の熱処理温度は300℃、熱処理時間は60秒であった。以上の工程により、母材鋼板の表面に絶縁被膜が形成された無方向性電磁鋼板を製造した。
 [絶縁被膜の成分分析]
 得られた無方向性電磁鋼板に対して、絶縁被膜の成分分析を行った。具体的には、絶縁被膜に対して、SEM-EDSによる化学分析を実施し、Pおよび金属元素の含有量を測定した。そして、PはHPOのリン酸として換算し、その含有量を算出した。また、リン酸金属塩は、M(HPO(ここで、Mは金属元素、xは金属元素の価数)として算出し、算出された金属元素とリン酸との含有量からリン酸金属塩の含有量を算出した。
 次に、GC/MS法およびFT-IR法によって有機樹脂の種類を特定し、複数種の有機樹脂を含む場合には、その割合を求めた。特定された有機樹脂202の化学構造から、有機樹脂の炭素含有量を算出した。この際、複数種の有機樹脂を含む場合には、その割合に応じた平均炭素含有量を算出した。次に、絶縁被膜の表面の5個所に対して、それぞれSEM-EDSを用いた元素分析を行い、炭素濃度を測定し、5つの測定値を算術平均することで、絶縁被膜の炭素濃度とした。
 続いて、アルカリ溶液を用いて母材鋼板から剥離した絶縁被膜の重量を求めた。絶縁被膜の重量と、絶縁被膜の炭素濃度とから、絶縁被膜中の炭素含有量の絶対値を算出し、絶縁被膜中の炭素含有量の絶対値と、有機樹脂の炭素含有量とから、絶縁被膜中の各有機樹脂の含有量を算出した。
 さらに、ほう酸の含有量はICP-AESにより測定し、コロイダルシリカの含有量はSEM-EDSにより測定した。そして、測定された各成分の含有量を、上述の方法によって測定されたリン酸金属塩の含有量と比較することにより、リン酸金属塩100質量部に対する、各成分の質量部を求めた。
 それらの結果を表2に示す。表2から分かるように、測定された各成分の含有量は、表1に示した処理液中の成分とほぼ同一であった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 [評価試験1]
 製造された無方向性電磁鋼板に対して、発粉性評価試験、絶縁性評価試験、耐蝕性評価試験、および、溶出性評価試験を実施した。
 [発粉性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板から、幅60mm、長さ100mmの試験片を採取した。試験片の絶縁被膜上に、幅30mm、長さ10mmの平面圧子(鋼板)を10往復摺動させた。摺動時の平面圧子への荷重は500gf、摺動距離は5cmであった。摺動後の絶縁被膜および平面圧子を目視により観察し、発粉状態を次の通りに評価した。得られた発粉性評価を表3の「歪取焼鈍前特性 発粉性」欄に示す。
 A:絶縁被膜表面に摺動痕および剥離が無く、かつ、平面圧子に絶縁被膜の発粉の付着が無かった(平面圧子の表面のうち発粉が付着した面積率が0%)
 B:絶縁被膜表面に摺動痕および剥離は無いものの、平面圧子に絶縁被膜の発粉が若干量付着した(平面圧子の表面のうち発粉が付着した面積率が0%超~1%未満)
 C:絶縁被膜表面に筋状の摺動痕が生じ、平面圧子に絶縁被膜の発粉が少量付着した(平面圧子の表面のうち発粉が付着した面積率が1%以上3%未満)
 D:絶縁被膜の一部に剥離痕が生じ、平面圧子に絶縁被膜の発粉が多量に付着した(平面圧子の表面のうち発粉が付着した面積率が3%以上5%未満)
 E:絶縁被膜のほぼ全面に剥離痕が生じ、平面圧子に絶縁被膜の発粉が多量に付着した(平面圧子の表面のうち発粉が付着した面積率が5%以上)
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 [絶縁性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、次の方法により、絶縁性を評価した。JIS C2550-4:2019に準拠して、各試験番号の無方向性電磁鋼板の層間抵抗を測定した。得られた層間抵抗値に基づいて、絶縁性を次のとおりに評価した。得られた絶縁性評価を表3の「歪取焼鈍前特性 絶縁性」欄に示す。
 A:層間抵抗が30Ω・cm/枚以上
 B:層間抵抗が10Ω・cm/枚以上30Ω・cm/枚未満
 C:層間抵抗が3Ω・cm/枚以上10Ω・cm/枚未満
 D:層間抵抗が3Ω・cm/枚未満
 [耐蝕性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、次の方法により、耐蝕性を評価した。各試験番号の無方向性電磁鋼板から、幅30mm、長さ300mmの試験片を採取した。JIS Z2371:2015に記載の塩水噴霧試験に準拠して、35℃の雰囲気中で5%NaCl水溶液を7時間、試験片にスプレー噴霧した。その後、試験片の表面のうち、錆が発生した領域の面積率(以下、発錆面積率という)を求めた。求めた発錆面積に応じて、次の10点評価により、耐蝕性を評価した。得られた耐蝕性を表3の「歪取焼鈍前特性 耐蝕性」欄に示す。
 10:発錆面積率が0%
  9:発錆面積率が0.10%以下
  8:発錆面積率が0.10%超0.25%以下
  7:発錆面積率が0.25%超0.50%以下
  6:発錆面積率が0.50%超1.00%以下
  5:発錆面積率が1.00%超2.50%以下
  4:発錆面積率が2.50%超5.00%以下
  3:発錆面積率が5.00%超10.00%以下
  2:発錆面積率が10.00%超25.00%以下
  1:発錆面積率が25.00%超50.00%以下
 [耐溶出性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、次の方法により、耐溶出性を評価した。各試験番号の無方向性電磁鋼板から、幅30mm、長さ300mmの試験片を採取した。沸騰させた純水中で試験片を10分間煮沸した。煮沸後の純水(溶液)中に溶出したリン酸の量を測定した。具体的には、煮沸後の純水(溶液)を冷却した。溶液を純水で希釈して、ICP-AESにより、溶液中のリン酸濃度を測定した。希釈率から、リン酸の溶出量(mg/m)を求めた。結果を表3の「歪取焼鈍前特性 溶出性」欄に示す。
 [評価試験2]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して歪取焼鈍を実施した。各試験番号の無方向性電磁鋼板から、幅30mm、長さ300mmの試験片を採取した。試験片に対して歪取焼鈍を実施した。歪取焼鈍では、窒素気流中で、焼鈍温度を800℃とし、焼鈍時間を2時間とした。歪取焼鈍後の試験片に対して、密着性評価試験および耐蝕性評価試験を実施した。
 [密着性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、次の方法により、密着性を評価した。歪取焼鈍後の試験片の絶縁被膜上に粘着テープを貼付した。粘着テープを貼付した試験片を、直径10mmの金属棒に、試験片の長手方向を金属棒の軸方向と平行に、かつ、粘着テープが内側になるように巻き付けた。つまり、試験片に直径10mmの曲げを付与した。その後、金属棒から試験片を離した。試験片から粘着テープを引き剥がし、母材鋼板から剥がれずに残存した絶縁被膜の割合(面積率)を測定した。得られた面積率に基づいて、密着性を次のとおり評価した。
 A:残存した絶縁被膜の面積率が100%であった。つまり、絶縁被膜が剥がれなかった
 B:残存した絶縁被膜の面積率が90%以上100%未満であった
 C:残存した絶縁被膜の面積率が50%以上90%未満であった
 D:残存した絶縁被膜の面積率が30%以上50%未満であった
 E:残存した絶縁被膜の面積率が30%未満であった
 得られた密着性評価を表3の「歪取焼鈍後特性 密着性」欄に示す。評価A、評価B、および、評価Cを合格とした。
 [耐蝕性評価試験]
 各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、次の方法により、耐蝕性を評価した。歪取焼鈍後の各試験番号の試験片に対して、恒温恒湿試験を実施した。JIS C60068-2-30に記載の方法に準拠して、25℃から40℃の温度で、露点90~95%と、露点95~100%とのサイクルで240時間試験片を保持した。その後、試験片の表面のうち、錆が発生した領域の面積率(以下、発錆面積率という)を求めた。求めた発錆面積に応じて、次の10点評価により、耐蝕性を評価した。
 10:発錆面積率が0%
  9:発錆面積率が0.10%以下
  8:発錆面積率が0.10%超0.25%以下
  7:発錆面積率が0.25%超0.50%以下
  6:発錆面積率が0.50%超1.00%以下
  5:発錆面積率が1.00%超2.50%以下
  4:発錆面積率が2.50%超5.00%以下
  3:発錆面積率が5.00%超10.00%以下
  2:発錆面積率が10.00%超25.00%以下
  1:発錆面積率が25.00%超50.00%以下
 得られた耐蝕性を表3の「歪取焼鈍後特性 耐蝕性」欄に示す。評点が4点以上を合格とした。
 [評価結果]
 評価結果を表3に示す。表1~表3を参照して、試験番号1~10、16および17の絶縁被膜は、リン酸金属塩、および、有機樹脂を含んでいた。試験番号1~10、16および17の絶縁被膜の有機樹脂の含有量は、リン酸金属塩100質量部に対して、5~35質量部であった。有機樹脂は、リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有した。その結果、試験番号1~10、16および17の絶縁被膜は、歪取焼鈍後に優れた密着性および耐蝕性を示した。
 アクリル樹脂およびポリエステル樹脂を含有しなかった試験番号10の絶縁被膜と比較して、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される1種以上含有した試験番号1~9の絶縁被膜は、歪取焼鈍前の溶出性に優れた。
 アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の含有量がリン酸金属塩100質量部に対して1質量部未満であった試験番号9および10の絶縁被膜と比較して、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の含有量がリン酸金属塩100質量部に対して1質量部以上であった試験番号1~8の絶縁被膜は、歪取焼鈍後の密着性がさらに優れた。
 試験番号16および17では、それぞれほう酸およびコロイダルシリカが含まれている。その結果、試験番号1~8の絶縁被膜に比べて、歪取焼鈍後の密着性および耐蝕性がやや劣る結果となった。
 一方、試験番号11~13では、アミノ樹脂の含有量が少なすぎた。その結果、歪取焼鈍後の耐蝕性を高められなかった。
 試験番号14および15では、有機樹脂の含有量が多すぎた。その結果、歪取焼鈍後の密着性を高められなかった。
 以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
 1   無方向性電磁鋼板
 10  母材鋼板
 20  絶縁被膜
 201 リン酸金属塩
 202 有機樹脂

 

Claims (6)

  1.  母材鋼板と、
     前記母材鋼板の表面に形成されている絶縁被膜とを備え、
     前記絶縁被膜は、
     リン酸金属塩と、
     前記リン酸金属塩100質量部に対して、5~35質量部の有機樹脂とを含有し、
     前記有機樹脂は、前記リン酸金属塩100質量部に対して、5質量部以上のアミノ樹脂を含有する、
     無方向性電磁鋼板。
  2.  前記有機樹脂はさらに、
     アクリル樹脂およびポリエステル樹脂から選択される1種以上を含有する、
     請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3.  前記有機樹脂は、
     前記アミノ樹脂を、前記リン酸金属塩100質量部に対して、5~30質量部、および、
     前記アクリル樹脂および前記ポリエステル樹脂から選択される1種以上を、前記リン酸金属塩100質量部に対して、合計で1~25質量部含有する、
     請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4.  前記リン酸金属塩は、
     リン酸Zn、リン酸Mn、リン酸Al、および、リン酸Moから選択される1種以上である、
     請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5.  前記アミノ樹脂は、メラミン樹脂およびベンゾグアナミン樹脂から選択される1種以上である、
     請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  6.  前記母材鋼板は、質量%で、
     Si:2.5~4.5%、
     Al:0.1~1.5%、
     Mn:0.2~4.0%を含有する、
     請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
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