WO2023120271A1 - ヒートポンプシステム - Google Patents

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WO2023120271A1
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将成 沼田
悠 大船
誠司 伊藤
直樹 加藤
伸治 梯
達人 松本
郁 大塚
康広 大井
嗣史 藍川
亮 道川内
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株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
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    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
    • F25B1/00Compression machines, plants or systems with non-reversible cycle

Abstract

ヒートポンプシステムは、ヒートポンプサイクル(10)と、加熱部(30)と、低温側熱媒体回路(40)と、制御部(70)と、を有している。ヒートポンプサイクルは、圧縮機(11)と、凝縮器(12)と、減圧部(14b)と、蒸発器(16)と、を有する。加熱部は、凝縮器にて放熱される高圧冷媒が有する熱を熱源として、空調対象空間に送風される送風空気を加熱する。低温側熱媒体回路は、蒸発器にて冷媒に吸熱される低温側熱媒体が循環するように構成され、熱源装置(42、45、46)と、熱量調整部(41、44、47)と、を有する。制御部は、加熱部にて送風空気を加熱する為の熱移動量が予め定められた目標値に近づくように、圧縮機の回転数(Nc)と、熱源と熱量調整部の少なくとも一方の作動を制御して、低温側熱媒体の温度(Twl)を調整する。

Description

ヒートポンプシステム 関連出願の相互参照
 本出願は、2021年12月20日に出願された日本特許出願2021-205661号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
 本開示は、熱源装置を含む低温側熱媒体回路を有するヒートポンプシステムに関し、低温側熱媒体の有する熱を利用した暖房を行うヒートポンプシステムに関する。
 従来、ヒートポンプシステムとして、チラーを含むヒートポンプサイクルを用いて、低温側熱媒体回路を循環する低温側熱媒体の熱を汲み上げ、汲み上げた熱を活用する技術が知られている。例えば、このようなヒートポンプシステムとして、特許文献1に記載された技術を挙げることができる。
 特許文献1のヒートポンプシステムは、低温側熱媒体回路に、電気補助ヒータやバッテリを有しており、電気補助ヒータ等で生じた熱を、低温側熱媒体を介して、ヒートポンプサイクルで汲み上げ、車室内の暖房に利用している。
国際公開第2013/013790号
 ここで、特許文献1のようなヒートポンプシステムにおいて、低温側熱媒体の熱を利用した車室内の暖房を行う際に、暖房運転を取り巻く状況が変化すると、暖房性能に影響が出てしまうことが想定される。例えば、車室内暖房として要求される能力が変更された場合(設定温度の変更等)、低温側熱媒体を介する為、要求された暖房能力が実現されるタイミングが要求時期に対して遅延してしまうことが考えられる。又、暖房運転時における環境(車両の走行速度等)が変化した場合についても、低温側熱媒体を介する為、環境の変化に対する応答性に欠ける場合が想定される。
 本開示は、上記点に鑑み、熱源装置を含む低温側熱媒体回路を有するヒートポンプシステムに関し、低温側熱媒体の熱を利用した暖房を行う際の暖房能力の変動を抑えつつ、効率的な暖房が可能なヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
 本開示の一態様に係るヒートポンプシステムは、ヒートポンプサイクルと、加熱部と、低温側熱媒体回路と、制御部と、を有している。ヒートポンプサイクルは、圧縮機と、凝縮器と、減圧部と、蒸発器と、を有する。圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は圧縮機で圧縮された高圧冷媒を放熱させて凝縮させる。減圧部は凝縮器から流出した冷媒を減圧させる。蒸発器は減圧部で減圧された冷媒に吸熱させて蒸発させる。
 加熱部は、凝縮器にて放熱される高圧冷媒が有する熱を熱源として、空調対象空間に送風される送風空気を加熱する。低温側熱媒体回路は、蒸発器にて冷媒に吸熱される低温側熱媒体が循環するように構成され、熱源装置と、熱量調整部と、を有する。熱源装置は低温側熱媒体を加熱する。熱量調整部は低温側熱媒体が有する熱量を調整する。制御部は熱量調整部の作動を制御する。
 そして、制御部は、加熱部にて送風空気を加熱する為の熱移動量が予め定められた目標値に近づくように、圧縮機の回転数と、熱源と熱量調整部の少なくとも一方の作動を制御して、低温側熱媒体の温度を調整する。
 ヒートポンプシステムによれば、低温側熱媒体回路を循環する低温側熱媒体の熱を、ヒートポンプサイクルで汲み上げて、加熱部における送風空気の加熱に利用することができる。ヒートポンプシステムは、加熱部にて送風空気を加熱する為の熱移動量が予め定められた目標値に近づくように、圧縮機の回転数と、熱源装置と熱量調整部の少なくとも一方の作動を制御して、低温側熱媒体の温度を調整する。即ち、ヒートポンプシステムは、低温側熱媒体からの吸熱量と、低温側熱媒体に作用する熱量を用いて、低温側熱媒体温度を調整することにより、加熱部にて要求される送風空気の加熱能力を担保することができる。そして、ヒートポンプシステムによれば、低温側熱媒体回路における低温側熱媒体の熱容量を有効に活用することができるので、加熱部で要求される加熱能力の変動に適切に対応することができる。
 本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付図面を参照した下記詳細な説明から、より明確になる。
第1実施形態に係るヒートポンプシステムの全体構成図である。 第1実施形態に係る室内空調ユニットの模式的な構成図である。 第1実施形態に係るヒートポンプシステムの制御系を示すブロック図である。 第1実施形態に係る温調制御部の機能的構成を示す説明図である。 第1実施形態に係る暖房運転時の熱量調整プログラムに関するフローチャートである。 車両の走行速度と圧縮機の回転数上限値の関係を示す説明図である。 圧縮機の回転数、高温側熱移動量及び低温側熱媒体温度の関係を示す特性図である。 圧縮機の回転数、低温側熱移動量及び低温側熱媒体温度の関係を示す特性図である。 暖房要求の変化した場合の作動状態の一例を示す説明図である。 第1実施形態に係るヒートポンプシステムによる暖房運転の一例を示す説明図である。 第2実施形態に係る暖房運転時の熱量調整プログラムに関するフローチャートである。 車両の走行状態の変化に応じて暖房運転の目標値を変更した場合の作動状態の一例を示す説明図である。 車両の停車状態を基準として暖房運転の目標値を定めた場合の作動状態の一例を示す説明図である。 第3実施形態に係るヒートポンプシステムによる暖房運転の一例を示す説明図である。 第3実施形態における事前準備期間の算出に関する説明図である。 第4実施形態における予測機能設定プログラムに関するフローチャートである。 暖房停止状態から暖房運転を開始した場合の作動状態の一例を示す説明図である。 第4実施形態に係るヒートポンプシステムによる暖房運転の一例を示す説明図である。
 以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
 (第1実施形態)
 本開示における第1実施形態について、図1~図10を参照して説明する。第1実施形態では、本開示に係るヒートポンプシステム1を車両Aに適用している。車両Aは、走行用のバッテリを搭載しており、バッテリの電力で走行するBEV(Battery Electric Vehicle)である。
 ヒートポンプシステム1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調やバッテリや発熱機器46の温度調整を行う。
 そして、ヒートポンプシステム1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
 尚、ヒートポンプシステム1のヒートポンプサイクル10では、冷媒として、HFO系冷媒(具体的には、HFO1234yf)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
 次に、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1の具体的構成について、図1、図2を参照して説明する。第1実施形態に係るヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、加熱部30と、低温側熱媒体回路40と、室内空調ユニット60と、エネルギマネージャ70を有している。
 初めに、ヒートポンプシステム1におけるヒートポンプサイクル10を構成する各構成機器について説明する。ヒートポンプサイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。先ず、圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機11は車両ボンネット内に配置されている。
 圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述するエネルギマネージャ70から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。圧縮機11には、回転数上限値Nculが定められており、車両Aの走行速度が高いほど、高い回転数上限値Nculとなるように決定される。この点については後述する。
 そして、圧縮機11の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、加熱部30の高温側熱媒体回路31を循環する高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
 熱媒体冷媒熱交換器12は、ヒートポンプサイクル10の冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bを有している。熱媒体冷媒熱交換器12は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材はロウ付け接合によって一体化されている。
 これにより、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器12は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例であり、後述する加熱部30の一部を構成する。
 熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、三方継手構造の第1接続部13aが接続されている。第1接続部13aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。つまり、第1接続部13aは、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐する分岐部である。
 第1接続部13aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁14aを介して、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部の他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bを介して、チラー16の冷媒入口側が接続されている。
 第1膨張弁14aは、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時において、第1接続部13aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる。第1膨張弁14aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。第1膨張弁14aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
 第1膨張弁14aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁14aは、エネルギマネージャ70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
 又、第1膨張弁14aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁14aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
 そして、第1膨張弁14aは、冷媒通路を閉塞することで、空調用蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁14aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。又、第1膨張弁14aは、冷媒通路に対する絞り開度を調整することで、空調用蒸発器15に流入する冷媒流量を調整することができる。
 第1膨張弁14aの出口には、空調用蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。図2に示すように、空調用蒸発器15は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。空調用蒸発器15は、少なくとも送風空気を冷却する運転モード時に、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気を冷却する。
 図1に示すように、第1接続部13aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bが接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも暖房モード時において、第1接続部13aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる。
 第2膨張弁14bは、第1膨張弁14aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁14bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
 つまり、第2膨張弁14bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁14bは、冷媒通路を閉塞することで、チラー16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁14bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。第2膨張弁14bは減圧部の一例である。
 第2膨張弁14bの出口には、チラー16の冷媒入口側が接続されている。チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。
 チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路16aと、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路16bとを有している。従って、チラー16は、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体から吸熱する蒸発器である。即ち、チラー16は蒸発器の一例に相当する。
 図1に示すように、空調用蒸発器15の冷媒出口には、第2接続部13bの一方の冷媒入口側が接続されている。又、チラー16の冷媒出口側には、第2接続部13bの他方の冷媒入口側が接続されている。ここで、第2接続部13bは、第1接続部13aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としている。
 従って、第2接続部13bは、空調用蒸発器15から流出した冷媒の流れとチラー16から流出した冷媒の流れとを合流させる合流部である。そして、第2接続部13bの冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
 次に、ヒートポンプシステム1における加熱部30について説明する。加熱部30は、ヒートポンプサイクル10における高圧冷媒を熱源として、空調対象空間に供給される送風空気を加熱する為の構成である。
 第1実施形態に係る加熱部30は、高温側熱媒体回路31によって構成されている。高温側熱媒体回路31は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
 図1に示すように、高温側熱媒体回路31には、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、高温側ポンプ32、ヒータコア33、高温側外気熱交換器34、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36等が配置されている。
 上述したように、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bでは、高温側熱媒体が、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒との熱交換によって加熱される。即ち、高温側熱媒体は、ヒートポンプサイクル10で汲み上げられた熱を用いて加熱される。
 熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける入口側には、高温側ポンプ32の吐出口が接続されている。高温側ポンプ32は、高温側熱媒体回路31にて高温側熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ32は、エネルギマネージャ70から出力される制御電圧により、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
 熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける出口側には、高温側ヒータ36が接続されている。高温側ヒータ36は、電力を供給されることによって発熱し、高温側ヒータ36の熱媒体通路を流れる高温側熱媒体を加熱する。高温側ヒータ36としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。高温側ヒータ36は、エネルギマネージャ70から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。
 高温側ヒータ36における熱媒体通路の出口側には、高温側流量調整弁35の流入口が接続されている。高温側流量調整弁35は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
 高温側流量調整弁35の一方の流出口には、ヒータコア33の流入口が接続されている。ヒータコア33は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と空調用蒸発器15を通過した送風空気とを熱交換させ、送風空気を加熱する熱交換器である。図2に示すように、ヒータコア33は、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。従って、ヒータコア33は暖房用熱交換器の一例に相当する。
 そして、高温側流量調整弁35における他方の流出口には、高温側外気熱交換器34の流入口が接続されている。高温側外気熱交換器34は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と外気OAとを熱交換させて、高温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱させる。
 高温側外気熱交換器34は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。車両Aの走行に伴って、外気OAは車両前方側から後方へ流れ、高温側外気熱交換器34の熱交換部を通過する。従って、高温側外気熱交換器34は、走行風を利用して外気OAに放熱することができる。
 そして、高温側外気熱交換器34の流出口及びヒータコア33の流出口には、三方継手構造の高温側合流部が接続されている。高温側合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。従って、高温側合流部は、高温側外気熱交換器34を通過した高温側熱媒体の流れと、ヒータコア33を通過した高温側熱媒体の流れとを合流させることができる。そして、高温側合流部における流出口には、高温側ポンプ32の吸込口が接続されている。
 このように、第1実施形態の高温側熱媒体回路31において、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する高温側熱媒体の流れに関して、高温側外気熱交換器34と、ヒータコア33は並列に接続されている。そして、高温側流量調整弁35は、高温側熱媒体回路31において、ヒータコア33側へ流入する高温側熱媒体の流量と、高温側外気熱交換器34に流入する高温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整することができる。
 つまり、高温側流量調整弁35の動作を制御することで、高温側外気熱交換器34にて外気OAに放熱される高温側熱媒体の熱量と、ヒータコア33にて送風空気に放熱される高温側熱媒体の熱量とを調整することができる。
 続いて、ヒートポンプシステム1における低温側熱媒体回路40について説明する。低温側熱媒体回路40は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体回路31における高温側熱媒体と同様の流体を採用できる。
 低温側熱媒体回路40には、チラー16の熱媒体通路16b、低温側ポンプ41、バッテリ用熱交換部42、低温側外気熱交換器43、低温側流量調整弁44、低温側ヒータ45、発熱機器46、シャッター装置47等が配置されている。チラー16における熱媒体通路16bの流入口には、低温側ポンプ41の吐出口側が接続されている。
 低温側ポンプ41は、低温側熱媒体回路40において、チラー16の熱媒体通路16bへ低温側熱媒体を圧送する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ41の基本的構成は、高温側ポンプ32と同様である。チラー16等を通過する低温側熱媒体の流量を調整することができる為、低温側ポンプ41は熱量調整部の一例に相当する。
 チラー16の熱媒体通路16bにおける流出口には、発熱機器46における熱媒体通路の入口側が接続されている。発熱機器46は、車両Aに搭載された車載機器の内、走行等を目的とした作動に伴って付随的に発熱する機器によって構成されている。発熱機器46は、熱源装置の一例に相当する。
 発熱機器46には、インバータINV、モータジェネレータMGが含まれている。発熱機器46の熱媒体通路は、熱媒体を流通させることで、それぞれの構成機器を冷却できるように形成されている。
 インバータINVは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータMGは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
 尚、発熱機器46として、トランスアクスル装置を採用することも可能である。トランスアクスル装置は、トランスミッションとファイナルギア・ディファレンシャルギア(デフギア)を一体化した装置である。
 発熱機器46における熱媒体通路の出口側には、バッテリ用熱交換部42の熱媒体通路42aの入口側が接続されている。バッテリ用熱交換部42は、低温側熱媒体回路40にて低温側熱媒体により冷却可能に接続されており、予め定められた温度範囲内にバッテリの温度を維持するように構成されている。具体的には、バッテリ用熱交換部42の熱媒体通路42aに低温側熱媒体を通過させて熱交換させることで、バッテリで生じた熱を低温側熱媒体に吸熱させて、バッテリの温度調整を行っている。バッテリ用熱交換部42及びバッテリは熱源装置の一例に相当する。
 ここで、バッテリは、車両Aの各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。バッテリは、充放電に際して発熱する。バッテリは、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列或いは並列に接続することで形成された、いわゆる組電池である。この種のバッテリは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。
 この為、バッテリの温度は、バッテリの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、10℃以上かつ40℃以下)に維持されている必要がある。この為、ヒートポンプシステム1では、バッテリ用熱交換部42を流通する低温側熱媒体の流量等を制御することで、バッテリの温度を適切に調整している。
 そして、バッテリ用熱交換部42の熱媒体通路42aの出口側には、低温側流量調整弁44が接続されている。低温側流量調整弁44は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。図1に示すように、低温側流量調整弁44の流入口には、バッテリ用熱交換部42の熱媒体通路42aの出口側が接続されている。
 そして、低温側流量調整弁44の一方の流出口には、低温側外気熱交換器43の流入口側が接続されている。低温側外気熱交換器43は、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体と、外気ファン43aにより送風された外気OAとを熱交換させる熱交換器である。又、低温側外気熱交換器43は、駆動装置室内の前方側に配置されている。この為、車両走行時には、低温側外気熱交換器43に走行風を当てることができる。
 低温側外気熱交換器43の流出口には、低温側ヒータ45が接続されている。低温側ヒータ45は、電力を供給されることによって発熱し、低温側ヒータ45の熱媒体通路を流れる低温側熱媒体を加熱する。低温側ヒータ45は熱源装置の一例に相当する。
 低温側ヒータ45としては、高温側ヒータ36と同様に、PTCヒータを用いることができる。そして、低温側ヒータ45は、エネルギマネージャ70から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。低温側ヒータにおける熱媒体通路の流出口には、低温側ポンプ41の吸込口側が接続されている。
 ここで、低温側流量調整弁44の他方の流出口には、低温側外気熱交換器43を迂回するように低温側熱媒体を流通させるバイパス流路の一端側が接続されている。バイパス流路の他端側には、三方継手構造の合流部が接続されている。合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の2つを流入口とし、残りの1つを流出口としている。
 合流部は、低温側外気熱交換器43の流出口と低温側ヒータ45の流入口を接続する熱媒体流路に配置されている。従って、合流部は、低温側外気熱交換器43を流通した低温側熱媒体の流れと、バイパス流路を流通した低温側熱媒体の流れを合流させて、低温側ポンプ41の吸込口側へ流出させる。
 この為、低温側流量調整弁44は、チラー16の熱媒体通路16bを通過した低温側熱媒体の流れに関して、低温側外気熱交換器43を通過する低温側熱媒体の流量と、低温側外気熱交換器43を迂回する低温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整できる。即ち、低温側熱媒体回路40は、低温側流量調整弁44の作動を制御することで、低温側熱媒体の流れを切り替えることができる。低温側流量調整弁44は熱量調整部の一例に相当する。
 図1に示すように、低温側熱媒体回路40においては、低温側外気熱交換器43に対する機器として、外気ファン43aと、シャッター装置47が配置されている。外気ファン43aは、低温側外気熱交換器43に対して外気OAを送風するように配置されている。外気ファン43aは、エネルギマネージャ70から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。即ち、外気ファン43aは、低温側外気熱交換器43に対する外気の風速(風量)を調整することができるので、低温側熱媒体に対する熱量の調整に利用することができる。外気ファン43aが熱量調整部の一例に相当する。
 そして、低温側外気熱交換器43の車両前方側には、シャッター装置47が配置されている。シャッター装置47は、枠状のフレームの開口部に、複数のブレードを回転可能に配置して構成されている。複数のブレードは、図示しない電動アクチュエータの作動によって連動して回転し、フレームの開口部における開口面積を調整する。
 これにより、シャッター装置47は、低温側外気熱交換器43を通過する外気OAの流量を調整することができ、低温側外気熱交換器43における熱交換能力を調整することができる。従って、シャッター装置47は熱量調整部の一例に相当する。
 次に、ヒートポンプシステム1を構成する室内空調ユニット60について、図2を参照して説明する。室内空調ユニット60は、ヒートポンプシステム1において、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット60は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
 室内空調ユニット60は、その外殻を形成するケーシング61の内部に形成される空気通路に、送風機62、空調用蒸発器15、ヒータコア33等を収容して構成されている。ケーシング61は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。ケーシング61は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
 図2に示すように、ケーシング61の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
 内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、エネルギマネージャ70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
 内外気切替装置63の送風空気流れ下流側には、送風機62が配置されている。送風機62は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機62は、エネルギマネージャ70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
 送風機62の送風空気流れ下流側には、空調用蒸発器15及びヒータコア33が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、空調用蒸発器15は、ヒータコア33よりも送風空気流れ上流側に配置されている。従って、ヒートポンプシステム1の室内空調ユニット60では、空調用蒸発器15を通過した送風空気の少なくとも一部を、ヒータコア33によって加熱することができる。
 又、ケーシング61内には、冷風バイパス通路65が形成されている。冷風バイパス通路65は、空調用蒸発器15を通過した送風空気を、ヒータコア33を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
 空調用蒸発器15の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア33の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。エアミックスドア64は、空調用蒸発器15を通過後の送風空気のうち、ヒータコア33を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整する。
 エアミックスドア64は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、エネルギマネージャ70から出力される制御信号により、その作動が制御される。
 そして、ヒータコア33の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア33にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路65を通過してヒータコア33にて加熱されていない送風空気とが混合される。
 更に、ケーシング61の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
 フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
 これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
 従って、エアミックスドア64が、ヒータコア33を通過させる風量と冷風バイパス通路65を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
 そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
 これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、エネルギマネージャ70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
 次に、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1の制御系について、図3、図4を参照して説明する。エネルギマネージャ70は、ヒートポンプシステム1を含む車両Aを構成する各機器の作動を制御する。図3に示すように、エネルギマネージャ70は、温調制御部71、運動マネージャ80、空調マネージャ81、高温側マネージャ82、サイクルマネージャ83、低温側マネージャ84、情報通知部85を有している。
 ここで、エネルギマネージャ70は、処理部、RAM、記憶部、入出力インターフェース、及びこれらを接続するバス等を備えた車載コンピュータによって実現されている。処理部は、RAMと結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部は、RAMへのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現させる種々の処理を実行する。記憶部は、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。記憶部には、処理部によって実行される種々のプログラム(熱量調整プログラム等)が格納されている。エネルギマネージャ70の具体的構成及び各機能部については、後に詳細に説明する。
 そして、車両Aには、エネルギマネージャ70と共に、通信モジュール90、ナビゲーション装置91、ユーザ入力部92、複数の消費ドメインDEc等が搭載されている。
 通信モジュール90は、車両Aに搭載される通信モジュール(Data Communication Module)である。通信モジュール90は、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の通信規格に沿った無線通信により、車両Aの周囲の基地局との間で電波を送受信する。通信モジュール90の搭載により、車両Aは、ネットワークNWに接続可能なコネクテッドカーとなる。
 通信モジュール90は、ネットワークNWを通じて、クラウドサーバ100等との間で情報を送受信できる。クラウドサーバ100は、クラウド上に設置された情報配信サーバであり、例えば、気象情報及び道路交通情報等を配信する。
 ナビゲーション装置91は、ユーザによって設定された目的地までの走行経路を案内する車載装置である。ナビゲーション装置91は、画面表示及び音声再生等により、交差点、分岐ポイント及び合流ポイント等にて、直進、右左折及び車線変更等の誘導を行う。ナビゲーション装置91は、ナビ情報として、目的地までの距離、各走行区間での車速、高低差等の情報を、環境情報として、エネルギマネージャ70に提供可能である。
 尚、走行経路には、一般道と高速道路のように、走行区間によって速度域が異なる区間が含まれる場合がある。高速道路における法定速度は、一般道に定められている法定速度よりも大きい為、高速道路での走行で要求されるバッテリの出力は、一般道を走行する場合よりも大きくなることが想定される。
 走行経路には、平野部で構成される走行区間と、山間部で構成される走行区間が含まれる場合がある。山間部を走行する走行区間が一定以上の斜度で坂を登る走行区間で構成されている場合があり、この登坂区間を走行する場合に要求されるバッテリの出力は、平野部を走行する場合よりも大きくなることが想定される。
 ユーザ入力部92は、車両Aの乗員であるユーザによる入力操作を受け付ける操作デバイスである。ユーザ入力部92には、例えば、ナビゲーション装置91を操作するユーザ操作、暖房予測の有効・無効の切り替えを行うユーザ操作、車両Aに関連する種々の設定値を変更するユーザ操作等が入力される。ユーザ入力部92は、ユーザ操作に基づく入力情報を、エネルギマネージャ70に提供可能である。
 例えば、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、センターコンソール等に設置されたスイッチ及びダイヤル、並びにドライバの発話を検出する音声入力装置等が、ユーザ入力部92として車両Aに搭載される。又、ナビゲーション装置91のタッチパネル等がユーザ入力部92として機能してもよい。更に、スマートフォン及びタブレット端末等のユーザ端末が、有線又は無線によってエネルギマネージャ70に接続されることで、ユーザ入力部92として機能してもよい。
 消費ドメインは、バッテリ等の電力の使用により、種々の車両機能を実現する車載機器群である。一つの消費ドメインは、少なくとも一つのドメインマネージャを含んでおり、ドメインマネージャによって電力の消費を管理されるひと纏まりの車載機器群によって構成される。そして、複数の消費ドメインには、走行制御ドメイン及び温調制御ドメインが含まれている。
 走行制御ドメインは、車両Aの走行を制御する消費ドメインである。走行制御ドメインには、モータジェネレータMG、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCS、及び運動マネージャ80が含まれている。
 モータジェネレータMGは、車両Aを走行させるための駆動力を発生させる駆動源である。インバータINVは、モータジェネレータMGによる力行及び回生を制御する。ステア制御システムSCSは、車両Aの操舵を制御する。ブレーキ制御システムBCSは、車両Aに生じさせる制動力を制御する。
 インバータINVは、モータジェネレータMGによる力行時において、バッテリより供給される直流電力を三相交流電力に変換し、モータジェネレータMGに供給する。インバータINVは、交流電力の周波数、電流及び電圧を調節可能であり、モータジェネレータMGの発生駆動力を制御する。一方、モータジェネレータMGによる回生時において、インバータINVは、交流電力を直流電力に変換し、バッテリに供給する。
 運動マネージャ80は、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCSを統合的に制御し、ドライバの運転操作に従った車両Aの走行を実現させる。運動マネージャ80は、走行制御ドメインのドメインマネージャとして機能し、モータジェネレータMG、インバータINV、ステア制御システムSCS及びブレーキ制御システムBCSのそれぞれによる電力の消費を総合的に管理する。
 又、運動マネージャ80は、動力伝達制御部80aを有している。動力伝達制御部80aは、インバータINV、ステア制御システムSCS、ブレーキ制御システムBCSを統合的に制御して、車両Aの走行に関する制御を行う。
 そして、温調制御ドメインは、車両Aの居室空間の空気調和と、バッテリの温度調整とを実施する消費ドメインである。温調制御ドメインは、室内空調ユニット60に関する消費ドメイン、高温側熱媒体回路31に係る消費ドメイン、ヒートポンプサイクル10に係る消費ドメイン、低温側熱媒体回路40に係る消費ドメインを含んでいる。
 室内空調ユニット60に係る消費ドメインには、室内空調ユニット60の構成機器及び空調マネージャ81を含んでいる。室内空調ユニット60の構成機器としては、送風機62、内外気切替装置63、エアミックスドア64の電動アクチュエータ等を挙げることができる。空調マネージャ81は、室内空調ユニット60の構成機器に関するドメインマネージャであり、各構成機器を総合的に制御して、ユーザ所望の空調環境を実現させる。空調制御部81aは、空調風の風量や空調風における内外気の割合を調整すると共に、室内空調ユニット60における各構成機器の電力消費を総合的に管理する。
 そして、高温側熱媒体回路31に関する消費ドメインには、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36及び高温側マネージャ82が含まれている。高温側マネージャ82は、高温側熱媒体回路31の構成機器に関するドメインマネージャであり、高温側熱媒体回路31における高温側熱媒体の流れが所望の状態になるように制御する。
 高温側マネージャ82は、回路制御部82aを有しており、回路制御部82aにより、高温側ポンプ32における高温側熱媒体の圧送能力、高温側流量調整弁35における流量バランス、高温側ヒータ36における高温側熱媒体の加熱量が制御される。
 又、高温側マネージャ82には、高温側熱媒体回路31に配置された複数の温度センサにより、高温側熱媒体回路31を循環する高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度Twhが入力される。従って、高温側マネージャ82は、検出された高温側熱媒体温度Twhを用いて、高温側ヒータ36の発熱量等を制御することができる。
 ヒートポンプサイクル10に関する消費ドメインには、圧縮機11、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b及びサイクルマネージャ83が含まれている。サイクルマネージャ83は、ヒートポンプサイクル10の構成機器に関するドメインマネージャであり、ヒートポンプサイクル10を循環する冷媒の状態が所望の状態になるように制御する。
 サイクルマネージャ83は、回路制御部83aを有しており、回路制御部83aによって、圧縮機11の冷媒吐出能力(回転数)、第1膨張弁14aにおける減圧量、第2膨張弁14bにおける減圧量が制御される。
 又、サイクルマネージャ83には、ヒートポンプサイクル10に配置された冷媒温度センサや冷媒圧力センサにより、冷媒温度や冷媒圧力に関する検出結果が入力される。従って、サイクルマネージャ83は、検出された冷媒温度や冷媒圧力の値を用いて、圧縮機11の回転数や第1膨張弁14a等の絞り開度等を調整することができる。
 低温側熱媒体回路40に関する消費ドメインには、低温側ポンプ41、低温側流量調整弁44、低温側ヒータ45、シャッター装置47及び低温側マネージャ84が含まれている。低温側マネージャ84は、低温側熱媒体回路40の構成機器に関するドメインマネージャであり、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の流れが所望の状態になるように制御する。
 低温側マネージャ84は、回路制御部84aを有しており、回路制御部84aにより、低温側ポンプ41における低温側熱媒体の圧送能力、低温側流量調整弁44における流量バランス等が制御される。更に、回路制御部84aは、低温側ヒータ45における低温側熱媒体の加熱量や、シャッター装置47における開口面積についての制御を行う。
 又、低温側マネージャ84には、低温側熱媒体回路40に配置された複数の温度センサにより、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体の温度である低温側熱媒体温度Twlが入力される。従って、低温側マネージャ84は、検出された低温側熱媒体温度Twlを用いて、低温側ヒータ45の発熱量等を制御することができる。
 尚、低温側熱媒体温度Twlを検出する温度センサのうち少なくとも一つは、チラー16の熱媒体通路16bにおける入口側に配置されており、チラー16に流入する低温側熱媒体の低温側熱媒体温度Twlを検出する。
 図3に示すように、第1実施形態に係るエネルギマネージャ70は、温調制御部71、運動マネージャ80、空調マネージャ81、高温側マネージャ82、サイクルマネージャ83、低温側マネージャ84、情報通知部85を有している。上述したように、バッテリマネージャ、運動マネージャ80、熱マネージャは、それぞれ特定機能(例えば、車両の走行機能や温調機能)に係る制御を司る車載コンピュータであり、エネルギマネージャ70の一部を構成している。
 そして、温調制御部71は、バッテリマネージャ、運動マネージャ80、熱マネージャから出力された種々の情報を用いて、各消費ドメインによる電力の使用を統合的に管理する。温調制御部71は、車載コンピュータにより構成され、エネルギマネージャ70の一部を構成している。温調制御部71は、エネルギマネージャ70における制御処理の主要な役割を果たす。
 情報通知部85は、クラウドサーバ100等から取得した種々の情報を通知する為のドメインマネージャとして機能する車載コンピュータであり、エネルギマネージャ70の一部を構成している。情報通知部85には、車両Aのユーザに情報を通知する為の消費ドメインが接続されている。例えば、ナビゲーション装置91のディスプレイやスピーカ、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)に配置された表示部等が情報通知部85に接続されている。
 従って、情報通知部85は、温調制御部71で特定された情報を、ナビゲーション装置91のディスプレイ等に表示することができる。又、情報通知部85は、温調制御部71で特定された情報を、ナビゲーション装置91のスピーカから、音声出力することができる。ナビゲーション装置91のディスプレイやスピーカ等は、情報伝達部の一例に相当する。
 尚、車載コンピュータであるエネルギマネージャ70への電力供給は、車両Aが非走行可能状態(例えば、イグニッションオフの状態)であっても継続されている。その為、エネルギマネージャ70は、放置期間においても、制御実行の必要があれば、各機能部を起動して所定の処理を実行できる。
 上述したように、ヒートポンプシステム1には、ヒートポンプシステム1による空調動作や機器温調動作を適切に行う為に、制御用センサ群が配置されている。エネルギマネージャ70には、ヒートポンプシステム1における制御対象機器を制御する為の制御用センサ群が接続されている。制御用センサ群は、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、高圧センサ、蒸発器温度センサ、合流部圧力センサを含んでいる。
 内気温センサは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
 蒸発器温度センサは、空調用蒸発器15における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。合流部圧力センサは、ヒートポンプサイクル10の第2接続部13bにおける冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出部である。合流部圧力は、ヒートポンプサイクル10の低圧側における冷媒圧力を示す。
 更に、制御用センサ群は、バッテリ温度センサ、送風空気温度センサ、吸込空気温度センサを含んでいる。バッテリ温度センサは、バッテリの温度であるバッテリ温度を検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサは、複数の温度検出部を有し、バッテリにおける複数の箇所の温度を検出している。この為、エネルギマネージャ70では、バッテリの各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBAとしては、複数の温度検出部における検出値の平均値を採用している。
 そして、送風空気温度センサは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度検出部である。吸込空気温度センサは、空調用蒸発器15に対して流入する送風空気の温度である吸込空気温度を検出する吸込空気温度検出部である。吸込空気温度センサは、室内空調ユニット60のケーシング61内部において、空調用蒸発器15に対して送風空気流れの上流側に配置されている。
 更に、制御用センサ群には、高温側熱媒体回路31、低温側熱媒体回路40における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが含まれている。複数の熱媒体温度センサは、第1熱媒体温度センサ~第5熱媒体温度センサを有している。第1熱媒体温度センサは、高温側ヒータ36の熱媒体通路における出口部分に配置されており、高温側ヒータ36から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。
 第2熱媒体温度センサは、高温側外気熱交換器34の出口部分に配置されており、高温側外気熱交換器34を通過した高温側熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサは、ヒータコア33の入口部分に配置されており、ヒータコア33に流入する高温側熱媒体の温度を検出する。
 第4熱媒体温度センサは、チラー16の熱媒体通路16bにおける入口部分に配置されており、チラー16に流入する低温側熱媒体の温度を検出する。第5熱媒体温度センサは、低温側外気熱交換器43の出口部分に配置されており、低温側外気熱交換器43から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。
 ここで、エネルギマネージャ70の温調制御部71では、消費ドメイン及び給電ドメインとして接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されている。図4に示すように、温調制御部71において、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
 例えば、温調制御部71のうち、車室内の暖房を行う際に、目標吹出温度TaO等を用いて、熱媒体冷媒熱交換器12にて冷媒から高温側熱媒体への熱移動量として要求される高温側熱移動量Qhを設定する構成は、高温側熱移動量設定部71aを構成している。
 又、温調制御部71のうち、車室内暖房を行う際に、要求される高温側熱移動量Qhを実現する為に必要な高温側熱媒体温度Twhの目標値として、目標高温側熱媒体温度Twohを設定する構成は、目標高温側熱媒体温度設定部71bを構成している。
 そして、温調制御部71のうち、車両Aの走行速度に応じて、圧縮機11の回転数上限値Nculを設定する構成は、回転数上限値設定部71cを構成する。回転数上限値設定部71cは、車両Aの走行速度が高いほど、圧縮機11の回転数上限値を高く設定する。
 又、温調制御部71のうち、車室内暖房を行う際に、要求される暖房能力を実現する為に必要な低温側熱媒体温度Twlの目標値として、目標低温側熱媒体温度Twolを設定する構成は、目標低温側熱媒体温度設定部71dを構成する。目標低温側熱媒体温度設定部71dは、高温側熱移動量Qh、圧縮機11の回転数上限値Nculとの関係性に従って設定される。
 そして、温調制御部71のうち、環境情報に基づいて、ヒートポンプシステム1が搭載されている車両Aの将来的な走行状況を推定する構成は、走行状況推定部71eを構成する。車両Aの将来的な走行状況とは、将来的な車両Aの停車、走行の別や、車両Aが走行している場合の走行速度域等の状況を示す。
 環境情報には、車両Aの外部より提供される情報が含まれており、例えば、クラウドサーバ100等より配信されるセンタ情報を挙げることができる。又、環境情報には、気象情報及び道路交通情報等が含まれている。気象情報には、ナビゲーション装置91に設定された走行経路上の外気温、日射量、路面からの輻射熱量、及び降雨や降雪の有無等を示す情報等が含まれている。
 更に、環境情報には、車両Aの走行に影響する情報のうちで、車両Aの内部にて生成される情報が含まれている。例えば、ナビゲーション装置91、給電ドメイン及び消費ドメイン等より提供される情報は、環境情報の一例に相当する。ナビゲーション装置91から提供される情報としては、目的地までの距離、各区間の車速及び高低差に加えて、例えば、信号機の数(停車回数)、法定速度、道路の斜度等の情報が含まれている。
 そして、ユーザ入力部92から提供される情報を環境情報として取得してもよい。この場合、車両Aに乗車中のユーザがユーザ入力部92に入力した情報であってもよく、車両Aの外部にいるユーザがユーザ入力部92として機能するユーザ端末に入力した情報であってもよい。更に、エネルギマネージャ70等のシステム側からの問い合わせに対しユーザがリアルタイムに入力した情報であってもよく、ユーザの過去の操作によって記録された設定値を示す情報であってもよい。ユーザ入力部92を用いて入力されるユーザの入力操作には、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等の入力操作が含まれる。
 オートスイッチは、ヒートポンプシステム1による空調動作の自動制御を設定或いは解除する際に操作される。エアコンスイッチは、空調用蒸発器15にて送風空気の冷却を行うことを要求する際に操作される。エアコンスイッチは、その入力操作によって、送風空気の冷却の有無を切り替えるように構成されている。風量設定スイッチは、送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度である車室内設定温度Tsetを設定する際に操作される。
 そして、環境情報のうち、消費ドメインから提供される情報としては、各消費ドメインの状態を示すステータス情報を挙げることができる。例えば、ステータス情報には、居室空間の空調の設定温度(以下、「空調要求情報」)及び現在温度を示す空調情報、熱媒体回路における熱媒体の温度情報、モータジェネレータMG及びインバータINV等の状態(例えば、現在温度等)を示す情報等が含まれる。
 尚、環境情報としては、現在の実測値を含む情報に限定されるものではなく、将来の推定値を含む情報を含めることができる。具体的には、車両Aには、将来的な使用スケジュールが設定可能である。
 更に、温調制御部71のうち、環境情報として取得した種々の情報を用いて、走行している車両Aにて車室内暖房が行われる可能性を予測する構成は、暖房予測部71fを構成する。
 続いて、第1実施形態におけるヒートポンプシステム1の空調動作について説明する。上述したように、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、エネルギマネージャ70に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
 より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号およびユーザ入力部92から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TaOを算出する。
 具体的には、目標吹出温度TaOは、以下数式F1によって算出される。
TaO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
 尚、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサによって検出された内気温、Tamは外気温センサによって検出された外気温、Asは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
 そして、制御プログラムにおいては、ユーザ入力部92のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TaOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている際には、空調運転モードを冷房モードに切り替える。
 又、制御プラグラムでは、ユーザ入力部92のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TaOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを除湿暖房モードに切り替える。更に、エアコンスイッチが投入されていない状態で、目標吹出温度TaOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを暖房モードに切り替える。
 (a)冷房モード
 冷房モードは、ヒートポンプサイクル10を利用して、空調用蒸発器15により送風空気を冷却して車室内に送風する運転モードである。冷房モードでは、エネルギマネージャ70のサイクルマネージャ83は、第1膨張弁14aを予め定められた絞り開度で開き、第2膨張弁14bを全閉する。
 従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順で流れる冷媒の循環回路が構成される。
 そして、このサイクル構成で、エネルギマネージャ70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、サイクルマネージャ83は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14aの絞り開度を制御し、空調マネージャ81は、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
 又、冷房モードの高温側熱媒体回路31では、高温側マネージャ82は、高温側ポンプ32及び高温側流量調整弁35を、冷房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側ヒータ36、高温側流量調整弁35、高温側外気熱交換器34、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
 尚、冷房モードの低温側熱媒体回路40では、チラー16に低圧冷媒が流入していない為、低温側マネージャ84は、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の循環を停止させた状態にすることも可能である。
 従って、冷房モードのヒートポンプシステム1では、空調用蒸発器15にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
 (b)暖房モード
 暖房モードは、ヒートポンプサイクル10を用いて、低温側熱媒体の有する熱を汲み上げ、ヒータコア33により送風空気を加熱して車室内に送風する運転モードである。暖房モードでは、サイクルマネージャ83は、第1膨張弁14aを全閉状態にし、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開く。従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
 このサイクル構成で、エネルギマネージャ70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、サイクルマネージャ83は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第2膨張弁14bの絞り開度を制御し、空調マネージャ81は、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
 そして、暖房モードの高温側熱媒体回路31について、高温側マネージャ82は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36を、暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
 この時、高温側マネージャ82は、高温側ヒータ36から高温側外気熱交換器34に流入した高温側熱媒体の一部を、高温側外気熱交換器34を介して、高温側ポンプ32の吸込口側へ流出させても良い。これにより、高温側熱媒体の有する熱の一部が、高温側外気熱交換器34で外気に放熱されることになる為、ヒータコア33における暖房能力を所望の状態に調整することができる。
 又、暖房モードの低温側熱媒体回路40に関し、低温側マネージャ84は、低温側熱媒体の循環径路が暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41、外気ファン43a、低温側流量調整弁44、発熱機器46、シャッター装置47を制御する。具体的には、低温側マネージャ84は、低温側ポンプ41の圧送能力、外気ファン43aの送風能力、低温側流量調整弁44における流量バランス、発熱機器46の発熱量、シャッター装置47の開度等を制御する。
 これにより、低温側熱媒体回路40において、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、発熱機器46、バッテリ用熱交換部42、低温側流量調整弁44、低温側外気熱交換器43、低温側ヒータ45、低温側ポンプ41の順で循環する。
 この態様によれば、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体に対して、バッテリや発熱機器46の排熱を蓄熱しておくことができ、車室内暖房の熱源として利用することができる。又、低温側マネージャ84は、低温側ヒータ45により低温側熱媒体を加熱する熱量を調整することができ、外気ファン43a及びシャッター装置47により、低温側外気熱交換器43にて低温側熱媒体と外気の間で熱交換させる熱量を調整することができる。これにより、低温側熱媒体が有する熱量を所望の状態に調整することができ、暖房の熱源を確保することができる。
 暖房モードのヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路40の低温側熱媒体が有する熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路31を介して、送風空気の加熱に利用した暖房運転を行うことができる。
 (c)除湿暖房モード
 除湿暖房モードは、ヒートポンプサイクル10を利用して、空調用蒸発器15で冷却された送風空気をヒータコア33で加熱して車室内に送風する運転モードである。除湿暖房モードでは、サイクルマネージャ83は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
 従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、空調用蒸発器15、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。つまり、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器15及びチラー16が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
 このサイクル構成で、エネルギマネージャ70は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、サイクルマネージャ83は、圧縮機11の冷媒吐出能力、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの絞り開度を制御し、空調マネージャ81は、送風機62の送風能力、エアミックスドア64の開度等を制御する。
 そして、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路31について、高温側マネージャ82は、高温側ポンプ32、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36を、除湿暖房モードに適した状態になるように制御する。これにより、高温側熱媒体回路31において、高温側熱媒体は、高温側ポンプ32、熱媒体冷媒熱交換器12、高温側流量調整弁35、高温側ヒータ36、ヒータコア33、高温側ポンプ32の順で流れて循環する。
 又、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路40に関し、低温側マネージャ84は、除湿暖房モードに適した状態になるように、低温側ポンプ41、外気ファン43a、低温側流量調整弁44及びシャッター装置47を制御する。具体的には、低温側マネージャ84は、低温側ポンプ41の圧送能力、外気ファン43aの送風能力、低温側流量調整弁44における流量バランス、発熱機器46の発熱量、シャッター装置47の開度等を制御する。
 この結果、低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体は、低温側ポンプ41、チラー16、発熱機器46、バッテリ用熱交換部42、低温側流量調整弁44、低温側外気熱交換器43、低温側ヒータ45、低温側ポンプ41の順で循環する
 この態様によれば、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体に対して、バッテリや発熱機器46の排熱を蓄熱しておくことができ、車室内暖房の熱源として利用することができる。又、低温側マネージャ84は、低温側ヒータ45により低温側熱媒体を加熱する熱量を調整することができ、外気ファン43a及びシャッター装置47により、低温側外気熱交換器43にて低温側熱媒体と外気の間で熱交換させる熱量を調整することができる。これにより、低温側熱媒体が有する熱量を所望の状態に調整することができ、暖房の熱源を確保することができる。
 除湿暖房モードのヒートポンプシステム1は、空調用蒸発器15にて除湿された送風空気を、低温側熱媒体回路40の低温側熱媒体が有する熱を利用して加熱する除湿暖房運転を行うことができる。
 続いて、第1実施形態に係る熱量調整プログラムの処理内容について、図5~図8を参照して説明する。第1実施形態に係る熱量調整プログラムは、ヒートポンプシステム1における暖房運転に際して、車室内暖房の熱源として利用する各種熱量を適切に調整する為に実行される。
 尚、第1実施形態に係る熱量調整プログラムは、上述したように、エネルギマネージャ70の記憶部に格納されており、処理部を構成する温調制御部71によって読み出されて実行される。
 図5に示すように、先ず、ステップS1では、目標吹出温度TaOが設定される。目標吹出温度TaOは、暖房時に空調対象空間である車室に供給される送風空気の温度に関する目標値である。上述したように、目標吹出温度TaOは、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量As等と、数式F1に従って算出される。
 ステップS2では、目標吹出温度TaOを実現する為に必要な高温側熱媒体の温度である目標高温側熱媒体温度Twohが設定される。目標高温側熱媒体温度Twohは、ヒータコア33に対する吸込空気温度、車室内に供給される送風量、目標吹出温度TaO等を用いて算出される。ヒータコア33に対する吸込空気温度は、内外気切替装置63における内外気率、内気温Tr、外気温Tam等を用いて算出される。
 ステップS3においては、車両Aの走行速度に応じて、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の回転数上限値Nculが定められる。圧縮機11の回転数上限値Nculは、圧縮機11の冷媒吐出能力の上限値を意味しており、圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculを超えないように制御される。
 第1実施形態では、エネルギマネージャ70の記憶部に格納された制御テーブルに従って、圧縮機11の回転数上限値Nculが定められる。図6に示すように、制御テーブルでは、車両Aの走行速度は圧縮機11の回転数上限値Nculと比例するように対応付けられており、車両Aの走行速度が高速であるほど、圧縮機11の回転数上限値Nculも高くなるように定められている。
 従って、ステップS3においては、運動マネージャ80から取得した車両Aの走行速度の情報と、図6に示す制御テーブルに基づいて、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の回転数上限値Nculが定められる。
 尚、第1実施形態では、図6に示すように、車両Aの走行速度と圧縮機11の回転数上限値Nculが比例関係にあるように定めていたが、この態様に限定されるものではない。車両Aの走行速度が高いほど、圧縮機11の回転数上限値Nculが高くなる関係性であれば、種々の態様を採用することができる。例えば、車両Aの走行速度が低い場合の回転数上限値Nculと、車両Aの走行速度が高い場合の回転数上限値Nculというように、走行速度域に応じて、2つ以上の回転数上限値Nculを対応付けた構成としても良い。
 ステップS4では、目標吹出温度TaOを実現する為に必要な目標低温側熱媒体温度Twolが設定される。上述したように、ヒートポンプシステム1の暖房運転では、ヒートポンプサイクル10により、低温側熱媒体が有する熱を高温側熱媒体回路31側に汲み上げて、ヒータコア33での送風空気の加熱に利用する。従って、低温側熱媒体回路40にて暖房熱源として利用可能な熱量の目標値に対応する目標低温側熱媒体温度Twolを設定する。
 目標低温側熱媒体温度Twolを設定する際に、先ず、高温側熱移動量Qhが算出される。高温側熱移動量Qhは、熱媒体冷媒熱交換器12において、高圧冷媒から高温側熱媒体へ熱移動する熱量であり、目標吹出温度TaOを実現する為に必要な熱量を意味する。高温側熱移動量Qhは、例えば、目標吹出温度TaO、ヒータコア33に対する吸込空気温度、車室内に供給される送風量を用いて算出され、目標吹出温度TaOと吸込空気温度の温度差に対して、車室内に供給される送風量を乗算することで算出される。
 ここで、ヒートポンプシステム1において、高温側熱移動量Qh、圧縮機11の回転数上限値Ncul、低温側熱媒体温度Twl、低温側熱移動量Qlのあいだには、図7、図8に示す関係性が認められている。尚、図7、図8においては、圧縮機11の回転数上限値Nculとして、5つの値が定められているものとし、回転数上限値Nculの小さい方から、Nca、Ncb、Ncc、Ncd、Nceの順に大きな値を示している。
 そして、予め定められた目標吹出温度TaOに対応する高温側熱移動量Qhを、高温側熱移動量Qhaと呼び、更に高い目標吹出温度TaOに対応する高温側熱移動量Qhを、高温側熱移動量Qhbと呼ぶ。又、図7、図8では、低温側熱移動量Qlとして、Qla、Qlb、Qlcが示されており、低温側熱移動量Qlaは、低温側熱媒体温度Twlaに対応している。即ち、低温側熱媒体温度Twlaを介して、低温側熱移動量Qlaと高温側熱移動量Qhaが対応付けられる。又、そして、低温側熱移動量Qlcは、低温側熱媒体温度Twlbに対応している。従って、低温側熱媒体温度Twlbを介して、低温側熱移動量Qlcと高温側熱移動量Qhbが対応付けられる。
 図7、図8に示すように、ヒートポンプシステム1では、目標吹出温度TaOを実現するように定められた高温側熱移動量Qhは、圧縮機11の回転数上限値Nculごとに、低温側熱媒体温度Twlに対応付けられている。高温側熱移動量Qhが大きい程、低温側熱媒体温度Twlが大きくなるように対応付けられている。
 又、ヒートポンプシステム1において、チラー16にて低温側熱媒体から汲み上げられた熱量は、熱媒体冷媒熱交換器12において、高温側熱媒体の加熱に用いられる。従って、上述のように定められた高温側熱移動量Qhは、チラー16にて、低温側熱媒体から低圧冷媒への熱移動量である低温側熱移動量Qlに対応する。
 つまり、目標吹出温度TaOを実現するように定められた低温側熱移動量Qlについても、圧縮機11の回転数上限値Nculごとに、低温側熱媒体温度Twlに対応付けられている。具体的には、圧縮機11の回転数上限値がNca、Ncb、Ncc、Ncd、Nceの順で大きくなるほど、低温側熱媒体温度Twlは低い値を示すようになっている。
 図7、図8に示す関係性を用いて、例えば、暖房運転時に要求される高温側熱移動量QhがQhaからQhbに上がった場合について考察する。圧縮機11の回転数上限値NculがNceの状態では、低温側熱媒体温度Twlを、TwlaからTwlbに上昇させなければ、高温側熱移動量Qhbという要求を実現することができないことがわかる。従って、この場合の目標低温側熱媒体温度Twolとして、Twlbが定められる。
 次に、暖房運転時に要求される高温側熱移動量QhがQhaの状態において、圧縮機11の回転数上限値NculがNceからNcdに制限された場合について考察する。この場合、圧縮機11の回転数上限値NculがNcdで、低温側熱媒体温度がTwlaである状態では、要求されている高温側熱移動量Qhaに対して不足が生じることがわかる。
 図7、図8に示す関係性から、圧縮機11の回転数上限値NculがNcdに制限されている状態で、要求されている高温側熱移動量Qhaを実現する為には、低温側熱媒体温度Twlを、TwlaからTwlcに上昇させる必要があることがわかる。つまり、この場合の目標低温側熱媒体温度Twolとして、Twlcが定められる。
 従って、ステップS4においては、圧縮機11の冷媒吐出能力がステップS3で設定された回転数上限値Nculに従う条件のもとで、設定された高温側熱移動量Qhを実現する為の低温側熱移動量Qlおよび目標低温側熱媒体温度Twolが定められる。そして、図7、図8に示す関係からわかるように、圧縮機11の回転数上限値Nculとして、2つ以上の値のそれぞれに対して、高温側熱移動量Qhを達成する為の目標低温側熱媒体温度Twolが個別に対応付けられている。
 ステップS5に移行すると、現在の低温側熱媒体温度Twlが予め定められた基準値KTwl以下であるか否かが判断される。基準値KTwlは、低温側熱媒体回路40の構成機器との関係性で定められる低温側熱媒体温度Twlの上限値を意味している。従って、ステップS5では、低温側熱媒体として、暖房運転との関係で余剰となる熱量を有しているか否かが判断されている。
 低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下である場合、ステップS6に進み、低温側蓄熱制御を実行する。低温側蓄熱制御は、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体に対して、発熱機器46等の廃熱をできるだけ蓄熱するように、低温側熱媒体回路40の構成機器の作動を制御する。具体的には、低温側熱媒体には、発熱機器46の作動に伴う廃熱や、バッテリ用熱交換部42を介して、バッテリの入出力に伴って生じる熱、低温側ヒータ45による発熱等が蓄熱される。低温側蓄熱制御を終了すると、ステップS8に処理を移行する。
 一方、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwlよりも高い場合、ステップS7に進んで、低温側放熱制御を実行する。低温側放熱制御は、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体の有する余剰の熱を外気OAに放熱させるように、低温側熱媒体回路40の構成機器の作動を制御する。
 具体的には、低温側外気熱交換器43における低温側熱媒体と外気OAとの熱交換能力を制御することによって、低温側放熱制御を実現する。低温側熱媒体と外気との熱交換能力の調整は、例えば、低温側ポンプ41による低温側熱媒体の圧送量によって、低温側外気熱交換器43を通過する低温側熱媒体の流量調整を行って、熱交換能力を調整しても良い。又、低温側流量調整弁44により低温側外気熱交換器43に流入する低温側熱媒体の流量バランスを調整することで、低温側外気熱交換器43における熱交換能力を調整しても良い。更に、シャッター装置47の開口面積や外気ファン43aの送風量を調整し、低温側外気熱交換器43を通過する外気OAの流量を調整することで、熱交換能力を調整しても良い。低温側放熱制御を終了すると、ステップS8に処理を移行する。
 尚、ステップS6における低温側蓄熱制御とは、言い換えると、低温側熱媒体の熱に関して、外気OAへの放熱量を抑える制御ということができる。この為、低温側蓄熱制御では、低温側熱媒体回路40における低温側ポンプ41、低温側流量調整弁44、外気ファン43a、シャッター装置47に関して、低温側放熱制御とは逆の動作が行われる。
 ステップS8では、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twoh以下であるか否かが判断される。即ち、目標吹出温度TaOを目標とした暖房運転に関し、高温側熱媒体の有する熱が十分であるか否かが判断されている。
 高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twoh以下である場合、高温側熱媒体の有する熱が目標吹出温度TaOを目標とした暖房運転に対して不足している為、圧縮機11の回転数制御が行われる。この圧縮機11の回転数制御では、熱媒体冷媒熱交換器12を流通する高温側熱媒体の高温側熱媒体温度Twhが、目標吹出温度TaOに基づいて定められた目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように、圧縮機11の回転数が制御される。
 これにより、チラー16における低温側熱媒体から冷媒へ吸熱量と、熱媒体冷媒熱交換器12における高圧冷媒から高温側熱媒体への放熱量について、圧縮機11の冷媒吐出能力を指標とした調整が行われる。そして、圧縮機11の冷媒吐出能力は、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように調整される。この結果、チラー16における低温側熱媒体からの吸熱量も調整される為、低温側熱媒体温度Twlの調整が行われているということができる。
 そして、ヒートポンプシステム1によれば、ステップS5~ステップS7の処理を前提として動作する為、ヒートポンプサイクル10の動作に関する消費エネルギを低減することができる。圧縮機11の回転数制御を終了すると、ステップS11に処理を移行する。
 一方、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohよりも高い場合には、ステップS10にて、目標吹出温度TaOを目標とした暖房運転に関し、高温側熱媒体が有する余剰の熱を放熱させる高温側放熱制御が行われる。高温側放熱制御では、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように、高温側熱媒体回路31の構成機器の作動を制御する。
 具体的には、高温側外気熱交換器34における高温側熱媒体と外気OAとの熱交換能力を制御することによって、高温側放熱制御を実現する。高温側熱媒体と外気との熱交換能力の調整は、例えば、高温側ポンプ32による高温側熱媒体の圧送量によって、高温側外気熱交換器34を通過する高温側熱媒体の流量調整を行って、熱交換能力を調整しても良い。又、高温側流量調整弁35により高温側外気熱交換器34に流入する高温側熱媒体の流量バランスを調整することで、高温側外気熱交換器34における熱交換能力を調整しても良い。高温側放熱制御を終了すると、ステップS1に処理を戻す。
 ステップS11においては、圧縮機11の回転数制御にて、圧縮機11の回転数NcがステップS3で設定された回転数上限値Nculであるか否かが判断される。即ち、圧縮機11の回転数制御にて、圧縮機11の冷媒吐出能力の最大能力まで利用しているか否かが判断される。圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculではない場合、圧縮機11の性能上、冷媒吐出能力に余裕があるものと判断して、ステップS1に処理を戻す。
 一方、圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculである場合には、ステップS12にて、低温側熱媒体回路40における熱量調整制御が行われる。ここで、ステップS12に移行する場合は、現時点における低温側熱媒体の有する熱を熱源として利用して、回転数上限値Nculまで圧縮機11を作動させた状態で、低温側熱媒体温度Twlが目標低温側熱媒体温度Twolよりも低い状態である。
 この為、目標吹出温度TaOを実現する為に必要な熱量を確保する為に、低温側熱媒体回路40における構成機器について、意図的に熱を発生させる運転を行う熱量調整制御が実行される。具体的には、例えば、発熱機器46であるインバータINV等については、通常とは異なる非効率運転を行うことで、通常よりも発熱量を大きくする。又、バッテリについても、バッテリに対する入出力を非効率的に行うことで、バッテリにおける発熱量を増大させ、バッテリ用熱交換部42を介して低温側熱媒体の有する熱を大きくする。そして、低温側ヒータ45にて低温側熱媒体を加熱することで、目標低温側熱媒体温度Twolとなるように調整しても良い。熱量調整制御を終了すると、ステップS1に処理を戻す。
 このように、ステップS12にて、低温側熱媒体回路40に対する熱量調整制御を行うことで、低温側熱媒体温度Twlが目標低温側熱媒体温度Twolになるように調整することができる。低温側熱媒体の熱は、ヒートポンプサイクル10により汲み上げられて高温側熱媒体の加熱に用いられる為、ステップS12の熱量調整制御は、目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように、低温側熱媒体温度Twlを調整するということができる。
 そして、ヒートポンプシステム1は、熱量調整プログラムを実行することにより、目標吹出温度TaOを目標とした暖房運転に必要な低温側熱媒体回路40側の熱量を確保でき、暖房運転を行う際に、低温側熱媒体回路40側の熱を活用することができる。
 続いて、第1実施形態に係る熱量調整プログラムの効果について、図9、図10を参照して説明する。図9は、熱量調整プログラムの効果を明確にする為の比較例であり、低温側熱媒体回路40等における熱量調整が行われない場合の暖房運転に関するヒートポンプシステム1の動作を示している。
 図9に示す例において、ヒートポンプシステム1の基本的構成は、上述した実施形態と同様であり、暖房運転時における各構成機器の制御態様が第1実施形態と相違している。図9における暖房運転のヒートポンプサイクル10側の前提条件としては、目標吹出温度TaOを実現する為に要求される高温側熱移動量QhはQhaであり、圧縮機11の回転数は、回転数上限値Nculで動作しているものとする。
 又、低温側熱媒体回路40側の前提条件としては、発熱機器46等の廃熱が十分にあり、低温側外気熱交換器43を介して、低温側熱媒体の有する熱の一部が外気に放熱されているものとする。外気OAへの放熱によって、低温側熱媒体温度Twlは、高温側熱移動量Qhaに対応する低温側熱媒体温度Twlaに調整されているものとする。
 この前提条件に従った状態では、低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体の有する熱が、高温側熱移動量Qhaでの要求値に対して十分な熱量を確保できている為、この時点における目標吹出温度TaOで暖房運転を実現することができる。
 この前提条件に従った状態での暖房運転から、車室内設定温度Tsetを更に高く設定した場合について考察する。図9、図10では、車室内設定温度Tsetを更に高く設定した時期を設定温度変更時期tcとして示している。
 図9にて、一点鎖線で示すように、設定温度変更時期tcにおいて、車室内設定温度Tsetを更に高く設定すると、目標吹出温度TaOが高く変更され、それに伴って、高温側熱移動量Qhが、QhaからQhbに上昇することになる。一方で、実際の高温側熱移動量Qhは、設定温度変更時期tcにおいては、前提条件に従った状態のままである為、Qhaのままである。
 高温側熱移動量QhaからQhbへの変更に伴って、低温側熱媒体回路40側の熱量が不足することになる為、低温側外気熱交換器43における外気OAへの放熱量を小さくして、低温側熱媒体温度TwlをTwlaから上昇させる。この時、ヒートポンプサイクル10側は、前提条件の場合と同様に、圧縮機11を回転数上限値Nculで作動させている。図9に示すように、低温側熱媒体温度Twlは、外気OAへの放熱量を小さくした時点から徐々に上昇していき、設定変更後の高温側熱移動量Qhbに対応する低温側熱媒体温度Twlbに到達する。
 このように、設定変更に伴い要求される高温側熱移動量Qhの変化に、低温側熱媒体回路40における熱量(即ち、低温側熱媒体温度Twl)の変化によって対応しようとすると、低温側熱媒体温度Twlの応答遅れが生じる。この為、設定温度変更時期tcから、変更後の高温側熱移動量Qhの要求を満たすまでの間、所望の暖房能力を実現することができず、車室内の快適性を充分に高めることができない場合が想定される。
 次に、第1実施形態に係る熱量調整プログラムを適用した場合の暖房運転の動作について、図10を参照して説明する。図10に示す場合、設定温度変更時期tc以前は、図9に示す場合と同様に、高温側熱移動量Qhaであり、設定温度変更時期tcにて車室内設定温度Tsetを高く変更することにより、高温側熱移動量Qhbに変更されるものとする。
 ここで、第1実施形態における熱量調整プログラムのステップS5、ステップS6で説明したように、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下である場合は、低温側蓄熱制御が実行される。この為、低温側熱媒体温度Twlの上限値としての基準値KTwlとなるまでは、発熱機器46やバッテリの廃熱が低温側熱媒体に蓄熱される。つまり、設定温度変更時期tc以前であっても、高温側熱移動量Qhaに対応する低温側熱媒体温度Twla以上の低温側熱媒体温度Twlを保っている。
 又、低温側熱媒体温度Twlを高く保つことで、圧縮機11の回転数Ncを低く抑えておくことができ、回転数上限値Nculに対して余裕をもった状態にしておくことができる。
 第1実施形態に係る熱量調整プログラムによれば、基準値KTwl以下となるまでは、低温側熱媒体に対して、発熱機器46等の廃熱を蓄熱しておくことができる。この為、ヒートポンプシステム1は、圧縮機11の作動状態に関して、回転数上限値Nculに対して余裕のある状態をつくりだしておくことができる。
 これにより、設定温度変更時期tcにおける車室内設定温度Tsetの変更に伴って、高温側熱移動量QhがQhaからQhbに上昇したとしても、圧縮機11の回転数Ncを増大させることで、高温側熱移動量Qhbを実現することができる。この結果、ヒートポンプシステム1は、図10に示すように、車室内設定温度Tsetの変更に対して、素早く暖房能力を変化させることができる。
 以上説明したように、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路31を含む加熱部30と、低温側熱媒体回路40と、エネルギマネージャ70を有している。ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体の有する熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、加熱部30における送風空気の加熱に用いる暖房運転を行うことができる。
 そして、ヒートポンプシステム1によれば、送風空気の加熱に関する目標値として定められる高温側熱移動量Qhに近づくように、ステップS9における圧縮機11の回転数制御と、ステップS6の低温側蓄熱制御及びステップS12の熱量調整制御が実行される。
 これにより、高温側熱移動量Qhの変化等に対して、低温側熱媒体からの吸熱量や、低温側熱媒体に対する加熱量、放熱量の調整を行うことができる為、加熱部30にて高温側熱移動量Qhとして要求される送風空気の加熱能力を担保することができる。そして、ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路40における低温側熱媒体の熱容量を有効に活用することができるので、加熱部30で要求される加熱能力の変動に適切に対応することができる。
 又、ステップS5にて、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下である場合は、低温側蓄熱制御(ステップS6)が実行され、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwlよりも高い場合に、低温側放熱制御(ステップS7)が行われる。
 この為、低温側熱媒体温度Twlの上限値として定められた基準値KTwlとなるまで、低温側熱媒体に対して発熱機器46等の廃熱を蓄熱することができる。これにより、ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路40にて利用可能な熱量を蓄熱した状態を実現しておくことができるので、暖房運転で要求される加熱能力が変更された場合に、低温側熱媒体回路40の熱を利用して迅速に対応することができる。
 そして、ステップS8において、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twoh以下である場合には、ステップS9における圧縮機11の回転数制御、ステップS12における熱量調整制御が行われる。ステップS9、ステップS12においては、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように、圧縮機11の回転数や、発熱機器46等における熱量の調整が行われ、結果として、低温側熱媒体温度Twlが調整される。
 この結果、ヒートポンプシステム1によれば、高温側熱媒体回路31により構成された加熱部30であっても、低温側熱媒体回路40に蓄熱された熱を有効に活用して、暖房能力の変更等に迅速かつ柔軟に対応することができる。
 又、ヒートポンプシステム1においては、目標吹出温度TaO等で示される暖房時の空調負荷に基づいて、高温側熱移動量Qhが定められ、高温側熱移動量Qhに近づくように、低温側熱媒体温度Twlの目標値である目標低温側熱媒体温度Twolが定められる。
 これにより、ヒートポンプシステム1によれば、目標吹出温度TaO、高温側熱移動量Qh、目標低温側熱媒体温度Twolの間の関係性を見いだすことができるので、要求された暖房能力に応じて、低温側熱媒体回路40の熱量調整を適切に行うことができる。
 図1に示すように、低温側熱媒体回路40には、低温側外気熱交換器43が配置されている。低温側外気熱交換器43では、低温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱することができる。
 この為、ヒートポンプシステム1では、ステップS7の低温側放熱制御において、低温側外気熱交換器43を介して、低温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱することができる。これにより、ヒートポンプシステム1は、暖房運転に際して、低温側熱媒体回路40の有する熱量を適切に管理することができる。
 そして、ステップS3にて、圧縮機11の回転数上限値Nculを設定する際には、図6に示す制御テーブルが参照され、制御テーブルでは、車両Aの走行速度が高いほど、圧縮機11の回転数上限値Nculも高くなるように定められている。
 従って、車両Aの走行に伴って発生する騒音や振動を介在させることで、圧縮機11の回転数の増加に伴う騒音や振動の影響を抑えることができ、車室内における快適性を向上させることができる。
 更に、ステップS4において、目標低温側熱媒体温度Twolを設定する際に、図7、図8に示す関係性と、高温側熱移動量Qh、圧縮機11の回転数上限値Nculを用いて、目標値となる低温側熱媒体温度Twlが定められる。即ち、圧縮機11の回転数上限値Nculに対して、それぞれ、高温側熱移動量Qhを実現する為の目標値となる低温側熱媒体温度Twlが関連付けられている。
 従って、車両Aの走行状況の変化などに起因して、圧縮機11の回転数上限値Nculが変化した場合においても、ヒートポンプシステム1は、暖房能力の変化に迅速に対応して、低温側熱媒体回路40の熱を利用した暖房運転を円滑に実現することができる。
 又、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、通常の状態にて低温側熱媒体回路40に蓄熱されている熱で熱量が不足し、且つ、圧縮機11の冷媒吐出能力が最大限利用されている場合に、ステップS12における熱量調整制御が実行される。熱量調整制御では、通常の状態よりも発熱機器46等の非効率運転が行われる為、暖房運転に関するエネルギ効率に改良の余地があると思われる。
 この点、図5に示すように、熱量調整制御に先んじて、ステップS6の低温側蓄熱制御、ステップS9における圧縮機11の回転数制御が実行されており、エネルギ効率のよい制御が優先されている。この為、ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路40の有する熱を利用した暖房運転に関して、エネルギ効率に配慮した制御を実現することができる。
 (第2実施形態)
 次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、図11を参照して説明する。第2実施形態では、高温側熱媒体回路31に配置されている高温側ヒータ36の利用態様が上述した実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
 上述した第1実施形態では、暖房運転に際して、高温側ヒータ36を利用することなく、低温側熱媒体回路40の熱量を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて暖房運転を行っている。低温側熱媒体回路40における熱源としては、バッテリの入出力により生じる熱、発熱機器46の作動に伴う熱、低温側ヒータ45が発生させる熱を利用している。
 この点、第2実施形態では、第1実施形態で利用していた暖房熱源に加えて、高温側ヒータ36の熱を利用した暖房運転が行われる。この場合の暖房運転に関する熱量調整プログラムの処理内容について、図11を参照して説明する。
 図11に示すように、先ず、ステップS21では、目標吹出温度TaOが設定される。目標吹出温度TaOは、暖房運転における空調負荷に応じて、第1実施形態のステップS1と同様の手法で算出される。ステップS22では、目標高温側熱媒体温度Twohの設定が行われる。目標高温側熱媒体温度Twohは、ステップS2と同様の手法によって算出される。
 そして、ステップS23に移行すると、圧縮機11の回転数上限値Nculが設定される。圧縮機11の回転数上限値Nculは、第1実施形態と同様に、車両Aの走行速度と図6に示す制御テーブルを参照して設定される。
 ステップS24では、目標低温側熱媒体温度Twolが設定される。目標低温側熱媒体温度Twolの設定に際して、第1実施形態と同様に、先ず、高温側熱移動量Qhが算出される。
 ここで、第2実施形態に係る高温側熱移動量Qhは、高温側ヒータ36の最大加熱能力を考慮した上で、例えば、現在の高温側熱媒体温度Twh、ヒータコア33に対する吸込空気温度、車室内設定温度Tset、車室内に供給される送風量、目標吹出温度TaO等を用いて算出される。換言すると、第2実施形態に係る高温側熱移動量Qhは、第1実施形態における高温側熱移動量Qhに相当する値から、高温側ヒータ36の最大加熱能力を減算することによって求められる。
 こうして求められた第2実施形態に係る高温側熱移動量Qhと、圧縮機11の回転数上限値Nculと、図7、図8に示す関係図を参照することにより、目標低温側熱媒体温度Twolが決定される。従って、第2実施形態に係る目標低温側熱媒体温度Twolは、圧縮機11が回転数上限値Nculとなる状態で作動し、且つ、高温側ヒータ36が最大加熱能力を発揮している状態で、高温側熱移動量Qhを実現する為の低温側熱媒体温度Twlの目標値である。
 ステップS25では、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下であるか否かが判断される。低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下である場合、ステップS26にて、低温側蓄熱制御が実行される。低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwlよりも高い場合、ステップS27において、低温側放熱制御が行われる。ステップS25~ステップS27の処理内容は、第1実施形態におけるステップS5~ステップS7と同様である為、再度の説明は省略する。
 ステップS28に移行すると、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twoh以下であるか否かが判断される。高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twoh以下である場合、ステップS29にて、圧縮機11の回転数制御が実行される。高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohよりも高い場合、ステップS30において、高温側放熱制御が実行される。ステップS28~ステップS30の処理内容は、第1実施形態におけるステップS8~ステップS10と同様である為、再度の説明は省略する。
 ステップS31においては、圧縮機11の回転数制御にて、圧縮機11の回転数NcがステップS3で設定された回転数上限値Nculであるか否かが判断される。即ち、ステップS31では、第1実施形態のステップS11と同様の判断が行われる。
 圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculである場合、第2実施形態では、ステップS32に移行して、高温側ヒータ36の出力制御が実行される。高温側ヒータ36の出力制御では、高温側熱媒体温度Twhが目標高温側熱媒体温度Twohに近づくように、高温側ヒータ36の発熱量が制御される。一方、圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculではない場合は、ステップS21に処理を戻す。
 ステップS33では、低温側熱媒体回路40における熱量調整制御が実行される。ステップS33の熱量調整制御の処理内容は、第1実施形態におけるステップS12と同様である為、再度の説明を省略する。ステップS33の熱量調整制御を終了すると、ステップS21に処理を戻す。
 第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路40の熱を利用した暖房運転に際して、暖房熱源として、低温側熱媒体回路40における廃熱利用、圧縮機11の冷媒吐出能力の順に、優先して利用する。
 そして、低温側熱媒体回路40における廃熱の利用が最大で、且つ、圧縮機11の回転数Ncが回転数上限値Nculになった状態で、初めて、高温側ヒータ36による高温側熱媒体の加熱が行われる。高温側ヒータ36の加熱でも送風空気の加熱能力が不足する場合に、低温側熱媒体回路40における熱量調整制御が行われる。
 第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、ステップS34の熱量調整制御に優先して、ステップS32にて高温側ヒータ36による加熱を行うことで、配管等による放熱ロスを抑えることができ、効率よく、所望の暖房能力を実現することができる。
 以上説明したように、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、高温側ヒータ36を暖房熱源として利用する場合であっても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
 又、図11に示すように、高温側ヒータ36の出力制御は、低温側蓄熱制御、圧縮機11の回転数制御よりも優先度が低く、且つ、低温側熱媒体回路40の熱量調整制御よりも優先度が高く実行される。この為、ヒートポンプシステム1は、配管等による放熱ロスの影響を抑えて、高温側ヒータ36で生じる熱を暖房能力に活用することができ、低温側熱媒体回路40の熱を利用した暖房運転のエネルギ効率を向上させることができる。
 (第3実施形態)
 続いて、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、図12~図15を参照して説明する。第3実施形態では、車両Aの走行状態に合わせて、低温側熱媒体回路40の温度制御を行う点で、上述した実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。従って、熱量調整プログラムの処理内容についても、基本的に、上述した実施形態と同様である。
 次に、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1における熱量調整プログラムの効果について、図12~図15を参照して説明する。図12は、熱量調整プログラムの効果を明確にする為の比較例の一つであり、暖房運転に際して、車両Aの走行状態(走行、停車)にあわせて、目標低温側熱媒体温度Twolを変更する場合のヒートポンプシステム1の動作を示している。
 図12に示す例において、ヒートポンプシステム1の基本的構成は、上述した実施形態と同様であり、暖房運転時における各構成機器の制御態様が上述した実施形態と相違しており、車両Aの走行状態に応じて、目標低温側熱媒体温度Twolが変更される。
 図12に示す例では、車両Aは、一般道を走行した後、高速道路を経由して、再び一般道を走行するものとする。この時、車両Aが走行している場合は、目標低温側熱媒体温度Twolとして、予め定められた低温側熱媒体温度Twlが設定される。一方、車両Aが停車している場合は、目標低温側熱媒体温度Twolとして、より高い低温側熱媒体温度Twlcが設定される。
 又、上述したように、圧縮機11の回転数上限値Nculは、車両Aの走行速度に応じて定められる。この為、車両Aが走行状態である場合、最も高い回転数上限値NculであるNceが設定され、車両Aが停車状態である場合、低い回転数上限値NculであるNcdが設定される。
 この為、図12に示す例では、車両Aが走行状態から停車状態に変更されると、圧縮機11の回転数上限値NculがNcdに切り替えられる。この時、車両Aに係る暖房運転で要求されている高温側熱移動量Qhは、Qhaであるところ、圧縮機11の回転数上限値NculがNcdである状態で、高温側熱移動量Qhaを実現する為には、目標低温側熱媒体温度TwolがTwlcである必要がある。
 圧縮機11の回転数上限値Nculが走行状態よりも低い条件で、より高い目標低温側熱媒体温度Twolを実現しなければ、目標吹出温度TaOに対応する高温側熱移動量Qhを実現することができない。
 車両Aが停車状態である場合においても、低温側熱媒体温度Twlは、発熱機器46等の廃熱を回収することで徐々に上昇していくが、停車状態である為、目標低温側熱媒体温度Twolには緩やかに近づく。つまり、図12に示す例では、車両Aが走行状態から停車状態に変更された時点で暖房能力が低下し、停車状態において、実現されていた暖房能力に回復するまでにタイムラグが必要となる。このタイムラグの間、車室内の暖房能力が乗員の要求を満たさない状態となる為、車室内の快適性が損なわれることが想定される。
 次に、熱量調整プログラムの効果を明確にする為の別の比較例について、図13を参照して説明する。図13に示す比較例は、暖房運転に際して、車両Aの停車状態の状態を基準として制御を行い、停車状態に対応する目標低温側熱媒体温度Twolを基準としたヒートポンプシステム1の動作を示している。
 図13に示す例では、車両Aの停車状態が基準となるように、ヒートポンプシステム1の各構成機器の作動が制御される。この為、圧縮機11の回転数上限値Nculは、停車状態を基準とするNcdに定められ、目標低温側熱媒体温度Twolは、停車状態を前提として定められたTwlcに定められる。そして、高温側熱移動量Qhについても車両Aが停車している状態を基準に定められる。
 この場合、図13に示すように、車両Aが一般道を走行している場合も、車両Aが高速道路を走行している場合の何れであっても、車両Aが停車している状態を前提として、低温側熱媒体回路40の熱を利用した暖房運転が行われる。
 車両Aが一般道や高速道路を走行している場合、バッテリや発熱機器46による廃熱が生じるが、停車状態を基準として制御を行うと、目標低温側熱媒体温度Twolを達成させるために、低温側ヒータ45による加熱が行われる可能性がある。つまり、図13のように、停車状態を基準として制御を行った場合、優先度の低い低温側ヒータ45が使用される可能性があり、暖房運転に関するエネルギ効率が低下することが想定される。
 続いて、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1における熱量調整プログラムの効果について、図14を参照して説明する。第3実施形態においても、上述した実施形態と同様に、目標吹出温度TaOの設定、目標高温側熱媒体温度Twohの決定、圧縮機11の回転数上限値Nculの決定、目標低温側熱媒体温度Twolの決定が行われる。
 第3実施形態では、目標吹出温度TaO、目標高温側熱媒体温度Twoh、圧縮機11の回転数上限値Ncul、目標低温側熱媒体温度Twolの決定に際して、車両Aの現在の状態だけではなく、将来的な車両Aの状況も鑑みて決定される。
 具体的には、将来的な車両Aの状況は、通信モジュール90を介して、クラウドサーバ100から取得される情報(例えば、気象情報や道路交通情報)や、ナビゲーション装置91のナビ情報を用いて、所定時間後の車両Aの走行状態として推定される。ナビゲーション装置91にて、走行、休憩の時間帯や目的地までの走行経路等の運行計画が定められていた場合、運行計画の情報を参照して、将来的な車両Aの状況を特定しても良い。
 又、第3実施形態においては、圧縮機11の回転数上限値Nculは、基本的には、車両Aが高速道路を走行している場合の走行速度域と、車両Aが一般道の走行又は停車している場合の走行速度域とで異なる値となる。具体的には、車両Aが高速道路を走行している場合の走行速度域では、Nceが圧縮機11の回転数上限値Nculに設定される。又、車両Aが一般道の走行又は停車している場合の走行速度域では、圧縮機11の回転数上限値Nculとして、Ncdが設定される。
 先ず、一般道を走行している道中で所定のあいだ停車した場合、ヒートポンプシステム1では、高温側熱移動量Qhを実現するように定められた目標低温側熱媒体温度Twolに低温側熱媒体温度Twlが近づくように、各構成機器の作動が制御される。
 この時、圧縮機11の回転数上限値NculはNcdと定められ、停車中においても変化することはない。又、高温側熱移動量Qhについても、一般道を走行している場合と、停車状態の場合とで変更されることはなく、高温側熱移動量Qhaを示す。この為、第3実施形態においては、一般道を走行している場合と、停車している場合とで目標低温側熱媒体温度TwolがTwlcから変化することはない。従って、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、停車状態における低温側熱媒体温度Twlの応答が遅れることはなく、所望の暖房能力を担保しておくことができる。
 図14に示す例においては、道路交通情報やナビ情報等を参照することで、車両Aが、将来的に一般道から高速道路に乗り入れるタイミングや、高速道路を下りて一般道を走行するタイミングを特定することができる。一般道を走行する場合、交通環境や信号によって、走行と停車が不規則に起こることが想定される。一方、高速道路を走行する場合、車両Aの走行速度が高い状態がある程度の期間のあいだ、継続すると考えられる。車両Aの走行速度域や走行停車の頻度等は、圧縮機11の回転数上限値Nculや、低温側熱媒体回路40における廃熱の量に影響を及ぼす為、暖房運転のエネルギ効率を考慮すると、適切に設定を使い分けることが望ましい。
 第3実施形態に係るヒートポンプシステム1では、将来的な車両Aの走行環境の変化に応じて、各構成機器の作動を制御する。具体的に説明すると、先ず、道路交通情報等を参照して、車両Aが将来的に一般道から高速道路に乗り入れるタイミングが特定される。高速道路を走行する場合、或る程度のあいだ高速走行が継続されると推定される為、事前に圧縮機11の回転数上限値Ncul、及び目標低温側熱媒体温度Twol等を、高速道路の走行に対応する態様に変更しておく。走行環境等の変化に先んじた事前準備の為の時期を事前準備時期tapという。
 図14に示す例では、事前準備時期tapにおいて、圧縮機11の回転数上限値Nculは、NcdからNceに徐々に引き上げられる。同時に、目標低温側熱媒体温度Twolは、一般道に対応するTwlcからTwlaに引き下げられる。これにより、車両Aが高速道路に乗り入れた時点で、高速道路の走行に適した圧縮機11の回転数上限値Nculや低温側熱媒体温度Twlになっていることになる為、高速道路を走行する際の暖房運転に関して、エネルギ効率の向上を図ることができる。
 そして、車両Aは、将来的に高速道路を下りて一般道を走行する。一般道を走行する際の走行速度域は、高速道路を走行する際の走行速度域よりも低速である為、低温側熱媒体回路40にて暖房熱源として利用可能な熱量が少なくなることが想定される。又、一般道を走行する場合、高速道路を走行する際とは異なり、走行と停止が不規則に生じ、暖房能力に対して大きな影響を及ぼすと考えられる。
 この為、高速道路から一般道へ降りる際についても、事前に圧縮機11の回転数上限値Ncul、及び目標低温側熱媒体温度Twol等を、一般道の走行に対応する態様に変更しておく。この場合の事前準備時期tapにおいて、圧縮機11の回転数上限値Nculは、NceからNcdに徐々に引き下げられる。同時に、目標低温側熱媒体温度Twolは、高速道路に対応するTwlaからTwlcに引き上げられる。
 これにより、車両Aが高速道路から一般道に降りた時点で、一般道の走行に適した圧縮機11の回転数上限値Nculや低温側熱媒体温度Twlになっている。これにより、ヒートポンプシステム1は、不規則な走行及び停車が伴う一般道を走行する際の暖房運転に関して、エネルギ効率の向上を図ると同時に、要求されている暖房能力を確保しておくことができる。
 ここで、第3実施形態における事前準備時期tapの特定方法について、図15を参照して説明する。先ず、事前準備時期tapの算出例として、車両Aが現時点で一般道を走行しており、将来的に高速道路に乗り入れる場合と、車両Aが現時点で高速道路を走行しており、将来的に一般道に降りる場合について説明する。
 図15に示すように、事前準備時期tapは、事前準備時期tap以前の低温側熱媒体温度Twlと、事前準備時期tap以後の低温側熱媒体温度の温度差を、温度変化率ΔTで除算することで算出される。
 従って、将来的に高速道路に乗り入れる場合は、事前準備時期tap以前の低温側熱媒体温度Twlaから事前準備時期tap以後の低温側熱媒体温度Twlcを減算した値を温度変化率ΔTで除算して算出される。一方、将来的に一般道に降りる場合は、事前準備時期tap以前の低温側熱媒体温度Twlcから事前準備時期tap以後の低温側熱媒体温度Twlaを減算した値を温度変化率ΔTで除算して算出される。
 ここで、温度変化率ΔTは、事前準備時期tapにおける低温側熱媒体温度Twlの単位時間あたりの変化率である。温度変化率ΔTは、低温側ヒータ発熱量Qlhtから低温側熱移動量Ql及び配管放熱量Qpを減算した値を、低温側回路熱容量Cwlで除算することで算出される。
 尚、低温側ヒータ発熱量Qlhtは、低温側熱媒体の温度調整を行う場合の低温側ヒータ45の発熱量を意味している。低温側熱媒体温度Twlを上昇させる際には、低温側ヒータ発熱量Qlhtは、低温側ヒータ45の最大発熱能力に定められる。一方、低温側熱媒体温度Twlを低下させる場合は、低温側ヒータ発熱量Qlhtは0を示す。低温側熱移動量Qlは、暖房運転時のチラー16にて、低温側熱媒体から低圧冷媒へ熱移動する熱量である。配管放熱量Qpは、低温側熱媒体回路40の配管における低温側熱媒体からの放熱量である。
 このように、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、通信モジュール90等で取得した情報を用いて、高速道路への乗り入れ時期や一般道に降りる時期といった走行環境が変化する時期を特定することができる。
 そして、図15に示すようにして、事前準備時期tapを特定することで、ヒートポンプシステム1は、走行環境が変化する時期に十分な暖房能力が発揮できるように、低温側熱媒体回路40側の熱量を調整しておくことができる。これにより、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、走行環境の変化に柔軟かつ適切に対応した暖房運転を実現することができ、車室内の快適性を高く保つことができる。
 以上説明したように、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、将来的な走行環境の変化を踏まえた低温側熱媒体回路40の熱量調整を行う場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
 第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、通信モジュール90等で取得して情報を用いて、将来的な車両Aの走行状況を推定し、走行状況の変化に応じて、低温側熱媒体回路40における熱量の調整を行うことができる。これにより、ヒートポンプシステム1は、図14に示すように、将来的な走行状況の変化に応じた暖房能力の調整を行うことができ、走行状況の変化による影響を抑えて、車室内の快適性を維持することができる。
 又、将来的な走行状況の変化に基づいて、目標低温側熱媒体温度Twolを変更する際には、事前準備時期tapを、低温側ヒータ発熱量Qlhtを用いて算出される低温側熱媒体の温度変化率ΔTと、現時点の低温側熱媒体温度Twlを用いて決定する。これにより、ヒートポンプシステム1は、将来的な走行状況が変化するタイミングで、適切な低温側熱媒体温度Twlに調整された状態をつくりだすことができ、走行状況の変化に起因する暖房能力の変化を抑え、車室内の快適性を維持できる。
 (第4実施形態)
 次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、図16~図18を参照して説明する。第4実施形態では、車室内の暖房が要求される可能性がある場合の低温側熱媒体温度Twl側における熱量調整が上述した実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
 第4実施形態に係るヒートポンプシステム1には、ユーザにより暖房運転が要求される可能性があるか否かを予測する為の暖房予測機能が設けられている。第4実施形態では、この予測機能の有効・無効に関する設定を行う為の予測機能設定プログラムが実行される。
 先ず、予測機能設定プログラムの処理内容について、図16を参照して説明する。予測機能設定プログラムは、エネルギマネージャ70の記憶部に格納されており、処理部を構成する温調制御部71によって読み出されて実行される。
 図16に示すように、先ず、ステップS41では、暖房要求がオンであるか否かが判断される。暖房要求は、車室内の暖房運転を要求することを示している。ステップS41では、ユーザ入力部92を用いたユーザの暖房要求操作があったか否かに基づいて、暖房要求がオンであるか否かを判断される。
 暖房要求がオンであった場合は、暖房運転が行われることになる為、ステップS42にて、暖房予測機能をオンに設定したうえで暖房運転を開始する。暖房運転を開始した後、ステップS41に処理を戻す。一方、暖房要求がオンではない場合には、ステップS43に処理を移行する。
 ステップS43においては、外気温Tamが予測判定値KTam以下であるか否かが判断される。外気温Tamは、車両Aにおける車室外の空気の温度であり、制御用センサ群に含まれる外気温センサの検出値を用いて特定される。予測判定値KTamは、暖房運転が行われる可能性が高い状況を示すパラメータとして、外気温が用いられており、例えば、0度等の値と定めることができる。
 外気温Tamが予測判定値KTamより高い場合、外気温Tamが高く、暖房運転が要求される可能性が低いと考えられる為、ステップS44にて、暖房予測機能をオフに設定する。一方、外気温Tamが予測判定値KTam以下である場合、外気温Tamが低く暖房運転の必要性が高い環境であると考えられる為、ステップS45にて、暖房予測機能をオンに設定する。ステップS44、ステップS45において、暖房予測機能の設定を行った後、ステップS41に処理を戻す。
 次に、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1における熱量調整プログラムの効果について、図17、図18を参照して説明する。図17は、熱量調整プログラムの効果を明確にする為の比較例であり、暖房予測機能がオンである状況で暖房運転が実行される際のヒートポンプシステム1の動作を示している。
 図17に示す例において、ヒートポンプシステム1の基本的構成は、上述した実施形態と同様であり、車両Aが走行している状態で、暖房運転としては運転停止状態である場合を前提としている。そして、ヒートポンプシステム1の運転停止状態から、暖房要求有効時期tdにて、ユーザ入力部92を介した暖房要求が行われ、暖房運転が開始される。
 この場合、ヒートポンプシステム1は運転停止状態である為、圧縮機11の回転数Ncは0であり、高温側熱移動量Qhも0である。又、車両Aは走行状態である為、発熱機器46やバッテリからの廃熱により低温側熱媒体温度Twlは、廃熱に応じた温度を示す。この時、低温側熱媒体の有する熱は、暖房熱源等に利用する必要がない為、低温側外気熱交換器43にて、外気OAに放熱される。この為、低温側放熱量は、バッテリ等の廃熱に応じた値を示している。
 この状況で、暖房要求有効時期tdに行われた暖房要求に基づいて、暖房運転が開始された場合、暖房運転の開始に伴って、圧縮機11の回転数上限値Nculが有効となる。これにより、図17において一点鎖線で示すように、高温側熱移動量Qhが、目標吹出温度TaOに基づいて定められた高温側熱移動量Qhaに設定される。
 そして、目標低温側熱媒体温度Twolは、高温側熱移動量Qhaに対応する低温側熱媒体温度Twlaに設定される。この場合、低温側熱媒体温度Twlを、目標低温側熱媒体温度TwolであるTwlaまで上げる必要があり、バッテリ等の廃熱を有効に利用する為、低温側放熱量が0になるように構成機器(例えば、シャッター装置47)の作動が制御される。
 暖房要求有効時期tdにおける暖房要求に基づいて、高温側熱移動量Qhの目標値は、高温側熱移動量Qhaに変更されるが、低温側熱媒体温度Twlは、目標低温側熱媒体温度TwolであるTwlaに向かって徐々に上昇していく。この為、高温側熱移動量Qhの実測値は、低温側熱媒体温度Twlの上昇に伴って、高温側熱移動量Qhaに向かって徐々に上昇していくことになる。
 このように、運転停止状態から暖房運転を開始した場合、要求される高温側熱移動量Qhの変化に、低温側熱媒体回路40における熱量(即ち、低温側熱媒体温度Twl)の変化によって対応しようとすると、低温側熱媒体温度Twlの応答遅れが生じる。この為、暖房要求有効時期tdから、変更後の高温側熱移動量Qhの要求を満たすまでの間、所望の暖房能力を実現することができず、車室内の快適性を充分に高めることができない場合が想定される。
 次に、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1において、熱量調整プログラムを適用した場合の暖房運転の動作について、図18を参照して説明する。図18に示す場合、先ず、上述した予測機能設定プログラムにより、暖房予測機能がオンに設定されているものとする。即ち、図18の初期段階が暖房予測有効時期tpに相当する。
 第4実施形態においても、低温側熱媒体温度Twlが基準値KTwl以下である場合、低温側蓄熱制御が実行される。この為、低温側熱媒体温度Twlの上限値としての基準値KTwlとなるまでは、発熱機器46やバッテリの廃熱が低温側熱媒体に蓄熱される。つまり、暖房要求有効時期td以前であっても、高温側熱移動量Qhaに対応する低温側熱媒体温度Twla以上の低温側熱媒体温度Twlを示す状態を作り出すことができる。
 この状態で暖房要求有効時期tdに基づく暖房運転が開始されると、図18に示すように、圧縮機11の回転数Ncを即座に増大させることで、十分に確保されている低温側熱媒体の熱を汲み上げて、暖房要求に即した高温側熱移動量Qhaを実現できる。つまり、図17に示すように、高温側熱移動量Qhの目標値の変更に対して、高温側熱移動量Qhの応答遅れを抑えることができ、迅速に暖房要求に応えることができる。
 第4実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、暖房予測機能がオンである場合に、予め低温側熱媒体の有する熱を調整しておくことで、暖房要求によって、運転停止状態から暖房運転を開始する場合でも、迅速に暖房能力を確保することができる。
 以上説明したように、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、将来的な暖房運転に備えて低温側熱媒体回路40の熱量調整を行う場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
 第4実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、外気温Tam等により暖房要求が行われる可能性が高いと判断された場合、低温側蓄熱制御により、暖房要求が行われる前の時点から、低温側熱媒体回路40に対して蓄熱しておくことができる。そして、暖房要求が行われた場合、ヒートポンプシステム1は、圧縮機11の回転数制御によって、蓄熱されていた低温側熱媒体回路40側の熱を汲み上げ、迅速に所望の暖房能力を実現することができ、ウォームアップ性能を向上させることができる。
 本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
 上述した実施形態に係るヒートポンプシステム1では、加熱部30として、熱媒体冷媒熱交換器12、ヒータコア33を有する高温側熱媒体回路31を採用した構成であったが、この態様に限定されるものではない。ヒートポンプサイクル10によって、低温側熱媒体回路40側の熱を汲み上げて、送風空気を加熱可能な構成であれば、加熱部30として様々な態様を採用することができる。例えば、熱媒体冷媒熱交換器12の代替構成として、室内凝縮器を採用した構成としても良い。この場合、室内凝縮器は、上述した実施形態におけるヒータコア33と同様に、ケーシング61内部に配置され、高圧冷媒の熱により送風空気を加熱する。
 又、本開示に係る低温側熱媒体回路の構成は、上述した実施形態に記載した態様に限定されるものではない。熱源に相当する構成機器、熱量調整部に相当する構成機器を少なくとも1つずつ備えた低温側熱媒体回路であれば、様々な態様を採用することができる。
 上述した実施形態においては、熱源として、発熱機器46、バッテリを含むバッテリ用熱交換部42、低温側ヒータ45を搭載していたが、これらのうちの何れか1つでも良い。又、熱源としては、低温側熱媒体に熱を加えることができる構成であれば良く、発熱機器46等は別の構成機器を採用しても良い。
 又、上述した実施形態では、熱量調整部として、低温側外気熱交換器43における放熱量を調整する構成として、低温側ポンプ41、外気ファン43a、低温側流量調整弁44、シャッター装置47をあったが、この態様に限定されるものではない。低温側熱媒体が有する熱量を調整することができる構成であれば、他の構成機器を採用することも可能である。
 低温側熱媒体回路における各構成機器の配置は、上述した実施形態に限定されるものではない。又、低温側熱媒体回路にて各構成機器に対する熱媒体配管の接続態様についても、上述した実施形態に記載した態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、低温側流量調整弁44にて、低温側外気熱交換器43側の流れと、低温側外気熱交換器43を迂回する流れとに分岐するような構成であったが、分岐することなく接続した構成を採用することができる。
 そして、上述した実施形態における高温側熱媒体回路31においては、構成機器として、高温側ヒータ36が配置されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、第1実施形態に係る熱量調整プログラムを実行する場合には、高温側熱媒体回路31の構成機器から高温側ヒータ36を除外した態様を採用することができる。
 又、高温側熱媒体回路における各構成機器の配置は、上述した実施形態に限定されるものではない。高温側熱媒体回路にて各構成機器に対する熱媒体配管の接続態様についても、上述した実施形態に記載した態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、高温側流量調整弁35にて、ヒータコア33側の流れと、高温側外気熱交換器34側の流れとに分岐するような構成であったが、分岐することなく接続した構成を
採用することができる。
 本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。

Claims (9)

  1.  冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、前記圧縮機で圧縮された高圧冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮器(12)と、前記凝縮器から流出した前記冷媒を減圧させる減圧部(14b)と、前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させて蒸発させる蒸発器(16)と、を有するヒートポンプサイクル(10)と、
     前記凝縮器にて放熱される前記高圧冷媒が有する熱を熱源として、空調対象空間に送風される送風空気を加熱する加熱部(30)と、
     前記蒸発器にて前記冷媒に吸熱される低温側熱媒体が循環するように構成され、前記低温側熱媒体を加熱する熱源装置(42、45、46)と、前記低温側熱媒体が有する熱量を調整する熱量調整部(41、44、47)と、を有する低温側熱媒体回路(40)と、
     前記熱量調整部の作動を制御する制御部(70)と、を有し、
     前記制御部は、前記加熱部にて前記送風空気を加熱する為の熱移動量が予め定められた目標値に近づくように、前記圧縮機の回転数(Nc)と、前記熱源装置と前記熱量調整部の少なくとも一方の作動を制御して、前記低温側熱媒体の温度(Twl)を調整するヒートポンプシステム。
  2.  前記制御部は、前記加熱部による前記送風空気の加熱が行われる場合に、前記低温側熱媒体の温度に関して予め定められた基準値(KTwl)となるまで、前記低温側熱媒体が有する熱を少なくとも維持する制御を行う請求項1に記載のヒートポンプシステム。
  3.  前記加熱部(30)は、前記凝縮器にて前記高圧冷媒の熱が放熱される高温側熱媒体が循環するように構成され、前記高温側熱媒体との熱交換により前記送風空気を加熱する暖房用熱交換器(33)を有する高温側熱媒体回路(31)により構成され、
     前記制御部は、前記高温側熱媒体の温度が前記熱移動量の目標値(Qh)に基づいて定められた目標高温側熱媒体温度(Twoh)に近づくように、前記圧縮機の回転数(Nc)と、前記熱源装置と前記熱量調整部の少なくとも一方の作動を制御して、前記低温側熱媒体の温度(Twl)を調整する請求項1又は2に記載のヒートポンプシステム。
  4.  前記制御部は、車室内に送風される前記送風空気について定められた目標吹出温度(TaO)に従って、前記熱移動量(Qh)の目標値を定め、
     前記加熱部における前記熱移動量が前記熱移動量の目標値に近づくように、前記低温側熱媒体の温度に関する目標値である目標低温側熱媒体温度(Twol)を定める請求項3に記載のヒートポンプシステム。
  5.  前記低温側熱媒体回路は、前記低温側熱媒体と外気とを熱交換させる低温側外気熱交換器(43)を有しており、
     前記制御部は、前記熱量調整部の作動を制御することにより、前記低温側熱媒体から外気への放熱量を調整する請求項1ないし4の何れか1つに記載のヒートポンプシステム。
  6.  前記圧縮機の回転数には、少なくとも2つ以上の上限値が定められており、
     前記2つ以上の前記圧縮機の回転数上限値のそれぞれに対して、前記加熱部における前記熱移動量が前記熱移動量の目標値を達成する為に要求される前記低温側熱媒体の温度の目標値である目標低温側熱媒体温度(Twol)が定められており、
     前記制御部は、前記低温側熱媒体の温度(Twl)が前記目標低温側熱媒体温度に近づくように、前記熱量調整部の作動を制御する請求項1ないし5の何れか1つに記載のヒートポンプシステム。
  7.  前記ヒートポンプシステムは、車両(A)に搭載されており、
     前記制御部は、前記車両の走行速度に応じて、前記圧縮機の回転数上限値(Ncul)を定める請求項1ないし6の何れか1つに記載のヒートポンプシステム。
  8.  前記ヒートポンプシステムは、車両(A)に搭載されており、
     前記制御部は、将来的な前記車両の走行状況を推定する走行状況推定部(71e)を有し、前記走行状況推定部にて推定された将来的な前記車両の走行状況に基づいて、前記低温側熱媒体の温度に関する目標値である目標低温側熱媒体温度(Twol)を変更する請求項1ないし7の何れか1つに記載のヒートポンプシステム。
  9.  前記制御部は、前記走行状況推定部にて推定された将来的な前記車両の走行状況に基づいて、前記目標低温側熱媒体温度(Twol)を変更する際に、
     前記目標低温側熱媒体温度の変更時期に先んじて前記熱源を作動させる事前準備時期(tap)を、前記熱源装置の最大発熱能力に基づく前記低温側熱媒体の温度変化率(ΔT)と、現時点の前記低温側熱媒体の温度(Twl)を用いて決定する請求項8に記載のヒートポンプシステム。
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WO2021075181A1 (ja) * 2019-10-15 2021-04-22 株式会社デンソー 冷凍サイクル装置
JP2021175618A (ja) * 2020-05-01 2021-11-04 株式会社デンソー 車両用空調装置

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