WO2023032306A1 - 発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材を提供することである。本発明の発光性ナノ粒子は、第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を含有する発光性ナノ粒子であって、第1の発光性化合物が、光照射により励起され、励起によるエネルギーを、第2の発光性化合物に移動させる機能を有し、第2の発光性化合物が、励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有し、かつ発光性ナノ粒子の全量に対する第1の発光性化合物の含有量が、4~90質量%の範囲内である。

Description

発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材
 本発明は、発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材に関し、より詳しくは、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材に関する。
 発光性化合物を用いた「バイオイメージング」における、イメージング像内でのナノ粒子の輝点によるタンパク質の位置や定量が可能な高感度イメージングに向けて、発光性化合物の発光と細胞の自家蛍光とを分離することが大きな課題となっている。なお、「バイオイメージング」とは、細胞やたんぱく質等のターゲットに対して微小な発光性粒子等の発光(例えば蛍光)プローブを特異的に吸着させた後、当該発光プローブからの発光を利用して、ターゲットの構造や生体内におけるそれらの位置や移動の様子を観察することをいう。
 前記バイオイメージングに対する自家蛍光の悪影響を回避するための手段として、近赤外発光、ロング・ストークスシフト発光及び遅延発光等の現象を利用する手段が挙げられる。
 ロング・ストークスシフト発光や遅延発光では、ドナー部位とアクセプター部位を有する構造からなる発光性化合物を用いて、いずれかの部位の励起による分子内電子移動によって発光を生成させる。そのため、発光性化合物の分子設計が限定的であり、励起波長と発光波長の制御が自由ではない。両者とも、高輝度化のための発光性化合物のモル吸光係数向上や、吸収波長の長波長化のためにドナー部位やアクセプター部位のπ共役系を拡張することは、基底状態での電子移動状態促進や励起三重項準位低下に起因する発光性低下を招いてしまうため、分子設計上、困難が伴う。
 そのため、ロング・ストークスシフト発光材料や遅延発光材料において、モル吸光係数向上や細胞が劣化しない波長域(450nm以上)での励起波長設計には困難が伴う。さらに、遅延発光は汎用装置での検出ができないため、病院やクリニックでの使用は現実的ではない。
 一方、近赤外発光は、生体透過性を有しており細胞の自家蛍光を回避できるため、バイオイメージングの世界において多用されている。しかしながら、近赤外領域での発光は、エネルギーギャップ則から量子収率が低いという根本的な問題がある。さらに、一般的な水中でのバイオイメージングでは、発光性化合物への水の溶媒和により、励起状態から低いエネルギー準位の電荷分離状態への遷移が促進され、量子収率の低下が引き起こされる。
 水の溶媒和影響を緩和し得る発光性ナノ粒子を用いた方法では、ナノ粒子中に発光性化合物を詰め込むために生じる発光性化合物の凝集消光による発光性低下の問題があり、さらにエネルギーギャップ則により量子収率が低い近赤外発光においては凝集消光の影響が非常に大きい。一方、量子収率を維持するために、発光性化合物の構造を剛直にすると、極大吸収波長と極大発光波長が近接するため、励起光が迷光となってイメージング上でのノイズとなり、高感度イメージング化を阻害する問題もある。
 特許文献1及び特許文献2においては、ナノ粒子中に2種の発光色素(発光性化合物)を導入し、第1成分の色素をエネルギードナーとして光励起を行い、エネルギー移動を介して、第2成分の色素がエネルギーアクセプターとして発光する技術が開示されている。これらの従来技術では、細胞の自家蛍光及び励起光の迷光を回避することはできるが、発光性化合物の量子収率を維持するために粒子中の発光性化合物含有量を非常に小さく設計していることから、低吸光量や発光性化合物劣化による輝度影響が敏感となり、高感度イメージング用途において粒子輝度(=吸光度×量子収率)に問題が生じていた。
特許第3773949号 特許第5306714号
 本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材を提供することである。
 本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、発光性ナノ粒子に、光照射により励起され、その励起によるエネルギーを、第2の発光性化合物に移動させる機能を有する第1の発光性化合物と、第1の発光性化合物の励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有する第2の発光性化合物を含有させ、かつ、第1の発光性化合物の発光性ナノ粒子の全量に対する含有量を、4~90質量%の範囲内とすることで、発光性ナノ粒子が、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にすることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を含有する発光性ナノ粒子であって、
 前記第1の発光性化合物が、光照射により励起され、前記励起によるエネルギーを、前記第2の発光性化合物に移動させる機能を有し、
 前記第2の発光性化合物が、前記励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有し、かつ
 前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が、4~90質量%の範囲内である発光性ナノ粒子。
2.前記第1の発光性化合物が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有する第1項に記載の発光性ナノ粒子。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。ベンゼン環又はナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環又はナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 式(2)中、Rは、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表す。ナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 式(F1)中、Arは、アリール環又はヘテロアリール環を表す。Rは置換基を表す。一般式(F1)で表される基を二つ以上有する場合は、二つのR同士が互いに連結していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子又は-NR′-を表す。R′は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 式(3)中、Rは、発光性化合物骨格を表す。Xは、それぞれ独立してイオン性置換基を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。nは1以上の整数を示す。
3.前記第1の発光性化合物が、下記一般式(1c)、一般式(1d)又は一般式(1e)で表される構造を有する化合物を含む第1項に記載の発光性ナノ粒子。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 式(1c)~式(1e)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。式(1e)中、R21は、それぞれ独立して、水素原子又はイオン性置換基を表し、少なくとも一つはイオン性置換基を表す。
4.前記第2の発光性化合物と前記第1の発光性化合物のモル比が、1:2~1:200の範囲内にある第1項から第3項までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
5.前記第2の発光性化合物が、キサンテン色素である第1項から第4項までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
6.さらに、バインダーを含有する第1項から第5項までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
7.前記発光性ナノ粒子の表面が、親水性基を有する第1項から第6項までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子を用いた病理診断用発光性標識材。
 本発明の上記手段により、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材を提供することができる。特に、この技術は発光量子収率が低い近赤外領域での生体透過性高感度イメージングに有効である。
 本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
 本発明の発光性ナノ粒子においては、含有する発光性化合物を少なくとも2種類とし、機能を分離した。すなわち、励起波長と発光波長の大きな分離による細胞の自家蛍光回避のために、従来の単一分子発光イメージング技術において生じていた課題である励起と発光の波長設計の制御を2種類以上の発光性化合物を含有するナノ粒子を用いる手段において可能とした。
 具体的には、本発明の発光性ナノ粒子においては、光照射により励起される第1の発光性化合物及び第1の発光性化合物が励起したエネルギーを受け取り発光する第2の発光性化合物に機能を分離した。より具体的には、第1の発光性化合物として、発光性ナノ粒子の全量に対して4~90質量%という高濃度の含有量において、凝集消光が抑制された発光性化合物を用いた。
 これにより、第1の発光性化合物を発光性ナノ粒子に高濃度で含有でき、吸光度とエネルギー移動効率を最大化したものである。第2の発光性化合物は、最大化されたエネルギーを受け取ることで、例えば、微量の含有量においても、高輝度に発光ができる。後述のとおり、典型的には、第1の発光性化合物の極大発光波長と第2の発光性化合物の極大吸収波長の関係は、第1の発光性化合物の極大発光波長に比べて第2の発光性化合物の極大吸収波長が長波長側に位置する。本発明においては、このような機構により、高輝度、ロングストークスシフト発光を満足するナノ粒子技術が実現しているものと考えられる。
 特に、第2の発光性化合物が近赤外光を発光する場合、第2の発光性化合物の含有量を低く抑えられ、それにより凝集消光を抑制することで量子収率を維持する効果が大きい。
 このようにして、本発明においては、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子を提供することができると考えられる。
 本発明の発光性ナノ粒子は、第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を含有する発光性ナノ粒子であって、前記第1の発光性化合物が、光照射により励起され、前記励起によるエネルギーを、前記第2の発光性化合物に移動させる機能を有し、前記第2の発光性化合物が、前記励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有し、かつ、前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が、4~90質量%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
 本発明において、前記第1の発光性化合物が、前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が4~90質量%の範囲内において、前記励起によるエネルギー(以下、「励起エネルギー」ともいう。)の最大値を有する発光性化合物であることが好ましい。言い換えれば、前記第1の発光性化合物が、前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が4~90質量%の範囲内において、前記第1の発光性化合物の比較的多数の分子が励起光を吸収し、それによって得た励起エネルギーを前記第2の発光性化合物に移動させる効率が最大値となる化合物であることが好ましい。
 また、本発明においては、前記第2の発光性化合物の含有量を一定量としたときに、前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が4~90質量%の範囲内において、前記第2の発光性化合物の発光強度が最大値を有することが好ましい。
 本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記第1の発光性化合物が、上記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。さらに、前記第1の発光性化合物が、上記一般式(1c)、一般式(1d)又は一般式(1e)で表される化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、例えば、発光性ナノ粒子の全量に対する含有量が4~90質量%の範囲内において、励起光に対し適切な吸光度と極大吸収波長を有し、かつ励起された分子からのエネルギー移動の効率が良好である点から好ましい。励起エネルギーが最大値を有する発光性化合物である。
 本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記第2の発光性化合物と前記第1の発光性化合物のモル比が1:2~1:200の範囲内にあることが好ましい。
 本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、また、近赤外領域の光は生体透過性を有するため、前記第2の発光性化合物が近赤外光を発光する発光性化合物であることが好ましい。また、同様の理由により、前記第2の発光性化合物が、キサンテン色素であることが好ましい。
 本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記発光性ナノ粒子は、さらに、バインダーを含有することが好ましい。
 本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記発光性ナノ粒子の表面が親水性基を有することが好ましい。
 本発明の病理診断用発光性標識材は、上記本発明の発光性ナノ粒子を用いたことを特徴とする。
 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[発光性ナノ粒子]
 本発明の発光性ナノ粒子は、第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を含有する発光性ナノ粒子であって、前記第1の発光性化合物が、光照射により励起され、前記励起によるエネルギーを、前記第2の発光性化合物に移動させる機能を有し、前記第2の発光性化合物が、前記励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有し、かつ、前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が、4~90質量%の範囲内であることを特徴とする。
 ここで、第1の発光性化合物は、単独で用いた場合は、目的に応じた所定の励起光を吸収して励起し発光し得る化合物である。また、第2の発光性化合物との相互関係において、励起エネルギーを第2の発光性化合物に移動できる化合物である。なお、本発明の発光性ナノ粒子においては第1の発光性化合物において励起したエネルギーが第2の発光性化合物に移動し、第2の発光性化合物が発光するため、第1の発光性化合物の発光は起こらない。
 以下に、第1の発光性化合物の極大発光波長と第2の発光性化合物の極大吸収波長の関係について説明する。以下の説明において、第1の発光性化合物の極大発光波長及び第2の発光性化合物の極大吸収波長は、第1の発光性化合物及び第2の発光性化合物について、それぞれ単独で測定される極大発光波長及び極大吸収波長である。
 第1の発光性化合物の極大発光波長と第2の発光性化合物の極大吸収波長の関係は、上記のとおり、典型的には、第1の発光性化合物の極大発光波長をλem1、第2の発光性化合物の極大吸収波長をλab2としたときに、λem1<λab2であることが好ましい。
 第1の発光性化合物と第2の発光性化合物との間のエネルギー移動は、典型的には、第1の発光性化合物の発光スペクトルと第2の発光性化合物の吸収スペクトルが重なるフェルスター型エネルギー移動である。なお、同時に、デクスター型エネルギー移動が起こっていてもよい。
 上記フェルスター型エネルギー移動を効率的にするために、λab2-λem1で示されるλab2とλem1の差は、70nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。
 なお、第2の発光性化合物の極大発光波長をλem2で示す。λem2は、近赤外領域にあることが、生体透過性及び本発明における効果が顕著である点から好ましい。本明細書において、近赤外領域とは、650~1800nmの領域をいう。λem2は、650~1000nmの範囲にあることがより好ましい。
 本発明において、「発光性ナノ粒子」とは、発光性化合物を含有する粒子であって、例えば、平均粒径が1~1000nmの範囲であるものをいう。平均粒径は、好ましくは、30~500nmの範囲内であり、さらに好ましくは50~200nmの範囲内である。
 発光性ナノ粒子の平均粒径の測定は、当該分野で知られた方法により行うことができる。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を適切な倍率で撮影し、発光性ナノ粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。
 発光性ナノ粒子の集団の粒子サイズの平均(平均粒径)及び変動係数は、十分な数(例えば1000個)の発光性ナノ粒子について上記のようにして粒子サイズ(粒径)を測定した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径、により算出される。
 本発明において、粒径のばらつきを示す変動係数は特に限定されないが、通常は20%以下であり、好ましくは5~15%である。
 本発明の発光性ナノ粒子は、第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を、必須成分として含有する。本発明の発光性ナノ粒子は、さらに任意成分として、バインダーを含有することが好ましい。以下、本発明の発光性ナノ粒子の各構成要素について順次説明する。
<第1の発光性化合物>
 第1の発光性化合物は、本発明の発光性ナノ粒子の全量に対して4~90質量%の範囲内の含有量で含有される発光性化合物である。第1の発光性化合物は、光を吸収して励起する性質を有する。励起エネルギーは第2の発光性化合物が受け取り発光する。第1の発光性化合物は、本発明の発光性ナノ粒子の全量に対して含有量が4~90質量%の範囲内で、所定の励起光に対し最大の吸光度の極大吸収波長を有し、かつ励起エネルギーが最大値となる、言い換えれば、励起された分子からのエネルギー移動の効率が最大値となる発光性化合物であることが好ましい。
 第1の発光性化合物の含有量は、本発明の発光性ナノ粒子の全量に対して4~90質量%の範囲内が好ましく、10~80質量%がより好ましい。
 第1の発光性化合物のλem1は、特に制限されないが、第2の発光性化合物の極大吸収波長λab2及び極大発光波長λem2との関係を考慮すれば、例えば、λem2が近赤外領域にある場合、500~900nmの範囲内が好ましく、600~800nmの範囲内がより好ましい。また、第1の発光性化合物の極大吸収波長をλab1で示す。λab1は、特に制限されないが、例えば、λem1が上記範囲にある場合には、500~700nmの範囲内が好ましく、550~650nmの範囲内がより好ましい。
 以下に、本発明に係る第1の発光性化合物の好ましい具体例を挙げるが、これらの化合物はさらに置換基を有していたり、構造異性体等が存在していたりする場合もあり、以下に例示する化合物にのみ限定されない。
 第1の発光性化合物としては、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。以下、一般式(1)で表される構造を有する化合物を化合物(1)ともいう。他の化合物においても同様である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。ベンゼン環又はナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環又はナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 式(2)中、Rは、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表す。ナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 式(F1)中、Arは、アリール環又はヘテロアリール環を表す。Rは置換基を表す。一般式(F1)で表される基を二つ以上有する場合は、二つのR同士が互いに連結していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子又は-NR′-を表す。R′は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 式(3)中、Rは、発光性化合物骨格を表す。Xは、それぞれ独立してイオン性置換基を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。nは1以上の整数を示す。
(化合物(1))
 化合物(1)は、下記一般式(1)で構造が示されるイミド誘導体である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。ベンゼン環又はナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環又はナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。化合物(1)において、*に示した位置に有してもよい置換基としては、特に制限されない。
 具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジタートブチル基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
 また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。さらに、これらの置換基同士が結合して環を形成してもよい。隣接する置換基同士が形成する環状構造は、芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。
 好ましくは、*の位置には置換基を有しないか、又は置換基がアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、二つカルボン酸が縮合したカルボン酸無水物、若しくは置換基同士が結合した縮合環である。
 Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の基を表す。Rで示される置換基は、具体的には、*が有してもよい上記の置換基の中から選ぶことができるが、少なくとも一つは、炭素数が3~30の基である。炭素数が3~30の基であることによって、イミドのカルボニル基とRとの立体障害により窒素原子に置換したフェニル基がナフタレン環に対して垂直に配向するため、オルト位の置換基Rが効果的にπ平面を遮蔽することができる。
 また、Rは、炭素鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有することが好ましい。より好ましくは、炭素鎖中に酸素原子を有することである。炭素鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するにより、より柔軟な構造となり、Rによるπ平面の遮蔽効果を高めることができる。
 Rは好ましくは、アルキル基(例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、3-エチルペンチル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルエチル等)、アルケニル基(例えば、プロぺニル基、ヘキセニル基等)、アルキニル基(例えば、プロピニル基、ヘキシニル基、フェニルエチニル等)、アリール基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルブチルオキシ等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、ジエチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)フッ化炭化水素基(例えば、デカフルオロブチル基、ペンタフルオロフェニル基等)シリル基(例えば、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)である。
 Rは嵩高い基であることがより好ましく、アリール基、ヘテロアリール基、2級以上の炭素が含まれるアルキル基(例えば2級炭素:イソブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、コレステリル基、3級炭素:tert-ブチル基、アダマンチル基、[2,2,2]ビシクロオクチル基等)、3級アミノ基(例えば、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、3級シリル基(例えば、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)などが挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基の末端にこのようなかさ高い基を有することもできる。
 化合物(1)は、下記一般式(2-1)~一般式(2-6)のいずれかで表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 (式中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。)
 Rは一般式(1)におけるRと同義である。
 R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。
 これらの基は一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基と同義である。
 本発明に係り、一般式(2-2)で表される構造を有するペリレンビスイミド誘導体が好ましく、さらに、当該ペリレンビスイミド誘導体は、下記一般式(31)で表される構造を有する化合物(31)であることが好ましい。ペリレンビスイミド誘導体は、高い発光量子収率を示すだけでなく、高い耐光性を示すため望ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 式(31)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。
 前記一般式(31)において、Rは、フェノキシ基又は下記一般式(2-2-1)で表される基(以下、基(2-2-1)ともいう。)が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 式(2-2-1)中、R12は、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、一般式(1)において示した、*に示した位置に有しても良い置換基と同義である。
 化合物(31)として、より好ましくは、下記一般式(1c)、一般式(1d)又は一般式(1e)で表される構造を有する化合物等が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 式(1c)~式(1e)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。式(1e)中、R21は、それぞれ独立して、水素原子又はイオン性置換基を表し、少なくとも一つはイオン性置換基を表す。Rは、一般式(1)で示したRと同義であり、具体的例示は上記のとおりである。
 化合物(1c)は、式(31)においてRが水素原子、Rがフェノキシ基である化合物である。化合物(1c)においては、ベイエリアとなるRがフェノキシ基であり、それにより溶解性の向上及びλem1の長波長化ができることから第1の発光性化合物として好ましい。
 化合物(1d)は、式(31)においてRが水素原子、Rが基(2-2-1)(ただし、全てのR12が水素原子である。)である化合物である。化合物(1d)は、ペリレン部位の分子間相互作用低減による濃度消光抑制の観点から第1の発光性化合物として好ましい。
 化合物(1e)は、化合物(1d)において、基(2-2-1)中のR12のうちベンゼン環の4位に位置するR12(式(1e)においてR21)の少なくとも1つがイオン性置換基に置換された化合物である。化合物(1e)は、イオン性置換基を有することで、溶解性が向上する点、静電力の反発による濃度消光抑制の観点から第1の発光性化合物として好ましい。
 化合物(1e)において、R21の全てがイオン性置換基に置換された化合物は、後述の化合物(3)、より具体的には、化合物(4)に分類される化合物でもある。化合物(1e)におけるイオン性置換基については、後述の化合物(3)の場合と同義である。なお、化合物(1e)の具体例は、後述の化合物(3)の具体例として記載した。
(化合物(2))
 化合物(2)は、下記一般式(2)で構造が示されるイミド誘導体である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 式(2)中、Rは、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、下記一般式(F1)で表される構造を有する基(以下、置換基(F1)ともいう。)を表す。ナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 式(F1)中、Arは、アリール環又はヘテロアリール環を表す。Rは置換基を表す。一般式(F1)で表される基を二つ以上有する場合は、二つのR同士が互いに連結していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子又は-NR′-を表す。R′は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
 化合物(2)においては、置換基(F1)が有するArで表したアリール環又はヘテロアリール環のオルト置換基Rがペリレン環に向かって配向し、効果的にπ平面を遮蔽するため高い量子収率を示すことができる。
 Arは、置換基を有しても良いアリール環又はヘテロアリール環を表し、アリール環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環及びピレン環等を挙げることができる。
 ヘテロアリール環としては、ピリジン環、ピリミジン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾロトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、インドール環、キノキサリン環、トリアジン環等を挙げることができる。Arは、アリール環を表すことが好ましい。
 Rは置換基を表し、一般式(1)において、*が有してもよい置換基から選択することができる。
 R′で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義である。
 Rは、好ましくはアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基)、ヘテロアリール基(例えばピリジル基、カルバゾリル基)、アルケニル基(例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例えばプロピニル基、ヘキシニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基)、シリル基(例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基)、アルコキシ基(メトキシ基、tert-ブチルオキシ基)又はアリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基)である。
 Rは、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義である。Rとしては、置換若しくは無置換のアリール基、特には、置換若しくは無置換のフェニル基が好ましい。Rとしては、下記一般式(F2)で構造が示される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 式(F2)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の基を表す。ベンゼン環はさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環に有してもよい置換基の位置を表す。式(F2)中のR及び*に示した位置に有してもよい置換基は、それぞれ一般式(1)におけるR及び*が有してもよい置換基として挙げた置換基と同義である。
 化合物(2)としては、下記一般式(7-1)~一般式(7-4)で表される構造を有することが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 式中、Rは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は前記一般式(6)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、前記一般式(6)で表される構造を有する基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。
 R及びRは、一般式(2)におけるR及びRと同義である。R及びRで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基と同義である。
 本発明に係り、一般式(7-1)で表される構造を有するペリレンビスイミド誘導体が好ましく、さらに、当該ペリレンビスイミド誘導体は、下記一般式(8)で表される構造を有する化合物(8)であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 式(8)中、複数のRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは置換基を表す。R同士が互いに連結していてもよい。R11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
 R及びRは、それぞれ一般式(2)におけるR及びRと同義である。さらに、一般式(8)で表される構造を有するイミド誘導体が、一般式(8A)で表される構造を有するイミド誘導体であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
 式(8A)中、複数のRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Rは置換基を表す。R同士が互いに連結していてもよい。R及びRは、一般式(8)におけるR及びRと同義である。
 化合物(8A)は、ベイエリア4カ所全てが置換基Rを有するフェノキシ基であり、置換基Rが、それぞれペリレン環の上下に配向し、遮蔽効果を高めるため望ましい。
 さらに、前記一般式(8)において、Rのいずれか2つがペリレン上を横断し連結していることが望ましい。連結することによりペリレン環同士の相互作用を効果的に阻害し、より高い発光量子収率を示す。
 以下に本発明の一般式(1)~(8)で表される構造を有するイミド誘導体の例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000028
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000030
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000032
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000033
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000034
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000035
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000036
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000037
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000038
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000039
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000040
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000041
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000042
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000043
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000044
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000045
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000046
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000047
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000048
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000049
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000050
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000051
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000052
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000053
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000054
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000055
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000056
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000057
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000058
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000059
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000060
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000061
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000062
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000063
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000064
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000065
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000066
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000067
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000068
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000069
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000070
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000071
(化合物(1)及び化合物(2)の合成)
 化合物(1)及び化合物(2)は公知の方法、例えば、Chem.Eur.J.2004,10,5297-5310.を参照して合成することができる。例として上記文献の既知化合物から、例示化合物C-53(化合物(1))及びC-45(化合物(2))の合成スキームを以下に示す。他の例示化合物も同様にして合成することができる。なお、合成スキーム中、NMPは、N-メチル-2-ピロリドンを表す。
<例示化合物C-53の合成>
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000072
<例示化合物C-45の合成>
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000073
(化合物(3))
 化合物(3)は、下記一般式(3)で構造が示される化合物である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000074
 式(3)中、Rは、発光性化合物骨格を表す。Xは、それぞれ独立してイオン性置換基を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。nは1以上の整数を示す。
 化合物(3)において、Rで表される発光性化合物骨格としては、下記に示す母核化合物のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000075
 上記式中、R20は、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
 化合物(3)は、母核化合物が有する水素原子のうちのn個が、上記式(3)中の括弧で囲まれた置換基(以下、置換基(F3)ということもある。)に置換した化合物である。nは1以上の整数であり、母核化合物の構造に応じて適宜選択される。nは1~6が好ましく、2~4がより好ましい。例えば、母核化合物がペリレンビスイミドの場合、nは、2~6が好ましく、4が特に好ましい。母核化合物における、置換基(F3)の置換位置は特に制限されないが、立体障害の影響が大きくなる位置が好ましい。例えば、母核化合物がペリレンビスイミドの場合、ベイエリアが好ましい。
 置換基(F3)は、ビフェニル骨格と連結基としてのL1が結合した置換基であり、2個のベンゼン環は各1個のイオン性置換基Xを有する構造である。母核化合物が有する水素原子のうち置換基(F3)による置換がされていない水素原子は、置換基(F3)以外の置換基で置換されていてもよい。
 化合物(3)において、Xで表されるイオン性置換基としては、具体的には、-OH、-SH、-COOH、-C(=O)H、-S(=O)OH、-S(=O)NH、-S(=O)NH、-P(=O)(OH)、-P(=O)R(OH)、-P(=O)R(OH)、-P(OH)、-P(=O)(NH、-P(=O)R(NH、-P(=O)R(NH)、-P(NH、-O(C=O)OH、-NH、-NHR、-NHCONH、-NHCONHR、-NHCOOH、-Si(OH)、-Si(R)(OH)、-Si(R)OH、-Ge(OH)、-Ge(R)(OH)、-Ge(R)OH、-Ti(OH)、-Ti(R)(OH)、-Ti(R)OH、-Si(NH、-Si(R)(NH、-B(OH)、-O-B(OH)、-B(NH、-NHB(OH)、ポリエチレングリコール基等である。なお、前記Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1~20のアルキル基を示す。他にも、NHS基、マレイミド基等もイオン性置換基として挙げられる。
 イオン性置換基としては、スルホ基、リン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基又はアンモニウム基、カルボキシ基、ホスホニウム基若しくはそれらの塩のいずれかであることが好ましい。これらの中でも、スルホ基、リン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基又はアンモニウム基若しくはそれらの塩のいずれかであることがより好ましく、特に、スルホ基又はその塩であることがより好ましい。具体的には、-SOH、-SONa、-OSOH、-OSONa、-SONH、-PO、-PONa、-OPO、-OPONa、-NMeOH、-NMeCl等が挙げられる。
 化合物(3)において、Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表し、特に、酸素原子であることが好ましい。
 化合物(3)が、下記一般式(4)で表される構造を有することが、濃度消光抑制効果に優れる点で好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000076
 式(4)中、Rは、発光性化合物骨格を表す。Xは、イオン性置換基を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。
 前記一般式(4)において、R、X及びL1は、前記一般式(3)におけるR、X及びL1と同義である。
 さらに、化合物(4)は、下記一般式(9)で表される構造を有することが、濃度消光抑制効果に優れる点で好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000077
 式(9)中、Xは、スルホ基又はその塩を表す。NHにおけるHは、置換基で置換されていてもよい。
 化合物(9)において、NHにおけるHが置換基で置換されている場合の置換基としては、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基が挙げられる。具体的な例示は、一般式(2)におけるRと同様とすることができる。
 前記一般式(3)で表される構造を有する発光性化合物の具体的な化合物を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000078
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000079
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000080
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000081
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000082
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000083
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000084
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000085
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000086
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000087
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000088
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000089
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000090
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000091
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000092
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000093
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000094
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000095
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000096
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000097
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000098
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000099
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000100
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000101
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000102
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000103
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000104
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000105
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000106
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000107
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000108
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000109
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000110
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000111
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000112
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000113
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000114
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000115
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000116
(化合物(3)の合成)
 化合物(3)の合成について、化合物(3)のXがスルホ基である場合を例に説明する。Xがスルホ基である化合物(3)は、例えば、一般式(3)においてXがイオン性置換基の代わりに水素原子である化合物(3)前駆体をスルホン化することにより、各ベンゼン環にスルホ基を1つずつ導入することで行うことができる。これにより、一度に複数のイオン性置換基で置換することができ、製造効率に優れる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000117
 式中、Rは、発光性化合物骨格を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。nは1以上の整数を示す。なお、前記式中、Rは、前記した一般式(3)におけるRと同義である。
<例示化合物1-1の合成例>
 前記例示化合物1-1の合成スキームを以下に示す。なお、その他の例示化合物も同様にして合成することができる。合成スキーム中、NMPはN-メチル-2-ピロリドンを表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000118
 以上、第1の発光性化合物について説明した。本発明において、第1の発光性化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。エネルギー移動経路の限定による移動効率の向上の観点から、第1の発光性化合物は1種を単独で用いることが好ましい。なお、第1の発光性化合物として、2種以上を併用する場合、発光性ナノ粒子中の第1の発光性化合物の含有量は、それらの合計量である。
<第2の発光性化合物>
 第2の発光性化合物の極大発光波長λem2は上記の範囲が好ましい。一方、極大吸収波長λab2については、第1の発光性化合物の極大発光波長λem1及び第2の発光性化合物の極大発光波長λem2を考慮すれば、概ね、500~900nmの範囲内が好ましく、600~800nmの範囲内がより好ましい。
 また、本発明の発光性ナノ粒子における第2の発光性化合物と第1の発光性化合物の含有量のモル比(第2の発光性化合物:前記第1の発光性化合物)は、1:2~1:200の範囲内が好ましく、1:4~1:100がより好ましく、1:8~1:75がさらに好ましく、1:16~1:50がよりさらに好ましい。
 本発明の発光性ナノ粒子における第2の発光性化合物の含有量は、第1の発光性化合物と第2の発光性化合物の含有量のモル比にもよるが、本発明の発光性ナノ粒子の全量に対して、概ね0.05~1質量%の範囲内が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。
 第2の発光性化合物としては、化合物の化学的・光学的安定性の観点からキサンテン色素が好ましい。キサンテン色素としては、典型的には、下記一般式(10)で構造が表される化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000119
 式(10)中、X1は、O、CR、SiR、P(=O)R、又はBRを示す。Rはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を示す。Y1は、アミノ基又はヒドロキシ基を、Y2はアンモニウム基又は酸素原子を示す。R30は水素原子又は置換基を示す。
 X1が示す、CR、SiR、P(=O)R、BRにおけるRが置換基である場合のRとして、具体的には、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げた基が挙げられる。R30が置換基である場合も同様である。
 Y1がアミノ基である場合のアミノ基としては、典型的には、-NR(Rは水素原子又は置換基)が挙げられる。Rが置換基である場合のRとして、具体的には、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げた基が挙げられる。2個のRは互いに結合して環を形成していてもよい。
 Y2がアンモニウム基である場合のアンモニウム基としては、典型的には、=NR (Rは水素原子又は置換基)が挙げられる。Rが置換基である場合のRとして、具体的には、一般式(1)において、*が有してもよい置換基として挙げた基が挙げられる。2個のRは互いに結合して環を形成していてもよい。また、Rは、窒素原子が結合するベンゼン環を構成する炭素原子と結合して環を形成していてもよい。
 Y2がアンモニウム基である場合、化合物(10)は、分子内又は分子外にカウンターアニオンを有する。カウンターアニオンを分子内に有する場合、R30がカウンターアニオンを有する構成が好ましい。その場合のカウンターアニオンとしては、COO、SO 等が挙げられる。化合物(10)が、分子外にカウンターアニオンを有する場合、カウンターアニオンとしては、I、F、Br、Cl、PF 、BF 、ClO 等が挙げられる。
 キサンテン色素のうちでも、特に好ましくは以下に示す化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000120
 第2の発光性化合物としては、上記キサンテン色素以外にシアニン色素、スクアリリウム色素、ジピロメテン色素、アザジピロメテン色素、テリレン色素、第1の発光性化合物以外のペリレン色素等を用いてもよい。これらの色素の典型的な化合物の構造を以下に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000121
 以上、第2の発光性化合物について説明した。本発明において、第2の発光性化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。エネルギー移動経路の限定による移動効率の向上の観点から第2の発光性化合物は1種を単独で用いることが好ましい。なお、第2の発光性化合物として、2種以上を併用する場合、発光性ナノ粒子中の第1の発光性化合物の含有量は、それらの合計量である。
<その他の発光性化合物>
 本発明の発光性ナノ粒子は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、第1の発光性化合物及び第2の発光性化合物以外のその他の発光性化合物を含有してもよい。ただし、本発明の効果を十分に得る観点からは、その他の発光性化合物を含有しないことが好ましい。
<バインダー>
 本発明の発光性ナノ粒子は、固着材的又は結着材的作用を有するバインダーを含有することが、バインダーを介して、粒子表面に特別な機能を持たせることを可能にすることができる点で好ましい。
 バインダーを含有する場合、発光性ナノ粒子全量に対する、バインダーの含有量は、発光性ナノ粒子の全量から第1の発光性化合物、第2の発光性化合物及びその他の発光性化合物の合計量を除いた量であり、例えば、9~95質量%が挙げられる、10~95質量%の範囲内が好ましく、19~90質量%がより好ましく、20~90質量%がさらに好ましい。
 バインダーとしては、主鎖に炭素原子を含む分子量が300以上の有機樹脂又は金属アルコキシドの加水分解縮合物が好ましい。
 有機樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂とアミノ系樹脂の混合樹脂及びポリエステル系樹脂とアミノ系樹脂、セルロース樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアルコール樹脂、ポリ酢酸アリル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリ-n-ブチルイソシアネート樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、6-ナイロン樹脂、ポリ-β-オキシプロピオン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッドメラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(N-ビニルホルムアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルピロリジノン)樹脂、ポリヒドロキシエチルメタクリレート樹脂、ポリオキシエチレンメタクリレート樹脂、ポリエチレングリコールジメチルエーテル樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂等が挙げられる。
 金属アルコキシドの金属の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、ルテニウム、ローレンシウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、パラジウム、銅、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム及びスズが挙げられる。
 本発明の発光性ナノ粒子は、表面に親水性基を有することが好ましい。発光性ナノ粒子が表面に有する親水性基は、上記第1の発光性化合物又は第2の発光性化合物が有する親水性基であってもよく、バインダーが有する親水性基であってもよい。本発明の発光性ナノ粒子は、表面に親水性基を有することで、粒子同士の凝集を抑制して粒子を水中で分散できる点で好ましい。
(親水性基を有するバインダー)
 バインダーが有する親水性基としては、水との相互作用の強い原子団が好ましく、具体的には、-OH、-SH、-COOH、-C(=O)H、-S(=O)OH、-S(=O)NH、-S(=O)NH、-P(=O)(OH)、-P(=O)R(OH)、-P(=O)R(OH)、-P(OH)、-P(=O)(NH、-P(=O)R(NH、-P(=O)R(NH)、-P(NH、-O(C=O)OH、-NH、-NHR、-NHCONH、-NHCONHR、-NHCOOH、-Si(OH)、-Si(R)(OH)、-Si(R)OH、-Ge(OH)、-Ge(R)(OH)、-Ge(R)OH、-Ti(OH)、-Ti(R)(OH)、-Ti(R)OH、-Si(NH、-Si(R)(NH、-B(OH)、-O-B(OH)、-B(NH、-NHB(OH)、ポリエチレングリコール基等である。なお、前記Rはそれぞれ独立に水素又は炭素数1~20のアルキル基を示す。他にも、NHS基、マレイミド基等も親水性を示す親水基として挙げられる。
 親水性基を有するバインダーとして、具体的には、有機樹脂については、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(N-ビニルホルムアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルピロリジノン)樹脂、ポリヒドロキシエチルメタクリレート樹脂、ポリオキシエチレンメタクリレート樹脂、ポリエチレングリコールジメチルエーテル樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂等が好ましい。
 金属アルコキシドの加水分解縮合物も、親水性基を有するバインダーとなりうる。金属アルコキシドとしては、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシド等が好ましい。チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシドからは、加水分解縮合物として、それぞれ、チタニア、ジルコニア、シリカが生成する。本発明の発光性ナノ粒子においては、バインダーとして、メラミン樹脂又はシリカが好ましい。
(熱硬化性樹脂)
 本発明に係るバインダーは、熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、キシレンのような有機溶媒を用いる透徹工程において発光性化合物が溶出しにくいという観点からは、緻密な架橋構造の内部に発光性化合物を固定化することができる、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する有機樹脂が好ましい。
 熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、グアナミン類(ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等を含む)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される構成単位を含むものが挙げられる。これらのモノマーは、いずれか一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。所望によりさらに、一種又は二種以上の上記化合物以外のコモノマーを併用してもよい。
 熱硬化性樹脂の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
 これらの熱硬化性樹脂の原料としては、上述したようなモノマーそのもののみならず、モノマーとホルムアルデヒドやその他の架橋剤等の化合物とをあらかじめ反応させて得られるプレポリマーを用いてもよい。例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂の製造においては一般的に、メラミンとホルムアルデヒドとをアルカリ条件下で縮合して調製されるメチロールメラミンがプレポリマーとして用いられており、当該化合物はさらにアルキルエーテル化(水中での安定性を向上させるためのメチル化、有機溶媒中での溶解性を向上させるためのブチル化等)されたものであってもよい。
 また、上記の熱硬化性樹脂は、その構成単位に含まれる水素の少なくとも一部が、電荷を持つ置換基、又は共有結合を形成しうる置換基に置き換えられたものでもよい。このような熱硬化性樹脂は、公知の手法により少なくとも一つの水素が上記の置換基に置き換えられた(誘導体化された)モノマーを原料として用いることにより合成することができる。
 このような熱硬化性樹脂は、公知の手法に従って合成することができる。例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂は、前述したようにしてあらかじめ調製されたメチロールメラミンを、必要に応じて酸等の反応促進剤を添加した上で加熱して重縮合させることにより合成することができる。
(熱可塑性樹脂)
 本発明に係るバインダーは、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステル、アクリロニトリル、並びにこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単官能モノマー(一分子中に重合反応に関与する基、上記の例ではビニル基を一個持つモノマー)から形成される構成単位を含むものが挙げられる。これらのモノマーは、いずれか一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
 所望によりさらに、一種又は二種以上の上記化合物以外のコモノマーを併用してもよい。上記の熱可塑性樹脂は、例えばジビニルベンゼンのような多官能モノマー(1分子中に重合反応に関与する基、上記の例ではビニル基を2個以上持つモノマー)から形成される構成単位、つまり架橋部位を含んでいてもよい。例えば、ポリメタクリル酸メチルの架橋物が挙げられる。
 さらに、上記の熱可塑性樹脂は、本発明における発光性ナノ粒子を表面修飾するための官能基を有する構成単位を含んでいてもよい。例えば、エポキシ基を有するメタクリル酸グリシジルのようなモノマーを原料とすることにより、エポキシ基が表面に配向した発光性ナノ粒子を調製することができる。このエポキシ基は、過剰のアンモニア水と反応させることによりアミノ基に変換することができる。このようにして形成されるアミノ基には、公知の手法に従って(必要に応じてリンカーとなる分子を介して)、各種の生体分子を導入することができる。
<発光性ナノ粒子の製造方法>
 本発明の発光性ナノ粒子の製造方法として、発光性化合物(第1の発光性化合物及び第2の発光性化合物を含む発光性化合物、以下同様に「発光性化合物」は、第1の発光性化合物及び第2の発光性化合物を含む発光性化合物を示す。)をバインダーからなる母体の内部または表面に固定した、直径がナノメートルオーダーの粒子を形成させる方法を挙げることができる。
 この発光性ナノ粒子の調製方法は特に限定されるものではないが、例えば、発光性ナノ粒子の母体をなすバインダー(例えば、熱可塑性樹脂又熱硬化性樹脂)を合成するための(コ)モノマーを(共)重合させながら、発光性化合物を添加し、当該(共)重合体の内部または表面に当該発光性化合物を取り込ませる方法を用いることができる。バインダーが金属アルコキシドの加水分解縮合物の場合、例えば、金属アルコキシドを加水分解縮合させながら、発光性化合物を添加し、当該加水分解縮合物の内部または表面に当該発光性化合物を取り込ませる方法を用いることができる。
 本発明の発光性ナノ粒子は、第1の発光性化合物及び第2の発光性化合物を用いた上で、例えば、各種のバインダーについて公知の重合工程又は加水分解縮合工程に準じて製造することができる。以下、バインダーが有機樹脂の場合を例に、製造方法を説明する。
(重合工程)
 重合工程は、発光性化合物、樹脂原料(モノマー、オリゴマー又はプレポリマー)、好ましくはさらに界面活性剤及び重合反応促進剤を含有する反応混合物を加熱して樹脂の重合反応を進行させ、発光性化合物を含有する樹脂粒子を生成させる工程である。
 反応混合物に含まれる各成分の添加順序は特に限定されるものではない。典型的には、発光性化合物の水溶液に界面活性剤を添加し、続いて樹脂原料を添加し、最後に重合反応促進剤を添加するという順序が用いられる。あるいは、界面活性剤の水溶液に樹脂原料を添加し、続いて重合反応促進剤を添加して樹脂粒子の合成反応を進行させながら、発光性化合物の水溶液を添加するという順序であってもよい。なお、このような重合工程に用いられる、本発明による特定の発光性化合物の水溶液の濃度は、従来の発光性化合物の水溶液の濃度よりも比較的高めの範囲(例えば2,500~10,000μM)で調節することができる。
 重合反応の条件(温度、時間等)は、樹脂の種類、原料混合物の組成等を考慮しながら適切に設定することができる。
 重合方法としては、公知の重合方法であれば特に限定されるものではない。公知の重合法としては、例えば塊状重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等の方法が挙げられる。塊状重合の場合は、粉砕後、分級することで所望の粒径の樹脂粒子を得ることができる。乳化重合とは、水等の媒体と、媒体に溶解し難いモノマーと乳化剤(界面活性剤)を混合し、そこに媒体に溶解可能な重合開始剤を加えて行う重合法である。得られる粒子径のバラツキが少ないという特徴がある。
 「ソープフリー乳化重合」とは、乳化剤を用いない乳化重合である。均一径の粒子が得られるという特徴がある。シード重合とは、重合開始の際に別途で作られた種(シード)粒子を入れて行われる重合である。種粒子として粒子径と粒子径分布、量(個数)を任意に定めて重合することになり、所望の粒子径と粒子径分布を狙って重合できるという特徴がある。懸濁重合とは、モノマーと溶媒の水とを機械的に撹拌して、懸濁させて行う重合方法である。粒子径が小さくかつ整った粒子を得られることが特徴である。
 具体例として、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の合成を挙げると、反応温度は通常70~200℃、反応時間は通常20~120分間である。なお、反応温度は発光性化合物の性能が低下しない温度(耐熱温度範囲内)とすることが適切である。加熱は複数の段階に分けて行ってもよく、例えば、相対的に低温で一定時間反応させた後、昇温して相対的に降温で一定時間反応させるようにしてもよい。
 重合反応の終了後は、反応液から余剰の樹脂原料、発光性化合物、界面活性剤等の不純物を除去し、生成した発光性ナノ粒子を回収して精製すればよい。例えば、反応液を遠心分離にかけ、不純物が含まれている上澄みを除去した後、超純水を加えて超音波照射して再度分散させて洗浄する。これらの操作は、上澄みに樹脂や発光性化合物に由来する吸光、発光が見られなくなるまで複数回繰り返し行うことが好ましい。
 熱硬化性樹脂を用いた発光性ナノ粒子は、基本的に乳化重合法に従って製造することができるが、界面活性剤及び重合反応促進剤を用いる上記のような重合工程により製造することが好ましい。なお、このような製造方法により得られる発光性ナノ粒子において、発光性化合物の大部分が、望ましくは実質的に全てが樹脂粒子に含有された状態で固定化されるが、一部の発光性化合物が樹脂粒子の表面に結合又は付着した状態で固定化されることが排除されるものではない。
 また、発光性化合物が含有された状態において、どのような化学的又は物理的な作用で発光性化合物が樹脂粒子に固定化されているかは限定されるものではない。本発明では、重合工程に先立って、樹脂原料と発光性化合物とをあらかじめ共有結合させたり、樹脂原料に積極的に荷電した置換基を導入したりするための誘導体化工程を設ける必要はない(そのような工程を用いなくても、発光強度や耐光性に優れた発光性ナノ粒子が得られる)が、所望によりそのような工程を併用することも排除されるものではない。
(界面活性剤)
 界面活性剤としては、公知の乳化重合用乳化剤を用いることができる。界面活性剤には、アニオン系(陰イオン系)、ノニオン系(非イオン系)、カチオン系(陽イオン系)のものがある。正に荷電した置換基又は部位を有する(カチオン系の)熱硬化性樹脂を合成する場合は、アニオン系又はノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。逆に負に荷電した置換基又は部位を有する(アニオン系の)熱硬化性樹脂を合成する場合は、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。
 アニオン系の界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(製品名「ネオペレックス」シリーズ、花王株式会社)が挙げられる。ノニオン系の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系(製品名「エマルゲン」シリーズ、花王株式会社)の化合物、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。カチオン系の界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
 界面活性剤の添加量を調節することにより、樹脂粒子の粒子径を調節することができるとともに、その粒子径の変動係数が小さい、つまり粒子サイズの揃った発光性ナノ粒子を製造することができる。界面活性剤の添加量は、例えば、樹脂原料に対して10~60質量%の割合、あるいは原料混合物全体に対して0.1~3.0質量%である。界面活性剤の添加量を増やすと粒径が小さくなる傾向にあり、逆に界面活性剤の添加量を減らすと粒径が大きくなる傾向にある。
(重合反応促進剤)
 重合反応促進剤は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の重縮合反応を促進するとともに、当該樹脂又は発光性化合物に含まれるアミノ基のような官能基にプロトン(H)を付与して荷電させ、静電的相互作用を起こしやすくする機能を有する。熱硬化性樹脂の反応は加温のみでも進行するが、重合反応促進剤を加えるとより低温で進行するので、反応や性能を制御できる範囲で添加することができる。このような重合反応促進剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸が挙げられる。なお、発光性化合物がカルボキシ基やスルホ基を有する化合物である場合、当該発光性化合物も上記の酸と同様にプロトンを供与することもできる。
[病理診断用発光性標識材]
 本発明の病理診断用発光性標識材は、前述した本発明の発光性ナノ粒子を用いたことを特徴とする。具体的には、本発明の病理診断用発光性標識材は、前述した本発明の発光性ナノ粒子の表面に標的指向性リガンドが共有結合を介して結合している形態が挙げられる。
 本発明の発光性ナノ粒子の用途は特に限定されるものではないが、典型的には、試料(組織切片)に含まれる検出対象物質を標識し、免疫染色において蛍光観察できるようにするための、病理診断用発光性標識材としての用途が挙げられる。すなわち、上述したような本発明の発光性ナノ粒子は、免疫染色の実施形態に応じた標的指向性リガンドを連結させて、複合体(コンジュゲート)として使用することが好適である。
 検出対象物質は特に限定されるものではないが、病理診断においては一般的に、その目的に応じた抗原が選択される。例えば、乳癌に関する病理診断においてはHER2を検出対象物質とすることができる。また、検出対象物質は、生体固有のものでなくても良い。例えば、検出対象物質は、薬剤であっても良い。
<標的指向性リガンド>
 本発明において、「標的指向性リガンド」とは、特定の組織又は細胞(検出対象物質)に対して特異的な結合性を有する分子のことである。本発明の標的指向性リガンドは、抗体、細胞小器官親和性物質、及び糖鎖との結合性を有するタンパク質とからなる群から選択される分子であることが非特異的吸着を抑制する点で好ましい。
 標的指向性リガンドの種類は特に限定されず、目的に応じて最適なものを選択することができる。標的指向性リガンドとしては、具体的には、以下のようなものがある。
 標的指向性リガンドの第一の例として、一次抗体(検出対象物質と特異的に結合する抗体)が挙げられる。標的指向性リガンドが一次抗体である病理診断用発光性標識材は、検出対象物質に直接結合して蛍光標識することができる(一次抗体法)。
 標的指向性リガンドの第二の例として、二次抗体(一次抗体に結合する抗体)が挙げられる。例えば、一次抗体がウサギから産生した抗体(IgG)である場合、二次抗体は抗ウサギIgG抗体となる。検出対象物質に結合している一次抗体に、標的指向性リガンドが二次抗体である病理診断用発光性標識材が結合することにより、検出対象物質を間接的に蛍光標識することができる(二次抗体法)。
 標的指向性リガンドの第三の例として、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンが挙げられる。例えば、標的指向性リガンドがアビジン又はストレプトアビジンである病理診断用発光性標識材を用いる場合は、二次抗体―ビオチン複合体が組み合わされて用いられる。検出対象物質に結合している一次抗体に、二次抗体―ビオチン複合体が結合し、当該複合体にさらに、アビジン又はストレプトアビジンが標的指向性リガンドである病理診断用発光性標識材が結合することにより、検出対象物質を間接的に蛍光標識することができる(ビオチン-アビジン法又はサンドイッチ法)。これとは逆に、標的指向性リガンドがビオチンである病理診断用発光性標識材を、二次抗体―アビジン複合体又は二次抗体―ストレプトアビジンと組み合わせて用いることもできる。
 一次抗体は、選択された検出対象物質に応じて、それと特異的に結合するものを選択すればよい。例えば、検出対象物質がHER2である場合、一次抗体としては抗HER2モノクローナル抗体を用いることができる。このような一次抗体(モノクローナル抗体)は、マウス、ウサギ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、チキン等を免疫動物とする一般的な手法により産生することができる。
 二次抗体は、選択された一次抗体に応じて、それと結合するものを選択すればよい。例えば、一次抗体がウサギ抗HER2モノクローナル抗体である場合、二次抗体としては抗ウサギIgG抗体を用いることができる。このような二次抗体も一般的な手法により産生することができる。
 その他にも、検出対象物質を核酸分子とし、それに対応する標的指向性リガンドとして、当該核酸分子と相補的な塩基配列を有する核酸分子を用いることも可能である。
 病理診断用発光性標識材は、公知のいかなる手法によって作製されたものであってもよい。例えば、アミンとカルボン酸の反応によるアミド化、マレイミドとチオールの反応によるスルフィド化、アルデヒドとアミンの反応によるイミン化、エポキシとアミンの反応によるアミノ化を利用することができる。このような反応に関与する官能基は、発光性ナノ粒子の表面にあらかじめ存在するもの(バインダーの原料モノマーに由来する官能基)であってもよいし、発光性ナノ粒子の表面に存在する官能基を公知の手法に従って変換した官能基や、表面修飾等により導入された官能基であってもよい。必要に応じて適切なリンカー分子を利用してもよい。
 本発明の別の側面において、本発明の発光性ナノ粒子を使用した組織免疫染色用キットが提供される。このキットは少なくとも、本発明の病理診断用発光性標識材又は本発明の発光性ナノ粒子、標的指向性リガンド及び試薬類を含む。このキットはさらに、必要に応じて、一次抗体、二次抗体、前記標的指向性リガンド(例えばストレプトアビジン)と組み合わせて用いられる他の標的指向性リガンド(例えばビオチン)、所望の複合体を形成するための試薬類、その他の免疫組織染色に用いられる試薬類等を含んでいてもよい。
<病理診断用発光性標識材の製造方法>
 本発明の属する技術分野においては、発光性標識体(本発明における発光性ナノ粒子)を標的指向性リガンド等と共有結合を介して結合させて病理診断用発光性標識材を製造するための様々な手法が知られており、本発明においてもそのような手法を利用することができる。
 例えばカルボキシ基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、マレイミド基等の反応性官能基同士の間で起きる反応を利用して、病理診断用発光性標識材(その表面に存在する一方の反応性官能基)と標的指向性リガンド(その分子中に存在するもう一方の反応性官能基)とを共有結合を介して結合させることができる。また、これらが有する官能基同士を直接的に結合することができない場合は、分子の両末端にそれぞれ所定の官能基を有する「リンカー分子」を介して結合させることもできる。このような反応は、必要な試薬類を添加して所定の時間経過させることにより行うことができる。
 具体例としては、表面にヒドロキシ基を有する発光性ナノ粒子にシランカップリング剤(例えばアミノプロピルトリメトキシシラン)を反応させてアミノ基を導入し、一方でストレプトアビジンにチオール基導入試薬(例えばN-スクシミジルSアセチルチオ酢酸)を反応させてチオール基を導入し、最後に、アミノ基とチオール基の両方と反応性を有するマレイミド基を両端に有するPEG(ポリエチレングリコール)系のリンカー分子を反応させて、発光性ナノ粒子とストレプトアビジンとを連結させる方法が挙げられる。
 また、例えばグリシジルメタクリレートを原料モノマーとして用いて樹脂(アクリル系樹脂)を合成した場合、発光性ナノ粒子の表面には当該モノマーに由来するエポキシ基が表れている。この発光性ナノ粒子にアンモニア水を添加することにより、そのエポキシ基をアミノ基に変換し、さらにそのアミノ基に所望の標的指向性リガンド等を連結させることができる。
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
≪発光性化合物≫
<比較例で用いた発光性化合物(励起される色素)>
 比較例において、以下の構造式で示される発光性化合物を、第1の発光性化合物の代わりに用いた。以下、当該発光性化合物を発光性化合物(Cf)という。発光性化合物(Cf)において、極大吸収波長λab1は338nmであり、極大発光波長λem1は345nmである。発光性化合物(Cf)は、発光スペクトルが以下に示す第2の発光性化合物(A-1)の吸収スペクトルと重ならないため、第2の発光性化合物に励起エネルギーが移動しない化合物である。得られるナノ粒子において、第2の発光性化合物由来の発光が観測されないことで、励起エネルギーが移動しないことが確認できる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000122
<実施例で用いた第1の発光性化合物>
 実施例では、第1の発光性化合物として、以下の化合物(C-167)を用いた。化合物(C-167)において、極大吸収波長λab1は570nmであり、極大発光波長λem1は608nmである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000123
<実施例で用いた第2の発光性化合物>
 実施例では、第2の発光性化合物として、以下の化合物を用いた。以下、当該発光性化合物を発光性化合物(A-1)という。発光性化合物(A-1)において、極大吸収波長λab2は655nmであり、極大発光波長λem2は681nmである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000124
≪発光性ナノ粒子の作製≫
[実施例1及び比較例]油溶性色素を用いた発光性ナノ粒子の作製
<発光性ナノ粒子No.(1-13)~(1-19)の作製>
[実施例1-13]油溶性色素を用いた発光性ナノ粒子の作製
 第1の発光性化合物である化合物(C-167)と第2の発光性化合物である発光性化合物(A-1)をそれぞれ25mg/ml及び2.5mg/mlの濃度になるようにジクロロメタン0.168mLに溶解し、エマルゲン430(5質量%水溶液)を0.312mL、DBS-Na(1.62質量%水溶液)を0.381mL加えた。
 氷水で冷却させながら超音波ホモジナイザーUH150で5分超音波を印加した後、300rpmで撹拌させながら真空ポンプでジクロロメタンを除去した。この溶液をホットスターラー上で、82℃で15分間加熱撹拌したのちに、撹拌しながらメラミン樹脂(ニカラックMX-035(日本カーバイド工業社製、固形分50質量%水溶液)0.07mLを加え、2分撹拌した後、1質量%DBS(ドデシルベンゼンスルホン酸)と0.33質量%TsOH(p-トルエンスルホン酸)の混合水溶液を0.1mL加え、さらに90分間加熱撹拌した。加熱撹拌終了後、オートクレーブにて121℃で40分間加熱した。
 得られた分散液を18500Gで10分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、超純水を加えホモジナイザーで再分散させた。遠心分離後の上澄み除去及び超純水への再分散による処理を5回繰り返した。さらに超純水の代わりに有機溶媒を用いて、上澄み液の着色が見えなくなるまで洗浄作業を行い、発光性ナノ粒子No.(1-13)を得た。
[比較例1-1~1-5、実施例1-14~1-19]
 表Iに記載の第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を、所定の濃度になるようにジクロロメタン0.168mLに溶解した後は、実施例1-13と同じ条件に従って発光性ナノ粒子No.(1-1)~(1-5)、(1-14)~(1-19)を得た。
 表Iには、第1の発光性化合物の極大発光波長と第2の発光性化合物の極大吸収波長の差λab2-λem1及び第2の発光性化合物の極大発光波長λem2を示した。
≪発光性ナノ粒子の発光性化合物含有量の算出≫
 上記で作製した発光性ナノ粒子No.(1-1)~(1-19)のそれぞれを0.0189mg/mL濃度になるように超純水中に分散させて調製し、吸光光度計分光光度計(日立ハイテクサイエンス社U-3300)で、室温にてナノ粒子の吸収スペクトルを測定した。各発光性化合物に相当する極大吸収波長と、各発光性化合物のモル吸光係数からナノ粒子中に含まれる発光性化合物の含有量を算出した。
≪発光性ナノ粒子の発光強度評価≫
 発光性ナノ粒子を0.0189mg/mL濃度になるように超純水中に分散させて調製し、その分散液について、発光スペクトルを蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社;F-7000)で、室温にてそれぞれのナノ粒子の第1の発光性化合物の極大吸収波長で励起することにより測定した。ただし、比較例1-2については、第2の発光性化合物の極大吸収波長で励起することにより測定した。
 上記で作製した発光性ナノ粒子のうち、比較例1-1の発光スペクトルにおいては、極大発光波長が第1の発光性化合物に由来する発光ピークに存在しており、第2の発光性化合物に由来する発光ピークは確認されなかった。比較例1-2~1-5及び実施例1-13~1-19の発光スペクトルにおいては、極大発光波長が第2の発光性化合物に由来する発光ピークに存在していた。
 比較例1-2~1-5及び実施例1-13~1-19の発光スペクトルから得られた、極大発光波長と極大発光波長における発光強度の相対値を表Iに記載した。各粒子の発光強度(相対値)は、比較例1-2の発光性ナノ粒子の測定値を1としたものである。
 第1の発光性化合物の含有量が4~90質量%の時に、比較例より相対発光強度が大きくなっており、また含有量30質量%の時に、発光強度が極大値となっていることが分かる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000125
≪病理診断用発光性標識材の作製≫
[実施例2]発光性ナノ粒子No.(1-16)からなる病理診断用発光性標識材
<末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された発光性ナノ粒子の調製>
 発光性化合物含有メラミン粒子である上記発光性ナノ粒子No.(1-16)の0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS-3150」(信越化学工業株式会社製)2μLを加えて8時間、撹拌しながら室温で反応させて表面アミノ化処理を行った。
 表面がアミノ化された発光性ナノ粒子の濃度を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液にリンカー試薬「SM(PEG)12」(サーモサイエンティフィック社製、cat.No.22112)を最終濃度10mMとなるよう添加、混合して、撹拌しながら室温で1時間反応させた。
 反応液を10,000Gで20分間の遠心分離にかけ、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された発光性ナノ粒子を得た。
<チオール基を導入したストレプトアビジンの調製>
 まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業株式会社製)の水溶液40μLに、64mg/mLに調整したN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA、pirce社製)の水溶液70μLを加え、室温で1時間より反応させることにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたチオール基(-NH-CO-CH-S-CO-CH)を導入した。
 続いて、ヒドロキシルアミン処理により、保護されたチオール基から遊離のチオール基(-SH)を生成させて、ストレプトアビジンにチオール基(-SH)を導入する処理を完了させた。この溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に通して脱塩し、チオール基を導入したストレプトアビジンを得た。
<ストレプトアビジン修飾発光性ナノ粒子の調製>
 調製した末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された発光性ナノ粒子と、調製したチオール基を導入したストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有するPBS中で混合し、1時間反応させることで、発光性ナノ粒子にPEG鎖を介してストレプトアビジンを結合させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去し、病理診断用発光性標識材(ストレプトアビジン修飾発光性ナノ粒子)を得た。
[比較例2]発光性ナノ粒子No.(1-2)からなる病理診断用発光性標識材
 実施例2と同様の実験操作により、病理診断用発光性標識材(ストレプトアビジン修飾発光性ナノ粒子)を得た。
≪実施例3:病理診断用発光性標識材の評価≫
<組織染色工程>
[免疫組織染色]
 実施例2及び比較例2で作製した発光性ナノ粒子からなる病理診断用発光性標識材を含む組織染色用染色剤を用いて、ヒト乳房組織の免疫染色を行った。ここで組織染色用染色剤は、1%BSA含有PBS緩衝液を用いて作製した。染色切片は組織アレイスライド(コスモ・バイオ社製、品番CB-A712)を用いた。
 染色切片はあらかじめパスビジョンHER2 DNAプローブキット(アボット社製)を用いて、各スポット当りのFISHスコアを算出した。このFISHスコアは、アボットジャパン社製HER2遺伝子キット パスビジョン(登録商標);HER2 DNAプローブキットに添付されている文書に記載の手順に従って算出した。
 組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに稀釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を組織切片と2時間反応させた。PBSで洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で稀釈したビオチン標識抗ウサギ抗体と、30分間反応させた。さらに、上記組織染色用染色剤を用いて、すなわち上記製造した病理診断用発光性標識材(ストレプトアビジンを有する発光性ナノ粒子)と2時間反応させ、その後洗浄を行うことにより、免疫組織化学染色切片が得られた。得られた免疫組織化学染色切片を4%中性パラホルムアルデヒド水系緩衝液に10分間浸漬することにより、固定処理を行った。
[形態染色]
 上記で固定処理した免疫組織化学染色切片に対してHE染色を行い、染色後の切片をエタノールに浸漬することにより脱水し、脱水切片をさらにキシレンに浸漬し風乾させることにより透徹を行ったところ、二重染色切片が得られた。
[封入]
 上記形態染色を行なったものについて、キシレン系封入剤であるエンテランニュー(メルク社製)を滴下し、カバーガラスを被せ封入した。
<組織サンプルの評価>
 形態観察用染色像を用いた画像処理により、細胞の形状(細胞膜の位置)を特定し、免疫染色像と重ねあわせて、細胞膜上に発現しているHER2タンパク質を標識した病理診断用発光性標識材(発光性ナノ粒子からなるストレプトアビジン修飾発光性ナノ粒子)に励起光照射により顕微鏡観察を行った。実施例2で作製したナノ粒子では輝点を確認することができた一方、ストークスシフトが50nm未満の比較例2で作製したナノ粒子では細胞の自家蛍光の影響により輝点を確認することが困難であった。この結果により、本発明の発光性ナノ粒子が病理診断用発光性標識材として使用できることが判明した。
 本発明によれば、バイオイメージングに対して高輝度の粒子技術を実現し、高感度イメージングを可能にする発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材を提供することができる。

Claims (8)

  1.  第1の発光性化合物と第2の発光性化合物を含有する発光性ナノ粒子であって、
     前記第1の発光性化合物が、光照射により励起され、前記励起によるエネルギーを、前記第2の発光性化合物に移動させる機能を有し、
     前記第2の発光性化合物が、前記励起によるエネルギーを受け取り発光する機能を有し、かつ
     前記発光性ナノ粒子の全量に対する前記第1の発光性化合物の含有量が、4~90質量%の範囲内である発光性ナノ粒子。
  2.  前記第1の発光性化合物が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される構造を有する請求項1に記載の発光性ナノ粒子。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
     式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。ベンゼン環又はナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環又はナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
     式(2)中、Rは、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、下記一般式(F1)で表される構造を有する基を表す。ナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ナフタレン環に有してもよい置換基の位置を表す。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
     式(F1)中、Arは、アリール環又はヘテロアリール環を表す。Rは置換基を表す。一般式(F1)で表される基を二つ以上有する場合は、二つのR同士が互いに連結していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子又は-NR′-を表す。R′は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
     式(3)中、Rは、発光性化合物骨格を表す。Xは、それぞれ独立してイオン性置換基を表す。L1は、単結合、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNH基を表す。nは1以上の整数を示す。
  3.  前記第1の発光性化合物が、下記一般式(1c)、一般式(1d)又は一般式(1e)で表される構造を有する化合物を含む請求項1に記載の発光性ナノ粒子。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
     式(1c)~式(1e)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が3~30の一価有機基を表す。式(1e)中、R21は、それぞれ独立して、水素原子又はイオン性置換基を表し、少なくとも一つはイオン性置換基を表す。
  4.  前記第2の発光性化合物と前記第1の発光性化合物のモル比が、1:2~1:200の範囲内にある請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
  5.  前記第2の発光性化合物が、キサンテン色素である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
  6.  さらに、バインダーを含有する請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
  7.  前記発光性ナノ粒子の表面が、親水性基を有する請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子。
  8.  請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の発光性ナノ粒子を用いた病理診断用発光性標識材。
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PCT/JP2022/012359 WO2023032306A1 (ja) 2021-08-30 2022-03-17 発光性ナノ粒子及び病理診断用発光性標識材

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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011232072A (ja) * 2010-04-26 2011-11-17 Konica Minolta Medical & Graphic Inc 有機蛍光色素内包シリカナノ粒子、その製造方法、それを用いた生体物質標識剤
JP2016534190A (ja) * 2013-08-23 2016-11-04 フルロソル インダストリーズ ピーティーワイ リミテッド 光捕集アレイ
JP2017527849A (ja) * 2014-08-21 2017-09-21 フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ 共鳴エネルギ移動を示す高効率の分子

Patent Citations (3)

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