WO2023026953A1 - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】基材フィルムの片面に被覆層および無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記積層フィルムが下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。 (a) 前記基材フィルムがペットボトルからケミカルリサイクルされたポリエステル樹脂を含有すること。 (b) 前記積層フィルムの無機薄膜層面における表面硬度が120N/mm2以下であること。 (c) 前記積層フィルムの無機薄膜層面/反対側面の静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μdがいずれも0.20~0.40の範囲であること。 (d)前記積層フィルムの2μm四方における算術平均粗さRaが2.0~6.0nmの範囲であること。

Description

積層フィルム
 本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる積層フィルムに関する。更に詳しくは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた基材フィルム層の上に、無機薄膜層及び保護層をこの順に有してなる積層フィルムであって、バリア性、接着性および加工性に優れる積層フィルムに関する。
 近年、欧州はじめ世界各国において、使い捨てプラスチック使用削減に向けた規制が強化されている。その背景には、資源循環への国際的な意識の高まりや新興国におけるごみ問題の深刻化がある。そのため、食品、医薬品等に求められるプラスチック製包装材料についても、3R(recycle, reuse, reduce)の観点から環境対応型の製品が求められている。
 前述の環境に優しい包装材料に求められる性能として、リサイクル材料から成ること、各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、環境負荷が少ない材料(例えば有機溶剤を使用しないことや材料の使用量自体が少ないこと)を用いること 等が挙げられる。
 代表的なリサイクル材料として、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂が知られており、オリゴマー含有量の少ないペットボトル由来のポリエステル樹脂から、生産性、品位を損なうことなく静電気によるトラブルが少ない胴巻ラベル用ポリエステルフィルムにするという技術が知られている(例えば特許文献1参照)。今後の環境規制の高まりにより、こういったフィルム用途としての需要拡大が見込まれている。
 一方、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする食品用途においては、プラスチックからなる基材フィルムの表面に、アルミニウム等からなる金属薄膜、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物からなる無機薄膜を形成したガスバリア性積層体が、一般的に用いられている。中でも、酸化ケイ素や酸化アルミニウム、これらの混合物等の無機酸化物の薄膜(無機薄膜層)を形成したものは、アルミ箔を用いる必要がないこと、さらに透明であり内容物の確認が可能であることから、広く使用されている。
 前述のリサイクル材料と無機薄膜から成るガスバリアフィルムについて、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用い、低熱収縮性、厚みムラが小さいことにより無機薄膜層およびシーラント層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際、良好なガスバリア性を発現する積層フィルムが提案されている(例えば特許文献2)。しかし、かかる従来技術ではより高いバリア性能が必要とされる用途には不十分であった。また、耐レトルト性能や、フィルムの加工適性については議論されていなかった。さらに、無機薄膜層は屈曲等の物理的ダメージにより膜が割れてバリア性が低下しやすい問題もあった。
 レトルト処理後もバリア性や接着性を維持する手段として、基材フィルムと例えば蒸着法により形成した無機薄膜層との間に、オキサゾリン基含有水溶性ポリマーからなる被覆層を設けることが報告されている(例えば特許文献3参照)。基材フィルムと無機薄膜の間に被覆層を設けることは、基材の製膜中に連続して行うことも可能であり、無機薄膜上に保護層を形成するよりも大きなコストダウンが見込める。しかし、上記構成の場合、被覆層自体にガスバリア性は無く、ガスバリア性に対する寄与は無機薄膜層のみによるところが大きいため、ガスバリア性が充分でない問題があった。また、上記従来技術は基材について、環境負荷の少ないものを意識して使用しておらず、環境への負荷は大きい懸念があった。
 無機薄膜から成るフィルムのバリア性を向上させる手段として、無機薄膜の上にさらにガスバリア性を有する保護層を設ける試みがなされている。例えば、無機薄膜上に水溶性高分子と無機層状化合物および金属アルコキシドあるいはその加水分解物をコートして、ゾルゲル法により無機薄膜上に無機層状化合物を含有する無機物と水溶性高分子との複合体を形成させる方法や、無機薄膜上にメタキシリレン基含有ポリウレタンをコートした積層体(たとえば特許文献4参照)が挙げられる。ただ、保護層を設けることは加工工程が増えることになり、コストアップや環境負荷の面で懸念があった。また、保護層によりバリア性能を向上させるには一定以上の膜厚や特殊なコート材を使用しなければならず、こちらもコストアップや環境負荷の一因となっている問題もあった。さらに、上記従来技術は基材について、環境負荷の少ないものを意識して使用しておらず、環境への負荷は大きい懸念があった。
特開2012-91862号公報 特許第6500629号公報 特許第5560708号公報 特許第4524463号公報
 上記特許文献2では、無機薄膜層のガスバリア性に改良すべき余地があり、レトルト性や加工適性についても検討されていなかった。上記特許文献3では、無機薄膜層のガスバリア性能に改良すべき余地があり、環境に対する負荷を考慮したものではなかった。上記特許文献4では、環境に対する負荷を考慮したものではなかった。
 本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。
 すなわち、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた基材フィルム層の上に、被覆層、無機薄膜層を有してなる環境対応型の積層フィルムであって、バリア性能に優れ、さらにレトルト殺菌のような過酷な湿熱処理後もバリア性および接着性を維持することができ、加工性に優れた積層フィルムを提供することである。
 本発明者らは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた環境対応型基材フィルムの表面硬度を制御することで無機薄膜層のバリア性を向上できることを見出し、さらに基材と無機薄膜層の間に被覆層を設けることでレトルト処理のような過酷な湿熱処理後もそのバリア性および接着性を維持できることを見出し、本発明を完成した。
 すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1)基材フィルムの片面に被覆層および無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記積層フィルムが下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
(a) 前記基材フィルムがペットボトルからケミカルリサイクルされたポリエステル樹脂を含有すること。
(b) 前記積層フィルムの無機薄膜層面における表面硬度が120N/mm以下であること。
(c) 前記積層フィルムの無機薄膜層面/反対側面の静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μdがいずれも0.20~0.40の範囲であること。
 (d)前記積層フィルムの2μm四方における算術平均粗さRaが2.0~6.0nmの範囲であること。
 (2) 前記被覆層はオキサゾリン基またはカルボジイミド基を有する樹脂を構成成分として含有する(1)に記載の積層フィルム。
 (3) 前記基材フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全カルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が5.0モル%以下である(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)前記無機薄膜層が、酸化アルミニウムまたは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物の層である(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5)前記無機薄膜層上にウレタン樹脂を含有する保護層を有する(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルムの片面にシーラント層を積層してなる包装材料。
 本願発明によれば、リサイクル材料を用いながら、無機薄膜層のガスバリア性に優れ、レトルト殺菌のような過酷な湿熱処理後もバリア性および接着性に優れる積層フィルムを提供することが可能となった。しかも、本発明の積層フィルムは加工工程が少なくかつ加工性に優れ容易に製造できるので、経済性と生産安定性の両方に優れており、均質な特性のガスバリア性フィルムを提供することができる。
 以下、本発明について詳細に説明する。
[基材フィルム]
本発明における基材フィルムには、二軸配向ポリエステルフィルムは下記のペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂を用いることで、フィルム中のリサイクル原料比率を上げることができ、環境配慮されたフィルムを得ることが可能となる。
 本発明おけるペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂としては、市場や社会から回収された使用済みペットボトルを選別、粉砕、洗浄して表面の汚れ、異物を十分に取り除いた後に高温下に曝して、樹脂内部に留まっている汚染物質等を高度に洗浄した後に再度ペレット化する物理的再生法により得られたポリエステル樹脂(以下、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂と称する場合がある)及び、使用済みの包装容器に含まれるポリエステル樹脂をモノマーレベルまで分解した後に汚染物質等の除去を行い、再度重合を行うことにより得られるポリエステル樹脂(以下、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂と称する場合がある)のいずれも好適に用いることができるが、衛生性の観点ではケミカルリサイクルポリエステル樹脂の方がより好適といえる。本発明の基材フィルムは、少なくともケミカルリサイクルポリエステル樹脂を必須成分として含有するものである。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに使用されるペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主体とする容器のリサイクル品を主体とするものであり、例えば、茶飲料、清涼飲料などの飲料用容器のリサイクル品が好ましく使用でき、適宜配向されていても良く、無色のものが好ましいが、若干の着色成分を含んでいても良い。
 好ましく利用できるペットボトルを含む、市場や社会からリサイクルされた再生原料は、通常の重合法及び固相重合法で製造、成型されたポリエステルであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするものであり、他のポリエステル成分、共重合成分を含んでいても差し支えない。触媒としてアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの金属化合物、安定剤としてのリン化合物などを含んでいてもよい。通常ペットボトル用のポリエステルには触媒としてゲルマニウムが用いられることが多く、ペットボトル再生原料を使用してフィルム化すれば、フィルム中にゲルマニウムが1ppm以上含まれるものとなる。しかしながら、あくまでも触媒の含有量であるので、通常高々100ppm以下であり、普通は50ppm以下である。
 以下、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂とケミカルリサイクルポリエステル樹脂について説明する。
[メカニカルリサイクルポリエステル樹脂]
 集められた使用済のリサイクルペットボトルは、他の材料やごみが混ざらないように選別され、ラベルなどを除去した後、粉砕されフレークとなる。これらのフレークには、異物が付着、混入している場合が多くある。また、薬品や溶剤などの化学物質を消費者が使用済みのPETボトルに充填して使用している場合も考えられる。例えば、食器などの洗剤、殺虫剤、除草剤、農薬や各種オイル類などが考えられる。通常の洗浄ではPETボトル表面に吸着した化学物質を十分に取り除くことができないため、アルカリ洗浄を行うことが好ましい。この洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の溶液としては水酸化ナトリウム溶液、または水酸化カリウム溶液を用いる。このような洗浄工程では、アルカリ洗浄の前に予備洗浄を行っても良い。
 アルカリ洗浄を行わないと、原料の樹脂中に異物として残存してしまうため、これらが混入して製膜時の破断のきっかけとなり生産性を低下させてしまうばかりか、フィルム中に異物として残り、フィルムの外観や、後に行われる印刷工程での印刷抜けの原因となりうる。
 上記洗浄工程で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度は、温度、時間、攪拌の状態にもよるが、通常は1~10重量%の範囲である。また、洗浄に要する時間は10~100分の範囲であり、効果を高めるため攪拌しながら行うのが好ましい。
 アルカリ洗浄に続いて、すすぎ洗浄、乾燥を行うことが好ましい。アルカリ洗浄やすすぎ洗浄は数回繰り返して行っても良い。アルカリ洗浄工程において洗浄で用いるアルカリ金属水酸化物の水溶液成分がフレークに残存することにより、その後のペレット造粒工程における溶融押出工程やフィルム製膜時における溶融押出工程を経由することにより、最終的に得られるフィルムの物性に影響を与えることがある。
 最終的にこれらのペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂を使用して得られるフィルム中のナトリウム及びカリウムの濃度が0ppmより大きく150ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3~120ppmであり、更に好ましくは5~80ppmである。フィルム中に含まれるナトリウムまたはカリウム濃度が150ppmより高くなるとフィルムの耐熱性、熱安定性が低下したり、着色したりするので好ましくない。また、全くない状態であるとジエチレングリコールの生成を抑えるなどの効果が薄れるため好ましくない。また、ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂には若干量はこれらの成分が含有されている場合があり全くなしとするのは困難である。
 このような洗浄工程では、アルカリ金属水酸化物の水溶液により、ペットボトルフレークの一部が加水分解される。また、ペットボトルを成形する際の加熱により樹脂の重合度が低下する。さらに、回収したペットボトルを再利用するため粉砕した後、再度溶融してペレット化する際に加わる熱や水分の影響により重合度が低下する。そのままでも再利用できるが、使用する用途によっては重合度が低下した場合、成形性や強度、透明性や耐熱性などが劣り、そのままでは再利用することができないことがある。
 そのような場合、低下した重合度を回復させるため、粉砕して洗浄されたPETボトルのフレークもしくはフレークを溶融し、ペレット化したものを固相重合することが好ましい。
 固相重合工程では、洗浄したフレーク、もしくはフレークを溶融押出してペレット化したものを180~245℃、好ましくは200~240℃の窒素ガス、希ガスなどの不活性気体中で連続固相重合することにより行うことができる。
 最終的にペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂として、極限粘度が0.55~0.90dl/g、好ましくは0.60~0.85dl/gとなる条件で、フレーク、またはペレットの条件を調整して行うのが望ましい。
 フレークをペレット化する工程について説明する。フレークを脱気手段および濾過手段を有する押出機を用いて溶融、押出、冷却、造粒する。
 押出機における溶融工程では通常260~300℃、好ましくは265~295℃で溶融混練することにより行うことができる。投入するペットボトルを粉砕したフレークは十分に乾燥しておく必要があり、5~200、好ましくは10~100ppm、更には15~50ppmとなる条件で乾燥を行うことが好ましい。フレークに含まれる水分が多い場合、溶融工程で加水分解反応が進み、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が低下する。脱気手段として、樹脂の溶融帯域に少なくとも1箇所の真空ベントを有しているものが好ましい。
 また、該押出機は、濾過手段として溶融樹脂の粒径25μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは10μm以上の固形異物を濾過して除去できるフィルターを有しているのが好ましい。
 フィルターを通過した溶融樹脂はダイスを経由し、水中で冷却された後、所望の形状のペレットに切断され造粒される。
[ケミカルリサイクルポリエステル樹脂]
 本発明で用いられるケミカルリサイクルポリエステル樹脂の製造方法としては特に限定されないが、具体的には例えば、特開2000-169623号に記載の如く、回収された使用済みペットボトルを選別、粉砕、洗浄して異物を取り除いた後に、解重合を行うことによりPET樹脂の原料または中間原料まで分解、精製したものを重合して新たなPET樹脂とするものある。解重合にはエチレングリコール(EG)を加えて触媒の存在下で、樹脂製造時の中間原料であるビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)にまで戻し、これを精製した後、PETに再重合する方法や、特開2000-302707号公報に記載の如くポリエチレンテレフタレートを酸化した鉄を必須成分とする触媒の存在下に非水系有機溶媒中で加熱処理してテレフタル酸とエチレングリコールを生成した後、再度重合する方法が挙げられる。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の特徴は解重合/再重合の間に異物、異種材質が取り除かれ、バージン樹脂と同等に品質の高いポリエステル樹脂に再生できるため、前述したメカニカルリサイクルポリエステル樹脂と比べ、衛生性に優れているため、食品包装用途として特に好ましく用いることができる。
本発明で用いるケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、使用済みペットボトルを減容圧縮したベールを出発原料としている。このペットボトルベールは、現在市町村が採用している公知の方法によって製造される。ペットボトルベールの替わりに他のポリエチレンテレフタレート廃棄物やペットボトルのフレークを出発原料として用いることができる
 ペットボトル廃棄物を減容圧縮したペットボトルベールを粉砕機に投入し、温水もしくは常温水又は洗剤を含有する温水もしくは常温水を注入して水中粉砕する。
次に、粉砕機から排出されるペットボトルのフレークと洗浄水の混合物は直ちに比重分離処理を行って、金属、石、ガラス、砂とフレークとを分離する。次いで、フレークと洗浄水とを分離し、フレークはイオン交換水で濯ぎ、遠心脱水する。
 上記前処理工程で得られた粗製ポリエチレンテレフタレートフレークを解重合、溶融すると同時に加水分解させて重合度の低いポリエチレンテレフタレート溶融物とし、過剰のエチレングリコールによって解重合し粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液を得る。
 解重合反応終了後の粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液を降温し、濾過して高融点沈殿物としての未反応の線状及び環状オリゴマー、ポリエチレンテレフタレート以外の残存異プラスチッの凝固物、金属等の固形異物を除去し、次いで吸着・イオン 交換処理を施して、着色物と溶存イオンを除去することにより、粗製BHET中に含まれる異物を取り除く。
 前記前精製工程を経て得られた粗製BHETと粗製エチレングリコールの二種混合溶液に蒸留・蒸発操作を施してエチレングリコールを分離・留出させて濃縮BHETを得る、もしくは二種混合溶液を10℃以下まで冷却してBHETを晶析させた後エチレングリコールとBHETを固液分離することにより濃縮BHETを得て、この濃縮BHETを190℃を越え250℃以下の温度で且つ蒸発器内での濃縮BHETの滞留時間が10分以下となるように真空蒸発させて精製ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレートを得る。
 上記のようにして高純度の精製BHETを得たのち、この精製BHETを溶融重縮合反応器に仕込んで高純度ポリエチレンテレフタレートポリマーを得る。
[ポリエステル樹脂組成物]
 本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは下記のポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステル樹脂組成物からなる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが挙げられ、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
 ここでの主成分とはポリエステル樹脂組成物中の含有率が80重量%以上であることを意味し、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上がより好ましく、98重量%以上が最も好ましい。
 また、これらのポリエステル樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4-ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましく、3モル%以下が最も好ましい。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のうち、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂以外の化石燃料由来のポリエステル樹脂の製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法等が挙げられる。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の極限粘度としては、製膜性や再回収性などの点から0.50~0.90dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.55~0.80dl/gの範囲である。
 本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には、無機粒子、有機粒子、及びこれらの混合物からなる粒子からなる群から選択される少なくとも1種の粒子を含有することが好ましい。
 使用する無機粒子としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、アルミナ、シリカ-アルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウムからなる粒子が挙げられる。 有機粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレンからなる粒子を挙げることができる。中でもシリカ(酸化珪素)、炭酸カルシウム、又はアルミナ(酸化アルミニウム)からなる粒子、若しくはポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、又はその誘導体からなる粒子が好ましく、シリカ(酸化珪素)、又は炭酸カルシウムからなる粒子がより好ましく、中でもシリカ(酸化珪素)がヘイズを低減する点で特に好ましい。
 本発明における粒子の重量平均粒径は、コールカウンターにて測定した値である。粒子の重量平均粒径は0.5~4.0μmが好ましく、より好ましくは0.8~3.8μmであり、さらに好ましくは1.5~3.0μmである。粒子の重量平均粒径が0.5μm未満では、表面の凹凸形成が不十分であり、フィルムの滑り性の低下やロールに巻取る際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡上のニキビといった外観不良が生じやすくなり、巻取り性が悪化し易い。粒子の重量平均粒径が4.0μmを超える場合は、粗大突起の形成により印刷不良などのフィルムの品質を損ないやすい。
 また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物中には本発明の目的を損なわない範囲において、少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料またはその他の添加剤等が含有されていてもよい。
 ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の極限粘度の上限は好ましくは0.90dl/gであり、より好ましくは0.80dl/gでり、さらに好ましくは0.75dl/gであり、特に好ましくは0.69dl/gである。0.90dl/gを超えると押出機からの樹脂が吐出しにくくなって生産性が低下することがあり、あまり好ましくない。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、フィルムを構成するポリエステル樹脂全量に対するペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは70重量%であり、さらに好ましくは90質量%であり、特に好ましくは100重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。また、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂においては後述のようにイソフタル酸成分が含まれており、柔軟性を発現させる。ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂由来のイソフタル酸成分量が減ることで、無機薄膜層積層にとって優位な柔軟性を発現できない可能性がある。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂を用いることもできる。
 本発明では、フィルムに使用されているポリエステル樹脂中にイソフタル酸を含有することによりポリエステルの結晶構造が崩れ基材フィルムの柔軟性に寄与することを見出し、イソフタル酸量の制御を行うことで無機薄膜を積層しやすい表面とすることができる。イソフタル酸量を調整手段として、フィルム中のメカニカルリサイクルポリエステル樹脂の使用量を変更することが挙げられる。通常、ペットボトルに使用されるポリエステルはボトル外観を良好にするため、結晶性の制御が行われており、その結果、10モル%以下のイソフタル酸成分を含むポリエステルが用いられている。そのため、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂にもイソフタル酸成分が含まれている。
 本発明では、基材フィルムに含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量を制御することがバリア性能発現のための柔軟性付与に重要である。その下限は好ましくは0.5モル%であり、より好ましくは0.7モル%であり、さらに好ましくは0.9モル%であり、特に好ましくは1.0モル%である。前記イソフタル酸含有量が0.5モル%未満であると、表面の柔軟性が低下し無機薄膜層を積層する際に無機薄膜層が応力負荷を受けやすく、バリア性能が悪化する恐れがある。イソフタル酸成分の量の上限は好ましくは5.0モル%であり、より好ましくは4.0モル%であり、さらに好ましくは3.5モル%であり、特に好ましくは3.0モル%である。5.0モル%を超えると結晶性が低下するため、熱収縮率が高くなることがあり、あまり好ましくない。また、基材が柔らかくなりすぎることによってその変化に無機薄膜が追随できずバリア性能が悪化する恐れがある。イソフタル酸成分の含有率を上記範囲とすることで、基材本来の特性を維持しつつ基材表面柔軟効果により無機薄膜層が堆積しやすい表面となり、結果として良好なバリア性を発現できる。
 本発明では、衛生性に優れるケミカルリサイクルポリエステル樹脂と、柔軟性に優れるメカニカルリサイクル樹脂を併用するのが好ましい。フィルムを構成するリサイクルポリエステル樹脂全量に対するケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは5重量%であり、より好ましくは10重量%であり、さらに好ましくは15質量%である。特に好ましくは20重量%である。ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有率が5重量%未満であると、フィルムの衛生性に関する観点であまり好ましくない。一方、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは80重量%であり、より好ましくは75重量%であり、さらに好ましくは70質量%である。特に好ましくは65重量%である。ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有率が80重量%より大きいと、相対的にメカニカルリサイクル樹脂の含有率が小さくなり、前述のイソフタル酸成分量が少なくなるおそれがある。その結果、フィルム表面の柔軟性が低下しバリア性能が悪化するおそれがある。
[二軸配向ポリエステルフィルム及びフィルムロールの製造方法]
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば上記のペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂チップと、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂組成物のチップとをホッパーに備えた押出機に供給及び混合し、押出機により溶融押し出しして未延伸シートを形成し、その未延伸PETシートを延伸することによって得ることができる。
 下記に好適な例を述べるが、これらに制限されものではない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層、2層、3層、あるいは4層以上の積層構造であってもよい。2層構造以上の場合においては、各層は上述のようにポリエステル系樹脂、及び無機粒子、さらにはポリエステル系樹脂以外の樹脂を構成成分とするが、互いに隣接する各層のいずれかの構成成分の種類又は含有量は異なるものとする。
 単層構造の場合には、本発明における表面層(A)は二軸配向ポリエステルフィルム全体となる。
2層構造の場合には、本発明における表面層(A)はいずれか一方あるいは両方の層となる。3層構造の場合には、本発明における表面層(A)はいずれか一方あるいは両側の層となる。
 3層構造の場合、フィルムを構成する組成をA、A´、B、Cと表せば、例えばA/B/C、A/B/A、あるいはA/B/A´の構成を取ることができるが、特に両面の表面特性を変える必要のない場合は、両側の層を同じ組成に設計としたA/B/Aの構成とする方が、製造が容易であり好ましい。ここで、A、A´は組成が同一でないものである。
 特に、3層構造の場合は、基層(B)に無機粒子がなくても、表面層(A)のみの添加粒子量を制御することでフィルムの表面粗さを制御することができ、フィルム中に無機粒子の含有量をより少なくすることができ、好ましい。これは、無機粒子とポリエステル樹脂との境界に出来るボイド(空隙)を介して、におい成分が抜け、保香性が低下する点を改善することにもつながるためである。
 さらに基層(B)にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となり、コスト的にも優位である。
 前述のように2層構造以上のフィルム構成とする場合、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂をそれぞれ別の層として積層させることもできる。例えば、A/B/Aの3層構成の場合、最外層であるA層にケミカルリサイクルポリエステル樹脂を配し、中心層であるB層にメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を配することで、不純物の少ないケミカルリサイクルポリエステル樹脂が表層に存在することによりフィルム中の欠点を低減させることが可能である。一方、上記とは逆に最外層であるA層にメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を配し、中心層であるB層にケミカルリサイクルポリエステル樹脂を配することで、表層側にイソフタル酸含有量の多いメカニカルリサイクルポリエステル樹脂が存在することにより、基材表面柔軟効果で無機薄膜層が堆積しやすい表面となり、良好なバリア性を発現できる。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面層(A)における粒子の含有量の下限は500重量ppmであり、より好ましくは600重量ppmであり、特に好ましくは700質量ppmである。粒子の含有量が500重量ppm未満であるとフィルム表面の滑り性や巻取り性が低下することがあり、あまり好ましくない。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルム全層中の無機粒子の含有量は100ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは800ppm以下である。無機粒子の含有量が100ppm未満である滑り性が低下してフィルムの製造工程中のロール走行時や巻取り、巻返し、スリット等で支障を及ぼし、フィルム表面にすり傷が入ったり、巻きシワの発生や静電気が発生する原因となりやすい。無機粒子の含有量が1000ppmを超える場合、フィルム表面の算術平均高さSaや最大突起高さSpが高くなる傾向にあり注意が必要である。また、フィルム中のボイドが多くなり、透明性が低下する原因となりやすい。
 ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しする際には、ホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を乾燥させた後に、押出機を利用して、ポリエステル樹脂の融点以上となり、かつ200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。あるいは、ポリエステル樹脂、粒子及び必要に応じて添加物を別々の押出機で送り出し、合流させた後に混合溶融しシート状に押し出してもよい。
 溶融樹脂組成物の押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
 そして、押し出し後のシート状の溶融ポリエステル樹脂を急冷することによって、その未延伸シートを得ることができる。なお、溶融ポリエステル樹脂を急冷する方法としては、溶融ポリエステル樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。回転ドラムの温度は40℃以下に設定するのが好ましい。
 さらに、得られた未延伸シートを、以下のような長手方向および幅方向の二軸延伸工程、熱固定工程、熱弛緩工程等の工程を組み合わせることで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
 以下に詳細に説明する。長手方向とは、未延伸シートを走行させる方向を、幅方向とはそれと直角方向を意味する。
 延伸方法は長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸でも、長手方向と幅方向の延伸をどちらか一方を先に行う逐次二軸延伸でも可能であるが、製膜速度が速く生産性が高いという点と最終的に得られる二軸配向ポリエステルフィルムの厚み均一性が優れるという点から逐次二軸延伸が最も好ましい。
 ここでいう製膜速度とは、延伸工程を経てマスターロールに巻き取られる際の二軸配向ポリエステルフィルムの走行速度(m/分)を意味する。
 未延伸シートの長手方向への延伸時温度としては、80~130℃の範囲、延伸倍率としては3.3~4.7倍の範囲とすることが好ましい。
 延伸時温度が80℃以上であり、延伸倍率が4.7倍以下である場合、長手方向の収縮応力が低減し、ボーイング現象が減少され、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みが少なくなり好ましい。
 また、未延伸シートを長手方向に延伸する場合、生産設備の規模や製造コスト、ロールによる粘着傷や転写傷といった傷欠点の面から複数のロール間で多段階に延伸する方法ではなく、赤外線ヒーターなどにより加熱して延伸する方法では、高温が得やすく局部加熱も容易であり、ロールによる傷欠点を低減させることができるという点から好ましい。
 未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を付与するためにフィルムの少なくとも一方の面に樹脂分散液又は樹脂溶解液を塗布することもできる。
 未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸する場合、テンター装置に導き、未延伸シートを長手方向に延伸したフィルムの両端をクリップで把持して、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることでフィルムを幅方向に延伸することができる。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、フィルムを構成するポリエステル樹脂全量に対するペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の昇温結晶化温度は、通常、130℃程度であることから130℃よりも高い延伸温度では延伸時に破断し易くなる。また、延伸時の破断を抑えるため、延伸温度を低くすればクリップで把持されている端部と比較的拘束力が小さい中央部では、幅方向の延伸によって生じる長手方向の延伸応力に差が生じ易く、フィルムの幅方向で物性の不均一性が生じるボーイング現象が起こり、フィルム幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みが発生し易くなる。
 このような延伸時の破断およびボーイング現象により生じるフィルムの幅方向で物性の不均一性を改善するために、本発明では二軸延伸工程において、長手方向に延伸された後、テンター内で幅方向に延伸し、熱固定処理領域の前に冷却領域を設けることが好ましい。熱固定処理領域の前の冷却領域とは、テンター内で幅方向に延伸した後に、例えば、熱固定処理領域の前のテンター内部にアルミ板などの遮蔽版で加熱領域の熱風を遮断する方法や、遮断した上で更に圧縮空気などを積極的に送り込む方法などにより、幅方向に延伸したフィルムの温度を下げる冷却工程のことを表す。
 冷却領域におけるフィルムの温度としては、フィルムのガラス転移温度(Tg)以下とすることが好ましい。テンター内で幅方向に延伸する際、クリップで把持されている端部に比べて中央部は、比較的拘束力が小さいため幅方向の延伸によって生じる長手方向の延伸応力や熱固定処理によって発生する長手方向の収縮応力による変形が大きくなり、ボーイング現象が増加し易くなるが、フィルムの温度をガラス転移温度以下に冷却することでフィルムの剛性が高くなり、フィルムの変形が抑制され、ボーイング現象により生じるフィルムの幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みが少なくなり好ましい。
 冷却領域における温度としては、60℃以上とすることが好ましい。フィルムの温度を55℃以上に冷却することでフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率を抑えることができ好ましい。
 幅方向の延伸時予熱温度としては、100℃~130℃の範囲とすることが好ましい。延伸時予熱温度が100℃以上である場合、長手方向に延伸した際に生じた収縮応力が低減し、ボーイング現象が減少され、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みが少なくなり好ましい。
 幅方向の延伸時温度としては、105℃~135℃の範囲とすることが好ましい。延伸時温度が105℃以上である場合、幅方向の延伸によって生じる長手方向の延伸応力が低減し、ボーイング現象が増加しにくく、好ましい。また延伸時温度が135℃以下であると、昇温結晶化温度が130℃程度であるペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂を用いた場合でも延伸時に破断が生じにくくなり、好ましい。
 幅方向の延伸倍率としては、3.5~5.0倍の範囲とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率を3.5倍以上である場合、物質収支的に高い収率が得られやすい上に、力学強度が低下しないほか、幅方向の厚み斑が大きくなりにくく好ましい。また幅方向延伸倍率を5.0倍以下である場合、延伸製膜時に破断しにくくなり好ましい。
 長手方向および幅方向の二軸延伸工程に続いて熱固定処理工程を行うが、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸したフィルムの熱固定温度は220℃以上250℃以下が好ましい。
 熱固定温度が220℃以上の場合、長手方向および幅方向ともに熱収縮率が高くなりすぎず、二次加工時の熱寸法安定性が良くなるため好ましい。
 一方、熱固定温度が250℃以下の場合、ボーイングが増加しにくく、フィルム幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラつきや歪みが少なくなり好ましい。
 さらに熱弛緩処理工程を行うが、熱固定工程の後に熱固定工程と別々に行ってもよく、熱固定工程と同時に行っても良い。熱弛緩処理工程におけるフィルム幅方向の弛緩率としては、4%以上8%以下が好ましい。
 弛緩率が4%以上の場合、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率が高くなりすぎず、二次加工時の寸法安定性が良きなるため好ましい。
 一方、弛緩率が8%以下の場合、フィルムの幅方向中央部の幅方向の延伸によって生じる長手方向の延伸応力が大きくなり過ぎず、ボーイング現象が増加しにくく好ましい。
 熱弛緩処理工程では、未延伸シートを長手方向に延伸して得られたフィルムを幅方向に延伸されたフィルムが熱緩和により収縮されるまでの間、幅方向の拘束力が減少して自重により弛んでしまったり、また、フィルム上下に設置されたノズルから吹き出す熱風の随伴気流によってフィルムが膨らんでしまうことがあるため、フィルムが非常に上下に変動し易い状況下にあり、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの配向角の変化量が大きく変動しやすい。これらを軽減させる方法としては、例えば、上下部のノズルから吹き出す熱風の風速を調整することで、フィルムが平行になるように保つことが挙げられる。
 本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
 上記の方法で延伸製膜された幅広の二軸配向ポリエステルフィルムは、ワインダー装置により巻き取られ、マスターロールが作製される。マスターロールの幅は5000mm以上10000mm以下が好ましい。ロールの幅が5000mm以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工などの二次加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
 マスターロールの巻長は10000m以上100000m以下が好ましい。ロールの巻長が5000m以上であると、その後スリット工程、蒸着加工や印刷加工などの二次加工においてフィルム面積あたりのコストが低くなり好ましい。
 また、マスターロールよりスリットしたフィルムロールの巻幅は400mm以上3000mm以下であることが好ましい。巻幅が400mm以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻幅は長い方が好ましいが、3000mm以下であるとロール幅が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
 フィルムロールの巻長は2000m以上65000m以下であることが好ましい。巻長が2000m以上であると、印刷工程において頻繁にフィルムロールを交換する手間が少なくなり、コストの面で好ましい。また、巻長は長い方が好ましいが、65000m以下であるとロール径が大きくなりすぎない他、ロール重量が重くなりすぎず、ハンドリング性が低下せず好ましい。
フィルムロールに用いる巻芯は、特に限定されるものではなく、通常、直径3インチ(37.6mm)、6インチ(152.2mm)、8インチ(203.2mm)等のサイズのプラスチック製、金属製、あるいは紙管製の筒状の巻芯を使用することができる。
 本発明における基材フィルムの縦方向(MDと記載することがある)及び横方向(TDと記載することがある)の150℃、30分処理による熱収縮率の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.3%である。0.1%未満であると改善の効果が飽和するほか、力学的に脆くなってしまうことがあるので好ましくない。上限は好ましくは3.0%であり、より好ましくは2.5%である。3.0%を超えると印刷などの加工時の寸法変化により、ピッチズレなどが起こることがあるので好ましくない。また、3.0%を超えると印刷などの加工時の寸法変化により、幅方向での縮みなどが起こることがあるため好ましくない。
 本発明における基材フィルムのフィルム厚みは、5~40μmが好ましい。5μm以上であるとフィルムとしての強度やコシ感が低下せず、ワインダー装置により巻き取る際、フィルムロールにシワが入りにくく好ましい。一方、フィルム厚みは40μm以下の範囲であれば強度やコシ感は十分に得られ、コストの観点から薄肉化することが好ましい。フィルムの厚みは8~30μmがより好ましく、9μm~20μmが特に好ましい。
 本発明における基材フィルムの昇温結晶化温度は、139℃以下であることが好ましく、より好ましくは135℃以下である。ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂の昇温結晶化温度は、通常130℃程度であり、化石燃料由来のポリエステル樹脂の昇温結晶化温度よりも低くなるため、フィルム中の昇温結晶化温度が139℃より高くなるということは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。
[無機薄膜層]
 本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルム層の表面に無機薄膜層を有する。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。また、Al濃度が100質量%の場合、水蒸気バリア性能は良好となるが、単一材料であることから表面が平滑な傾向があり、滑り性が悪く加工上の不具合(シワ・ニキビ等)が生じやすくなる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
 無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
 無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
 本発明においては、基材フィルム中のイソフタル酸含有量によって表面硬度(柔軟性)を制御している。表面硬度を所定の範囲内にすることで、その柔軟性により基材に無機薄膜層が堆積しやすくなり、バリア性能に優れた塗膜が得られる。表面硬度は60~120N/mmであることが好ましい。表面硬度は、より好ましくは65N/mm以上、さらに好ましくは70N/mm以上、特に好ましくは75N/mm以上であり、より好ましくは115N/mm以下、さらに好ましくは110N/mm以下、特に好ましくは105N/mm以下である。積層フィルムの表面硬度が120N/mmを超えると、表面の柔軟性が低下し無機薄膜層を積層する際に無機薄膜層が応力負荷を受けやすく、バリア性能が悪化する恐れがある。一方、表面硬度が60N/mm未満であると、柔らかくなりすぎることによってその変化に無機薄膜が追随できずバリア性能が悪化する恐れがある。また、後述の加工適性の面からも好ましくない。
[被覆層]
 本発明の積層フィルムは、レトルト処理後のガスバリア性やラミネート強度、さらには加工適性向上のための滑り性を確保することを目的として、基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に被覆層を設けることができる。基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に設ける被覆層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。これらの被覆層に用いる樹脂組成物は、有機官能基を少なくとも1種類以上有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記有機官能基としては、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。前記シランカップリング剤の添加によって、レトルト処理後のラミネート強度がより向上する。
 前記被覆層に用いる樹脂組成物の中でも、オキサゾリン基またはカルボジイミド基を含有する樹脂を用いることが好ましく、これらに加えてアクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の混合物を用いることがより好ましい。これらの官能基は無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物とが反応することができ、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また被覆層中に存在する未反応の官能基は、基材フィルム層および被覆層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。
 本発明においては、被覆層の付着量を0.010~0.200(g/m)とすることが好ましい。これにより、被覆層を均一に制御することができるため、結果として無機薄膜層を緻密に堆積させることが可能になる。また、被覆層内部の凝集力が向上し、基材フィルム-被覆層-無機薄膜層の各層間の密着性も高くなるため、被覆層の耐水接着性を高めることができる。被覆層の付着量は、好ましくは0.015(g/m)以上、より好ましくは0.020(g/m)以上、さらに好ましくは0.025(g/m)以上であり、好ましくは0.190(g/m)以下、より好ましくは0.180(g/m)以下、さらに好ましくは0.170(g/m)以下である。被覆層の付着量が0.200(g/m)を超えると、被覆層内部の凝集力が不充分となり、良好な密着性を発現できない場合がある。また、被覆層の均一性も低下するため、無機薄膜層に欠陥が生じて、ガスバリア性が低下するおそれがある。さらに、被覆層が厚いと基材の柔軟効果が薄れ、ガスバリア性の悪化につながる。しかも、製造コストが高くなり経済的に不利になる。一方、被覆層の膜厚が0.010(g/m)未満であると、基材を十分に被覆することが出来ず、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
 前記被覆層を形成するための方法としては、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば基材フィルム層を製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50~250℃程度の温度とすることが好ましい。
 コート法を用いる場合に使用する溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
 本発明においては、基材フィルム中のイソフタル酸含有量によって表面硬度(柔軟性)を制御している。表面硬度を所定の範囲内にすることで、その柔軟性により基材に被覆層が浸透・堆積しやすくなり、結果的に均一な塗膜が得られる。基材フィルムに被覆層を積層したフィルムにおける被覆層面側の表面硬度は120N/mm以下であることが好ましい。表面硬度は、好ましくは115N/mm2以下、より好ましくは110N/mm以下、さらに好ましくは105N/mm以下である。積層フィルムの表面硬度が120N/mmを超えると、表面の柔軟性が低下し被覆層の浸透効果が得られにくくなる。表面硬度の下限値は、60N/mmが好ましく、65N/mmがより好ましく、70N/mmがさらに好ましく、75N/mmが特に好ましい。なお、前記被覆層上に後述の無機薄膜層をさらに積層した積層フィルムにおいても、無機薄膜層面側の表面硬度の好ましい範囲は上記の範囲と同じである。
 前述のように表面硬度を柔らかくすることでバリア性能の向上が期待できるが、その分滑り性が悪化する懸念がある。滑り性が悪いと、蒸着やコート・ラミネート加工工程における巻取り時にシワが入ったり、さらには巻取り時にフィルムが引っ掛かることで生じる小さな凸状の欠点(ニキビ)が発生したり、ブロッキングを起こしたりして、トラブルとなることがある。本発明では積層フィルムの表面粗さを制御することで、基材の柔軟性を維持しつつ基材表面に適正な滑り性を付与することができ、結果的に加工性にも優れたフィルムとすることができる。フィルムの表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)にて観察領域2μm四方における平均粗さRaが2.0~6.0nmであることが好ましい。これにより、表面に微小な凹凸が付与され、結果として良好な滑り性が得られる。粗さは、好ましくは2.5~5.5nm、より好ましくは3.0~5.0nm、さらに好ましくは3.5~4.5nmである。粗さが6nmを超えると、凹凸によって無機薄膜層が均一に積層されなくなり、結果としてガスバリア性が低下する恐れがある。一方、粗さが2nm未満であると、平坦であるため滑り性が悪化する。
 表面粗さを前記範囲にする方法としては、被覆層の付与またはコロナ処理等の表面処理が挙げられる。中でも、耐水接着性と滑り性を同時に付与できる観点から、被覆層の付与が好ましい。被覆層の粗さは、2種類以上の材料の混合比を変更して樹脂の分散性を変化させたり、被覆層の付着量を変えたり、塗布液調整時に希釈する溶媒を変更したりすることで調整できる。
本発明の積層フィルムの無機薄膜層面/被覆層面の静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μdは0.20~0.40の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.275~0.375、さらに好ましくは0.30~0.35である。積層フィルムの滑り性が0.40を超えると、フィルム巻取り時にシワが生じたり、ニキビの要因となる。一方、滑り性が0,20未満だと、フィルムが上滑りして巻ずれを起こす恐れがある。
[保護層]
 本発明においては、さらにガスバリア性能が必要な場合や印刷等の加工が必要な場合において、前記無機薄膜層の上に保護層を有することもできる。金属酸化物層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。金属酸化物層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、金属酸化物層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も大きく向上することになる。ただし、保護層を設けることで工程が増えることによるコストアップや使用材料によっては環境への負荷が生じることに留意する必要がある。また、保護層により前述の表面粗さが変化することにも留意する必要がある。
 保護層の付着量は0.10~0.40(g/m)とすることが好ましい。これにより、塗工において保護層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。また保護層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層-保護層間の密着性も強固になる。保護層の付着量は、好ましくは0.13(g/m)以上、より好ましくは0.16(g/m)以上、さらに好ましくは0.19(g/m)以上であり、好ましくは0.37(g/m)以下、より好ましくは0.34(g/m)以下、さらに好ましくは0.31(g/m)以下である。保護層の付着量が0.400(g/m)を超えると、ガスバリア性は向上するが、保護層内部の凝集力が不充分となり、また保護層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。一方、保護層の膜厚が0.10(g/m)未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
 本発明の積層フィルムの無機薄膜層の表面に形成する保護層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。
 特にウレタン樹脂の含有は、ウレタン結合自体の高い凝集性によるバリア性能に加え、極性基が無機薄膜層と相互作用するとともに、非晶部分の存在により柔軟性をも有するため、屈曲負荷がかかった際にも無機薄膜層へのダメージを抑えることができるため好ましい。
(ウレタン樹脂)
 本発明で用いるウレタン樹脂は、凝集力によるバリア性向上の観点から、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。ただし、密着力を発現させるために、柔軟性に優れるTg100℃以下の柔軟樹脂を混合して用いてもよい。その場合、前記柔軟樹脂の添加比率は0~80%の範囲内であるのが好ましい。より好ましくは10~70%の範囲内、さらに好ましくは20~60%の範囲内である。添加比率が上記範囲内であると、凝集力と柔軟性を両立させることができ、バリア性と密着性が良好となる。なお、添加比率が80%を超えると、膜が柔らかくなりすぎ、バリア性能の低下を招くがある。
 前記ウレタン樹脂は、ガスバリア性向上の面から、芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネート成分を主な構成成分として含有するウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
 その中でも、メタキシリレンジイソシアネート成分を含有することが特に好ましい。上記樹脂を用いることで、芳香環同士のスタッキング効果によりウレタン結合の凝集力を一層高めることができ、結果として良好なガスバリア性が得られる。
 本発明においては、ウレタン樹脂中の芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合を、ポリイソシアネート成分(F)100モル%中、50モル%以上(50~100モル%)の範囲とすることが好ましい。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合は、60~100モル%が好ましく、より好ましくは70~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。このような樹脂として、三井化学社から市販されている「タケラック(登録商標)WPB」シリーズは好適に用いることが出来る。芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの合計量の割合が50モル%未満であると、良好なガスバリア性が得られない可能性がある。
 本発明で用いるウレタン樹脂には、膜の凝集力向上および耐湿熱接着性を向上させる目的で、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の架橋剤ケイ素系架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等が例示できる。その中でも、ケイ素系架橋剤を配合することにより、特に無機薄膜層との耐水接着性を向上させることができる。の観点から、ケイ素系架橋剤が特に好ましい。その他に架橋剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等を併用してもよい。
 保護層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
 保護層を形成する際には、保護層用樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することが好ましく、その際の乾燥温度は110~190℃が好ましく、より好ましくは130~185℃、さらに好ましくは150~180℃である。乾燥温度が110℃未満であると、保護層に乾燥不足が生じたり、保護層の造膜が進行せず凝集力および耐水接着性が低下し、結果としてバリア性や手切れ性が低下するおそれがある。一方、乾燥温度が190℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなり突刺し強度が低下したり、収縮して加工性が悪くなったりする虞がある。特に、150℃以上好ましくは160℃以上で乾燥することにより、保護層の造膜が効果的に進行し、保護層の樹脂と無機薄膜層における接着面積がより大きくなるために耐水接着性を向上することができる。保護膜は塗布直後に90℃~110℃の比較的低温条件でまず溶媒を揮発させ、その後150℃以上で乾燥させると、均一な膜が得られるため、特に好ましい。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域で追加の熱処理を加えることも、保護層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
 以上より、本発明の積層フィルムは、環境負荷の少ないペットボトル由来のポリエステル樹脂を基材に用いることで、処理前のガスバリア性能に優れ、さらに被覆層を設けることで過酷な湿熱処理後もそのバリア性および無機薄膜層との接着性を維持できる特徴を有する。
[包装材料]
 本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成した積層体とすることが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(被覆層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
[接着剤層]
 本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、レトルト処理に耐え得る耐湿熱性と、各基材の寸法変化に追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、レトルト後に十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/mが好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。
 さらに、本発明の積層フィルムには、無機薄膜層または基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
 印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
 本発明のラミネート積層体は、レトルト処理前後の23℃×65%RH条件下における酸素透過度がいずれも15ml/m・d・MPa以下となることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、前述の無機薄膜層成分・付着量を制御することで、好ましくは12.5ml/m・d・MPa以下、より好ましくは10ml/m・d・MPa以下とすることができる。酸素透過度が15ml/m・d・MPaを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、レトルト処理前後の酸素透過度がいずれも1ml/m・d・MPa未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。酸素透過度の好ましい下限は、1ml/m・d・MPa以上である。
 本発明のラミネート積層体は、レトルト処理前後の40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度がいずれも2.0g/m・d以下であることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、前述の無機薄膜層成分・付着量を制御することで、好ましくは1.5g/m・d以下、より好ましくは1.0g/m・d以下とすることができる。水蒸気透過度が2.0g/m・dを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、レトルト処理前後の水蒸気透過度がいずれも0.1g/m未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。水蒸気透過度の好ましい下限は、0.1g/m・d以上である。
 本発明のラミネート積層体は、レトルト処理前後の23℃×65%RH条件下における水付けラミネート強度がいずれも1.0N/15mm以上であることが好ましく、より好ましくは1.5N/15mm以上、さらに好ましくは2.0N/15mm以上である。ラミネート強度が1.0N/15mm未満であると、屈曲負荷や液体の内容物によって剥離が生じ、バリア性が劣化したり、内容物が漏れ出たりするおそれがある。さらに、手切れ性が悪化するおそれもある。
 次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
(1)ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)
 示差走査熱量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6220型)を用いて、樹脂試料5mgを窒素雰囲気下にて280℃まで溶融し、5分間保持した後、液体窒素にて急冷し、室温より昇温速度20℃/分の条件にて測定した。
(2)ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)
 ポリエステル樹脂0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/g。
(3)原料ポリエステル及びフィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸成分の含有率
 クロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI-200」;Varian社製)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
(4)基材フィルムの厚み
 JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
(5)基材フィルムの昇温結晶化温度
 評価用フィルムから切り取った試料8mgについて、株式会社島津製作所製の示差走査熱量計(DSC60)を用いて測定を行った。
試料温度は、
1.25℃から320℃に10℃/minで昇温
2.25℃に300℃/minで急冷
3.25℃で3分間保持
4.25℃から320℃に10℃/minで昇温
の順で走査し、4.における昇温結晶化の発熱曲線のピークトップ温度を昇温結晶化温度(Tc1)とした。
(6)基材フィルムの縦、横方向の熱収縮率
 基材フィルムについて、幅10mmにサンプリングして、室温(27℃)にて200mmの間隔に標線をマークして、標線の間隔を測定(L 0)した後、そのフィルムを紙の間に挟み、150℃の温度に制御した熱風オーブンに入れ、30分処理した後、取り出した後、標線の間隔を測定(L)して、次式から熱収縮率を求めた。縦方向と横方向の双方向についてそれぞれ試料を採取して実施する。
 熱収縮率(%)={(L 0-L)/L 0}×100
(7)無機薄膜層の組成・膜厚
 実施例、比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)について、蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
(8) 被覆層の付着量
 各実施例および比較例において、基材フィルム上に被覆層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、この試料から100mm×100mmの試験片を切り出し、1-メトキシ-2-プロパノールまたはジメチルホルムアミドによる被覆層の拭き取りを行い、拭き取り前後のフィルムの質量変化から付着量を算出した。
(9) 積層フィルムの表面硬度の測定方法
 積層フィルムの表面硬度の測定は、ダイナミック超微小硬度計(株式会社島津製作所製「DUH-211」)を使用して実施した。詳しくは、ガラスプレートに接着剤で固定保持した積層フィルム単体の保護層面に対して、稜間角115°ダイヤモンド三角すい圧子(バーコビッチ型)を用い、負荷除荷試験にて硬さ測定試験を行い、得られたマルテンス硬さを表面硬度の値とした。試験条件は、試験力1.0mN、負荷速度0.02mN/秒、保持時間2秒で行った。なお、本条件にて測定された硬度の値は、押し込み深さとしては0.3μm以上と被覆層や無機薄膜層の厚みに対して十分大きく、基材の表面硬度を表していることと解釈した。
(10) 積層フィルムの算術平均粗さの測定方法
積層フィルムの表面粗さの測定は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(株式会社島津製作所製「SPM9700」)を使用して(カンチレバー:オリンパス社から提供されるOMCL―AC200TSを使用、観察モード:位相モード)実施した。詳しくは、フィルム表面の視野角2μm四方においてSPM画像を得た。得られた画像において、SPM付属のソフトウエアの機能である傾き補正を使用し、X方向・Y方向・Z方向の傾き補正を行った後、算術平均粗さの値を算出した。算術平均粗さRaは、断面曲線から所定の波長より長い表面うねり成分を高域通過フィルタで除去した粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、その抜き取り部分の平均線の方向にX軸を縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(X)で表したときに、次の式によって求められる値を二次元に拡張した値とした。
Ra=1/L∫L 0  |f(x)|dx  L:基準長さ
(11)積層フィルムの摩擦係数の測定法
フィルムの蒸着面と非蒸着面における静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μdをASTM-D-1894法に準じて、50%RHの湿度雰囲気下で測定した。
[ラミネート積層体の作製]
 実施例、比較例で得られた積層体の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラック(登録商標)A525S」と「タケネート(登録商標)A50」を13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、厚さ15μmのナイロンフィルム(東洋紡株式会社製「N1100」)を貼り合わせ、次いで該ナイロンフィルムの上に、上記と同様のウレタン系2液硬化型接着剤を用いてドライラミネート法により、ヒートシール性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製「P1146」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体(以下「ラミネート積層体A」と称することもある)を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
(12) 酸素透過度の評価方法
上記 [ラミネート積層体の作製]で作製したラミネート積層体について、JIS-K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)1/50」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態の酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側からヒートシール性樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。他方、上記[ラミネート積層体の作製]で作製したラミネート積層体に対して、130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行い、40℃で1日間(24時間)乾燥し、得られた湿熱処理後のラミネート積層体について上記と同様にして酸素透過度(レトルト後)を測定した。
(13)水蒸気透過度の評価方法
 上記[ラミネート積層体の作製]で作成したラミネート積層体について、JIS-K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、ラミネート積層体のヒートシール性樹脂層側から基材フィルム側に向けて水蒸気が透過する方向で行った。
 他方、上記[ラミネート積層体の作製]で作製したラミネート積層体に対して、130℃の熱水中に30分間保持する湿熱処理を行い、40℃で1日間(24時間)乾燥し、得られた湿熱処理後のラミネート積層体について上記と同様にして水蒸気透過度(レトルト後)を測定した。
(14) ラミネート強度の評価方法 
 上記で作製したラミネート積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT-II-500型」)を用いてラミネート強度(常態)を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層フィルムの積層フィルム層とヒートシール性樹脂層との層間に水をつけて剥離角度90度で剥離させたときの強度を測定した。
 他方、上記で作製したラミネート積層体に対して、温度130℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、直ちに、得られたレトルト処理後のラミネート積層体から上記と同様にして試験片を切り出し、上記と同様にしてラミネート強度(レトルト処理後)を測定した。
(15)積層フィルムの加工性評価
実施例、比較例に記載した積層体を蒸着加工した際の巻取り後のフィルムロールについて、シワ・ニキビ・巻ずれ・ブロッキングの4項目の有無について検品を行い、何も不具合が無かったものを〇、いずれか1つが見られたものを△、2つ以上見られたものを×とした。
 以下に本実施例及び比較例で使用するポリエステル樹脂チップの詳細を記す。なお、実施例1~7、及び比較例1~5で使用した。
(ポリエステル樹脂A):メカニカルリサイクルポリエステル樹脂
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用する、ペットボトルをリサイクル使用したメカニカルリサイクルポリエステル樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。
 飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕してフレークを得た。得られたフレークをフレーク濃度10重量%、85℃、30分の条件で3.5重量%の水酸化ナトリウム溶液で攪拌下で洗浄を行った。アルカリ洗浄後、フレークを取り出し、フレーク濃度10重量%、25℃、20分の条件で蒸留水を用いて攪拌下で洗浄を行った。この水洗を蒸留水を交換してさらに2回繰り返し実施した。水洗後、フレークを乾燥した後、押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルターを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルターで濾別して、固有粘度0.69dl/g、イソフタル酸含有率3.0モル%のポリエステル樹脂Aを得た。
(ポリエステル樹脂B)
後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用する化石燃料由来PET樹脂として、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)(東洋紡社製、固有粘度0.62dl/g)を用いた。
 (ポリエステル樹脂C):ケミカルリサイクルポリエステル樹脂
 後述する二軸配向ポリエステルフィルムの作製において使用するペットボトルより再生されたケミカルリサイクルポリエステル樹脂として、以下の方法を用いて合成したものを用いた。
 分別収集・回収されたペットボトルベールを湿式粉砕機に投入し、水1,000リッターに液体台所洗剤500gを加えたものを、上記湿式粉砕機内に循環させながら粉砕を行い、粉砕機に接続している比重分離機によって金属、砂、ガラス等の比重の大きいものを沈殿させ、上層部からフレークを取り出した。このフレークを純水で濯ぎ、遠心脱水して回収フレークとした。
上記回収フレークを未乾燥の状態で溶融したもの30kgを攪拌機付きオートクレーブ中で、予め加熱しておいたエチレングリコール150kg、酢酸亜鉛2水和物150gの混合液中に仕込み、水・酢酸の如きエチレングリコールよりも沸点の低い溜分を除去した後、還流コンデンサーを用いて195~200℃の温度で4時間反応させた。
 反応終了後、反応器内容物温度を97~98℃まで降温し、フィルターで熱時濾過して浮遊物及び沈殿物を除去した。
熱時濾過後の濾液を更に冷却し、粗製BHETが完全に溶解していることを確認した後、50~51℃で活性炭床、次いでアニオン/カチオン交換混合床を30分間かけて通し、前精製処理を施した。
 上記の前精製処理液を再度攪拌式オートクレーブに仕込み、加熱して余剰のエチレングリコールを常圧留出させ、濃縮BHETの溶融液を得た。
得られた濃縮BHETの溶融液を、窒素ガス雰囲気下で攪拌しつつ、自然降温した後、オートクレーブから取り出し、濃縮BHETの細片ブロックを得た。
 この細片ブロックを再度130℃まで加熱・溶融した後、定量ポンプにて薄膜真空蒸発器に供給し、蒸発、冷却凝縮して精製BHETを得た。
 この精製BHETを原料として溶融重合を行い、固有粘度0.696dl/gのケミカルリサイクルポリエステル樹脂Cを得た。
(ポリエステル樹脂D)
エステル化反応缶を昇温して200℃に到達した時点で、テレフタル酸[86.4質量部]及びエチレングリコール[64.4質量部]からなるスラリーを仕込み、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモン[0.017質量部]及びトリエチルアミン[0.16質量部]を添加した。次いで加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水塩[0.071質量部]、次いでリン酸トリメチル[0.014質量部]を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温した後、リン酸トリメチル[0.012質量部]、次いで酢酸ナトリウム[0.0036質量部]を添加した後、15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、さらに平均粒子径2.7μmの不定形シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子含有量を基準として0.72重量部添加した。このシリカ粒子は、エチレングリコールスラリーを予め調製し、これを遠心分離処理して粗粒部を35%カットし、その後、目開き5μmの金属フィルターでろ過処理を行って得られた粒子である。15分後に、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行い、極限粘度0.62dl/gのポリエステル樹脂Dを得た。
原料樹脂チップは、表1に示した通りである。なお、表中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸
EG:エチレングリコール
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 以下に本実施例及び比較例で使用する塗工液の詳細を記す。なお、実施例1~7、及び比較例1~4で使用した。
 [カルボジイミド系架橋剤(A)]
 カルボジイミド系架橋剤として、市販の日清紡社製「カルボジライト(登録商標)SV-02」;固形分40%)を用意した。
[オキサゾリン基を有する樹脂(B)]
オキサゾリン基を有する樹脂として、市販の水溶性オキサゾリン基含有アクリレート(日本触媒社製「エポクロス(登録商標)WS-300」;固形分10%)を用意した。この樹脂のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであった。
[アクリル樹脂(C)]
アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ニチゴー・モビニール(株)社製「モビニール(登録商標)7980」を用意した。このアクリル樹脂の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
[ウレタン樹脂(D)]
ウレタン樹脂として、市販のポリエステルウレタン樹脂のディスパージョン(三井化学社製「タケラック(登録商標)W605」;固形分30%)を用意した。このウレタン樹脂の酸価25mgKOH/gであり、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)は100℃であった。また、1H-NMRにより測定したポリイソシアネート成分全体に対する芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートの割合は、55モル%であった。
[シランカップリング剤(E)]
 シランカップリング剤として、市販の信越化学社製「(登録商標)KBM903」;固形分100%)を用意した。使用時は水で希釈して2%水溶液とした。
[ウレタン樹脂(F)]
 撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、メタキシリレンジイソシアネート143.95質量部、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)25.09質量部、エチレングリコール28.61質量部、トリメチロールプロパン5.50質量部、ジメチロールプロピオン酸12.37質量部、及び溶剤としてメチルエチルケトン120.97質量部を混合し、窒素雰囲気下、70℃で撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を35℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.14質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水794.97質量部を添加して、15℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散させ、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノール22.96質量部と水91.84質量部を混合したアミン水溶液を添加し、次いで、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM-603、信越化学社製)2.38質量部と水9.50質量部を混合したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応を行った。その後、減圧下で、メチルエチルケトンおよび水の一部を除去することにより、固形分25質量%、平均粒子径70nmのポリウレタンディスパージョン(E)を得た。得られたポリウレタンディスパージョン(D-1)のSi含有量(仕込み計算による)は1200mg/1kg、メタキシリレン基含有量(仕込み計算による)は32質量%であった。
[被覆層に用いる塗工液1]
 下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
  水                      53.48質量%
  イソプロパノール               22.00質量%
  オキサゾリン基含有樹脂 (B)        18.70質量%
  アクリル樹脂 (C)             3.74質量%
  ウレタン樹脂 (D)             1.98質量%
[被覆層に用いる塗工液2]
 下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
  水                      60.58質量%
  イソプロパノール               15.00質量%
  オキサゾリン基含有樹脂 (B)        18.70質量%
  アクリル樹脂 (C)             3.74質量%
  ウレタン樹脂 (D)             1.98質量%
[被覆層に用いる塗工液3]
 下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
  水                      57.80質量%
  イソプロパノール               25.00質量%
  カルボジイミド系架橋剤 (A)        2.10質量%
  ウレタン樹脂 (F)             8.00質量%
  シランカップリング剤 (E)         7.10質量%
 以下に各実施例及び比較例で使用する基材フィルムの作製方法を記す。なお、実施例1~7、及び比較例1~4で使用し、表2に示した。
(基材フィルムの作製)
3台の押出し機を用いて3層構成のフィルムを製膜した。基層(B)はポリエステル樹脂Aを47.5質量%、ポリエステル樹脂Cを47.5質量%、ポリエステル樹脂Dを5.0質量%、表面層(A)はポリエステル樹脂Aを43.8質量%、ポリエステル樹脂Cを43.8質量%、ポリエステル樹脂Dを12.5質量%とした。それぞれの原料樹脂を乾燥後、第1、第3の押出機より表面層(A)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により基層(B)形成混合樹脂を285℃の樹脂温度にて溶融し、キャススティングドラムに接触する側から表面層(A)/基層(B)/表面層(A)の順番に、Tダイ内にて厚み比が1/10/1(μm)になるように合流積層し、T字の口金から吐出させ、表面温度が25℃のキャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。
その際、直径0.15mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させて3層未延伸フィルムを得た。
 得られた未延伸フィルムを赤外線ヒーターで120℃に加熱し、延伸倍率4.0倍で長手方向に一段延伸した。その一段延伸したフィルムの片面に、上記塗工液1をファウンテンバーコート法によりコートした。引き続き、テンター式横延伸機にて予熱温度120℃、延伸温度130℃、延伸倍率4.2倍にて幅方向に延伸し、さらに該テンターの後続する熱固定処理領域の前に設けた冷却領域においては、上下左右に張り付けたアルミ板で熱風を遮断し、圧縮空気を送って、冷却領域内の温度を70℃になるように冷却した。その後、245℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理を行った。その後、ワインダーでロール状に巻取ることで、厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルムのマスターロール(巻長60000m、幅8000mm)を作製した。
 得られたマスターロールから二軸配向ポリエステルフィルムを巻出し、直径6インチ(152.2mm)の巻芯に、800mm幅でスリットしながら、コンタクトロールでフィルムロールに面圧と、2軸ターレットワインダーでフィルムに張力をかけながら、フィルムロールを巻き取った。
 得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2に示す。フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
 各実施例および比較例記載の基材フィルム層を調製するにあたり、原料として、表面層(A)及び基層(B)に用いたポリエステル樹脂の種類・比率を変更したこと、また被覆層の種類を変更したこと以外は、上記同様に二軸延伸フィルムを製膜して、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。ただし、被覆層を設けなかった場合は、チルロールに接触した側の表面層(A)に40W・min/m2の条件でコロナ処理を行った。得られたフィルムの原料組成および製膜条件、得られたフィルムの物性及び評価結果を表2、3に示す。なお、基材フィルムの評価はチルロールに接触した側の表面層(A)で行った。
以下に各実施例及び比較例で使用する無機薄膜層の作製方法を記す。なお、実施例1~7、及び比較例1~4で使用し、表2に示した。
(無機薄膜層M-1の形成)
 無機薄膜層M-1として、基材フィルム層上に酸化アルミニウムの蒸着を行った。基材フィルム層への酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフィルム上に付着堆積させ、厚さ10nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
(無機薄膜層M-2の形成)
 無機薄膜層M-2として、基材フィルム層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
 以上のようにして、基材フィルムの上に被覆層/無機薄膜層を備えた積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムについて、評価を実施した。結果を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 本願発明によれば、リサイクル材料を用いながら、無機薄膜層のガスバリア性に優れ、レトルト殺菌のような過酷な湿熱処理後もバリア性および接着性に優れる積層フィルムを提供することが可能となった。しかも、本発明の積層フィルムは加工工程が少なくかつ加工性に優れ容易に製造できるので、経済性と生産安定性の両方に優れており、均質な特性のガスバリア性フィルムを提供することができる。

Claims (6)

  1. 基材フィルムの片面に被覆層および無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記積層フィルムが下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
    (a) 前記基材フィルムがペットボトルからケミカルリサイクルされたポリエステル樹脂を含有すること。
    (b) 前記積層フィルムの無機薄膜層面における表面硬度が120N/mm以下であること。
    (c) 前記積層フィルムの無機薄膜層面/反対側面の静摩擦係数μsおよび動摩擦係数μdがいずれも0.20~0.40の範囲であること。
     (d)前記積層フィルムの無機薄膜層面の2μm四方における算術平均粗さRaが2.0~6.0nmの範囲であること。
  2. 前記被覆層はオキサゾリン基またはカルボジイミド基を有する樹脂を構成成分として含有する請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記基材フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全カルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が5.0モル%以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記無機薄膜層が、酸化アルミニウムまたは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物の層である請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5.  前記無機薄膜層上にウレタン樹脂を含有する保護層を有する請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルムの片面にシーラント層を積層してなる包装材料。
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